ソニーDNA ~ソニーカルチャーの源泉とノウハウを明らかにする~ ------------------------------------------------------------------------------~ソニー大ヒット法則~ 新しいアイディアは内緒で作る(まず作ってみる) 信念があれば上司に逆らってでも突き通す 都合の良いことだけを報告する(方便を使う) 説得は資料ではなく試作品でする 欲しい人間は社内外から自由に引っ張る ターゲットは明解にする パラレルに事を進める トップの意見は丸呑みしない。 参考意見として聞いておく ------------------------------------------------------------------------------大曽根幸三 、木原信敏、白倉一幸、森園正彦、中島平太郎、菊池誠、坂井利夫 <これから7人のメッセージを毎月順次掲載していきます> ------------------------------------------------------------------------------はじめに ある日、大曽根さんと懇談会を持つ機会があった。その内容をまとめて一部の人に配 ったら受けた。その後商品力強化プロジェクトがスタートし委員長である大曽根さんが出 席される会議のほとんどに同席できたので、これもまとめて一部の人に配ったらまた受け た。 その内MD室の田村室長からこの調子でソニーのスーパースターに会って同じ様 にまとめてみたらどうか、という指示があった。 斯くして2ヶ月に1人くらいのペースでイ ンタビューをすることを続け、94年5月現在、8人の方々とお話をさせていただいた。人 選は全く他意はなく40周年記念の時に配られた「源流」の役員名簿を眺めながら感覚で 決めさせていただいたのだが結果的にビデオの木原さん、インストの森園さん、白倉さん、 オーディオの中島さん、半導体の菊池さん、経理の坂井さん、そしてGAの大曽根さんと バランスが取れた取材になったのではないかと思っている。トリニトロンの吉田さんにも お会いしたが充分な時間がなく今回はまとめることはできなかった。次の機会には絶対 編集したい。 さてまとめ方であるが箇条書でエッセンスだけを抽出して手短にまとめることも考えた。 しかし臨場感を伝えたいと思ったので「大曽根語録」と同様、実況中継風とした。その為 にかなりの枚数となった。御容赦願いたい。 さらにインタビューさせていただいた方々 の真意はこうだろう、という推測で実際に発言されていないことも私が補筆している。御 了承いただきたい。 仕事をしていると様々な現実的壁にぶつかり意気消沈することがある。そういう時にこ のThe 7 Stars'を読み返していただいて勇気復活、明日への炎の充電にしていただけれ ば幸いである。 MD室 吉村 司 1994/5 取材日 大曽根編:92/8~93/3 木原編:93/10/27 白倉編:93/11/12 森園編:93//12/27 中島編:94/2/1 菊池編:93/4/21 坂井編:94/5/18 取材者 MD企画開発部 田村、吉村、倉見、片桐 執 筆 MD企画開発部 吉村司 WEB提供 TechnoSquare事務局 2003年6月 大曽根編 商品力強化委員長 GA語録の部 (全文92年上期現在) 1. なんでも半分にできると信じる 2. サイズは中身に関係なく決める 3. 目標は単純明解にする 4. 検討しないでOKの約束をする 5. 困難は可能であり不可能は割り切れ 6. 説明する前に物をデッチあげる 7. 保養地などでブレストし、目標達成するまで帰らない 8. 新しいアイディア、面白いアイディアは上司に内緒で作る 9. 頼み事は忙しい奴に頼め 補足 ●5.......困難は可能であり、、、、 大曽根さんによれば困難だという会議を3回やるといつのまにか結論が不可能になっ ていることがよくあると言う。 出来ない理由は上司にとって出きる理由と一緒であると いう。なぜならその出来ない理由が2つだった場合、その2つさえクリアーしてしまえば出 来るということである。それでも出来ないと言うやつは去れ、ということになる。 新幹線の設計者で有名な島秀夫語録の中にもこれと酷似しているものがある。島に言 わせれば「出きることを証明するより、出来ないことを証明することのほうがよっぽど難し い」という。つまり出来ないと断言するからにはありとあらゆる可能性をすべてを否定する ことが必要になりそれを証明することはまず不可能にちかい。ところが出きることを証明 することは簡単である。なぜなら1点でも突破できる可能性を見つけだせ良いからであ る。 ●8.......上司に内緒で作る、 これは自分の上司がなんでも否定的に物を考える人間だった場合、そんなやつなんか 無視して勝手作ってしまえという意味。つまりどんな場合でも上司に内緒にやれという意 味ではない。その上司がその商品はモノにならないと思っても実際他の人間に見せれば 面白い、やるべし!となるかもしれない。そういう可能性をかたっぱしから潰す上司は 時々いるのであってそういう場合はおおいに上司に内緒で作るべし。 ●9.......忙しい奴に頼め、 忙しい=(イコール)出きるやつ、つまり忙しい人間ほど仕事ができる人間である。頼み 事ならそういう人間に頼め、という意味かと思っていたが大曽根さんから補足があった。 真意は忙しい=出きるやつ、以外にもう一つあった。暇なやつに頼むと「わかりました」 と快諾はするが、いつでも出きると思うため、頼み事が後回しになる傾向があるというの だ。明日にでもやるかとなり、その内、今週中にでもやっておこうとなりいずれ忘れてしま う。 しかし忙しいやつに頼むとその時は仕事を頼まれたことに難色を示すが明後日の3時 から5時まで時間が辛うじて空いているのでその時まででよければなんとかします、とな る。つまり忙しいやつは空いている時間が限られておりそのため計画がはっきりして、結 果早くできる、という意味だそうだ。これは奥が深い。まさに経験に裏付けされた人使い のノウハウの極地的領域を感じる。 MD室 吉村 大曽根語録('94)大曽根編参照のこと ●思い込みの激しいやつに企画をさせろ。 (セキュリティー商品の最良の企画マンは泥 棒である ..P15) ●デビュー商品は品質第一に考えろ (性能はプリミティブでもよい。