卒業論文 論文名 自然放射線の測定 指導教員名 福田 提出年月日 平成14年2月27日 提出者 工学部 学籍番号 共和 光システム工学科 K−98008 K−98093 K−98153 氏名 稲岡 由里子 浜田 真美 吉岡 真規子 目 次 第1章 研究を始めた背景、目的 第2章 実 験 2・1 実験の概要 2・2 測定装置 2・3 実際の測定 第3章 解 析 3・1 標準線源の解析 3・2 自然放射線の解析 第4章 考 第5章 結論と今後の課題 付 録 察 第1章 研究を始めた背景、目的 1. 日常生活に密接している放射線 われわれの周りには、自然界に存在する天然の自然放射線、医療放射線、人 工の核反応に伴って出てくる放射線など様々な放射線がある。自然放射線は避 け得ないものであり、われわれは自然界から 1 年間に大よそ 1∼2 ミリシーベル ト mSv(100∼200 ミリレム mrem)の放射線を浴びていると言われている。自 然界から受ける放射線には大きく分けて、大地からのもの、食物から摂取した り呼吸で吸入するもの、宇宙から降ってくる宇宙線とがある。受ける線量は地 域や生活の仕方などによって変わると考えられる。 宇宙線とは「宇宙空間に存在する高エネルギーの放射線」のことであり、宇 宙線に関する研究は幅が広く、その起源、エネルギー、種類などを調べること は、宇宙そのものを研究することに繋がっている。私達が地球上で観測したり、 日常浴びている宇宙線は宇宙空間から飛来する多種多様な放射線粒子が地球の 大気や、地球の地殻と相互作用した結果の粒子である。天空からやって来る宇 宙線(一次宇宙線)は、まず上層の大気にぶつかり、空気中の窒素や酸素の原 子核に衝突し、陽子、中性子、パイ中間子、ミュー粒子など多数の二次粒子(二 次宇宙線)を発生させる。この粒子がまた、大気の窒素や酸素の原子核と次々 と衝突し、多数の粒子を発生させ、エネルギーの高い一次宇宙線ほど、多数の 二次粒子を発生させる。こうして、地上に到達する多数の放射線粒子は、はが きの大きさの面積に、毎秒 1 個程度の割合で、常に降り注いでいると言われて いる。私達の体には、おおよそ、毎秒 100 個位の宇宙線が貫通しているといえ る。 宇宙線は、その位置の緯度と高度によって変化する。海抜 1500 m で平地の約 2 倍といわれている。したがって、高地の住民、パイロットなどの被曝線量は高 レベルとなる。宇宙線によってつくられる放射性核種には、炭素 14C や三重水 素 3H などがある。低空まで到達した中性子nが大気中の窒素核 14N と衝突する と、放射性同位体の炭素核 14C がつくられる。 14 7N +n →146 C +p この炭素核 146 C の放射性崩壊は動植物の年代測定に利用されている。大気中の 二酸化炭素の大部分を占める 12CO2 の中にわずかの 14CO2 が含まれていて、呼 吸や摂食によって 14C は動植物の生体内に取り込まれる。14C は半減期 T=5730 年でβ崩壊 14 14 6 C→ 7 N +e+ν して、安定な窒素核に変換する。生体内では、14C はβ崩壊によって減少してい くが、常に補給されるため、12C と 14C との比率は一定に保たれる。しかし、生 命活動を停止した動植物の体内では、14C は半減期に従ってゆっくり減少してい く。そこで 14C のβ崩壊の測定から 12C との比率を求めることにより、その動植 物の年代を決定することができる。 地殻中に広く分布する放射性物質としては、ウラン 238U、トリウム 232Th、ラ ジウム 226 88 Ra とそれらの壊変生成物や、天然に存在する放射性核種の中では一番 多いカリウム 40K 等がある。人体が受ける地中や岩石からの放射線はγ線が主 である。これはα線やβ線は途中で吸収されるからである。 最近、地中から大気中にガスとなって出てくるラドン、およびその壊変生成 物(娘核)による放射線被爆が問題になっている。222Rn は 226Ra の娘核であり、 不活性ガスで、体内に吸入されて肺にα線被曝をもたらす。この被曝を減らす ためには室内の換気をよくすることである。国連科学委員会報告(1982)では、 年間の実行等量線量は、約 1 mSv(=100 mrem)となっている。 過去に原発や核実験などから放出された人工放射性降下物により汚染された 環境からの被曝は、自然放射線と同様避けることはできない。 一方、今までに数百種の人工放射性核種がつくられ、医療・工業・農業など いろいろな分野で人工放射線源として利用されている。人工放射線源から受け る線量は、職業による差が大きい。一般人が受ける人工放射線源からの線量に くらべて、放射線作業従事者、例えば放射線医療従事者や原子力発電所の作業 員の被曝線量は多くなる。特に原子炉の補修を行なう作業員、核燃料再処理工 場の作業員や医療放射線の受診者などは極めて高い線量を受ける恐れがある。 2.放射線の発生 放射線は、原子核または原子から放出される、電離作用を持つ高エネルギー 粒子である。 原子とは、陽子と中性子によって構成される原子核と、そのまわりにある電 子から成り立っている。陽子の数と電子の数は等しく、その数によって原子の 性質が決まる。 原子番号:原子核内の陽子数(この数は電子の数と同じ) 質量数:原子核内の陽子と中性子数の和 物質の科学的性質は、原子番号、すなわち核の周りにある電子数によって決 定づけられ、それぞれ元素名が付けられている。同じ原子番号であっても核内 の中性子数が異なる物を同位体(アイソトープ)という。自然界に安定して存 在するものと加速器や原子炉で作られる安定でない放射性同位体とがある。 原子の中心部分に位置している原子核は、正の電荷を持つ陽子と電荷を持た ない中性子から成り立っているものである。原子核を構成する陽子と中性子の 大きさと質量は大体等しく、電子の質量はその約 1840 分の 1 である。したがっ て、原子核の質量は、その中にある陽子と中性子の総和にほぼ比例し、原子の 質量の 99.9%を担っている。原子の質量のほとんどが原子核に集中している。 炭素原子をアボガドロ数 6.022×1023 個集めると、全体の質量は 12 グラムにな る。 原子核のまわりにある電子のエネルギー状態は、中途半端な状態でいること はできない。電子が存在できる軌道はいちばん内側から K 殻、L 殻、M 殻、N 殻と呼ばれ、内側ほど強く原子核に結合しており、もっともエネルギーが低い 状態である。それぞれの殻には何個の電子が入れるか決まっており、いちばん エネルギーの低い状態から電子が詰まっていく。内側から順に空席がなく電子 が詰まっている状態がもっともエネルギーが低く、安定な状態である。もし電 子が外側の軌道にいて、またそれより内側の軌道に電子が入れる空席があった とすると、電子はエネルギーの高い状態から低い状態に移り、そのときに余分 なエネルギーを光として放出する(発光)。逆に、安定な原子に、電子がより外 側の空いている軌道に移動するのにちょうど必要なエネルギーを持つ光を与え ることによって、エネルギーの低い状態から高い状態に移る現象もおきる(吸 収)。電子は中途半端な状態にいることはできないので、エネルギー状態の変化 に伴って発光あるいは吸収される光のエネルギーは決まった値をとる。このこ とを使うと、発光された光、あるいは吸収された光のエネルギーを知ることに よって、発光あるいは吸収した元素の種類と電子の状態を知ることができる。 原子の種類は、核の中の陽子の数によって決まる。この数を原子番号と呼び、 Z で表す。電気的に中性の原子では、核内陽子の数と核の周りを回っている電子 の数は同数である。 原子の化学的性質は、核の中の陽子数によって何個の電子がどれぐらいの強 さで引きつけられ、どんな運動状態にあるかで決まる。図 1 に原子と原子核の 構成を示す。原子の大きさは、軌道電子の運動している空間の大きさ 10−10m の 程度であり、原子核の大きさはその約 1 万分の 1、つまり 10−14m程度である。 図1 原子と原子核 原子の化学的変化、例えば化学反応、原子のイオン化、光の吸収・放出など では、原子内の電子の数、電子の状態、あるいは原子の結びつき方・配列の仕 方などが変化するが、原子の種類は変化しない。いいかえれば、そのとき原子 核には変化がない。 1896 年ベクレルは、感光作用や電離作用を持ち、X 線と異なる放射線がウラ ン鉱石から出ていることを発見した。さらに、1898 年キュリー夫妻は放射性元 素ポロニウムとラジウムを発見し、ある種の原子核がひとりでに放射線を放出 して他の原子核に変換することを明らかにした。1919 年ラザフォードは、放射 性鉱石から放出されるα粒子を窒素の原子核に衝突させて酸素の原子核と陽子 が生成される反応で、初めて原子核の人工転換に成功した。 原子核反応は、始めは放射性鉱石からの放出粒子が用いられたが、後には加 速器で加速された陽子、重陽子、α粒子などが用いられるようになった。入射 粒子が正電荷を帯びているときは、正電荷を持つ標的原子核との間に電気的な 反発力が働く。それを乗り越えて核内に入り込むためには、入射粒子は高速で 飛び込まなければならない。 入射粒子が中性子の場合、標的原子核との間に電気的な反発力が働かないの で、エネルギーが低くても容易に原子核にぶつかり反応を起こすことができる。 中性子は原子核の周りの電子雲を素通りするので、エネルギー損失はほとんど 原子核との衝突だけによる。中性子が核分裂反応など原子核反応に果たす役割 は大きい。 原子核を構成する陽子と中性子は核子と呼ばれ、原子核は多数の核子が 1 fm 程度の極めて接近した距離でのみ働く強い引力、つまり核子によって結び合っ ている。ここで 1 fm=10−15m である。 核内の陽子の数 Z と中性子の数 N の和 A=Z+N を質量数と呼び、その原子 核の大きさは、大よそ半径 r= A1 3 ×1.3 fm で与えられる。質量数 A、原子番号 Z、元素記号 X の原子核は、記号 AZ X で表される。 原子核の中の陽子の数 Z は同じでも、中性子の数 N が異なるとき、それらを 同位体(アイソトープ)という。例えば、水素の同位体には水素 11 H 、重水素 21 H 、 三重水素 31 H 、酸素の同位体には 168 O 、 178 O 、 188 O 、等がある。 