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モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社
2014 年 7-9 月期
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グローバル・プロパティ・レビュー(2014 年 7-9 月期)
本書は、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのリアル・エステート運用チームが作成した
レポートを邦訳したものです。
2005 年 第 3 四半期
グローバル
株式市場および不動産関連証券市場のパフォーマンス
(米ドル・ベース、2014 年 9 月末現在)
リ ターン
Global Property
国/地域
株式市場
インデッ クス
リターン
当期
年初来
-2.1 %
4.3 %
グローバル
MSCI
ワ ール ド
北米
MSCI
ノースアメ リカ
0.6 %
8.1 %
米国
S&P 500
1.1
8.3
カナダ
S&P
500/TSX
-5.9
4.4
MSCI
ヨーロッ パ
-7.0 %
-1.4 %
英国
FTSE 100
-5.9
-0.9
フランス
CAC 40
-7.7
-3.3
ドイツ
DAX 100
-11.1
-9.2
アシ ゙ア
MSCI
パシ フィッ ク
-3.6 %
香港
ハンセン
-0.1
1.9
日本
日経平均
-0.9
-3.4
オーストラリア
S&P/ASX
200
-7.4
1.4
欧州
-0.4 %
不動産関連証券
インデッ クス
2014年
9月末
年初来
-4.4 %
7.2 %
-
-
-3.4 %
13.1 %
-
-
-3.1
14.0
-5.4
3.6
-7.2 %
6.4 %
-3.5
8.0
2.43 %
-24bps
-15.8
1.1
1.28
-31bps
-2.3
13.3
0.90
-35bps
-4.9 %
-1.0 %
FTSE EPRA/NAREIT
北米
FTSE NAREIT エクイティ
REIT
FTSE EPRA/NAREIT
カナダ
FTSE EPRA/NAREIT
デベロッ プド・ アシ ゙ア
FTSE EPRA/NAREIT
香港
FTSE EPRA/NAREIT
日本
FTSE EPRA/NAREIT
オーストラリア
2.3
7.6
-8.8
-6.2
2.49 %
-4bps
2.14
-9bps
-
-
-
1.99 %
+1bp
-12.5
0.52
-4bps
11.7
3.48
-6bps
出所:FactSet、EcoWin
*情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
巻末の重要事項を必ずご確認ください。
1
対前期比
変化幅
当期
FTSE EPRA/NAREIT
グローバル ・ デベロッ プド
FTSE EPRA/NAREIT
デベロッ プド欧州
FTSE EPRA/NAREIT
英国
FTSE EPRA/NAREIT
フランス
FTSE EPRA/NAREIT
ドイツ
1 0 年債利回り
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不動産関連証券市場のパフォーマンス*、米ドル・ベース (2014 年 9 月末現在)
50%
38.3%
28.0%
28.7%
30%
18.1%
10%
14.0%
11.0%
8.5%
7.2%
4.4%
2.5%
10.5%
-10%
20.4%
14.3%
8.3%
2005 年 第 3 四半期
28.0%
16.7%
15.9%
15.9% 15.6%
11.6%
11.0%
11.1%11.3%
8.6% 10.0%
8.9%
7.8% 8.4%
13.1%
-6.5%
-7.0%
-5.8%
-16.9%
-15.7%
-30%
-37.7%
-50%
-47.7%
-70%
2014年
年初来
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
Global Property
FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド・リアル・エステート・インデックス
2008年
2007年
過去3年
FTSE NAREIT エクイティ・リート・インデックス(米国)
過去5年
過去10年
過去15年
NCREIF プロパティ・インデックス
出所:FTSE EPRA/NAREIT、NCREIF
リターンは米ドル・ベースで算出されます。期間 1 年未満のものを除き年率にて表示しています。FTSE EPRA/NAREIT グ
ローバル・デベロップド・リアル・エステート・インデックスは、時価総額加重で算出されるインデックスで、北米、欧州、アジア
市場の不動産関連証券の株価を反映します。FTSE NAREIT エクイティ・リート・インデックスは、時価総額加重で算出され
るインデックスで、米国で投資適格商業用不動産を所有・管理・リースする不動産関連証券全ての株価を反映します。
NCREIF プロパティ・インデックスは、全米不動産投資受託者協議会が四半期ごとに公表する実物不動産のインデックスで、
個々の商業用不動産を集計したトータル・リターンを示し、不動産投資成果を評価する指標として普及しているものです。
*情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
2
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概況

