平成27年度社会福祉法人東京緑新会事業計画 はじめに 障害者分野においては、障害者権利条約の批准を節目としてグループホーム等地域生活 への移行が推進されている。しかし、その一方で既存の入所施設、とりわけ都内旧療護系 施設は、重度・病弱化が進み、多様な障害を有する重篤な方々の生活の場となりつつある。 そうした中、平成26年度の多摩療護園は、施設開設以来43年間にして最大となる9 名(入所6名、通所3名でいずれも最大)の死亡退園者を見送るという、誠に残念な事態 となった。だがその過程は、これまで実践してきた自立生活支援等光の当たる中身とは異 なる、日々寄り沿ってきた利用者の方々への人としての尊厳に関わる支援であった。 平成27年度は、スタッフ・ミーティング等を活用し、身障協「ケアガイドライン」の 活用論議等支援の質向上への取り組みと同時に、より一層様々な障害の特性、疾病の特徴 等を学びながら利用者個々人への支援の充実を図っていく。加えて、重度障害者支援に長 年携わってきた延長線上に、狭間に立たされ困難を極める多くの最重度障害者の支援のた め、先駆的な支援を目指す歩みをさらに進めて行くことが問われている。そうした課題を 重点に、各部署から提起された平成27年度の事業方針を示すこととする。 1 法人全体として取組み (1) 「最重度障害者」が地域で安心して暮らせる場を求めて ア グループホーム開設に向けて 当法人は、昨年度から重度重複障害者等が地域で暮らすグループホームを開設 しようと検討してきた。しかし、実際にはまだ具体的な建物の全体像や土地の問 題が明確になっておらず、予定していたプロジェクトチームの設置は難しい状況 であった。だが、今年度は課題の整理が少しずつ進みつつあり、目指そうとして いるグループホームの概要、建設資金、運営資金、ニーズ把握等の開設準備を一 歩前進させる。そのため、プロジェクトチームを設置することとする。なお、こ のプロジェクトには利用希望者・家族等の意見を出来るだけ反映させられるよう にしていく。 イ 最重度者への医療支援強化を図った生活の場を求めて 今日、利用者の障害重度化が進み、医療的ケアは増大し生活支援と医療支援の 総合力がますます問われる事態となってきている。もはや、既存の枠組みでは制 度的疲労も限界点に差し掛かってきており、この間こうした状況を打開すべく東 京都身体障害者施設協議会(東障協)と東京都とで話し合いを続けてきた。都は 当初看護体制の強化を考えていたが、療養介護施設併設をも視野に入れた解決策 等が俎上に上がってきている。生活施設と病院は異なるシステムであるという矛 盾(古くは障害者の歴史的二大抵抗闘争の一つと言われた府中闘争の教訓)もあ 1 る。現実問題、ここ数年本来は療養介護を対象とする方々が多摩療護園をはじめ とした一部都内旧療護系生活施設における新規入所者の主流となっており、むし ろ療養介護では重い高次機能障害を抱える狭間に位置した中途障害者が受入れら れない制度的矛盾も生じる。こうした様々な課題を突破して、具体的に前進する ためには、東障協参加施設で十分な議論を行い、ビジョンを提示していく必要が ある。これと併行して当法人内においてもプロジェクトチームを設置し検討する。 ウ 東京都からの委託事業「東京都地域移行促進コーディネート事業」の推進 本事業は、障害者支援施設に地域移行促進コーディネーターを配置し、都内・ 都外施設と相互に連携を図りながら、また区市町村や相談支援事業所との連携体 制の構築により、施設利用者の地域移行促進を目的する。 当法人は平成 26 年 1 月 1 日に受託しており、協力施設(日野療護園、みずき、 楽、八王子療護園)と連携し意向調査を実施、地域移行の現状や阻害因子、求め られる地域移行支援等についての分析を進めている。また、利用者の重度・病弱・ 高齢化が進行する中、グループホーム見学会や親睦会、ピアサポーターによる学 習会等普及・啓発活動がより重要ととらえ展開中である。個別の事案では、自立 生活センターやケースワーカーと連携し、地域生活のための各種支援制度を利用 する段階にあるケースなど、個別のニーズに合わせた支援を実施している。 