βの失敗は品質に あった。 ..P22) ●最大マーケットでダントツのシェアーを取れ (一番大きな市場をなぜ狙わないの か?!2位以下を10%以上引き離せ。 ..P10) ●可能性で目標をきめるな、必然性できめろ! (出来そうな目標を目標とする な。 ..P10) ●激戦区にベテランをまわせ (ハイビジョンなんて新人にやらせておけ。人材配置の問 題。 ..P11) ●攻めて攻めて攻めまくれ! (高いシェアを取るとなぜ衰退がはじまるのか。 ..P10) 大曽根経験則 ●広告イメージが企画段階から明解な商品は成功する。 ●同じ価格で機能を入れられます、があぶない。 (マイコン多機能の罠) ●ヒット商品は後継機種からは出ない。 ●多角化は今の技術3割以上をベースにする。 ●ユーザーは意外と保守的である。 ------------------------------------------------------------------------------大曽根編 93年度商品強化プロジェクトが発足し委員長である大曽根さんを中心にTV事本、ME 事本、PV事本、AU事本の4事業本部とプロダクトプランニングについての会議が行なわ れた。私は幸運にも全会議に出席することが出来た。おそらくこれほど短期間の内に大 曽根さんのエッセンスを学ぶ機会を与えられた人間はいないのではないか。まさにラッキ ーであった。 大曽根さんのポリシーはなぜこうもわかりやすいのだろうか。とにかく明解である。言葉 も非常に平易でストレートなのだ。新入社員にも理解できる明解さだ。強い戦略、戦術で あればあるほどシンプルなものである、という好例だと想う。 また時々過激な檄が飛び 交うことがある。例えば「死ぬ一歩手前までやれ、」とか「休んでいる暇はねー、」「実績が 上がらなければクビだ」などの類だが、この組合が聞いたら烈火の如く抗議するような言 動も、その場にいたスタッフは大いに笑う。このレポートだけを読んだ諸兄は沈痛なムー ドになった会議室を想像するだろうが実は逆なのである。会議室はいたって和やかで爆 笑している。しかしだからといってその言葉をさらっと流すことは絶対できないのである。 それは大曽根さんの実績が物を言うのであるし、またこういう檄を飛ばしておきながら部 下の反感を買わないというのも、リーダーとして非常に得な性格と言わざるを得ない。人 も羨む性格である。 田舎のおっさんとしか思えないような風貌から次々と飛び出す超1流のマネージメント 論、戦略論。好き嫌いはあるだろうが1つのスタイルとして一度は触れても損がない大曽 根WORLDだ。よってここに企画マン、マネージャーの座右の銘としてThe Bible 1大曽根 Worldを送りたい。 大きさ半分、コスト半分 何でも半分にできると思え! 大曽根 幸三 ~マネージメント~ 組織とは形ではない、運用である ●7年周期でくる大波。その間にやっておくべきこと! 今まで7年周期で波が来た。この前はどんどん円高になった時だった。危機だと言われ た。それでも他社がダメでも前年比率50%up目標でやれ、と言ってきた。7年間の内6年 を一気呵成にやっていけば勢いが出ているので7年目の大波を乗り越えることができる のだ。そういう体質になってしまえば景気が良くなったらさらにこっちのモンだ。勢いがつ いているからますます楽になる。今伸びていないのを景気のせいにしているところは景気 が良くなっても伸びないと断言できる。 MEは年々増収を重ねついに1000億になった。加速がついているから2000億も早い ぞ。つまりロケットの1段目を切り離した状態だから勢いがあるのだ。1000億はそういう 意味で伏し目である。とにかく1000億を目指せ!と言ってきたのだ。では1000億という 目標の数字に根拠があるのかと言われれば、それは神のお告げである。 (一同笑い) つまり1000億になると一人前と言えるのだ。例えばちょうどAIWAが1000億少々。一 つの活動体として機能する最低限の規模といえるのだ。 とにかく君たちは赤字ビジネス 見直し対象からそのノミネートを免れたのだ。 頑張ってくれた! (商品力強化プロジェ クトより) ●強い時にこそ次の仕掛けをすべし。 このままではあるはずがないという冷静な人間が内部にいる必要がある。 今のビクターを見よ。VHSでソニー陣営に苦杯をなめさせ破竹の勢いだったビクターも 今の情勢で非常に苦しくなった。ビデオ単体でいつまでも利益を得続けるはずがないと いう危機感がなかったと言える。AU事はAUが好調な時でもいずれ来る不調期に備えて 新しいネタをしこむことを忘れなかった。それが`AU,GA共にとにかく毎年増収を果たして きた理由である。マグネスケールが厳しいというが(懇談会出席者より発言)あの分野で は強すぎたと言える。それであぐらをかいていたのではないか。マグネはいま何をしたら 良いのか分からないというがGAの場合、迷ったらラジオに戻っていた。ラジオなんてまだ やっているのかと良く言われたがラジオはアナログ技術のノウハウの固まりで、ある面デ ジタルよりはるかに難しいと言える。その上、安くしろ、感度は上げろ、小さくしろ、とまさ に四重苦五重苦の連続であった。だから非常にノウハウがたまった。そして芝浦の商品 はこの電波技術を元に様々な商品に発展して来ている。つまり、ラジオこそは様々な商 品の技術ベースとなっていると言えるのだ。このように原点に戻ることが必要である。他 のメーカーはラジオが売れなくなったときエンジニアをビデオなどに人を回している。 私は多角化は進めているがラジオ、テープの技術をベースに多角化を進めてきている のだ。全く新しいことをやるのは刹那的である。長続きしない。 (幹部との懇談会より) ●多角化は今の技術の3割はベースにすること。 三協はオルゴールメーカーだがオルゴールを動かす為にモーターもやりはじめた。それ がなかなか良く出来ていたのでソニーが使いましょう、ということになった。三協としてもソ ニーから色々なノウハウが修得できるのでやりましょうということになった。その内ヘッド をやりはじめた。モーターのコイルの技術をもってすれば簡単に出来そうだということで やりはじめたものだ。つまりオルゴールが原点になっているのだ。いきなりヘッドをやりは じめたのではない。このように多角化は自分達の得意の技術をベースにしなければ失敗 する。経験では少なくとも既存の技術3割は含んだ多角化が必要。