FTSE EPRA/NAREIT グローバル先進国リアル・エステート指数は 2014 年 7-9 月期に米ド
ル建てで 4.4%下落した。この結果、年初来の上昇率は 7.2%に低下した。世界の不動産株
は 7 月に 0.3%値上がりし、8 月も 1.5%続伸したものの、9 月には
6.2%反落。米国の金利
2005
年 第 3 四半期
上昇懸念に加えて、各国の景気低迷と通貨下落が逆風になった。米ドル建てで、7-9 月期に
は北米市場が 3.4%の下落にとどまって最も高いパフォーマンスを記録した。北米市場に次
いで堅調なパフォーマンスを示したのはアジアで、4.9%下落した。欧州は 7.2%の下落と
なった。しかしながら、現地通貨建てではアジアが 0.2%値上がりして最も高いパフォーマン
スを示した。欧州は 0.5%下落したアジアに次いで堅調なパフォーマンスとなった。北米は
3.1%値下がりしてパフォーマンスが最も低迷した。

今日の低リターン環境を踏まえて不動産の期待利回りの低下を受け入れる投資家が増える
につれ、優良不動産資産の投資価値は全般に復調を続けた。総じて事業ファンダメンタルズ
の改善を上回るペースで引き続き各種資産クラスへ資金が流入し、ほとんどの優良市場で
大幅な「株式の壁」が資産価額を史上最高値に押し上げた。不動産会社の業績には一部に
明るさが見え始め、とりわけ米国の一部のセクター(賃貸住宅、ホテル、倉庫、ハイエンド・
Global Property
モール)が堅調な業績を記録した。ロンドンのオフィス市場も底堅く推移した。欧米市場の優
良資産の投資価値は 2007 年に達成した天井をほぼ回復したか、天井を凌いだ。2014 年
7-9 月期には優良資産の利回りに改めて下方圧力がかかったもようだ。この一因は、13 年
7-12 月期を通じてほぼ横ばいとなっていたソブリン債利回りが、再び低下に転じた点にある。
2013 年 5 月半ばに米 FRB 議長が初めて量的緩和縮小に言及して以降、ソブリン債利回り
の低下にはブレーキがかかっていた。日本では、日銀が欧米諸国と足並みを揃えて量的緩
和に舵を切った。これを受けて、資産リフレ・シナリオを裏付ける取引事例が増えるとともに、
事業ファンダメンタルズの改善が鮮明になってきた。他のアジア市場では、キャップ・レートの
圧縮はさほど顕在化しておらず、キャッシュフローの改善が資産価額回復の最大の牽引役と
なっている。オーストラリアでは、事業ファンダメンタルズが冷え込んでいるにもかかわらず、
商業用資産は他の大半の市場よりも高い利回りを提供しているため、これらの資産に対す
る投資家の需要は依然旺盛である。機関投資家の需要は依然として概ね優良資産に集中
しているが、二番手資産の取引も増加に転じた。投資家の高利回り志向の一段の強まりと、
ファイナンスへのアクセス改善が、二番手資産の取引拡大を後押しした。欧州では、英国の
各地域で投資家の活動が活発化してきた。この背景には、ロンドン中心部の投資用物件の
不足感が強まっている事実がある。加えて、オポチュニスティックな投資家は安全性の高い
市場以外にも目を向け始めており、スペインやアイルランドなど、回復に転じた市場における
機会を模索し始めた。とりわけ欧州全域にわたる貸出条件の改善や、債券利回りの低下、
ECB が一段の緩和に動けば欧州全体の不動産利回りにさらなる低下圧力を及ぼすとの期
待感が、追い風になった。米国では、優良市場で投資家の資金投入の対象となる物件が払
底するなか、オフィス・セクターを中心に、一部の二番手都市でもキャップ・レート縮小の兆し
が浮上している。

