ドセタキセルによる 治療を受けられる方へ

ドセタキセルによる
治療を受けられる方へ
〜お薬の紹介と副作用への対策〜
監 修
国立がんセンター中央病院 腫瘍内科
勝俣 範之
JP.DOC.06.04.09(TXT183A)
2006年5月作成
● はじめに
もくじ
ドセタキセルによる治療を始める前に
■はじめに………………………………………………………………… 2
ドセタキセルによる治療を始める前に ………………………………………… 2
■がんと化学療法について ……………………………………………… 3
がんとは? …………………………………………………………………………… 3
この冊子では、ドセタキセル
(商品名:タキソテール®)
による治療を安全に
受けていただくことができるよう、ドセタキセルの主な副作用とその対策、副
作用による負担をできるだけ軽くするための日常生活の工夫などについて、
………………………………………………………… 4
主なことがらをまとめています。不安な点やわからないこと、さらに詳しく
がん化学療法とは? ………………………………………………………………… 4
知りたいことなどがありましたら、ご遠慮なく担当の医師や看護師、薬剤師に
抗がん剤による副作用はなぜ起こるのですか? ………………………………… 5
おたずねください。
がんに対する治療法は?
■ドセタキセルについて ………………………………………………… 6
ドセタキセルとはどんなお薬ですか? …………………………………………… 6
ドセタキセルはどのように投与するのですか? ………………………………… 7
■ドセタキセルによる治療で予想される副作用について …………… 8
いつごろ、どんな副作用が起こるのですか? …………………………………… 8
アレルギー ………………………………………………………………………… 9
10
骨髄抑制による感染症 ………………………………………………………… 11
浮腫
(むくみ) …………………………………………………………………… 13
下痢 ……………………………………………………………………………… 15
涙目 ……………………………………………………………………………… 15
疲労感(倦怠感) ………………………………………………………………… 16
発疹 ……………………………………………………………………………… 17
皮膚炎 …………………………………………………………………………… 17
爪の変化 ………………………………………………………………………… 17
口内炎 …………………………………………………………………………… 18
味覚の変化 ……………………………………………………………………… 18
吐き気、嘔吐、食欲不振 ………………………………………………………… 19
しびれ …………………………………………………………………………… 20
筋肉・関節の痛み………………………………………………………………… 20
■Q&A ………………………………………………………………… 21
日常生活について ……………………………………………………………… 21
サプリメントについて…………………………………………………………… 22
■メモ …………………………………………………………………… 23
脱毛 ………………………………………………………………………………
1
下記の項目に該当する方は、
あらかじめ必ず担当の医師にお伝えください。
2
●市販されているものも含め、現在何らかのお薬を使用中の方
●他の医師または歯科医師による治療を受けている、またはこれから
受けようとしている方
●以前にお薬の内服や注射などの治療を受けて、発疹(皮膚のぶつぶ
つ)やかゆみ、あるいは強いアレルギー症状(気管支けいれん、全身
性の皮膚症状、低血圧など)
が現れたことのある方
●妊娠している、あるいは妊娠している可能性のある方
●アルコールに過敏*の方、アルコール不耐症**の方
*:注射時のアルコール消毒で皮膚が赤くなる
**:少量の飲酒で顔や全身が赤くなったり、具合が悪くなったりする
(心拍数が上がる、
呼吸が乱れる、吐き気がする、など)
● がんと化学療法について
がんとは?
私たちのからだは、数十兆個の小さな細胞の集合体としてかたち作ら
がんに対する治療法は?
