日本におけるHPVワクチン接種状況 続く議論と世界的な影響 authors 1616 Rhode Island Avenue NW Washington, DC 20036 202-887-0200 | www.csis.org 表紙写真: https://www.flickr.com/photos/71707869@N00/575455996. Rose Wilson Pauline Paterson Jeremy Chiu William Schulz Heidi Larson A Report of the CSIS Global Health Policy Center 2015年4月 Blank 日本におけるHPVワクチン接種状況 継続する議論と世界的な影響 共著者 Rose Wilson Pauline Paterson Jeremy Chiu William Schulz Heidi Larson CSIS グローバル・ヘルス・ポリシー・センター報告書 2015 年 4 月 About CSIS For over 50 years, the Center for Strategic and International Studies (CSIS) has worked to develop solutions to the world’s greatest policy challenges. Today, CSIS scholars are providing strategic insights and bipartisan policy solutions to help decisionmakers chart a course toward a better world. CSIS is a nonprofit organization headquartered in Washington, D.C. The Center’s 220 fulltime staff and large network of affiliated scholars conduct research and analysis and develop policy initiatives that look into the future and anticipate change. Founded at the height of the Cold War by David M. Abshire and Admiral Arleigh Burke, CSIS was dedicated to finding ways to sustain American prominence and prosperity as a force for good in the world. Since 1962, CSIS has become one of the world’s preeminent international institutions focused on defense and security; regional stability; and transnational challenges ranging from energy and climate to global health and economic integration. Former U.S. senator Sam Nunn has chaired the CSIS Board of Trustees since 1999. Former deputy secretary of defense John J. Hamre became the Center’s president and chief executive officer in 2000. CSIS does not take specific policy positions; accordingly, all views expressed herein should be understood to be solely those of the author(s). © 2015 by the Center for Strategic and International Studies. All rights reserved. Acknowledgments This report is made possible by the generous support of Merck & Co., Inc. Center for Strategic & International Studies 1616 Rhode Island Avenue, NW Washington, DC 20036 202-887-0200 | www.csis.org 日本における HPV ワクチン接種状況 継続する議論と世界的な影響 Rose Wilson、Pauline Paterson、Jeremy Chiu、William Schulz、Heidi Larson 1 はじめに 2013年6月、日本の厚生労働省(厚労省)は、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に 報告された少数の有害事象が大々的に報道され、ワクチンの安全性に関する懸念が国民に広 まったことを受け、HPVワクチン接種の積極的勧奨を一時中止した。 2厚労省では、定期接種プ ログラム(NIP)として希望する対象者へのHPVワクチン接種を引き続き行っているものの、2015年 4月中旬時点で、HPVワクチン接種の勧奨は一時中止されたままである。2014年5月に、我々 が「日本におけるHPVワクチン接種状況:問題と選択肢」 3という表題のCSIS報告書を発表した 後、ワクチン接種に反対する団体が抗議活動を一層強化してきており、継続的にマスコミや国民 の関心を集めている。何人かの有力者が、因果関係を示す根拠がないにも関わらず有害事象と HPVワクチンの関連性を主張する側に回ったことで、医学界は二分されている。厚労省や医療専 門家団体等による対応策は弱腰であり、事態打開のためにそれほど効果があるようには見えな い。ますます複雑化するこの困難な状況を、どのように、そしていつ解決できるかは、未だ明確で はない。 本報告書では、2014年5月以降の日本におけるHPVワクチン論争に関する主要な出来事の概 略、そしてワクチン接種率の急激な低下が及ぼす長期的な影響について述べ、今後前進してい くための最善の方策を提言する。付録として、日本における現況について、国際的な視点からも 調査し、他国ではHPVワクチンに対する懸念や抵抗にどのように対処してきたのか、例を挙げて考 察する。 1 Rose Wilson is a graduate student, Pauline Paterson a research fellow, Jeremy Chiu a research intern, William Schulz a researcher, and Heidi Larson a senior lecturer in the Department of Infectious Disease Epidemiology at the London School of Hygiene & Tropical Medicine in London, England. 2 Heidi Larson et al., “Tracking the global spread of vaccine sentiments: The global response to Japan’s suspension of its HPV vaccine recommendation,” Human Vaccines & Immunotherapeutics 9, no. 10 (2014): 1–8. 3 Rose Wilson, Pauline Paterson, and Heidi Larson, The HPV Vaccination in Japan: Issues and Options (Washington, DC: CSIS, May 2014), http://csis.org/files/publication/140514_Wilson_HPVVaccination_Web.pdf. l 1 2014 年以降の日本の HPV ワクチン接種状況についての最新情報 医学界における分裂 世界的には科学的根拠に基づき同ワクチンの安全性が示されているにもかかわらず、日本では HPVワクチンの安全性が依然として激しい対立と論争の的となっている。HPVワクチンが有害事 象につながる可能性があるという主張を支持し、公に発言する医師の数が増えるにつれて、日本 の医療専門家の間で見解の対立が深まっている。2013年に、日本の内科循環器科医である佐 藤壮太郎医師が、HPVワクチンによって生じたと見られる副作用を報告しており、それが反ワクチ ン団体によって広く引用されている。 42014年に、東京医科大学総合研究所所長である西岡久 寿樹医師が新たな「専門家」として登場し、HPVワクチンと若い女性が経験している疼痛症状と の因果関係を主張している。2014年6月5日にモスクワで開催された国際リウマチ学会で、西岡 医師は「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS):HPVワクチンに関連する新たな病 態」という演題の発表を行った。 5 デンマークのウェブサイト「HPVワクチン情報」によれば、その後西岡医師が2014年7月27日の東 京医科大学におけるシンポジウムで、「HPVワクチン禍から見えてくるもの—医師教育の質と倫理 感の低下」 6という演題の発表をしたことが報告されている。 この会議の目的は、日本における 「HPV(子宮頸がん)ワクチンによる健康被害を通して医薬品監視の現状と課題を考察する」で あった。共同主催者は、薬害オンブズパースン会議(薬害を監視し防止を求める非営利団体)と 医薬品・治療研究会「正しい治療と薬の情報」誌 7で、日本薬剤疫学会特別委員会および NPO健康と病いの語り ディペックス・ジャパン(疾病、診断および副作用について討議する公開討 論のフォーラム)が会議を支援した。 8 2014年10月、他の学者たちもこの論争に関与を始めた。その一つが木下朋実らの論文発表で ある。この論文では、「HPVワクチンによる予防接種は、CRPS-I [慢性局所疼痛症候群タイプ 1]、OH [起立性低血圧症]およびPOTS [体位性頻脈症候群]を含む、交感神経媒介性障害 を二次的に誘発する可能性がある」と結論づけている。また、「これらの疾患が海外のHPVワクチ ンコホート試験では報告されておらず、日本人女児により頻繁に症状が出ている理由は未だ不 4 “SaneVax Reports on Japan’s Struggle with HPV Vaccination Injuries,” Age of Autism, August 26, 2013, http://www.ageofautism.com/2013/08/sanevax-reports-on-japans-struggle-with-hpv-vaccination-injuries.html. 5 Forum of the University Science, “Program,” June 5, 2014, http://forum-uniscience.ru/en/programma/june-5-2014/. 6 “Japansk organisation afslører interessekonklikter,” HPV Vaccine Info, August 7, 2014, http://hpvvaccineinfo.org/japansk-organisation-afslorer-interessekonklikter/. 7 Yakugai Ombudsperson “Medwatcher Japan,” Symposium: Consideration of pharmacovigilance—Lessons learned from the adverse effect of HPV vaccination,” July 27, 2014, http://www.yakugai.gr.jp/en/topics/ topic.php?id=873. 