CFD による船舶の省エネ性能評価研究委員会 活動報告書

日本船舶海洋工学会プロジェクト研究委員会
CFD による船舶の省エネ性能評価研究委員会
活動報告書
2013/03
CFD による船舶の省エネ性能評価研究委員会 活動報告書
目次
委員名簿 ························································ 1
開催履歴 ························································ 2
1 緒言
·························································· 4
2 CFD 検証用ベンチマークデータ
3 省エネ付加物解析ニーズ調査
3.1 付加物タイプとトポロジー
···································· 5
······································ 7
····································· 7
3.2 複数の付加物及び計算格子を重合する場合 ························· 7
4 重合格子による計算 ·············································· 8
4.1 パラメータスタディ
··········································· 8
4.1.1 計算条件等················································· 8
4.1.2 計算結果 ·················································· 9
4.2 重合格子ケーススタディ(up_grid)
5 CFDWS2015 テストケース検討
······························ 32
······································ 34
5.1 CFDWS2015 計画 ··············································· 34
5.2 フィン付き船体 CFD 計算
······································ 35
5.2.1 フィン付き船体抵抗計算····································· 36
5.2.2 フィン付き船体自航計算····································· 38
6 研究プロジェクト立案
7 結言
············································ 41
·························································· 42
委員名簿
委員長 日野 孝則 横浜国立大学 工学研究院 システムの創生部門
事務局 平田 信行 (独)海上技術安全研究所 流体性能評価系 CFD 研究グループ
事務局 大橋 訓英 (独)海上技術安全研究所 流体性能評価系 CFD 研究グループ
戸田 保幸 大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門
伊東 章雄 (株)IHI 技術開発本部総合開発センター船舶海洋技術開発部
大森 拓也 (株)IHI 技術開発本部総合開発センター船舶海洋技術開発部
(平成 24 年 12 月まで)
(株)ジャパン マリンユナイテッド 技術研究所
(平成 25 年 1 月から)
西垣
亮 三菱重工業(株) 長崎研究所 流体研究室
上田 武志 川崎重工業(株) 技術本部 基本設計部 性能開発課
木村 校優 (株)三井造船 昭島研究所技術統括部 船舶性能開発室
新郷 将司 (一財)日本造船技術センター 試験センター技術部技術課
高井
通雄
住友重機械マリンエンジニアリング(株) 営業開発本部性能開発グ
力蔵
住友重機械マリンエンジニアリング(株) 営業開発本部性能開発グ
ループ
山下
ループ
牧野 功治 ユニバーサル造船(株) 技術研究所流体研究室
(平成 24 年 12 月まで)
1
開催履歴
第1回委員会
開催期日: 平成 23 年 3 月 28 日
開催場所: メール会議(東日本大震災の影響により会議を見送った)
審議事項:
(1)委員会の体制
(2)委員長選定
(3)検討スケジュール
(4)各機関の役割
第 2 回委員会
開催期日: 平成 23 年 12 月 2 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)経過報告
(2)CFD 検証のための公表データの調査について
(3)CFD 国際ワークショップのテストケースについて
第 3 回委員会
開催期日: 平成 24 年 1 月 27 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)平成 24 年度活動方針について
(3)CFD 検証のための公表データの調査について
(4)CFD 国際ワークショップのテストケースについて
(5)CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
第 4 回委員会
開催期日: 平成 24 年 3 月 22 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)CFD 検証用データについて
(3)CFD 国際ワークショップ用付加物テストケースについて
(4) CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
(5)平成 23 年度活動報告書について
第 5 回委員会
開催期日: 平成 24 年 5 月 23 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)平成 23 年度活動報告書について
(3)CFD 検証用データについて
2
(4)CFD 国際ワークショップ用付加物テストケースについて
(5) CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
(6)ITTC CFD Committee について
(7)研究紹介
第 6 回委員会
開催期日: 平成 24 年 7 月 27 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2) CFD 国際ワークショップ用付加物テストケースについて
(3)ソルバー開発計画について
(4)フィン付き船体自航計算について
(5) CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
第 7 回委員会
開催期日: 平成 24 年 10 月 19 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)CFD ワークショップ steering committee について
(3)CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
(4)重合格子パラメータスタディについて
第 8 回委員会
開催期日: 平成 25 年 1 月 10 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)重合格子パラメータスタディについて
(3)up_grid について
(4)研究紹介
(5) CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
第 9 回委員会
開催期日: 平成 25 年 3 月 21 日
開催場所: 日本船舶海洋工学会会議室
審議事項:
(1)前回議事録確認
(2)up_grid について
(3) CFD 検証用流場データ取得のための研究プロジェクトについて
(4)成果報告書について
(5)新委員会の提案について
3
1.
