こちらから - 日本血管外科学会

European Vascular Course 2013
参加者:16名
敬称略・50音順(№2以降)
№
お名前
ご所属
報告書
ページ番号
1 荻野 均
東京医科大学
1
2 井上 有方
獨協医科大学
2
3 氏平 功祐
市立函館病院
4
4 河内 秀臣
日本大学医学部附属板橋病院
5
5 栗田 二郎
日本医科大学付属病院
6
6 戸口 佳代
東京医科大学病院
7
7 清水 拓也
東北大学病院
11
8 高橋 聡
東京医科大学
12
9 近澤 元太
心臓病センター榊原病院
13
10 中村 都英
宮崎大学
31
11 中村 哲哉
日本大学医学部附属板橋病院
32
12 服部 努
日本大学医学部附属板橋病院
33
13 林 忍
済生会横浜市東部病院
34
14 肥田 典之
愛知医科大学
35
15 深澤 万歓
国立循環器病研究センター
36
16 吉田 有里
旭川医科大学
37
1.
荻野 均 先生 (東京医科大学)
3/10〜3/12 までのオランダ、マーストリヒトで開催された EVC に、日本血管外科学会理事(国際
委員長)として、JSVS 学会の国際化と若手外科医のトレーニングプログラムの確立を視野に入
れ参加して参りました。
当初の目的の一つでもありましたが、まず、主催者の Michael Jacobs 教授(胸腹部大動脈手術
時の脊髄保護、特に Motor Evoked Potential のモニタリングに関する権威)に JSVS の代表とし
て、十数名の日本の血管外科医が無料参加させていただいたことに感謝の意を述べておきまし
た。大歓迎の様子で、本プログラムへの無料参加を今後も継続していただけるものと信じており
ます。
次に、EVS の内容に関しては、当初、広く各部門を見学して回るつもりでいましたが、ESVS の
流れをくんで大動脈疾患に対するステントグラフト治療の話題がメイン会場で、ほぼ毎に行われ
ていたので、この場所で時間を過ごすことがほとんどでした。その分野の専門家による教育講演
的な話題が中心で特に新しいデバイスに関する話はありませんが、これまでの知識の再確認が
でき、そのなりの意義はありました。ただ、それよりも興味深く参加できたのは、連日の症例検討
でした。司会進行の力量にもよるが、一ひねりある症例ばかりで、診断、治療両面で様々な意見
が聞け、私のレベルでも結構勉強になりました。系統だった講義も意義深いことですが、このよう
な症例検討はまた違った角度から理解が深まり、ぜひ、JSVS でもプログラムに反映できればと
考えます。
その他、同行の若手外科医二名の体験談によると、死体の腕を用いたシャント作成の研修や、
シミュレーションデバイスを用いた PTA・EVAR 研修など、若手血管外科医にとって大変興味深い
研修プログラムがありました。わが国では予算的な問題も含め困難な部分もありますが、ウェット
ラボを積極的に導入しシミュレーションプログラムを広く展開している心臓外科関連学会に比べ、
遅れている JSVS においても、同様のトレーニングプログラムの設定を強く希望する次第です。
1
2. 井上 有方 先生 (獨協医科大学)
この度、3 月 10 日~12 日にオランダのマーストリヒトで開催された European Vascular Course
2013 へ参加させて頂きました。
私が参加させて頂いたコースは Scientific program European Vascular Course で、10 日(日),11
日(月),12 日(火)の 3 日間参加しました。
このコースは各分野の最先端の治験をまとめて分かりやすく報告する教育的なセッションであり
大変役に立ちました。
あいにく、参加した 3 日間は雪が降り天候には恵まれませんでしたが、会場にはヨーロッパ各国
から沢山のドクターが参加しており、大変熱気に溢れていました。
Scientific program European Vascular Course の中でも、日頃の診療に関係のある大血管関係の
講演を中心に聴かせて頂きました。
やはりステントグラフトの話題が多く、その中でも興味を持った講演は、ドイツの J Kalder 先生が
講演されていた fenestrated anaconda のグローバルデータの話でした。
そ れ に よ る と こ れ ま で fenestrated anaconda は 258 人 に イ ン プ ラ ン ト さ れ て お り 2 枝
Fenestration が 159 名と最も多く 3 枝、4 枝と続き、気になる stent vessel の閉塞に関しては 30 day
follow-up で腎動脈閉塞が 3 人(1.1%),SMA 閉塞が 1 名(0.4%)で 1year follow-up で 1 名の腎動脈
閉塞があったとのことでした。そして 30 day mortality は 7%という結果でした。術後のエンドリーク
に関しては no endoleak が 217 人で type 1 と 3 がそれぞれ 3 人と 7 人で type2 が 28 名という早
期成績とのことです。当院では short neck 症例に対しては open か chimney か visceral
disbranching かの選択をしていますが、この様なディバイスが日本に導入されれば、さらに多くの
患者さんに治療の機会が増えると思いました。その他に日常の診療に直結する講演としては、
Hence 先生の EVAR 後の脚血栓閉塞についての講演で、その発生率から予防法にいたるまで大
変参考になるお話を聴けました。それによると各ステントの脚閉塞率は機種毎に差があり
Excluder:0-16%, Zenith:1.8-5.6%, Endurant: 1.3-3.0%でした。
トータルでの年間脚閉塞発生率は 0-0.4%とのことですが、各研究で発生率に差があり、また最
近の報告では発生率は低下してきているとのことでした。脚閉塞の起きる時期は、6 カ月以内が
最も多く、早いものは 30 日以内に生じるとのことです。
脚閉塞の予防法として確認造影は stiff wire を抜いて行うことや、怪しいところは圧測定を行い
stent 留置し予防することだそうです。
そ の 他 に は Dittmar 先 生 の Decision-making and techniques on hypogastric artery
revascularization の講演も大変勉強になりました。日常の診療で総腸骨動脈にまで動脈瘤
が及んでいる腹部大動脈瘤はよくみかけますが、AAA 患者のうち 20-30%は腸骨瘤を合併
しており、EVAR で治療する際に HA(hypogastric artery)をどうするか考えなければなりません。特
に両側の HA を閉塞する場合が問題となりますが、Dittmer 先生によると、Pelvic Ischemia を予測
する因子としては
2
① 対側の HA が狭窄している場合
② HA の 3 分枝以上を閉塞させる場合
③ Ascending femoral branch がない症例
などだそうです。HA の再建法としては OPEN で bypass を置く方法や chimney technique などお話