全くソニーにはない技 術が必要な場合、その方面のスペシャリストを雇うなどして補うこと。 (幹部との懇談会 より) ●守ろうと思った瞬間に衰退は始まる! なぜLCDつきカメラがソニーから先にでなかったのか?業務用のカメラではとっくのむ かしにモニターで確認しながら撮影するスタイルがあった。にもかかわらずソニーから出 なかった。シャープに先をこされた。過去をいってもしょうがないがそういう体質は問題で ある。ズバリTRシリーズがヒットしすぎたからではないか?この座を守りたいと思った瞬 間に衰退は始まるものだ。シェアを30~40%も取ってしまうとリスキーなことができなく なるのだ。そこのマネージャーは一生懸命その高いシェアをキープしようとし、結局新し いことができなくなりじり貧になってゆく。とにかく常に攻めて攻めまくる。休んでいるヒマ なんてねーてんだ。 例えばウオークマン。あるモデルを発表した時点では実は3世代先の検討が既にスタ ートしているのだ。逆に言えば3世代先の検討がスタートできない内は新しいモデルを出 さないという徹底ぶりである。3世代先まで前もってやっているからもし他社が強力なモデ ルを出してきても2世代目の検討があらかた終わっているので3ヵ月後には本手配して 対抗機種あっというまに出してしまう。あの最強カテゴリー、ウオークマンでさえ今の地位 を守ろうなどと言った精神は微塵もない。攻めまくっているのだ! (商品力強化プロジェ クトより) ●可能性で目標をきめるな、必然性できめろ! シェアーが15%に満たないものは仕事をしていないのと一緒だ。テレビなんて何十年 やってもそれが出来ないのは仕事をしていないにほかならない。 96年にはシェア20% 取りますと言うが35%くらいのこと言え!最初から20%と言ってしまえば15%になって しまうぞ。黒字も数年後にはします、なんていうのは信用しないことにしている。1年で黒 字にならないものが3年後には黒字になりますといってそのとおりになったためしがない。 1年でやれ。 ダントツのシェアを取っていないのはあっちこっち手を伸ばしているからだ。 下手な鉄砲数打ちゃあたるってなもんだ。さらに文句を言えば目標設定が可能性から作 られている。これぐらいはできるだろう、という可能性から作られているのだ。目標設定と は必然性で作るものだ。ウチの特殊事情なんていうのは問答無用、やるかやらないかだ。 (商品力強化プロジェクトより) ●最大マーケットでダントツのシェアをとれ! とにかくこのカテゴリーだけはダントツのNO.1というジャンルを持て! 2位以下を10% 以上引き離せ!どうして満遍なくやっているのか?ここだけは1位です、という話がない。 何?16インチはNo.1だー?そんなもん他がやっていないからではないか! オリンピックへ出て1位になった、しかしその種目は他の国が参加していなかったという のと同じだ。同じ種目で世田谷区民大会に出たら2位だったというのでは(一同爆笑)どう しうようもない。 小さいマーケットのところでNO.1を取ってもたかが知れている。金額ベー スで一番大きなところで1位になれ。これを達成するのは半端なことではない。まぐれで はできないからだ。しかし達成すればおのずと力がついてきて総合的に強くなるぞ!。 何?店頭展示展開上どうしてもサイズバリエーションが必要と営業が言う?昔から士農 工商と言って翌月の販売数も当てられない連中に主導権をとらせておくのが間違ってい る。ウオークマンなんて営業が大反対した。意見もほどほどに聞いておけ。 (一通り説明 があった後)ならばオーディオのリバティーの時のように営業をプロジェクトに入れて目的 を推進したらどうか。 プロジェクトに営業を入れてしまえば自覚も出てくる、自分が関わ った商品だから、はい売れませんでした、と責任逃れができなくなる。 (商品力強化プロ ジェクトより) ●ハイビジョンなんて新米にやらせておけ! なぜベテランをハイビジョンにまわしているのか?ハイビジョンなんて当分おまんまが 食えないものだ。ベテランはメシを喰う方へまわせ。そういうところこそ激戦区のはずだ。 25インチが一番のマスマーケットならそういうもっともパワーを使うところにベテランを投 下すべきだ。ベテラン人間は新しいものをやりたがると言うのならそういう奴は研究所に 行け。ビジネス感覚がないやつは設計者をやめろ。研究所へとばせ。ハイビジョンは 新 米にやらせておくこと。 (商品力強化プロジェクトより) 奇人、変人を使いこなす。 それがマネージメントだ! ●人使いの達人は奇人、変人、特技を持っている奴を使う。 普通はオールマイティーな人間を部下にしたがる。便利だしそういう奴は従順だ。一方 あばれ馬を飼い慣らすのは容易ではない。しかし奇人変人はそれぞれ人にはない抜き 出た特性を持っている。それらを総合させればそこのグループの仕事のポテンシャルは 非常に高くなる。 プロジェクト制にする場合奇人変人を組み合わせると相性の問題が出てくるので慎重に やること。私の場合は大体2名はこちらから指名してリーダーを作ってしまう。あとはその 仕事をやりたいものが手を上げて集まってくる場合もあるし、その指名した2名が人を集 める。こうすれば相性の問題を回避できる。 (幹部との懇談会より) ●プロジェクト制は仕事の喜びを実感させるシステムだ。 会議で物を決めてはいかん。会議で「そうしましょう」と決まったところで出席者の誰もが 自分が責任者とは思っておらず他の出席者が適当にやるんだろうと思うものだ。つまり1 0人出席していれば責任が1/10になってしまうのだ。自分が責任を持つ訳ではないの で安易に決まってしまうこともある。 私はプロジェクト制を敷いている。責任が全部そこのプロジェクトグループになってしま うやり方なので彼らはおのずと慎重になり決断が遅れることもあるだろうがやるとなった からには必ずやってくれる。プロジェクト制にすれば成功もそこの功績、失敗もそこの責 任となる。成功すれば自分達の働きで成功したと意気は大いにあがるし、失敗すれば自 分達のことなので大いに勉強となる。 ヒット商品が出るとあれは私がやったのだ、という具合にマスコミの取材に登場してくる 人間がいるが、本人は気持いいだろうが、周りはあいつばかり目立っておもしろくねー! あいつだけがやったのではない、といって嫉妬を買うこともあるだろう。 