緒言
本委員会は、船舶分野における国際的な産業競争力維持の観点から、CFD 研究戦略委
員会の答申に基づき、最新のソフトウエア技術により新たな産業ニーズに対応する次
世代 CFD コードを用いた新しいアプリケーション分野の創生、コードの適用分野の拡
張、コードの検証方法の検討とベンチマーク、乱流モデルなど計算モデル開発におけ
る技術課題の抽出を行うことを目的としている。
船型開発における流力性能評価においては CFD 技術が必要不可欠であり、国際的な
産業競争力維持の観点から国産 CFD 技術をステップアップさせる必要がある。付加物
などの複雑形状に対応した次世代 CFD コードは、最新のソフトウエア技術の導入によ
り、既存の手法に比べて効率や精度の面で大幅な向上が見込まれる。このような次世
代 CFD の有効利用のためには、省エネ技術や実海域性能評価などの新しいニーズに対
応する新たなアプリケーション分野を創生する必要がある。次世代 CFD の適用分野を
拡張し、新分野における検証を行うと共に、数理モデルに対する技術課題、応用活用
について、産官学の立場で検討を行った。また、オールジャパンとしてプロジェクト
を実施することでノウハウの蓄積、プロジェクトの実施を通した人材育成などを意図
した。
以上のように、本プロジェクト研究員会は、学会の立場から産官学連携した次世代
CFD コードの利用技術を検討し、新分野創生のためのコードの評価・検証、ノウハウ蓄
積、計算モデル開発などを検討した。
4
2.CFD 検証用ベンチマークデータ
重合格子手法による付加物性能評価を行うにあたり、検証に使用できる既存の実験デー
タについて文献調査を行うとともに、実用の付加物形状への適用に向けて、公表データリ
ストを作成した。表 2.1 に調査結果による検証用データリストを、表 2.2 に公表データリ
ストを示す。舵・プロペラ付きの船体について検証用データが揃っており、龍光丸の舵付
き船体周り流れを4.1のパラメータスタディの対象として選定した。実用の付加物形状
への適用については、4.2の重合格子ケーススタディで述べる。
5
表 2.1 検証用データリスト
船型等
6
要目
Lpp=6m
d=0.3619m
SR196B
V=0.9862m/s
Dp=0.174
船型データiges形式
Lpp=7.2786m
d=0.3418m
KCS
V=2.196m/s
船型データiges形式
Lpp=7.0m
d=0.443m
龍光丸
Dp=0.210
船型データoffset形式
DpA=0.25,DpB=0.2389
MR-1 NACA0009
プロペラ・舵干渉
MR-2 NACA0015
MR-3 NACA0025
Lpp=2.5-6.0m
Esso OSAKA
計測内容
船体・舵・プロペラ干渉
計測項目
抵抗・自航試験(舵有無) 舵抗力
荷重度変更試験(舵有無) 舵抗力・自航要素
船体表面圧力(舵・プロペラ有無)
備考
SR196報告書(S62.3) pp.17-58<グラフからの読み取り>
船体表面圧力(プロペラ有無)
久米他(G2000)
自航試験(舵有無) 自航要素
船体表面圧力(曳航, Model Point, Ship Point)
日夏他(西部90号)
舵表面圧力試験(舵角変更)
森山他(船研報告29-3)ほか<グラフからの読み取り>
船体・プロペラ干渉
船体・舵・プロペラ干渉
プロペラ・舵干渉
操縦性能試験
操縦微係数, 斜航流体力, フリーラン・ Z試験結果 日本造船学会誌 第668号 1985年
スパイラル試験結果, 浅水影響
斜航時伴流分布, 舵力
表 2.2 公表データリスト
公表データ等
SSD有無での1+K, 1-t, 1-wtのCFD結果と試験結果の相関(SSD無との相対)
JMU(USC) 重合格子によるSSD有無での1+K, 1-t, 1-wtのCFD結果と試験結果の相関(SSD無との相対),伴流分布の試験結
果との比較
MHI
リアクションフィン有無での剰余抵抗係数及びDHPのCFDと実験の比較
MES
MIDP(ダクト),MIPB(舵バルブ)の結果
JMU(IHI) L.V.フィンでの剰余抵抗,自航試験結果,,船体表面圧力,限界流線,伴流,渦度
SRC
次年度(H24)付加物付きのPIV計測結果を公表できる可能性がある
備考
日本船舶海洋工学会講演会論文集(第6号)
関西造船協会論文集(第235号)
三菱重工技報 Vol.19 No.3(1982-5)
SNAME 1981, ISME 1995
石川島播磨技報 1998,Vol.36, No.36
3.省エネ付加物解析ニーズ調査
3.1 付加物タイプとトポロジー
重合格子手法の実用の付加物への適用について、省エネ付加物のタイプとトポロジーを
検討した。付加物は大きく分けて、船体付加物と舵付加物に整理できる。
1)船体付加物
船尾フィン、船尾端フィン、船尾トンネルフィン、船尾ダクト、ステータ・フィンが挙
