part 2 - Australian Macadamia Consumer

イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 2
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 2
シリーズのパート1 ではグローバルにおけるチョコレート業界のトレンドや革新的商品、
オーストラリアのメーカー情報などをお届けしました。後半となるパート 2 では、新興市
場の動向や日本と欧州メーカーの事例、世界中でダイナミックに発展するチョコレートの
世界の今後を予測します。
新興市場の可能性
イノベーションが進むヨーロッパ
新興市場の消費者もチョコレートのおいしさを見つけ出し、その
魅力にとりつかれているようです。アジアパシフィック、ラテンア
メリカ、中東、アフリカのチョコレート市場はヨーロッパの 3 倍
のスピードで成長しており、4 年後の 2019 年には 50% 増大し、
480 億米ドル規模になる見込みです。
それに比べ、
同時期の西ヨー
ロッパおよび北アメリカの成長率は 15% と試算されています。i
欧州ではイノベーションを積極的に受け入れており、2008 年から
2013 年に発売された新製品の 45%、また 2013 年から 2014
年に発売された新製品の 51% が 欧 州で発売されています。欧
州市場でのイノベーションは単にフレーバーが 新しいだけでは
なく、とても洗練されています。2013 年にモンデリーズが行っ
たミルカ・チョコレートのブランド・キャンペーンは、費用対効
果が 高く、話題性も抜群でした。キャンペーン用に生産された
130 万個の板チョコレートは一かけ欠けており、購入した消費
者がオンライン上で申し込むと、その欠けた一かけを郵送で友
人や家族にプレゼントできるというものでした。また、バリーカ
レボーも、チョコレートとワインのマーケティング上の共通性に
注目し、ワインテイスティング 専門家とタッグを組みチョコレー
トのテイスティング用ボックスをプロデュースしました。最近ベ
ルギーでは、チョコレートテイスティング・パーティがちょっとし
たブームになっているので、目のつけどころは間違っていないよ
うです。
中国やインドでチョコレートの著しい成長は、景 気の良い中産
階 級の消費者によって先導されており、中国では 2013 年から
2014 年の 1 年でチョコレート市場は 16% の成長率を達成。同
時期のインドでも 18% の成長率でした。ii
中国では過去 10 年でチョコレートの売上は倍増していますが、
それでも一人当たりの年間平均消費量は 1.2kg で、世界最大の
チョコレート消費国で一人当たりの年間消費量が 12kg もあるス
イスの足元にも及びません。しかし、中国の中間階級の人口は
2016 年には 3 億 4 千万人に達し、西ヨーロッパの人口よりも多
くなるため、今後この市場の購買力は巨大なものになることが
容易に想像できます。
インドでは人口の 30% が 1 日 1 米ドル以下で生活しているため、
中国より価格に敏感です。一人当たりの年間平均消費量も 0.7kg
と少ないですが、売上は爆発的で、2017 年には 23 億米ドルに
達する見込みです。iii
新興市場での成長に重要な位置を占めるのが、プレミアムチョ
コレートの需要の伸びです。中産階級が増え続ける中国とイン
ドでは、プレミアム食品の消費は増える一方です。
チューリッヒのチョコレートメーカーのバリーカレボーは、成長市
場の近くで研究開発を行う戦略のため、アジアパシフィック地域
初の「カカオ・アプリケーション・センター」を今年マレーシアに
オープンしました。ビジネス顧客の成長を促す目的で設立された
本施設は、最新の設備を備え、消費者の好みにスピーディに対応
しイノベーションを起こすための設計がなされています。バリー
カレボー・グループのチーフ・イノベーション&クオリティ・オフィ
サーであるピーター・ブーン氏はこう語っています。
「アジアパシ
フィックの所得が上がるにつれ、消費者の食の好みも変化して
おり、より洗練された風味や味が好まれており、それにぴったり
な材料がカカオなのです。」
ドイツのメーカー、ザイドル・コンフィゼリーはチョコレート・イノ
ベーションに関して 25 年の実績があります。プラリネ、トリュフ、
ナッツやフルーツのチョコレートがけ、チョコレートスナックをは
じめ、ハロウィン等季節のノベルティーチョコレートなど幅広い商
品を扱っており、そのラインアップには目を見張ります。
同社の手がけるイノベーションは総合的アプローチであり、製品
は顧客のショッピング体験のほんの一部にしか過ぎません。ザイ