しかし責任が明確なプロジェクト制にすれば、あの成功はあそこのグループの功績大で あり、そのリーダーはだれそれであり、今回の商品の代表として取材を受けても当然だと 自他共に認められるので嫉妬も買わない。 そしてそういう時は私は絶対しゃしゃりでな い。全部彼らの手柄としている。 (幹部との懇談会より) ●自分がどのような位置づけで仕事をしているかわからせることが重要。 例えば石を運べというのと、城を作るためその基礎となる土台の石を運べ、と言うのと では仕事のやる気にも大きな違いが出てくる。自分の仕事が将来のどのようなビジネス につながっているかがわからず、ただ小さいヘッドを作れと言われただけでは自分の仕 事に意義を持てない。 組織があまりにも大きくなりすぎるとこのような状況になってしま う。ところがプロジェクト性なら自分の仕事の位置づけがまことによくわかるのだ。 (幹部 との懇談会より) ●困難だということは出きる、ということだ! 困難だという会議を3回やるといつのまにか結論が不可能になっていることがよくある。 これはとんでもない勘違いである。例えば出来ない理由が2つだったとしよう。それならば その2つさえクリアーしてしまえば出来るということである。つまり出来ない理由は出きる 理由と同じである。 (商品力強化プロジェクトより) ●出来ないという理由をすぐ言う奴は去れってんだ! むずかしいから出来ないと、出来ない理由をたくさん言うやつがいる。 俺がやれって言 っているんだから使用人のくせに四の五の言うな。できないと言うのなら他の人間にすげ 替えるだけだ。PTC事業部は昨年度部長以上の人間を全部首にした。その結果PTC事 業部は25%伸張を果たしているがこのルールは3期やって利益が上がらなければ首と いうのはAUではあたりまえのことなのだ。 (幹部との懇談会より ●大きな声で言えないが一人や二人、入院してもしかたがねー。 とにかく必死にやることである。死ぬ一歩手前までやる。死んじゃっちゃーしょうがいな いからその一歩手前までやる。そうすると必ずだれか再起不能になる。入院する。ウオー クマン2世代目の時だって商品が出来たとたんプロジェクトリーダーは入院した。そういう ものである。 また離婚もする。(笑) こういう話があった。15日ぶりに家に帰ったら布団からタンスからなにまで、ぜーんぶ かたずいていて女房もいない、。(笑) しかし、俺にいわせれば「帰ってきて欲しい」なん てしっぽをふるな、そんな女は放っておけってんだ。俺がもっとをいい女をさがしてきてや る!といって本当にさがしてくればこれもまたマネージメントになる。信望が厚くなる。 はたから見ているとよくあれだけ絞られてあそこから人が逃げないなーと理解できない らしい。それは表面上しか見ないからそう思うのだ。実際GA事業部に来てみろ。やって いる連中はのびのびと楽しく仕事をやっている。 (商品力強化プロジェクトより) ●マネージャーは常に部下に勝ち癖をつけさせてやることだ。 小さいやつで喧嘩に強いやつがいるだろう?あれは勝ち癖がついているんだ。負ける はずがない、と非常に余裕があり冷静なのだ。そんな奴に対面した奴はたとえ図体はで かくても頭に血が登って絶対勝とうと思うからスキがでる。それで勝ち癖がついている小 さいやつに負ける。この例と同じでマネージメントとは部下をいかに勝たせてやるか、バッ クアップしてやることなのだ。そうすればどんどん自信がついて大きな仕事ができるよう になる。 (商品力強化プロジェクトより) ●上がファジーなら下はビジー。 社長に何か言われたとする。すると本部長は事業部長に「おい、どうしようか、」と相談 する。事業部長はさらにその下の部長に「どうするかなー、」とやる。部長は部長でさらに 下に「どうしたもんか、」と相談している。上がしっかりポリシーがあれば、「いえ、社長、こ れはこれこれこうなっております、ですから今回はやりません」とピシっとした態度で対抗 できる。ポリシーがしっかりしていれば余計な仕事を部下にさせなくて済むのだ。ところが 上がちゃんと防波堤の役割をしていないもんだから、下はてんてこまいだ。 つまり上がフ ァジーなら下はビジーてなもんだ。(一同爆笑)(商品力強化プロジェクトより) ●どちらでも体制に影響のないものを幹部に聞くな。 以前ダイダイ色事件というのがあった。ある商品の色を赤か黄色か迷ったことがある。 会長は赤と言い、社長は黄色と言った。しょうがないので赤と黄色をまぜてダイダイ色に した。そうしたら両方に怒られた、というんだ。(一同大爆笑!) 最近、リモコンでチャンネルとボリュームの位置が問題になっているようだ。会長は右と 言い、社長は左だと言う。そんなもんあの人達に聞くな。聞けばあれこれ言うに決まって いるだろう。両方に聞くからいけない。左、右どちらでも体制に影響ないものをなぜ伺いを たてるのか。 仕事というものはそういうもので体制に影響のないものはどんどん決めてもらって構わ ない。結局あのようにふらふら右になったり左になったりしたのは担当者が気概を持って 「これこれこういう理由でこうしました!」と強く信念を持って言う人間がいなかったからあ のような結果になったのだ。気概を持って発言してもらえれば「あーそうか、」と上だって 安心して納得するのだ。 (幹部との懇談会より ●立ち話はすぐ話が終わって良い。 すわると腰を落ち着けてしまうからどうしても時間がかかってしまう。立ち話なら床の上 に10分も20分も立ち続けることは出来ないから3分で終わってしまう。 (幹部との懇談 会より) ●会議室はガラスばり 会議室にとじこもって何をやっているのかわからない。眠っている奴もいるかもしれない。 そこでガラスばりにした。激論をしているなら激論しているところを周囲に見せるべきだ。 (幹部との懇談会より) ●1m20cmより高いものを職場に置くな。 例えば仮にあるグループから私達は今このような問題を抱えています、というようなプ レゼンがあったとしよう。しかし、箇条書きになるほどまでに整理されてOHPでプレゼンを された時にはすでに手遅れなのだ。OHPになるまでには様々なあがきがあるのであり、 いよいよ上司にプレゼンという時点では完全にうつ手がなくなっているものだ。 その為私は1日2度は職場を見回っている。部長は当然会議だの様々な雑事が多い。 だから部長よりよっぽどどのような問題が職場で起こっているかわかっている。どのよう な進捗になっているのか職場を巡回するのが一番良い。