げられた。船尾フィン・船尾端フィン・船尾トンネルフィン・ステータ・フィンについて
は O-O 型のトポロジーにて付加物計算格子を生成後、接合部分の船体とのトリミングによ
り重合格子及び重合情報を生成できる。船尾ダクトについても O-O 型トポロジーでダクト
全周に計算格子を生成し、重合格子及び重合情報を生成できるが、ダクトの一部が船体に
重なる状態については、ダクトの一部を船体にてトリミングする機能も必要となる。
2)舵付加物
舵フィン、舵バルブが挙げられ、舵フィンについては、船尾と同様に O-O 型のトポロジ
ーで計算格子を生成後、接合部分の舵とのトリミングにより重合格子及び重合情報を生成
できる。舵バルブについては、船尾端フィンと同様の扱いができるが、プロペラハブ渦と
の干渉を精度良く推定するため、プロペラ実形状による計算も必要と考えられる。
以上の付加物について、相対の難易度でまとめたものが図 3.1.1 である。
易
船尾フィン
舵フィン
船尾端フィン・船尾トンネルフィン(トポロジーに工夫が必要)
難易度
ステータ・フィン(複数の格子が重なる)
船尾ダクト(一部が重なるトリミングが必要な場合がある)
難
舵バルブ(舵とのトリミング、プロペラハブ渦との干渉)
図 3.1.1 付加物の重合計算の難易度
3.2 複数の付加物及び計算格子を重合する場合
複数の付加物を装備する場合や重合格子の格子間の格子密度差を適度な範囲に抑えるた
めの矩形格子追加等により、複数の計算格子が重なる場合については、重合情報生成時の
格子の並び順を決めることにより、優先順位を定めることができる。
7
4.重合格子による計算例
4.1 パラメータスタディ
4.1.1 計算条件等
検証用データリストの中から、舵付き龍光丸を選定し、重合格子手法によるパラメータ
スタディを行った。計算条件は二重模型流れ、Re=3.6×106 である。船体格子は海技研のソ
フトウェア NMRI CFD 2012 に付属の HullDes にて生成後、海技研で開発中の重合格子シス
テム up_grid の機能の一つである up_mod にて、
重合格子用に船尾付近の格子を細分化した。
舵格子と重合情報は同じく開発中の重合格子システム GTOOL にて生成した。ソルバーには
海技研の CFD コード Nagisa 1.0βを使用した。表 4.1.1 に船体格子の分割数等を示す。O-O
トポロジーで、
原点はミッドシップかつ喫水位置であり、
最小格子間隔は 5.0×10-6 とした。
im は船長方向(両舷)、jm は境界層方向、km はガース方向(片舷)である。
表 4.1.1 船体格子分割数等
H-Case
H1
H2
H3
im
185
249
249
jm
109
145
145
km
65
65
85
セル数(両舷)
1271808
2285568
2999808
舵格子分割数等を表 4.1.2 に示す。計算領域はコード長の 8%と 12%の 2 種類とし、計算
領域がコード長の 8%について分割数を増やした格子も合わせ、3 種類とした。ni_wing は周
方向(片舷)、nj_wing は境界層方向、nk_wing は高さ方向である。
表 4.1.2 舵格子分割数等
R-Case
計算領域
r_late
ni_wing
nj_wing
nk_wing
セル数
R1
R2
RN2
コード長の8% コード長の12% コード長の8%
0.08
41
13
41
38400
0.12
41
17
41
51200
0.08
41
17
41
51200
表 4.1.3 に示す通り、船体格子と舵格子の組み合わせにより 7 ケースを分担し、比較用
にマルチブロック O-O 型トポロジーによる計算も実施した。
8
表 4.1.3 パラメータスタディケース
ケース
1
2
3
4
5
6
7
8
船体
H-Case1
H-Case1
H-Case2
H-Case2
H-Case3
H-Case3
H-Case3
舵
R-Case1
R-Case2
R-Case1
R-Case2
R-Case1
R-Case2
RN-Case2
船体+舵マルチブロック格子
船体と舵抵抗、船体、舵それぞれの抵抗の比較の他、プロペラ面位置(x/Lpp=0.4853)の
伴流分布、舵コード長中心位置・舵スパン長中心位置・y 対称面での格子図、舵コード長中
心位置・舵スパン長中心位置・y 対称面と物体表面での圧力分布についても比較を行う。
4.1.2 計算結果
表 4.1.4 に抵抗値の比較を示す。舵抵抗が船体抵抗と比較して小さく、船体抵抗の変化
が小さいため、船体+舵抵抗の変化も小さい。マルチブロック O-O 型トポロジーによる計算
結果と比較し、重合格子による舵抵抗値はいずれも低い値となっており、重合格子では舵
上下端部が厚みを持った形状であるのに対し、マルチブロック O-O 型トポロジーでは上下
端部で厚みをゼロとしたため、形状の差が一つの原因であると考えられる。
