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Ⅲ.前立腺癌 −密封小線源永久挿入療法−

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202 泌尿器
Ⅲ.前立腺癌 −密封小線源永久挿入療法−
PSA検査の導入により,前立腺に限局した早期前立腺がん症例が急速に増加してい
る。前立腺がんにおける治療法の選択肢として,手術,放射線療法(小線源治療,外
部照射),ホルモン療法などがある。その中で,小線源治療は短期間で治療が行える
ため,特に米国においては15年以上前から施行されてきた。わが国では2003年 9 月
から I−125シード線源を用いた密封小線源永久挿入療法が開始された。米国において
は I−125シード線源による永久挿入治療は限局性前立腺癌の標準的治療法として定着
しており,その有効性は多くの報告で確認されており,生化学的非再発率は手術に匹
敵するとしている1, 2)。
1.適応基準
密封小線源永久挿入療法単独での治療は原則的にはABS(American Brachytherapy
Society)の適応基準が示されているが3),Gleason's score 7 がどのリスクに分類され
る の か が 不 明 確 で あ る た め, こ こ で はNCCN(National Comprehensive Cancer
Network)による適応基準を示す 。ただし,リスク分類にはいくつかの分類法があり,
注意が必要である。表1に代表的なリスク分類を示す。
表1.リスク分類
Seattle
Mt. Sinai
D’Amico
低リスク
PSA ≦10.0
GS 2〜6
T1a〜T2b
PSA ≦10.0
GS 2〜6
T1a〜T2a
PSA ≦10.0
GS 2〜6
T1c〜T2a
中リスク
(IM)
PSA > 10.0
Or
GS ≧7 or T2b
PSA=10.1〜20.0
Or
GS=7 or T2b
PSA =10.1〜20.0
GS7 and/or T2b
高リスク
2 or 3 of IM risk factors 2 or 3 of IM risk factors PSA >20.0 and/or
Or GS 8〜10 or
GS=8〜10 and/or
PSA >20.0 or T2c
T2c
1)密封小線源永久挿入療法単独 T1〜T2a
PSA
Gleason's score 6 以下
10ng/未満
いわゆる低リスク群2)が密封小線源永久挿入療法の適応となる。
2)密封小線源永久挿入療法+外照射
T2b〜T2c
泌尿器 203
PSA
10〜20ng/
Gleason's score 7
中リスク群や高リスク群において密封小線源永久挿入療法を行うには,外照射との
併用が推奨される。
3)臨床的除外項目 除外項目として①期待余命 5 年未満,②TURP(Trans Urethral Resection of the
Prostate)による前立腺の欠損が大きい場合,③線源留置術に不適な状況,④遠隔転
移がある場合,⑤大きな石灰化が前立腺内にあり線源留置に支障がある場合となって
いる。
4)比較的禁忌項目
比較的禁忌事項として
①大きな中葉症例 ②骨盤照射の既往 ③AUA(American Urological Association)症状スコア高値 ④多数回の骨盤領域の手術既往 ⑤創傷治癒遅延を伴う高度の糖尿病 ⑥TURPの既往 ⑦前立腺容積50㏄以上
ESTRO/EAU/EORTCからのrecommendationでは4, 5),IPSS(International Prostate
Symptom Score)8 以下では急性期の排尿障害は軽度であり,遷延する可能性が低い
が,IPSS20以上では30〜40%の頻度で急性期有害事象の増強があり,遷延するとさ
れており注意が必要である6,
7)
。また,前立腺容積については35㏄以下が理想的であ
るが,50〜60㏄ではホルモン療法による容積減少をはかることが推奨されている。
表2
RECOMMENDED
OPTIONAL
INVESTIGATIONAL
Do well
Fair
Do poorly
PSA(ng/)
>10
10〜20
>20
Gleason Score
5〜6
7
8〜10
Stage
T1c〜T2a
T2b〜T2c
T3
IPSS
0〜8
9〜19
>20
Prostate Volume(g)
<40
40〜60
>60
Q max mls/sec
>15
15〜10
<10
Residual Volume cc
>200
TURP +/−
+
204 泌尿器
2.線量計画
1)線量計画法
術前計画法 Preplanning
通常, 3 〜 4 週間前に前立腺容積,形状を計測し十分な線量を投与するのに必要な
線源個数および線源配置を算出する。これをpreplanと呼ぶ。TRUS(Trans Rectal
Ultra Sound)を用いて実際の線源挿入と同様に砕石位で行われる。