8 Database of Independent Patient Experience, “DIPEX Japan,” 2015, http://www.dipex-j.org/. 日本における HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種 | 2 明である。そして、この疾患の病因に日本の環境が関係しているとは考えにくい。」という点を強調 している。 9 同著者らは、この疑いを持っているHPVワクチンの副作用について、さらなる調査を呼びかけてお り、そのことが国民の懸念を高めている。2014年10月、日本医師会および日本医学会が開催し たシンポジウムにおいて、西岡医師は、同ワクチンの安全性問題にきちんと決着がついてからHPV ワクチンを奨励すべきであると論じた。一方で、その他多くの医療専門家が公にHPVワクチンの接 種を推進しており(子宮頸がん征圧をめざす専門家会議の今野良氏など)、医学界で意見の分 裂は続いている。2015年3月30日、200名を超える医療専門家が署名付きの声明を発表し、 日本のマスコミにHPVワクチンに関するバランスの取れた報道を求めた。また、250名を超える日本 小児科学会会員が、HPVワクチンの積極的勧奨を再開するよう政府に要求した。 厚労省の反応 2014年1月、厚労省の審議会の委員は、免疫系または中枢神経系における変化がHPVワクチ ン接種後に有害事象を発症するという可能性を退けた。 10 その後、2014年9月16日に、朝日 新聞のオンライン版は、厚労省の発表に対し、西岡久寿樹医師および6名の医療専門家が、 HPVワクチンの接種を受けた後、健康上の問題を訴えた2,500名の女性の症例に関する研究を 行ったことを報告した。厚労省と真っ向から対立した西岡医師および他の医師らは、2014年9月 13日に長野での記者会見で、副作用が中枢神経系内の機能障害によって引き起こされたと発 表している。 11 朝日新聞およびジャパンニュースネットワークによると、 12厚労省は、HPVワクチンに関連する有害 事象として報告された約2,500件の症例を追跡調査し、また、ワクチン接種の影響とみられる広 範囲にわたる疼痛および機能性障害を訴えた176名の若い女性に対して、治療体制を整備す る予定である。疼痛と機能性障害を患う女性を治療するという厚労省の計画は、国民の懸念の 声をなだめるための前向きな対処であるとの解釈が予想される一方で、このワクチンが実際に有 害事象を引き起こしたことを認めるものである、と誤解される危険もある。 Tomomi Kinoshita et al., “Peripheral sympathetic nerve dysfunction in adolescent Japanese girls following immunization with the human papillomavirus vaccine,” Internal Medicine 53, no. 13 (2014): 2185–200. 10 Yakugai Ombudsperson “Medwatcher Japan,” “Regarding the MHLW councils on cervical cancer vaccines (HPV vaccines) held on January 20th, 2014,” January 22, 2014, http://www.yakugai.gr.jp/en/topics/ topic.php?id=856. 11 Tomoko Saito, “Researchers: Cervical cancer vaccination linked to symptoms affecting nervous system,” Asahi Shimbun, September 16, 2014, http://ajw.asahi.com/article/behind_news/social_affairs/AJ201409160043. 12 “子宮頸がんワクチンで副反応、製薬会社2社に救済求める,” Japan News Network, 2015. 9 日本における HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種 | 3 世論に与える影響 昨年来の、HPVワクチンを巡る日本の医学界および政界内部の論争は、国民の意識に広く 影響を与えている。ワクチン接種に反対する団体は、ソーシャルメディアや大々的な報道活動 を通じて、論争の主導権を握っている。非科学的でセンセーショナルな報道により、ワクチン接 種後の有害事象(AEFI)報告は、今やマスコミや一般国民にとって確立された「事実」となって いる。 2013年と2014年には、発作や歩行障害を患う日本の女児のYouTube動画が、日本のソー シャルメディアサイトで頻繁に見られた。全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会も、2014年 11月25日に、歩行障害を患うコロンビアの十代の女児の見るに堪えないYouTube動画をウ ェブサイトに掲載している。 13 また、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、2015年3月31日に、東京のMSD (メルク Group)とグラクソスミスクラインの本社の前で反対運動デモ行進を実施し、同二社に対して HPVワクチン接種の停止および「被害者」に対する補償を要求した。この抗議は、日本テレ ビ、 14 オールニッポン ニュースネットワーク、 15 およびフジニュースネットワークを含む、ほとんど の主要テレビ局において、生中継やオンラインで報道された。 16 さらに同会は記者会見を開 き、その後厚労省に上記内容を求める要望書を提出した。報道の最後では、議員と共に同 会に主張を視聴者に訴えた。これら一連の活動は入念に計画され、個人のブログやソーシャ ルメディアで宣伝されるなど、準備が周到に行われていた。 17 “全世界で被害が出ています!!,” National Cervical Cancer Vaccine Victim Liaison Committee, November 25, 2014, http://hpvv-danger.jp/archives/653. 14 “中高生ら 子宮頸がんワクチンの被害訴え,” Nippon Network News, 2015. 15 “「子宮頸がんワクチン」”副作用”被害で 2500 件報告,” All-Nippon News Network, 2015. 16 “「子宮頸がんワクチン被害者団体、製薬会社に初めて要求書提出,” Fuji News Network, 2015. 17 “みかりんのささやき~子宮頸がんワクチン被害のブログ~,” Ameba, March 30, 2015, http://ameblo.jp/3fujiko/ entry-12007957544.html. 13 日本における HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種 | 4 日本全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会:十代の女性と親が子宮頸がんワクチンの摂取後の副作用について訴え 2015年4月25日に、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、「ワクチントーク2015」と題 された全国会議を東京都千代田区で開催した。この集会ではHPVワクチンの「被害者」の支 援ネットワークを拡大することに重点を置いた。招待講演者には、大学医学部の教授、佐久 保健福祉事務所のメンバー、オンライン新聞の編集委員のメンバーが含まれる。 18 尚、日本 におけるHPVワクチンに関連する主要な出来事の年表は表1を参照のこと。 “2015ワクチントーク全国集会開催のお知らせとプライベート・コメントの募集(しめきりは3月29日です,” ConsumerNet.Jp, February 13, 2015, http://consumernet.jp/?p=1659. 18 日本における HPV ワクチン接種状況 | 5 表1:日本におけるHPVワクチンに関連する主な出来事(2009~2015年) 2010年3月 2010年4月 2010年10月 HPVワクチン接種後、女児3名が 複合性局所疼痛症候群(CRPS) を訴え、9名が慢性的疼痛を訴え る。 1,747ある地方自治体のうち126 がHPVワクチンのために資金を提 供。 中央政府および全地方自治体が 一時的な資金調達プログラムを開 始。 2013年3月8日 2013年3月10日 2013年3月25日 朝日新聞が、HPVワクチン接種を テレビのニュースで有害事象が報 道される。 「被害者」団体による記者会見 で、歩行障害と発作に苦しむ女児 の動画が上映される。この動画 は、YouTubeでも視聴できる。 2013年4月1日 2013年4月13日 2013年5月19日 HPVワクチンが、国の定期接種プ ログラム(NIP)に含まれる。接種は 義務ではないが、対象者には無 料で提供される。 杉並区行政が、翌年度の予算を 発表。予算には、HPVワクチン接 種後CRPSが疑われた女児の保護 者による訴えに対する補償も含ま れた。症例は区議会において報告 された。 「被害者」団体による別の記者会 見。 2013年6月13日 2013年6月14日 2014年10月 世界保健機関(WHO)のワクチン の安全性に関する諮問委員会 が、HPVワクチンが安全であること を述べた報告を発表した。日本の メディアでは報道されなかった。 予防接種・ワクチン分科会副反 応検討部会(Vaccine Adverse Reactions Review Committee(: VARRC)の第2回合同会議。厚 労省は、HPVワクチン勧奨を一時 中止することを決定。 日本全国子宮頸がんワクチン被 害者連絡会の大阪支部発足。 2014年12月10日 2015年3月31日 2015年4月25日 日本医師会および日本医学会に よるシンポジウム開催。HPVワクチ ンは、ワクチンの安全性に関する問 題に決着がついてから奨励すべき であるという結論に達した。 ワクチン反対団体がMSDおよび GSKの外で抗議を行い、テレビ、オ ンラインニュース番組が生中継で 報道した。その後記者会見を実 施し、厚労省を訪問して要望書を 提出。 東京都千代田区でワクチン反対 団体によって「ワクチントーク全国 集会」が開催される。テーマは子 宮頸がんワクチン被害者と有害事 象の報告であり、「被害者」の支 援ネットワークを拡大することを狙 いとする。 受けた後、女児50名がCRPSを患 い、100名が学校を欠席していると 報道。 日本における HPV ワクチン接種状況 | 6 政治的選択が与える影響 損なわれた国民の信頼 厚労省によるHPVワクチン接種の積極的勧奨の一時中止は、ワクチンに対する国民の信頼に マイナスの影響を及ぼした。報告されたAEFI事例に関する情報の欠如が、日本政府のHPVワ クチンの積極的勧奨の再開に踏み切る意思決定がされないことと相まって、情報の空白を生 み出した。そして、ワクチン接種に反対する人たちの声がこの空白を満たし、噂が増幅され広が ることになった。 厚労省が取った他の措置も、国民の疑念をあおり、HPV ワクチン接種に対する反対感情をさ らに悪化させ、AEFI への恐怖を増幅した。地方自治体当局が補償を提供することに同意する と、ワクチン接種反対運動家はこれを、「罪を認め、ワクチンと疼痛症状に因果関係があること を確認したことに他ならない」とみなした。2015 年初旬までに、思春期の女子の HPV ワクチン 接種率は、75%以上から 1%未満に激減した。 19 日本におけるマスコミ報道の増加により、反ワクチン団体の勢いに公然と弾みがつけられた。特 に、日野市の池田としえ市議会議員は、FacebookやTwitterで積極的に活動を展開し、体 験談を集めワクチン接種反対感情の急先鋒となり、影響力のあるリーダーとなっている。 20ワク チン接種反対派の運動はますます拡大している。2014年10月4日付けジャパンタイムズの報 道によると、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の会員数は現在287名にのぼり、北海道 と熊本を含む全国6カ所に支部を構えている。