横浜みなとみらいホール 大ホール 主催:グラールウインドオーケストラ 後援: 「音楽のまち・かわさき」推進協議会 Program ......................... ......................... 【プログラム】 トランペット十重奏 鹿野 草平/Infiltration for 8 Trumpet Players (当団トランペットパート委嘱作品) サクソフォン四重奏 P.イトゥラルデ/ギリシャ組曲 ◆ 第1部 ◆ J.バーンズ イーグルクレスト序曲 矢藤 学 マーチ・スカイブルー・ドリーム (第26回朝日作曲賞受賞作品 2016年度全日本吹奏楽コンクール課題曲) 天野 正道 Version remix par la forme de chaque amour change comme le kaléidoscope pour "Gral Wind Orchestra" ◆ 第2部 ◆ J.シュトラウスⅡ世/arr. 保科 洋 喜歌劇「こうもり」序曲 F.チェザリーニ 交響詩「アルプスの詩」 1.Nebbia (霧) 2.Della Malinconia (哀愁) 3.Luce Improvvisa (思いがけない光) 4.Operationes Spirituales (精神的活動) 5.Alpeggio (高原の牧場) .................................................................................................. .................................................................................................. 開演前にウエルカムコンサートがございます。 6.Tormenta (嵐) 7.Dello Stato Divino (神の国) .................................................................. お願い ・ 場内でのご飲食、写真撮影、録音、録画(携帯電話、スマートフォン、タブレット付属機能も含む)は固くお断りいたします。 ・ 携帯電話やスマートフォンの電源、時計等のアラーム機能、ゲーム機器等の電源はお切りください。 ・ 演奏中のご入場、ご退出、会話はご遠慮ください。 ・ ストラップ、鈴、買い物袋等の音や、大きな咳やくしゃみは周りのお客様のご迷惑や演奏の妨げとなりますので、ご配慮をお願いいたします。 ごあいさつ ◆ 団長 小長井大資 本日は第36回定期演奏会にご来場賜り、誠に有難うございます。 当団は川崎市を拠点として活動している市民バンドですが、横浜みなとみらいホールでの定期演奏会は4年ぶり10回目の開催になります。 2005年以降はほぼ毎年、現在ご活躍中の邦人作曲家に作曲をお願いし、定期演奏会でその曲の初演を行って参りました。今年4月に惜しくも 他界された真島俊夫氏をはじめ、天野正道、伊藤康英、髙橋伸哉、鈴木英史、江原大介の各氏という、いずれも日本を代表する作曲家による 作品はすべて当団にとって大きな宝です。初演以降、プロの吹奏楽団を含め、いくつもの団体で再演されていますが、これらの曲が今後さら に、吹奏楽のレパートリーとしてより多くの団体に演奏して頂けたら幸甚の至りです。 さて、今年の委嘱曲ですが、井澗昌樹氏にお願いしていた曲の完成が今回も間に合わず、天野正道氏に自身の名曲を当団のためにリミック スして頂いた曲を演奏する運びとなりました。当団のピンチをいつも救ってくださる天野氏に心より感謝申し上げます。 それでは、本日も新旧の名曲を最後までごゆっくりお楽しみください。 Profile . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ◆ 指 揮者 佐川 聖二 秋田県秋田市出身。吹奏楽の名門・山王中学校でクラリネットに出会う。秋田高校を経て東京藝術大学 器楽科へ入学。1975年同大学を卒業し、大学院へ入学。在学中の1976年に東京交響楽団に入団、1977年に 大学院修了。1980年には文化庁派遣海外研修員としてウィーンに1年間留学。これまでにクラリネットを北 爪利世、千葉国夫、三島勝輔、A.プリンツの各氏に師事。2001年6月、25年間首席奏者を務めた東京交響楽 団を退団し、現在は尚美学園大学講師を務めるほか、フリーランスに室内楽・ソロ奏者として活躍中。