術中計画法 Intraoperative planning
Intaroperative preplanning
手術室において当日行われる。患者は経直腸プローブを挿入したままvolume
studyおよび挿入術を行う方法。
Interactive planning
計画前に全ての針を挿入し,この針の位置を用い治療計画を行う。
Real time(dynamic dose calculation)
線源を挿入するたびに仮想の線源位置を実際の線源位置に修正し,最適な線量分
布を実現する計画を行う。
これらはまだ,標準的なものではなく,各施設の責任において術前計画法による十
分な治療経験の後,施設ごとに判断して行うべきである。また,術中計画法で施行の
際 に は, 事 前 に 必 要 な 線 源 個 数 の 判 定 を ど う す る か が 問 題 と な る。Anderson
nomogramにより事前に前立腺容積から必要な線源強度および線源個数を導き出す方
法がある。実際に必要な線源個数とやや異なる(実際よりも個数が多め)ことがある
ようであるが,許容範囲内との報告が多い。施設ごとにそれまでに経験した症例につ
いて手技とDVHの結果を検討し,施設ごとに微調整して使用することが重要である。
2)ターゲットおよびリスク臓器の輪郭入力
ターゲットの輪郭入力
通常,TRUSにより前立腺底部から尖部にかけて5㎜ごとに画像収集を行う。得ら
れた画像で前立腺の輪郭入力を行う。ESTRO/EAU/EORTC(Eeuropean Society for
Therapeutic Radiology and Oncology/European Association of Urology/European
Organization for Research and Treatment of Cancer)ではGTV(Gross Tumor
Volume)は定義せず,前立腺に対し直腸側を除いて最大 5 ㎜程度のマージンを加えた
ものをCTV(Clinical Target Volume)とする。前立腺がん密封小線源永久挿入療法に
おいてセットアップエラーはほとんどないものと考えられるため,PTV(Planning
Target Volume)はCTVと同一とする。
リスク臓器(OAR)の輪郭入力
尿道:前立腺内の尿道を底部から尖部まで描画する。
一般的にはバルーンカテーテルを留置し尿道を同定する。しかし,尿道の過
度の拡張を防ぐため10Fr程度が適切である。カテーテルの外側を尿道とし
泌尿器 205
て描画する。
直腸:直腸は直腸前壁の直腸粘膜及び外側壁を囲む7)。
3)線源配置法
辺縁配置法(peripheral loading)または辺縁配置法と均一配置法(uniform loading)
の変法である均一配置変法(modified uniform loading)を用いる。前立腺中心部の線
量が過剰とならないように注意する。
4)線量評価
密封小線源永久挿入療法単独での処方線量は144Gyとする。なお,外照射との併用
においては外照射40〜45Gyが一般的であり,I−125の処方線量は100〜110Gyである。
CTV : V100(CTVが処方線量で囲まれる割合)は少なくとも95%以上とする。即ち,
V100≧95%となる。また,D90(CTVの90%が囲まれる線量)は処方線量の
100%よりも高い線量となることが望ましい。V150(処方線量の150%の線量で
囲まれるCTVの割合)は50%以下であること。
OAR's
直 腸:D2㏄(2㏄ の 直 腸 へ の 線 量 )は144Gy以 下 と な る よ う に,D0.1㏄(~Dmax)は
200Gy未満となることが望ましいが,DmaxよりはD0.1㏄が重要とされている。
尿道 :D10(尿道の10%が囲まれる線量)は処方線量の150%未満となるように,ま
た,D30(尿道の30%が囲まれる線量)は処方線量の130%未満となるようにす
べき。
3.術後計算 Post plan
挿入後の線量評価は通常挿入術後およそ1ヵ月頃にCTを用いて行う。MRIによる評
価も有用ではないかといわれているが,ESTRO−EAU−EORTC recommendationでは
MRIによるCTV輪郭描出能は優れているが,線源位置の同定においてはCTが優って
いることからCTによる術後計算およびCTとともに 2 方向のX線写真による線源個数
の確認も合わせて行うことが推奨されている。(図1,2)
1)ターゲットの輪郭入力 CT画像による輪郭入力が行われる。
ESTRO−EAU−EORTC:recommendationでは 2 つの輪郭入力が示されている。
CTV−P(rostate):画像上認められる被膜で囲まれる前立腺容積
CTV−P(rostate)M(argin):CTV−Pに対して直腸側を除く最大で 5 ㎜程度のマージ
ンを含む容積
2)リスク臓器の輪郭入力
CT 画像上で行う場合,直腸外側を輪郭入力する。
MR 画像上で行う場合,外側と内側壁を輪郭入力する。
尿道の同定は本来,尿道カテーテル留置により行うことが望ましいが,実際には留