しかしながら、実際には介助の受け皿や福祉サービスの枠組を整えるだけでは 地域生活の継続は難しく、本人の人間関係のフォロー、自己決定支援、成年後見 制度の活用等生活づくりの支援と権利擁護が内在し、地域移行と定着ができる条 件を丁寧に整えていく必要がある。どの施設も利用者の重度化や職員の不足等を 抱えており、地域移行支援を行う余裕も見出せずにいる中、様々なレベルでのネ ットワークづくりと、社会的理解の促進が大切である。今年度は、本事業の協力 関係を広域に拡げ、協力・連携ネットワーク体制の構築を目指すこととする。 (2) 法人としての人材育成 ア 法人研修 昨年度は障害者の人権擁護の立場に立った支援を職員育成を課題とし取り上げ 「障害者差別解消法・障害者権利条約、障害者虐待防止法」についての学習会を 実施してきた。しかし、障害者の重度化の中で、 「利用者主体」や「利用者の意向」 に配慮した支援は後景に追いやられてきていると言わざるを得ない。したがって、 今年度も引き続きこの課題について継続する。特に、平成27年度においては言 語表出機能を失なったり、認知機能の低下等で意思表示が出来なくなったりした 最重度の障害を抱える人たちの人権をどう守っていくのか等の課題を中心に取り 組む。 イ 新給与制度確立と運営 人事考課制度を導入したものの、評価基準の明確化や確立ができず、定期昇給は 2 一律3000円の暫定処置を取っていた。これでは今後の生活設計が描けないとの声 が出る中、平成26年度において集中的な給与制度の検討を行い、年度末には労働組 合や理事会に提案できる状況にまで漕ぎ着けた。平成27年度からはこの新給与体制 を実施するとともに、継続的対応が出来るよう取り組む。 ウ キャリアパス制度の再構築 平成27年度報酬改定の中では、介護職員処遇改善助成金が増額されており、それ を受けるためにはキャリアパス制度の確立が必要である。特に、平成27年度からの 新給与制度移行に伴って、給与表の1級から3級へ渡っていく際等に、一定のキャリ ア構築をした人が次の級へ移行できるように制度を改善する。当面4月からの新給与 制度導入を先行させ、今年度中に新キャリアパス制度を検討し実施できるようにする。 (3) 障害者の権利擁護 ア オンブズパーソン活動の取り組みについて オンブズパーソンは、利用者の権利擁護・苦情解決及び虐待防止のための活動を継 続する。各委員は、利用者・職員懇談会に参加し、園の状況を把握するとともに、個 別の相談を受ける。定例会では利用者自治会役員及び園との情報交換及び苦情等への 協議を行う。 イ 利用者の権利擁護の取り組みについて 当園利用者の障害状況は、身体と知的の重複障害の方が4割弱、身体と精神の重複 障害の方は交通事故後遺症等による高次脳機能障害を含めると6割弱となる。重度の 障害を抱える利用者が増加する中、意思疎通が困難な利用者の権利擁護について焦点 を当て、研修会等から職員の意識向上を図る。また、研修会等にはオンブズパーソン 委員にも参加してもらい、外部第三者委員としての視点も踏まえ意見交換を行う。 (4) 情報管理・共有化 ア ホームページの再構築と更新・活用について ホームページに関しては、 これまで IT の知識が豊富な一人の職員に委ねられてきた。 この職員は、変則勤務による利用者介助を本来業務としながら、PC 全般の管理も行っ ている。そのうえさらにホームページの定期更新まで担うことは本来業務に自ずと支 障が出ることが懸念される。継続課題となっていた現在の状況を改め、ホームページ の再構築と適切な更新・運用に関する管理体制を確立する。 2 障害者支援施設多摩療護園 (1) 施設入所支援・生活介護 ア 業務整理と業務標準化による適正な人員配置 園と労働組合は、利用者の高齢化及び障害の重度化による支援状況の変化、欠員が 常態化する職場環境の改善に向け『多摩療護園の業務等全般にわたる見直し検討委員 会(仮称)』を立ち上げ、昨年12月から検討を開始した。これまで適用してきた職 3 員配置園内基準の男女各早出6名・遅出8名・夜勤3名の確保は人員的に困難となり、 遅出1名減の7名が通常となっている。一部パートの導入も考えられるが、職員のキ ャリアアップに向けた研修時間等の確保も視野に入れたうえでの人員体制を構築する。 