第16回 - 日本イーラーニングコンソシアム

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2007年1月9日
elcについて
第16回 「 eラーニング2.0の波 (1)」
├ 活動主旨と沿革
├ 会員一覧
├ 会員メリット
10月にアメリカのいくつかの先端企業と研究機関を訪問する機会に恵まれ、 e ラーニングの現状及び今後の方向性について
話しを聞いた。印象に残ったのは「テクノロジー・トレンド」としてラーニング界での「 Web2.0 」の確実な利用増加と「よりすぐれた
検索エンジン」の必要性増加である。 2 - 3 年前より、大手の企業は社内に存在している多数のシステムを一つのシステムに
├ 入会方法
集約するという「ラーニングのエンタープライズ化」を進めてきている。このようなシステムのセントラル化は継続的に進められて
いる一方で、ポツポツと導入されはじめているのが社内用のグーグル的な検索ツールやポッドキャスティング等の Web2.0 的ツ
初めてのeラーニング
├ 導入ガイド
ールである。
筆者自身もチーフ・ラーニング・オフィサー誌( www.clomedia.com )が提供してくれている Webinar ( ウェブ上でのライブセミナ
ーで1ヶ月に一度の割でメンバーに無料提供しており、参加者はアメリカ、カナダ、ヨーロッパが主で、一回のセッションに300
├ 導入事例
人以上が参加している )に今年の初めから参加しているが、多くの人が「ラーニング2.0」、「 e ラーニング2.0」という言葉を
├ 海外事情
すでに使い始めている。ライブセミナーでは参加者にライブ・アンケートをとることがよくあるが、そのうちのひとつで、ソーシャ
ル・ネットワーキングツール等 Web2.0 のテクノロジーを使った学習ツールについてのアンケートがあった。社内での利用率は2
├ 用語集
└ 書籍案内
データ・資料
├ カンファレンス資料
├ 映像アーカイブ集
0%を超えており、今後利用したいと回答した参加者が30%以上いた。
この傾向を裏付けるかのように、 IBM 社は本年 11 月に新入社員研修に IBM@PLAY というバーチャル・トーレーニング・プログ
ラムをグローバルに展開するという発表をした。それはウェブ上でのバーチャル・ワールド・ゲーム的な研修プログラムでソーシ
ャル・ネットワーキングの機能を入れ込んであるという。
このように、 Web2.0 のテクノロジーは着実にラーニング界に浸透してきているという事実から、本レポートにおいても取り上げる
ことにした。今までの流れとしては、今回は北欧についてまとめることになっていたが、少し流れを変えて今後、 2 回に渡って「
e ラーニング 2.0 の波」についてまとめてみたいと思う。先ず、今回は「 e ラーニング2.0」とはどのようなものなのかを中心に
まとめ、次回はヨーロッパにおける「 e ラーニング 2.0 の波」を日米と比較しながらまとめてみたいと思う。
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eLP資格制度
├ 資格について
├ 資格認定コース
└ 資格更新案内
Web2.0 から見た「 e ラーニング 2.0 」とは?
「 e ラーニング 2.0 」は、「新しいラーニング」の延長で出てきた言葉として「ビヨンド・ e ラーニング」という言葉と共に使われては
いるが、 Web2.0 の理解が人によって異なると同じように「 e ラーニング 2.0 」についての理解も人によってさまざまである。アメ
リカでは「ラーニング 2.0 」を使う人もいるが、ヨーロッパでは、「eラーニング 2.0 」の方がよく使われており、カナダの研究者
Stephen Downes が書いた E-Learning 2.0 の論文がよく説明に引用されている。本レポートでは、日本の読者の方に馴染みの
ある Web2.0 のコンセプトと関連づけながら、「 e ラーニング 2.0 」についてまとめてみることにした。
Web2.0 は シリコンバレーのオライリー・メディア社から出たコンセプト( 日本語での詳細なサイト
http://japan.cnet.com/column/web20/story/0,2000055933,20090039-5,00.htm )であるが、これを基に東洋経済誌( 2006 年 6
月)でまとめていたキーワードを引用すると次のようになる。
SCORM
リアル社会
ウェブ社会
1.
中央集権的
草の根的
├ SCORMとは
2.
マス
ニッチ
└ SCORM技術者資格制度
3.