過去数年間の特徴として、世界中の市場で前例のない規模の政策導入が行われ、資本市
場や市場センチメント、ボラティリティに大きな影響を与えたことが挙げられる。もう 1 つ特筆
3
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されるのは、欧米市場と主要アジア市場で導入されている政策に著しい違いがあり、そうし
た政策が不動産価額にそれぞれ異なる影響を及ぼしている点だ。欧米市場では、そして最
近は日本でも、景気刺激策の導入に伴い、景気が浮揚するとともに資産価額が押し上げら
れている。欧米政府が導入している刺激策は、優良商業用不動産の資産価額の大幅改善
をもたらした。ここにきて米国及び英国では短期金利上昇のタイミングについての懸念が強
2005 年 第 3 四半期
まっているが、一方、ECB による追加刺激策の導入に対する期待感も高い。対照的にアジ
アの政策当局(香港、中国、シンガポール)は、住宅市場の資産価額の急騰を抑え込む努力
の一環として、数次にわたる行政措置を導入。現在までにこうした政策はかなりの成果を上
げている。この結果、追加策不要論が台頭。さらに中国でも、経済成長に対する懸念の広が
りを受けて、一部の措置が緩和されている。しかしながらオーストラリアでは、シドニーやメル
ボルンを中心に、急速な住宅価格の上昇に対する警戒感が浮上しているため、何らかの措
置がとられる可能性がある。
FTSE EPRA/NAREIT グローバル・デベロップド・リアル・エステート・インデックスの時価総額の推移(単位:10 億米ドル)
2014 年 9 月末現在
Global Property
(10億米ドル)
1,400
1,200
1,000
地域
北米
800
600
400
200
0
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
9月末
北米
1992
15%
23%
アジア
63%
グローバル 100%
欧州
1993
1994
1995
1996
1997
1998
10%
21%
70%
100%
22%
22%
56%
100%
29%
20%
51%
100%
31%
17%
52%
100%
42%
20%
39%
100%
41%
23%
36%
100%
1999
欧州
2000
35% 40%
22% 19%
44% 41%
100% 100%
アジア
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
53%
17%
30%
100%
56%
20%
24%
100%
55%
20%
25%
100%
53%
20%
27%
100%
51%
19%
31%
100%
45%
22%
33%
100%
38%
19%
43%
100%
43%
17%
40%
100%
41%
18%
42%
100%
45%
16%
39%
100%
4
2011 2012
53%
14%
33%
100%
50%
14%
36%
100%
2013
2014
9月末
50%
15%
35%
100%
54%
16%
31%
100%
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不動産関連証券インデックス・パフォーマンス*、米ドル・ベース、2014 年 9 月末現在
インデッ クス・ウェイト
グローバル
FTSE EPRA/NAREIT グローバル ・ デベロッ プド
100.0 %
インデッ クス・パフォーマンス
地域別
-
当期
年初来
-4.4 %
7.2 %
2005 年 第 3 四半期
FTSE EPRA/NAREIT 北米
カナダ
100.0 %
-3.4 %
13.1 %
3.6
6.7
-5.4
3.6
50.0
93.3
-3.1
14.0
賃貸アパート
6.8
12.7
-2.4
20.9
学生専用賃貸アパート
0.5
0.9
-5.5
12.3
プレハブ住宅
0.5
0.9
-1.3
20.7
ショッピング・センター
4.0
7.5
-3.4
13.0
モール
7.5
14.0
-0.7
15.4
中心地区オフィス
4.2
7.9
-4.8
14.1
郊外フォイス
3.1
5.7
-6.3
7.6
特化型オフィス
1.8
3.3
0.8
22.1
産業施設
3.2
6.0
-7.6
6.1
医療施設
6.6
12.4
-3.1
14.0
ホテル /リゾート
3.9
7.3
-2.9
13.9
個人用倉庫
2.9
5.5
-2.3
15.3
分散投資型/ 金融
1.1
2.0
2.3
11.5
ネット・リース
3.9
7.3
-4.7
7.8
-7.1 %
6.4 %
米国REIT
Global Property
53.6 %
FTSE EPRA/NAREIT デベロッ プド EMEA
イスラエル
15.7 %
100.0 %
0.1
0.7
4.2
5.3
15.6
99.3
-7.2
6.4
ヨーロッパ大陸
9.4
59.9
-9.5
5.3
オーストリア
0.3
1.8
2.1
7.7
ベルギー
0.5
2.9
-6.2
2.1
フィンランド
0.2
1.4
-13.2
-2.0
フランス
1.4
8.9
-15.8
1.1
ドイツ
1.8
11.7
-2.3
13.3
ギリシャ
0.0
0.2
-4.0
25.5
イタリア
0.1
0.5
-24.9
8.2
オランダ
2.9
18.6
-10.8
5.7
0.1
0.4
21.6
24.9
スペイン
0.2
1.5
-12.8
7.4
スウェーデン
1.0
6.5
-10.8
4.1
スイス
0.9
5.5
-10.2
0.4
英国
6.2
39.4
-3.5
8.0
英国主要地区
3.5
22.5
-3.5
11.8
英国その他
2.7
16.9
-3.5
3.3
FTSE EPRA/NAREIT デベロップド欧州
ノルウェー
※
5
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インデッ クス・ウェイト
グローバル
FTSE EPRA/NAREIT デベロッ プド・ アジア
地域別
100.0 %
当期
年初来
-4.9 %
-1.0 %
-6.2
11.7
オーストラリア
6.3
20.5
香港
7.7
25.2
2005
年 第 3 四半期
2.3
7.6
香港不動産事業会社
6.4
20.8
1.6
9.1
1.3
4.3
5.9
19.8
-
-
-
-19.0
13.0
42.3
-8.8
-12.5
7.3
24.0
-11.4
-22.4
日本REIT
5.6
18.4
-4.8
6.6
ニュージーランド
0.1
0.3
-11.0
5.0
シンガポール
3.6
11.7
-3.2
5.5
シンガポール不動産事業会社
1.9
6.2
-2.7
2.5
シンガポール REIT
1.7
5.5
-3.8
9.4
香港REIT
中国不動産事業会社
※
日本
日本不動産事業会社
Global Property
30.7 %
インデッ クス・パフォーマンス
出所:FTSE EPRA/NAREIT、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
情報提供を目的としたものです。過去の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
※ スペインの年初来リターンは 2014 年 3 月 21 日以来、中国不動産事業会社のリターンは 2014 年 6 月 20 日以来です。
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推奨ポートフォリオ・アロケーション
(グローバル・ポートフォリオ、含む不動産関連証券)