がんに対する主な治療には大きく分けて
「局所的治療」
と
「全身的治療」
れています。正常な細胞は、それぞれ規則的に分裂を繰り返して増殖し、
があります。がんを切除して取り除く手術療法と、放射線をあててがん
一定期間の寿命を終えると消滅していきます。ところが何らかの原因で
細胞を死滅させる放射線療法が「局所的治療」にあたります。
「全身的
このサイクルに異常が起こると、その細胞は急激に、限りなく増殖して
治療」
は薬物を血流に乗せ全身にくまなく行き届かせるもので、ホルモン
いきます。このような異常な増殖を始めた細胞を
「がん細胞」
、がん細胞
療法や化学療法、分子標的療法などがこれにあたります。
のかたまりを
「がん
(悪性腫瘍)
」
と呼んでいます。
多くのがんは全身に拡がりやすい性質をもっており、放置するとから
だの正常な機能を損ない、生命を脅かすことになります。
がんが発生した臓器から他の臓器に拡がることを「転移」と呼びます。
たとえば、乳がんが転移して肺にがんが見つかった場合、それは「肺が
局所的
治療
全身的
治療
●手術療法
●放射線療法
●ホルモン療法
●化学療法
ん」
ではなく
「乳がんの肺転移」
であり、乳がんに対する治療を行います。
●分子標的療法
3
4
がん化学療法とは?
「抗がん剤」と呼ばれるお薬による治療をがん化学療法といいます。
抗がん剤にはがん細胞の増殖を抑えたり死滅させたりする働きがあり、
全身に拡がったがん細胞をたたく有効な手立てとなります。また、手術後
の再発を防いだり、がんによる症状をやわらげ、患者さんの日常生活を
より良い状態に維持したりするという大切な役割も担います。
抗がん剤には内服薬や注射薬などがあ
り、がんの種類や患者さんの状態、治療方
針などによって、それぞれの患者さんに
もっとも適したお薬が選択されます。また、
より高い効果を期待して他の抗がん剤と組
み合わせたり、放射線療法と組み合わせた
りすることもあります。
● ドセタキセルについて
抗がん剤による副作用はなぜ起こるのですか?
抗がん剤は体内に入ったあと、血液の流れに乗って全身に運ばれ、
ドセタキセルとはどんなお薬ですか?
ドセタキセル(商品名:タキソテール ®)は、ヨーロッパイチイという樹
がん細胞を攻撃します。ただ、このとき抗がん剤はがん細胞だけでなく
木の針葉から取り出した成分で作られた抗がん剤で、
「タキサン」と呼ば
正常な細胞も傷つけてしまうことがあり、これが有害な副作用となり
れるグループに属しています。ドセタキセルは、がん細胞が分裂する際
現れてしまいます。
に現れる「微小管(びしょうかん)」に働きかけ、がん細胞の分裂を阻止す
がん化学療法においては、副作用は避けて通れないものですが、副作
る作用をもっています。世界100ヵ国以上で使用されており、日本では
用が現れるのを最小限に抑えながら、効果を最大限に引き出すことが
乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がん、卵巣がん、食道がん、
大切です。このため、がん化学療法は、副作用の現れ方と効果のバランス
子宮体がんの治療に用いられています。
を秤(はかり)にかけながら進めていくことになります。
抗がん剤による副作用の種類や程度はお薬によって違いがあり、個人
差も大きく関係します。最近では、抗がん剤による副作用をやわらげる
なお、
「タキサン」
には他にパクリタキセル
(商品名:タキソール®)
という
お薬があります。ドセタキセルとは用法・用量や、副作用の種類・程度な
どが異なります。
ための治療法が進歩したことにより、副作用と上手に付き合いながら治
療を続けられるようになってきました。
5
6
しゃく
聖徳太子のもつ笏は
イチイで作られたと
いわれています。
■ヨーロッパイチイ
● ドセタキセルによる治療で予想される副作用について
ドセタキセルはどのように投与するのですか?
ドセタキセルは静脈から点滴注射によって1時間以上かけて投与しま
す。それを3〜4週間ごとに繰り返すのが一般的です。
ドセタキセルの効果をより高めるために、また副作用を抑えるために、
他のお薬と組み合わせて投与することがあります。状況によっては、通
院しながら外来でドセタキセルによる治療を受けることも可能です。
治療内容は患者さんによりそれぞれ異なりますので、詳しいことは担
当の医師におたずねください。
いつごろ、どんな副作用が起こるのですか?