ほとんどの元素にはいくつかの同位体があり、例えば Na は 6 種、Co は 10 種、I は 21 種の同位体をもつ。同位体には、安定同位体と不安定同位体とがあ る。不安定同位体とは、ひとりでに放射線を出し自然崩壊する同位体で、放射 性同位体、ラジオアイソトープともいう。これには、自然放射性同位体と人工 放射性同位体とがある。安定同位体が約 300 種、人工的につくられている放射 性同位体も含めると同位体の総数は、約 2000 個以上にもおよぶ。 自然界の元素は、一般に数種類の同位体がほぼ一定の割合で混ざり合ってい る。Al、Au などのように1種類の同位体だけのものもある。自然放射性同位体 には、地球内部の岩石起源のものや地球外から宇宙放射線で大気中でつくられ るものがあり、微量の同位体の割合の違いが地球上の元素循環や年代測定の手 がかりとなっている。いん石の同位体分析も、それが宇宙空間をどのように漂 ったかを示すものとして注目される。 原子核の中の陽子と中性子が存在する割合は、原子番号 20 までの原子核では 陽子と中性子はほぼ同数であるが、それ以上では、中性子の割合がだんだん増 えていく。 核内の核子どうしは、1 fm 程度に隣接しているときには核力が働いている。 また、陽子どうしの間には、距離の 2 乗に反比例して近距離ほど強い電気的反 発力が働いている。陽子数の増加とともに中性子の割合が大きくなるのは、陽 子どうしの間の反発力を弱めるためである。 しかし、中性子の数が多くなり過ぎると、電子とニュートリノと呼ばれる素 粒子を放出して中性子が陽子に変わってしまい、別の元素となる。したがって、 中性子の数には限度がある。また、電気的反発力のために陽子の数にも限度が ある。元素が 100 種類程度で留まっているのはそのためである。 (Z 110)。陽子 の数 Z が大きくなると結合が弱くなり、Z≧84 の同位体は全て不安定である。 自然界にある最大の原子核は、238 個の核子をもつウラン 238 であり、人工 的には 260 個以上の核子をもつ短寿命の同位体もつくられている。もっとも、 太陽系をはるかに離れた宇宙には、中性子が重力でぎっしりと凝縮してマクロ な大きさの原子核になったものを芯にもつ中性子星と呼ばれる星がある。また、 超新星爆発を起こした星の残骸には、原子炉暴走事故の直後のように強い放射 線を出し残った安定原子核や、半減期の長いウランなどの原子核とその崩壊系 列でできる不安定原子核から成り立っている。 3.原子の作用する放射線、放射能 放射線は、原子核または原子から放出される、電離作用を持つ高エネルギー 粒子である。放射線が物質を通過するとき、主に電磁相互作用によって物質を 電離する。放射線はその粒子の種類、発生源によって次の様に分類される。 α線 β線 γ線 実体 ヘリウム原子核 電子 光子 電荷 +2e −e 0 物質透過能 小さい 比較的大きい より大きい α(アルファ)線 放射線の一種で、α崩壊によって放出されるα粒子の流れ(ビーム)。この 粒子は 2 個の中性子と 2 個の陽子からなる。また+2 の電荷を帯びている荷電 粒子であるので、電場や磁場で屈曲される。ウランなどの非常に重い原子核の 多くはα線を放出するα崩壊を起こす。 α線は電荷が大きいので電離能力(阻止能)が大きく、物質を電離してすぐ に止まる。例えば空気中なら数センチメートル、紙ならば 1 枚で遮へいできる。 逆に言えば、短い距離で大きなエネルギーを失うので、体内に摂取した時の影 響が大きいことも意味する。 α線は電離作用が強いので、その内部被ばくには十分注意しなければならな い。自然環境内の主なα線源は、岩や土のウランを起源とする物質で、ラドン は気体になって空気中に存在するため、呼吸による被曝の原因になる。 β(ベータ)線 β線とはβ崩壊により原子核から電子が 1 個飛び出すときに放出される電 子線で、不安定な原子核から放出される高速、かつ、高エネルギー電子である。 原子核の中に含まれる陽子と中性子の数のバランスが崩れていて、中性子が多 い場合に電子を放出して安定な原子核に変わる。普通β線というとβ(−)を 示す。陽子が多過ぎる場合は、原子に束縛されている電子を捕まえる(電子捕 獲)か、電子の反物質である陽電子を放出する。この場合、陽電子をベータプ ラス(β+)と呼ぶことがある。β崩壊の形により陰電子(β−線)が放出され る場合もある。 β線は、通過経路にある原子を励起したり、電離してイオン対を生成して、 エネルギーを失う。軌道電子や原子核との電気的な相互作用によって散乱され、 進行方向がしばしば大きく変化する。 気体に対する電離作用はα線よりも弱く、数 10 センチメートル飛ぶことが できる。化学作用、蛍光作用、写真作用がある。物質の透過力はα線よりは強 いが、2∼3 ミリ程度のアルミニウム板や 1 cm 程度のプラスチック板により阻 止できる。人体に与える影響はγ線より大きいが、α線のように大きくはない。 また、β線はγ線に比べ電離作用が強く組織中でのエネルギー損失が大きい ので、β線による外部被ばくは、皮膚の不感層直下(不感層の厚さは 70μm) の線量を測定して被ばく線量を評価しなければならない。この線量は 70μm 線量当量と呼ばれている。 γ(ガンマ)線 原子核がα線やβ線を放出して崩壊した後、不安定な高エネルギー状態にあ る原子核が、更に安定した低エネルギー状態(基底状態)に遷移する時、電磁 波として放出される光子である。したがって、原子核がγ線をだしても、原子 番号や質量は変わらない。光子のエネルギーは遷移するエネルギーの差によっ て決まる。そのため、γ線のエネルギーを精密に測定することによって崩壊し た原子核の種類の分析ができる。 γ線と物質の相互作用の強さはエネルギーに強く依存しており、1 MeV 付 近のγ線は相互作用が弱いため、遮へいは困難である。γ線の遮へいは原子番 号の大きい物質が有利なため、通常は鉛を使用する。 放射能について 放射能とは、原子核が前述の放射線を出して崩壊する性質のことをいう。放 射能をもつ原子核は、原子核内の陽子と中性子のバランスが崩れていたり質量 が大きすぎるため、崩壊してより安定な原子核に変化する。変化の方法によっ て大別するとα崩壊、β崩壊に分類される。 α崩壊 原子核がα線を放出して崩壊する。α崩壊は質量数が 150 程度以上の重い原 子核でのみ起こる。(例外:8Be)原子番号 Z の大きい原子核では核子当たり の結合エネルギーが減少し、不安定な状態になり、α崩壊を起こしやすくなる。 ヘリウム核 42 He の放出により、壊変後の原子核(娘核と呼ぶ)の質量数と原子 番号は、元の原子核(親核と呼ぶ)のそれぞれの数から 4 と 2 を減じたものと なる。例えば、α崩壊では、α粒子を放出して変わる。反応式で示すと、 A A −4 4 Z X→ Z−2 Y + 2 α ここで、X および Y はそれぞれ崩壊前と崩壊後の核種である。 α粒子は実用上単一エネルギーと見なせ、一つまたは複数のエネルギー群を 持っている。原子核の初期状態から最終状態への明確な遷移、例えば基底準位 と基底準位の間の遷移では、一定のエネルギー差すなわち Q 値がその崩壊を 規定する。このエネルギーはα粒子と反跳核の間で一定の割合で分割されるの で、それぞれのα粒子は Q(A−4) A で与えられるエネルギーを持つことに なる。遷移がただ一つしかない例が実際上いくつかあり、こうした場合にはα 粒子は単一エネルギーで放出される。しかしながら遷移の数は複数であり、そ のためα粒子もそれぞれ相対強度が異なったいくつかの群になっている。 よく用いられる放射性同位元素α線線源の特性では、ほとんどすべてのα粒 子のエネルギーが 4∼6 MeV の間に集中しているのは偶然ではない。α粒子の エネルギーと親の同位元素の半減期の間には大変強い相関があり、最大エネル ギーの同位元素は最小の半減期に対応する。約 6.5 MeV 以上では半減期は数 日となり線源としての使途は非常に限定される。一方、もしエネルギーが 4 MeV 以下になればα粒子の障壁透過率は大変小さくなり、同位元素の半減期 は非常に長くなる。半減期が極めて長いと、実用上比放射能が極めて小さくな り利用価値はなくなる。もっともよく使用されているα粒子の較正用線源はお そらく 241Am であろう。 α粒子は物質中で急速にエネルギーを失うので、ほぼ単一エネルギーのα線 線源は非常に薄い層に作る必要がある。放射性物質を保持するために線源は金 属箔などの物質で覆われるが、これらの被膜は極めて薄いものにしないとα線 放出の初期エネルギーと単一エネルギー特性が損なわれる。 β崩壊 原子核から電子が 1 個飛び出す現象である。β崩壊は質量に関係なく多くの 原子核で起こる。β崩壊は原子核内の陽子と中性子のバランスが崩れている場 合に起き、中性子が陽子に変化することによって生じた電子が飛び出すので、 質量数は変わらないが、原子番号が1だけ増した原子核に変化する。 安定な原子核が中性子を吸収した場合や、原子核内の中性子が多過ぎる場合、 電子と反ニュートリノを放出する。陽子が多過ぎる場合は、原子核の周囲の電 子を吸収してニュートリノを放出する電子捕獲または、陽電子とニュートリノ を放出する陽電子放出を起こす。 中性子 n は単独で存在するときには不安定で、平均寿命約 15 分で電子 e と ニュートリノ( ν e )を放出して陽子 p に変換する n→p+e+ ν e これを中性子のβ崩壊と呼ぶ。一方、原子核内の中性子は結合エネルギーのた め安定に存在できるが、中性子過剰核では核内で中性子がβ崩壊を起こすもの が出てくる。 リン 32 がβ崩壊するときの崩壊式は、 32 32 15 P → 16 S +e+ ν e となり、娘核の質量数は親核と変わらないが、原子番号は親核より+1 増加す る。 一方、核内の陽子 p が陽電子 e+を放出して中性子に転換する場合がある。 これをβ+崩壊と呼ぶ。この核変は、余剰の陽子をもった人工核種が高いエネ ルギー状態の励起核として存在するときに起こる。崩壊式の例を示す。 + 11 11 6 C→ 5 B +e +νe β+崩壊の逆過程に似ているものに軌道電子捕獲がある。