7-9 月期に相対的に株価がアウトパフォームした(現地通貨建てで)ことを踏まえて、アジア
地域のオーバーウェイト幅を幾分引き下げた。アジア地域が最も高い相対価値を提供してい
2005 年 第 3 四半期
るとの見方は変わらない。最も大幅にオーバーウェイトしているのは、引き続き香港の不動
産事業会社。香港の不動産事業会社は上場株式の評価と実物不動産市場における評価が
大幅に乖離している。のみならず、他の上場不動産市場と比較しても、極めて魅力的な価値
を提供していることが、同市場を大幅オーバーウェイトする理由である。アジア地域は引き続
き最も高い相対価値を提供しているとの考えは変わらない。7-9 月期に株価は相対ベースで
アウトパフォームしたとはいえ、香港の不動産会社の株価は依然として金利上昇懸念を織り
込んでいる。また、上場不動産会社が保有する収益資産のバリュエーションも、取引にかか
わるキャップ・レートの低さを反映していない。株価が NAV に対して大幅なディスカウント水
準を付けている事実は、事業市場のファンダメンタルズの低迷と金利上昇、政治リスクの拡
大といった潜在的な下振れリスクを既に十二分に織り込んでいると判断できよう。これらの銘
Global Property
柄の株価は魅力的なリスク調整後の上値余地を提供している。しかも、香港の不動産事業
会社は極めて低いレバレッジ水準を維持していることから、バリュエーションの割安感が一段
と募る。財務体質が堅固で金利上昇の影響を受けにくいとみられることも、香港の不動産事
業会社を選好する理由。