されていましたが、中でも Iliac Side Branch Technique(IBD)の成績について発表されていました。
それによると 100 人の患者に行い、technical success 95%, Type Ⅰb EL3%,
殿筋性跛行 4%であり、IBD の Patency は 60 カ月で 91.4%でした。
胸部大動脈に関しては、uncomplicated type B dissection に対する TEVAR の治療成績を
INSTEAD trial や ADSORB trial の結果を用いて講演がありましたが、特に新しい知見はありませ
んでした。
その他には OPEN の演題としては A Haverich 先生が講演された Thoraflex という hybrid の
人工血管を用いた total arch についてお話されていました。この人工血管は従来の4分枝人工血
管の抹消側にステントグラフトがついている構造で、抹消側の吻合がいらなくなるというものです。
これにより深い場所での吻合がなくなり止血が楽になるとのことでした。
以上のようにどの講演も非常に educational で興味深いものでした。
唯一残念だったことは天候に恵まれず寒かったことです。来年は 5 月開催とのことですので、ぜ
ひ来年も参加したいと思いました。
3
3. 氏平 功祐 先生 (市立函館病院)
2013 年の EVC に全日参加させていただきました。
EVAR や TEVAR を中心とする血管内治療だけでなく、open repair に関しても、基本というよりは
日常悩むケースなどにどう対応するか、そこが聞きたかった!という内容が朝から夕方まで詰ま
っており、非常に実りある会でした。
機会を見つけ是非今後も参加したいと思います。
4
4. 河内 秀臣 先生 (日本大学医学部附属板橋病院)
2013 年 3 月 10 日から 12 日に開催された 17th European Vascular Course 2013 に参加させてい
ただきました。オランダのマーストリヒトは連日雪が降り、橋の上では風も強く極寒でした。落ち着
いたヨーロッパの古い町という感じで、とても居心地の良い町でした。会場の MECC までは電車で
通いました。参加者は 58 カ国 1700 人という大規模なもので、その内 200 人が vascular nurse で
あり、看護分野でも日本にはない専門性と意識の高さを感じました。
会場内は各企業の展示スペースがあり、動脈、静脈、vascular access、hands-on 等の会場に
わかれて講義が行われました。できれば全て受講したいと思いましたが、並列で行われていたの
で、私は動脈の会場で講義を聞きました。講義の内容は、最新のテクニックや臨床データが中心
で、2 年前の 2011 年に参加させていただきました 29th ANNUAL UCLA VASCULAR SYMPOSIUM
のような血管外科の基本的な内容ではなく、より発展的な内容でした。受講者も圧倒的に年齢層
が高く、この会の質の高さが伺えました。講義の後に細分化して行われた症例検討も白熱したも
のでした。
今回の経験は私の人生に大きな刺激となりました。日本では体験できない有意義な時間を過ご
すことができました。これを生かし、世界に目を向け臨床にも研究にも益々力を入れて行きたいと
思います。また、日本国内でもこのようなセミナーを開催していただければ、若手血管外科医の
育成、国内血管外科全体のレベルアップ、施設間の連携強化に繋がることだろうと感じました。
最後に今回このような貴重な機会を与えて下さいました血管外科学会の先生方に心より御礼申
し上げます。
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5. 栗田 二郎 先生 (日本医科大学付属病院)
今回、私は当院心臓血管外科 落教授に推薦して頂き、同医局員である芝田匡史医員と共に2
名で参加させて頂きました。普段の学会形式とはひと味異なり、最先端のヨーロッパにおける血
管治療のレクチャーと、各企業による Hands on 要素が色濃く、大変充実した3日間でした。
レクチャーでは、血管外科医が従来の手術手技と、最先端の血管内治療をうまく融合し、より
低侵襲な治療を行っていることに非常に感銘を受けました。例えば、内膜剥離の技術は血管外
科医にとっては普遍的な外科的手技の一つであり、重要性を改めて再認識させられ、血管内外
から総合的に治療していくその姿勢に合理性や柔軟性を感じました。それと同時に、血管内治療
で可能なことがかなり多くなっていることも事実であり、外科医が常にその習得に積極的でなけ
ればならないとも感じました。
会場のトレーニングルームでは、COOK 社のステントグラフトの Hands on に参加し、実際に計
測、選択、ステント留置手技について実技を学びました。芝田先生は、マスターコースに参加され、
ドライラボで他国の先生を前立ちにし、European Vascular Course のスタッフドクターにレクチャー
して頂きながら、腹部人工血管置換術、下肢バイパス術、頸動脈内膜剥離術を学びました。針の
入れ方、角度まで事細かく熱心に教える先生方は非常に気さくであり、細かな点まで御指導して
くださいました。拡大鏡と自分の持針器セットを持参し、参加すると他国の先生からは珍しかった
様で、購入した値段を聞いて大変驚いていた様子は国の違いを感じ、興味深いものでした。
3月でしたが予想以上に寒く、雪が降り氷点下の気温で驚きましたが、オランダ マーストリヒト
は古い街並みが美しく、素敵な場所でした。実際に手に取り、手を動かして学べる数少ない学会
の一つであると感じ、また機会あれば是非参加したいと思い、帰国致しました。帰国後、今後の
診療に役立てたいと思い、落教授はじめ当科医局員には今回の学会内容について報告させて
頂きました。
最期に、この貴重な機会を与えてくださいました日本血管外科学会 理事長 宮田 哲郎先生と
評議員の先生方、ならびに事務局の方々に深く御礼申し上げ、報告とさせて頂きます。
6
6. 戸口 佳代 先生 (東京医科大学病院)
3/10 初日
* 頸動脈狭窄について、現在 AHA(2011), ACAS, VSACST などの6つのガイドラインがあり、頸
動脈狭窄に対する治療方針が confuse していると聞きました。とくに asymptomatic な症例に
ついての明確な基準はないそうで、たしかに、日本国内でも施設によって、まちまちのような
気がしました。
* ブラッドアクセスについて。
アクセス作成ガイドラインについて説明があり、一般に受け入れられている、まず AVF を、と
いう指針でよいが、症例により(ハイリスクになるほど)、AVG(人工血管使用)のほうが適切と
なるアルゴリズムについての説明がありました。アルゴリズムに取り上げられている DISTAL
score について、diabete, IHD, stroke, second, age などのスコアリンングにより、患者予後を考
慮し、シャント発達が見込まれない症例かどうかにより、AVF か、AVG かを判定する基準など
も興味深く聞きました。日本は、腎移植が少なく、腎不全の症例が世界的にみてもほとんど透
析移行している特殊性についても論及がありました。