図 4.1.1 に各舵格子において船体格子を変えた場合の抵抗値の比較を示す。いずれの舵
格子においても、抵抗値は収束傾向になく、圧力抵抗の変化が大きい。船体格子の解像度
が上がることにより舵格子への流入速度が変わる影響が、舵抵抗の変化が大きい原因の一
つとして考えられる。また、同一の船体格子において、舵格子を変更した場合も変化が大
きいことから、舵抵抗を比較する場合、舵格子は同一の領域の大きさと格子数で比較する
必要があると推察される。また、重合格子情報の生成に使用した GTOOL では、舵格子で船
体格子から値を受けるセル(レセプターセル)が、計算領域の外周から 1 セルに設定されて
おり、空間離散化から必要な 2 セルをとれていないことも一つの要因として考えられる。
図 4.1.2、4.1.3 にプロペラ面伴流分布の比較を示す。いずれのケースにおいても、伴流
分布の違いはほとんど見られない。
図 4.1.4 から 4.1.6 に舵コード長中心位置での計算格子、図 4.1.7 から 4.1.9 に同位置
での圧力分布を示す。重合格子のケースと比較し、マルチブロック O-O 型トポロジーでの
舵上下端部の厚みゼロの処理が確認できる。マルチブロック O-O 型トポロジーでの圧力分
布と、重合格子での圧力分布は概ね一致している。
図 4.1.10 から 4.1.12 に y 対称面での格子図での計算格子、図 4.1.13 から 4.1.15 に y
対称面と物体表面での圧力分布での圧力分布を示す。マルチブロック O-O 型トポロジーで
9
の圧力分布と比較し、舵格子 R2 での圧力分布が近い傾向を示しているが、上下端の扱いの
影響もあり、差を生じている。重合格子による船体格子と舵格子での圧力分布の接続性は
良い。
図 4.1.16 から 4.1.18 に舵スパン長中心位置での計算格子、図 4.1.19 から 4.1.21 に同
位置での圧力分布を示す。マルチブロック O-O 型トポロジーでの圧力分布と比較し、重合
格子では圧力 p=0.06 のコンターラインの広がりが小さい。舵格子 R1 と R2 を比較すると、
領域が大きい R2 の圧力分布が、マルチブロック O-O 型トポロジーでの圧力分布に近づく傾
向を示す。
今回のパラメータスタディの結果から、重合格子計算の指針として、舵計算では領域は
できるだけ大きくとり、舵抵抗を計算するための格子解像度をとった上で、相対比較にお
いても領域と格子数は変更しないことが必要であると言える。また、船体格子と舵格子を
直接組み合わせる他に、重合関係を把握しやすく、格子密度差を小さくできる矩形格子を
用いることは格子数を減らすこともでき、重合格子手法には有効である。
表 4.1.4 抵抗値の比較
Case
H1R1
H1R2
H2R1
H2R2
H3R1
H3R2
H3RN2
Multi Block O-O
Ct
1.106E-03
1.105E-03
1.103E-03
1.103E-03
1.105E-03
1.103E-03
1.105E-03
1.087E-03
Total
Cf
9.069E-04
9.069E-04
9.075E-04
9.077E-04
9.080E-04
9.078E-04
9.081E-04
9.033E-04
Cp
1.988E-04
1.982E-04
1.952E-04
1.950E-04
1.966E-04
1.947E-04
1.968E-04
1.840E-04
Ct
1.094E-03
1.093E-03
1.092E-03
1.092E-03
1.095E-03
1.093E-03
1.094E-03
1.074E-03
10
Hull
Cf
9.038E-04
9.038E-04
9.045E-04
9.045E-04
9.050E-04
9.050E-04
9.051E-04
9.001E-04
Cp
1.905E-04
1.894E-04
1.870E-04
1.873E-04
1.896E-04
1.883E-04
1.893E-04
1.736E-04
Ct
1.137E-05
1.195E-05
1.115E-05
1.088E-05
1.001E-05
9.260E-06
1.064E-05
1.342E-05
Rudder
Cf
3.129E-06
3.117E-06
2.960E-06
3.208E-06
2.981E-06
2.799E-06
3.090E-06
3.292E-06
Cp
8.238E-06
8.830E-06
8.187E-06
7.677E-06
7.029E-06
6.460E-06
7.553E-06
1.013E-05
Hull+Rudder
1.20E-03
Hull+Rudder
1.20E-03
1.00E-03
1.00E-03
8.00E-04
8.00E-04
Ct
6.00E-04
Ct
6.00E-04
Cf
4.00E-04
Cf
4.00E-04
Cp
Cp
2.00E-04