1995 年に東京交響楽団の首席奏者らと結成した「佐川聖二クラリネット五重奏団」での演奏会やCDアルバム の録音など、精力的に活動を行っている。 また、指揮者としても幅広く活動し、当団のほか各地でアマチュア団体の吹奏楽やオーケストラの指導 にも熱心に取り組んでいる。近年ではその情熱的で表現力豊かな音楽づくりが評価され、各地の団体か ら客演指揮やバンドトレーニングの依頼も多く、 全国各地を飛び回る多忙な毎日を送っている。 全日本吹奏楽コンクールにおいては、これまでに多くの団体を全国大会金賞に導いており、2007年には コンクール15回出場で長年出場指揮者として表彰される栄誉を受けた。 現在では“吹奏楽のカリスマ”と称され、指導力・人間性ともに各方面から絶大な信頼を寄せられており、今、日本で最も“熱い”指揮者であ ることは確かである。 ◆ 司会 石尾 和子 東京都出身。フリーアナウンサー。NHKテレビ「水色の時」、TBS「こども音楽コンクール」、NHK教育テレビ 「将棋の時間」、ヤマハ金管バンドフェスティバル、サントリーホールサマーコンサート、環境の日の集い、横須賀 ジャズドリームス、東京国際和太鼓コンテスト、東京国際映画祭記者会見、佐川聖二還暦記念コンサートなど 様々なイベントやコンサートの司会、ナレーションを担当している。現在、母校東京アナウンス学院で後進の指導 にもあたっている。 トレーナー [掲載50音順] 大和田雅洋 金沢 茂 瀬尾宗利 西川圭子 畠山 崇 針生惇史 福本信太郎 船木喜行 グラールウインドオーケストラ グラールウインドオーケストラは、1990年4月に現団長の小長井を中心に47名で発足し、昨年創立25周年を 迎えました。佐川聖二氏には発足当時から指揮者としてご指導いただいています。 “グラール”とはドイツ語で 「聖なる盃」の意。ワーグナーの歌劇及び楽劇に登場する「至福の奇跡」をもたらす宝物のことです。前途に幸多かれという願いを込めて命名 されました。 当団は社会人を中心に約100名の団員を擁し、 神奈川県川崎市を本拠地として活動しています。 各年1回の定期演奏会とウインターコンサートの 他、 吹奏楽コンクールへの参加、 各種イベントや依頼演奏、 地域の中学校への指導など、 積極的に活動を展開しています。 Web Site URL http://www.gwo.org/ イーグルクレスト序曲/Eaglecrest Overture for Band (1984) ジェイムズ・バーンズ/James Barnes(1949~) 「鷲の紋章」という意味のこの曲は、 「アルヴァマー序曲」や「交響曲第3番」等と並んで、有名なバーンズの作品です。 重厚かつ華やかな金管楽器のファンファーレで幕を開けると、大きく翼を広げた鷲をイメージするような雄大な旋律が始まります。続く中間 部では、オーボエやサックスが哀愁漂うソロをしっとりと歌い上げ、後半部は冒頭のメロディーが再現され、クライマックスを迎えます。 強さ、勇気、遠眼、不死の象徴とされる鷲は、現在、アメリカやドイツ、オーストリア等多くの国で国章として採用されています。作曲者の出身 地であるアメリカの国章には、片足に13本の矢を、もう一方には13枚の葉のついたオリーブの枝を握った鷲の姿が描かれていますが、その頭 は「戦争のない平和な世界」を表現するように矢を持つ足の方ではなく、オリーブを持つ足の方へ向けられています。そんな平和への願いと、 グラールのこれからの発展への思いを、鷲が勇ましく飛び立つ姿に重ね合わせて演奏します。 ヴァージョン・リミックス・パァ・ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・ コム・ル・カレイドスコープ・プール・グラール・ウインド・オーケストラ /Version remix par la forme de chaque amour change comme le kaléidoscope pour "Gral Wind Orchestra" (2003/2016) 天野 正道/Masamicz Amano(1957~) この作品の基になった曲は”La forme de chaque amour change comme le kaléidoscope” だが、 実はこの作品、 佐川さんが指揮をしてい る文教大学吹奏楽部が演奏した”kaléidoscope” (万華鏡) という金管5重奏曲と”La forme de chaque amour” (それぞれの愛の形) というク ラリネット8重奏曲をくっつけた作品である。 