副作用には個人差があり、すべての患者さんに現れるとは限りません。
また、副作用の種類や程度などもさまざまです。副作用の中には重症化
すると危険なものもありますが、早い段階で気づいてすぐに対応すれば、
あまり心配はいりません。
副作用の現れる時期は、副作用の種類によって異なります。ドセタキ
セルでよくみられる副作用と、現れやすい時期をまとめました。
時
期
当日
(点滴中)
◆ドセタキセルの点滴注射を受ける際の注意点◆
ドセタキセルによる治療を安全に受けていただくために、点滴注
射中は以下の点にご注意ください。
当日〜数日
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●お薬が血管の外に漏れないよう、点滴注射中は安静にしていてください。
●点滴注射中に注射部位が腫れたり、痛みや灼熱感
(焼けるような熱さ)
を感じ
たりする時は、近くにいる医師や看護師、薬剤師にすぐにお知らせください。
数日〜数週間
●点滴注射中に息苦しくなったり、胸が苦しくなったり、吐き気がするなど、
少しでも気分が悪くなったら、我慢せずに、近くにいる医師や看護師、薬剤
師にすぐにお知らせください。
数週間〜
数ヵ月
主な副作用
アレルギー
発 疹
吐き気・嘔吐
8
骨髄抑制
脱 毛
筋肉・関節の痛み
下 痢
口内炎
味覚の変化
浮腫(むくみ)
しびれ
疲労感(倦怠感)
爪の変化
涙 目
予想される副作用につ
いてあらかじめ必要な
対 策を立てておくと、
症状の悪化を防ぐこと
ができます。
次ページ以降に示す副作用の内容と注意点をよく読み、医師や
看護師、薬剤師の指示にしたがって、適切な対応を心がけるよ
うにしてください。
☞
アレルギー
脱毛
点滴中にアレルギー症状が現れることがあります。その多くは軽い症
治療を開始してから3〜4週間が経つと、ほとんどの患者さんは髪の毛
状ですが、まれに、急に血圧が下がるといった症状が起こることもあり
が抜けてしまいます。これは、毛髪を作る細胞(毛母細胞)では細胞分裂
ます。点滴中に次のような症状が現れたり、少しでもおかしいと感じた
が活発に行われているため、抗がん剤の影響を受けやすいからです。
りしたときは、近くにいる医師や看護師、薬剤師にすぐにお知らせくだ
また、眉毛やまつげなど、すべての体毛が抜け落ちることもあります。残念
さい。
ながら今のところ脱毛を予防する有効な方法はありませんが、脱毛は一
時的なもので、治療が終われば3ヵ月ほどで再び髪が生え始め、それから
◆こんな症状があったら連絡を!◆
●息苦しい
日常生活のポイント
●胸が苦しい、痛い
●心臓がドキドキする
●発疹(皮膚に赤いぶつぶつ)が出る
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約半年でもとの状態に戻ります。
アレルギー症状は、
多くの場合、点滴を
始めてから10 分以
内に起こります。
●髪の長い方は治療が始まる前に短くカットしておくとよいでしょう。
●かつら、帽子、バンダナ、スカーフなどを用意し、上手に利用しましょう。かつらで
イメージチェンジを楽しんでいる方も多いようです。
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●からだがかゆい
●髪に刺激を与えないように、次の点に注意しましょう。
●顔がほてる
・シャンプーは中性のものを使用しましょう。
●汗が出る
・洗髪の際は強くこすらないようにし、自然に乾燥させましょう。
・ブラシは目の粗いものを使い、ブラッシング
の回数も減らしましょう。
・頭皮を直射日光にあてないようにしましょう。
重要! 次のような方は前もってお知らせください!
