DEUTSCH-JAPANISCHER WIRTSCHAFTSKREIS 1 季刊誌 10 2010 年 DJW ニュース テーマ 1 ドイツの所得税確定申告 日本同様、ドイツでも確定申告の時期がやって参りました。 日本と比較し、税金が高いドイツこそ、所得税確定申告の意義 は大きいのですが、ドイツで納税する日本人にとり、特に初め て申告する場合は、言葉のハードルのみならず、日本とは違う 申告のシステムに戸惑う点が多いことも事実です。 ドイツの所得税は、納税者の申告に基づき、暦年単位で課 税され、確定申告は課税手続き上重要な意味を持ちます。確 定申告は納税者が税務署に対して行う行為であり、会社は関 与しません。申告書には、すべての(全世界)所得及び控除可 能な費用が自己申告され、それに基づき、税務署は最終的な 課税対象所得を計算し、年間の税額を査定します。因みに、ド イツ税法には、7 種類の所得(農林業・事業・自由業・給与・投 資・賃貸・その他)及びその算定方法が定義されています。査 定書と共に、税額の精算(不足額の納付命令、過払いの還付 通知)が行われます。査定書の内容に不服がある場合は、4 週間以内に異議申立を行わないと手遅れになりますので、注 意を要します。 原則的に全ての納税者に申告の義務があります。一定範囲 の給与所得あるいは投資所得(配当、利息など)だけの場合、 義務はありませんが、任意申告も可能です。給与計算では認 められない費用控除(個人的な必要経費など)は、確定申告を 通じて考慮されます。確定申告書は納税者自身が署名の上、 翌暦年の 5 月末までに提出されねばなりません。税理士など の有資格者が申告書の作成を代行する場合は、翌年の 12 月 末が期限となります。 近年ドイツにおいても電子的申告が促進されてきました。税 務当局の「ELSTER」と呼ばれるシステムを利用し、申告書の記 入および提出を電子的に行うことが可能です。しかし、署名、 添付証憑など、まだ一部においてオリジナルの郵送が必要とさ れます。その他、市販されている解説書やソフトウエアを利用す るのも有効です。しかし私の経験からは、最低限の税法知識が どうしても必要となります。それは、簡単なソフトでは特殊事情 に対応できず、逆に充実したソフトでは、構成が複雑過ぎて使 い辛いという運命を負うからです。多くの税理士は DATEV とい うシステムを使います。これはドイツの税理士、会計事務所など が会員制で組織する団体であり、経理、税務申告、その他の関 連作業を行うためのシステムを会員に提供し、ドイツにおいて は広く認知されています。 殆どの日本企業では、駐在員にネット保証の給与体系を適 用しています。つまり、申告後の追徴・還付も会社に帰属しま す。この場合、会社の指示に基づき、(義務の有無に係わらず) 全駐在員の申告をするのが普通です。とりわけ来独・帰国の年 度では、多くの控除が可能なために、還付が期待されます。通 常は税理士が日本人駐在員用の質問書を用意し、その回答に 基づき税理士(スタッフ)が申告書の作成を行います。これは手 間が掛かる複雑な作業です。実務においては、言葉の違いに よる誤解、不十分・不明確な情報、コミュニケーションの困難 (税理士と駐在員の会話が困難、現地スタッフに任せられない) などの問題を如何に解決するかに頭を悩ませます。 最近は税制が政治の道具に成り下がったような印象を強く受 けます。長期的な展望は期待すらできず、公平課税あるいは選 挙公約の名の下に毎年多くの例外規定が生まれ、例外の例 外、そのまた例外などでドイツの税制が肥大化、複雑化し、非 理論的になったのは、大変憂慮すべき事態だと感じます。 著者:田中 泉 / ドイツ税理士 コンタクト:[email protected] テーマ 2 日独の産学協同プロジェクト 経済的成功の礎を築くのは、イノベーションと科学技術分野 におけるアドバンテージです。グローバル競争下では、どれだ け早く確実に、知的成果を競争優位に転化できるかが、焦点と いえるでしょう。迅速且つ効果的な産学技術移転こそが決め手 となります。 ドイツでは、この過程を多くの機関が支えています。連邦レ ベルでは、ドイツ全国に 27 の技術移転機関と、100 人のイノ ベーション・マネージャーを擁する TechnologieAllianz e.V. (TA)がその役目を担い、特許を生み出す 100,000 人以上の 科学者を抱える 200 もの科学機関を代表しています。