問題が発生していればそのム ードですぐわかる。 あの広い職場を歩き回っているので私に緊急で連絡を入れたいという時、私がどこに いるかすぐわかるように職場には1m20cmより高いものを置かないようにしている。視 界をさえぎらないのでどこあるいていてもすぐ見つけてくれる。 (幹部との懇談会より) ~プロダクトプラン~ エキスパートに企画をさせるべきだ! ●思い込みの激しい人間にやらせるのが一番 以前大賀さんから盗難対策、セキュリティー関係の商品を出せと言われた。 ところがこ の手のアイディアを出せと言ってもなかなか出てこないものだ。もしこの商品を企画する ならば一番最高の企画マンは泥棒にやらせることである。それも前科なんていうのは捕 まってしまったどじな奴だから捕まっていない奴に限る。(笑) 以前、前科者の話を聞ける機会があったのだが例えば犬を3匹飼っていれば泥棒に入 られないと言うがあんなのは嘘だと言う。彼に言わせれば3回通って犬に顔を見せれば 次回から吠えなくさせる自信があるというのだ。それから電気が消えて30~50分が進 入時と言う。つまりこの時は眠りが深くちょっとした物音がしても熟睡したままだと言う。さ らに万が一、家の人間が起きて110番に電話されても大丈夫なように、あらかじめ近くの 公衆電話からその家に電話をかけて切らずに放置しておくそうだ!家の人間は無言電 話なのでイタズラかと思い電話を切るだろうが、実は日本の電話のシステムはアメリカと 違って電話をかけた側が電話を切らないかぎり、受けた側がいくら受話器を置いても、ず ーっとつながりぱなしになってしまっているんだね。つまり泥棒だ!と思って110番にか けようと思ってもその電話は泥棒さんが先ほど公衆電話からかけた電話がそのままつな がっており110番にかけようにもかけられない、というわけだ。その泥棒にいわせればそ の家の電話線をナイフで切ったりするのは素人の泥棒がやることで俺はそんなことはし ない、というのだから全く恐れ入る。(笑) ちょっとした聞き込みでこの有様である。次から次へと我々善良な市民が思いもつかな いノウハウが登場する。ソニーの人間には石川五衛門のような悪いやつがいないからセ キュリティー商品を考えようたって、おいそれとできるものではないのだ。だから泥棒に企 画をやってもらうのが一番だということになる。 その分野においては一番思入れが強 いエキスパートに企画をやらせないとだめだという理屈である。最近サバサバした人間 が多い。何かにこだわりがない人間は企画マンとしてはだめだ。 MEはオーディオからモニターまでAV機器がすべてそろっている小さなソニーだ。自動 車に限らず例えばヨットマーケットなどは全くの処女地だから展開を考えるとおもしろいぞ。 そのとき、大事なのはヨットライフのエキスパートに企画をさせること。浅井のように(浅井 事業部長のこと)ヨットは好きかもしれないがヨットの肉体労働が好きで筋肉モリモリなや つが企画してもだめだってんだ。ヨットライフを優雅に過ごすというエキスパートがベスト。 誰かいねーか?そいつが考えたヨットシステムがおもしろいと思う。 (商品力強化ブロジ ェクトより) ●企画するやつは自分の商品の広告イメージをもっているか? 企画するときは宣伝のビラのイメージが思いうかべることができないようではだめ。イメ ージを企画マンがもっていれば、「このデザインは僕のイメージと違う」、と言えるようにな る。社長がなにを言っても自分のイメージがしっかりしていれば動じることもない。 (商品 力強化プロジェクトより) ●CD電蓄は東山魁をイメージして企画した CD電蓄、20万円以上するものが実はこの2年半で3万台売れている。あれは東山魁 のような人をお客さんに想定して作ったものだ。あーいう人は機械に弱い、しかしクラシッ クは好きだ、という人である。仕上げはマホガニーで操作はシンプルでとお客さんが明解 になっていれば商品のイメージも非常にはっきりしてくるのだ。また東山魁なんていう人 は第一家電なんかにいくはずもない。だから訪問販売でやったら売れたということなのだ。 ナビゲーションも量販では売っていない。つまり商品を買う想定のお客さんによって販売 する場所もやりかたも変わるということなのだ。 (商品力強化プロジェクトより) ●天守閣モデルを作れ カーオーディオのスピーカーのシェアが低いのはデモ用として天守閣モデルがないから だ。スピーカーで名声を上げるように。音質はさておいてパワー、デザイン、この2点に注 力すること。 こんなおばけのようなスピーカーを誰が買うのか?というものを作っているメーカーがあ るが実際買われなくても客よせパンダの効果が非常に大きい。こんなスピーカーを作っ ているメーカーの1~2ランク下のスピーカーを買おうという傾向が強いからだ。それから カーオーディオのスピーカーにSONYのロゴがよくない。今どきSONYというロゴが入って いるからと言って買うのはロシア人ぐらいなもんで日本の若者には通用しない。かっこい い、且つサラっとしたセカンドネームを早急に作ること。ロゴの書体も吟味すること。車の 後ろというのは嫌でも後続車は見せられてしまう。すごい広告効果があるのだ。 (商品 力強化プロジェクトより) ●ヒット商品は後継機種からは出ない ヒットモデルがサクセサー企画からで出てきたためしがない。前機種をちょっと変更した だけの商品はインパクトがないのでヒットしないのは当然である。 よってヒットモデルは不連続であって次から次へと出るものではない。野球だって4割打 者なんていたら大騒ぎモンでトップスターだろう。6割打てなくてもトップスターだ。それと 同じである。ところが企画は10割あてなければならないと思ってしまう。絶対ミスできない、 とカチンカチンだ。三振を怖がる打者は絶対ホームラン王にはならない。これは真理であ る。 (商品力強化プロジェクトより) ●オリジナルモデルそのものでは飯は食えない。飯のネタを作ったと言える。 オリジナル企画は三振を恐れないバッターが生みだす物だ。めったにでるしろものでは ないがトリニトロンの様なオリジナル企画が生まれれば、そこから様々な商品が生まれて 飯が食えるようになる。キララバッソだってオリジナル企画のトリニトロンがあってはじめ て生まれた商品である。ウオークマン初代機もヒットモデルではない。ヒットモデルの元を 作った。TPS-L2というモデルがあってそこから様々なモデルが派生して飯が食えるよう になったのだ。