ドル・コンフィゼリーはラーバーでカフェを運営し、客は豊富な種
類のチョコレートの買物やおいしいコーヒーを飲むほか、ユニー
クな特徴として、各部屋が「クマの洞窟」や「チョコレート・サバ
ンナ」と名付けられており、ジャングルのように作り上げられた環
境で、客が近づくと動いたり吠えたりする実物大の動物たちを体
験しながら買物ができます。大人も子どもも楽しめる工夫がいっ
ぱいあり、カフェを訪れた人に忘れられないチョコレート体験を
提供しています。
また、ザイドル・コンフィゼリーの製品開発戦略の中で、マカダ
ミアは長年にわたり大きな位置を占めてきました。アカウント・マ
ネージャーのトマス・ミュラー氏は「マカダミアを使ったプレミア
ム商品は 30 以上あります。マカダミアは他のナッツと比べても
風味が良く、味に秀でているので積極的に使用しています」と説
明してくれました。ミュラー氏によると、新製品の多くはケーキ業
界のトレンドにヒントを得ているそうで、マカダミアを使用した新
製品は今後も産まれるだろうとのことです。
PAGE 1
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 2
ザイドル・コンフィゼリーではマカダミアを使った製品が多いた
め、マカダミア製品専用の売り場があります。ホワイト、ミルク、
ダークチョコレートがかかった製品の他、
「 マカダミア・シナモン・
ジャンドゥーヤ」、
「マカダミア・クランチ・クラスター」、
「マカ
ダミア・クリーム・カカオ」
「マカダミア
、
・トリュフ」
「プラリネ」
、
「マ
、
カダミア・ステビア・チョコレート」など、さまざまな商品が並
んでいます。またマカダミアは同社の人 気商品、
「テレグラム・
チョコレート」- アルファベットが プリントされたチョコレートを
使い、自由にメッセージを作りボックスに詰める - 商品にも使
われています。
また、欧州ブランドとして世界的に
有名なゴディバも、いくつかの人 気
商品にマカダミアを使用しています。
「マカダミア・モザイク・チョコレート」
や「ミルク・チョコレート・マカダミ
ア・バー」などのほか、さらにユニー
クな組み合わせには、
「ホワイト・チョ
ゴディバのホワイト・
コレート・パイナップル・マカダミア」 チョコレート・パイナップ
ル・マカダミア
という商品もあります。同社のオンラ
写真引用元:Godiva.com
インストアによると、
「ナッツの風味
豊かなマカダミア・クリームと酸味のあるパイナップルが混ざっ
たホワイト・チョコレート・ガナッシュ」が詰まった商品と説明さ
れています。
これからもヨーロッパがチョコレートのイノベーションを牽引して
いくのか、または、急速に進化する新興市場の消費者が新しい
味覚を切り開いていくのか、今後の行方が楽しみです。どのメー
カーも市場シェア獲得のため工夫を凝らすので、華やかな戦いが
繰り広げられるでしょう。
40 周年を迎える明治マカダミアチョコ
ザイドル・コンフィゼリー内のマカダミア製品専用売り場
写真引用元:seidl-confiserie.de
日本のチョコレート菓子業界はとても競争が激しく、目まぐるし
いスピードで新商品が生み出されます。そのペースは驚くべき慌
ただしさで、消費者の目移りも激しいため、中には発売から数週
間で消える商品もあります。どのメーカーも次から次へと新製品
を投入するので、なるべく目立ち、驚くようなフレーバーを組み
合わせた製品も珍しくありません。最近のチョコレート菓子のト
レンドは、健康面で利点のある材料を使った商品で、プレミアム
ナッツ、グラノラ、ドライフルーツ、ビタミンなどが使用されてい
ます。これらの機能チョコレートは、健康志向の消費者が増大す
るにつれ人気を博してきました。
どんな状況でも 40 年も続く商品は賞賛されます。しかし、この
ような厳しい市場環境を考えると来年 40 周年を迎える明治の
「マ
カダミアチョコ」は偉業を達成したと讃えても良いでしょう。
ザイドル・コンフィゼリーのテレグラム・チョコレート
写真引用元:seidl-confiserie.de
ミルク・チョコレート・マカダミア・トリュフ
写真引用元:seidl-confiserie.de
欧 州では、スペインのブランシャルト社やパブロ・ガリゴス社、
ドイツのコンフィゼリー・コペヌール社、オランダのショコ・サポー
ト社などは、マカダミアを使った革新的製品が開発しています。
明治が マカダミアを使ったチョコレートを最初に発売したのは
1976 年。それ以来、同社は一貫してマカダミアを使用したチョ
コレート菓子を生産し続けてきまし
た。現在、定 番シリーズの中でマ
カダミアを使 用した商品は 4 種
類あり(
「マカダミアチョコ」
、
「マ
カダミアブラック」
、
「マカダミ
