知っていますか? 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、慢性萎 縮性胃炎などをはじめとする胃の病気の8 割はピロリ菌の感染が原因で起こっている ことをご存知ですか? ピロリ菌は主に経口感染し、日本では中 高年世代の約7割、国民全体で約5000 万人が感染しているといわれており、ピロ リ菌を除菌することによって、胃の病気を 減らすことができます。 の粘膜に住み着く特異な菌です。 5歳以下までの幼少期の経口感染が 日本消化器病学会指導医、日本消化器内視鏡学 会指導医、日本肝臓学会専門医、日本消化管学 会 胃 腸 科 認 定 医、 日 本 ヘ リ コ バ ク タ ー 学 会 H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医、日本がん 治療認定医機構がん治療認定医 ︵ 胃 液 ︶ を 分 泌 し て い ま す が、 そ の 中 胃は、食物を消化するために消化液 ている親が離乳食などを口移しで与え 感染、特に多いのは、ピロリ菌を持っ が、糞便に汚染された水や唾液からの トリンパ腫︵悪性リンパ腫の一つ。悪 胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃マル 胃がんの発生にも関係 に含まれる塩酸︵胃酸︶によって、内 気の %はピロリ菌感染が原因で起き ポリープなどをはじめ、日本の胃の病 性度は低い︶ 、 萎 縮 性 胃 炎、 一 部 の 胃 日本では、環境衛生が不十分だった るといわれています。 親子間感染による 歳以降で感染率が 以上で、胃がん発生のリスクが高い慢 戦後にかけて育った 歳以降と、その バクター・ピロリ︶は、自らが持つウ 高いのですが、衛生環境がよくなった 胃・十二指腸潰瘍での感染率は % レアーゼという酵素を使って胃酸を中 性萎縮性胃炎も、ほとんどはピロリ菌 ヘリコ 80 現在では、若年者の感染は減少してい しかし、ピロリ菌︵正式名 菌され、ふつうは生存できません。 ることによる感染であろうといわれて ます。 1989 年 慶應義塾大学医学部卒業 1993 年 慶應義塾大学大学院医学研究科博士 課程修了.米国カリフォルニア大学 サンディエゴ校研究員 1995 年 慶應義塾大学医学部助手 2005 年 北里研究所病院消化器科医長 2006 年 慶應義塾大学医学部専任講師 2011 年 慶應義塾大学医学部准教授 多くの胃の病気の元凶 ◉略歴 部 は 非 常 に 強 い 酸 性 に な っ て い ま す。 鈴木 秀和 先生 います。 ほとんどで、直接の証拠はありません 慶應義塾大学医学部内科学(消化器)准教授 そのため、多くの細菌やウイルスは殺 強酸性の 胃 の 中 で 生息でき る 特 異 な 菌 監 修 和し、生存できる環境を作ることで胃 60 40 90 ピロリ菌の除菌 深く関係 22 多くの胃の病気の発生に ・抗体検査:ピロリ菌に感染するとできる抗体の存在を血中また は尿中で調べる (日本ヘリコバクター学会ガイドブックより) ●内視鏡を用いない検査 ・尿素呼気試験:ウレアーゼの働きで胃の中の尿素が分解されて 発生する炭酸ガスを呼気で測定する ●保険適用外 ・H. pylori(ピロリ菌)感染症 ●内視鏡を用いる検査 ・鏡検法:内視鏡で採取した組織を染色して菌の存在を確認する ・培養法:内視鏡で採取した組織にいる菌を培養して確認する ・迅速ウレアーゼ試験:内視鏡で採取した組織にピロリ菌が持つ ウレアーゼという酵素が存在するかを pH 指示薬で調べる ●保険が適用される疾患 ・胃潰瘍、十二指腸潰瘍 ・胃マルトリンパ腫 ・特発性血小板減少性紫斑病(ITP) ・早期胃がんに対する内視鏡的治療 後の胃 が原因です。 慢性萎縮性胃炎は、これまで胃粘膜 残りの粘膜に対して除菌療法を行うこ とで、さらなる胃がん発生の予防効果 こらないことがわかりました。胃がん リ菌に感染しなければ、それほどは起 る と 考 え ら れ、 ま た 過 形 成 性 の 胃 ポ に対する除菌も胃がん予防の効果があ 保険適用外ですが、慢性萎縮性胃炎 があることも証明されました。 発生との関係もほぼ明らかになってい リープに対して除菌を行うと、ポリー の老化と考えられてきましたが、ピロ ます。 特発性血小板減少性紫斑病では、除 プが消失することもあります。 少性紫斑病︵血小板が減少する血液の 菌によって血小板が増えて元の状態に 胃の病気のほかに、特発性血小板減 病気︶でも、ピロリ菌を持っている患 戻ることが期待できます。 いでしょう。 一度かかりつけ医に相談してみるとよ 胃 の 不 調 が 長 期 間 続 い て い る 人 は、 者さんの約半数で、ピロリ菌除菌後に 血小板の数が増えてくることがわかり ました。 潰瘍やがんの再発予防に 除菌療法が高い効果 除菌療法は、潰瘍治療薬と2種類の 胃の病気の原因は、実は胃酸に耐え抜いて胃の中で しぶとく生息するピロリ菌だった! 抗生物質を7日間服用します。 胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、これまで 再発を繰り返すことがひとつの特徴で したが、ピロリ菌を除菌することで再 発率は大幅に下がります。 胃マルトリンパ腫も、除菌によって 高い確率でリンパ腫が改善します。 内視鏡で病巣を取った早期胃がんの 23 ■ピロリ菌の検査 ■除菌療法の適応疾患 ・抗原検査:検便によってピロリ菌の抗原の存在を確認する
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