原子内電子のうち 原子核に最も近い K 殻の電子を核内に捕獲して、陽子が中性子になり、ニュ ートリノを放出する。このとき、捕獲された軌道電子の空席に外側の電子が遷 移するためX線も放出される。例えば、 40 40 19 K +e→ 18 A +νe (原子核の内部では、p+e→n+νe)。 γ崩壊 α崩壊やβ崩壊によってできた原子核がエネルギーが高い状態(励起状態) のときエネルギーを電磁波として放出しながら、よりエネルギーの低い状態に 落ち着いていく。この放出電磁波をγ線といい、この過程がγ崩壊である。こ のとき原子核の種類は変わらない。例えば、コバルト 60 のβ崩壊 60 60 27 Co→ 28 Ni +e+ ν e でできた励起状態の原子核( 印は励起状態を示す)は、次式のγ崩壊を重ね て安定したニッケル 60 になる。 60 28 → 60 Ni +γ Ni γ崩壊 28 → γ崩壊 60 28 Ni +γ 60Co は、金属に包まれるとβ崩壊で出てきた電子は吸収されてしまうが、 γ線は突き抜けて外に飛び出すので、γ線を得るための線源として非破壊検査 などに用いる。 4.γ線と物質のその作用 γ線のエネルギー減衰過程 一般に放射線には感光作用、蛍光作用、電離作用などがあり、物質中を通過 していくとき、少しずつ吸収されて減衰していく。光子としてのγ線がエネル ギーを失っていく過程は主に光電効果、コンプトン効果、電子対生成等である。 ①原子の軌道電子が光子のエネルギーを吸収して光電子となって飛び出してい く光電効果、②光子が軌道電子を弾き飛ばして、一部のエネルギーを失って散 乱するコンプトン効果、③光子のエネルギーが電子と陽電子を対生成するのに 十分な 1.02 MeV 以上あれば、原子核に接近した光子は消滅して電子・陽電子が 対で生成される。 コンプトン効果 γ線は波長が非常に短い(振動数が非常に高い)電磁波放射線である。この ようなγ線光子が軌道電子に衝突すると、その電子にエネルギーを与えて、そ れを原子外にはじき出すとともに、光子自体も方向を変えて散乱する現象を起 こす。もとのγ線より波長が長くなる(エネルギーを失う)波長の変化を起こ すこともある。このような現象をコンプトン(Compton)効果という。コンプ トン効果を起こすと、もとのγ線の入射方向と異なった方向へ散乱されるので コンプトン散乱ともいう。散乱 X 線や散乱γ線は、このコンプトン散乱の他に、 波長の変化の伴わない散乱もある。コンプトン効果はγ線の波長が短い(エネ ルギーが高い)程起こりやすい。 入射γ線光子はコンプトン散乱によって最初の方向から角度θの方向へ曲げ られる。このとき光子はそのエネルギーの一部を、最初静止していたと仮定さ れる電子へ伝達する。この電子は反跳電子と呼ばれる。すべての角度に散乱す ることが可能なので、電子に伝えられるエネルギーはゼロから入射γ線エネル ギーに近い値まで変化しうる。この相互作用に対するエネルギー伝達と散乱角 の関係を表す式は、エネルギーと運動量の保存則の連立方程式を解いて簡単に 導くことができる。 図 2 に示す符号を用いると、散乱γ線エネルギーと散乱角の関係式は次のよ うに書くことができる。 hv′= hv hv 1+ (1−cos θ) m0c 2 …(1) 図2 ここで、m0c2 は電子の静止質量エネルギー(0.511 MeV)である。散乱角θが 小さい場合にはエネルギーはほとんど伝達されない。たとえθ=πという極端 な場合でも、最初のエネルギーのいくらかは常に散乱光子によって保存される。 吸収物質中の原子当たりのコンプトン散乱の確率は散乱ターゲット中の電子 の数に保存するので、これは Z とともに直線的に増加する。ヨウ化ナトリウム のγ線吸収係数のγ線エネルギー依存性は、次式に示されているようにエネル ギーを増加するにつれて徐々に低下する。 散乱γ線の角度分布は微分散乱断面積 dσ dΩに対するクライン・仁科の式で 与えられる。 dσ = Zr 2 1 0 dΩ 1+α(cos θ ) 2 2 α 2 (1−cos θ) 1+cos 2 θ ⋅ 1 + 2 2 1+cos θ [1+α(1−cos θ )] ( ) ここで、α ≅ hv m0c2、r0は古典的電子半径である。この分布は図 3 に示すよう になり、γ線のエネルギーが高くなると前方散乱が非常に著しくなることが分 かる。 図3 そして、反跳電子のエネルギーは次式で求まる。 hv (1−cos θ) m0c 2 E e−=hv−hv ′=hv 1+ hv 2 (1− cos θ) m0c …(2) ここで二つの極端な場合が考えられる。 1) 前方散乱特にθ ≅ 0 の場合、式(1)および、式(2)から、hv´ ≅ hv お よび Ee− ≅ 0 である。この場合コンプトン電子はほとんどエネルギーを持た ず、散乱γ線は入射γ線とほぼ同じエネルギーを持つことになる。 2) 正面衝突すなわちθ=πの場合、入射γ線は後方へ散乱され、一方電子 は入射が付与される。式(1)および式(2)から、 hv´│ θ=π = hv 1+2 hv 2 m0c 2hv m 0 c 2 Ee−│ θ=π = hv 1+2hv m 0 c 2 …(3) となる。検出器の中では普通あらゆる角度に散乱されるので、ゼロから式(3) で与えられるエネルギーまでの連続したエネルギーが電子に伝達されうる。 コンプトン反跳電子の最大エネルギーと入射γ線エネルギー間の差異は次式 で与えられる。 Ec ≡ hv−Ee− │ θ=π = hv 1+2 hv m 0 c 2 入射γ線エネルギーが大きい極限すなわち hv≫m0c2 2 では、このエネルギー 差は次式のような一定値に収斂する。 Ec ≅ m0c2 (=0.256 MeV) 2 これまでの解析ではコンプトン散乱は最初は自由な、すなわち束縛されていな い電子との間に起こるという仮定に立っていた。しかし実際の検出器物質では、 散乱前の電子の結合エネルギーがコンプトン連続分布の形状に測定可能な変化 を与える。この効果は低い入射エネルギーを持つγ線の場合特に著しい。これ は分布の上限近くの鋭い立ち上がりを丸め、コンプトン端の急激な低下に有限 の勾配をつける。これらの効果は普通検出器の有限のエネルギー分解能で隠さ れているが、高分解能の検出器で求めたスペクトルには明瞭に現れる。軌道電 子の運動量が有限なので、単一エネルギー線源からある決まった角度に散乱さ れるγ線光子が一定のエネルギーとならず、そのエネルギーの周辺で狭い分布 を持つ。 光電効果(吸収) γ線光子が原子と衝突してその全エネルギーを原子に与え、原子の軌道電子 を軌道外へ放出して自らは消滅する現象を光電効果という。そのとき、放出さ れた電子を光電子とよぶ。物質を構成する原子核のまわりを回る束縛電子や、 金属の中で自由に動きまわる電子が、入射した光のエネルギーの大部分を吸収 し、その系から飛び出せるだけのエネルギーを持ったときに生じる現象である。 光電効果を持つ物質を陰極にし、対向した電極を陽極として電界をかけておき、 陰極に光を当てると、飛び出した電子が陽極に捕らえられ、電流が流れる。こ れを光電導現象といい、上記の現象と合わせて光電効果と呼ぶ。 この相互作用はその原子全体との間で起こるものであり、自由電子との間で 起こることはできない。十分なエネルギーを持ったγ線は原子の中でもっとも 強く結合している電子、すなわち K 殻電子を光電子として放出する確立がもっ とも大きい。この光電子は次のようなエネルギーを持つ。 Ee− =hv−Eb ここで、Eb は光電子が最初存在した殻の結合エネルギーを表す。数百 keV 以上 のγ線では、最初の光子エネルギーの大半を光電子が受け取る。 この相互作用は光電子に加えて束縛殻の一つに空孔を持つ吸収物質のイオン を作り出す。この空孔は媒質中の自由電子の捕獲や原子内の他の殻の電子の再 配列によって直ちに満たされる。したがって 1 個あるいはそれ以上の特性 X 線 光子も生成される。これらの X 線は最初に発生した場所のすぐ近くで、あまり 緊密に結合していない殻と光電吸収作用をして再吸収されてしまう場合がほと んどであるが、この X 線が放射線検出器から外に逃げた場合には検出器に影響 を与えることになる。いくらかの割合で特性 X 線の代りにオージェ電子を放出 して原子の励起エネルギーが失われることがある。 光電効果は比較的低エネルギーのγ線、またはX線の相互作用過程として重 要なものである。この過程は原子番号Zが大きな吸収物質で顕著になる。広範 囲の Er と Z について原子当たりの光電吸収確率を表す単一の解析的表示式では ないが、粗い近似式としては次の式がある。 n τ ≅ 定数 × Z3.5 Er ここで、指数 n は対象とするγ線のエネルギー範囲によって、4 と 5 の間で変 化する。上式に示されているように、光電吸収の確率が吸収物質の原子番号の n 乗に比例していることがγ線の遮蔽用に大きな原子番号の物質、例えば、鉛を 使用することの有利性の第一の理由でる。γ線スペクトル測定用の多くの検出 器には同じ理由から大きな原子番号の抗生物質が選ばれる。 γ線検出器としてよく用いられるヨウ化ナトリウムの光電吸収断面積のγ線 エネルギー依存性において、吸収端は吸収原子の種々の殻の電子の結合エネル ギーに対応するγ線エネルギーの位置に現れる。したがってエネルギーのもっ とも高い吸収端は K 殻電子の結合エネルギーに対応する。この吸収端より少し エネルギーの高いγ線は原子から K 殻電子を放出する光電効果を起こすのにち ょうど足るエネルギーを持つ。吸収端よりすぐ下のエネルギーのγ線について はこの過程はエネルギー的に不可能であるので、相互作用の確率が急激に低下 する。原子の L、M、・・・・・・電子殻についても同様な吸収端がより低いエ ネルギーで起こる。 光電吸収は入射γ線光子が消失する相互作用である。この場合入射光子エネ ルギーhv から、もとの殻の電子の結合エネルギーEb を差し引いた値の運動エネ ルギーを持つ光電子が、吸収原子の電子殻の一つから作られる。この過程を下 の図 4 に示す。通常のエネルギーのγ線の場合 K 殻からの光電子の放出がもっ とも起こりやすい。