沈澱藍を 使って染める

第9回テキスト
沈澱藍 を
使って染
って染める
平成25年11月分
沈
澱
藍
今回は、第5回で実施した沈澱藍を使って染める方法を解説します。
ガイドブックの130頁で取り方を解説してあります石灰による沈澱法、または
塩揉みによる沈澱法によって藍液が取れたでしょうか。先の方法では、一度に大量
の液が取れるのが利点です。後者の方では、少量の藍しか取れなかった方に向いて
いると思います。では、これを使って引き染め用の藍建てをして、和紙に文字や絵
を書いてみましょう。
沈澱藍の容器を見てください。静かに置いておくと、上
苛性ソーダ
澄みが透明、またはそれに近い色になっていませんか。容
器を斜めにして静かに上澄みを取り除きます。底にはどろ
どろした藍が残っています。冬のみ、これを温められる容
器に移します。30~50cc位用意します。この中に苛
性ソーダを小さじ1/3(4~5片)入れます。(苛性ソー
湯煎で温めて、溶かす
ダは、粒または平たい小片なので、普通小さじで計ること
はしないのですが、少量の計りがないときには便利です。
皮膚や目に触れないよう気をつけて扱いましょう。計量器
ハイドロ
を使われる場合は、液の重さの0.7%とします。)鍋の中
に水を入れて温め、沈澱藍の入った容器を入れて湯煎にし
ます。(写真A-1)溶けましたら、火から下ろしてハイ
(注)55℃位に冷ましてから入れる
ドロを小さじ1/4加えます。夏は、常温で結構です。
ハイドロは高温になるとガスが出ますから、苛性ソーダを先に入れて温め、取り
出して55℃位に冷ましてからハイドロを入れます。
青かった液の色は、還元して緑色になります。(写真A-2)温度が高いと黄土
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色になります。この液は時間が経つと酸化して還元が弱って色が悪くなりますので、
早く使用してください。冬以外は常温で建てます。
和 紙 に つ い て
今回は、和紙に書きますので、和紙について解説します。和紙の原料は、コウゾ、
ミツマタ、ガンピ等が主に使われています。ミツマタは、主に紙幣になります。ガ
ンピは艶があり、滑らかで写経など文字を書いたり、絵を描くのにも適しています。
一番多く使用されている和紙は、コウゾを原料にしてあります。最近はパルプと混
ぜた物が出ています。藍染めに使用するには、水につけても溶けないコウゾ100
%の紙を使用しなければなりません。より水に強くするためにもコンニャク糊を引
いた紙を使用します。コンニャク糊についてはガイドブック25頁に解説してあり
ます。
この糊の作り方で気をつけなければならないのは、少しずつ指でつまんでぱらぱ
らと振り込むように入れることです。泡だて器で混ぜながら20分溶かすか、ペッ
トボトルに入れて振るようにして溶かします。その後1~2時間置くと滑らかな糊
ができます。できた糊を手にとってみて、粒が残っているようだと置く時間が足り
ません。この糊は藍染めした後のすれ防止に使うこともできますし、藍染めの糸の
のり付けにも使用します。手に色がつくのを防ぎます。糊に少量のオリーブ油を加
えると艶のある糸になります。しかし、日持ちがしませんので早く使用します。
和紙は先に解説したようにコウゾ紙を使用します。板の上に載せ、糊刷毛を使っ
て満遍なく手早く引きます。乾かしてから、裏面を糊引きします。
絵や文字を書く
用 意 する 物
・沈澱藍
写真A-3参考
30~50g
・上記の要領で藍建てしたもの
・コンニャク糊引和紙
板の上に新聞紙を置き、その上に和紙を置きます。何を描くか図案をあらかじめ
鉛筆で書いておきます。沈澱藍は繊細な線より、大胆に力強く書いた線の方が色濃
く染まります。液のアルカリが強いので、狸や羊など獣毛の筆では溶けますから、
ナイロンや草筆、たわし等を使います。
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また、型を使ってすり込みをすることもできます。霧のように吹きかけたり、細
い口のついた容器から流して染めたり、ユニークな使い方をすると面白い作品を染
めることができます。
和紙に絵を描きましたら、暫く酸化させます。最初緑色をしていますが、次第に
濃い藍色になります。乾いたら水を張った中に入れて、静かに洗います。擦ると紙
が破れますので注意して下さい。その後窓ガラスに貼って乾かします。出来上がっ
たら表装したり、額に入れたりします。私はランプシェードにして楽しんでいます。
その場合は、染めた後もう一度コンニャクを引きます。
ガイドブックには布を染める方法が載せてありますので、麻や絹の薄手で滑りの
良い布を選んで染めてください。なお、布の場合は水で洗って仕上げをします。
浸
し
染
め
写真C-1参考
用 意 する 物
・沈 澱 藍
200g
・灰
2㍑(pH 12以上)<石灰を補充しても良い。>
汁
(灰汁の変わりに苛性ソーダを使用する場合は水2㍑に20g)
・ブドウ糖
120g(又は、ハイドロ10g)
ハンカチやスカーフ等を染めるには浸して染めます。それにはかなりの液量が必
要になります。沈澱藍のみではどろどろですから、5~10倍のアルカリ液を加え
なければなりません。
ガイドブック131頁の例Ⅰの方法は灰汁を使用します。灰汁の pH が弱いとき
は消石灰を加えます。灰汁が手に入らない場合は水2㍑に苛性ソーダを溶かして使
用します。
鍋に全部の材料を入れて60℃に温めます。かき混ぜて青い泡が湧き、液の色が
黄色くなると、還元して藍建てができたしるしです。30℃以下に冷ましてから染