さらに、利用者の支援状況の変化を踏まえ、新たな勤務体系、入浴や日中活動のあり 方等全般にわたる見直しを行い、試行を経て本格実施を目指す。 イ 専門グループの再構築と研修体制整備による職場の活性化 現在の専門グループはショートステイ、日中活動(運動・レク)の他、7つの委員 会が存在する。それぞれが重要な役割を担っているものの、業務量と個々の責任性に は大きな違いがあるため、担当人員の整理も含めバランスのとれた構成とする。また、 新たに研修委員会を立ち上げ、職員のキャリアアップに力点を置いた研修体制を確立 する。さらに、平成 28 年度のキャリア形成促進助成金(厚生労働省・都道府県労働局) 獲得に向け準備を行い、研修運営事業者と連携を図りながら職員のキャリアアップを 実現する。 ウ 利用者支援の充実に向けた職員の意識向上 平成26年3月に身障協(全国身体障害者施設協議会)から『ケアガイドライン(改 訂版) 』が出版された。これは、常時介護と医療的ケアを必要とする障害者への支援を 行う障害者支援施設における目指すべき方向性となるケア・スタンダード、つまり、 サービス提供のあり方を整理したものである。当園の利用者支援の現状においては、 入所者の重度・高齢化(介助量の増大)や慢性的人員不足等により、日々の業務に追 われるあり様が常態化し、本来の社会資源としての施設の役割や、その役割を職員一 人ひとりが担っている自覚的立場からは解離する傾向にあることが否めない。厳しい 状況ではあるが、ここは心機一転、『ケアガイドライン』を活用し全職員一丸となり、 ①当園の施設機能の現状を評価、②課題の抽出、③解決策の模索、ということについ て取り組んでいく。また、 『ケアガイドライン』の活用術として最も重要なのが、これ らの行程を経る中で積み重ねる議論である。職員各々が酌み交わす意見の中で「気づ き」を育み、利用者支援の充実に繋げていく。 エ 第三者評価の分析と改善 平成26年度の『第三者評価の分析と改善』が遅れているので、平成26年度分の 結果をリーダー間で共有し、評価の低い事項、リーダー層と職員層で評価が乖離して いる事項を早期に確認するとともに、改善策の総合的検討と改善を図る。平成27年 度は、評価結果がわかり次第同様に情報の共有を行い。改善策の総合的検討と改善を 図る。 オ 総合的利用者支援の追求 ①「意見交換会」②「介助検討会」③「支援検討会」の3つの手法を用いたタイムリ ーな内容の園内学習を実施する。 「意見交換会」については、 「異性・異フロアを知る機 会を作る」というテーマでの検討から業務改善を見据えた一定の結論を得る。 「介助検討 4 会」については、日常的な介助方法の見直しや普段と違った環境での介助方法を学習す る他、介助を広くとらえた視点内容を理解する企画とする。 「支援検討会」は、前年度看 取りとは何かを考える機会としたが、更に理解を深める内容の他、医師等との連携で利 用者によくある障害特性や疾患を知ることで、実際の支援に活かせる学習内容とする。 カ サービス等利用計画作成へのコーディネート支援 昨年度にサービス等利用計画を作成した利用者は20名であり、その他新規入所等で 既に作成済みの利用者が3名いるため、今年度は35名の計画作成が見込まれる。事業 所は本人の選択が基本となるが、依頼可能な事業所は限られているため(昨年度末で3 箇所) 、本人了解のもと事業所や福祉事務所と連携を図り綿密なコーディネートを行う。 キ 自立生活センター等外部支援団体との連携による利用者の自立支援 ピアカウンセリングと園内 ILP を継続的かつ計画的に実施する。自立生活を希望する 利用者には東京都地域移行推進コーディネート事業と連携して自立を推進する。また、 職員の自立支援に関する学習会を実施し、職員の意識向上を図る。 ク 利用者への適切な医療的支援の実施 利用者の高齢化・重度化のため身体機能の変調による入退院が増加する中、利用者或 は家族からの延命・救命に対する意向を適宜確認して適切な医療が提供できるように対 応する。また、看護職員は多様化する利用者の障害に対する適切な知識を得ると同時に、 薬や検査内容の把握をも不断に行い、介助班職員に的確な説明が出来るようスキルアッ プする。 ヶ ミーティングの活用について 業務改善から他施設では当園のミーティングに当たるものが割愛されてきている現状 がある。