K 殻の結合エネルギーは Z の低い物質では数 keV であり、 大きな Z の物質で数十 keV である。運動量保存則よりこの過程で原子が反跳す るが、反跳エネルギーが大変小さいので通常は無視できる。 図4 光電子放出の結果電子殻にできる空孔は電子の再配列によって埋められる。 この過程でその殻の結合エネルギーは特性 X 線あるいはオージェ電子の形で放 出される。ヨウ素中では全体の約 88%が特性 X 線として放出される。オージェ 電子はエネルギーが低いので飛程は極めて短い。特性X線は通常 1 mm かそれ 以下の距離を通過した後、吸収原子内のより弱く結合されている電子殻との光 電効果で吸収される。これらの X 線の検出器外への逃散が重要になる場合もあ るが、ここでは簡単なモデルに従うことにしてこれらはすべて完全に吸収され るものと仮定する。 このようにして光電吸収が起こると、γ線エネルギーの大半を持った光電子 1 個とその光電子が当初持っていた結合エネルギーを吸収して作られた 1 個ない しそれ以上の低エネルギー電子が放出される。検出器外への逃散が起こらない 場合には、作られた複数個の電子の運動エネルギーの和はγ線光子の最初のエ ネルギーに等しいはずである。したがってγ線のエネルギーを測定する目的で は、光電吸収は理想的な過程である。電子の全運動エネルギーは入射するγ線 エネルギーに等しく、単一エネルギーのγ線に対しては常に同じ値になる。こ うした条件下では一連の光電吸収事象に対する電子の運動エネルギー分布は下 に示すように簡単なデルタ関数となり、入射γ線のエネルギーに対応した全電 子エネルギーのところに単一のピークがあらわれる。 電子対生成 γ線と物質との相互作用の過程で、1.02 MeV 以上のエネルギーを有するγ線 が原子核や電子と衝突するとともに消滅して、陽電子と陰電子が対になって生 成される現象である。γ線のエネルギーはそれらの質量と運動エネルギーに変 化する。高エネルギーのγ線を遮蔽する場合には、このように二次的に生成さ れる放射線の遮蔽も考慮されれいる。 γ線のエネルギーが電子の静止質量の 2 倍すなわち 1.02 MeV を越えると、 電子対生成過程がエネルギー的に可能となる。実際上この反応確率はγ線のエ ネルギーが数 MeV に近づくまでは非常に低い。したがって電子対生成は主とし て高エネルギーのγ線に限られる。この相互作用は原子核のクーロン場の中で 起こり、γ線光子は消失して電子と陽電子対に置き換えられる。電子対を生成 するに必要な 1.02 MeV 以上の光子が有していた余剰エネルギーはすべて陽電 子と電子に分配される。陽電子は吸収物質中で減速した後引き続いて消滅する ので、相互作用の 2 次産物として 2 個の消滅光子が生み出される。次つぎと続 くこの消滅放射線の振舞は、γ線検出器の応答に重要な影響を与える。 原子核当たりの電子対生成の確率を記述する簡単な表現式はないが、その大 きさは近似的に吸収物質の原子番号の 2 乗に従って変化する。電子対生成の占 める割合は、エネルギーに従って急激に増加する。異なった吸収物質とγ線エ ネルギーに対する光電吸収、コンプトン散乱、電子対生成の各過程の相対的重 要性を図 5 に示す。左側の線は吸収物質の原子番号の関数として、光電吸収と コンプトン散乱が同じ確率になるエネルギーを示している。また右側の線はコ ンプトン散乱と電子対生成が同じ確率になるエネルギーを示す。図中の 3 つの 区域はそれぞれ光電吸収、コンプトン散乱、電子対生成が支配的になる領域を 示している。 図5 第三の重要なγ線相互作用は電子対生成である。これは吸収物質の原子核の 中で陽子近傍の強い電界の場で起こり入射γ線光子の完全な消滅位置に電子と 陽電子の対を生成する。電子陽電子対を生成するには 2m0c2 のエネルギーが必 要なので、この過程がエネルギー的に可能となるには 1.02 MeV の最小γ線エネ ルギーが必要である。入射γ線エネルギーがこの値を越えると、超過エネルギ ーは運動エネルギーの形で電子陽電子対に分布される。したがってこの過程は γ線光子を次式の全運動エネルギーを持つ電子と陽電子に変換するものである。 Ee+Ee+=hv−2m0c2 通常のエネルギーの電子や陽電子は吸収物質ですべての運動エネルギーを失っ てしまうまでに 2∼3 mm 移動する。入射γ線が作る荷電粒子の全運動エネルギ ーを図示すると、この場合も単純なデルタ関数となる。しかしその全運動エネ ルギーは下の図 6 のように入射γ線より 2m0c2 だけ下に位置している。この簡 単なモデルでは、検出器の中で電子対生成が起こるたびにこの大きさのエネル ギーが付与されることになる。このエネルギーは実際のγ線パルス波高スペク トルのダブルエスケープピークに対応している。 電子対生成過程は陽電子が安定な粒子でないため複雑になる。一たん陽電子 のエネルギーが吸収物質中の通常の電子の熱エネルギー程度まで低くなると、 陽電子は吸収物質中の通常の電子と結合して消滅する。この消滅点でエネルギ ーが m0c2(0.511 MeV)の 2 個の消滅γ線光子に置換される。陽電子が減速し 消滅する時間は短いので、消滅放射線は最初の電子対生成とほぼ同時に起こる ようにみえる。 図6 5.γ線を測定することになった理由 われわれは普段、放射線を感じながら生活をしているわけではないが、放射 性物質などからの人工的な放射線、宇宙から降り注いでくる宇宙線、自然界に 存在する放射線など様々な放射線は絶え間なく身近にある。 宇宙線と共に自然放射線は避け得ないものであり、われわれは自然界から常に 放射線を浴びると言われている。 われわれの生活と隣り合わせにあるこれらの放射線、その中でも、日々の生活 を送る上で避けることのできない自然放射線に興味を持った。人体が受ける地 中や岩石からの放射線はγ線が主である。α線やβ線は途中で吸収されるから である。この研究では、どのようなエネルギーを持ったγ線がどれくらいの量 出ているかを、いくつかの場所で調べてみることにした。 第2章 実 験 2・1 実験の概要 2.1.1 γ線の測り方 原子核から放射されるγ線のエネルギーは、その同位元素の種類に応じて、 特定の値を示す(元素によっては数種類またはそれ以上のγ線を出すものもい る)。したがって、γ線のエネルギー分布(エネルギースペクトル)の測定から、 そのγ線をだしている同位元素が何であるかを調べる事ができる。 γ線は電荷をもたないためそれ自身の検出は困難であるが、物質中に入射す ると物質中の電子や原子核と相互作用をし、主に3つの過程、①光電効果、② コンプトン効果、③電子対生成によって電子に変換されるのでこの電子を検出 する。γ線を効率良く電子に変換するためには大きな物質量が必要である。し かしこの変換された電子は物質中ですぐ止まってしまうため、そのエネルギー を直接測定することは困難である。そこで、電子が物質中で失うエネルギーに 比例した量の光を発生するシンチレーションカウンターを用い、その光の量か ら電子のエネルギーを求める。ここではシンチレーターとして NaI(Tl)結晶 を用いた。NaI(Tl)を用いる理由は i)同じエネルギーの高速電子がひき起こ すシンチレーションの光の量がとりわけ大きいこと、ii)γ線の量子エネルギー hνの決定にもっとも便利な光電効果による光電子の放出率が高いこと、iii) 電子のエネルギーと光量(したがって光電子増倍管の出力波高)との比例性が よいこと、など多くの長所をそなえているためにγ線のエネルギーの測定用と して最適である。 1回のシンチレーションで出る光は一般に非常に弱いので、今日のシンチレ ーションカウンターでは、この光を検出するために、光電子増倍管 (photomultiplier tube またはたんに photomultier)を用いて入射光子を電子 に変換する。 この電子を加速して二次電子放出過程により更に大きく増幅し、電気的信号 に変える。この信号をさらに比例増幅器で増幅・整形し、マルチチャンネル波 高分析器(MCA)で波高分析を行なった。 図2・1・1にシンチレーションカウンターの回路の系統図を示す。 各測定装置については次節で詳しく述べる。 図2・1・1 シンチレーションカウンターの回路系統図 2・1・2 検出効率 測定されたγ線のカウント数から、発生源のγ線の強度を求めるためには検 出器(ここでは NaI(Tl))検出効率を知る必要がある。そのために強さのわかっ ている 22 Na、 137 Cs の標準γ線源を用いて検出効率の測定を行なった。 22 Na のγ線のエネルギーは1.27MeVと511keV であり、 137 Cs のγ 線のエネルギーは0.66MeV である。 まず、測定原理を述べる。すべての放射線検出器は原理的にはその有感体積 内で相互作用した個々の放射線の量子ごとに1個の出力パルスを生じる。γ線 のような非荷電性放射線は検出器と相互作用をした後検出が可能となる。これ らの放射線は相互作用しながら長い距離を移動することも可能なので、検出率 の効率はしばしば100%以下となる。したがって計数されたパルスの数と検 出器に入射した光子の数を関係づけるためには正確な検出器の値を求める必要 がある。 計数効率を絶対効率と固有効率の2種類に分類するのが便利である。絶対効 率(absolute efficiency)は次のように定義される。 ε abs = 記録されたパルスの数 線源より放出される放射r線量子の数 これは検出器の特性のみならず、主として線源と検出器間の距離などの計数装 置の詳細な配置にも依存する。また固有効率(intrinsic efficiency)は、 ε int = 記録されたパルスの数 検出器に入射した量子の数 で定義される。この場合検出器の張る立体角ははっきりとした形で含まれてい ない。この2種類の効率は等方的な線源の場合 ε int =ε abs ・4π/Ω という関係となる。ここでΩは実際の線源の位置から検出器を見る立体角であ る。固有効率の方が幾何学的配置に対する依存性が少ないので、絶対効率より も固有効率の値を表示する方が便利である。検出器の固有効率は主に検出器材 料、放射線のエネルギーおよび入射放射線の方向にとった検出器の物理的な厚 さに依存する。