置せずに行う施設が多い。I−125 挿入直後(通常は術翌日)にCT像が撮像されている
206 泌尿器
図1.治療後24時間の単純写真
図2.治療後1ヵ月でのCT画像
黄色の線が95%線量域を示す。
場合はそれを参考とする。これがない場合には尿道を前立腺中心として評価すること
もできる。あるいはTRUSによる画像とCT, MRIをimage fusionすることにより尿道
輪郭を得てもよい。
3)線量評価の指標
前立腺においてはCTV−P, CTV−PMそれぞれについて V100, V150及びD90を記載す
る。さらに,V200,D100 についても記載する。V100 は挿入の質をV150 は合併症を引き
起こす可能性をD90は挿入の正確さを示す。
尿道線量の評価:D10を主とし,さらにD5, D30を指標とする。
直腸線量の評価:D2㏄を主とし,さらにD0.1㏄, V100を指標とする。
目標:V100>90%,V150:30〜60%,D90:140Gy
4.外照射併用のタイミングと照射野
外照射併用がコンセンサスを得ているわけではないが,外照射を併用する場合,密
封小線源永久挿入療法とのタイミングについてもコンセンサスは得られていない。お
よそ60日の半減期を考慮すると尿道,直腸への重複した照射による有害事象増加を危
惧し,外照射先行をよしとする考えかたや,同時で相乗効果を狙う考え方もあり,そ
の施設の判断による。照射野については,前立腺のみ,あるいは骨盤リンパ節を含め
る場合とこれもどちらが良いかコンセンサスは得られていないが,前立腺のみとする
施設が多い。
泌尿器 207
5.治療成績
それぞれのリスク群で治療成績は異なる。低リスク群においては 5 〜10年でb−
NEDは85〜98%と良好である8)。中リスク群では外照射併用によるものであり, 5 年
で85%程度と比較的良好な治療成績であり,最近12年で78%との報告もある8)。しか
し,中リスク群への密封小線源永久挿入療法単独での治療成績については様々な報告
がなされている。密封小線源永久挿入療法単独で60%のb−NED(10年)に対し,外照
射併用群で76%(統計的有意差はなく有意傾向のみ)との報告がなされているが,外
照射不要論もあり,結論には至っていない。最近,米国のPCSにおける泌尿器科医,
表3.低リスク群の治療成績(b−NED)
Risk factor
Grado
5 years
GS≦2〜4
95%
GS:5〜6
82%
Potters
PSA≦10,GS≦6, stageT1〜2
93%
Zelefsky
PSA≦10,GS≦6, stage≦T2b
88%
Grimm
PSA≦10,GS≦6, stage≦T2b
Stone
PSA≦10,GS≦6, stage≦T2b
10 years
87%
91%
表4.中間リスク群の治療成績(b−NED)外照射併用
Risk factor
5 years
10 years
Potters
PSA>10, GS>6, stage>T2
85%
Zelefsky
77%
Critz
PSA:10-20
75%
Sylvester
PSA>10 or GS≧7 or stage≧T2c
77%
Grimm
PSA>10 or GS≧7 or stage≧T2c
76%
5 years
10 years
表5.高リスク群の治療成績(b−NED)外照射併用
Risk factor
Grado
GS≧7
58%
Potters
PSA>10, GS≧7, stage≧T2cの内2因子
85%
Critz
PSA>20
75%
Stock
PSA>20, GS: 8〜10
Sylvester
PSA>10, GS≧7, stage≧T2cの内2因子
47%
Critz
PSA>10, GS≧7, stage≧T2bの内2因子
63%
76〜79%
208 泌尿器
放射線腫瘍医へのアンケート調査で中リスク群であっても,Gleason's score7( 3 +
4 )あるいはPSA10〜20ng/で cT1cであればコアー陽性率30%未満においてはほ
とんど全ての医師が密封小線源永久挿入療法単独を行うとの回答が得られているよう
である9)。今後の治療成績によっては中リスク群への単独療法の可能性も考えられる。
高リスク群では一般的には50〜80%であり,決して良好な治療成績とはいえないが,
最近,長期のホルモン療法との併用により 4 年で79%と良好な治療成績が報告されて
おり10),何らかの後療法の追加が必要である。表3〜5にそれぞれのリスク群におけ
る治療成績を示す。
6.合併症
線源配置法によって,かなり差が出てくるが一般的に有害事象は軽度である。GU
toxicityはRTOG Grade 4 が 1 %,grade 3 は 7 %程度であり,GI toxicityではgrade1〜
2 で 2 %〜12%と報告されている。性機能に関しては,勃起能維持率はおよそ50%
と報告されている。
7.参考文献
1)D' Amico AV, Whittington R, Malkowicz SB, et al. Biochemical outcome after