また、新たに大阪支部を発足する体制を整えて いるという。 日本には効果的なマスコミ監視団体が存在せず、また名誉棄損法がそれほど厳格ではないた め、新聞、ニュース番組、ソーシャルネットワーク、被害者支援団体は、ほとんど責任説明を問 われることなく、未確認の話や HPV ワクチン接種後に有害事象を患ったと主張する女児のビデ オを自由に公表できる。 21 HPV ワクチンを推奨しないことによるコスト 日本のHPVワクチン接種の積極的勧奨の一時中止は、世界中の科学界を引き続き当惑させ ている。 22HPVワクチンを推奨しないことによる長期的なコストは著しいものであるが、子宮頸が んによる死亡と疾病率に対する影響が見られるには何十年もかかる可能性がある。ある論文 Sharon Hanley et al., “The Japanese HPV Vaccine Crisis” The Lancet (In Press) Wilson, Paterson, and Larson, The HPV Vaccination in Japan: Issues and Options. 21 Ibid. 22 Stuart Gilmour et al., “HPV Vaccination Programme in Japan,” The Lancet 382 (2013): 768; Norma Erikson, “Japan and the HPV Vaccine Controversy,” SaneVax Inc., April 8, 2014, http://sanevax.org/japan-hpv-vaccine-controversy/. 19 20 日本における HPV ワクチン接種状況 | 7 では、日本の12歳の女児全員が予防接種を受けると、子宮頸がん症例の発生率が73%減 少するという数値が示唆されている。 23 積極的に HPV ワクチンを推奨しないことによって、日本国民を不必要で長期的なリスクにさら すことにもなる。日本における子宮頸がんの 67.1%は HPV タイプ 16 と 18 に関連すると推定 される。 24子宮頸がんは、年齢 15~44 歳の女性で 2 番目に多くみられるがんで、 25子宮頸 部細胞診検査率は諸外国に比べて低く、およそ 25.4%である。 26口腔咽頭がんの罹患率は 上昇しており、 27過去 10 年以上にわたって、毎年平均 6,000 症例の性器疣贅が報告されて いる。 28積極的に HPV ワクチンを推奨しないことと、またワクチンの副作用にまつわるマスコミの 誇大報道によって、他の重要な予防接種の接種率が低下するという追加的なリスクもある。 提言 1.日本政府による HPV ワクチンの積極的勧奨の再開。誤った情報や恐怖感を排除するため に、行政のトップが主導権をもって HPV ワクチンの積極的勧奨を再開させることがまず不可欠 である。このことは、諸外国における高いワクチン接種率や効果的な実施、ならびにワクチンの 安全性を示す統計などの証拠により裏づけされなければならない。このプロセスには、マスコミや 厚労省などの主要な関係者との間で、オープンかつ継続的な関与が不可欠である。可能であ れば、HPV 感染率や子宮頸がんなどの羅患率を引き続き監視しながら、勧奨の一時中止に よる公衆衛生上の影響を記録することも重要である。これは、勧奨再開を支持するツールとな る。実際、HPV ワクチン接種の成果や影響をモニターすることを目的とし、疾病率や死亡率デ ータを収集するためのがん登録や監視システムの整備が推奨されている。 29 2.日本における HPV ワクチン製造の支援。アジア最大の製薬会社である武田薬品工業株式 会社は、日本の公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団と締結していた HPV ワクチンの 全世界における特許権に関するライセンス契約を、化学及血清療法研究所(化血研)に Ryo Konno et al., “Cervical Cancer Working Group Report,” Japanese Journal of Clinical Oncology 40 (2010) Supplement 1: i44–i50. 24 Ibid. 25 HPV Information Centre, “Human Papillomavirus and Related Diseases Report: Japan,” March 20, 2015, http://www.hpvcentre.net/statistics/reports/JPN.pdf. 26 Takahiro Tabuchi et al., “Does Removal of Out-of-pocket Costs for Cervical and Breast Cancer Screening Work? A Quasi-experimental Study to Evaluate the Impact on Attendance, Attendance Inequality and Average Cost per Uptake of a Japanese Government Intervention,” International Journal of Cancer 133, no. 4 (2013): 972–83. 27 D. Forman et al., “Global Burden of Human Papillomavirus and Related Diseases,” Vaccine 30 (2012) Supplement 5: F12–23. 28 Hirokazu Yoshikawa et al., “Efficacy of Quadrivalent Human Papillomavirus (types 6, 11, 16 and 18) Vaccine (GARDASIL) in Japanese Women Aged 18–26 Years,” Cancer Science 104, no. 4 (2013): 465–72. 29 Heidi J. Larson, Pauline Brocard, and Geoffrey Garnett, “The India HPV-Vaccine Suspension,” The Lancet 376 (2010): 572–73. 23 日本における HPV ワクチン接種状況 | 8 2015 年 3 月 10 日付けで承継したことを発表した。 30日本で製造された有効な HPV ワクチ ンによって、ワクチンに対する信頼性を増すことができる。 3. 国民の声にさらに注意深く耳を傾けること。政治家や厚労省関係者は、さらに慎重に国民 の声に耳を傾けることが推奨される。科学界の多くの学者は、HPV ワクチン接種後の AEFI は 心因性のものであると示唆している。 31一般の人々は、このようなレッテル(そして「集団ヒステリ ー」という言葉)は受け入れられないと感じ、真の懸念や実際の肉体的な苦痛を直視しない場 合がある。 32 予防接種後の集団的な心因性の疾病の場合には、ワクチンに関しての信頼性に対する危機 感が沸き起こり、恐ろしい身体的症状として反映される。心因性の有害反応の主張を、幻想 であると無視したり、退けたりしてはならない。反対する人々を締め出しても、一層見識のない グループや、ワクチンへの反対感情、誤った情報、そしてさらには心因性有害事象そのものがイ ンターネットや世界中のソーシャルメディアに広がる要因を生み出すだけである。 4. HPV に対する偏見の軽減。疾病のリスクに関する認識が、ワクチンの受入れに対して大きな 影響を及ぼしている。性的行動に関係するような文化や社会的慣習がワクチンの受入れに影 響を与える場合もある。HPV ワクチン接種の場合、性行動についての社会的信条が、ウイルス がもたらす真の健康上のリスクに関する理解の妨げになっている可能性がある。 33確かに、HPV は主に性交中の皮膚の粘膜の接触を通じて伝染するが、HPV が性的接触以外から伝染す る場合もあるという証拠も存在する。 34このような事実に加え、HPV が引き起こす他のがんにつ いての教育を効果的に実施して、ワクチンにまつわる悪いイメージを改善することができる。 “Takeda Announces Transfer of License Agreement for Human Papillomavirus (HPV) Vaccine to Kaketsuken,” PipelineReview.com (La Merie Publishing), March 10, 2015, http://pipelinereview.com/index.php/ 2015031057121/More-News/Takeda-Announces-Transfer-of-License-Agreement-for-Human-PapillomavirusHPVVaccine-to-Kaketsuken.html. 31 J. Paul Buttery et al., “Mass Psychogenic Response to Human Papillomavirus Vaccination,” Medical Journal of Australia 189, no. 5 (2008): 261–62. 32 C. John Clements, “Mass Psychogenic Illness after Vaccination,” Drug Safety 26, no. 9 (2003): 599–604. 33 Heidi J. Larson, “Commentary: The uptake of human papillomavirus vaccination: The power of belief,” International Journal of Epidemiology 42, no. 3 (2013): 908–10. 34 Eric J. Ryndock and Craig Meyers, “A risk for non-sexual transmission of human papillomavirus?,” Expert Review of Anti-infective Therapy 12, no. 10 (2014): 1165–70. 30 日本における HPV ワクチン接種状況 | 9 結論 過去1年間、HPVワクチンの方針に関する日本の状況は、はるかに複雑化し、解決することが 困難となっている。ワクチン反対運動の関係者は、効果的なメッセージの拡散やマスコミ報道へ の影響力を強化し、政治的圧力を強めることによって、(ワクチンに対する)国民の信頼と信用 の崩壊をさらに進行させた。科学者および医学研究者の団体が新たに出現し、HPVワクチン 反対派陣営に参加し、裏付ける証拠なしにHPVワクチンと疼痛症候群の因果関係を主張し ている。日本国内だけでなく、ワクチンの科学的な利点に関する活発な討論が行われている諸 外国でも、深刻な波及効果が続いている。日本政府の効力の乏しい措置やトップレベルでの 政治リーダーシップの欠如は、さらに多くのワクチン反対派関係者の活発な行動を加速させるだ けである。先鋭化するこの問題は、社会的・政治的要因に根ざしており、解決には現政権の 首脳陣による政治リーダーシップが不可欠である。とりわけ安倍首相が提唱している「ウーマノミ クス」イニシアチブの枠組みを考えるとこの重要性が高い。長期的視野での解決策を見出す上 で、政治的指導力、科学的分野のみならず公衆衛生分野での継続した努力が最も求められ ているのである。 日本における HPV ワクチン接種状況 | 10 付録 1:国際社会が見る日本国内の HPV 論争 世界中の HPV ワクチン接種反対団体は、HPV ワクチン接種の勧奨を一時中止した厚労省の 決定を称賛している。同ワクチンの安全性を巡る懸念が多くの国で表面化しているためである。 本付録では、他の国々が日本における状況によってどのように影響を受けたかに焦点を当ててみ る。 デンマーク 「De Vaccinerede Piger」(「ワクチン接種を受け た女の子たち」)という題のドキュメンタリーが 2015 年 3 月にデンマークでテレビ放映された。このドキ ュメンタリーでは、数名の日本の医師が抱いてい る、HPV ワクチンが深刻な副作用を引き起こす恐 れがあるという懸念について伝えている。 