報告事項や検討事項はグループウェアを活用して行うことも可能だが、諸事項 の検討については齟齬が生じる弊害も見られ、当園ではミニカンファレンスや日常業務 の検討の場としてミーティングを尊重してきた経緯がある。現在、業務改善を検討して いる段階であり、職員の意見交換、情報共有の場としてミーティングを活用していかな ければならない。一方で、利用者の日中の入浴時間帯等に変更が生じた場合は、改めて ミーティングのあり方を再検討する。 (2) 通所生活介護事業の安定的運営について ア 平成27年度の利用者数及び利用率の目標等について 事業スペース問題等があり、大幅な利用者増を見越した新規車両追加等の方針も現実 的ではないため、平成 27 年度は現行車両数での送迎体制の工夫について検討する。 ま た、この間特別支援学校との連携強化を意識的に追求してきたが、今後もこうした関係 を維持していく。平成27年度は近隣特別支援学校の卒業予定生徒数が全体で4名と低 くなっているものの、翌年は9名と増加する。しかし、新たに別法人が日野市内で生活 介護事業所を開設することとなっており、卒後の進路先を探すための実習生について安 易に受け入れることはできない。したがって、平成27年度以降の実習生の受入は既利 5 用者の退所状況をにらみつつ可能な範囲で行うこととする。 ここ5年ほどで利用登録者は確実に増え、平成27年 1月末現在で登録者は日野市 31 名、八王子市 10 名、多摩市4名、計 45 名となっている。現状において近隣市の生活介 護事業利用を希望する「待機者」はそれぞれ確実に存在しているはずであるが、実際は 退所者が出る等新たに受け入れ可能な枠が出た場合に、各自治体から利用者を募るとい う形で補充を行っている。今後も、近隣市との情報交換を密に行うよう努めながら、状 況に応じて対応する。なお、独自の送迎補助を設けている日野市以外の八王子市、多摩 市の利用者に関しては平成27年度から独自の送迎負担をお願いする。 土曜入浴に関しては、入浴の機会が必ずしも十分とは言えない在宅障害者にとって極 めて貴重な支援となっている。平成27年度も積極的に実施する。また、前年度1日外 出企画の「土曜外出」を意識的に実施してきた。この企画では日野市の補助を受けたマ イクロバスを使用したが、平成27年度は運行委託会社と協議の上、法人独自の車両運 行による外出企画を試行する。そため、採算性等を検討する。 平成27年度の報酬改定では、生活介護事業の基本単価が大きく引き下げられ、これ による減収は通所者分でおおよそ 300 万円程度となる。こうしたことを考慮し、平成2 7年度の通所生活介護事業の目標利用者数は、延べ 6,300 人、1 日当たり平均利用者数 23.5 人、目標収入は 108,000,000 円とする。 イ サービスの質向上について 前年度の利用者年齢構成は、10~20 歳代 21 人、30~40 歳代 12 人、50 歳 以上 12 人 となっており、平均年齢は男性 42.4 歳、女性 32.9 歳となっている。平均年齢が比較的若 いのは、特別支援学校卒業生の受け入れを積極的に行ってきたことによる。利用者の障 害状況、社会経験、利用目的等も大きく異なっていることから、この間3グループ(生 活介護事業2グループ、重心1グループ)に分けて支援する体制を作ったが、結果とし て上手く機能しなかった。理由は、利用日が各人異なり曜日毎にグループ分けをするこ とが困難なこと、各グループに担当者の配置が出来なかったこと等による。このため平 成27年度は、前年度と同じく通所生活介護事業と重症心身障害者通所事業の2つのグ ループ分けを維持しつつ、個別支援上必要な支援を個々人の特性に応じて午後の時間帯 に提供する。 通所生活介護事業所では、おおよそ送迎時間を除く 5 時間ほどの在園時間の中に、食 事や排泄、入浴等の基本的な介助行為があり、この合間を縫って各種創作活動を行うと いうのが実態である。こうしたことから個別メニューは午後のマット運動の時間帯にほ ぼ限られている。これに規定されて個別支援計画も極めて限定的なスタイルにならざる を得ないが、可能な限り利用者ニーズを聞き取り個別支援計画を策定し実施していく。 