日本の不動産事業会社は、期中の株価下落に伴い、7-9 月期には NAV に対し若干のディ
スカウントで取引された。日銀による量的緩和の実施や事業ファンダメンタルズの緩やかな
改善を背景に、資産リフレのシナリオが浮上してきた兆候を裏付ける取引が増えている。そ
れにもかかわらず、日本の不動産事業会社に対する投資家のセンチメントはネガティブだ。
経済目標達成に対する日銀と安倍政権への信頼感が揺らいでいるためだ。対照的に、7-9
月期に日本の REIT の株価は円建てで上昇し、NAV に対する大幅なプレミアムを堅持した。
日銀による追加買入れと日本の地銀による継続的な買いに対する期待が追い風になった。
注目すべきなのは、主要不動産事業会社の資産ポートフォリオは、主に東京都心部の優良
オフィス資産で構成されているため、事業ファンダメンタルズ改善の恩恵を受ける点である。
これに対して REIT は概ね質の劣る資産ポートフォリオを抱えている。こうした状況を考えれ
ば、日本の不動産事業会社は REIT の実勢バリュエーションと比較して、はるかに妙味が大
きいと思われる。日本では、不動産事業会社を引き続きオーバーウェイトする一方、REIT を
アンダーウェイトする。最後に、東京は 2007 年以降、ピーク水準に対し大幅なディスカウント
を付けている唯一の主要オフィス市場であることは、注目に値しよう。

オーストラリアでは、不動産ファンダメンタルズが依然冴えず、景気が減速するに伴って、
キャッシュフローが一段と低迷する懸念がある。しかしながら、商業用資産に対する投資家
7
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2014 年 7-9 月期
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の需要は旺盛だ。他の大半の市場と比べて利回りが高いためで、これが資産価額を下支え
するとともに、キャップ・レートの一段の圧縮見通しを提供している。オーストラリアの REIT
は 7-9 月期末時点で NAV に対し若干のディスカウントとなったが、香港や日本の不動産事
業会社と比べ、依然としてはるかに魅力に乏しい。

2005 年 第 3 四半期
欧州では、7-9 月期末に英国の不動産株は公表 NAV に対し約 1%のディスカウントとなった。
一方、大陸欧州の不動産株のバリュエーションは 7-9 月期末に公表 NAV に対し 7%のプレ
ミアムとなった。ここで、両者の間には依然として大きな違いがある。英国のバリュエーション
が依然として天井から資産価額の大幅調整(商業用施設の下落が主因)を反映する公表
NAV に基づいているのに対し、大陸欧州のバリュエーションは 2008 年の信用危機勃発以
来わずかな資産価額の下落しか反映していない公表 NAV に基づいていることである。しか
も、英国企業はより明るい景気見通しが追い風になるうえ、大陸欧州の企業よりも財務体質
が健全で、負債比率が低く、平均的に債務の満期もより長い。したがって、欧州の不動産企
業は上値余地が乏しいとみられるため、英国の不動産株よりも魅力に欠けると考える。以上
により、欧州の中では引き続き英国をオーバーウェイトする。欧州全体に対しては、期中に株
Global Property
価がアウトパフォーム(現地通貨建て)した点を踏まえて、アンダーウェイト幅を若干引き上げ
た。