佐川さんの鶴の一声「あまにょ~、この2曲をくっつけて大編成吹奏楽曲にすべし。演奏は創価グロリア吹奏楽団だから結構難しくても良い ぞよ」が無ければ生まれなかったのである。2曲を合体させるにあたって、当然タイトルもその両方を網羅していなければシャレにならない。だ が、ただ単にタイトルをくっつけても意味を成さないので「それぞれの愛の形は万華鏡のように変化する」と、佐川さんの永遠のテーマである 「愛」 を色々な表現でアプローチする内容にしたのだった。 これが2003年の出来事。 あれから早13年。当時新婚で幸せ一杯だったカップルも13年も経つと色々な事があるのが世の常である。今回La forme~を佐川さんがグ ラールで演奏するにあたって、 佐川聖二&グラールウインドオーケストラ用にカスタマイズして欲しい、 という注文は誠に当を得ているのである。 で、 新たにカスタマイズするに際して、 儂は色々と老害でボケたアタマを振り絞って考えたのだ。 グラールの特徴を生かしてオーケストレーショ ンを変更するのは勿論の事だが、 それだけでは心許ない。 何故なら、 ここ数年全国大会でも幾つかの団体がこの曲を演奏して下さっているが、 そのどれもが素晴らしすぎるからである。 そしてそれらに対抗するためには、 グラール用にカスタマイズするだけではちょいと厳しいぞよ、 という 神々のお告げが降りて来たのだった。 だが、 神々はその具体的解決法は教えてくれないのが世の常である。 その矢先に、 儂が最も尊敬している作曲家、 Jazzman、 飲み仲間である真島俊夫さんが2016年4月21日に他界してしまった。 ちょうどロンドン・ アビーロードスタジオでフルオーケストラレコーディングを終えた直後であった。 レコーディングが終わるまで待ってくれていたのだろうか。 急遽 帰国して安らかな寝顔を拝見し、葬儀に出席したのだが、火葬場で皆と真島さんの思い出話をしている途中、途轍もないアイデアが降りて来た のだった。 それが 「自作Remix」 。 このリミックスとはヒップ・ホップやハウス・ミュージックなど、 所謂DJが既製楽曲をサンプリングしたり、 スタジ オレコーディングした素材を色々組み合わせたりして再創造する、 90年代ダンスミュージックシーンの主流であった。 だが、 他人の楽曲の一部を 切り取り、パッチワークのようにつなぎ合わせる手法がメインなので、原曲の著作権者達が訴えるようになり、下火になってしまったのだ。それ じゃあ自分の作品を縦横に切り刻んだり、 再創造したりするのなら問題無いだろう、 という啓示を真島さんが送ってきてくれたのだ (断言) 。 てな訳で、 既存の 「La forme~」 とは色々内容も入れ替わっているし、 13年経つとこのような変化が起きるのか、 などという部分もある。 この、 自分の作品をRemixするというアイデア、真島さんはどうやら儂だけで無く、全く接点の無い筈であるヒップホップグループの「De La Soul」に も送ったらしい。 又は真島さんが儂に送った内容を彼らが偶然傍受したのかも知れない。 今度リリースされる彼らのアルバムは 、 既存楽曲のサ ンプリングでは無く自分たちで生のミュージシャンを雇い、 途轍もない数のフレーズを録音し、 そしてその中から心の琴線に触れたフレーズをサ ンプリングして作ったとの由。 真島さんの作品をグラールも初演しているので、 きっと今回のアイデアを真島さんが儂に授けてくださったに違いない。 真島さん、 本当にありがとうございました。 享年67歳。 一応佐川さんと同い年である。 佐川さんには真島さんの分も長生きしてもらわなければな らない。 佐川さん、 本当はまだ29歳なのですからね! 合掌。 (作曲者自身による解説) 喜歌劇「こうもり」序曲 Op.367/"Die Fledermaus"Overture Op.367. (1874) ヨハン・シュトラウスⅡ世 arr. 保科 洋/Johann Strauss II (1825~1899) arr. Hiroshi Hoshina (1936~) この喜歌劇は、オーストリアの温泉地イシュルを舞台にした「こうもりの復讐」の物語です。 ある仮面舞踏会の帰り、資産家アイゼンシュタインは酔いつぶれた友人ファルケ博士を「こうもり姿」のまま、道端に置き去りにしました。翌朝、 その姿を見た人々は大笑い。以来ファルケ博士は「こうもり博士」と呼ばれるようになり、いつかアイゼンシュタインに仕返しをしたいと考えて いたのです。 そして、ついにその時がきました! ファルケ博士は女好きなアイゼンシュタインをとある夜会へと誘います。