これまでに他の薬で強いアレルギー症状(気管支けいれん、全身性の
皮膚症状、低血圧など)を起こしたことのある方、また、アルコールに過
敏な方やアルコール不耐症の方
(P2参照)
は、ドセタキセルによる治療を
受ける前に必ず医師や看護師、薬剤師にお知らせください。
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
新しく生えてきた
毛髪は、色や質が
以前と変ることが
あります。
骨髄抑制による感染症
それぞれの患者
血液の中には白血球、赤血球、血小板という血球成分があり、それらは
さんで好中球数
骨髄という、いわば血液産生工場で作られています。骨髄の機能が抗が
の減少の程度は
ん剤の影響を受けて低下することを骨髄抑制といいます。
異なります。
ドセタキセルの治療により、細菌からからだを守る役割を担う白血球、
特に好中球という成分が一時的に著しく減少し、からだの抵抗力が低下
して風邪や肺炎などの感染症が起こりやすい状態になります。
時期や程度には個人差があります。好中球の数はドセタキセルの点滴
白血球(好中球)の減少は、抗がん剤による治療を受けているほとんど
後7〜10日くらいに最も少なくなり、2〜3日続きますが、次の点滴ま
の患者さんに起こります。しかし、そのような患者さんすべてが感染症
でにはもとの値に戻ります。白血球・好中球の減少は自覚症状がありま
にかかるというわけではありません。感染症は日頃の簡単な注意で予防
せんが、点滴後1〜2週間くらいは感染しやすい時期ですので注意が必
することができます。
要です。
感染症は重症化すると全身の臓器が正常に働かなくなるなど、命に関
11
わることもある危険な合併症です。しかし、早い段階で気づけば、抗生物
質を使用したり、好中球を増やすお薬を使って治療したりすることがで
きます。またドセタキセルの投与量を調節したり、投与を延期したりす
ることもあります。
次のような症状が1つでも現れた場合は、すぐに担当の医師や看護師、
薬剤師に伝え、指示にしたがってください。
◆こんな症状があったら連絡を!◆
●38℃以上の熱がある
特に、発熱と下痢
が同時に起こった
場合は注意!
感染症にかからないために
日常生活のポイント
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●外出から帰ったとき、食事の前、トイレの後には、石けんを使って手をよく洗い、
こまめにうがいをしましょう。
●なるべく毎日入浴し、からだを清潔に保ちましょう。また、肛門の周りを清潔にし
て、傷つけないように注意してください。可能であれば温水洗浄便座(ウォシュ
レット®など)
の使用がおすすめです。
●歯ブラシは、口の中を傷つけないように、やわらかい歯ブラシを使ってやさしくみ
がきましょう。
●人ごみはなるべく避けましょう。また、風邪をひいている人には近づかないように
してください。
●せきが出る
か
ら
わ
や
●寒気がする
●のどの痛みがある
●排尿時に痛み、焼けるような熱さを感じる
●腰やわき腹に痛みがある
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
●食事に気をつけましょう。
浮腫
(むくみ)
・塩分のとりすぎに気をつけましょう。
むくみはドセタキセルに特徴的な副作用です。むくみは血液中の水分が血
*
管外にしみだして 、からだの中にとどまった状態です。まれに靴が履けな
くなることや、心臓に負担がかかる場合がありますので、日常生活では体
重や食事などに注意してください。
*ドセタキセルの影響を受けて血管の浸透圧に変化が起こり、血液中の水分保持作用があるタン
パク質が血管外に漏れだすことが原因と考えられています。
塩分のとりすぎはむくみの原因になります。食塩の摂取量は1日10g以下を目安
としてください。
・水分のとりすぎに気をつけましょう。
不必要に水分をとるのは避けましょう。のどが
渇いたら温かいものをゆっくりと飲みましょう。
冷たいものをたくさんとるとからだが冷えてむ
くみの原因ともなります。
日常生活のポイント
●体重を測りましょう。
(23〜24頁メモ欄)
・毎日同じ条件
(起床後、就寝前など)
で規則的に測定しましょう。体重が増加傾向
にある場合はむくみが出ている可能性がありますので、医師、看護師にご相談く
ださい。ひどくなる前に適切な治療を開始します。
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●下肢のむくみを予防しましょう。
・血液の循環をよくしましょう。
シャワーですませずにゆっくりとお風呂に入りましょう。からだを温めることに
よって血液の循環がよくなります。また、お風呂の中でむくみやすい箇所をマッ
サージしたり、半身浴をしたりするのもよいでしょう。
・むくみの予防のために、あら
かじめステロイド剤を使用す
ることがあります。
・利尿剤
(余分な体内の水分を、
尿として体の 外に出す薬)を
使用して症状の改善をはかる
こともあります。
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
下痢
疲労感
(倦怠感)
