グスタフ・クリムト関連美術館および作品の紹介

グスタフ・クリムト関連美術館および作品の紹介
美術史美術館
美術史美術館のコレクションは、ハプスブルク家王朝のプライベートなコレクションで、体系的に集めら
れたものではないことが特徴である。基本的には、ハプスブルク家の支配地域であったヨーロッパ諸国か
ら集められており、フランス、イギリス、中世期末イタリアの作品はほとんど見られない。ブリューゲルの作
品がまとめられているのも特徴のひとつで、宮廷絵画ではヴェラスケス、イタリア絵画ではラファエロ、オ
ランダ絵画ではフェリメール等が収められている。
階段室三角小間の装飾 エジプト美術Ⅰとギリシア古典美術(1890~1891 年)
時代にふさわしい様式で、コスチュームを備えた人物を表現している。
エジプトの正面を向いた女性裸像(上段 右側)・ギリシア古典の中に描かれているタナグラの少女(下
段)の女性表現に関しては、「歴史主義的な枠を超えようとしている」と言われており、後のウィーン分離
派の活動を通じてクリムトの個性を発揮する前兆を思わせる。
セッセッション(分離派会館)
月桂樹の葉をデザインした金色に輝く丸い屋根「金色のキャベツ」と称する建物は、1897 年に設立した
「ウィーン分離派」によって建築された。設計は、ヨーゼフ・マリア・オルブリヒ、扉はグスタフ・クリムトの弟
ゲオルク・クリムトの作品。分離派のスローガン「時代にはその芸術を、芸術にはその時代を」の文字が、
正面入り口に貼付されている。
ベートーヴェン・フリーズ(1902 年)
地下室の壁画を飾っている。ベートーヴェンの交響曲第 9 番の最終楽章の視覚化と解釈
されてきた。左側の長い壁は「幸福へのあこがれ」。弱い人間の苦痛、強者に対する弱者の
懇願、幸福を戦いとる強者の決意を表現。狭い壁は、「敵対する勢力」。巨大な猿テュポー
ンを怪物として、人類のあこがれや望みはこれらの力に勝たなければならないという意志を
表現。第 2 の長い壁は、(下段)「幸福へのあこがれは詩のなかに安らぎを見いだす」諸芸
術は理想の王国へと導き、純粋な幸福を見いだす。「この接吻を全世界に」と展開を閉じ
る。
ベルヴェデーレ美術館
ベルヴェデーレ宮殿の上官にあり、イタリア語で「美しい眺め」という意味をもっている。
上官からはウィーンの町並みを眺望でき、左右対称のヨーロッパ式庭園では、池や滝、石像などが配置さ
れており、まさに「美しい眺め」の宮殿である。
クリムトをはじめとする世紀末コレクションの他、印象派のルノアール、写実主義のクールベ等の作品
が展示されている。
接吻(1907 年~1908 年)
1903 年から 1910 年までを金箔を多用する「黄金時代」と呼ばれている。クリムトは、1903 年北イタリア
のラヴェンナ(ビ ザ ン テ ィ ン ・ モ ザ イ ク を 残 す 多 く の 聖 堂 で 有 名 な 町 ) を 訪 れ た こ と に 大 き く 影
響 を受 けた。加 えて装 飾 は、日 本 美 術 、エジプト美 術 などが組 み込 まれている。
クリムト自身と恋人エミーリエ・フレーゲがモデルと云われており、1908 年の総合芸術展で大好評を博
し、展覧会終了と同時にオーストリア政府に買い上げられた。クリムト代表作のひとつである。
花園にひざまずいて抱き合う恋人たち。着物から花いっぱいの地面まで金箔の装飾が見事である。
また、女性の表情がやさしく、幸福で満たされている感が伝わってくる。
レオポルド美術館
ウィーン大学で美術史を学んだレオポルド博士夫妻のプライベートコレクションを基に設立され、入場者
数の多い人気の美術館である。エゴン・シーレの世界最大のコレクションを有し、グスタフ・クリムト、オス
カー・ココシュカなどの作品が集められている。クリムトの作品では、風景画や人物のスケッチ、水彩画な
どの作品も、展示されている。
死と生(1911 年以前・1916 年に改作)
人間の「生」と「死」の対峙・循環を画題とした作品であると云われている。金色を使用した豪華で装飾
性豊かな表現様式を捨て、元々は金色で描写されていた背景を藍緑色で塗り潰されている。
互いに寄り添いひとつの塊となる「生」。忍び寄る「死」に対抗し、生きる力、希望を見いだしているかの
ようである。多様な十字架の文様が装飾された「死」の衣や、多色的な色彩を表現した「生」のモザイク模
様が新しい。