妻に嘘をついてやって来た アイゼンシュタインは、一人の仮面の女性を口説きますが、なんと、その女性はアイゼンシュタインの妻ロザリンデ! この夜会こそ、ファル ケ博士のワナ、まさに「こうもりの復讐」だったのです。夜会では各人の思惑を楽しい踊りと歌で表します。そして、ファルケ博士は復讐を 打ち明け「すべてはシャンパンの泡のせい」と楽しく終わります。 グラールの夜会へようこそ! 何があっても「すべてはシャンパンの泡のせい」……。 交響詩「アルプスの詩」/Poema Alpestre (1999) フランコ・チェザリーニ/Franco Cesarini (1961~) 「アルプス山脈」はヨーロッパを横切り、オーストリアやイタリア、ドイツ、スイス、フランスなど多国にまたがる世界でも有数の山脈です。スイ スの作曲家フランコ・チェザリーニは、この雄大な自然をタイトルに冠した長大な交響詩を1999年に作曲しました。 同じくアルプスを題材にした「アルプス交響曲」を作曲したリヒャルト・シュトラウスの没後50年であった同年、シュトラウスへの追悼の 意味を込めたオマージュ作品として捧げられています。この交響詩は全7部の構成で、各曲にはアルプスの様々な表情を見せるような短い タイトルが付いています。 1. Nebbia(霧) 霧の立ち込める幻想的なアルプス。冒頭のクラリネットやサックスが奏でる霧、そして同時に聴こえるトロンボーンの和音は「アルプス交響 曲」の冒頭を模しているようです。オーボエやピッコロによる物悲しい動機も印象的です。 2. Della Malinconia(哀愁) 物悲しい第1部の動機が金管楽器によって演奏され、アルプスの山々の荘厳さが表現されます。続く木管楽器の哀愁を帯びたソロは、荘厳 とは対極的な一面を表現します。 3. Luce Improvvisa(思いがけない光) 表題の通り、雲間から突然差し込める眩い光によって音楽は一変します。躍動感溢れる音楽は力を増しながら展開していきます。様々な 旋律が絡み合う複雑な音楽は、雪渓での照り返しの激しさを表します。 4. Operationes Spirituales(精神的活動) オーボエやホルンによって高らかに奏でられる新しい主題が徐々に大きく展開していき、第2部で聴かれた荘厳な金管の主題が形を変え て登場します。イングリッシュホルンの美しい旋律に導かれる、ホルンの雄々しい旋律が大変印象的です。徐々に音楽は静けさを取り戻し、 第4部冒頭のオーボエが再現されます。 5. Alpeggio(高原の牧場) 「Alpeggio」とは、アルプス山脈で夏季に見られる放牧場です。牛の首に付けられる「カウベル」の音と共に聞こえてくるのは、高原に鳴り響 くホルンの音。悠然とした時が流れるような音楽が展開していきますが、楽章の最後にはオーボエが発端となり不穏な様相を呈してきます。 6. Tormenta(嵐) 速いテンポで、木管楽器による連符、金管楽器の力強い旋律、打楽器の連打によってアルプスを襲う嵐が開始されます。吹き荒れる風は、 木管楽器と共に「ウインドマシーン」という珍しい楽器によって演奏されます。荒々しい音楽は徐々に収束し、第1部冒頭部の霧に包まれた アルプスが再現されます。 7. Dello Stato Divino(神の国) 嵐が過ぎ去り、クラリネット群によって穏やかで美しい旋律が奏でられます。この旋律が楽器や調を変えながら繰り返され、徐々にフィナー レへ向かいます。情熱的なフィナーレは、第4部で聴かれた主題を基に、より壮大に、すべての楽器によって力強く演奏されます。グラールの 魅力が存分に発揮される、雄大なフォルティッシモで曲は幕を閉じます。 この曲を捧げられたリヒャルト・シュトラウスは若き日、ドイツの大哲学者フリードリヒ・ニーチェの著作「アンチ・キリスト」に傾倒し、影響 を受けていたと言われています。 いわゆる無神論思想です。 「アルプス交響曲」 は元々この 「アンチ・キリスト」 というタイトルが付いていたとも 言われています。 「アルプス交響曲」は50分にも及ぶ作品ですが、終結は短調かつピアニッシモで密やかに終わります。対して、 「アルプスの 詩」 のフィナーレは 「神の国」 というタイトルの、 長調でフォルティッシモ。 チェザリーニは 「アルプス交響曲」 をただ模すだけではなく、 自らの宗 教観を曲の中に表現することにも成功しているのではないでしょうか。 Program Note
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