ついにはカセットテープに留まらずその発想はCDにも及びディスクマンな どのビジネスも生んだ。PYXISも同様。第1号機であってはじめてカーナビゲーションシス テムが生まれた。今後様々な商品が生まれるだろう。 このようにオリジナルモデルは最初から飯が食えるモデルではない。飯のタネを植えた、 といえる。 例えばNTが今売れていないと言ってもこれから発展して行けば良いのだ。ビ デオの連中はなぜNTに映像を入れようとしないのか?俺んとこでは早速2つのグループ にやってみろ、といってやらせたらそれぞれ二つの方式で出来ちまったぞ。 同席者 「おそらくビデオのグループは画質を重視するのでNTに入れるという考えがなか なかないのでしょう。」 画質が良くないのはあたりまえである。プリミティブな段階で今のビデオと同じ画質のは ずがないだろう。オリジナル企画の第1発目というのはプリミティブな性能しか達成してい ないのは当然であってだからだめだということにはならない。NTビデオが超低価格カメラ などのビジネスを生むかもしれねーじゃねーか。 ソニーはオリジナル企画がなくなったときが恐い時である。サクセサー企画だけではい ずれじり貧になる。 (商品力強化プロジェクトより) ●PIXYのコンデンサースピーカー事件 今度のPIXYは新デバイスのコンデンサースピーカーが売りだ。ところがデザインをみた ら驚いた!なんと今まで通りの墓石の中にユニットをいれてやがる!なぜ帆かけ舟か位 牌タイプにしないのか!全くアホ共が。新しいデバイスをアッピールする二度とないチャ ンスである。それを今まで通りのデザインにしてしまえばどこに新しいユニットがついてい るのかわからねーじゃねーか!他社も追随してきた時、音の良いステレオは墓石タイプ ではなくてソニーのようなあの新しい形を踏襲しなければダメだとなって、コンデンサーS P付きのステレオの形はあーだと一般概念が出来上がる。そうすればマーケット全体が 活性化して行くのだ。 それから企画の話を聞いたらコンデンサースピーカーは高いので20万円のモデルに 入れます、と言う。 15万円のモデルにも入れれば量がはけてスピーカーのコストがど んどん安くなって行くことを考えないアホ共が! 俺がこう言った後、おまえ達わかる か?と聞くと「わかる」と答える。じゃーやれってんだ。 (商品力強化プロジェクトより) ●93型新キララのデザインについて 自然界に直線というものが存在しない、だからまるみを帯びたデザインは正しい、人に 優しいし、理論的にも正しいという風潮あり。自然界には確かに直線は存在しない。しか しその自然界を見てみよ。ゾウアザラシならゾウアザラシなりのRがある。ところがこの新 型キララはまるで車のようなでかいもののRを持ち込んでいる。流行という理屈でなんで もRをもちこめば良いというものではない。だいたい居間に置くものではないか。障子の 桟がぐにゃっと曲がっているか?丹沢山河にテレビをおくわけではあるめーし。車はRの 取り込みが盛んだがそれは車が丹沢山河を走るからである。(笑) 商品力強化プロジェ クトより) ●松下の隠れたベストセラー、マイクロカセット「カードデーター」について マネージメント会同で使うビデオでNHKの山根アナウンサーが松下のマイクロカセットコ ーダーが全く壊れない、友人も使用しており同様に壊れたことがない、それに比べてソニ ー製はよく壊れる、といった内容のビデオを大曽根さんがご覧になった。また、たまたま 同席していた田村MD室長も同じマイクロコーダーを持っており同様に壊れたことがない、 という話になった。 全く壊れない商品で愛好者が多く隠れたベストセラーになっているというが、なぜ信頼 性が高いのか。それはこの商品が地味だからである。もてはやされることがないから強 いのだ。ある商品がもてはやされるといろんなやつがあれこれ改善点と称して注文をし はじめるのだ。するとどうしてもモデルチェンジが頻繁に起こり、蓄積した信頼性というも のが生まれないのだ。この商品の様にスポットライトを浴びていないものはほとんどモデ ルチェンジをしない。その結果どんどん信頼性があがってゆく。良い例である。 (商品力 強化プロジェクトより) コストも半分、大きさも半分でやれ! ●コスト高を部下にみとめさせないこと! なぜ今日のプレゼンにローコストという言葉がないのか!?音と映を本物にします、し か言わない。シャドーマスクとのコスト差は今聞けば3000円位と言うじゃないか。そんな もんないのと同じである。トリニトロンだから価格が高いという理屈はこれでなくなったと 見なす。 スタッフには3000円を認めさせないこと。認めてしまえば部下はこれでいいのか、とな ってやらなくなってしまう。下は怠けるものだ。チャレンジしなくなる。 この目標はできるの か?なんて相談するんじゃない。これは神のお告げであると思え。 半分とは言わないが 3割安くできる、という信念でやってみてほしい。本当にできるぞ! (商品力強化プロジェ クトより) ●コスト削減!なんでも半分になると思え~本当にできるぞー! 部品点数200点から90点にしたMEの努力は本当によくやった。 92年度は1000億 規模になり黒字体質になった。これもこういう努力の結果だ。材料費用率を下げていって 60%を達成すること。なにか一つのモデルで良いからとにかくこの目標を達成してしまう のだ。 GA文化圏では大きさも半分にしろ、コストも半分にしろと言うのが常識なのだ。今度出 したDATなんて半分どころか1/3だ。コストもなんと49800円!DCCのおかげで逆に割 安感が出てしまい注目をあびて今や品切れ中だ。あれはなんとモールド成型で精度を出 しているんだ。外注にそんな仕事を出したらとてもそんなリスキーな、おっかないことは出 来ませんと断られてしまった。そりゃー責任あるからね、やりたがらない。じゃー仕方がな いから内部でやっちまおう、失敗してもともとだ、とやってみると結構出来ちまうんだ。 ところが先日の大崎では全くそのカルチャーがない。プレゼンの中で一言もローコストと いう言葉がなかった。ウチの特殊事情なんだという。あそこの商品はいいけど高いんだな。 そういうものは売れない、高くてもさすが!は売れる。 そういう連中にGA流にコストを半分にしろ!と言ったら自殺者が5人も6人も出てきそう な感じだったのであの時は3割で良いと言った。しかしそれでも想像を絶することを言わ れたような顔をしていた。