めます。
染めているときの液色は、黄色みがかった色をしています。もちろん表面は青く
泡が浮いています。染めた布を取り出すと茶色、空気に当てると次第に青く変わり
ます。液の色が全体に青くなると還元しなくなったことなので、再び火にかけてブ
ドウ糖を加えて還元をさせてください。それでも染まらなくなれば、インディゴ分
がなくなったので液を捨てます。
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すくもと沈澱藍の合建て
写真B-1、B-2参考
これは、手づくりすくもを藍建てして、その醗酵を利用して沈澱藍を加え、染め
液にしようとする試みです。
何回かやりましたが、沈澱藍の量を多くしたり、一度に加えると醗酵が止まって
しまいます。少しずつ足していくのが守らねばならない条件だと思います。
手づくりすくもを藍建てしたら、ある程度すくもで染め、終わる前に沈澱藍を足
していくという方法ですと、長い間染め液を保存することができます。もちろん、
pH10.5くらいに保つことが大切です。
すくもによる藍建ての管理について
すくもを建てられた方、建てるまでは大丈夫だと思いますが、その後の手入れを
考えてみましょう。
アルカリがだんだん下がって、表面の紫色の金張りが多くなるとよく染まります
が、下がり過ぎると腐ります。その場合は残しておいた一番強い灰汁を少し足しま
す。それがまず一番注意する点です。
一度にたくさん入れると pH が強くなり過ぎるので気をつけます。反対に、いつ
までたっても金張りが出来ない時は、お酒又はブドウ糖を少し入れてみてください。
今どちらが必要なのか見分ける力がつくと藍は自分のものです。pH 計をお持ちの
方は10.5を保持するようにします。
お
わ
り
に
朝夕、寒さを感じるようになり、新居修氏の寝床ではすくもの匂いが鼻をつくよ
うになりました。やがて、白い湯気があたりを覆い、水しぶきが伝統の作業の技と
重みを感じさせる季節がやって来ます。
藍の種も黒味を増しました。そろそろ収穫の時期です。その種を取った後の茎葉
を乾燥しておきます。
以前乾燥葉を取った時の茎も合わせて、水を入れ煮出します。その煮汁で糸や布
を染めて、みょうばん、石灰、鉄等で媒染しますと、ベージュや茶色を染めること
ができます。絹や毛が染められます。
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(補足)引 き 染 め 用 の 顔 料 を 取 る
さて、今回私は、リュウキュウ藍で作った沈澱藍を使って引き染めをするために
他の色も作ってみようといくつか試みをいたしました。以下で方法を紹介しますの
で、作ってみてください。
◆ 引き染め用の顔料にする(藍色) ◆
①100㏄(100g)の沈澱藍をボールに入れて、苛性ソーダ(ソーダ灰13倍)
3gを入れて混ぜる。
②ハイドロサルファイト5gを入れ軽く混ぜる。青が緑がかってくる。
③ナイロン刷毛で字や絵を描く。普通の筆を使うと溶ける。(例えば、100円ショ
ップで売っているシェイビング刷毛など良い。)
◆ その他の色 ◆
顔料の取り方
・紫
…
リュウキュウ藍の生葉20枚に、水50㏄を加えて耐熱容器に入れ、
電子レンジ(600w)3~4分を、3~4回。
冷ましてから、ふのりの液(にじみ止め)を少し加えて使う。
・黄
…
タデ藍の乾燥葉10gに、水を100㏄を耐熱容器に入れて、
電子レンジ(600w)3~4分を、3~4回。
冷ましてから、ふのりの液(にじみ止め)を少し加えて使う。
・赤
…
リュウキュウ藍の葉 真空パック
電子レンジ(600w)3~4分を、3~4回。
冷ましてから、ふのりの液(にじみ止め)を少し加えて使う。
発色剤は、アルミ・鉄・石灰液を媒染液として引き染め用刷毛で塗る。
【同封したもの】
● 沈澱藍文字手書き見本
濃い方が台湾産リュウキュウ藍の沈殿藍
薄い方(秋山)がアキヤマ作・徳島産タデ藍の沈殿藍
● 写真集(A4用紙に写真を印刷したもの)
● 参考資料(「沈殿藍の建て方」)
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沈澱藍(ろ過法)
沈 澱 藍 の 建 て 方
使い方によって底の濃いところを使うか、上の薄い方を使うか決めます。全体を
浸し染めにするならそのままでおきます。口の広いコーヒー瓶に入れ替えてみると
よく分かります。冷蔵庫に入れる必要はありませんが冷暗所に保管してください。
手描き・引き染め用の作り方
用 意 する 物
・底の濃いところ
200g
・苛性ソーダ
5g
・ハイドロ
20g
容器(ステンのボール)に液を入れ、苛性ソーダを加え湯せんで温めます。
夏季は室温で、火からおろしてハイドロを加えて静かに混ぜます。
緑色になり青い泡が湧いてきます。
ハイドロは55℃より高くすると有毒ガスが出るので気をつけましょう。
ナイロンのはけ、たわし、スプレーなどを使って布や和紙に描きます。
浸し染め用の作り方
用 意 する 物
・液
・強い灰汁
200g
3~5倍(なければ苛性ソーダ20gと水3~5倍)
・ブドウ糖
120g
・工業用石灰
100g
・水
200g
鍋に水と沈澱藍、苛性ソーダを入れ火にかけます。
別の容器に石灰と水を入れ溶かしておきましょう。
60℃位になったらブドウ糖を加え混ぜてください。
石灰の上澄みをすくって入れると液の色が黄色になり青い泡が湧いてきます。
沸騰する前に火を止めて30℃位に冷ましてから染めます。
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