35この映 画は、日本ではこれらの有害事象に応えて HPV の勧奨が一時中止されたと主張している西岡久 寿樹医師の発言に注目している。このドキュメンタ リーでは、HPV ワクチンの接種後に発病したと考 える 47 名の日本人女児の話を取り上げている。 日本の HPV ワクチン勧奨の一時中止に対するデ ンマークの支援は、デンマークにおけるワクチンの接 種に危険な影響をもたらす可能性がある。デンマ ークのアラブ系の母親と娘たちの HPV ワクチンに対する態度と知識について調査を行った Zeraiq らの研究によると、ワクチン接種についての知識において既に世代間の断絶が存在する。 3637 SaneVax のようなワクチン反対派のウェブサイトは、前述のような話を迅速に公表してきている。 SaneVax(米国を拠点とする)は、日本での HPV ワクチンの勧奨一時中止、臨床試験における 35 Nicolaj Albrectsen, Michael Bech, and Signe Daugbjerg, “Piger bliver syge: I Japan anbefaler de ikke længere HPVvaccinen,” TV2, March 27, 2015, http://nyhederne.tv2.dk/samfund/2015-03-27-piger-bliver-syge-i-japananbefalerde-ikke-laengere-hpv-vaccinen. 36 Lina Zeraiq, Dorthe Nielsen, and Morten Sodemann, “Attitudes towards human papillomavirus vaccination among Arab ethnic minority in Denmark: A qualitative study,” Scandinavian Journal of Public Health, March 9, 2015 [E-pub ahead of print]. 37著者らによるとは、母親たちの間ではアラブ系のテレビ番組が保健情報源となっているが、娘たちはインターネットや西欧のテレビ番 組を利用している。母親たちはデンマーク語を話さないため、HPVワクチンについて娘たちから学んでいる。娘たちが「De Vaccinerede Piger」のようなドキュメンタリーを視聴した場合、その情報は母親に伝えられる可能性が高い。言葉の障壁が原因で、多くの母親た ちは厚生省が提供する情報を読めないため、非常に偏ったワクチンについての見解が、すぐに利用できるワクチン反対媒体を通して 形成される。これらの感情は、母親のソーシャルネットワークによっても悪化する。それは他のアラビア語を話す母親たちで構成されて おり、しばしば母親のHPVワクチンに対する見解に影響を与え、恐怖心を植えつけている。同研究により、娘たちのワクチンに対する 受入れの主な動機付けは、母親の承認から生じることがわかり、これは特に懸念される。 日本における HPV ワクチン接種状況 | 11 死亡事象後のインドでのワクチン禁止、さらに Merck に対する訴訟の可能性、フランスにおける 1,200 名の医療専門家の HPV ワクチン接種拒否、フランスとスペインでの医薬品製造会社に 対する措置の開始について言及したデンマークの親からの手紙を出版した。 38 SaneVax による と、この手紙はデンマーク議会、デンマーク保健当局およびデンマーク報道機関に送付され、米 国、英国、フランス、スペイン、インド、そして日本の国際報道機関に配布され、さまざまな医学 雑誌に掲載され、Facebook に掲載される予定である。 ワクチン接種反対団体からの圧力にもかかわらず、デンマーク国家保健委員会(DHMA)は、 2009 年の導入以来、HPV ワクチンに関連する疑わしい有害事象に関する報告を監視、評価 してきており、 392014 年 9 月、DHMA は、「デンマーク国家保健委員会は、HPV ワクチンのメリ ットは可能なリスクに勝ると評価する」と述べている。 40女児のワクチン接種率は未だに高く、70% となっている。 41 ニュージーランド ニュージーランドでは、2006 年に HPV ワクチンの使用を女性と男性の両方に承認してお り、 4220 歳未満の女子には、主に学校単位のワクチン接種プログラムを通じて無料で提供して いる。 43 全 3 回接種の接種率は女子で 52.6%と低くなっている。 44この低い数値の原因となっているの は、思春期の子供にワクチンを提供することで若年における性体験を助長するのではという親の 恐れである。 45Family First NZ という団体は、ニュージーランドの親は、伝染病だからという理由 に対してではなく、子供にワクチン接種を受けさせることで助長されうる「行動が招く結果」に対し て拒否していると主張している 。同グループは、HPV AEFI に関する発生率データのさまざまなリ ソース、つまり、疾病対策センター(CDC)および英国医学会会報(BMJ)を引用している。 Family First NZ は、2013 年の HPV ワクチンの勧奨を一時中止するという日本の決定を引用 38 SaneVax, “The HPV Vaccine Scandal in Denmark,” August 17, 2014, http://sanevax.org/hpv-vaccine-scandalindenmark/. 39 Danish Health and Medicines Authority, “Danish Pharmacovigilance Update, May 2014,” volume 5, July 14, 2014, https://sundhedsstyrelsen.dk/en/news/2014/danish-pharmacovigilance-update-may-2014. 40 Danish Health and Medicines Authority, “Danish Pharmacovigilance Update, September 2014,” volume 5, October 17, 2014, http://sundhedsstyrelsen.dk/en/news/2014/danish-pharmacovigilance-update,-september-2014. 41 Zeraiq, Nielsen, and Sodemann, “Attitudes towards human papillomavirus vaccination among Arab ethnic minority in Denmark.” 42 The New Zealand HPV Project, “About HPV Vaccine,” http://www.hpv.org.nz/hpv-vaccine/about-hpv-vaccine. 43 Ministry of Health NZ, “HPV immunisation programme,” http://www.health.govt.nz/our-work/preventativehealthwellness/immunisation/hpv-immunisation-programme. 44 Ministry of Health NZ, “HPV Immunisation Coverage by Ethnicity, Vaccination and Eligible Birth Cohort—All DHBs [District health boards],” March 7, 2014, http://www.health.govt.nz/system/files/documents/pages/hpv_immunisation_coverage_by_ethnicity_vaccination_an d_eligibile_birth_cohort-feb2014.pdf. 45 “Herald on Sunday editorial: Why do Pakeha spurn HPV vaccine?,” The New Zealand Herald, March 15, 2015, http://www.nzherald.co.nz/opinion/news/article.cfm?c_id=466&objectid=11417400. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 12 しており、2013 年と 2014 年に日本の科学における対話を支配した内科循環器科医、佐藤 壮太郎医師について言及している。 46 コロンビア 日本におけるインターネット上の討論では、他の AEFI の証拠として、コロンビアでの HPV 予防 接種後に報告された一連の有害事象について言及している。 コロンビアでは、2012 年 9 月以来、HPV ワクチンを無料で提供している。ワクチンが性的乱交 を招くことを懸念した宗教団体があったものの、2013 年までに思春期の女子で接種率は平均し て 70~80%となっている。 但し、2014 年の 5 月 28 日に、初の疑わしい AEFI 事例がエル・カルメン・デ・ボリーバルの小さ な町で報告されている。2014 年 6 月 3 日までに、さらにワクチン接種後の副作用を報告する 女子がいた。 47 これらの副作用は足の脱力や失神などを含み、日本で報告された症状と酷似 している。これは、コロンビアの主要放送局によって広く報道され、 48、 49 その後報告される副作 用が増加した。ただし、数件の AEFI は、6 月中旬から 7 月中旬の学校が休みの間に報告さ れた。 2014 年 8 月、副作用を発症した女子が特別な治療を受けられるよう、政府が費用を負担し た。エル・カルメン・デ・ボリーバルの県知事が、国立衛生研究所(NIH)の役人およびエル・カルメ ン・デ・ボリーバルの議員と面会した8月下旬頃 AEFI の報告件数がピークを迎えた。1 日に 45 件の AEFI が報告され、弁護士が「被害者」に訴訟を促していた。 NIH は徹底的な調査を実施し、 50鉛中毒またはウィジャボードの使用によってさえそれらの症状 が発生したという主張を考慮した。NIH は、症状を報告したが医師の診断を受けていない約 400 名の女子について調査を行い、それらの女子の 20%は、そもそもワクチン接種を受けていな いことがわかった。ワクチンと報告された症状を結びつける直接または間接的な証拠はなく、ほとん どの女子は 1 時間以内に退院となり、一切異常は見られなかった。 51 ところが、大統領が国民 Family First NZ, “Parents Right to Question HPV Vaccine,” March 15, 2015, https://www.familyfirst.org.nz/2015/03/parents-right-to-question-hpv-vaccine/. 47 Paula Carrillo, “Mystery illness plagues girls in Colombia,” Agence France-Presse, September 18, 2014, http://news.yahoo.com/mystery-illness-plagues-girls-colombia-052825963.html. 48 Benjamin Radford, “Colombian Girls Blame Vaccine for Mysterious Symptoms,” Discovery News, September 24, 2014, http://news.discovery.com/human/psychology/colombian-girls-blame-vaccine-for-mysterioussymptoms140924.htm. 49 “Hundreds of teenage girls in Colombia struck by mystery illness,” Associated Press, August 27, 2014, http://globalnews.ca/news/1530883/hundreds-of-teenage-girls-in-colombia-struck-by-mystery-illness/. 