ブラッドアクセス作成における、エコー診断のテクニックについて、細かい指導があり、実際に
透析患者さんがボランティアとして座っていて、エコーをあてさせてくれるコーナーもありまし
た。
患者さんに、聴診器(安くてもいいので)を買ってもらい、毎日シャントの血流音を聴いてもらっ
ている、という先生の話も興味深く聞きました。シャントが育つには、2mm 以上の径は最低欲
しいというコメントがあり、これも日本と同じようです。術前診断に静脈造影をしている施設も
ありましたが、腎機能を考えると too much のように思いました。
その後 failure to mature(シャント発達不良)についての講義を聞きました。女性、低体重の患
者さんに有意に多く、FTM と診断するのは作成初期(1ヶ月以内)がほとんどであること、また、
eGFR<20 がブラッドアクセス作成の理想的なタイミングであること、やはり橈骨動脈-橈側皮
静脈 AVF が理想的であること、透析導入より前もって作成するのが望ましく、シャント作成し
て 16 週間は待ちたいことなど、大変興味深い内容でした。
* その後 VWING(venous window needle guide)というシャント静脈に縫い付けるデバイスについ
ての説明を受けました。一見指輪のような形の金属ですが、実際に皮膚を切開し、静脈直上
に孔のあいた金属をはめこむことで、透析時に皮膚の上から金属を触れ、その孔を穿刺する
ことで、穿刺が容易となるというもので、肥満して皮下脂肪の厚い人が多い欧米のお国柄な
のか、わりと便利のようでした。今のところ感染は無いそうです。値段は要相談のようでした。
* その後、venous master class の varicose veins diagnostics and treatment というのに参加しま
した。静脈瘤について、エコー診断から、手術、硬化療法、レーザー、最新治療法、弾性靴下
に至るまで、各ブースをぐるぐる 15 分ずつ周り、説明を受け、実技を行なうというもので、非
7
常に効率よく、静脈瘤についての治療を学べるような仕組みになっています。それぞれの教
師よりサインをもらい、最後に参加証明をいただきました。静脈瘤の治療法について、欧州は
やはり進んでいるという印象で、LASER 1470nm(ELVeS)や硬化療法(chemical ablation)はもと
より、レーザーのかわりに蒸気で硬化療法を行なう(steam ablation)ものや、ラジオ波(radio
frequency)、硬化剤(GRF glue みたいな透明の糊)を注入するタイプ(Venaseal)など多種多様
で、それぞれの利点、欠点もいろいろあるようです。いずれも日本には導入されていないもの
でしたが、非常に興味深く学ぶことが多かった class1 です。
3/11 2日目
* シャントトラブルについて、講義を聞きました。
当然のことですが吻合部の狭窄に対する PTA は controversial であること、そこで、self
expandable のステントを留置することもあるそうです。上腕部へ作成したシャントの狭窄は、解
剖学的な理由も多く、橈側皮静脈は腋窩の流入部で、尺側皮静脈は動脈をまたぐ解剖学的
な狭窄のために、狭窄を起こしやすいこと。そのためか、PTA より手術での再吻合のほうが成
績もよく、てっとり早いこともあるとなども参考になりました。
シャント不全に対する抗血栓療法については less or no effect で bleeding side effect のほう
が多い、ただし、fish oil は有効というユニークな意見もありました。
* PAD について。
長い Plaque を削り取るデバイス(plaque debulking というそうです)があり、実際の映像には会
場からどよめきがありました。うまくいくのなら、使ってみたい!と思わせるデバイスでした。
2-4mm×8cm などの下腿用のステントもあり、やはり進んでいるみたいですが、まだデータ
不足とのことです。ただし、今のところ DES は POBA や BMS よりは優れているというのが大
方の意見でした。
ACHILLES study について、上記と同様に patency に優れているそうで、
Focal BTK lesion(3-4cmまでというlimitationあり)はDES 1st choiceでよいと。CLIで多いlong
occlusion, poor run-off症例はDEB(PTX coated)が良いのではという意見でした。また足関節
以下のfoot arteriesについてもDEBでとのことです。
LACI trial について、restenosis の因子は long segment, small lesion, distal location, low flow…
など、予想通りの内容でした。
Zilver PTX3年間の成績発表では patency70.7%で BMS の 49.1%と比較しても、今のところ良好
のようでした。
いずれにしても、日本には導入されていない治療法、デバイスが多かったので、興味深く聞き
ました。
* short/no neck AAA の EVAR について
当然のことながら normal neck より、aortic cuff の使用, endoleak, mortality とも高いとのことで
す。open, FEVAR(fenestrated-EVAR), Ch(chimney)EVAR の比較では mortality は ChEVAR
8
が高かったということで ChEVAR は bail out か、acute の患者さんに使い、FEVAR こそ high risk
患者さんに、という方向性ということです。会場内にも fenestrated EVAR(Anaconda など)を展
示しているブースがあり、日本では上場未定のものでも、丁寧に説明してもらいました。
* その後 EVAR の合併症として、endo graft occlusion について報告がありました。
ほとんどが 30 日以内に発症し、open repair75%, PTA25%ということですが reocclusion30%とい
うことで、多いように感じましたが、そもそも technical error のことが多く(60%)、再閉塞はその
ため、とのことでした。
Hybrid OR でしょうか、透視画像に CT 画像を投影している画像(road MAP)がいくつかあり、
便利だなと思いました。
* その後、case discussions というのに参加してきました。
問題症例を提示し、フロアから自由に発言してもらう形式で、司会の二人の Dr が、君はどう思
う?みたいにマイクを持って回るので、発言しやすい雰囲気です。内容もおおむねわかりやす
く、日本と欧州の違いをふまえ、自分ならこうする、といった発言をしましたが、受け入れは比
較的良好だったように思います。
3/12 3日目
* Training center
というところをのぞくと、頸動脈内膜摘除術の dry labo をやっており、見学しました。実際にや
るには前もって申し込みとお金がいるのでできませんでしたが、気軽に見学できる雰囲気でし
た。