北米市場については、7-9 月期末に米国 REIT 市場は NAV とほぼ等しくなった。7-9 月期に
株価が低迷したことを反映させて、アンダーウェイト幅を小幅引き下げた。優良資産の資産
価額は完全に回復し、平均的に見て今や 2007 年半ばに達成した天井を 10%以上凌いで
いる。今日の低利回り環境において、投資家の間で期待収益率の低下を受け入れる空気が
強まり、不動産価額を引き続き下支えしている。しかしながら 4-6 月期から 7-9 月期にかけ
て、不動産価格の上昇が改めて加速したもようだ。業績改善、優良資産に対する投資家の
根強い需要、低水準の期待収益率を受け入れる機運が続いていることなどが牽引役となっ
た。2013 年 5 月半ばに米 FRB 議長が初めて量的緩和縮小に触れて以降、2013 年 7-12
月期を通じて不動産価格は足踏み状態が続いていたが、改めて上昇に転じた格好だ。優良
資産に対する投資家の需要が極めて強いことを示す兆候も依然として認められる。現在の
REIT セクターのバリュエーションは、中核不動産セクターと金融会社/配当指向のセクター
とのバリュエーションの大幅な乖離を反映している。ちなみに前者(賃貸住宅、モール)は
NAV に対してディスカウントで取引されている一方、後者(ヘルスケア、ネット・リース)は
NAV に対して大幅なプレミアムで取引されている。歴史的に、キャップ・レートの高い資産が
大幅なプレミアムで取引されるのは異例であることに留意したい。北米市場では、引き続きカ
ナダをアンダーウェイトする。不動産各社のポートフォリオの質及びキャッシュフローの伸長
見通しと比較して、バリュエーションが魅力に欠けることによる。
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モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社
2014 年 7-9 月期
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ポートフォリオ・アロケーション*、米ドル・ベース、2014 年 9 月末現在
当期
地域
推奨配分
前期
ベンチマーク・
ウェイト
リターン
推奨配分
ベンチマーク・
ウェイト
2005 年 第 3 四半期
北米
51.0 %
53.6 %
-3.4 %
50.5 %
53.5 %
欧州
13.5
15.7
-7.2
13.9
15.8
アジア
35.5
30.7
-4.9
35.6
30.7
合計
100.0 %
100.0 %
-4.4 %
100.0 %
100.0 %
Global Property
出所:FTSE EPRA/NAREIT
*情報提供を目的としたものです。現在の市場環境によるもので、予告無しに変更される場合があります。過去の実績は、
必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
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モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社
2014 年 7-9 月期
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北米
米国
概況

2005 年 第 3 四半期
米 REIT 市場は 2014 年 7-9 月期に 3.1%下落した。とはいえ年初来でみれば、依然
14.0%の値上がりとなっている。REIT は 7 月は横ばい、8 月は 3%上昇した後、9 月は 6%
反落。アナリストは、実物不動産市場の価値の改善が続いていることを指摘しているものの、
金利上昇に対する懸念や、期の後半に大量の株式供給が行われたことが、株価に下押し圧
力を及ぼした。REIT セクターでは 2013 年半ばにも、金利上昇見通しが広がるなど同様の
不安が逆風となったことを、思い起こしてもらいたい。実物不動産市場では中核資産に対す
る投資家の力強い需要を示す取引事例が増えており、バリュエーションも期待収益率の低下
を投資家が受け入れたことを示唆する水準となっている。主にこうした状況と投資家の利回
りの模索が、引き続き REIT 株の値動きを突き動かしている。

中核不動産の資産価額は完全に回復し、平均的に見て今や 2007 年半ばに達成した天井を
Global Property
10%以上上回っている。今日の低利回り環境において、投資家の間で期待収益率の低下を
受け入れる機運が高まり、不動産価額を引き続き下支えしている。4-6 月期から 7-9 月期に
かけて、不動産価額の値上がりが再加速したもようだ。企業の業績改善や優良資産に対す
る投資家の根強い需要に加え、投資家が期待収益の低下を引き続き受け入れていることが、
その背景にある。2013 年 5 月に米 FRB 議長が初めて量的緩和に触れたことを契機に、概
ね横ばいで推移した 2013 年 7-12 月期を経て、不動産価額が再び上昇に転じた格好だ。優
良資産に対する投資家の極めて旺盛な需要を示す証左も引き続き散見されている。投資家
はこれらの資産に関する限り、6%程度のレバレッジなしのリターンを目標にしているようであ
る。優良資産の獲得競争が極めて熾烈になるにつれ、資産獲得競争に敗れた業者が現在
の時価で果たして 6%のリターンが達成できるのかと疑問を呈するのを、しばしば耳にするよ
うになってきた。さらに、資産獲得競争の激化に伴って、キャップ・レートとファイナンス・コスト
の格差が大きい一部の市場の二番手物件への関心も高まりつつある。