なお、利用者帰宅後の時間帯を使い、利用者支援上の気づきや工夫の共有、問題点の把 握、支援情報の共有等を意識的に行う職員ミーティングを前年度から試行したが、平成 27年度はこれを定例化し有効活用する。 6 通所利用者懇談会は前年度から定例化しており、年 3 回(5 月、10 月、2 月)に定例 会として実施する。この場で意見を述べることが出来る人が現実的に限られているとい う制約はあるが、利用者の率直な意見を聞く機会としては大きな意味を持っている。ま た、議事録を全利用者及びご家族に周知することで、園からの情報や通所生活介護事業 所を取り巻く諸課題等が確実に伝わる体制を確保していく。 以上の支援を基本に、通所生活介護事業の職員配置は(出席率 82%として)利用者対 職員比 1:0.7、重症心身障害者通所事業は(出席率 90%として)1:0.9 とする。 ウ 家族との連携強化と相談支援体制の充実について 家族会(保護者会)は、特別支援学校時代にあったような懇談会的要素を含む定期的 な話合いの場を設定してほしいとの家族の意向を受けて行われたものであり、出席者は 限定されているものの、園運営、支援内容、職員配置等様々な視点からの率直な意見、 要望が出される。こうした家族会を維持し、家族との意思疎通を図ることは極めて重要 なことであり、平成27年度も年 3 回の定例会と必要に応じての臨時家族会を随時行う こととする。 (3) 短期入所事業の継続的運営について ア 利用率 100%達成に向けての取り組み 平成 26 年 1 月末現在での併設型短期入所事業は延べ利用者数 601 人、利用率 98.2% であり、そのまま推移し前年度並みの利用率となることが予想される。27 年度も実質 100%を目指して、速やかなキャンセル補充、同一日に入退所をダブらせるなどの工夫を 可能な限り追求する。 イ 空床型短期入所事業の積極的利用について 平成 26 年 1 月末現在での空床型短期入所事業は、2 回、2 人が延べ 17 日間利用した。 施設入所支援利用者の入院、外泊、欠員日数は平成 27 年 1 月末現在 602 日であり、2.8% の実施率でしかなかった。空床型短期入所事業は欠員の場合を除き、利用者の入院状況 によって実施が左右されるため一概には言えないが、概ね1ヶ月程度の期間居室が使わ れない場合実施することとしている。平成 27 年度も実施率 10%を目処に空床型短期入所 事業を実施する。 ウ 緊急一時保護利用の実施について 平成 26 年度緊急一時保護利用に相当する短期入所事業の実施はなかった。実際のとこ ろ 3 ヶ月前予約制でかつ利用率がほぼ 100%となっているため、実質的に空床型短期入所 事業としてしか考えられないが、空床型も前述のとおりその実施には相当の制約がある。 しかし、それでも緊急一時保護はセーフティネットの重要な柱であることに間違いはな く、平成 27 年度は可能な限り受け入れを行い問題点等を洗い出す。なお、当園短期入所 事業利用者の緊急一時利用は条件が整えば実施可能であるが、全く利用経験のない場合 の受入れはケースによって困難な場合もある。緊急一時保護利用にどう対応するかの議 論と検討を東京都身体障害者施設協議会の短期入所事業委員会レベルでも検討する。 7 (4) 障害者支援施設の日中活動 ア 行事関連(園内・園外)の充実を図り、利用者の身体状況にあう活動を提供する 利用者の身体状況にあった行事内容に変更してきた。しかし、そのために今まであっ た行事がなくなってきているのも事実である。その点を改善しながら、利用者が楽しめ る行事を検討し開催する。 イ クラブ活動の充実を図る クラブ活動に関してもクラブボランティアの高齢化は重大な問題である。新規ボラン ティアの受け入れ体制の充実を図るとともに、生活部職員全員で活動の充実体制を図る。 また、他施設利用者と同一行事を楽しむ体制づくりにも取り組む。 ウ 地域住民との関係づくりを積極的に行い、ボランティア受入れ体制の充実を図る 地域住民が活用できる「会輪空間」を目指して取り組む。また、近隣の大学生に働き かけ、受け入れ体制等の工夫を行う。 