このままでは私は言いたいことを言って帰ってしまった単なる評 論家になってしまう。実際プロジェクトチームを作って私自ら陣頭指揮をとり、本当にでき るんだな、という喜びを味あわせてやりたい。一つできてしまえばもうこっちのもんだ。す ると不思議なことに他のモデルでもできるかな、と思ってくるのだ。チャレンジ心が沸いて くる。次も出きるかな!と思うようになる。 それが私が言うところの勝ち癖なのだ。 (商 品力強化プロジェクトより) ●コストがさがらなければ高技術とは言えない ~MEの徹底したコスト削減活動の一つ、シングル基板について~ まさに正解である。シンプルな基板だ。よく技術の高さを誇らしげに8層基板とか言って いる。何が8層(はっそう)基板だ!義経じゃあるめーし、単基板片面で済むのが一番で ある。最近破竹の勢いのDELコンピューターなどは他社に先駆けて1枚基板を使っている のだ。コストがぐーんと下がる、組立も簡単だから今まで使っていた製造ラインも半分で 済む、あまったラインで別のことができる、良さが加速されてしまうのだ。 (商品力強化プ ロジェクトより) ●キーディバイスがあれば長く飯が食える CDをもってしてAU事が他社を駆逐したようにMDもMEにとって大きな武器になる。納入 価格は強気でいけ。価格を下げて身を売っちゃだめだ。MDを持っているからトヨタ、日産 から純正のカーオーディオとしての話が来たのだ。さらにMDならではの顔、つまり新しい いかにもそれらしいデザインが追及できるはず。イメージを確立することができるのだ。ト レンドセッターになれる! カセットテープはまだ録音メディアとして全盛でさらにコストがいまだに下がっている。テ ープが生まれてもう何十年となっているのにコストが下がっているのだ。コストが下がって いる間は成長分野と言える。 これを考えるとMDも今後相当息の長いビジネスネタにな るぞ。いくらでも明るい未来がある! (商品力強化プロジェクトより) ラインナップに対する考え方 ●ラインナップ戦略と称してぞろぞろ物を出すな! ~ビューカム対抗8mmカムコーダーの新型を評価して~ 一つのビューカム的デザインで液晶付きとノーマル付きを狙っているようだがこんな変 なかっこうをさせて液晶のないモデルなんて売れるわけがない。 自信がないんだろ う?!自信がないからモニターなしのモデルも出して数うちゃ当たると虫のいいことを考 えるのだ。大体、ラインナップと称して意味のない商品が多すぎる! 店だってソニーの ラインナップだからといって全部並べてくれる時代ではないのだ。ズバリ、液晶付きモデ ル1本に狙いを絞って力を集中させ徹底的にコストを削減させるべし。 (商品力強化プ ロジェクトより) ●スキップして1回得する法。 ~MDシングルデッキ内蔵\79,800 93/秋について~ 今年はださなくても良い。来年まで待って59800円で出してごらん。それまでは今のモ デルを79800円に近付けて売れば良い。MDのように新しいカテゴリーは来年まで待て ば必ず半導体などが安くなる、パワーも溜まる。他社もやってこないしMDはどうせ今出し ても万のオーダーはないのだからテイクオフする前はそんなやりかたで充分。そのかわり 1年遅らせるのだから内容を吟味して安く良いものを作る。満を持して出してごらん。1回 分得するぞ。 (商品力強化プロジェクトより) ●ユーザーは意外と保守的だ。 ~ビューカム対抗8mmカムコーダーの新型を評価して~ カメラのサムライを思い起こさせる。奇抜なものは意外と売れない。 お客さんは思った より保守的である。カメラらしさ、8mmらしさが欲しい。シャープのビューカムは1号機だか ら許される。つまりコンセプトがはっきりしておりその為にこの形になりましたと、ある程度 納得させられてしまう。しかし2番手で出すのは注意が必要。 感想としてはリスキーだと 思う。カメラの形でLCDつきは考えられないか。 (商品力強化プロジェクトより) 商品のイージー化の狙い ●ミシン業界の共倒れにみる。 ミシンの業界が不振である。その理由は色々と言われている。雑巾なんて今どき縫わ ないし第一ダスキンがある、とか既製服が買うのが当たり前になって洋裁などはやるは ずがない、というのがその理由の主なものだ。しかし、ミシンが衰退したのは全部それだ けではないはずだ。とにかく今のミシンは扱が難しいのだ。やれひまわりだの、バンビー だのいったい背中にバンビーを縫い付けてどうするのか。(一同笑い)首をかしげるほど 非常に難しくなっている。昔あったミシンは足で踏んで感覚的に誰もが使える物だった。 ところがこのバンビーは直線縫いも容易ではない。たった直線縫いをやるだけなのにこ れを解除して、これをセットして、縫う力は3段階あってと、、息子か旦那が帰ってこなけ れば使うことが出来ない代物になっているのだ。大体家庭に於ては直線縫いが8割以上 で事足りてしまうのに、あっちがヒマワリならこっちはバンビーとなってユーザー不在の競 争をした結果、勝手に共倒れをしているのである。 1万円でそのかわり直線縫いしか出来ません。あと1万円はらうとバンビーです、となぜ できないのか? 8mmも一緒である。これ以上普及しないでしょう、だいたい撮影するも のがない、とか言っているがダンナがいなければ使えないカメラになっていないかという ことである。 ビデオもごく楽だの楽々とか言っているがどこが楽になったというのか?ご く楽どころか地獄ビデオだ。 簡単にすることで今まで使えなかった人達が買ってくれる ようになる。 (My Friendly Sony審議会/商品力強化プロジェクトより) ●比較表企画は企画のすることではない よく他社比較表をつくって○×をつけて他社が○が多いから見劣りするからこの機能も 付けておこうか、とかやっている。いつのまにかそうやって付けられた機能があたかもユ ーザーの要望でつけたという言い方に変わっていることがある。これをどんどん続けてい くと、いつのまにかその商品はお化けになってしまう。それが今回のバブルで反省のきっ かけになった。「比較表企画」はまったく知恵のない企画のことを言う。 (My Friendly Sony審議会 ●「同じ価格で機能を入れられる」があぶない マイコンが登場してその容量のなかに入る範囲であれば何を入れてもコストは同じです という。それであれこれつっこんでしまう。これが非常にまずい。