* ブラッドアクセスの vessel tissue engineering について、
また、DES のように抗癌剤を塗りこんだアクセス用グラフトや、
ヘパリンコーティングのグラフト、銀コーティングのものなどがあることを知りました。
* 重症虚血肢について。
PEDIS(perfusion, extend, depth, infection, sensation)の各基準に基づき、1-4(uninfected, mild,
moderate, severe)の grade に分類されるということ、感染創に対する抗生剤の投与方法につ
いてなどを聞きました。
デブリのポイントとしては、do not remove non-infected necrotic tissue, keep it simple だそう
で、参考になりました。当たり前ですが、まずは感染のコントロールをし、潰瘍部のケアを行な
った上で、angiosome に基づいて血行再建をするように、ということです。
抗血栓療法について、PAD に対する十分なエビデンスを持つ薬はまだ十分でない、という内
容でした。ワーファリンも同様だということです。また、Don’t use NSAIDS と言っていたのが印
象的でした。
Viabahn の報告もあり、collateral をつぶして ABI が下がったり、reope が増えた、という意見も
9
あり、covered stent と bypass の成績調査中(VIASTAR trial)とのことでした。
* 静脈うったい性潰瘍について。
Local therapy(wound dressing, compression treatment)が重要であること、Pain control, 患者
の compliance も大事であることなど、納得の内容でした。
まだまだ自分の英語力の乏しさを痛感する日々でしたが、新しい治療方法や欧州での考え方
などに触れ、大変充実した3日間でした。血管外科各分野のエキスパートの先生方の興味深
い話を聞くことができ、また、実技では、非常に丁寧な指導も受けることができ、今後の自分
の医療に、大いに参考になりました。
機会があれば、また、行ってみたいと思います。貴重な機会を、どうもありがとうございまし
た。
10
7. 清水 拓也 先生 (東北大学病院)
まず、このような機会を与えてくださった血管外科学会諸先生方に感謝申し上げます。
EVC2013 では非常に有意義な時間を過ごさせていただき、参加できたことを大変嬉しく思いま
す。
現在、血管外科領域では外科的手術手技のみならず、血管内治療技術やデバイスがめざまし
く進歩しております。
治療手技の低侵襲化に伴い手術適応が変化し、時に日本の臨床現場においては混乱すること
すらあります。
EVC2013 の各講演の主旨は、現在の治療法をこれまでの臨床経験や臨床データからしっかりと
評価することに重きを置いていたと思います。そしてその評価に基づいて将来の血管外科の方
向性を導き出す、という姿勢を強く感じとることができました。
そういった意味で、EVC2013 に参加することで得た知識は、世界のスタンダードをしっかりと見据
えて日常診療を実践できる、といった自信にもつながりました。
EVC2013 では、日本ではまだ一般的ではない未認可のデバイスを使用した臨床データの報告の
みならず、以前から行われているスタンダードな手術手技の評価とその進歩、といった点につい
ても触れられているので、日々臨床現場にたずさわる血管外科医であればどなたでも参加する
意義があると思います。
特に Case discussion は面白かった。世界各国からの参加者の考え方の違い、また、日常診療で
は私達と同じような疑問や悩みを持っている事を知ることができました。
EVC2013 に参加できたことで気持ちもリフレッシュしまた明日からの活力をつけるいい機会とな
りました。ありがとうございました。
11
8. 高橋 聡 先生 (東京医科大学)
此度、日本血管外科学会の援助のもと、第 17 回 European Vascular Course に出席させていただ
きました。場所はオランダのマーストリヒトで、アムステルダムからは遠く、のんびりとした田舎町
といった印象でしたが、町全体が非常に綺麗でした。
3 月 10 日の朝、開会。大会場の Auditorium では、頸動脈疾患に対する治療戦略からスタート
しました。当院では頸動脈疾患は脳神経外科が主に担当していますが、興味深い内容でした。
その後、主には動脈疾患に対する最近の成績や新しい試みが発表されていました。血管外科
の先生がほとんどで、かつ低侵襲という傾向のため、血管内治療用の device が多く紹介されて
いました。
夕方からは各会場で症例検討が行われました。大動脈の会場で、主に動脈瘤や解離に対す
る治療を議論する趣旨です。日本と違って、あらゆる可能性や鑑別を拾い上げて吟味するため、
時間がかかっていましたが、各国の先生方の意見や考え方を聞けたのは参考になりました。主
な流れは、まず血管内治療つまりステントグラフトでチャレンジしてみるということ。これは重症な
患者さんが多く、仕方がないかもしれませんが、開胸開腹手術に踏み切るタイミングがどれも遅
い気がしました。ただ、実際の臨床では全てにおいて最善の判断を下すのは困難ですから、振り
返って議論する意義は大きいと感じました。
3 月 11 日は朝から末梢血管分野での発表を拝聴しました。やはり最新の医療器具で日本では
未承認のものや、最近承認された器具については初期から中期の治療成績の報告がありました。
特に AIOD や para-renal AAA に対する device は興味深い印象を受けました。
また特別講演として、オランダ人宇宙飛行士の Dr. Andre Kuipers の講演があり、宇宙空間で
の経験について拝聴しました。非常に膨大な量のスライドでしたが、トレーニングの過酷さと貴重
な地球を守っていく必要性について学びました。
午後は、MECC の隣に位置する MUMC という大学病院の解剖学教室にお邪魔して、上肢の脈
管解剖についての講習がありました。実際の上肢だけの御遺体を使わせていただき、透析用の
ブラッドアクセス手術に必要な正常解剖を整理できました。続いて、指導の先生の元、実際の手
術も実習させていただきました。組織の剥離、血管の選別、運針の仕方など、現在自分が行って
いる手技と違う部分もあり、非常に勉強になりました。
3 月 12 日は未明からの大雪で交通機関が麻痺し、会場への到着が遅くなってしまいましたが、
可能な限り講義を聞きました。
今回はこのような実りの多い海外学会参加の貴重な機会をいただきありがとうございました。
今回の収穫を今後の臨床・研究に生かしていきたいと思っております。
12
9. 近澤 元太 先生 (心臓病センター榊原病院)
17th European Vascular Course
Maastricht, Netherlands
March 10‐12, 2013
h
Genta Chikazawa
Department of Cardiovascular Surgery
The Sakakibara Heart Institute of Okayama
Where is Maastricht located?.