しかし線源と検出器間距離への依存性が問題として残っている。 これは検出器を通る放射線の平均的な経路の長さが線源と検出器間の距離で少 し変化するためである。 計数効率は記録される事象の性質によっても分類が可能である。検出器からの パルスをすべて受けるので、全効率(total efficiency)を用いる。この場合 エネルギーがどんなに小さくても、すべての相互作用は計数されるものと仮定 する。図2・1・2に示す仮想的な微分パルス波高分布で、スペクトルの全面 積は波高に無関係に記録されたパルスの全数を表していて、これは全効率を定 義するのに用いられる。 図2・1・2 微分パルス波高スペクトルにおける全エネルギーの例 一方ピーク効率(peak efficiency)は入射放射線の一部を付与する事象はスペ クトルの左の方に現われる。全エネルギー事象の数はピークの全面積を積分し て求められる。全効率とピーク効率の間の関係を次式のようにピーク対トータ ル比(peak-to-total ration)r で表すことができる。 ε peak r= ε total 全効率とピーク効率の値は別々に表示されていることもある。全エネルギー事 象は、周囲の物体による錯乱や雑音などによる妨害効果に対する感度が低いの で、ピーク効率だけを用いる実験を行った。したがってピーク効率の値を結果 として用いた。 γ線検出器について表示する効率は固有ピーク効率である。 効率の分かった検出器は放射線源の絶対放射能を測定するのに使用できる。以 下の議論において、固有ピーク効率ε ip の検出器が用いられており、スペクトル の全エネルギーピークでN個の事象したと仮定する。簡単のため線源は等方的 に放射線を放出し、線源と検出器の間で減衰が起こらないとする。固有ピーク 効率の定義から、測定期間中に線源から放出される放射線の量子の数Sは次式 で与えられる。 4π S=N Ωε ip ここで、Ωは線源の位置に検出器が張る立体角(ステラジアン単位)である。 この立体角は線源に面した検出器の表面について積分したもので次のようにな る。 Ω= ∫ A cosα dA r2 ここで、r は線源と表面の面積要素 dA 間の距離を示す。またαはその 線源の方向との間の角度である。線源の体積が無視できない場合には、線源 の全体積要素について第二の積分を行う必要がある。 点状源が円筒型検出器の中心軸上にある場合、Ωは次式で与えられる。 d Ω=2π 1 − d 2 + a2 ここで線源と検出器間の距離 d および検出器の半径 a を下の図に示す。 d≫aの場合立体角は線源から見える検出器前面の面積Aと距離dの2乗の比 となる。 πa 2 A = d d2 下の図に示すように、放射線を等方的に出す均一な円板状検出器が両方の中 心を貫く共通軸に対し共に垂直に置かれた場合もある。 Ω≅ ここでは点源とみなされる標準γ線源( 22 Na、 137 Cs)を検出器から70cmの 距離におき全エネルギーピークに対する検出効率の測定を行った。 2・1・3 エネルギー較正 測定した 22 Na、 137 Cs のピークの値とγ線のエネルギーの関係を求め、エクセ ルでγ線のピークの値をチャンネルとして Y 軸としてあらわし、X 軸をエネルギ ーとしてグラフを描いた。この3点を直線で結びエネルギー較正とした。 2・2 測定装置 2・2・1 シンチレーションカウンター シンチレーションカウンターは、i)G−M 計数管やパルス電離箱(半導体検 出器を除く)に比べて速いパルスを取り出すことができ、不感時間もなく早い 計数ができること、ii)シンチレーターとして密度が高く容積の大きい固体や液 体を使うことができるので a)γ線、中性子のような透過性の強い放射線に対す る計数効率を高めることができ、また b)γ線による二次電子、β線、高エネル ギー陽子などの飛程の長い荷電粒子をシンチレーター内で停止させ、その全エ ネルギー損失に応じた大きさのパルスを得ることができて、これらの粒子のエ ネルギー測定が可能になること。iii)パルスの波形の違いを利用して、粒子の 種類を見わけることができること、iv)装置の本体(シンチレーターと光電子増 倍管)がよくまとまっていて、排気装置などを必要とせず、あまり高利得の増 幅器もいらず、取り扱いが比較的簡単である事、など多くの特徴をそなえてい るため、G−M管についで広く使われている。 しかし光電子増倍管を働かせるための高圧電源は、G−M管用のものよりもず っと高級な安定化電源でなければならないし、また光電子増倍管で光のパルスを 電気的パルスに変えるときの変換能率が低いことなどのために、エネルギー分解 能はあまり上げることができないなど、多少の欠点はまぬかれない。 シンチレーターの内部で発生したシンチレーションの光を、効率よく取り出し、 光電子増倍管に入れるために次の注意がされている。 透明度の高いシンチレーターを使った。 シンチレーターと光電子増倍管の窓との途中に空気が入らないよう に流動パラフィンを使い光の反射を減らしている。 シンチレーターの表面はなめらかに仕上げ、全反射と部分反射を利用 してなるべく多くの光が(何回かの反射ののち)窓から出るようにして いる。 シンチレーターと光電子増倍管の窓との間から光が入射しないよう に黒のビニールテープで遮光している。 実験で使用した NaI(Tl)の大きさは横87.3mm、縦85.25mm,面積 7442.33mm 2 、奥行き94mm、体積699578mm 3 である。 2・2・2 光電子増倍管 光電子増倍管(photomultiplier)は、光電効果を利用して入射光量の比例す る個数の電子を放出させ、これを加速して二次電子放出(secondary-electron emission)過程による電子数の増倍を何度も繰り返させ、微弱な光の信号(パル ス)をその光量に比例する大きな電気的信号(電流または電圧パルス)に変換 する特殊な電子管であって、管内での電流増幅率(電子数の増倍率)は100 万倍にも及ぶ。しかもその動作は迅速・安定であり、寿命も短い、こうしてシ ンチレーションやチェレンコフ光などの弱い光のパルスの検出には、ほとんど もっぱら光電子増倍管が使われている。 典型的な光電子増倍管の構造の概要を図2・2・2に示す。 図2・2・2 光電子増倍管 通常ガラス製の真空容器は内部の真空の条件を保持するので、その中では低 エネルギー電子が内部の電界により能率的に加速される。光電子増倍管内の主 要な二つの要素は光電陰極(photocathode)と呼ばれる感光層とこれが結合す る電子増倍器(electron multiplier)構造からなる。光電陰極はできるだけ多く の入射する光子を低エネルギーの電子に変換する作用をする。この光電子変換 は継続した三つの過程からなると考えられている。すなわち、 ①入射光子の吸収と光電子放出性物質中の電子へのエネルギーへの移行 ②表面への電子の移動 ③光電陰極表面からの電子の放出である。 光がシンチレーション結晶からのパルスの場合、生成される光電子も同じ時 間的な振舞をする。典型的なパルスに含まれる光電子はわずか数百個なので、 これを通常の電気信号として扱うには小さすぎる。光電子増倍管の電子増倍器 は効率のよい光電子収集の配置をしており、またその数を大幅に増加するため の理想に近い増幅器として動作している。この増倍器を経て増幅されると、典 型的なシンチレーションパルスは107∼1010個電子となり、当初のシンチレ ーション事象を検知するのに十分な電荷信号となっている。この電荷は陽極す なわち増倍器の出力段で容易に収集される。 ほとんどすべての光電子増倍管は、この電荷増幅が非常に比例性よく行われ るので、きわめて広い範囲にわたり最初の光電子の数に対する比例性を保った 出力を陽極で出す。さらに最初の光パルスにさらされた典型的な光電子増倍管 は20∼50nsの遅延時間を経て数nsの時間幅の電子パルスを形成する。 2・2・3 比例増幅器 パルス処理装置中で比例増幅器(linear amplifire)の重要な機能としては、 まず第一は信号の増幅であり、第二は最良の信号対雑音比を与えるようなパル ス整形を行なうこと。実際の波形は下図の様な形をしており、実験では整形時 定数は1μsec とした。又、次の波高分析器の最大入力が10V であるのでパル スの高さはそれ以下になるようにした。 2・2・4マルチチャンネル波高分析器 シングルチャンネル波高分析器を使って検出器からのパルス波高の分布(こ のことをしばしば波高スペクトル(pulse-height spectrum)という)を測定す る場合には、各チャンネルについての計数測定をつぎつぎに行なわなければな らないから、波高の広い区間にわたってくわしい波高分布を求めようとすると ひじょうに時間がかかり、その間に電源の変動や温度変化などが原因となって 検出器からの入力パルス自身の波高が全体として変化したり、または増幅器の 利得の変動や波高分析器の上、下限レベルの変動が起こって正確な分布の測定 が困難になりがちである。 こういう場合の対策として考えられるもっとも有力な方法は、隣り合う多数 のチャンネルでの計数測定を同時に行なえるようにすることである。このよう な機能をそなえた波高分析器のことをマルチチャネル波高分析器(MCA)とい う。 MCA では各チャンネルにカウントされた数が記録されているので、それをパ ソコンに蓄え、いろいろな解析を行った。今回の測定では MCA の full scale は 大部分の測定では1024チャンネル(一部256チャンネル)で行った。 2・3 実際の測定 2・3・1 標準γ線源による検出効率・エネルギー較正の測定 前述のように 22 Na、 137 Cs を検出器から70cm の距離において測定した。し かし、なにも放射線源を近づけないときでもある程度の計数率を示すのが普通 である。このような、測ろうとする放射線以外の原因(おもに宇宙船や気中放 射能、実験室または検出器自体の放射能汚染など)による計数のことをバック グランド計数(background counts)、その原因となる放射線のことをバック グランド放射線(background radiation)という。 