コンセプトと直結しないも のを入れたり複雑にしたりしてしまう。副作用もでる、あげくにバグを出す。 この商品がこ ういう商品だから逆にこの機能はあっては困るぐらいの気持で企画はやらなければなら ない。それが同じ価格でできるよ、と言われるとついつい入れたくなってしまう。 (My Friendly Sony審議会 ●EZボタン 多機能を楽しみたい、触ってみたい、というユーザーはいる。しかし別の家族が使った 場合、殆ど使わない機能もあるはず。そこでEZボタンを押すと余計な機能は一切利かな くなるばかりかお勧めモードになったり、3アクション以内で操作ができるようになったりそ ういう考え方が必要なのではないか。こうすれば多機能な商品を複数の人と共有するこ とができる。あまり初心者向けにしてしまうと見向きもされない商品に有効である。ミシン の例なら直線縫いカードなるものを入れると即直線縫いができるよようなアイディアだ。も ちろん凝ったことをやりたければいろいろセットアップしてそういうこともちゃんと出きる、と 言う仕掛けだ。 またもう一方の考え方はラインナップでコンセプトを変えることだ。マニアックな商品が 欲しいのならこういう機種もあります、簡単に使うならこれです、と機種を揃えておくことだ。 (My Friendly Sony審議会 ●3つの操作しかないからテレビは普及したのだ。 簡単操作の商品はどんなに多くても3操作以内に納めたい。テレビは電源とチャンネル と音量しかなかった。だから普及したのだ。アマゾンか行ってみろ。あそこの住民は3つま でしか数えない。3つ以上はたくさんだ、と言ってしまう。 (My Friendly Sony審議会 登場したときの品質は最前をつくせ ●βが失敗したのは品質でミスしたからだ。 敗退した原因がフォーマット競争に破れたとか、松下が商売上手だったとか言われてい るがそんなのは嘘である。ずばり故障が多かった!ひどいものだった。ノイズは出る、音 はする、ローディングはしない、電源が入らない、電源が入らなければ逆立ちしたって使 うことができない。初期の商品というのは性能はプリミティブでよいからとにかく故障しな いこと。性能は二の次で品質面に特に留意すること! (商品力強化プロジェクトより) スタッフ諸君へ激励! ●不況とは世間の平均値が不況だということ。我々は不況ではない。 日本人の平均寿命が76才だからと言って自分が76才まで生きるとは限らない。もっと 早く死ぬ場合もあるし金さん銀さんのように100才まで生きるかもしれない。平均値がそ うだからと言って自分が必ずしも平均通りに生きるとは限らないのはあたりまえである。 それと同じで世間一般が不況であったとしてもなぜ自分達も不況だと思うのか。 よそは 不況かもしれんが我々は増収するのだと思えば良いのだ。頑張れ! ~おわりに~ 大曽根さんは最強の企画マン 例えば技術交換会というイベントがある。あれだけの人間が労力をかけて数千人の人 間が見学をした結果、1回の技術交換会でどれくらい新しい企画やビジネスがスタートし ているのだろうか?誰が何をやっているのかを知る人脈情報を得るなどの様々な効果が あるだろうから一概に技術交換会の効果を測定することはできないだろうが、こと新しい 視点の商品企画という点においては交換会から生まれた事例というのはあまり聞かな い。 一方で大曽根さんである。今回のレポートのようにもし大曽根さんが本当に頻繁に職場 を見て回っていらっしゃるとしたら「ネタさがし」という視点では1年に1度の技術交換会と は比べ物にならない高効率で企画を生んでいるのではないかと思うのだ。しかも技術交 換会はプレゼン用にきれいにまとまっているところがあるのに対し、事業部の設計机の 脇に担当者が隠し持っているネタは正に何の添加物も修正も加えられていない貴重な原 石そのものであり、それを直に収集できるとしたらこれに勝るものはないだろう。 仮に本部長へある企画が提案されたとしよう。しかし一般的に言ってプレゼンまでには 様々な人間のよこやりや修正が入ってしまうものだ。技術的に困難という理由で企画の 意図とは違ったものがプレゼンされていることも多い。プレゼンしている担当者はまさにこ の企画こそ私が燃えている企画だと本部長にプレゼンしているだろうが実は当初の彼の 物とは変わってしまっており、プレゼンしながら彼の真の情熱はもはやそのプランに感じ ていないことがある。彼にしてみればその商品をまっさきに買うのは自分だ!と言ってい た自分が嘘のようである。 そんなプレゼンをされているのに気付かないマネージャーもいるだろうし、またはそれを 知っていて「仕方がない、商品化というものは現実的な妥協が必ず入るものだ」とわりき っているかどちらかだ。 ところがこの原石を収集するがごとく職場を巡回する大曽根さんのやり方はそれらの一 切の妥協が入る前の情報を集めることに他ならない。そして発見した時点で育て方、磨 き方を指示し、妥協するなら企画のエッセンスを壊さない妥協のしかたをその時点で指示 してしまえば、楽な商品化手法を採用するあまり商品力のまったくない担当者も心はなれ てしまった商品を出してしまう最大の不幸を回避することができるのではないかと思う。 設計陣の間を徘徊することがクセになっているマネージャーがどれほどいるだろうか。 おそらくGA圏では商品企画課よりも先に大曽根さんが事業部内のネタを探してきてしま う事もあるのではないかと思うのだ。 ソニーはメーカーである。しかも何か新しいものを届けることを使命にしている。そういう 意味で事業部のマネージャーたるものはポリティカルな活動が卓越しているというだけで はだめだ。商品企画マンとしてのセンスと行動がなければ行き詰まってしまうだろう。 私から見れば大曽根さんは役員というよりどうしても痛快な企画マンとして見てしまう。 そして将来こう言ったことを後悔することがあるかもしれない、と思いながらも敢て言って しまうと「最強の企画マン」と言いたくなるのだ。 その最強となっているポイントは職場の 徘徊癖が大きく影響している。 1993/3/31 ------------------------------------------------------------------------------トップへ戻る ご意見・感想などは、技術ラウンジで
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