ダイヤモンドダストの研究 Investigation of Diamond Dust Crystals at Various Locations Takeshi Ohtake (アラスカ大学名誉教授) INTRODUCTION Diamond Dust crystals are ice crystals precipitating from cloudless sky in cold countries. The word of Diamond Dust was created in Japan by an unknown person around 1974*, because ice crystals precipitating glitteringly from clear blue sky looked like diamond dust . The atmospheric ice crystals (called 細氷) in central Mongolia reported by Itoo 伊東彊自(Itoo, 1954) and on high mountains in Hokkaido and Japan Alps reported (private communication) by Magono 孫野長 治(around 1972). The author first observed Diamond Dust as ice crystal displays in Fairbanks, Alaska in 1964 , and initiated his research on it in conjunction with the ice fog study (Ohtake, 1970) and.has continued to study Diamond Dust in the Fairbanks area (Ohtake and Jayaweera, 1972), the Arctic coastal zone (Ohtake, Jayaweera and Sakurai, 1982), the South Pole (Ohtake, 1975) and the Kawayu Hot Springs in Hokkaido. This paper presents a summary of these studies, including techniques of making Artificial Diamond Dust crystals, which were recently demonstrated in the Kawayu Hot Spring area (大竹武 Ohtake, 1998). ダイヤモンドダストとは誰かがつけた名前であるが、日本製の言葉である。雲の無い空から降ってくる 微氷晶つまり雪の結晶の前身であって、太陽光若しくは人工光にあたるとキラキラと光りながら降ってき て,ダイヤモンドの粉が降ってくるように見える美しい幻想的な天然現象である.太陽光下では一般に Halo[héilou]ヘイロー (ハローではない)といわれる光学現象を現し、虹と同じく色彩を示すことが多い。 これまでの研究によればダイヤモンドダストの結晶は水蒸気を多量に含んだ低温大気に発生するが、水 蒸気から直接氷晶が出来るのではなく,水蒸気が凝結して一旦微水滴になってから凍ったものである。一 旦凍結した氷晶は周りの氷飽和以上の水蒸気から昇華によって成長する。それらの出現温度は自然大気中 では最高-15℃であった。微水滴の凍結に際して凍結核は特に必要としないことは氷霧 Ice Fog (Ohtake, 1970)と同じである。 筆者は世界各地で出現する Diamond Dust を 1964 年から研究してきたので、各地の Diamond Dust の成因、特徴を解説し、あわせて 1990 年以来北海道川湯温泉で人工ダイヤモンドダストの生成に成功した ので,これらを報告する。 Fairbanks Diamond Dust display 1964 年アラスカ大学に着任以来筆者を魅了した Ice Crystal Display である。風の弱い放射冷却の状況 のもとに見られる現象である。特に Fairbanks 付近に観られる Diamond Dust は6角形の平板結晶の源泉 は石炭を燃料とする発電所からの多量の水蒸気を含んだ排気が水滴の凍結からなる結晶を作り,方向不定 の弱い風に流されて広範囲に流されるのが普通である。見事な Sun Pillar と 22°の Halo が観察された.詳 細は Ohtake and Jayaweera(1972)を参照されたい。 Diamond Dust Display in the Arctic zone 北極海沿岸の Barrow では 4 月下旬から Diamond Dust が頻繁に降る。Ohtake and Holmgren(1974)は氷 晶数自動測定装置などを開発して氷晶の空間濃度を測定,結晶の Replica を採集してそれらの形大きさを調 べた。氷晶の平均空間濃度は 20/liter、形は6角平板又は低温では角柱で、最小直径 30μm、最大 0.2mm であった。 Ohtake, Jayaweera and Sakurai(1982)は更に数々の測定装置を搭載した航空機を使用して、それらの氷晶 の源は Arctic Ocean の海氷の割れ目の開水面(open leads)からの水蒸気であることを確かめた。Open leads の海水温度は常に‐1.3℃であって、海氷面上の気温約‐20℃の空気との温度差のもとに多量の湯気 (Steam)を作り、その湯気を構成する微水滴が‐20℃以下の気温の最下層 800m で凍結したものである。 なお、温度が高い夏には北極層雲を形成する.。それらの氷晶は風に流されて沿岸陸地に流れ込み,風下で はあたかも雲の無い青空から氷晶が降ってくるように見え、それに従って時折見事なへーローが現れるこ とを確認した。またそれらの氷晶は上空で採集した結果、個々の結晶は水滴が外側から冷却されて凍結し たものであることが確かめられた。これらは 1977 年の unique な研究の一つであったので、その 20 年後の 現在、気候温暖化に関連して米国では NASA からの研究費で航空機 4 機をふくめて大々的な追試研究が進 められている。 Diamond Dust at the South Pole 南極点は Antarctic Plateau の 2800m の高度に位置する US Research Station であるが、年間 250 日を 超える日々に Diamond Dust が観測される(Hogan 1975, Inoue et al. 1984, Ohtake 1975, 1976, 1977, 1978, Ohtake and Inoue 1980,大竹 1981)。個々の氷晶は 上記2地域の Diamond Dust と異なり,その源は, 必ず しも確定されたわけで無いが, 流跡線解析や航空機による観測によれば、Weddell Sea からの水蒸気が,南 極点までの緩い斜面を上昇することにより凝結,低温ながらも水滴からなる雲を作り,それらが極寒の極 点付近で凍ったものが多数を占める。いずれも水蒸気がいきなり固体の氷晶になったものでなく、一旦水 滴になってそれらが凍って氷飽和以上で水蒸気の昇華によって成長したものであることは,他の地域の Diamond Dust Display と同じであることは興味深い。 川湯温泉での人工Diamond Dust 作りとその新技術 上記各地の Diamond Dust の研究の結果、それらの氷晶は主として微水滴が凍ったものであるという ことを確かめるため、摩周湖周辺の Diamond Dust の源になる湯気の存在個所を調べた。その湯気の源は 川湯温泉から出る”湯の川”であることが分かった。そこで地元の友人達の要望に応えて 1991 年、Dry Ice の撒布によりこれらの湯気を氷晶化することが出来た。その技術は 1996 年から川湯温泉観光協会が実行に 移し,ストッキングに入れた Dry Ice 数個を直径 2m 程の Balloon に結び、約 25m の高さに繋留移動させるこ とにより‐10℃以下の気温で連夜 Diamond の Dry Dust を人工で作ることに成功し、観光客を魅了している。こ Ice 使用の技術は 1998 年頭から圧搾空気の噴射による断熱冷却を利用することに発展した。 この 技術は Jan.3, 1998 Denver に発生した‐3℃の濃霧の中で実験し,微水滴を氷晶に変えることにより,小規 模ではあるが,自然の霧を消滅させることに成功したことによる (大竹,1998)。 References Hogan, A.W., 1975: Summer ice crystal precipitation at the South Pole, J.Appl.Meteor.,14, 246-249. 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Warren Dr., Lakewood, CO 80228-5937 USA E-Mail: [email protected] (J, E, JPG image OK) Phone/Fax +1-303-980-0681
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