ドセタキセルの治療により下痢が起こりやすくなることがあります。
下痢が起こったときは次の点に注意してください。
「だるい」
、
「からだが重い」
、
「疲れやすい」
といった疲労感
(倦怠感)
を
感じることがあります。これはがん化学療法に伴う一時的な副作用で、
病状が悪化しているわけではありませんのでご安心ください。ただし、
日常生活のポイント
症状が長引く場合は我慢せずに、医師や看護師、薬剤師にご相談くださ
●脱水状態になるのを防ぐため、スポーツドリンクなどで水分を十分に補給しま
しょう。
●乳製品、香辛料を使った食べ物、脂っこい食べ物、アルコール、オレンジジュース
やプルーンジュース、コーヒーなどのカフェインを含む飲み物を控えてみると、症
状が抑えられる場合があります。
い。日常生活では次のようなことを心がけましょう。
日常生活のポイント
●睡眠や休養を十分にとりましょう。
●無理をせず、自分のペースで行動しましょう。
●感染症を防ぐため、排便後は肛門の周りを清潔に保ちましょう。
●負担にならない程度の軽めの運動で、気分転換をはかるのもよいでしょう。
◆こんな症状があったら連絡を!◆
15
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●下痢と発熱が同時に起こった場合
●ひどい下痢が続く場合
涙目
まつげの脱毛などが原因で涙目の症状
が現れることがあります。まれに涙を鼻
の中に廃液する鼻涙管(びるいかん)とい
涙小管
右目
涙のう
う管が狭くなり、涙があふれる状態にな
ることもあります。眼科の受診が必要と
涙点
なる場合がありますので、早めに医師や
看護師、薬剤師にご相談ください。
鼻涙管
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
発疹
口内炎
手や足、顔などに発疹
(皮膚にできる赤いぶつぶつ)
が現れることがあ
ドセタキセルの治療により口内炎が起こりやすくなります。口内炎に
ります。多くの場合、すぐに消えてしまいますが、発疹が現れたときはす
対しては確実な治療法がなく、予防がもっとも大切です。日常生活では
ぐに治った場合でも必ず医師や看護師、薬剤師にお知らせください。
次の点に注意してください。
日常生活のポイント
皮膚炎
手や足にしもやけやあかぎれに似た、さまざまな症状が現れることが
●虫歯のある方は、前もって治療しておきましょう。また義歯を使用している方は、
調整しておくとよいでしょう。
あります。程度が軽ければ保湿クリームや適切なお薬を使うことで改善
●口腔内を清潔に保つため、歯や舌のブラッシングを習慣づけましょう。
する場合が多いので、医師や看護師、薬剤師にご相談ください。
●刺激を避けるため、歯ブラシはやわらかいものを使ってください。
●固い食べ物や極端に熱いもの、刺激のある食べ物は避けましょう。
爪の変化
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爪が変色するとともに、ひどい場合はがれることがあります。また、
ときに膿(うみ)が出ることもあります。爪がはがれる過程で何かに引っ
口内炎が起こってしまった
ときは食事に次のような工
夫をしてみましょう。
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●味付けは、できるだけ薄味にする
かかり、めくれて出血を起こさないよう、適度に切りそろえておくとよ
●口の中でつぶせる程度以下のやわらかさにする
いでしょう。また、爪がはがれた場合には感染症を起こしやすいので、
●とろみのある食べ物に変える
(米飯→粥、スープ→ポタージュなど)
清潔に保ち絆創膏などで保護してください。
対策
●人肌程度に冷ます
・爪を適度に切りそろえ、
●果物など、酸味のあるものは避ける
清潔にしておく
味覚の変化
ドセタキセルの治療により味覚が変化することがあります。ほとんどの
場合、治療が終了すればもとに戻ります。もし味覚が変わってしまったら、
ご家族に協力してもらいながら、味付けを工夫するなどしてみましょう。
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
吐き気、嘔吐、食欲不振
軽い吐き気や、嘔吐、食欲不振などの消化器症状が現れることがあり
しびれ
手や足の指がしびれたり、感覚が鈍くなったりすることがあります。
ます。症状が強い場合でも、吐き気止めのお薬を服用することで症状を
軽い症状であれば、ほとんどが自然に治まりますが、もとに戻りにくい
かなりやわらげることができます。患者さんによって程度はさまざまで
場合もありますので、気になるときは我慢せずに医師や看護師、薬剤師
すが、つらい場合は我慢せずに医師や看護師、薬剤師にご相談ください。
にご相談ください。
また、すでに飲み慣れた吐き気止めのお薬がありましたらお知らせくだ
日常生活のポイント
さい。
日常生活のポイント
●転ばないように注意しましょう。
●すべりにくい履物を選びましょう。
●甘いものや油っぽいもの、においの強いものは控えましょう。
●食べたいものを少量ずつ食べましょう。
●熱いものや刃物などの危険なものを取り扱うときには、
けがをしないように十分注意しましょう。
!