50 Christoffer Frendesen, “Government investigates mystery illness affecting teen girls in Colombia’s north,” Columbia Reports, August 28, 2014, http://colombiareports.co/hospitalization-200-girls-northern-colombiateenage-generatesconcern-vaccine/. 51 MinSalud, “Vacuna contra VPH no tiene relación con casos de niñas de Carmen de Bolívar,” Press bulletin No. 234, August 28, 2014, http://www.minsalud.gov.co/Paginas/Vacuna-contra-VPH-no-tiene-relaci%C3%B3n-concasos-deni%C3%B1as-de-Carmen-de-Bol%C3%ADvar.aspx. 46 日本における HPV ワクチン接種状況 | 13 の懸念を緩和するために AEFI 事例を「集団ヒステリー現象」であるとして退けたところ、逆にこの 対応が、政府は「被害者」の体験を軽視しているという非難を巻き起こすことになった。 52 40 名 の被害者がソーシャルメディアに訴え、症状の映像をアップロードしたり、煽動的報道を煽ったり し、 53コロンビア国民の反対運動を招く結果となった。 54 コロンビアと日本両国のワクチン反対派団体は、ソーシャルメディアを類似した方法で活用した。 最近、コロンビア政府は、インターネットアクセスや、安価なノートパソコンやタブレットを小さい町に 提供した。それにより、ほとんどの若者は、ワクチン接種反対に関するコンテンツが豊富な Facebook や YouTube へのアクセスが可能となった。これらの新たなコミュニケーション手段を通 じて、情報の伝達方法が変わり、子供たちはこれらの映像を閲覧して親にその情報を伝えること になったのである。 55 これらの事象は急速に世界中で広がった(図 1)。 2015 年 2 月 27 日に、日本全国子宮頸が んワクチン被害者連絡会(日本の HPV ワクチン接種反対団体)がコロンビアでの状況に触れた Facebook ページに関する記事を掲載した。この記事にはテルアビブ大学の自己免疫疾患専門 家である Yehuda Shoenfeld 氏の、女子らが体験した症状が心因性のものであるとは信じがた いと述べている言葉が引用されている。また、Shoenfeld 氏は「何千人」もの女性が米国でも同 様にワクチンの影響を受けていることに触れている。 56 これらの事象が原因で、2015 年 4 月には、コロンビアにおける女子のワクチンの接種率は 80% から 20%に低下している。 57 しかし、エル・カルメン・デ・ボリーバルで報告された AEFI の症例 数は大幅に減少し、 国のワクチン勧奨は撤回されていない。ワクチンは引き続き国の定期接種 プログラム(NIP)の一部を構成している。 58 報告された AEFI 事例の減少には、数々の要因があり得る。まず、コロンビアのニュース報道は 最近、チクングンヤ熱の急増を主に取り扱っているため、HPV 論争から関心が逸れており、集団 52 Gabrielle Mentjox, “‘Mass hysteria’ probable cause of mystery illness in 100s of Colombia schoolgirls: President Santos,” Columbia Reports, September 1, 2014, http://colombiareports.co/mass-hysteria-probablecausemystery-illness-100s-colombia-schoolgirls-president-santos/. 53 Heidi Larson and Will Schulz, “The State of Vaccine Confidence 2015,” London School of Hygiene and Tropical Medicine: The Vaccine Confidence Project, http://www.vaccineconfidence.org/The-State-of-Vaccine-Confidence2015.pdf. 54 Benjamin Radford, “Colombian Girls Blame Vaccine for Mysterious Symptoms,” Discovery News, September 24 2014, http://news.discovery.com/human/psychology/colombian-girls-blame-vaccine-for-mysterious-symptoms140924.htm. 55 Leonardo Arregoces, London School of Hygiene and Tropical Medicine, e-mail communication, April 9, 2015. 56 Miguel Jara, “Los daños de la vacuna del papiloma humano NO son sólo psicológicos,” February 22, 2015, http://www.migueljara.com/2015/02/22/los-danos-de-la-vacuna-del-papiloma-humano-no-son-solo-psicologicos/. 57 “Caso de niñas del Carmen de Bolívar desplomó vacunación contra el VPH,” El Tiempo, February 14, 2015, http://www.eltiempo.com/estilo-de-vida/salud/vacuna-contra-el-papiloma-humano-cayo-58puntosporcentuales/15246061. 58 MinSalud, “Programa Ampliado de Inmunizaciones (PAI),” http://www.minsalud.gov.co/salud/publica/Vacunacion/Paginas/pai.aspx. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 14 心因性疾患を招く社会的刺激が軽減した可能性がある。 59 次に、日本のケースと違って、コロ ンビア政府(ほとんどのコロンビア人が信頼している)、とりわけ保健省は HPV ワクチンの安全性と 有効性を固く信じている。 60 3 つ目に、各国および世界のさまざまな科学界は同政府を支援 し、積極的に国民に子宮頸がんの危険について注意を喚起した。 61 最後に、カトリック教会 は、ワクチン接種を支持しており、これはコロンビアのカトリック住民に HPV ワクチンの安全性につ いて納得させる点では決定的となった。ある司祭は、憤慨している親と保健省との対話を勧め、 親がワクチンと AEFI には関連はなさそうであることを受け入れるのに助力した。 62 図1. 世界での伝達状況を示す地図 1)日本のマスコミで報告された他国におけるHPV状況、および 2)日本国外における 日本のHPVワクチン勧奨の一時中止に関する報告および討論(2014年1月~2015年4月) ノルウェー カナダ デンマーク 英国 フランス スイス 日本 米国 フィリピン コロンビア ケニヤ ニュージーランド 他国で特定された日本の HPV ワクチン勧奨の差し控えに関するオンラインメ ディアの記事 日本で特定された HPV ワクチンに関するオンラインメディアの記事 米国での日本に関する記事公開後のコメント 出典:Heidi J. Larson et al., “Tracking the global spread of vaccine sentiments: The global response to Japan’s suspension of its HPV vaccine recommendation,” Human Vaccines & Immunotherapeutics 9, no. 10 (2014):1-8. 59 “Chikungunya infections spread to Colombia,” BBC, September 11, 2014, http://www.bbc.co.uk/news/worldlatinamerica-29169337. 60 Larson and Schulz, “The State of Vaccine Confidence 2015.” 61 MinSalud, “Vacuna contra VPH no tiene relación con casos de niñas de Carmen de Bolívar,” Press bulletin No.234, 2014, http://www.minsalud.gov.co/Paginas/Vacuna-contra-VPH-no-tiene-relaci%C3%B3n-con-casosdeni%C3%B1as-de-Carmen-de-Bol%C3%ADvar.aspx. 62 Leonardo Arregoces, London School of Hygiene and Tropical Medicine, e-mail communication, April 9, 2015. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 15 付録2:関連するHPVワクチン接種事象研究の国別のケーススタディ 日本の他にも HPV ワクチン接種率が低い国々がある。この付録では、接種率の低さに寄与し ている事由に対して、各国がどのようにその状況に対処するために努力したかについて調査した。 フランス 2013 年に、HPV ワクチンに対する反応としての AEFI について訴える若い女性に関する矛盾す る報告が発表された。 63 2014 年 9 月に、モンペリエ医科大学の腫瘍学および外科専門医で ある Henri Joyeux は、Haut Conseil de la Santé Publique(公衆衛生高等会議)からの Gardasil®の、従前に確立した年齢である 11 歳と比較して、年齢 9 歳以上の女子 64に対す る投与の承認に関する注意書を公表した。 65、 66 Joyeux は、Institut pour la Protection de la Santé Naturelle (IPSN)への提出を目的に、オンラインでの請願書集めを 2014 年 9 月 15 日に開始し、学校単位での HPV ワクチン接種の停止を呼びかけた。 67 2014 年 4 月 1 日の 時点で、この請願書には 374,093 の署名が集まった。署名の多くがフランス国外からのものであ ったが、署名を含む手紙は、2014 年 10 月 9 日にフランスの大統領、保健省および教育省に 送付された。 