2.00E-04
0.00E+00
0.00E+00
H1R1
H2R1
H3R1
H1R2
H3RN2
船体+舵抵抗(H1-3+R1,RN2)
Hull
1.20E-03
1.00E-03
1.00E-03
8.00E-04
8.00E-04
Ct
6.00E-04
H3R2
船体+舵抵抗(H1-3+R2)
Hull
1.20E-03
H2R2
Ct
6.00E-04
Cf
4.00E-04
Cf
4.00E-04
Cp
2.00E-04
Cp
2.00E-04
0.00E+00
0.00E+00
H1R1
H2R1
H3R1
H3RN2
H1R2
船体抵抗(H1-3+R1,RN2)
Rudder
1.40E-05
1.20E-05
1.20E-05
1.00E-05
1.00E-05
8.00E-06
H3R2
船体抵抗(H1-3+R2)
Rudder
1.40E-05
H2R2
8.00E-06
Ct
Ct
6.00E-06
Cf
6.00E-06
Cf
4.00E-06
Cp
4.00E-06
Cp
2.00E-06
2.00E-06
0.00E+00
0.00E+00
H1R1
H2R1
H3R1
H3RN2
H1R2
舵抵抗(H1-3+R1,RN2)
H2R2
舵抵抗(H1-3+R2)
図 4.1.1 抵抗値の比較
11
H3R2
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.2 プロペラ面伴流分布の比較(その 1)
12
Multi Block O-O
H3R2
H2RN2
図 4.1.3 プロペラ面伴流分布の比較(その 2)
13
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.4 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)計算格子(その 1)
14
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.5 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)計算格子(その 2)
15
H3R2
H3RN2
図 4.1.6 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)計算格子(その 3)
16
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.7 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)圧力分布(その 1)
17
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.8 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)圧力分布(その 2)
18
H3R2
H3RN2
図 4.1.9 舵コード長中心位置(x/Lpp=0.5067)圧力分布(その 3)
19
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.10 物体表面+y 対称面 計算格子(その 1)
20
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.11 物体表面+y 対称面 計算格子(その 2)
21
H3R2
H3RN2
図 4.1.12 物体表面+y 対称面 計算格子(その 3)
22
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.13 物体表面+y 対称面 圧力分布(その 1)
23
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.14 物体表面+y 対称面 圧力分布(その 2)
24
H3R2
H3RN2
図 4.1.15 物体表面+y 対称面 圧力分布(その 3)
25
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.16 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.0406)計算格子(その 1)
26
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.17 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.0406) 計算格子(その 2)
27
H3R2
H3RN2
図 4.1.18 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.-406) 計算格子(その 3)
28
Multi Block O-O