測ろうとする放射線の計数を行なっているときも、バックグランドは必ず同 時に形数されるから、測ろうとする放射線だけにもとづく計数率(線源の強さ に比例)a を求めるには、全体の計数率 c からバックグランド計数率 b をさし引 かなければならない。すなわち a=c−b である。 標準γ線源の強度は充分強いので測定時間は300秒とした。 2・3・2 自然放射線の測定 通常の測定ではバックグランドとなる自然放射線が研究目的であるので、標 準γ線源の影響が無視できるように遠ざけて長時間測定した。測定場所は研究 室(C102)では床から 70cm の机の上、壁から 20cm のところで測定。大学の 中庭では地面に測定器を置いた時と、地面から 1m 離したところで測定。R113 では床から 70cm の机の上で測定した。又、神戸での木造建築の 1 階の机の上 と、2 階の床の間でも測定した。測定時間は屋外では3600秒、屋内では72 000秒(一部30000秒)である。 第3章 解 析 この章では測定されたγ線のスペクトルからそのピークの位置とカウント数 (面積)を求める方法について述べる。γ線のデータは研究目的である、自然 放射線及び標準線源からのγ線である。後者はピークのチャンネルとγ線のエ ネルギーの関係及び NaI(Tl)検出器の検出効率を知るために必要である。 ここでは、3.1で標準線源について述べ、そして3.2で自然放射線の場合 を述べる。 3.1 標 準 線 源 の 解析 γ線のエネルギーと、強さのわかっている標準線源(γソース)を NaI から離れ た場所に置き、時間を決めてγ線を測定する。 その後、置いた場所からγソースを取り除き、バックグランドを測定し引き算 した。このときに用いたγソースは 137 Cs と 22 Na である。 このデータを最小2乗法を用い、ピークをガウス分布で近似し、バックグラン ドを 2 次までの多項式で近似するやり方でデータをフィットさせる。 その中で一番良いフィットを与えるパラメータを求めた。 この作業を我々は PAW(物理データ解析用計算システム)を用いて行った。 また、他にも最小2乗法を理解するために、測定したデータをエクセルを用い 解析をした。これによりピーク値やピーク幅を求めることができ、 『ピーク値と γ線のエネルギーの関係』(エネルギー較正)と、『ピーク幅とγ線のエネルギ ーの関係』とをグラフにして表すことが出来る。またピークの面積を求め、検 出効率を得た。 以下で各々詳しく説明する。 3.1−1 実 験 条 件 と デ ー タ まず、 137 Cs の標準γ線源を検出器から 70cm の位置に置き測定をした。γ線の エネルギーは 661kev、強さは 3.80×10 5 Bg(ベクレル)である。光電子増倍管 にかける電圧は−1002V、電流は−0.281mA をさしていた。MCA8000A のパラ メータを以下に記す。 Gain Threshold Preset Real time Live time Total Count Total Rate Start time 1024 20 300 301.59 300.00 208335 694.45 10/23/2001 15:44:20 このとき Gain は full range の分割チャネル数、Threshold は敷居値、Preset は測定予定時間、Real time は経過時間、Live time は測定実時間、 Total Count は全カウント数、Total Rate は1秒間の全測定数、 そして Start time は測定開始時刻を示す。 次にバックグランドを測定する。そのため 137 Cs の標準γ線源を置いた場所から 取り除き同じ時間測定をした。この時の MCA8000A のパラメータを以下に記す。 Gain Threshold Preset Real time Live time Total Count Total Rate Start time 1024 20 300 300.96 300.00 186004 620.01 10/23/2001 16:14:50 そして 137 Cs からの寄与だけを取り出すために、同じ時間の自然放射線から来る スペクトルを引き算した。そのときの図を以下に記す。 20000 15000 10000 5000 0 0 50 100 150 200 250 300 -5000 図1. この図を見ると 300 チャンネル∼400 チャンネルあたりにピークがあることが わかるので以下に述べるように 293CH∼383CH のデータを PAW(物理データ 解析用計算システム)を用いてフィットした。 次に、22 Na の標準γ線源を検出器から 70 cm の位置に置き測定をした。γ線の エネルギーは 511kev 及び 1275kev、強さは 1.12×10 6 Bg である。電圧は 1000V、 電流は 0.281mA であった。MCA8000A のパラメータを以下に記す。 Gain Threshold Preset Real time Live time Total Count Total Rate Start time 1024 20 300 307.03 300.00 1325944 4419.81 11/06/2001 13:19:11 次に 22 Na の標準γ線源を置いた場所から取り除き同じ時間バックグランドの測 定を行った。MCA8000A のパラメータを以下に記す。 Gain Threshold Preset Real time Live time Total Count Total Rate Start time 1024 20 300 300.96 300.00 186970 623.23 11/06/2001 13:29:23 バックグランドを引き算した Na のスペクトルを以下の図に示す。 22 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 -1000 0 200 400 600 800 1000 1200 図2. 300チャンネル付近と600チャンネル付近にピークがあるので179CH ∼319CHと539CH∼689CHを PAW を用いてフィットした。 3.1−2 P A W に よ る フ ィ ット データを最小2乗法を使って、ピークをガウス分布で近似し、バックグランド を2次までの多項式で近似するやり方でフィットさせる。その中で一番良いフ ィットを与えるパラメータをもとめる。パラメータ P(1)∼P(6)を次式で定義し た。 Ae − − ( x− m ) 2 2σ 2 +Dx +Bx+C=P(1) 2 − ( x− P ( 2 )) 2 2 P ( 3) 2 +P(4)x 2 +P(5)x+P(6) P(1)=A= Α′ 2π σ Α ′ =A× 2π σ (面積) P(2)=m(ピークの値) P(3)=σ (幅) P(4)=D P(5)=B P(6)=C PAW はリナックス上動くため、以下リナックス操作の具体的な手順で説明する。 まず送られてきたデータをリナックスで読み取る。 ターミナルエミュレータを2つ開く。 cd/fukuda/ ls emacs “データファイル名“ & これでデータを確認することができる。 次に PAW によるFITの関数とデータを図示するためのマクロを編集をする ために以下の作業を行った。 emacs mkfig.kumac & と打つと次のような画面が PC 上にあらわれる。 n/create 3’na1’ 2!! Xy n/read 3 ファイル名 1dh 102 ‘na1’ 150 0.150.0. nt /pl 3. x y – 102 Return emacs fit.kumac & と打つと次のような画面があらわれる。 ve/cre par(6) r 8000.80.16.1.2 4.10. hi/fit 102(5.:131.)fit.f! 6 par(1:6) ve/del par PAW にいって次のように打ち込むと FIT をかけたグラフが出てくる。 (以降 FIT させた図は付録に記載してある。) emacs fit 得られた結果を以下の表に示す。左の列が最適パラメータで、右の列がその誤 差を表わす。 137 Cs のパラメータ NAME VALUE ERROR P1 534.69 7.0114 P2 37.843 0.15820 P3 13.443 0.20900 P4 −0.40335E−02 0.29082E−02 P5 −0.36831 0.25680 P6 82.932 5.3302 CHISQUARE= NPFIT=127 22 Na 511kev のパラメータ NAME VALUE ERROR P1 7016.2 20.865 P2 75.764 0.34188E−01 P3 11.885 0.41439E−01 P4 −0.52654E−01 0.47134E−02 P5 −0.85454 0.68242 P6 1411.9 14.630 CHISQUARE=0.3036E+01=3.04 NPFIT=127 22 Na 1275kev のパラメータ NAME VALUE ERROR P1 974.81 17.185 P2 77.134 0.15965 P3 −20.330 0.32798 P4 −0.18701E−01 0.48840E−02 P5 2.0186 0.72131 P6 153.46 8.9114 CHISQUARE=0.1368E+01=1.37 NPFIT=127 この時、P1は高さ、P2はピークの値、P3は幅、P4、P5、P6はそれぞれ 2次係数、1次係数、定数を示している。 これからピークの面積( Α ′ )、中心値(m)、幅(σ)を求めた。 Α′ Y=A/300(秒) m σ Cs 661kev 18017.24 60.06 329.84 13.443 Na 1275kev 49676.07 65.58 615.13 20.33 137 22 209021.56 696.74 253.76 11.88 Na 511kev これらから『ピーク値とγ線のエネルギーの関係』を求めることが出来た。 この関係をグラフにして表したものは付録に記載してある。 22 3.1−3 検 出 効 率 の 求 め 方 標準線源の強さは以下の表の通りである。 