Okayama→Haneda→London→Dusseldorf→Maastricht
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Dr Michael Jacobs, MD, PhD
Professor of Surgery
Chief Director of Cardiovascular Center
Divison Head of Vascular Surgery
Maastricht University Medical Center
1300 participants
90 invited lectures
Educational Grants
High quality textbooks
・European Vascular Course ( Master )
・European Venous Course ( Master ) ・European Access Course ( Master ) Interactive Case Discussions
Hands‐on workshops
Indications and techniques for Emergency carotid interventions
Dr Falkensammer
Department of Vascular Surgery
Wilhelminen
lh l
h
hospital
l
Vienna, Austria
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・CEAの際の頸動脈へのアプローチは横切開。
(美容的観点からこちらを推奨)。
・緊急手術の際には胸鎖乳突筋前縁に沿った
縦切開。
・局所麻酔が原則:real timeで意識レベルの
が
確認が出来る。患者さんには患側と反対の手
にソフトボールを握らせて、motor functionの
確認を行っている。レベル低下がみられた場
合のみ、シャントチューブ挿入。原則は単純遮
断で行う。再建はeversion technique
・CEAの場合には、術後バイアスピリンのみ。
・CASの場合には、バイアスピリン、プラビック
スの2剤を術前3日前からローディング。術後
は最低3ヶ月継続。
・スタチンは周術期CVA予防の観点からも内服
させることが望ましい。
Future imaging techniques in aortic pathologies and clinical implications
Dr R. Ckough
Department of Vascular Surgery
St Thomas’ Hospital, London, UK
St Thomas
Hospital London UK
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・ little or no elastin content in the aortic wall reduces the compliances of the aorta which normally increases in diameter when the intraluminal pressure rises→エラスチンの大動脈瘤壁の含有量を正確に計ることが
出来れば、大動脈瘤拡大の予測因子の一つとして信頼できる指標に
なる可能性あり。MRIで将来計測できるかも:EVAR後に瘤が拡大、不変、
縮
縮小のメカニズムに大動脈瘤壁のエラスチン含有%が大きく関係して
大動脈瘤壁
ラ チ 含有
大きく関係
いるのではないか
・偽腔の血栓化からみた慢性B型解離のmortalityに関する報告
partial thrombus:22.8%
patent false lumen : 8%
complete thrombus : 5.9%
→不完全な血栓化は偽腔に常に圧がかかった状態から偽腔の継
時的拡大を来たし 慢性期に破裂を来たすリスク↑
時的拡大を来たし、慢性期に破裂を来たすリスク↑
→造影CTで偽腔がエンハンスされないからと言って完全に血栓化
が得られているとは限らない。偽腔への流速が遅ければ、緩除な
血流があってもエンハンスされない可能性が高い
→造影シネMRI検査で将来偽腔への血流が確認できるようになれ
ばUncomplicated type Bに対する急性期TEVAR適応も今後かわっ
てくる可能性があるのではないか。
・primary entryの位置からみた急性B型解離の予後
左鎖骨下動脈分岐部から8mm以内:complicated type B or IIIb
左鎖骨下動脈分岐部から8mm以内:complicated
type B or IIIb R
左鎖骨下動脈分岐部から20mm以上:uncomplicated type B
診断:CTと経食道エコーの併用。
大弯側よりも小弯側のエントリーの方がcomplicated case
になりやすい。
・bicuspid AVと上行大動脈拡大に関する知見
左室長軸像における大動脈弁の開放角度
normal tricuspid valve : 70度→中心流
bicuspid valve : 60度→偏心流:上行大動脈大弯側へのshear stress
増加が上行大動脈拡大の要因。
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Pararenal aneurysms
currently available endografts
Dr T. Resch
Vascular Center
Vascular
Center
Skane University Hospital Malmo, Sweden
Cook Zenith fenestrated stent‐graft
・Chimmneyやsnorkelは腎動脈カバーしてしまった等bail outの緊急症
例に限って使用されるべき。
・定例手術の場合にはfenestratedもしくはオープンで行うのが現時点
では妥当。
・fenestrated endograftが未だ使用できない本邦の現状では、オープン
が第一選択
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対側ゲートにマグネット
リングが付いている
グ
対側ゲートカニュレーションは
Piece of cake でも匠の世界では
なくなってしまうのもカテを極めて
きた者としては 淋しい
きた者としては、淋しい。
Open repair for juxtarenal
aortic aneurysms
Dr R. Chiesa
Department of Vascular Surgery
p
g y
Vita‐Salute University School of Medicine
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直視下右腎動脈ステント挿入
・腎動脈狭窄を伴う症例には入口部から直視下にステント留置
を行った後、腎動脈再建を行う
・Direct reimplantation or graft interposition
・Interpositionのグラフトサイズは通常6mm
・腎保護液は必ず使用する
・切離した左腎静脈は必ず再建する。
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Ruptured AAA : State of the art management for successful EVAR
Dr D. Eefting
Department of Vascular Surgery
Erasmus University Medical Center
Erasmus University Medical Center
・hypotensive hemostasis 50‐60mmHgの低血圧でなんら問題なし。乳酸リンゲ
ルなどの外液製剤を使 た急速輸液は行わないこと
ルなどの外液製剤を使った急速輸液は行わないこと。
・bilateral groin cutdown under local anesthesia rAAAに対するEVARこそ局所麻酔の良い適応
全身麻酔導入後の急激な循環虚脱状態を回避
rAAAのほとんどの患者は局所麻酔と抗ヒスタミン薬
(アタラックスP)の静注で疼痛コントロールが可能。
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・supraceliac aortic balloon control in case of severe circulatory collapse
実際には局麻で手術が遂行できる限りバルーン遮断を必要
とするケースはほとんどないとのこと。開腹適応で全身麻酔導
入後の循環虚脱状態に対してむしろバルーンコントロールが
後 循環虚脱状態 対
む ろバ
が