TA は、 ドイツの大学及び研究機関が生み出した、特許対象である革 新的な研究開発成果をとりまとめ、現在、2,000 を越える発明 をまとめたポートフォリオの中から、900 の技術プロフィール を、www.technologieallianz.deで公開しています。更に、技術 移転の成功事例を一層拡大していくために、TA はドイツ産業 1 日独産業協力推進委員会 連盟(BDI)と共同で、「Invention Store」を立ち上げ、特許を取 得済みの先端技術を無料で提供するサービスを行っています。 サービス利用者は、www.inventionstore.deにて、興味がある 研究・技術分野を選択、更に関連キーワードを登録(英語もしく はドイツ語)することだけで、希望に合致した、既に特許を取得 している最新の技術を、メールで受け取ることができます。 州レベルでも、同様の機関が活躍しています。ドイツ西部ノ ルトライン・ヴェストファーレン州では、技術移転機関 PROvendis GmbH に、州内の 23 の大学が出資者として参加し ています。Mülheim a.d. Ruhr にあるこの技術移転機関は、国 内外で機能しており、早稲田大学との業務提携契約の締結が 予定されています。同大学は、総合大学として多岐にわたる分 野で研究を進めており、加えて、10 の在外代表事務所、世界 各国の大学等との約 600 の学術交流協定を通じて、海外戦略 をも活発に展開しています。今回の契約においては、技術に関 する情報交換、相互に相手の先端技術をメッセやホームペー ジで紹介することが、既に取り決められています。 一方、早稲田大学自身も、技術移転及び産学協同を推進す る日本のネットワーク「大学技術移転協議会(UNITT)」に、会 員として登録をしています。UNITT は、情報交換、調査、研究 等の実施、国内外の諸団体等との連絡、交流及び関係強化等 を、主な事業業務とし、海外企業が、特定の研究分野に関し て、UNITT に問い合わせを行うと、それに適う日本の研究機関 が紹介されるなど、海外からの問い合わせにも対応していま す。UNITT のホームページによると、2010 年 1 月末現在、大 学をはじめ、研究所やその他関連機関など、計 69 が正会員と して UNITT に登録しており、その中には早稲田大学の他、東 京大学や京都大学、東京工業大学、大阪大学、慶応大学など が名を連ねています。 共に資源小国である日独両国にとって、発明を生み出す人 材は最高の資源であると同時に、重要な成長要因です。両国 が世界市場においてリーディングポジションを維持していく上 で、まさにイノベーション分野における両国の協力関係は、今後 一層その重要性が増していくことでしょう。 著者:Katja Stiegel / PROvendis René Reinhardt / TechnologieAllianz URL:www.provendis.info / www.technologieallianz.de テーマ 3 2011 年:日独交流 150 周年 来年 2011 年は、日本とドイツの交流が始まって、150 年を 迎える記念すべき年です。1860 年にオイレンブルク伯爵が全 権公使を務めるプロイセンの東方アジア遠征艦隊が日本に来 航、その翌年 1861 年 1 月 24 日に修好通商条約が調印さ れ、ここに今日まで続く両国の友好関係の礎が築かれました。 この記念すべき年を祝うために、日独両国で、2010 年秋から 2011 年にかけ各種記念行事が予定されています。 本記念事業には、日独関連団体や文化機関だけでなく、企 業、更に個人の方まで、どなたでもご参加いただけます。期間 中に日独関連のプロジェクトを実施されるご予定の方は、ご申 請いただければ、ご自身のプロジェクトの広報活動において、 「日独交流 150 周年」のロゴマーク(右)をご使用いただけま す。「日独交流 150 周年」事業認定ならびにロゴマーク使用を ご希望の方、もしくはご質問がおありの方は、ドイツ国内開催 の事業につきましては在ドイツ日本国大使館もしくは各総領事 館に(www.de.emb-japan.go.jp/dj2011/index.html)、日本国 内開催の事業の場合、在日本ドイツ連邦共和国大使館までお 問い合わせ下さい(www.tokyo.diplo.de 内、「日独交流 150 周年」のページをご参照下さい)。 