松 井 家 の 雛 祭

松浜軒・松井文庫 平成 28 年企画展示
ま
つ
い
け
ひ
な
ま
つ
松 井 家 の 雛 祭 り
解
説
●会期/平成 28 年 2 月 6 日(土)~3 月 21 日(月) ●会場/松浜軒・松井文庫[驥斎展示場・第二展示場]
ひ な にんぎょう
松井 家 の雛 人 形
ひ
ご ほそかわはん
か ろう
ひなにんぎょう
ひな ど う ぐ
江戸時代、肥後細川藩の家老をつとめ、八代城を預かっていた松井家には、たくさんの雛 人 形 や雛道具が
伝えられています。これらは、江戸時代から近代にわたって松井家に嫁いだご夫人方が持参されたもの、また
お嬢さまの誕生を祝って調えられたものです。
いしょう
かれん
そうしんぐ
江戸時代の雛人形は、衣裳や装身具の豪華さ、そして気品と可憐さを兼ね備えた豊かな表情に魅力がありま
たち びな
じゅうにひとえ
きょうほう
す。
「松井家の雛祭り」では、雛人形の古い姿を残した「立雛」
、十二一重のかさねが美しい「享 保 雛」、豪華
こ き ん びな
だ い り びな
な衣装で高い人気を博した「古今雛」
、江戸参府の際に買い求めた「内裏雛」など、幾世代にも渡って集めら
れた雛人形がならびます。
立雛
江戸時代中期
享保雛 江戸時代中期
古今雛(琴姫所用
天保 10 年・1839)
たちびな
立雛
江戸時代中期(18 世紀)
現在のように男女一対の雛人形を飾るようになったのは、江戸時代の初頭(16 世紀)のことで、古い雛人
形はこのような立雛でした。やがて、雛祭りの普及にともない、飾りやすい安定した形の坐雛が生まれ、それ
にともない「雛道具」も種類を増し、豪華になってゆきました。
きょうほうびな
享 保雛
江戸時代中期(18 世紀)
だいりびな
こうごう
すわり
誰の所用かわからないのが残念ですが、この雛人形は、松井家に残る内裏雛(天皇・皇后をモデルとする 坐
びな
そくたいすがた
じゅうにひとえ
雛)のなかでは古い様式のものです。享保雛とは、享保年間(1716~35)に流行した束帯 姿 の男雛と十 二 単
とうしゅう
そで ぐち
すそ
の女雛、およびその形式を踏 襲 する雛人形のことです。袖口や裾衣の重ねが美しく、卵形の顔に小さな目口
とすっと伸びる鼻をあしらい、若々しくも高貴な雰囲気を漂わせています。
こ き ん びな
こと ひめ
か
や ひめ
古今雛(琴姫・加屋姫所用)
天保 10 年(1839)
、天保 11 年(1840)
め いわ
しゅうげつ
古今雛は明和年間(1764~72)
、江戸の人形師・原舟 月 が作りはじめたもので、享保雛より更に豪華な
きれ
衣装をまとっています。男雛・女雛の衣装には、種々の色糸を使って文様を織り出した贅沢な裂を用い、小さ
な目口とすっと伸びる鼻は享保雛同様ですが、わずかに年齢を重ねた深みのある表情が素敵です。
ことひめ
てるゆき
松井家では、10 代章之公(1813~87)に嫁いだ琴 姫(1813~48)のため、天保 10 年(1839)、京
き
く
や
か
や ひめ
都三条の「幾久屋」から 5 組の古今雛を購入しています。さらに、二人の間に生まれた娘・加屋姫のため、
翌年同じ店から 3 組の雛を購入。これらの古今雛を中心に、松井家の雛祭りは広く知られています。
こ き ん びな
古今雛(こう姫所用)元治2年(1865)
げ んじ
この雛人形は、元治 2 年(1865)3 月、京都の「幾久屋」から購入した 2 組のうちのひとつ。元治元年、
みつゆき
松井家 11 代盈之公(1864~1916)に長女こう姫(1864~84)が誕生しているので、その初節句のた
めに購入されたものでしょう。
ひなまつ
雛祭りを彩る人形
松井家には、江戸時代末期から近代にかけて購入した小さな雛
うたい
ふえ
こつづみ
おおつづみ
た いこ
人形があります。 謡 ・笛・小鼓・大 鼓 ・太鼓を五人の童子が担
ご にんば やし
う「五人囃子人形」
(元治 2 年・1865)
、和歌三人を表現した衣
装雛、ミニチュアの博多人形や加茂人形なども、松井家の雛祭り
に彩りを添えています。
こう姫所用の五人囃子人形 元治 2 年(1865)
ひな ど う ぐ
松井家の雛道具
こんれい
将軍家や大名家では、娘の婚礼の際には身の回りの品々一式、
とつ
いわゆる婚礼道具をあつらえて嫁がせました。
「雛道具」は、この
婚礼道具をそっくりミニチュアにしたものです。その内容は、
か
ぐ
ぶんぼうぐ
しょっき
ゆ うぎ ぐ
が っき
こう ど う ぐ
まもりがたな
たばこぼん
家具・文房具・食器・遊戯具・楽器・香道具・ 守 刀 ・煙草盆な
ど、200 種に及ぶこともあります。
てるゆき
松井家には、天保 11 年(1840)
、松井家 10 代章之公の長女
か
や
げ んじ
加屋姫のために調えられた雛道具、元治元年(1864)、松井家
みつゆき
11 代盈之公が長女こう姫の誕生を祝して調えた雛道具があり、松
ま きえ
井家の家紋である「三ッ笹紋」が金蒔絵であしらわれています。
また所用者は不明ですが、細川家の家紋をあしらった雛道具も伝
存します。これは 91 種に及ぶ調度品が揃っており、江戸時代の
華麗な婚礼の様子を今に伝えてくれます。
その他、一対の貝殻が別の貝殻とは決して合わないことから
おおい
あわせがい
貞節のシンボルとされる「貝 覆 の 合 貝」
、悪魔を払い災いしりぞ
いぬ は り こ
ける守り神「犬張子」など、多彩な雛道具が並びます。
一般財団法人
松井文庫
〒866-0865 熊本県八代市北の丸町 3-15 ℡ 0965-33-0171
写真上 九曜二葉桐紋雛道具 江戸時代後期(19 世紀)
写真中 犬張子 江戸時代後期(19 世紀)
写真下 大正 14 年 3 月、松井明之(はるゆき)の長女薫子
(ただこ、のちの細川護貞夫人)の初節句を祝って飾られた雛
祭り。松浜軒大広間の南側の壁一面に雛壇が設けられ、
内裏雛や雛道具がところ狭しと並びました。