必須かつ有効。血行動態が不安定な状態で開腹すると泥沼
にはまる。
・対側ゲートカニュレーションに時間がかかるようなら、AUI+F‐
Fクロスオーバーバイパスを躊躇すべからず。破裂症例は一
刻も早くaneurismal sac exclusionを行うことが重要
刻も早くaneurismal sac exclusionを行うことが重要。
・ACSが強く疑われる場合には、開腹して腹腔内血腫除去後
suction/sponge (VAC)ドレッシングを行う。
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OPEN tube graft
EVAR bifurcated
AUI+F‐F bypass
Advanced endovascular techniques
for thoracic and abdominal aortic dissections
Dr T. kolbel
Department of Vascular Surgery
Department
of Vascular Surgery
University Heart Center
Hamburg‐Eppendorf Clinical University
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真腔
真腔へのワイヤーリングが重要
ワイヤ リング 重要
・内腸骨動脈は必ず真腔から起始している
→contralareral 30度で内外分岐部が分離でき
るviewで造影して真腔へのアクセスルートを
確認。
・IVUS使用はより確実な方法だが、時間がか
かること、コストがかかる。
・左腕頭動脈穿刺:左鎖骨下動脈から真腔へ
のワイヤーリングは比較的容易。 Tag of wire
でデリバリー
Transapical approach for Type A aortic dissection
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RELAY thoracic stent‐graft system
・Bolton Medical社のRELAYを用いた急性A型解離に対するTEVAR治療がヨーロッパ
では既に開始されている
・Transapical approach TAVI(左第五肋間開胸)と原則的にはデリバリーの方法は同じ
・シース抜去後のclosure deiviceも現在開発中
3D VR fusions with the live fluoroscopic images 真腔は黄色、偽腔を赤で色分けし
た3D VR画像を透視の画面に合成
して投影→解離症例のTEVARにお
けるマッピングに有効。
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真腔が狭小した慢性B型解離には
Zenith Dissection Endograftは使用すべきではない
Intended false lumen deployment of endografts for chronic type B dissection 中枢と末梢のランディングゾーン
は真腔内にendograftを留置させる
真腔
偽腔
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Intentional LSCA coverage without revascularization during TEVAR
Dr A. Greiner
Department of Vascular Surgery
p
g y
University Hospital
RWTH Aachen, Aachen, Germany
どのような症例に1‐debranchが必要か
・long segment aortic coverage
p
g
g
・prior Y‐grafting for AAA
・concomitant infrarenal aortic pathology
・occluded hypogastric arteries
・renal insufficiency
・hypoplastic RVA
・Patent LITA for CABG
・Expected intraoperative prolonged arterial E
di
i
l
d
i l
hypotension such as ruptured case
フロアーからの全体的な意見としては、LSCAは積極的に再建すべき
というのが大多数であった。
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Decision‐making and techniques in
hypogastric artery revascularization
Dr P. Geisbusch
Department of Vascular and Endovascular Surgery
Haidelberg University Hospital, Germany Clinical criteria ・young, physically active patient ・sexually active patient, ・high risk of paraplegia / previous or concomitamt TAAA repair
Anatomic criteria ・ Contralateral HA occlusion
・Contralateral HA stenosis>70%
・absence of femoral ascending branches
( 大腿動脈分枝と内腸骨動脈との間の側副
路発達が乏しい症例)
・impaired arterial collateral network such as SMA stenosis
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Iliac side branch technique
: bifurcated iliac endograft with a covered stent
Modified sandwich technique
Modified sandwich technique
現在は孤立性総腸骨動脈瘤に対しては、IIAコイル塞栓してEVAR legを挿入するのが
当科における基本治療戦略→今後は内腸骨動脈を温存、再建するendograftの登場に
によりストラテジーが進化していくものと期待される。
Surgical and endovascular treatment of occlusive aortic syndrome
Dr H. Verma
Narayama
y
institute of Vascular Sciences
Narayama Hrudayalaya hospitals
Bangalore, India
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Endo‐to‐endo proximal anastomosis
・Hemodymamic superiority
・Better long term patency
・Decrease chances of aortoenteric fistula
・Easier closure of the retroperitoneum over the graft Endo to side proximal anastomosis
・Limitted dissection
・Bigger proximal anastomosis
・Preservation of distal antegrade flow to the hypogastric, IMA, and Las
→reduced incidence of impotence, colon ischemia or paraplegia
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Distal anastomosis : Iliac vs Femoral Iliac anastomosis
・avoidance
avoidance of SSI of a groin incision
of SSI of a groin incision
・lesser incidence of impotence or colon
Ischemia
Femoral anastomosis
・CEA can be performed for CFA and DFA
→long term patency ; femoral > iliac
総括
・Registration当日に配布されるTextが充実している→前日に
Textで予習をして臨むとヒアリング力を含め、理解力が深まる。
・血管領域におけるEVTの著しい進化を改めて実感。
