109KB - 北海道立教育研究所

Ⅱ 「ほっかいどうスクールネット」における遠隔授業のた
めの必要な機能とその有効な活用方法
1
研究の経緯
平成14年11月,北海道教育情報通信ネットワーク(以下 ,「ほっかいどうスクールネット」
という。)が各種コミュニケーション機能や学習用教材検索機能などを備え,構築された。「ほ
っかいどうスクールネット」は「高速で安全なネットワーク」で,ITを活用した「わかる授
業」の支援を目的にしたネットワークである。その効果的な利用を促進するためには、学校内
でのネットワークの適切な運用・支援に関する情報の提供及び相談事業が重要である。
そのため,北海道立教育研究所附属情報処理教育センター(以下 ,「センター」という 。)
では,本研究で,効果的な遠隔授業を実施するためのモデルの研究及び遠隔授業のためのコン
テンツの作成方法等の研究について月次計画(表Ⅱ−1)を立て実施した。また,遠隔授業で
「ほっかいどうスクールネット」の機能のうち,特にビデオコミュニケーション機能を活用す
るため,授業モデルとして研究協力校(以下 ,「協力校」という 。)での検証作業を行い,授
業の参考となる実践事例及び資料等を収集することとした。
表Ⅱ−1
月
4∼6月
7∼9月
10∼11月
11∼12月
月次計画表
取
組
内
容
遠隔授業を実践している道外の教育機関等の視察
遠隔授業の現状と問題点の整理
協力校の選定と協力の依頼
遠隔授業に利用する学習用教材(以下 ,「コンテンツ」という)の作成方法についての研究
協力校における遠隔授業の試行及び評価
遠隔授業の実施による学習効果の評価
遠隔授業モデルの研究
遠隔授業の実施で ,「ほっかいどうスクールネット」を効果的に利用するための機能の検討
「 ほっかいどうスクールネット」は,平成16年度から市町村立学校も利用できるようになり,
各種機能やディジタルコンテンツの活用,遠隔地間の学校の交流等による教育的効果が一層期
待されてきている。特に,遠隔授業については,学校間の合同授業だけでなく,学校に登校で
きない児童・生徒に対しての効果的な指導,専門的で高度な資格取得の講座の実施等に関する
活用など,ビデオコミュニケーション機能の充実や利用に向けた取組みが求められている。
「ほっかいどうスクールネット」で提供されているビデオコミュニケーション機能には,ビ
デオチャット,オンライン研修等がある。これらの機能では特殊な通信を行うため,市町村立
学校などからインターネットを経由して利用する際,ネットワークのセキュリティ等の問題か
ら一部機能が利用できない場合がある。同様に,他都府県のシステムを道立学校から利用する
際にも ,「ほっかいどうスクールネット」の定めるセキュリティ設定により利用できない場合
もある。そこで道立学校間だけでなく,インターネット経由や有線の回線設備がない屋外のネ
ットワークなどからの,遠隔授業の有効な利用方法を検証することも本研究の目的の一つとし
た。
- 2 -
2
研究の具体的な取組み
(1) 道外視察
6月22日(水)から6月24日 (金)まで,遠隔授業に先進的に取り組んでいる道外の教育機
関等を視察し,図Ⅱ−1のように遠隔授業等に関する資料を収集した。
図Ⅱ−1
道外視察
視察先及び視察日時
① 滋賀県総合教育センター
6月22日 15:00∼17:00
② 岐阜市教育研究所
6月23日 9:30∼11:40
③ 岐阜県総合教育センター
6月23日 14:00∼17:00
④ 名古屋市教育センター
6月24日 10:00∼11:40
視察の観点
① ・ 教育情報通信ネットワーク「しがeセンター」によるe-ラーニングシステムの概要と活
用状況について
・
e-ラーニングシステムを利用したコンテンツの整備や普及・活用に向けた施策について
・ 教育情報通信ネットワークを有効に活用する上で必要とされる施設設備の整備や学校へ
の支援について