エ 地域の各学校からの職場体験、ボランティア体験、教員取得のための介護等体験、介 護実習等の受入れ体制の充実を図る 利用者の個人要望体制の充実(買物・外出・話し相手 他) 。 オ 施設の地域開放体制の充実を図る 日野市ボランティアセンター・インフォメーションを活用して、施設の地域開放(2階 会議室・会輪空間)の環境を整備する。 カ 利用者および職員に対するストレスマネジメント体制の充実を図る 他施設見学をできる限り多く設定し、他施設の現状や多摩療護園との違い等を見る。 これにより少しでも多摩療護園の課題や問題点を洗い出し利用者支援に反映させていく。 キ 障害者雇用事業(就労移行前研修プログラム)へのサポート体制充実を図る 七生特別支援学校(中学部/高等部)と連携を図りながら、プレジョブ・職場実習の 受け入れ体制を検討し充実させる。 ク 各施設間とのネットワークづくり 地域交流会の継続、日中活動関連従事者の交流を行う。 3 地域生活相談室「おあしす」 (1)相談支援業務の基本的考え方と手法 ア 基本的考え方を引き続き追求する (ア) 利用者や家族にとって、相談支援との出会いが、利用者・家族・環境・支援の底 力(ストレングス:利用者本人については、思い×能力×自信=底力ととらえる)の 発見・実感に繋がり、サービスを活用しながら、人生を切り開いていく自信を獲得(エ ンパワメント)できるよう支援を行う。 (イ) また、家族内、利用者や家族とサービス提供者、利用者や家族と地域環境等の間 に横たわるコンフリクト(葛藤)については、利用者の最大利益の確保を基本にすえ 8 るとともに、修復的対話を促進する視点(修復的アプローチ)に立って支援を行う。 イ 手法について継続する (ア) アセスメント アセスメントにおいては、障がい状況等を見極めつつ、よりふさわしいアセスメ ント票をベースに実施するとともに、底力(ストレングス)を発見していく視点に 立って実施する。 (イ) サービス等利用計画、障害児支援利用計画 サービス等利用計画については、「本人中心計画」の作成という視点に立って、行 政の書式をもって作成する。 (2)地域生活相談室「おあしす」の運営体制 ア 運営体制について (ア) 会計・経理、勤怠管理、安全衛生、防災、苦情解決、施設内情報共有システム(サ イボウズ)等は従前通り多摩療護園の一部として取り扱う。 (イ) 法人内の意思決定及び連絡調整のため、おあしす室長は法人経営会議に出席する。 イ 人員体制について (ア)年度当初は、2名の体制で事業の執行にあたる ① 1名:常勤・専任:管理者(おあしす室長) 、相談支援専門員を兼務。主に知的 障がいの方を担当する。 1 名:常勤・兼任(地域移行促進コーディネーターとの兼任) :相談支援専門員、 ② 地域移行および地域定着支援担当者を兼務。主に身体障がいの方を担当する。 (イ) 年度途中からは、体制の見直しを検討する ① 業務量等を考え、人員体制、役割分担等の再検討が必要となる。 ② 管理者兼相談支援専門員が雇用延長者であることから、持続可能な組織体制の あり方についても視野に入れる。 (ウ)サービスの質の確保と効率的な運営体制確保のための方策 ① 引き続き、法人として体制の整備を進める。 ・国保連請求体制の確立 ・相談支援業務システムソフト導入の検討 ・電話連絡体制の整備、面談時の電話への配慮条件の確保 ・緊急時連絡体制の整備 ・接遇環境のレベルアップ ・資料、図書等の拡充 (3) 障害者総合支援法・児童福祉法による事業について ア 指定特定相談支援(サービス等利用計画作成支援とモニタリング) 障害児相談支援を担い、かつ成人になっても引き続き計画相談支援を行う事業所が日 野市内には少ないため、最大限対応する必要がある。基本相談支援利用者へのサービス 9 等利用計画作成対応が増加する。年度末達成目標:1600 単位×4+1300 単位×124(新 規 2 名、サービス変更 2 名、入所施設の方 14 名で計算) イ 障害児相談支援(通所サービス利用援助とモニタリング) 年度末達成目標:1600 単位×15+1300 単位×15(新規 15 名で計算) ウ 都指定一般相談支援事業(地域移行支援と地域定着支援) 年度末達成目標:移行4件、定着1件の支援の実施を目指す。 