H1R1
H1R2
図 4.1.19 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.0406)圧力分布(その 1)
29
H2R1
H2R2
H3R1
図 4.1.20 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.0406)圧力分布(その 2)
30
H3R2
H3RN2
図 4.1.21 舵スパン長中心位置(z/Lpp=-0.-406)圧力分布(その 3)
31
4.2 重合格子ケーススタディ
省エネ付加物解析ニーズ調査に基づき、実用に類似した付加物形状による性能評価のた
め、重合格子手法によるサンプルデータを作成し、重合格子システム up_grid 及びソルバ
ーと合わせ、委員会の中で配布した。図 4.2.1 に主な類似付加物形状と重合状態を示す。
船尾フィン+ダクト+舵
船尾端フィン+舵+舵フィン
ステータ・フィン
図 4.2.1 付加物と重合状態
船体格子については、重合格子の格子間の格子密度差を抑えるため、付加物接合付近を
細分化した。船尾フィン格子は O-O 型トポロジーにて生成し、船体にてトリミングした。
船尾ダクトについては船体と重ならない状態を前提とした。船尾端フィン格子については
トポロジーを工夫し、片舷のフィンを端部で閉じずに生成した後、両舷にすることで対応
した。舵フィンは船尾フィンと同様の扱いとし、ステータ・フィンで格子が複数重なる場
合には、重合情報生成時に計算格子の並び順を定めることで優先順位を決定した。また、
全てのケースにおいて、パラメータスタディの結果を踏まえ、重合格子の格子間の格子密
度差を抑えるため、矩形格子も追加した。
物体が重なる部分での抵抗・面積の重複を除去する機能を追加し、抵抗・自航計算を行
った。図 4.2.2 に各付加物での可視化例を示す。重合した格子間での流速・圧力の等高線
の接続性を確認するとともに、自航計算は簡易プロペラモデルによる計算としたが、重合
格子手法においても支障なく計算できることを確認した。
今後は、物体の一部が重なるトリミング機能(例:船尾ダクト)や重合状態チェック機能
が必要と考えられる。また、後述の CFDWS2015 にも向けて、実用に類似した付加物形状に
基づく検証用の公開データが、CFD による付加物性能評価において必須である。
32
船尾フィン+ダクト+舵
船尾端フィン+舵+舵フィン
ステータ・フィン
図 4.2.2 可視化例
33
5.CFDWS2015 テストケース検討
5.1 CFDWS2015(T2015)計画
船舶流体力学における CFD ワークショップは、1980 年に Gothenburg で開催されて以来こ
れまで 6 回、スウェーデン、日本と交互に開催されてきた(表 5.1.1 参照)。ワークショッ
プの目的は最新の CFD コードの性能評価である。前回の Gothenburg2010 では、異なる 3 隻
の船型を用いて抵抗、自航、波浪中など 18 種類のテストケースが設定され、世界中から 33
のグループが参加した。参加者はそれぞれの手法による計算結果を提出し、計算結果間の
相互比較や実験結果との比較により、CFD 手法の精度や適用可能性に関する現状評価および
開発課題に関して活発な議論がなされた。
表 5.1.1 CFD ワークショップの開催年、主催、場所
開催年
主催
場所
1
1980
Chalmers 工科大学
Gothenburg(スウェーデン)
2
1990
Chalmers 工科大学
Gothenburg(スウェーデン)
3
1994
船舶技術研究所
東京
4
2000
Chalmers 工科大学
Gothenburg(スウェーデン)
5
2005
海上技術安全研究所
東京
6
2010
Chalmers 工科大学
Gothenburg(スウェーデン)
7
2015
海上技術安全研究所
東京
2015 年 12 月に東京で開催される TOKYO2015 では、これまでバラツキが大きかった自航計
算を中心に平水中から波浪中までの幅広いテストケースを設定する予定である(表 5.1.2
参照)
。今回の新規性は二つあり、一つは新船型の導入である。この 10 年以上 MOERI が設
計した KVLCC2 を肥大船のテストケースに用いてきたが、現在のトレンドに併せてさらに CB
の大きな新船型 JVLCC を新たに設計し、採用する。また、双胴船も CFD ワークショップは
じめてのテストケースとなる。もう一つの新規性は、GHG 削減の折、CFD が非常に期待され
ている省エネ付加物の性能評価である。前述の肥大船 JVLCC の船尾に省エネ付加物を装着
した際の抵抗・自航流れをテストケースとして設定し、省エネ効果や流れの推定精度に関
して議論する予定である。
34
表 5.1.2 TOKYO2015 のテストケース(案)
船型
比較・検討項目
詳細
JVLCC