② ・ 教育用イントラネット「ぎふネットスクール」の利用状況や普及・活用に向けた施策に
ついて
・ 「ぎふネットスクール」を活用したコンテンツの収集・配布・利用について
・ コンテンツを有効に活用する上で必要とされる施設設備の整備や学校への支援について
③ ・ 遠隔学習(テレビ会議)システムの活用状況と,有効に活用する上で必要とされる施設
設備の整備や学校への支援について
・ 学校間総合ネットにおけるコンテンツの整備や普及・活用に向けた施策について
④ ・ 教育情報通信ネットワーク「くすのきネットなごや」の利用状況や普及・活用に向けた
施策について
・ 「くすのきネットなごや」を活用したテレビ会議システムの利用について
・ コンテンツを有効に活用する上で必要とされる施設設備の整備や学校への支援について
滋賀県総合教育センター
岐阜市教育研究所
岐阜県総合教育センター
名古屋市教育センター
- 3 -
視察した概要は,次のとおりである。(表Ⅱ−2)
表Ⅱ−2
視察先の聴取概要
岐阜市教育研究所
対象:
・ 小学校
・ 中学校
概況:
・ ネットワークは,二
重構造になっている
・ ギガビットネットワ
ーク環境で遠隔授業を
実施している
岐阜県総合教育センター
対象:
・ 一部の小・中学校
・ 高等学校
概況:
・ ギガビットネットワ
ーク環境である
・ インターネット接続
は,300Mbpsである
・ 担当者は18名である
・
NECのシステムで運
用している
・ 各地域からの情報を
データベース化して運
用している
・ ポータルサイト的な
利用をしている
・
メーカーの専用ソフ
トで運用している
・ コンテンツは,教育
センターで作成してい
る
名古屋市教育センター
対象:
・ 小学校
・ 中学校
・ 高等学校
概況:
・ Bフレッツを中心と
したネットワークであ
る
・ 一部でADSLを利用し
ている
・ システムはあるが,
コンテンツが少ない
・ 現在,コンテンツは
教育センターが作成し
ている
・
・
テレビ会議システム
(Visual Nexus)を利
用している
・ 会議用専用機器を貸
し出している
・
テレビ会議システム
(Visual Nexus)を利
用している
コ
・ システムについて検
・ 岐阜県教育用コンテ
ン
討している
ンツ開発協議会で,コ
テ
ンテンツ開発部会を設
ン
置し,作成・運用につ
ツ
いて対応している
(注:ここでのコンテンツは、データベース化されたものをいう。)
・
ほぼ外部に委託して
対応してる
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
環
境
e
−
ラ
ー
ニ
ン
グ
遠
隔
授
業
滋賀県総合教育センター
対象:
・ 小学校
・ 中学校
・ 高等学校
概況:
・ ネットワーク管理は
県で実施している
・ システム管理は教育
センターで実施してい
る
・ 富士通のシステムで
運用しているコンテン
ツ作成,履歴管理もで
きる
・ センターにコンテン
ツ作成ソフトウェアが
あり,各学校での簡易
な作成も可能である
・ システムはない
テレビ会議システム
(Visual Nexus)を利
用している
・ 県のギガビットネッ
トワークを利用してい
る
・ リンク集で対応して
いる
e−ラーニングや遠隔授業などの取組みを,先進的に行っている地域として,この4つの
センター・研究所を選定した。三重県総合教育センターも視察先として予定していたが,先
方の都合で中止となった。
回線速度,各種ネットワークシステムの導入,運用管理など,IT化に向けた取組みの状
況は,地域によって様々である。ギガビットネットワークが利用できる地域,テレビ会議シ
ステムやコンテンツのデータベース化が進む地域,e−ラーニングシステムを積極的に利用
している地域がある反面,ネットワーク化が進んでいない地域もある。県や市によっては,
地域イントラネットを導入したり,ユーザ認証や暗号化によるシステムを利用する等,ネッ