血管領域におけるEVTの著しい進化を改めて実感
・季節外れの大雪で交通網麻痺→時間的余裕のある渡航スケ
ジュールが重要
Japanese Physicianの参加が非常に少なかったのが残念
Physicianの参加が非常に少なかったのが残念
・Japanese
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10. 中村 都英 先生 (宮崎大学)
2013 年 3 月 10,11,12 日にオランダ、マーストリヒトにて開催された EVC2013 に参加した。3 日
間にわたる講演では血管外科に必要な解剖やステントグラフト挿入術および開胸や開腹手術の
適応や手技の最新の知識がすべて得られるように構成されていた。
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療では最新の fenestrated graft について、腎動脈へ
の分枝挿入法や内腸骨動脈血流温存の重要性とそのための種々の工夫(bell bottom technique,
sandwich technique, branch technique)等が発表された。胸部大動脈瘤に対するステントグラフト
治療では advanced technique(Petticoat stent graft, intended false lumen deployment, paving and
plumbing technique)が数多く紹介された。更には胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
法と脊髄機能に対する報告もあり、初めて得る知識の多さに驚くことが多かった。
一方、外科手術についての発表も多く、傍腎動脈腹部大動脈瘤や胸腹部大動脈瘤手術の美
しいビデオには学ぶ点も多かった。
また、多くの機械展示や企業のブースには最新の機械、器具及び医療情報が手に入るように
なっていた。英語に自信があれば多くのウエットラボも開催され、自由に参加可能であり、教室か
ら医局員を毎年参加させたくなる内容であった。
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11. 中村 哲哉 先生 (日本大学医学部附属板橋病院)
2013 年 3 月 10 日から 3 月 12 日までの 3 日間、17th Europian Vascular Course に参加する機会
を頂きました。
この会議は、例年オランダ マーストリヒトで開催されており、ヨーロッパ血管外科の教育と活
性化を目的としていましたが、今では 58 ヶ国から総勢1700人(M.D.1200 人、vascular nurse 200
人、医療関連企業 300 人)もの参加があり、レクチャー・企業ワークショップ・マスタークラス・ケー
スディスカッションが盛大に開催され、テキストも作成配布されていました。
主催は Maastricht University Medical Center
の Professor of surgery であり Director of
cardiovascular Center である Dr. Michael J Jacobs でした。マーストリヒトはオランダ南東端部、
マース川沿いの河港都市。ドイツとベルギーの国境線にも近く、EU(ヨーロッパ連合)に関する条
約であるマーストリヒト条約が締結されたことで有名で、大田区程の広さに12万人の人が生活す
るこじんまりと落ち着いたきれいな町でした。
会場となった MECC Maastricht は maastricht 大学に隣接した国際会議場で広々としたフロア
が印象的でした。Registration を済ませると次に学会編集の教科書とも言うべき EVC2013 と銘打
たれたハードカバーの書籍を受け取りました。この教科書は動脈本と静脈本が準備されており参
加者はどちらか一方を選択しなければなりませんでした。
3 つの会議場を使って動脈疾患、静脈疾患、blood access についてそれぞれ同時進行で講義
は進行しました。講義形態は、通常の学会と同様に座長が進行し演者が 15〜20 分ほど発表。発
表後にフロアからの質問を受けるといった形式でした。動脈の講義は初日に頸動脈、胸腹部瘤、
2 日目、3 日目は動脈瘤と PAD がみっちりと組まれておりました。
さらに、講義と平行開催として Masterclass というハンズオンセミナーが動脈、静脈にありました。
残念ながらこれには参加できませんでしたが、著明な先生に直に指導を受けられるようで、参加
費は高価ですが大変魅力的な企画だと思いました。
帰路には、季節外れの大雪のため飛行機が over-booking となり、仁川経由となるハプニング
も経験し、至る所で貴重な経験ができました。
このような貴重な機会を与えてくださった血管外科学会の海外派遣選考委員の先生方、どうも
ありがとうございました。
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12. 服部 努 先生 (日本大学医学部附属板橋病院)
マーストリヒトは オランダ 南東端部に位置する マース川 沿いの河港都市で、人工 12 万人の小
さな州都である。そのマーストリヒトで第 17 回European vascular coarseは開催された。58 カ国、
1200 名の医師、200 名の血管看護師を含む 1700 名が参加し多くのワークショップ、レクチャーな
どで最新のモダリティ、手術手技が紹介された。春のオランダと言えばチューリップが容易に想像
され暖かい穏やかな気候のイメージであるが、当日は猛烈な吹雪で気温も氷点下、交通機関も
大幅に乱れているほどであった。
会 場 内 は Scientific program と し て ①European vascular course②European venous
course③European vascular access course の 3 つ 、 Workshop と し て ①Vascular
Workshop②Venous Workshop の 2 つ 、 Master Class と し て ①International vascular master
class②European Venous Master Classes の2つのコースが開催された。朝 8 時から夕方までぎっ
しりと詰まったスケジュールの中、会場内の各セッションは活発な討議で盛り上がっていた。また
半地下の Lobby では各メーカーの最新のモダリティの展示、1 階でも同様にホスピタリティスペー
スを伴ったトレーニングセンターがあり、休憩時には大変な人で賑わっている状況であった。
私は European Vascular course に全日程参加した。PAD 領域ではやはり CTO 病変に対する
CART・reversed CART・double balloon technique、また DES だけでなく DEB の中期成績、膝下病
変に対する下腿 3 分岐からのマイクロカテーテルを用いたシースレス bi-directional アプローチな
どアクティブに発表されていた。動脈瘤のステントグラフト治療は最新のモダリティに驚愕した。
2008 年ドイツ留学時に経験したものを遙かに凌駕するほどデバイス以上にモダリティが進歩して
いた。特に胸腹部瘤、慢性解離に対する F-TEVAR, B-TEVAR は最新のワークステーションなくし
ては不可能と思えるほどで、三次元構築した CT 画像を 3D ロードマップ化し煩雑な分枝型ステン
トグラフトを容易に可能にしていた。また分枝型ステントグラフトは Fenestrated よりも branch が分
岐する部位のボディが細くカニュレーション操作のワークスペースを確保している branched タイプ
が主流になっていた。弓部は日本同様、TAR+ET と TEVAR での周術期脳梗塞合併が議論とな
っていた。
3 日間とおしてヨーロッパの最新の治療、デバイス、モダリティに触れ学ぶことができ大変有意
義であった。日本血管外科学会にはこのような貴重な機会を与えていただき大変感謝している。
日本でも若手血管外科医を中心としたこのようなトレーニングコースを含めた血管外科コースが
近い将来開催されることを強く希望したい。
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13. 林 忍 先生 (済生会横浜市東部病院)
この度、血管外科学会のご高配により、オランダのマーストリヒトで開催された 17th European
Vascular Course に参加させていただきました。
大きく静脈疾患、動脈疾患に分かれてのセミナーでしたが、私は今回、静脈のレクチャーをメイ
ンに聴いて参りました。特に、印象に残ったのはアメリカの prof.Elias による ClariVein という全く新