68 再び、ワクチン反対サイト SaneVax は、誤った状況を素早く報告し、1,200 名のフランスの医療 専門家がワクチン接種を拒否していること、またワクチンの国内製造会社がワクチンに含まれるア ルミニウムが禁止される場合は製品を国から引き上げると脅していること、レユニオン(インド洋に あるフランスの島)の医師らが HPV ワクチンの調査を要請し、その結果が入手できるまでワクチン 接種を停止すること、そしてフランスおよびスペインが製造会社に対して法的措置を取ったこと、に 63 Laetitia Clavreul and Emeline Cazi, “Des experts font le lien entre Gardasil et sclérose en plaques,” Le Monde, November 24, 2013, http://www.lemonde.fr/sante/article/2013/11/24/premiere-plainte-contre-levaccinanticancergardasil_3519409_1651302.html; “Santé: Le Vaccine Gardasil Bientôt Visé par Trios Nouvelle Plaintes,” Le Parisien, November 24, 2013, http://www.leparisien.fr/laparisienne/sante/sante-le-gardasil-aucoeur-d-une-plainte-24-112013-3344849.php; Sanofi Pasteur MSD, “Sanofi Pasteur MSD Rejects Opinion of Regional French Compensation Group in Gardasil Vaccination Claim,” Sanofi Pasteur MSD media statement, November 25, 2013, https://www.spmsd.co.uk/upload/public/Files/10/Final%20SPMSD%20Media%20Statement_Gardasil%20FR.pdf. 64 Breizh-info.com, “Papillomavirus (HPV): Le professeur Henri Joyeux sonne l’alarme,” September 9, 2014, http://www.breizh-info.com/16822/sante/papillomavirus-hpv-professeur-henri-joyeux-sonne-lalarme/. 65 Haut Conseil de la Santé Publique, “Infections à HPV: Nouveau schéma vaccinal du vaccin Gardasil®,” March 28, 2014, http://www.hcsp.fr/Explore.cgi/avisrapportsdomaine?clefr=416. 66 Haut Conseil de la Santé Publique, “Vaccination contre les infections à papillomavirus humains. Données actualisées,” July 10, 2014, http://www.hcsp.fr/Explore.cgi/avisrapportsdomaine?clefr=454. 67 Institut pour la Protection de la Santé Naturelle, “NON à la vaccination massive des enfants contre les papillomavirus,” September 25, 2014, http://www.ipsn.eu/actualites/non-a-la-vaccination-massive-desenfantscontre-les-papillomavirus/. 68 Institut pour la Protection de la Santé Naturelle, “Vaccins HPV, les autorités réagissent…,” November 19, 2014, http://www.ipsn.eu/actualites/vaccins-hpv-les-autorites-reagissent/. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 16 言及している。 しかしながら、HPV ワクチンは NIP の下で引き続き投与され、 国のワクチン勧奨 は有効である。 米国 2014 年 7 月 30 日に、ウィスコンシンで HPV ワクチン接種を受けた数時間後に 12 歳の女子 が死亡した。 69、 70 この事件については 2014 年 10 月 22 日まで公式な政府声明がなく、地 元のマスコミはこの死亡は HPV ワクチンと無関係である、という検視官の所見を報告した。 71 そ の後数ヶ月、他の団体が動いて話を作り上げ、公共の情報の空白を埋めることになった。 この事 象のニュースは国内、英国、そして他のワクチン反対コミュニティーに広がった。 72、 73、 74、 75、 76、 77 政府の声明が発表された後、多くの報道機関(明らかにワクチン反対ウェブサイト以外)は発表 以前の報道を更新し、所見を発表して憶測を減らした。 78 2014 年 12 月 10 に、米国食品 医薬品局(FDA)は、Gardasil®-9 を承認した。これは新たな 9 価 HPV ワクチンで、既存の 4 69 Myra Sanchick and Ashley Sears, “‘The only thing different about that day was that shot’: Did a trip to the doctor kill a healthy 12-year-old girl?,” Fox 6 Now, August 7, 2014, http://fox6now.com/2014/08/07/the-only-thingdifferentabout-that-day-was-that-shot-did-a-trip-to-the-doctor-kill-a-healthy-12-year-old-girl/. 70 Mark Johnson, “A day that started with a routine doctor visit ends in girl’s death,” Journal Sentinel, August 7, 2014, http://www.jsonline.com/news/health/for-girl-a-day-that-started-with-a-routine-doctors-visit-ended-in-herdeathb99326702z1-270410121.html. 71 Karen Herzog, “Medical examiner: Girl’s death not caused by HPV vaccination,” Journal Sentinel, October 22, 2014, http://www.jsonline.com/news/health/medical-examiner-girls-death-not-caused-by-routinevaccinationb99376029z1-280058462.html. 72 Jessica Jerreat, “‘Did the HPV vaccine kill my daughter’: Mother demands answers after healthy and active daughter, 12, collapses and dies after getting vaccine,” Daily Mail, August 8, 2014, http://www.dailymail.co.uk/news/article2720333/Did-HPV-vaccine-kill-daughter-Mother-demands-answershealthy-active-daughter-12-collapses-dies-gettingvaccine.html. 73 Deborah Hastings, “Wisconsin mom: ‘Did HPV vaccine kill my 12-year-old daughter?,’” New York Daily News, August 8, 2014, http://www.nydailynews.com/news/national/wisc-mom-hpv-vaccine-killed-12-year-old-girlarticle1.1897850. 74 “Family: 12-Year-Old Daughter Died Hours after Getting HPV Vaccine,” CBS Atlanta, August 12, 2014, http://atlanta.cbslocal.com/2014/08/12/family-12-year-old-daughter-died-hours-after-getting-hpv-vaccine/. 75 Health Impact News, “Gardasil Vaccine: One More Girl Dead,” August 11, 2014, http://healthimpactnews.com/2014/gardasil-vaccine-one-more-girl-dead/. 76 SaneVax, “Gardasil Vaccine: One more girl dead,” August 17, 2014, http://sanevax.org/gardasil-vaccine-onegirldead/. 77 “Healthy 12-Year-Old-Girl Dies after Injected with HPV Vaccine,” Inquisitr News, September 28, 2014, http://www.inquisitr.com/1504519/healthy-12-year-old-girl-dies-after-injected-with-hpv-vaccine/. 78 Myra Sanchick, “Medical Examiner: HPV vaccine did not cause death of 12-year-old Waukesha girl,” Fox 6 Now, October 22, 2014, http://fox6now.com/2014/10/22/medical-examiner-hpv-vaccine-did-not-cause-death-of-12-yearold-waukesha-girl/. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 17 Gardasil® が対象としている HPV 6、11、16、18、加えて、その他高リスク(発がん性)HPV サ ブタイプ、つまり HPV 31、33、45、52 および 58 が対象となっている。 79、 80、 81 インド 2010 年 4 月に、インド政府は、擁護団体からの圧力により、国の HPV ワクチン接種実証プロ ジェクトを一時中止した。国民の懸念は、対象となる集団、妥当性、安全性、ワクチンの費用 対効果、さらに製薬業界への不信などに集中している。 82 実証プロジェクトの一時中断は各種 論争、請願、議会調査、勧奨および報告等を巻き起こし、 83 最高裁判所の審理が続行中で ある。 84、 85、 86 同議会常任委員会は、政府に対して PATH (Program for Appropriate Technology in Health)が同様の実証プロジェクトを支援したウガンダ、ベトナムやペルーを含む 他の国々に、この件の検討を持ちかけることすら求めた。 民間医療団体が HPV ワクチンを 2010 年半ばから提供してきた。2015 年初期に、National Immunization Technical Advisory Group (NITAG)がインド NIP への導入のためにワクチン の安全性と有効性を評価するよう要請された。しかしながら、予想される導入時期は早くて 2016 年となっている。 87 Merck, “FDA Approves Merck’s HPV Vaccine, GARDASIL®9, to Prevent Cancers and Other Diseases Caused by Nine HPV types—Including Types That Cause about 90% of Cervical Cancer Cases,” December 11, 2014, http://www.mercknewsroom.com/news-release/prescription-medicine-news/fda-approves-mercks-hpvvaccinegardasil9-prevent-cancers-an. 80 Elmar A. Joura et al., “A 9-Valent HPV Vaccine against Infection and Intraepithelial Neoplasia in Women,” New England Journal of Medicine 372 (2015): 711–23. 