●食事ができない場合でも、脱水状態にならないよう水分を十分に取りましょう。
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●食後すぐに仰向けに寝ないようにしましょう。
●からだを締め付けるような服装は避けましょう。
●吐き気止めのお薬を処方されたときは、指示どおりにきちんと服用しましょう。
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筋肉・関節の痛み
ドセタキセルを投与して数日後に、肩や背中、腰や腕などの筋肉や関
節に痛みが現れることがあります。症状はほとんどが一時的なもので、
◆こんな症状があったら連絡を!◆
●嘔吐が1日に何回も起こる、吐き気が長期にわたって続く
数日後には回復します。ひどい痛みが現れることは少ないですが、つら
いと感じるときは我慢せずに医師や看護師、薬剤師にご相談ください。
日常生活のポイント
●嘔吐のため水分も取れない
●吐き気のため、処方された吐き気止めのお薬を飲むことができない
●ゆっくり入浴するなどして、
痛む部分を温めてみましょう。
●からだの中心に向かってマッサージ
してみましょう。
※副作用について知っておいていただきたい主な事項を記載してあります。不安な 点や不明な点がございましたら、担当の医師や看護師、薬剤師におたずねください。
Q&A
Q&A
日常生活について
サプリメントについて
Q:抗がん剤治療中のスポーツや仕事、旅行は問題ありませんか?
Q:サプリメントを併用してもよいでしょうか?
A :好きなことでストレスを発散するのは、がんと上手につきあ
A :一般薬局で市販されているようなビタミン類などはほとんど
いながら治療を続けていくうえでとても大切です。仕事やス
影響がないと思われますが、実際に服用される場合は、まず担
ポーツは、ひどく疲れない程度なら続けていただいて構いま
当医師に相談することをおすすめします。
せん。旅行は点滴のスケジュールに大幅な遅れがないようで
それ以外のものに関しては、ドセタキセルと併用した場合に
あれば、担当医師とご相談のうえ、ぜひ気分転換にお出かけく
どんな影響がある
(副作用を強めたり、効果を弱めたりする)
ださい。
のかわかっていないことが多いので、やはり十分に相談する
ことをおすすめします。
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22
Q:旅行するときに注意することは?
A :①起こりうる副作用とその対策につ
いて十分に理解する。
②目的地やスケジュール、緊急時の
対応について、担当の医師と事前
に相談しておく。
③体調が悪いときは無理な行動を
しない。
メ
体重(kg)*
日付・曜日
モ
治療を安全に受けていただくために、治療中は患者さん自身が常に自分の
体調を知っておくことが大切です。からだに違和感があるときは、日付と
/
(
)
/
(
)
からだの具合
からだの具合をメモして医師や看護師、薬剤師にご相談ください。
*
日付・曜日
23
体重(kg)
からだの具合
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
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(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
/
(
)
24
*:13頁「浮腫(むくみ)」参照
25
26
■緊急連絡先
病・医 院 名
電 話 番 号
担当医師名
お問い合わせ窓口
科
医師