アチョコ大箱」
、
「マカダミアブロッ
、さらには、
「マカダミ
クスタイル」*2015 年 6 月時点 )
アホワイト」
など、
季節限定商品があります。明治の試算によると、
同社はナッツチョコレート市場シェアの 10 〜 15% を占めており、
マカダミアチョコレート郡内に限定すると、60 〜 70% を占めて
いるとのことです。
明治のスポークスマンによると、マカダミアチョコシリーズが長
年人気の秘密は、マカダミアとチョコレートの優秀なコンビネー
ションによるものだそうです。
「マカダミアのサクッとしたソフト
な食感、良質な脂肪分が豊富で濃厚な香味を持っています。こ
の食感と濃厚さがチョコレートと相性がよいと考えます。
」とス
ポークスマンはコメントをしています。
PAGE 2
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 2
このマッチングは幅広い年齢層に愛されており、日本では 20 代
の若者からお年寄りまでマカダミアチョコのファンがいます。特
に 2013 年以来、健康意識の高まりと共に素焼きナッツ需要が
伸びており、高年齢の客層にもナッツの人気が高まっていること
に気づきました。
「今後も国内の高年齢層は増え続けるので、こ
の層へ向けた市場拡大強化策も検討したいと考えています。
」
イノベーションについては、味以外の要素にも触れています。も
ちろん味は大切ですが、ビジネスのあらゆる領域でイノベーショ
ンを意識することが重要だと考えています。
「チョコレート商品の
発展の中心には、おいしさ、品質、安全安心を基本としています。
しかしながら、商品開発における原料、素材、食感、形状、価格
設計、パッケージといったあらゆる要素で、新しいアイディアや技
術が必要とされています。商品開発以外の分野、例えば流通や
販売方法のイノベーションも欠かせません。これらはメーカーとし
ての使命だと思っています。菓子業界には似たような製品がひし
めきあっており、製品寿命も短いことが多く、われわれは常に新
しいアイディア、切り口を持って開発を行う必要があります。
」
明治では、ブランドの拡大にナッツ類の使用は欠かせないと思っ
ています。スポークスマンはこう続けます。
「過去 10 年でチョコ
レート業界は 115% の成長を見せましたが、更なる市場の伸長が
見込まれています。ナッツ類のおいしさ、チョコレートとのよい相
性など、機能性などでさらなるナッツチョコ拡大が見込めると考
えます。今後もナッツを使ったチョコレート商品をさまざまな課
題をクリアしながら、ナッツチョコ群の拡大を図っていたいと考え
ています。
」
明治では 2016 年の発売 40 周年に向け、マカダミアチョコの新
しいセールスキャンペーンなどが企画されています。もしかしたら
新商品も発売されるかもしれませんね。
チョコレート・イノベーションの事例ベスト 5
商品名:ハイジ
「サマーベンチャー・
インド・チョコレート」
国:ルーマニア
ポイント:ハイジの「サ
マー ベ ンチャー」は 世
界 のさまざ まな 地 域
をイメー ジ した チョコ
レート・シリーズ で、
「イ
ンド」 は ミ ル クチョコ
レ ートとインド 由 来 の
マンゴー、カシューナッ
ツ、カル ダ モンが 組み
合わされています。
商品名:グリーン&
ブラック「オーガニック
スパイス・チリ・ダーク
チョコレート」
国:イギリス
ポイント:7種 類のスパ
イス(チリ、ジンジャー、
桂皮、スターアニス、ク
ロ ーブ、 ピ ン クペッッ
パー、ジュニパーベリー)
が使用されており、
「ホッ
トな辛さが爆発する」と
謳われています。
商品名:ハモンド
商品名:ギネス
「ピッグス・アンド・テイ 「ラグジュアリー・ミル
タース」
クチョコレート・キャラ
メルバー」
国:アメリカ
ポイント:肉の味がする
スナックが人 気 急 上 昇
している背景を受け、ク
リスピーなベーコンビッ
ツと ポ テトチップ ス が
入ったチョコレートが登
場しました。
国:アイルランド
ポイント:チョコレート
の中央に「キャラメルと
ギネスビール の 味 のす
る美味しいクリーム」が
入っています。
商品名:ブリックス
「チョコレート・フォー・
ワイン」
国:アメリカ
ポイント:呼吸器科医の
ニック・プロイア医師が
企 画した、ワインの お
つまみになるチョコレー
ト・シリーズ。4 種類の
味 が あり、素 晴らしい
ワイン が 持 つニュアン
スを 引 き立 てるような
ブレンドです。
Source: Datamonitor Consumer, 2014
PAGE 3
イノベーションが続く チョコレートの甘い世界 Part 2
今後の展望
世界のチョコレート産業の未来はどんな感じでしょう?