占有
共有 オープン
├ ニュースリリース
└ SCORM技術者講習会テキスト
├ SCORM技術者一覧
└ SCORM適合LMS
├ SCORM適合コンテンツ
├ 各種ダウンロード
└ SCORM技術者コミュニティ
├ アセッサ向け移行プログラム
このリアル社会からウェブ社会への動きの特徴は、ラーニングの世界での動きの特徴とも共通しているので、以下、この3つの
動きに焦点をあてる。
1.SNS の利用:「中央集権的」から「草の根的」な動き
LMSを使った e ラーニングを「 e ラーニング 1.0 」とした場合、 1.0 はどちらかというと、トップダウン的な推進のしかたであった
のに対して、「 e ラーニング 2.0 」はボトムアップ的である。LMSは投資額が大きいため、導入には会社のトップのサポートは不
可欠な要因であった。実際、コンプライアンス等の研修に大きな効果をもたらした研修は、トップからプッシュ型で推進されたも
のがほとんどである。これに対して、「 e ラーニング 2.0 」で使うグーグル、ブロッグ、ウィキペディア等の Web2.0 的なツールは
ほとんど無料に近い投資額で使うことができ、これらのツールのユーザーは上司や会社の トップ から言われたから使うのでは
なく、自分がやりたいから/参加したいから使うというプル型の利用をする。ウェブにさえ入れば手軽に利用できるので、
Web2.0 的なツールの利用者は企業より、大学関係で広がっている。アメリカ以上にオープンソースの利用を推進しているヨーロ
├ AEN
メールマガジン
リンク集
サイトマップ
ッパでは、草の根的に益々広がる土壌があるとも言える。
1)大勢対大勢のコミュニケーション:学生と対話しながら使うコンテンツ
従来のインタラクティブ性 :例えば、ソフトウェアのカスタマー研修を例にあげると、先ず、ソフトウェアそのもの
についての知識の習得に 6 時間コースのオンライン・コースをとる。その際、学生は、 “Ask a Question” をクリ
ックし、質問を出し、その質問は質問リストに保存される。その質問リストは整理されてから、インストラクターに
送られる。全員からのリストを受け終わってから、インストラクターは WebEx でのセッションをスケジュールして、
アクセスマップ
それを使って質問リストについて話し合う。このやり方は効果あったが、このような機能をもったシステムが必要
であった。
お問い合わせ
e ラーニング 2.0 におけるインタラクティブ性 :自分のコースの中にネットワーク上で無料で対話ができる機能
をドロップインすることで、自分の意見、コメントを他の人々と共有することが簡単にできる。さまざまなアド・イン
を使う方がオーサリング・ツールを使って作り込まれたものより自分にとっていい組み合わせを選ぶことが容易
である。このアド・イン を使うことによって学習者はコンテンツに自分の意見を入れたり、追加の資料を入れた
り、内容を変えたりして、他の仲間と対話することができる。
2)集合知
グーグルは、検索結果で他ページから張られたリンク数で重み付けするアルゴリズムを使って一番重要なペー
ジはどれかを提示するサービスを提供し、アマゾンは前に本を買った客のパターンを利用して、今買おうとして
いる客に気に入るかも知れない本を勧めるというサービスを提供している。これらのサービス機能は、人が使え
ば使うほど、利用者の知が集まり、整理され、より高度なものとして、成長し続ける。この特質を持った Web2.0
のサービスは e ラーニング 2.0 ではコンテンツに活用されている。
コラボレーティブなコンテンツ作成: オンライン・参考資料サイト、オンライン・ジョブ・エイドのような参考資料向
けコンテンツ作成が簡単にできる。
・ Wikipedia ( http://www.wikipedia.com/ ) PB Wiki , Media Wiki 皆から寄せられた情報をもとに造られたオン
ライン上の百科事典
・ del.icio.us 、 Furl タグづけさられたブックマークを共有
・ Cloudmark コラボレーティブなスパム・フィルタリング
・ Writely , Gliffy , iRows オンラインオフィスアプリケーション
誰もがパブリッシャー: 今までのコンテンツはパブリッシャー側から一方発信であったが、下記のようなツール
を使うと、 Web は会話のようなもので、 Read/Write ができ、利用した人によってコンテンツは常に作成され、混
ぜ合わされ、コンテンツの内容が変化し続けている。 e ラーニング 2.0 では次のようなツールがよく使われてい
る。
・ • ブロッグ( http://www.blogger.com 、 WordPress )
・ Elgg ( http://www.readwriteweb.com/archives/elgg.php )は教育用のソーシャル・ネットワーク・ソフトウェア