自航状態
船型・省エネ付加物は新規設計
船尾乱流
PIV
省エネ付加物
PIV
KCS
自航状態
波浪中の抵抗増加
DTMB5415
Delft Catamaran
計測:FORCE
自航状態
詳細流れ
乱流・砕波計測:IIHR
自航状態
Waterjet
5.2 フィン付き船体 CFD 計算
CFDWS2015のテストケース検討として、主に抵抗低減を目的とし、KVLCC2に船尾フィンを
付けた状態についてCFD計算を行った。船尾フィンは表5.2.1に示す7種類を試した。fin1を
ベースに幅、長さを変更し、fin1は船長比で0.03の長さ、0.005の幅を有している。いずれ
も左右舷で対称とし、フィン後端は船尾端と一致させ、船尾縦渦による下降流を生じてい
る高さに設置した。原点はFPかつ喫水位置であり、fin1からfin4はz/Lpp=-0.0395に、fin5
はz/Lpp=-0.043に設置した。fin1に角度を付けたものは、前端を固定し、±2度とした。図
5.2.1にフィン取り付け位置を示す。
計算格子については、市販ソフトウェア Gridgen によりマルチブロックの格子を生成し、
格子数は片舷で約 92 万点である。計算には海技研のソルバーSURF を使用し、レイノルズ数
は 5.0x106 とした。乱流モデルとして 2 方程式モデルである k-w SST モデルを適用した。
表5.2.1 船尾フィン(fin1との比)
種類
長さ
幅
fin1
1.0
1.0
fin2
1.0
0.5
fin3
1.33
1.0
fin4
0.67
1.0
fin5
1.13
1.0
fin1 angle(+)
0.98
1.0
fin1 angle(-)
1.03
1.0
35
側面図
平面図
図 5.2.1 フィン取り付け位置
5.2.1 フィン付き船体抵抗計算
表5.2.2に全抵抗係数、摩擦抵抗係数、全抵抗係数のフィンなしとの比、公称伴流係数を
示す。抵抗係数はρU2L2ベースで無次元化されたものである。今回のフィンのなかでは、fin1
による全抵抗係数の低減率が大きい。フィンありの場合には、フィンなしと比較し、公称
伴流係数は小さくなる傾向を示す。fin4での抵抗低減率はfin1より小さいものの、公称伴
流係数の低下はfin1より大きい。図5.2.2にfin1 でのフィン有無での船尾流場(x/Lpp=0.
95)、図5.2.3に船尾圧力分布を示す。フィンにより船尾縦渦が妨げられるとともに、フィ
ン上部での船尾圧力の上昇が見られる。図5.2.4にfin1、図5.2.5にfin4でのプロペラ面伴
流分布を示す。フィンによる低速の領域が見られ、速度の低下はfin1よりfin4の場合が大
きい。
表5.2.2 抵抗係数等の比較
種類
全抵抗係数(x10-3)
摩擦抵抗係数(x10-3)
全抵抗比
公称伴流係数
w/o fin1-4
5.526
4.488
1.0
0.470
w/o fin5
5.504
4.480
1.0
0.467
w/o fin1 angle(+,-)
5.502
4.482
1.0
0.473
fin1
5.486
4.485
0.993
0.462
fin2
5.495
4.484
0.994
0.463
fin3
5.507
4.486
0.997
0.467
fin4
5.494
4.483
0.994
0.453
fin5
5.477
4.481
0.995
0.461
fin1 angle(+)
5.481
4.482
0.996
0.460
fin1 angle(-)
5.480
4.484
0.996
0.466
36
フィンあり
フィンなし
図 5.2.2 fin1 での流場(x/Lpp=0.95)
フィンあり
フィンなし
図 5.2.3 fin1 での船体表面圧力分布
37
フィンあり
フィンなし
図 5.2.4 fin1 でのプロペラ面流速分布(x/Lpp=0.9825)
フィンあり
フィンなし
図 5.2.5 fin4 でのプロペラ面流速分布(x/Lpp=0.9825)
5.2.2 フィン付き船体自航計算
続いて自航計算を行った。対象はフィン無し、fin1とfin4の状態である。計算格子につ
いては、片舷格子より両舷格子を生成し、格子数は約184 万点である。計算には同じくSURF
を使用した。図5.2.6に、自航計算に使用したプロペラの単独性能曲線を示す。プロペラの
データは文献(Yang, J. et al., JAKOM 99)のKVLCC2の水槽試験にて使用されたものを参
考にした。表5.2.3に自航要素等の比較を示す。自航計算の結果、推進効率はfin4が良く、
曳航状態の全抵抗Ctを推進効率ηで割った値では、fin4が約1.2%、フィン無しより小さく
なる。図5.2.7に船尾付近の圧力分布、図5.2.8にプロペラ面での流速分布を示す。自航状
態でのフィン有無による圧力分布の違いは、フィン近傍に見られ、フィン上面かつ前端で
38