81 National Cancer Institute, “Gardasil 9 Vaccine Protects against Additional HPV Types,” March 2, 2015, http://www.cancer.gov/clinicaltrials/results/summary/2015/gardasil9-0215. 82 Larson, Brocard, and Garnett, “The India HPV-Vaccine Suspension,” 572–73. 83 Department-Related Parliamentary Standing Committee on Health And Family Welfare, “Seventy Second Report Alleged Irregularities in the Conduct of Studies Using Human Papilloma Virus (HPV) Vaccine by Path in India,” Parliament of India Rajya Sabha, August 30, 2013, http://164.100.47.5/newcommittee/reports/EnglishCommittees/Committee%20on%20Health%20and%20Family% 20Welfare/72.pdf and https://www.pharmamedtechbi.com/~/media/Supporting%20Documents/Pharmasia%20News/2013/September/H PV%20Vaccines%20Parliameetnary%20Report%20%20Aug%2031%202013.pdf. 84 “Supreme Court asks Centre to respond on clinical trial of vaccines,” The Economic Times, January 13, 2015, http://articles.economictimes.indiatimes.com/2015-01-13/news/58024587_1_gardasil-and-cervarixvaccinesjustices-dipak-misra. 85 Teena Thacker, “Government orders HPV vaccine study,” The Asian Age, February 25, 2015, http://www.asianage.com/india/government-orders-hpv-vaccine-study-751. 86 “Court glare on ‘harmful, costly’ vaccines—Rs 15 or Rs 525? Notices to govt after petitions allege favour to private players,” The Telegraph India, September 2, 2013, http://www.telegraphindia.com/1130903/jsp/nation/story_17305212.jsp#.VR0sifnF98F. 87 Thacker, “Government orders HPV vaccine study.” 79 日本における HPV ワクチン接種状況 | 18 英国 HPV ワクチン接種後の若い女児の死亡が報告された後、英国政府は調査を開始し、24 時間 以内にその結果を発表して、ワクチンがその女児の死亡原因ではないことを明確にした。 88 2013 年以来、HPV ワクチン接種を男子にも拡大するよう求める声が広がってきた。 89、 90 2014 年 11 月に、Joint Commission on Vaccination and Immunization は、男性と性交す る男性にワクチン接種をすることがより賢明であると決議し、 91 その後、男子の集団全体に対す るワクチン接種は 2017 年まで延期されている。 92、 93、 94 この延期措置は地方マスコミでの議論 に拍車をかけ、特に予算編成や投票に関して政府高官に対する批判が集中した。 95、 96 オーストラリア オーストラリアでは、数名のメルボルンの女子学生が有害事象を経験した後、HPV ワクチンに関 する肯定的で透明性のある情報提供を強化した。州政府は、新たなサービスである予防接種 後有害事象調査(SAEFVIC)を 2007 年 4 月に発足し、ワクチン接種の一時的中止はされて いない。2014 年 9 月 2 日付の Harrison らの論文は、ワクチン接種資格年齢にあるオースト ラリア女性における性器疣贅が大幅に減少したことを発表し、 国の HPV ワクチン接種プログラム が成功を収めていることを示した。 97 この発表は、オーストラリア国内と世界中で多くのメディアの 88 World Health Organization, “Case Study C: How a Potential HPV Vaccination Crisis Was Averted,” http://vaccinesafety-training.org/c-resources.html. 89 James Meikle, “HPV vaccine could be given to boys as well as girls in UK,” The Guardian, November 28, 2013, http://www.theguardian.com/society/2013/nov/28/hpv-vaccine-boys-girls-cancer-uk. 90 “HPV vaccine: should boys get it too?,” The Telegraph (London), March 12, 2015, http://www.telegraph.co.uk/men/active/mens-health/11467138/HPV-vaccine-should-boys-get-it-too.html. 91 Laura Donnelly, “Gay men to be offered HPV jab under new guidelines,” The Telegraph (London), November 12, 2014, http://www.telegraph.co.uk/news/health/news/11226126/Gay-men-to-be-offered-HPV-jab-undernewguildelines-to-Government.html. 92 Joint Committee on Vaccination and Immunisation, “Minute of the meeting on 4 February 2015,” https://app.box.com/ s/iddfb4ppwkmtjusir2tc/1/2199012147/27417264008/1. 93 “UK postpones HPV vaccine for males,” Washington Blade, March 20, 2015, http://www.washingtonblade.com/2015/03/20/uk-postpones-hpv-vaccine-for-males/. 94 UK Parliament, “Human Papillomavirus: Vaccination: Written question—225307: To ask the Secretary of State for Health, when he expects his Department to be in a position to make a decision on HPV vaccination for adolescent boys,” March 4, 2015, http://www.parliament.uk/business/publications/written-questions-answersstatements/writtenquestion/Commons/2015-02-25/225307. 95 Nick Duffy, “Department of Health ‘awaiting advice’ on extending HPV vaccine to gay men,” Pink News, March 13 2015, http://www.pinknews.co.uk/2015/03/13/department-of-health-awaiting-advice-on-extending-hpvvaccine-togay-men/. 96 Gillian Prue, “Why boys should get the HPV vaccine too,” The Conversation, February 9, 2015, http://theconversation.com/why-boys-should-get-the-hpv-vaccine-too-36932. 97 Christopher Harrison et al., “Decreased Management of Genital Warts in Young Women in Australian General Practice Post Introduction of National HPV Vaccination Program: Results from a Nationally Representative CrossSectional General Practice Study,” PLoS One 9, no. 9 (2014): e105967, http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0105967. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 19 注目を浴びた。 98、 99、 100 がんスクリーニング団体の M. A. Smith による別の論文は、オーストラリ アにおける HPV ワクチン接種の動向について言及し、「オーストラリアは HPV に対し、効果的で 適正なワクチン接種プログラムを導入した」と結論付けている。 101 効果的なワクチン接種プログラムの導入を受けて、オーストラリアのがんスクリーニング委員会の会 長である Karen Canfell 氏が述べているように、オーストラリアは来年子宮頚部細胞診検査から HPV 一時試験に移行する計画であるという報告があった。97 ルワンダ ルワンダでは 2011 年に、全国規模の学校単位の HPV ワクチン接種プログラムの導入に先立っ て、全国的教育キャンペーンが実施された。 102 新たなワクチンの導入に伴う国民の懸念にもか かわらず、 103ルワンダでは、当初からワクチン接種支持者として医療専門家、宗教指導者、著 名な政治家や教師の協力を得ることができ、女子において 90%を超える接種率を達成した。こ れは、導入に先立つ十分な計画と積極的な政策上の関与によって、HPV 関連の疾患やワクチ ンに関する知識が乏しいにもかかわらず、高い接種率を達成することが可能であることを例示す るものである。 104 タンザニア タンザニアでは現在、HPV ワクチンは実証プロジェクトでのみ入手できる。 105HPV 関連疾患およ びワクチンについての知識が地方では低く、親たちの間でワクチンの受胎力への影響に対する懸 German Lopez, “Australia’s free HPV vaccine program is a big success,” Vox, September 8, 2014, http://www.vox.com/2014/9/8/6122575/hpv-vaccine-australia-success. 