・ Flock http://www.flock.com/ は教育用のソーシャル・ウェブ・ブラウザー
・ Wiki
・ Podcasts
・ Flickr Millions of Us イメージ作成
・ Odeo , Audacity 音声
・ YouTube , Google Video ビデオ
すなわち、コンテンツのオリジナルの発信者には内容に関するコントロールはできないということでもある。今ま
でのコンテンツは、SME、ID、IT担当者がチームとなって開発されるというおおがかりなもので、エンドユーザ
ーである学習者が変更するということはインストラクショナル・デザインの工程には入れられていなかった。これ
は、 ID 、ペダゴジー、インストラクターのロールが変わることを意味している。 e ラーニング 2.0 は、「知識の伝
達」というより、「複数の参加者による知恵の創造」に適していると言える。
3)コンテンツへのアクセス
上記のように、小さなコンテンツ作成が誰でも簡単にできるようになるということは、コンテンツの数が膨れ上が
ることでもある。溢れ出て来るコンテンツの中から自分のほしいコンテンツを探しだすことが必要である。また、
探し出すだけではなく、このようなコンテンツを集めて面白いコース、プログラムに変えたり、タッグをつけること
によって後でみつけやすいようにしたりする必要がある。このようなエンドユーザーが発信したコンテンツを編集
し、まとまった小さいメディアとして使えるようにしてくれるのが次のツールである。
コンテンツの検索: グーグルのディレクトリーを使うことによって、よりパーソナル化された検索結果を出すこと
ができる。現在ラーニング用のグーグル利用率は35%であるとも言われている。今後益々、使いやすくて、パ
ーソナル化したコンテンツを速く得ることができるような検索ツールを求めるユーザーの声は高まる。
コンテンツの整理(アグリゲーションとタギング): RSS アグリゲータを使うことによって溢れ出た情報を取り込
み一緒にすることができる。 del.icio.us を使うことによって情報を整理整頓できる。
2.「マス」から「ニッチ」
1)ベンダーから見た「ロング・テール」市場
e ラーニング市場のサイズをベルカーブで表した場合、中央が一番利用人口が多く、市場も大きいということ
(マスマーケット)で、カーブの先端(テール)が小規模市場になる。端に行けば行くほど、市場規模は小さくな
る。 e ラーニング 2.0 の市場はこの先端をねらっており、ますますこの先端が長くなっているという。すなわち、
今まで、ビジネスとして成り立つためにはある市場規模が必要であった(例えば LMS )が、かなり小さな規模で
もビジネスが成り立つニッチ市場が伸びているということである。まさに「塵も積もれば山となる」のビジネスモデ
ルが「 e ラーニング 2.0 」でも通用する。 Web2.0 の世界でロングテールのビジネス例として代表されるのがアマ
ゾン・ドット・コムである。
学習者の「パーソナル化」は極端に言えば、あるトピックに対して関心のある人がたった一人でもその人にその
学習を提供することができることであるが、今までは採算がとれなくて手付かずであった。 eLearning2.0 の世界
においてこのビジネス・モデルを使って「パーソナル・ラーニング」、「マイクロ・ラーニング」を実現しているのが
Knowledge Pills 社(詳細は http://www.microlearning.org/index.php?blogid=1&catid=5 )である。少人数用の特
殊専門分野クラスとか、個別企業向けクラス等を提供している。
2)マイクロ・コンテンツ
ニーズに合ったときに取る小さい研修セッションのことで、コース、プログラムといった長いコンテンツではなく、5
分から15分位の小さいコンテンツ。例えば、社員が、会社が提供しているサービスにアクセスしたいとすると、
社内検索エンジンを使って、そのサービス名で検索するとそのサービスのあるサイトにリンクされ同時にそのサ
ービスの利用のしかたについての短期間コースを付ける。社員はその研修をウェブ上で受け、正しくサービスを
利用することができるようになる。 Elliot Masie は CLO Magazine の “ Nano-Learning: Miniaturization of Design
” の論文で「デザインのミニチュア化」を強調していたが、コンテンツは益々小さくなっていく傾向にあり、 e ラー
ニング 2.0 では ID (インストラクショナル・デザイナー)というよりむしろ学習体験設計士( Learning experience
architect )のような人が必要になるのではと言われている。
3.「占有」から「共有」
1) Software as a Service (SaaS)
Web2.0 はソフトウェアそのものより、サービスに注力しているところに特徴がある。 SaaS はインターネット上で