しい静脈瘤治療システムの紹介でした。本法はレーザーやラジオ波を使用せず、全く熱の発生し
ない方法です。最初に先端の湾曲したワイヤーで静脈に攣縮を起こした上で糊(液状硬化剤)を
注入して静脈瘤を治癒せしめる方法です。TLA 麻酔や局所麻酔も不要で火傷も起こさないため、
極めて低侵襲といえる治療法であり、今後、臨床使用の結果次第では、我が国に導入されること
も期待されます。
その他には静脈血栓症(VTE)の管理の欧米での現況や CDT と妊娠の関連性、DVT 後の PE
の発生率の最新データなど、日常の臨床に有用な多くの知見を得ることができました。
また、展示ブースにおいては、ついに出たかという感のカテーテル操作ロボットに驚きました。放
射線被曝がゼロになり、遠隔操作も可能なこのロボットは動きも想像以上に精密で、すでにアメリ
カの20病院で臨床応用されていることにも納得いたしました。10 年後、日本にも導入されている
のでしょうか・・・。
マーストリヒトはベルギー、ドイツ国境に近く、アカデミックで文化の薫り高い街でした。食事も
美味しく、日常の臨床の忙しさから少し逃れることができたという意味でも有意義でした。
また機会があれば是非参加してみたいと思います。ありがとうございました。
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14. 肥田 典之 先生 (愛知医科大学)
今回日本血管外科学会の参加費援助をいただき、3月 10 日から 12 日までオランダ、マーストリ
ヒトでの European Vascular Course 2013 に参加してきました。これまで当科からは過去 2 年 1 名
づつ EVC に参加しており、その様子や意義を聞いており、大きな期待を持って現地に向かいまし
た。
初日から 3 日目まで基本的にはメインホールでの講演を聴きました。特に頸動脈、胸部、腹部
動脈瘤、末梢動脈と我々が普段日常的に取り扱っている分野に関しての講演が充実しており、
現在のヨーロッパでの topics につき、知見を広めることができました。その中でも特に血管内治
療(AAA、TAA、TAAA に対するステントグラフト、ASO に対する血管内治療)に関してはヨーロッパ
の現状を知ることができたと思います。日本ではまだ一部の施設でしか普及していない、弓部大
動脈瘤に対するデブランチ法やチムニー法、胸腹部大動脈瘤に対する開窓式ステントグラフトな
どの経験についての講演はとても興味深く聴くことができました。また ASO では浅大腿動脈領域
から下腿動脈までまだ日本では認可されていないデバイスに関してもその経験、成績を知ること
ができました。
またワークショップなども充実しており、最新のデバイスのトレーニングやハイブリッド手術室の
見学などはもちろんのこと、献体の一部を用いた模擬手術などちょっと日本では考えられないワ
ークショップなどもありました(こちらは参加しませんでしたが)。
講演の合間の休憩時間(コーヒーブレーク)には日本から参加されていた他施設の若手の先生
と情報交換をしたり、私はドイツへの留学経験がありましたので、ドイツ人の先生方と歓談できた
りと有意義な時間が持てました。
マーストリヒトという街自体もこじんまりとしてはいましたが、オランダの中でもグルメの街のよう
で、食事に関して楽しむことができました。
ただ天候に関しては大雪が降ったため、帰りの交通機関が麻痺状態となっていました。本来な
ら 2 時間程度で帰ることができるところが 6 時間かかって帰ったのも、海外ならではの予想外のア
クシデントでした。
以上短い滞在期間ではありましたが、非常に充実した 3 日間を過ごすことができ、大変満足の
いくものでありました。もし機会があるのであればまた参加したいと思っております。
今回の参加費援助につきまして学会本部には大変感謝しております。これからもこういった援
助が継続されることを切に願っております。
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15. 深澤 万歓 先生 (国立循環器病研究センター)
3 月 10 日から 12 日の 3 日間 オランダ、マーストリヒトにて毎年開催され、今回 17 回目を迎える
European Vascular Course に、日本血管外科学会の奨学金にて参加させていただきました。
まずマーストリヒトの立地ですが、オランダの南端に位置し、ドイツ、デュッセルドルフやベルギ
ーのブルッセルが最寄りの国際都市となります。私はデュッセルドルフより無料送迎バスに乗っ
て前日にマーストリヒトに入りました。バス停にてベラルーシより参加の研修医と出会い、国の外
科専門医システムについて話したり、自らの選択したコースについて話しをしながら過ごしました。
彼はなかなか手技の向上の機会が少ないとのことで International Vascular Masterclass という人
体のモデルを利用して各部の血管吻合をヨーロッパの一流の surgean の指導のもと 3 日間集中し
て学ぶコースを選択していました。私は Vascular Master Class というセンターホールでの座学お
よび、個室での Case discussion を中心とするコースと有料のマーストリヒト大学での御遺体を利
用させて頂き、腕の解剖からシャントの作成まで具体的に指導いただくコースに参加しました。
座学に関しましては、大動脈から末梢動脈まで全身の血管における最先端の業績や Device
の紹介、各国の病院の工夫、成績を報告していました。胸腹部大動脈のテーマではステントグラ
フトと open surgery の最新の成績、各病院の工夫から、問題点について様々な議論や提案がな
されていて大変勉強になりました。
また Case discussion では stentnist および surgean による治療に難渋した症例を、状況に応じ
た最善の対応を考える形式で、振り返るもので、非常に活発な議論がなされ、非常に勉強になり
ました。驚く事に、日本から荻野先生を始めとする東京医大の先生方が参加されており、日本か
ら有名な surgean が来ているから意見を聞いてみようと、ご意見番として紹介されていらっしゃっ
いました。またフィリップス、Cook のブースで具体的にステントの計測法、手技の手順等学びまし
た。会の合間の break time では茶菓子、コーヒーが振る舞われ、lunch も立食形式で楽しめました。
会の終了後は連日、荻野先生方にお誘いいただいてマーストリヒト市街の有名な魚介のおいし
いレストランや、地元料理のお店に連れて行っていただき非常にリラックスして楽しい時間を過ご
す事ができました。英語圏でステント先進の地で生の声を聞けた事は非常に有意義で刺激にな
りました。ありがとうございました。
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16. 吉田 有里 先生 (旭川医科大学)
今回は血管外科学会より参加させて頂きありがとうございました。
初めての海外での学会・勉強会ということで、非常に緊張して向かいました。EVC では、普段
疑問に思っていることや、日常診療のなかでの我々のスタンダードが世界ではどうなのか?とい
うことを、目の前で知ることが出来る良い機会でした。毎日の臨床の中では超絶な忙しさに埋も
れてしまい、自ら世界を広げていかないとグローバルな視点がもてないのではないかと感じまし
た。同じメンバー、チームの中で毎日ルーチンに行っていることや、考えていることが、一歩外に
出た時にどうなのか?というのを常に考える必要があると思うきっかけになりました。
今回の EVC では、最近の話題や、新しいデバイスについての検討などがなされていました。ま
だ日本では承認されていないデバイスを使用した治療についても、多くの発表がなされており、
興味深かったです。
そして、EVC でのもう一つの大きな経験は、マーストリヒトでの日本人との出会いです。他の病
院の先生方と会場でお会いして、交流を持つことが出来たということ、そして、日本の若手・中堅
の心臓血管外科医が今どんなことをしていて、どんな風にスキルアップをしているのか、どんなこ
とを考えているのかを聞く良い機会でした。海外で新しいことを見聞きしながら、そういった諸先
輩方とお話しする機会が出来たのは、私のような駆け出しの心臓血管外科医にとっては、非常に
大きな刺激となりました。
EVC での医学的見聞はもちろんそうですが、それ以外にも多くのことを知り、いろいろなことを
考えるきかっけを頂き感謝しております。また、長期間の学会参加で職場の先生方にはご迷惑を
おかけしましたが、快く送り出してくださり大変感謝しております。
今後もこのような機会があったら是非参加させていただきたく思います。ありがとうございまし
た。
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