は正圧、下面では負圧となっている。プロペラ面流速分布での自航状態におけるフィン有
無の差は、主にフィン後方の流速の低下に見られる。
以上から、KVLCC2では省エネ付加物(船尾フィン)の効果が顕著でなく、また、テストケ
ース船型として10年以上が経っており、トレンドにあった新船型が省エネ付加物付きのテ
ストケースとして必要と考えられる。
図 5.2.6 プロペラ単独性能曲線
表5.2.3 自航要素等の比較
種類
J
回転数
1-t
1-wt
ηr
ηo
ηh
η
Ct/η
w/o fin
0.430
45.79
0.800
0.603
1.036
0.539
1.326
0.741
1.699
fin1
0.428
45.69
0.797
0.599
1.031
0.537
1.329
0.736
1.697
fin4
0.430
45.70
0.801
0.602
1.041
0.539
1.330
0.746
1.678
39
フィンなし
fin1
fin4
図 5.2.7 船体表面圧力分布(上段:曳航状態, 下段:自航状態)
フィンなし
fin1
fin4
図 5.2.8 プロペラ面流速分布(x/Lpp=0.9825, 上段:曳航状態, 下段:自航状態)
40
6 研究プロジェクトの立案
前述のように、2015 年 12 月に東京で開催される TOKYO2015 では、新たなテストケースの
一つとして、新たに設計する船型 JVLCC について、その船尾に省エネ付加物を装着した際
の抵抗・自航流れをテストケースとして設定する予定である。その際に CFD 検証用の流場
データの計測を目的として、以下のようなプロジェクトを立案した。
省エネ付加物付き船体まわりの流れの CFD 解析を高度化するために、詳細な流場計測を
行い CFD 検証用の流場データベースを構築することを目標とする。そのために、以下の項
目を実施する。
①模型製作
省エネ付加物の性能評価のための模型船および省エネ付加物を設計・製作する。
②CFD による実験計画
設計された模型船および省エネ付加物について、予備的な CFD 計算を行い、実験状
態や計測断面の設定など実験計画を策定する。
③省エネ効果計測
上記で作成した模型船を用いた水槽試験(抵抗試験および自航試験)を行い付加物
の省エネ効果を計測する。
④流場計測
省エネ付加物を付けた場合と付けない場合について、プロペラ有無の状態で船尾ま
わりの詳細な流場計測を行う。
⑤CFD による検証計算
上記③および④の実験結果の検証のため、同一の条件下で CFD による流場解析を行
い、実験結果と計算結果との比較検討を行う。
⑥データベース構築
船型データおよび計測データを整理し、データベースを構築する。
⑦CFD 計算ガイドラインの策定
検証データに対応した CFD 解析のパラメータスタディを実施し、省エネ付加物の性
能評価のための CFD 計算ガイドラインを策定する。
今後、外部資金の導入により、この研究プロジェクトを実施してゆく予定である。
41
7.結言
本委員会の主な活動は以下のようにまとめられる。
CFD 手法の検証のためには、計算結果と流場データの計測結果との比較が不可欠である。
次世代 CFD コードのアプリケーション分野は省エネ付加物付き船体の性能評価など、複雑
な形状のまわりの流場解析が想定されるので、検証用のデータもこれまでのような船型単
独の流場ではなく、複雑形状まわりの流場データが望ましい。そこで、既に公開されてい
るデータを調査し、複雑形状流場の検証に用いることのできるベンチマークデータを抽出
した。
設計において必要とされる実際的な省エネ付加物の解析ニーズを調査し、CFD 手法を適
用するための技術課題を検討した。
また、複雑形状を扱うための有力な手法である、重合格子法の適用可能性を検討するた
めに、上で収集したベンチマークデータの中から、船体、舵、プロペラまわりの流れを対
象として、重合格子法のパラメータスタディを行った。さらに、実際的な省エネ付加物形
状について、重合格子法を適用するケーススタディを行い、その適用可能性と技術課題を
抽出した。
一方、2015 年に東京において、船舶 CFD に関する国際ワークショップが開催されること
になり、そのテストケースとして、省エネ付加物付き船体まわりの流れが提案されること
となった。これに対応して、フィン付き船体まわりの CFD 計算を実施し、テストケースの
具体化を検討した。その結果、新船型を設計してその船型に適した省エネ付加物を採用し、
それをテストケースとするという方針を定めた。
上記を踏まえ、新船型および省エネ付加物の設計、製作を行い、水槽試験によって性能
確認と流場計測を行う研究プロジェクトを立案した。また、プロジェクトでは、さらに
CFD による省エネ付加物まわりの流場解析のためのガイドラインを策定することとしてい
る。
今後は、研究プロジェクトの実施に向けて、新たな体制でさらなる検討を進める予定で
ある。
42