使うことを前提としたソフトウェアのことで、サービスに対して使ったボリュームだけ月額で支払うことができる。
e ラーニング 2.0 の世界では、ワード・プロセッサーのアプリケーションで http://www.writely.com/ 、
http://www.writeboard.com/ があるが、 Web を通して利用でき、他の人と共有しながら使うことが可能である。
今までのソフトウェアはアップデートにお金がかかっていたが SaaS だと自分がアップデートする必要がないの
でメインテナンスにコストがかからない。また、アップデートの頻度も多く随時改良されている状態になっている。
2)マッシュアップ
ウェブ上に公開されているデータ(テクノロジー、サービス)を混ぜ合わせて新しい付加価値のあるサービスを
提供するということで、例えば、家を探しているときに、 Zillow.com を使うと、オンライン上での地図と探している
地域の家の値段を提示してくれる。多くのアプリケーションは小さいコンポーネントから構成されており、他のア
プリケーションの中にプラグインできるようになっている。
e ラーニング 2.0 のマッシュアップとは、ウェブ上で公開されている多数の学習ソース(テキスト、絵、マルチメデ
ィア、さまざまな著者の一言、実技研修、ライブ・プレゼンテーション、自主学習用デリバリー等)を混ぜ合わせ、
学習経験に付加価値を与えることができるようにすることである。「ブレンディド・ e ラーニング」とも呼ばれてい
るものであるが、さまざまなテクノロジー、デリバリーシステムを混ぜ合わせることによって学習効果を出すこと
を目的としている。
ま と め
1.「 e ラーニング 1.0 」 Vs. 「 e ラーニング 2.0 」
以上、 Web2.0 から見た「 e ラーニング 2.0 」について触れてきたが以下に従来の LMS を中心とした e ラーニングから Web2.0
のテクノロジー、ツールを使った e ラーニングについて比較してみる。
「 e ラーニング 1.0 」
「 e ラーニング 2.0 」
「組織」
「パーソナル化」
「中央集権」 「ローカル化」
「プッシュ型 」
「プル型」
「教師主導型ペダゴジー」
「参加型の学習者主導型」
「教師から学生」
「 学生から学生、学生から教師、
学生からコミュニティー」
「 SME 」
「集合知」
「コース、プログラム」
「学習分子」「コネクション」
「知財」
「ソーシャル財」
「限られた自由度」
「拡大された自由度、オープン」
「 WebCT ようなソフトウェア」
Elgg のようなウェブ・サービス
「高い投資」
「低い投資」
2.「 e ラーニング2.0」の特徴
「 e ラーニング2.0」の特徴をまとめると以下のようになる。
・ コンテンツは静的ではなく動的:
1. コンテンツはオーサリング・ツール等で作られたものでなく、参加者が自分達で Web 上で作っていくも
の
・ アプリケーションは ブロッグのツールが主:
1. 一つのウェブコンテンツが出ると、それは、他のウェブコンテンツと、コンテンツを作成するウェブサービ
スにつなげられる。
・ すべての Web ブラウザーにスムーズにデリバリーできる:
1. たくさんのコンテンツ・ソースを学習経験の中に入れ込むことができる
・ オンライン・レフェレンス、コースウェア、 KM, コラボレーション、サーチらのオンラインで使えるツールを活
用できる。
・ よりパーソナル化された学習:
1. 「 Just-in-Time 」トレーニング
2. 一回のイベント的な取り扱いではなく、リソースとして取り扱う
・ 参加型学習:
1. 従来の「本・テキストから学ぶ」というより「会話」から学ぶやりかた
2. コミュニティーに参加することで学ぶ
3. 総論
Web2.0 は、ターゲット革命、ヒエラルキー革命、プロパティー革命という意識革命もたらすと言われている。これに対して「 e ラ
ーニング 2.0 」を一言で言うと「コンテンツ革命」のように思う。コンテンツを核として大きく学習モデル、ビジネス・モデルが変革し
ていくように思う。
次回は、今回の内容をベースとして、ヨーロッパ、特に北欧を中心に「 e ラーニング 2.0 の波」についてまとめる。
著者紹介
きよみ・山崎・ハッチングスさん
シリコンバレー在住、1992年に自らCrossTech社を設立。 日米ビジネ
スに関連したコンサルテ―ションの他、ハイテク業界でグローバル・カン
パニーとして成功するためのノウハウ、情報、コミュニケーション・スキ
ル等を入れた企業向け研修プログラム、ビジネスセミナー等を日米で
開催している。 小松会長を団長とした「海外e-ラーニング調査団」の通
訳としても活躍し、アメリカでの先端的なe-Learning活用状況について
調査・研究を続けている。
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