トワークの運用形態も様々である。
「ほっかいどうスクールネット」は,運用開始時の「高速で,安全なネットワーク」とい
うネットワークの運用形態を,現在も変更せずに稼働している。
- 4 -
(2) 協力校における検証
①
検証の目的
「ほっかいどうスクールネット」のビデオコミュニケーション機能を利用して,様々な場
面を想定した検証を行うことで,遠隔授業の内容や方法についての参考事例を収集し,今後
の遠隔授業実施に向けたモデル化を図ることを目的とした。
協力校は,オンライン実習校で特色ある取組みを実施している,北海道札幌東商業高等学
校,北海道札幌琴似工業高等学校,北海道小樽商業高等学校及び道立学校以外から,北海道
岩見沢緑陵高等学校の4校に依頼した。
これまで取り組んでいなかったインターネットからの受発信の検証,センター以外のネッ
トワーク環境を利用しての受発信の検証を行うことで,ビデオコミュニケーション機能の利
用を促進するために必要な取組みについて調査した。
②
検証の手順
各学校での検証作業は,次の手順で実施した。
ⅰ )「ほっかいどうスクールネット」のポータルシステムを正常に操作,利用できるかな
ど,ネットワーク環境の調査を行う。
ⅱ )「ほっかいどうスクールネット」を利用して学校とセンター及び学校間の遠隔地間交
流を行う。
ⅲ)協力校の特色ある取組みを ,「ほっかいどうスクールネット」のビデオコミュニケー
ション機能を利用して配信する。また,様々な遠隔地間交流を実施し,成果を評価票と
してまとめる。
③
検証の具体的内容
ア
検証のための準備
協力校のネットワーク環境や検証に利用するパソコンの調査を行い,Webカメラやヘッド
セットマイクの取り付け,及び各種ドライバソフトウェア等のインストールをした。
また,ビデオコミュニケーション機能を利用するためのソフトウェアを「ほっかいどうス
クールネット」のサーバからダウンロードし,インストール作業を行い利用環境を整えた。
イ
検証計画
基本的な検証(表Ⅱ−3)と協力校による独自の検証(表Ⅱ−4)については,研究を行
うにあたっての計画として予定したものであり,実際に実施した検証内容の概略は「ウ
証内容」,その詳細については「Ⅲ
協力校での検証」にまとめた。
表Ⅱ−3
形
式
1 センターと学校間の情報の
配信と交流
・ システムやネットワーク
の確認と配信内容の確認
・ 2回目以降は,30分∼1
時間程度の準備を実施
・ その後1時間程度の交流
などを実施
基本的な検証
想 定 し た 検 証 内 容
センター
→
学校
・ 協力校に出向き,設定作業
・ 接続確認作業
・ センター,学校間で受発信作業
2 センター
→
教員・生徒
・ 協力校に出向き,システムやネットワークの確認作業
・ 協力員に対する機能説明
1
- 5 -
検
3
教員・生徒
→
複数の学校に対して同時に配信
協力員がセンターに向かって配信
各機能を利用して検証を実施
4 学校
→
学校
・ 協力校に同時刻に出向き,配信テストと同期試験を実施
・ ビデオチャット機能とオンライン研修機能を重点に実施
・
・
2
センターがコーディネート
する学校間の交流活動
・ 学校間の情報発信や交流
・ 学校間での遠隔授業
・ コンテンツの研究
5
生徒
→
生徒
生徒同士による,意見交換の実施とコンテンツの配信
6 学校
→
学校
・ インターネット経由からの配信などの検証
・ ライブ講義機能とインターネット向けビデオチャット機能
の検証を重点に実施
・
3
学校から特色ある行事等の
情報発信
・ 効果的な情報発信の研究
表Ⅱ−4
協力校と計画
北海道札幌東商業高等学校
<想定した計画>
ライブ講義機能等を利用し
て,北海道産業教育フェアを
中心に生徒の発表会の様子を
ライブ配信し,各種機能の動
作を検証する
北海道札幌琴似工業高等学校
<想定した計画>
オンライン研修機能を利用