暑さに溶けないチョコレート
大手メーカー各社は暖かい地域でのシェアを伸ばすため、また、
新興市場ではチョコレートを冷やして保管するインフラ整備が十
分でないため、暑さに強いチョコレートの開発に投資しています。
メーカーのバリーカレボーは、気温 38 度でも硬さを保つチョコ
レートを開発しました。従来のチョコレートはこれよりも 4 度低
い気温で溶けてしまいます。その他、ネスレ、ハーシー、マーズ、
モンデレスといったメーカーも同様の研究を行っており、38 度か
ら 50 度の気温に対応できるチョコレートの開発に取り組んでい
るようです。このような商品の一番大きな問題点は味でしたが、
それも克服できたようです。バリーカレボーは、まもなく製品を
出荷する準備が整う見込みで、ネスレも 3 年以内には発売開始
すると予想しています。i
新たな応用商品やカスタマイゼーション
データモニター社によると、継続成長の鍵は消費機会の開発とカ
スタマイゼーションにあります。チョコレートの新しい応用方法が
見つかれば、スイーツ以外の領域、例えばチョコレート・ヌードル
やパスタといった領域などにも進出し、主食として消費される可
能性もあります。さらには、美容製品や体験型サービスへの進出
も可能です。vii
3 D プリンターのチョコレート
エコノミス紙によると、3D プリンターは第三の産業革命とも呼
ばれており、3D チョコレート・プリンターが発明されれば全く新
しいカスタマイゼーションが行われるでしょう。ハーシーはすでに
チョコレート・インクの開発を行っており、2014 年後半に「チョ
コジェット」を発表しました。このプリンターを使えば自分流にア
レンジできるチョコレートの可能性が無限に広がります。viii
実際にはどのトレンドが優位になるか分かりませんが、いずれにし
ても今後このカテゴリーはダイナミックかつスピーディに変わって
いくでしょう。チョコレートが大量に消費されるようになってから
長い年月が経っていますが、今まさに、チョコレートは円熟期を
迎え、現代の増大する需要に合わせた商品へと進化しています。
チョコレートはいわゆる「コンフォートフード(心を落ち着かせてく
れる食品)
」のひとつでもあり、ギフトに最適で、贅沢なプレミア
ム食品であり、かつ心をワクワクさせてくれます。また、近年で
は体験型食品や健康食品へと進化しています。メーカーにとって
も消費者にとっても、チョコレートの未来は豊かで甘く、今後も
興味が尽きることはないでしょう。
また、食品のカスタマイゼーションの人気が 高まる中、例えば、
顧客がトッピングやフレーバーを自由に選んで組み合わせるチョ
コレートの自動販売機や、ソーダ・ストリームのように自宅でカス
タマイズができる日用消費財が発売される可能性もあります。vii
i
Gretler, C and Schwalbe, J Hot-weather chocolate is finally here Sydney Morning Herald, 25/06/2015
Bruce, A, Beer flavoured chocolate on its way, says Mintel, confectionerynews.com, 13/04/2015
KPMG International, A taste of the future. The trends that could transform the chocolate industry, June 2014
iv
Barry Callebaut, Differentiation through innovation, 27/05/2015
v
Langley, S, Chocolate innovation takes off globally, despite sales growth slow-down, Australian Food News, 15/04/2015
vi
Euromonitor Research, Milka’s ‘Last Square’ Promotion: A Masterclass in Selective Marketing, Euromonitor International News and Resources, 07/11/2013
vii
Datamonitor Consumer, Consumer and Innovation Trends in Chocolate 2014,Boxed chocolate, countlines, straightlines, molded bars, novelties, and other chocolate,
August 2014
viii
M olitch-Hous, M, Hershey and 3D Systems Unveil New Cutting Edge Chocolate 3D Printer at CES, 3Dprintingindustry.com, 06/01/2015
ii
iii
PAGE 4