成績書 核 種 22 137 Na Cs 1.12×10 Bq 3.80×10 5 Bq 2000 年 7 月 16 日 12:00 2000 年 7 月 16 日 12:00 放 射 能 6 基準日時 NaI の表面積 横87.3mm 縦85.25mm S=7442.33mm 2 =74.42cm 2 NaI の検出効率 ε を求めるために以下の様にする。すなわち、1 秒間の NaI(Tl) 検出器のカウント数 Y は線源から 1 秒間に発生するγ線の数 N×検出器の立体 角Ω×検出効率εと考えられるここでΩ= Y=N× S ×ε 4πR 2 S なので 4πR 2 ① まず、N は 1 崩壊あたり放出するγ線の数と崩壊数をかけたものになるが、崩 壊数は基準日時からの減衰も以下の様に考慮してある。 ここで 0.9993,1.81,0.85 はぞれぞれのγ線の 1 崩壊あたりの放出数を表わす。 22 Na 22 Na 137 Cs e − λt 1275kev 511kev 611kev =e − − t τ N=1.12×10 6 ×0.9993×e − λt N=1.12×10 6 ×1.81×e − λt N=3.80×10 5 ×0.85×e − λt ③ ② τ= 22 T =平均寿命 0.693 Na →T=2.602y 137 Cs →T=30.17y − λt N( t )=N(0) e λ=1/τ T=(ln2)τ=0.693τ(半減期) 上記より 137 Na →τ=32891.08時間 Cs →τ=381369.697時間 となることがわかる。 またtはγソースの経過時間である。つまり、下記のような値になる。 22 Na →2001 年 7 月 16 日 12:00∼2001 年 10 月 23 日 16:00 2713 時間 Cs →2001 年 7 月 16 日 12:00∼2001 年 11 月 06 日 13:00 2378 時間 これらより③式に値を代入していくと 22 137 22 Na →e − 137 Cs →e − − t τ − t τ =0.919 =0.9937 となる。 そして③式を②式に代入してそれぞれ計算する。そして①式に今まで求めた値 を代入し計算すると検出効率ε を求める事が出来る。すなわち以下のような値が 出る。 22 ε =0.05 Na 1275kev 22 ε =0.31 Na 5 1 1 k e v 137 ε =0.15 Cs 6 1 1 k e v これらの結果をグラフで表したものは付録に記載してある。 3.2 自 然 放 射 線 の 解析 次にさまざまな場所で自然放射線(γ線)を測定し、それに関して標準線源と 同様に PAW でフィットを行い、ピークの位置と面積を求めていった。 その結果を以下にしるす。また、FIT させた図は付録のとおりである。 ① 研究室内(C102)で MCA8000A を使って1時間自然界のγ線の測定をし た。そのときのパラメータを以下に記す。 1024 Gain 20 Threshold 3600 Preset 3611.67 Real time 3600.00 Live time Total Count 2259205 627.56 Total Rate 11/09/2001 12:54:11 Start time ピークを含む部分のデータを PAW で FIT させた。以後 PAW で1CH がもとの MCA で何 CH に対応するかもあわせて記述しておく。 その結果以下のようなパラメータが求まった。 RUN100 NAME VALUE ERROR P1 9176.7 30.371 P2 63.788 0.38247E−01 P3 12.431 0.48367E−01 P4 0.14962 0.76538E−02 P5 −60.310 1.0668 P6 6851.6 24.864 CHISQUARE=0.1675E+01 NPFIT=127 PAW の1CH=MCA の300CH ピーク位置等は次の様に求める。 Α ′ =A× 2π σ (面積) σ (幅)= P(3) A = P(1) Α ′ =285945.0184 またピークの値は 362.8 である。 ②次に、MCA4000を使って、研究室内で20時間γ線の測定をした。 そのときの MCA4000のパラメータを以下に記す。 ELT(測定時間) Start Time Gain 72000 12/11/2001 1024 15:19:54 1.075(%) Threshold 72281.05 Real Time 622.5 Rate このデータを図に示す。縦軸はカウント数を log scale で表してある。340 チャ ンネル付近と 600 チャンネル付近にピーク(以降ピーク1、ピーク2と書く)があ る。以下の FIT はこれら2つのピークに関して行った。 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 0 200 400 600 FIT の結果は次の様である。 RUN101(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 24882. 47.979 P2 48.697 0.24133E−01 P3 12.076 0.26477E−01 P4 0.40937 0.76713E−02 P5 −151.98 1.1272 P6 16185. 42.198 CHISQUARE=0.4580E+01 NPFIT=127 PAW の1CH=MCA の300CH 面積は 753179.211 でピークの値は 347.7 となった。 RUN101_2(ピーク2) NAME VALUE ERROR 800 P1 1497.2 18.321 P2 65.517 0.12455 P3 17.527 0.22429 P4 0.42223E−01 0.57666E−02 P5 −13.691 0.78429 P6 1306.3 12.373 CHISQUARE=0.1021E+01 NPFIT=127 PAW の1CH=MCA の551CH 面積は 65777.49637 でピークの値は 615.5 である。 ③次に、同じく MCA4000を使って研究室内で1時間γ線の測定をした。 そのときの MCA4000のパラメータを以下に記す。 ELT(測定時間) 3600 3614.04 ERT 11/20/2001 15:18:33 Start Time RUN102(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 1247.2 11.219 P2 95.220 0.10429 P3 −12.283 0.13128 P4 0.29229E−01 0.21853E−02 P5 −11.712 0.37981 P6 1341.1 11.114 CHISQUARE=0.1046E+01 NPFIT=147 PAW の1CH=MCA の250CH 面積は 38399.93491 でピークの値は 344.2 である。 ④次に MCA4000を使って中庭の地表に NaI(Tl)を置き1時間γ線の測定 をした。そのときのパラメータを以下に記す ELT(測定時間) ERT Start Time 3600 3614.89 11/20/2001 13:52:21 RUN103(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 1269.2 11.367 P2 97.788 0.10343 P3 −12.311 0.12630 P4 0.29425E−01 0.21344E−02 P5 −11.349 0.37497 P6 1352.0 11.270 CHISQUARE=0.1341E+01 NPFIT=147 PAW の1CH=MCA の250CH 面積は 39166.37059 でピークの値は 346.8 である。 ⑤次に MCA4000を使って中庭の地表から1m 離れた場所に NaI(Tl)を置 き1時間γ線の測定をした。そのときのパラメータを以下に記す ELT(測定時間) 3600 3614.29 ERT 02/07/2002 13:36:06 Start Time RUN105(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 996.14 12.756 P2 40.924 0.15017 P3 11.801 0.19382 P4 0.15990E−01 0.29988E−02 P5 P6 0.40733 726.40 20.097 CHISQUARE=0.1202E+01 NPFIT=91 PAW の1CH=MCA の300CH 面積は 28579.11708 でピークの値は 7.94 である。 ⑥次に MCA4000を使って R113 で20時間γ線の測定をした。 そのときのパラメータを以下に記す。 ELT(測定時間) 72000 ERT Start Time 72209.22 11/26/2001 14:09:41 RUN104(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 12468. 37.746 P2 40.761 0.41006E−01 P3 11.923 0.42892E−01 P4 0.13527 0.42656E−02 P5 −78.294 0.83879 P6 10543. 43.165 CHISQUARE=0.1128E+02 PAW の1CH=MCA の304CH NPFIT=145 面積は 372625.2426 でピークの値は 343.8 である。 RUN104_2(ピーク2) NAME VALUE ERROR P1 1107.3 9.8411 P2 75.966 0.14655 P3 −17.604 0.17729 P4 0.31098E−01 0.14575E−02 P5 −12.161 0.23056 P6 1327.0 7.7764 CHISQUARE=0.1049E+01 PAW の1CH=MCA の530CH NPFIT=147 面積は 48861.47736 でピークの値は 604.9 である。 ⑦次に、MCA4000を使って先生の神戸の自宅(1階)で20時間γ線の測 定をした。そのときのパラメータを以下に記す ELT(測定時間) ERT Start Time 72000 72200.59 12/30/2001 21:02:43 KOBE1_1(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 8716.8 30.546 P2 54.116 0.44186E−01 P3 12.364 0.48125E−01 P4 0.13744 0.35218E−02 P5 −61.405 0.59552 P6 7966.3 25.731 CHISQUARE=0.4661E+01 PAW の1CH=MCA の301CH NPFIT=145 面積はで 270150.6471 ピークの値は 354.1 である。 KOBE1_2(ピーク2) NAME VALUE ERROR P1 316.65 8.9275 P2 56.129 0.38350 P3 −17.549 0.54148 P4 −0.12030E−02 0.23669E−02 P5 −1.8983 −1.8983 P6 297.72 297.72 CHISQUARE=0.1113E+01 PAW の1CH=MCA の570CH NPFIT=91 面積は 13929.05972 でピークの値は 625.1 である ⑧MCA4000を使って先生の神戸の自宅(2階)で30000秒γ線の測定 をした。そのときのパラメータを以下に記す ELT(測定時間) ERT Start Time 30000 30092.52 01/01/2002 14:40:37 KOBE2_2(ピーク1) NAME VALUE ERROR P1 4503.8 21.575 P2 54.342 0.59102E−01 P3 11.925 0.62193E−01 P4 0.66767E−01 0.25705E−02 P5 −29.348 0.43150 P6 3789.3 17.684 CHISQUARE=0.4117E+01 PAW の1CH=MCA の301CH NPFIT=145 面積は 134625.5276 でピークの値は 354.3 である KOBE2−3(ピーク2) NAME VALUE ERROR P1 316.72 8.7515 P2 56.123 0.38122 P3 17.552 0.52933 P4 −0.11775E−02 0.23515E−02 P5 −1.9009 0.26508 P6 297.71 10.390 CHISQUARE=0.1113E+01 PAW の1CH=MCA の570CH NPFIT=91 面積は 13934.5 でピークの値は 625.1 である 以上の結果を簡単にまとめたものを以下に表にしてあらわす。 場所 測定時間(秒) 1 秒当りの数 ピーク位置 RUN100 C102 27228.84 10.50 362.8 RUN101 C102 72000 10.46 347.7 0.91 615.5 RUN101_2 RUN102 C102 3600 10.67 344.2 RUN103 庭 3600 10.88 346.8 RUN104 R113 72000 5.18 343.8 0.68 604.9 RUN104_2 RUN105 庭 3600 7.94 339.9 KOBE1_1 神戸の家 1 72000 3.75 354.1 0.19 625.1 4.49 354.3 0.46 625.1 KOBE1_2 KOBE2_2 KOBE2_3 神戸の家 2 30000 第4章 議 論 エネルギーがわかっている 137Cs と 22Na の標準線源の 3 点を用いて、MCA チャンネルとエネルギーの関係を最小二乗で求めると、 y=15.35+0.47x という式が得られた。ここで x はエネルギー(keV)、y はチャンネルの値であ る。これを図に示す。 測定結果よりピーク①、②の加重平均をとると次のようなチャンネルが得ら れ、そしてこのエネルギーの較正式を用いて、チャンネルをエネルギーに直す と、次の表のようになる。 チャンネル エネルギーkeV ピーク① 700.65 1458.1 ピーク② 1232.8 2590.3 次にピーク①、②の示すようなエネルギーを持った核種には、どのようなも のがあるかということを考える。 まず、ピーク①について考えた時、地球と同じ位の寿命を持ち、自然界に存 在する放射性核種として、10Be、14C、40K、87Rb、147Sm、176Lu、187Re などが 主にある。この中で 87Rb、147Sm、176Lu、187Re は希土類であるので、めったに 存在しない。そこで 10Be、14C、40K についてを考えた場合、10Be、14C はγ線 を出さないので 40K について追及する。 40K の崩壊形式図より、 40K は 40Ar に崩壊した時に 1461 keV のγ線を放出し、 これはわれわれの測定結果の 1458.1 keV とほぼ一致する。よってピーク①は 40K に起因するγ線ということができる。 この図より 40K は 109 年の寿命を持ち、 10.7 %の割合で 40Ar に崩壊し、10.7 %のうち 10.5 %はγ線を放出し、残りは安 定状態に崩壊する。他の 89.3 %は電子を出して 40Ca に向かう。 次に、ピーク②について考える。自然に存在する放射性核種の系列図より、 鉛よりも重く長寿命な元素で、γ線を出す物はいくつか考えられるが、われわ れのピーク②の測定結果の 2590.3 keV に近いものは 2614 keV のエネルギーを 持つ 208Tl であることがわかった。208Tl はトリウム系列の最後に位置する。 まとめると、ピーク①、②はそれぞれ、核種は 40K、208Tl であると決まった。 Na、Cs の標準線源の検出効率のグラフを用いて、ピーク①、②のエネルギー の時の検出効率εを読み取る。 ピーク①のエネルギー1461keV での検出効率 ε1=0.04 ピーク②のエネルギー2614keV での検出効率 ε2=0.015 と評価がなされた。 これより、測定した各場所の 1 秒あたりに自然に存在するγ線の数は、 1 秒あたりに観測されたγ線の数(面積)/ε1、ε2 で計算され、次のグラフの通りである。 各場所でのピーク①のγ線量 本/sec 300 250 200 150 100 50 0 C102 C102 C102 庭(地面) R113 庭(1m上) 神戸1階 神戸2階 各場所でのピーク②のγ線量 本/sec 70 60 50 40 30 20 10 0 C102 R113 神戸1階 神戸2階 これらの場所依存性について議論する。ピーク①において、庭で地面に NaI を置いてしまっているので、γ線をみこむ立体角が他のものとは違うと思われ るので、地面に置いた場合は無視をして考えたとする。すると C102 のコンクリ ートの部屋とそれ以外では、1 秒あたりのγ線の本数は倍ほど違う。このことよ り、地面から半分、コンクリートから半分のγ線がきているのではないかとわ れわれは考えた。 そして、われわれはどのくらいのγ線を浴びているのかということを議論し た。 今、8.73×8.525×9.4 (cm3)の NaI に 1 秒あたり 200 本のγ線が入っている と考えると、単純計算で人間では 1 秒あたり数千本のγ線浴びているというこ とに相当する。この数字には驚かされる。 そこで、第 1 章でも述べたように、われわれは自然界から 1 年間に大よそ 1 ∼2 mSv の放射線を浴びているのかどうかを考える。まず Sv という単位につい て。1 kg の物質に 1J のエネルギーを吸収することが 1Gy であり、われわれは γ線を考えているので 1Sv=1Gy である。 人間の比重はほぼ水と同じと考えると、次の式が成り立つ。 50kg の人間が 1 年間に浴びるγ線量 本/秒 のγ線 50×200× 容積の割合 1 年間を秒単位に したもの 103 ×60×60×24×365 8.73 × 8.525 × 9.4 ×1.461×106×1.6×10−19× 10 ×∼数 1 23 10 エネルギー eV 電気素量 γ線の吸収の割合 1.462MeV の 1 本のγ線を浴びた時に 吸収するエネルギー これらの計算をすると、大よそ 1∼2mSv のγ線を浴びているということになる と思われる。 第5章 結論と今後の課題 今回の測定により以下のことがいえる。 ① われわれが観測したγ線は 40K と 208 Tl という放射性核種に起因する。 ② 測定したγ線は、場所により数に違いがある。 ピーク1 γ線数/秒 C102(鉄筋コンクリート) 262.5 C102(鉄筋コンクリート) 261.5 C102(鉄筋コンクリート) 266.75 庭(地面) 272 R113(プレハブ) 129.5 庭(1m上) 198.5 神戸の家1階(木造建築) 93.75 神戸の家2階(木造建築) 112.25 ピーク2 γ線数/秒 ③ C102(鉄筋コンクリート) 60.7 R113(プレハブ) 45.3 神戸の家1階(木造建築) 12.67 神戸の家2階(木造建築) 30.67 コンクリートの部屋(C102)とそれ以外の測定場所では1秒あたり γ線の本数は倍ほど違う。 ④ 地面から半分、コンクリートから半分のγ線がきているのではないだろ うか。 ⑤ 1 年間γ線を受けた場合を考えると(50kgの人間では)約1−2 m Sv となる。 今後の課題としては、 ① 今回の測定では測定場所が主に大学であったので、別の場所例えば、全国を 考え北海道と沖縄ではどうなのか? 北極と南極ではどうなのか? ② 40 K、 208 Tl 以外にもわれわれが普段浴びている放射線は何か。 ③今回観測したガンマ線は 1.4 MeV 以上と標準線源のガンマ線より高いエネル ギーであった。この範囲で対応する検出効率を精度良く求めるためには、別の 標準線源を用いて測定する必要がある。
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