99 Simon Santow, “Vaccination success against HPV,” ABC News, August 13, 2014, http://www.abc.net.au/pm/content/2014/s4066535.htm. 100 Megan Howe, “Witnessing protection via the human papillomavirus vaccine,” The Saturday Paper, February 28, 2015, http://www.thesaturdaypaper.com.au/2015/02/28/witnessing-protection-via-the-humanpapillomavirusvaccine/14250420001530#.VSP5_fzF-So. 101 Cancer Council Australia, “Has the program been successful?,” http://www.hpvvaccine.org.au/the-hpvvaccine/hasthe-program-been-successful.aspx. 102 Agnes Binagwaho et al., “Achieving high coverage in Rwanda’s National Human papillomavirus vaccination programme,” Bulletin of the World Health Organization, May 23, 2012, http://www.who.int/bulletin/volumes/90/8/11-097253/en/. 103 Nobila Ouedraogo et al., “Human papillomavirus vaccination in Africa,” The Lancet 378 (2011): 315–16, http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2961164-1/abstract. 104 Tom G. Hopkins and Nick Wood, “Female human papillomavirus (HPV) vaccination: Global uptake and the impact of attitudes,” Vaccine 31, no. 13 (2013): 1673–9, http://vaccinesafetyresource.elsevier.com/sites/default/files/HPVHopkins-Female.pdf. 105 L. Bruni et al., “Human Papillomavirus and Related Diseases in Tanzania: Summary Report,” ICO [Institut Català d’Oncologia] Information Centre on HPV and Cancer (HPV Information Centre), March 20, 2015, http://www.hpvcentre.net/statistics/reports/TZA.pdf. 98 日本における HPV ワクチン接種状況 | 20 念 106、 107—以前の破傷風トキソイドワクチン接種を巡る噂から派生した問題 108—がある一方 で、ワクチンの受入れ率は 93%と高い。情報は、ほとんど臨床医(住民から信頼できると見られ ている)、人気のあるマスコミや教会などの地域社会に根ざした経路から提供されている。 国別の懸念の要約については付録1、これらの事象がいつ発生したかを示す年表については付 録2を参照のこと。 106 Pieter Remes et al., “A qualitative study of HPV vaccine acceptability among health workers, teachers, parents, female pupils, and religious leaders in northwest Tanzania,” Vaccine 30, no. 36 (2012): 5363–7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22732428. 107 Deborah Watson-Jones et al., “Reasons for receiving or not receiving HPV vaccination in primary schoolgirls in Tanzania: A case control study,” PLoS ONE 7, no. 10 (2012), http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0045231. 108 Melissa S. Cunningham et al., “Cervical cancer screening and HPV vaccine acceptability among rural and urban women in Kilimanjaro Region, Tanzania,” BMJ Open 5, no. 3 (2015): e005828, http://bmjopen.bmj.com/content/5/3/e005828.full. 日本における HPV ワクチン接種状況 | 21 付録 1:国別のケーススタディの要約 国 使用が承認 された日付 オーストラリア 2007 年 4月 国の定期接 種に加えられ た日付 ワクチンに対する懸念の日付と きっかけ 政府の対応のタイミングと内容 2007 年 4月 2007年5月:メルボルンの女学校で、 720名の女児がHPVワクチン接種を 受けた。26名の女児に、眩暈、失 神、神経学的な所見が認められた。 うち4名が病院に搬送された。 当時の連邦厚生大臣とビクトリア州 知事のラジオ取材が行われた。州政 府は、2007年4月に新たな サービ スであるSAEFVIC(Surveillance of Adverse Events Following Vaccination in the Community: 予防接種後有害事象調査)に資金 提供した。ワクチン一時中止はなし。 2016年:良好な結果を得たワクチン 接種プログラムに対応して、検診方 法を子宮頚部細胞診検査からHPV のDNA検査に移行する予定である。 コロンビア 2006年 12月 2012年 9月 2014年8月:足の冷え、不快、頭 痛、体重減少、しびれ、失神、麻痺 や発作などの243の事例 大統領、政府および保健省はワクチ ンの安全性と有効性に対する信頼 を固持した。ワクチン一時中止はな し。 デンマーク 2006 年 2009 年 2015年3月:ワクチン接種を受けた女 子が患った慢性頭痛、筋肉痛、筋肉 不全についてのテレビ番組報道。 2014年5月から2014年9月における 疑わしい有害事象が、デンマーク国 家保健委員会(DHMA)の医薬品 安全性監視報告にて言及される。 ワクチン一時中止はなし。 ニュー ジーランド 2006 年 7月 2008年 9月 2015年3月:「その他」カテゴリーの集 団における低い接種率についての報 告および「白人女子は性交しないとい う理論」を理由とする仮説を提唱した 博士課程の学生の報告。Family First NZは、人種間の接種率の違い を 「裕福なPakeha(白人)女子が HPVワクチンを拒否している」という主 張に反して、ニュージーランドですべて の人種集団の親は伝染病ではなく行 動の結果生じる感染に対するワクチ ンを子供たちに接種させるという圧力 を拒否している」という概念の裏づけと して利用している。 政府の公式対応なし。ワクチン一時 中止はなし。 日本 2009年 10月 2013 年 4月 2013年4月:杉並区行政は、影響を 受けたとされる女児の家族に対し補 償を行った 2013年6月14日:政府がHPVワクチ ン接種の勧奨を一時中止。 2015年3月31日:ワクチン接種反対 団体がMSDおよびGSK社屋外で抗 議を行う 2015年4月26日:全国子宮頸がん ワクチン被害者連絡会 が全国「ワク チントーク2015」イベント開催を発表 2015年1月:厚労省(MHLW)の専 門家委員会は、HPVワクチン接種 後の有害事象がワクチン免疫学的 または神経学的影響によって引き起 こされたという可能性を退けるが、 HPVワクチン接種の勧奨は再開され なかった。 日本における HPV ワクチン接種状況 | 22 インド 2008 年 7月 未導入 2009年10月:HPVワクチンを実際に 行うプロジェクトに対する国民からの非 難、ワクチンの安全性に関する懸念、 費用、倫理的な問題。 2010年4月:政府がHPVワクチン接 種実証プロジェクトを一時中止。 2010年4月:以前の懸念事項や一 時的にHPVワクチン接種と関連があっ たとされた4名の死亡を取り上げた記 者会見および保健省への覚書。公 益訴訟が開始された。 2015年初期:予防接種専門家会 議(National Immunization Technical Advisory Group)がHPV ワクチンの安全性と有効性を評価す るために招聘された。 2009年9月28日夕方:英国保健 省は、迅速に対応し、マスコミと国民 に対して死因はHPVワクチンではなか ったことを伝えた。ワクチン一時中止 はなし。 英国 2006 年 6月 2008年 9月 2009年9月28日:HPVワクチンの1回 目の投与直後、コベントリーの女児が 衰弱して、死亡した。 フランス 2007 年 7月 2007 年 10 月 2014年3月28日(対象年齢を9歳に 引き下げ 議会による査問および最高裁の審 理継続中。 新たな政府の反応なし。ワクチン一 時中止はなし。 2014年7月10日(さらに接種率を高 める努力):Henri Joyeux’sは警告声 明を行い、IPSNとともに、2014年9月 15日に学校単位のHPVワクチン接種 に反対する請願書集めを開始した。 日本における HPV ワクチン接種状況 | 23 付録 2. 安全性に関する懸念の年表 HPV ワクチンの最初のライセンス供与(FDA) オーストラリアで導入 フランスで導入 インドでのデモプロジェクト 英国で導入 デンマークで導入 日本で Cervarix ライセンス契約締結 日本で Gardasil ライセンス契約締結 コロンビアで導入 武田製薬工業株式会社がライセンスを化血研に承継 デンマーク: コロンビア: デンマーク: 日本: フランス: インド: 日本: インド: 英国: 47 名の女児の AEFI の詳細を取り扱うテレビの ドキュメンタリーが公開される。 243 名の女児が AEFI を報告 AEFI の急増が懸念をもたらす 政府が HPC ワクチン勧奨を一時中止する 十代の女子がワクチン接種後 2 ヶ月後に有害事象を報告 政府が HPV 実証プロジェクトを一時中止 ワクチン後、3 名の女児が CRPS、そして 9 名が慢性的疼痛を訴える HPV ワクチン接種デモプロジェクトが安全性、コスト、倫理上の懸念から公式に批判を受ける。 ワクチン後間もなく、コベントリーの女児が衰弱して、死亡する オーストラリア:メルボルンの女学校の 26 名の学生がワクチン後に症状を発症し、4 名が病院へ 日本における HPV ワクチン接種状況 | 24 Blank 日本におけるHPVワクチン接種状況 続く議論と世界的な影響 authors 1616 Rhode Island Avenue NW Washington, DC 20036 202-887-0200 | www.csis.org 表紙写真: https://www.flickr.com/photos/71707869@N00/575455996. Rose Wilson Pauline Paterson Jeremy Chiu William Schulz Heidi Larson A Report of the CSIS Global Health Policy Center 2015年4月
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