スペシャルレポート リンテックの 粘着応用技術 “粘着”による技術革新で各産業界の発展に貢献 これまで当社では、独自の技術を駆使して、時代のニーズにこたえる画期的な 製品を生み出してきました。今回は、リンテックの技術の中でも基盤中の基盤 である「粘着応用技術」についてご紹介します。 このように事業を拡大していく中で、当社の粘 らしたのが、 「UV硬化型ダイシングテープ」 です。 着応用技術は各産業界の技術革新に寄与して 半導体ウェハを一つ一つのチップに切断する際 きました。例えば、 自動車の窓枠やドアサッシに に使用されますが、切断時には強い粘着力で 塗装の代替として貼られる「ブラックアウトテー ウェハをしっかりと固定し、切断後にはチップを プ」 。従来の溶剤を使用した黒塗装と違って色目 簡単にはがせるという二律背反の機能を、テー が均一で、不具合が生じても貼り替えるだけで プにUV(紫外線) を照射して粘着力をコントロー 修正することができます。貼付時に空気が入らな ルすることで実現しました。 い特殊な加工を施して リンテックの成長の原動力 —「粘着応用技術」 あり、作業効率を大きく 向上させるとともに、環 リンテックは、粘着素材の分野におけるリー 求められる性能はさまざま。当社では、永年培っ 境負荷も低減します。 ディングカンパニーとして、数多くの製品を市場 てきた「粘着応用技術」を生かし、個々のニーズ また、半導体業界に に供 給しています。一口に粘 着 素 材といって に対応する多種多様な粘着剤や各種基材を開 大きな技術革新をもた も、貼る対象物や期間、使用環境などによって 発してきました。 ブラックアウトテープ UV硬化型ダイシングテープ “粘着”の可能性を新たな分野へ 粘着製品の特徴を生かして事業領域を拡大 リンテックの原点、それは 1934 年、国内で という粘着製品の特徴を生かして、1970 年代 粘着応用技術の進歩に終わりはありません。 連携の研究開発を行うなど、技術の新たな応 初めてガムテープの製造を開始した不二紙工 には屋内外装飾、二輪・自動車関連などの工業 近年、スマートフォンやタブレットの需要が世界 用分野の発掘を積極的に推進しています。今 (株)の設立にさかのぼります。ガムテープとは 分野に進出。1980年代には半導体関連分野、 的に急拡大しており、それらに使用される半導 後も産業界や皆様の暮らしに革新をもたらすた クラフト紙に水溶性の接着剤をコーティングし、 さらに 1990 年代には液晶関連分野へと事業 体やタッチパネルなどの分野で当社の粘着素 め、 粘着素材の可能性を追求していきます。 切手のように水をつけて貼るテープでした。そし 領域を広げていきました。 材や技術が数多く活躍しています。加工・積層 て1960 年、現在の主 する部材にジャストサイズで、容易に貼り合わ 力製品であるシール・ せ加工ができる粘着シート材料。その特性を ラベル用粘着紙・粘着 生かし、最終製品のさらなる高機能化や軽量化 フィルムの 製 造・販 売 などが 求められる中、当 社もこれらニーズに を開始しました。台紙か こたえるべく、新製品開発に取り組んでいます。 ら“はがして貼るだけ ” 6 ガムテープ シール・ラベル用粘着紙 また、当社では社内だけにとどまらず、産学 7 身の回りのリンテック製品 リンテック研究室訪 問 “魅せる”屋外装飾用素材 電子材料研究室 リンテックの製品は、実は生活のさまざまなシーン 当社の研究開発の中枢を担う技術統括本部 研究所では、現業に直結する製品開発を行う「製品 で活躍し、皆様の身の回りに深く浸透しています。 研究部」と、将来を見据えた研究開発を行う「新素材研究部」の下に各研究室が組織されてい 今回は、看板や車体などに使われる屋外装飾用素材 ます。今回は、製品研究部 電子材料研究室の研究員に、開発テーマや具体的な取り組みについ をご紹介します。 て聞きました。 街の中で活躍する“貼るペイント” 「電子材料研究室」の 概 要 昨年、開園20周年を迎えた横浜・八景島にある遊園 半導体製造プロセスで使用されるテープを開発する研究室。 地。これを記念して園内の階段に大きな絵の装飾が施 半導体の生産拠点がアジアを中心とする海外に移る中、現 されました。実はこれは子供たちがコメントを書いたたく 地の顧客ニーズをとらえるため、研究員を積極的に海外子 さんのパーツをリンテックの専用粘着フィルムにデジタ 会社に派遣している。 ル出力して貼ったもの。ペンキによる塗装と比べてデザ 製品研究部 電子材料研究室 さ とう あきのり 佐藤 明徳 担当している主な開発テーマは何ですか。 Q するため、従来の方法よりも実装面積が小さく、 半導体チップの材料である円盤状のウェハを 通信速度も速くすることができます。しかし、チッ 一つ一つのチップに切断する工程で、チップが プ表面に電極の凹凸があったり、チップ自体に 飛び散らないようウェハを固定するダイシング 穴が開いていたりするため、切断時には粘着剤 テープの開発を担当しています。このテープは、 がチップ表面にしっかりと密着し、切断後は容 車体に広告の描かれたバスや電車が一般的になって 切断後にUV(紫外線)を当てることで粘着力を 易にはがせるようテープの改良を進めています。 きましたが、ここにも当社の粘着フィルムが採用されて コントロールし、容易にはがすことができるのです * マイクロ:100万分の1。30マイクロメートルは100分の3mm います。耐候性・耐熱性・耐油性のほか、さまざまな形 が、現在はウェハの厚さが 30マイクロ*メートル 状に対応できる曲面追従性にも優れ、一定期間後には と非常に薄くなっていますので、はがす際にチッ きれいにはがすことができます。もちろん、はがす必要 プが割れないように、さらに粘着力を低く制御 のない用途向けに強粘着の永久接着タイプもあり、車 することが求められています。 現在、 ウェハの直径は300mmが主流ですが、 体装飾でも使用されています。 また近年、基板実装方法の一つとして、 「 TSV 近年 450mm 径への移行が本格的に検討され ( 貫通電極)」と呼ばれる手法が考案されてい ており、これに合わせたテープの開 発に取り ます。この手法は複数のチップを重ね、それぞれ 組んでいます。また、欧州の「REACH規則」な のチップを貫通させて電極を通し、基板に接続 ど各種化学品規制の強化にも迅速に対応する インが容易で、施工性にも優れ、色ぶれの心配もない 当社の屋外装飾用フィルムは、“貼るペイント”として看 板や広告など、街の至るところで活躍しています。 バスや電車などの広告・装飾にも こんな所にも! 世界一過酷なレースともいわれる「ダカールラリー」に、今年も リンテックの装飾用フィルムを貼ったトラックが出場。砂漠や荒 野が続く全長約 9,000km のコースを完走し、クラス 5 連覇を 八景島シーパラダイス 達成しました。優れた耐久性を誇る当社の粘着フィルムがこの 快挙を“側面”からサポートしています。 8 写真提供 : 日野自動車(株) TSV(貫通電極)の イメージ チップ 貫通電極 突起電極 Q 日々心掛けていることを教えてください。 そのほかに取り組んでいる研究、また よう努めています。かつてドイツに3 年間赴任し、 研 究 室の外で気づかされることが多くあった 粘着剤 ので、営業と顧客の元に同行するなど現場で生 基板 の声を聞くことを大切にしています。 9
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