DJW では昨年、本記念事業に先立ち、独日協会連合会 (VDJG)と共同で、同条約の詳細、そしてその背景について説 明 し ま し た 、 ド イ ツ 語 著 作 「 Ewiger Friede und beständige Freundschaft」(著者:ルプレヒト・フォンドラン)を発行いたしま した。関心がおありの 方は、DJW ホームペ ージ(www.djw.de)、 「出版物」のページを ご覧下さい。 DJW からのお知らせ ・ 日独イベント情報 ● フォーラム 「第 4 回日独経済フォーラム-地球にやさしい モビリティー、リーダーシップ役を担うドイツと日本-」 自動車関連技術で世界をリードする日独両国では、エレクト ロモビリティは将来の重要なテーマと認識されています。今フォ ーラムでは、エレクトロモビリティの推進にむけた両国の取り組 みや、技術ソリューションに焦点を当て、日独連携強化の道を 探ります。(日独同時通訳) 日時 : 4 月 21 日(水) 13:00-16:30 会場: ハノーバーメッセ / 詳細・申込: www.djw.de 参加費: 無料 (お申込をいただきました方で、メッセへの入場 券をご希望の方には、無料でお送りいたします。) ● セミナー 「Japan-Karrieren. Chancen und Herausforderungen einer Karriere mit Japanbezug」 日本関連の仕事を得るには、どんな点に注意すればよいの でしょう。当セミナーでは、日本関連での就職を希望するドイツ 人を対象に、様々なご質問にお答えいたします。(ドイツ語) 日時:2010 年 4 月 27 日(火) 場所: テュービンゲン 詳細・申込: www.djw.de ● シンポジウム 「日独経済シンポジウム-最新エネルギー技 術と e モビリティ」 最新エネルギー技術と e モビリティは目下、日独両国でも将 来重要となる分野として議論されており、多様な二カ国間協力 の可能性の展開が期待されています。本シンポジウムでは、 発行: 日独産業協力推進委員会(DJW) 編集:平田佳子 発行責任者: DJW, Graf-Adolf-Str. 49 40210 Düsseldorf, Germany Tel./ Fax: +49(0)211-9945-9191 / -9212 両国の講演者による基調講演の他、学術・産業界の代表によ るパネルディスカッションを行います。(日独同時通訳) 日時:2010 年 5 月 19 日(水) 14:00-18:00 場所: デュッセルドルフ、ホテル・ニッコー 参加費: 無料 / 詳細・申込: www.djw.de ● セミナー 「HR-Development im deutsch-japanischen Kontext」 今セミナーでは、人材育成・開発をテーマに、人材・人事エキ スパートを迎え、将来を見据えた人材保持にまつわる戦略、手 段について議論いたします。(ドイツ語) 日時:2010 年 5 月 3 日(月) 場所: デュッセルドルフ 主催者:Kienbaum Management Consultants、DJW 参加費: 無料/ 詳細・申込: www.djw.de ● セミナー 「7. Rechts- und Steuertag „Geistiges Eigentum – Effektiver Schutz immaterieller Wirtschaftsgüter in Japan“」 今年で 7 回目を迎える本セミナーでは、知的財産を取り上 げ、法律・税制の観点から解説いたします。(ドイツ語) 日時:2010 年 6 月 23 日(水) 場所: デュッセルドルフ、Industrie-Club 主催者:ARQIS Rechtsanwälte、DJW 参加費: 無料 / 詳細・申込: www.djw.de DJW ニュースはEメールで無料購読できます。 お申し込み方法:件名に“Newsletter J“とご記入の上 [email protected] までお送り下さい。ホームページ www.djw.de から直接ダウンロードもできます。 免責事項:DJW ニュース上の情報に関しては万全を期しており ますが、その内容の正確性および安全性を保証するものでは ありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について も、DJW 及び情報提供者は一切の責任を負いかねます。 2 日独産業協力推進委員会
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