気泡を含む噴流が再曝気係数に及ぼす影響

貞弘修男
羽田野・朝位研−7
気泡を含む噴流が再曝気係数に及ぼす影響
水圏環境工学研究室
貞弘
修男
1.緒論
海洋や海岸では、砕波による再曝気が水質や水中の
バルブ
h
エアレーション
ポンプ
DOメーター
って重要ではなく、
水表面が水中にもぐってしまう
(水
m
ノズル
c
を与えているという説と、気泡そのものは再曝気にと
表面のオーバーターン)
効果が重要だという説がある。
10
泡を生じるが、この気泡の存在が再曝気に大きな影響
48.5cm
生態系に重要な役割を果たしている。砕波では必ず気
50cm
100cm
いずれにせよ気泡が再曝気に果たす役割を明らかにす
図−1 実験装置の概略図(気泡プルーム)
ることは重要なテーマである。
本研究では、気泡と再曝気との関連の解明の第一段
階として、気泡プルームと液相だけの噴流が再曝気に
DOメーター
バルブ
c
ノズル
m
クリル製の水槽を用いて行った。水深は 40cm、20
10
実験は幅 10cm、長さ 100cm、高さ 48.5cmのア
ポンプ
h
2.実験方法及び実験条件
48.5cm
与える影響の相違について検討を試みた。
50cm
cmの二種類にした。
100cm
触媒として塩化コバルトを微量水中に溶かし、そこ
に亜硫酸ナトリウムを適量加えて、水中のDO濃度を
図−2 実験装置の概略図(噴流)
10mm
低下させた。DOメーターは水槽の底に設置した。
59mm
を起こす方法と、ポンプで液相の噴流を起こす方法の
7mm 14mm
二種類行った。本研究で用いた実験装置の概略を図−
1,2に示す。またその時用いたノズルの概略図を図
−3に示す。
それぞれバルブを調節して流速を変化させて実験
28mm
実験はエアレーションポンプを用いて気泡プルーム
36mm
28mm
18mm
14mm
50mm
A
を行った。その組み合わせ条件を表−1に示す。
B
3 .ガス交換係数kL の算出方法
J
図−3 ノズル概略図
DO濃度の時間回復曲線から再曝気係数k2 が算定
表−1 実験条件
できる。さらに式(1)からガス交換係数kLが求まる。
k2
V
= k2h = kL
A
k2:再曝気係数[1/s]
(1)
水深(cm)
A
気泡
B
40cm
kL:ガス交換係数[cm/s]
V:水槽内の水の体積[cm3]
A:水表面積[cm2]
ノズル・噴流口 流速(cm/s) 空気量(cm3/s)
バブル径
21.53
1.792
8.5
6.68
1.598
a
18.8
28.08
2.341
B
10.4
9.17
2.193
39.3
噴流
J
A
20cm
噴流
A
b
C
31.7
c
15.6
cc
16.7
21.37
1.72
13.5
6.67
1.59
d
B
27.1
28.35
2.51
E
10.2
9.15
1.96
J
39.3
F
15.6
f
気泡
h:水深[cm]
case
16.3
D
e
貞弘
4.実験結果
修男
羽田野・朝位研−8
0.014
Eckenfelder は気泡によるガス交換係数推定式とし
0.012
0.01
て次式を提案している。
2
Cl 3 Qa
kL =
ADa S c0.5
kL
(2)
0.008
0.006
0.004
C:定数[cm2]
0.002
l:水面からノズルまでの水深[cm]
0
0
Qa:空気量[cm3/s]
500
1000
1500
2
h 3 Qa
Da
Da:バブルの平均径[cm]
図−4 kL と h
Sc:シュミット数
2
3
Qa
Da
の関係
2
本実験では C,A,Sc は一定であるのでkL と h 3 Qa
0.0008
Da
の関係を図−4に示した。尚、ここではlの代わりに
0.0006
水深hを用いた。この図より今回の実験で
0.0005
Eckenfelder の式が有効であることがわかる。ガス交
換係数kLは、水深の 2/3 乗,空気量に比例し、バブル
○Da=1.6〜1.8(mm)
h=40
0.0007
k%L
△Da=2.2〜2.3(mm)
h=40
0.0004
●Da=1.6〜1.7(mm)
h=20
0.0003
0.0002
径に反比例することがわかる。
▲Da=2〜2.5(mm)
h=20
0.0001
Reと k%L を式(3)の様に定義する。Reと k%L の関係
■噴流
h=20
0
0
5000
10000 15000 20000 25000 30000 35000
Re
を図−5に示す。
Re =
wl
ν
k
k%L = L
w
□墳流h=40
図−5 Reと k%L の関係
(3)
45
Re:レイノルズ数
cm
40
w:水槽中心の水深 14cm の鉛直方向流速[cm/s]
35
l:ノズルから流速計測点までの距離[cm]
30
ν:水の動粘性係数[cm2/s]
25
20
k%L :無次元ガス交換係数
15
10
これより噴流は気泡プルームに比べてガス交換係
5
10cm/s
0
‑30
数が小さい事がわかる。
‑25
‑20
‑15
‑10
‑5
0
5
10
15
20
25
30
cm
caseBにおける流速分布と casecにおける流速分
図−6 caseBにおける流速分布
45
布をそれぞれ図−6,7に示した。
ここでは水槽の底の
cm
40
中心部分を原点としている。気泡プルームにおいては
35
浮力の影響を受けるので、水表面近くでも比較的大き
30
25
な流速を維持している。一方噴流は運動量が拡散する
20
ため、上昇するほど流速が減少している。このことが
15
再曝気に大きな相違を与えた原因と思われる。
10
5.結論
5
10cm/s
0
‑30
今回の実験条件においては、液流だけの噴流に比べ
‑25
‑20
‑15
‑10
‑5
0
5
10
15
20
25
30
cm
て気泡を含む流れの方が、ガス交換を効率良く行って
図−7 casecにおける流速分布
いることが分かった。しかし今回の実験結果からだけ
とは言い難い。今後も条件を変えて実験を行う必要が
では、気泡が再曝気に果たす役割を十分に解明できた
ある。