した,オンライン実習を模擬
的に実施し,利用促進に向け
て協力員の理解を得ながら、
遠隔授業の効果などを検証す
る
北海道小樽商業高等学校
<想定した計画>
授業の一環として就業体験
で行っている樽商「パーラー
RYOKRYO」の,販売の様子をラ
イブで配信し,協力校を交え
た意見交換をしながら,ネッ
トワーク状況を検証する
協力校による独自の検証
想 定 し た 検 証 内 容
利用する機能
・ ライブ講義機能,ビデオ会議機能,ビデオチャット機能
・ インターネット向けビデオチャット機能
2 手順
・ 北海道産業教育フェアを中心としたライブ配信
・ 協力校間での意見交換
3 準備
・ 協力校間の日程調整
4 その他
・ 交流終了後における感想や意見の集約
・ 交流時間は20∼30分程度
1 利用する機能
・ ビデオチャット機能,オンライン研修機能
2 手順
・ ビデオチャット機能,オンライン研修の動作確認
・ オンライン実習に係わるプログラム動作確認
・ 教材提示装置,音声出力スピーカ等の接続及び動作確認
3 準備
・ 現地でのネットワーク環境の事前確認
4 その他
・ 交流時間は20∼30分程度
1
1
利用する機能
インターネット向けビデオチャット機能,ライブ講義機能
現地のネットワーク回線の状況に応じた接続方法により,
利用する機能を検討
2 手順
・ 生徒がアイスクリームなどを販売している様子のライブ配
信と協力校での視聴
・ 協力校からの簡単な質問
・ 販売状況のビデオ撮影と編集後のオンデマンド配信
・ 協力校間によるライブ配信の様子についての意見交換
・ ライブ配信の視聴と協力校間による意見交換
・ 編集したオンデマンド配信のビデオを視聴しながらの意見
交換
3 準備
・ 現地でのネットワーク環境の事前確認
4 その他
・ 交流終了後における感想や意見の集約
・ 交流時間は20∼30分程度
・
・
- 6 -
北海道岩見沢緑陵高等学校
<想定した計画>
インターネット向けビデオ
チャット機能を利用して校内
で実施される芸術週間の様子
をリアルタイムに配信する
ウ
1
利用する機能
インターネット向けビデオチャット機能
インターネット向けライブ配信機能,オンデマンド配信機能
2 手順
・ インターネット向けライブ配信とビデオ撮影
・ インターネット向けビデオチャットによる意見交換
3 準備
・ 協力校が利用しているネットワークのポートの確認
・ ネットワーク回線の状況調査(速度など)
4 その他
・ インターネット向け機能の利用の可否の確認
・ インターネット向けビデオチャットとオンライン研修の同
時利用の確認
・
・
検証内容
(ア) 基本的な取組み
・
ポータルサイトの動作確認作業
「ほっかいどうスクールネット」の利用環境の設定作業手順を確認する。
・
センターと学校間の検証
ビデオコミュニケーション機能を利用して,動画,音声の受発信を確認する。
・
センターと複数の学校間との検証
ネットワークの負荷の状況について,学校の環境による違いを確認する。
(イ) 協力校別の取組み
・
北海道札幌東商業高等学校の協力による検証
札幌コンベンションセンターにおける「北海道産業教育フェア」の会場の様子を,会場
の高速回線を使って,インターネット配信する。
校内にある商業ホールを会場とする講演会で,先端技術の一つとして各種機能を利用し
ながら,ビデオコミュニケーション機能を紹介する。
・
北海道札幌琴似工業高等学校の協力による検証
情報技術科の科目「実習」において,オンライン実習の内容に係わる授業を,センター
からの遠隔授業として模擬的に実施する。
・
北海道小樽商業高等学校の協力による検証
屋外で有線回線設備のない場所から,携帯移動端末を使って,生徒の様子をインターネ
ット配信する。
・
北海道岩見沢緑陵高等学校の協力による検証
セキュリティポリシーが異なるネットワークから,インターネット配信環境の構築と視
聴の確認を行う。
- 7 -