エ 障害支援区分認定調査受託 2015(平成 27)年 2 月 10 日現在 6 自治体 6 件の受託実績となった。業務量の増加状 況を踏まえ、震災被災地等以外の自治体からの委託は当面は受託しないこととする。 オ 基本相談支援 基本相談支援の利用者が、計画相談支援、障害児相談支援に移行しつつも、新たに基 本相談支援に繋がる方がおられる中、数字的には微増となっている。 「成人の知的障がい の方の計画相談支援新規登録(契約)は当面停止」とし、「基本相談支援の利用者の計画相 談支援への移行には対応」としているが、今後は「成人の知的障がいの方の基本相談支 援の受け入れ」についても慎重に対応していかざるを得ない。 他方、セルププランを希望される方への相談や支援も基本相談支援として行ってきて いる。計画相談支援や障害児相談支援を担う事業所増が期待できない中、初回の作成は 計画相談支援・障害児相談支援⇒2 回目辺りからセルフプラン⇒ライフステージ・家族状 況・障がい状況に変化が生じる時には計画相談支援・障害児相談支援で対応という流れ も視野に入れ、より必要な方にサービスが届く方法の検討を進める。 (4) 多摩療護園利用者の相談室業務 ア 当面の対応について (ア)既に支援関係が形成されている方については、必要に応じで基本相談支援を実施す る(これまで通りの面談の頻度等が確保できなくなる可能性はある) 。 (イ)今後は、特定相談支援(サービス等利用計画作成)または一般相談支援(地域移行 支援、地域定着支援) へ繋がる可能性のある方を中心に基本相談支援を実施する。 具 体的には、日野市、八王子市、多摩市在住の生活介護Ⅱや短期入所の利用者とその家族 を優先する(特に介護保険サービスを使えない方) 。また、施設入所支援利用者で、地 域移行を検討されている方とその家族も同様に優先する。 (ウ)おあしすを紹介する際には、上記方針を踏まえるよう、引き続き法人内施設職員へ 理解を求める。 (5) 地域連携・資源開発・ネットワーク ア 日野市地域自立支援協議会 2012(平成 24)年度は、本会及び相談支援部会委員を派遣したが、2013(平成 25) 年度からは、本会委員については、市からの要請により多摩療護園園長を派遣すること となった。2015(平成 27)年度においても、相談支援部会委員を派遣する。 10 イ 日野市計画相談支援・障害児相談支援の実施に係る連絡会 日野市障害福祉課主催。標記の事業を担う市内事業所の連絡会。現在当事業所を含め 8 事業所と日野市障害福祉課が出席。おあしすとしても引き続き出席する。 ウ 東京都立七生・八王子・八王子東特別支援学校、多摩桜の丘学園 上記4校からは、一定数の家族・生徒・卒業生が相談に繋がっているだけでなく、学 校におけるケア会議への相談支援専門員の出席要請、事業説明会への出席要請、PTA・ 生徒・卒業生への勉強会・授業の講師派遣依頼をいただく等、連携が形成されてきてい る。引き続き係りを強め、関係者の相談支援に対応する。 エ 当事者ソーシャルアクションへのサポート 日野に重度・重複障害者のグループホーム創り隊(仮称) 2012(平成 24)年度途中に動き出した標記へのサポートは、2013(平成 25)年度下半 期、グループホーム開設が具体な日程に上る中、今後の連携については法人理事に移行 することとなった。今年度も、推移をみながら適宜おあしすとして必要な支援を行う。 (6) 苦情解決について 多摩療護園の苦情解決の仕組みを援用して対応する(別紙「概要」書面あり) 。 (7) 広報について 以下の媒体を活用して広報活動を実施する。 ア ホームページ 法人、多摩療護園のホームページを活用する。 イ パンフレット 知的障がいの方にもわかりやすいパンフレットの作成に取り組む。 ウ ポスター 掲示場所 1 か所(七生特別支援学校)からの拡大を図る。 (8) 研修・スーパービジョン ア 2名体制を機に、職員の支援技能向上に向けた研修への参加を積極的に進める 。 イ 最低限、相談支援専門員の資格失効になることのないよう、現任研修の受講を行う。 ウ 2名体制を機に、スーパービジョンの仕組みづくりへの取り組みを開始する。 11
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