radical prostatectomy, external beam radiation therapy, or interstitial radiation
therapy for clinically localized prostate cancer. JAMA 16 : 969-974, 1998.
2)Kupelian PA, Potters L, Khuntia D, et al. Radical prostatectomy, external beam
radiotherapy <72Gy, external beam radiotherapy> or = 72Gy, permanent seed
implantation or combined seed/external beam radiotherapy for stage T1〜T2
prostate cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 58 : 25-33, 2004.
3)Nag S, Beyer D, Friedland J, et al. American brachytherapy society(ABS)
recommendations for transperineal permanent brachytherapy of prostate cancer. Int
J Radiat Oncol Biol Phys 44 : 789-799, 1999.
4)Ash D, Flynn A, Battermann J, et al. ESTRO/EAU/EORTC recommendations on
permanent seed implantation for localized prostate cancer. Radiother Oncol
57 : 315-321, 2000.
5)Salenbier C, Lavagnini P, Nickers P, et al. Tumor and target volumes in
permanent prostate brachytherapy : A supplement to the ESTRO/EAU/EORTC
recommendations on prostate brachytherapy. Radiother Oncol 83 : 3-10, 2007.
6)Terk MD, Stock RG, Stone NN. Identification of patients at increased risk for
prolonged urinary retention following radioactive seed implantation of the prostate.
J Urol 160 : 1379-1382, 1998.
7)Gelblum DY, Potters L, Ashley R et al. Urinary morbidity following ultrasound
泌尿器 209
guided transperineal prostate seed implantation. Int J Radiat Oncol Biol Phys
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8)Frank SJ, Grimm PD, Sylvester JE, et al. Interstitial implant alone or in com­
bination with external beam radiation therapy for intermediate-risk prostate cancer :
A survey of practice patterns in the United States. Brachytherapy 6 : 2-8, 2007.
9)Potters L, Morgenstern C, Calugaru E, et al. 12-year outcome following
permanent prostate brachytherapy in patients with clinically localized prostate
cancer. J Urol 173 : 1562-1566, 2005.
10)Copp H, Bissonette EA, Theodorescu D, et al. Tumor control outcomes of
patients treated with trimodality therapy for locally advanced prostate cancer. Urol
65 : 1146-1151, 2005.
(千葉県がんセンター放射線治療部 幡野和男)
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