7-9 月期末に開催された業界会議では、テナント需要の増大やキャップ・レートが過去最低
水準に近いことを挙げて、各社とも事業トレンドは明るいと述べていた。一部の企業は価格
が上がり過ぎて買収市場からはじき出されたとして、開発活動に力を入れる傾向が高まって
いる。大半の REIT が引き続き外部成長の機会を追求する中で、伝統的なセクターの REIT
は総じて買収から開発・再開発活動にシフトした。2014 年に入って買収活動が減速した影に
は、開発プロジェクトが卓越したリターンを生み出していることがある。加えて、企業が選別姿
勢を強化し、極めて優良な資産の買収に焦点を当てたことや、資産の獲得競争が激しさを増
したことも、背景要因。開発・再開発活動は賃貸住宅部門で最も広範に見られているが、他
のほとんどの分野でも一部の REIT は活動を活発化させている。全体として見れば開発活
動は依然低水準ながら、優れた資本アクセスや開発能力を映して、REIT が主導権を握って
いる。対照的に、金融関連 REIT は引き続き積極的な買収活動を繰り広げている。この要因
10
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社
2014 年 7-9 月期
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として、株価バリュエーションの高騰と合わせて、これらの非中核資産を巡る機関投資家の
争奪戦はさほど激しくないことが指摘できる。事実、7-9 月期に実施された最大のエクイティ・
ファイナンスは、またもや買収及び開発資金の調達を目的とするヘルスケア・セクターでの案
件だった(Health Care REIT:HCN が 11 億ドルのエクイティ・ファイナンスを実施)。だが、2
番目に大型の案件は賃貸住宅セクターにおけるディール(AvalonBay Communities:AVB
2005 年 第 3 四半期
が 8 億ドルのエクイティ・ファイナンスを実施)だった。目的は開発資金の調達。REIT は今も
魅力的な資本に容易にアクセスできる恵まれた立場を利用して、引き続き外部活動に関わる
資金の大半を、起債や株式発行により調達している。7-9 月期の株式発行額は 56 億ドルと
なり、4-6 月期の 67 億ドルから減速した。ちなみに 1-3 月期は 25 億ドルのスローなペース
だった。

7-9 月期の株式発行額は、13 年 7-12 月期の四半期平均ペース約 40 億ドルを上回った一
方、過去最高となった 13 年 1-6 月期の約 100 億ドルには届かなかった。7-9 月期の無担保
社債の発行額は 65 億ドルとなり、4-6 月期の発行額 84 億ドルには届かなかったものの、13 月期の 45 億ドルは凌駕した。ちなみに 2013 年の年間合計額は 270 億ドルと過去最高に
達した。調達資金は買収による外部成長に向けられたほか、低金利の恩恵を享受するととも
に満期を先送りする目的で、既存債券の借換えに充てられた。REIT はまた、ポートフォリオ
Global Property
全体の質の向上とバリュエーション改善を果たすため、収益の希薄化をモノともせずに、非
中核資産の売却にも意欲的に取り組んだ。

7-9 月期、REIT 市場は小幅下落した。主要セクターの中では賃貸住宅と商業施設 REIT が
アウトパフォームし、オフィス REIT は指数をアンダーパフォームした。賃貸住宅セクターがア
ウトパフォームしたのは、2013 年に大幅にアンダーパフォームしていた反動もあって、投資
家のセンチメントが改善を続けたことによる。投資家は明るい事業ファンダメンタルズや新規
供給が高水準ながら増加にブレーキがかかったことを大きく好感しているもようである。オ
フィス・セクターでは、中心商業地区(CBD)に立地する資産に主要なエクスポージャーを有
する REIT と、二番手の CBD 及び郊外型オフィスへのエクスポージャーを持つ REIT はアン
ダーパフォームした。一方、特殊オフィス・セクターは指数をアウトパフォームした。商業施設
REIT もアウトパフォームした。商業施設 REIT の中ではモール REIT がアウトパフォームし
た一方、ショッピング・センターREIT はアンダーパフォームした。ヘルスケア REIT は指数並
みのパフォーマンスとなった。中小セクターでは、倉庫セクターとホテル・セクターがアウトパ
フォームし、産業セクター、ネット・リース(純粋な賃料に加えて、税金費用を賃借人が負担す
る賃貸借形態)セクターは指数をアンダーパフォームした。

主な投資戦略
・ ホテルセクター、都心部のオフィス、アパート、モール等のオーバーウェイト
・ ネット・リース、ヘルスケア、小規模ショッピング・センター、スペシャルティー・オフィス等の
アンダーウェイト
11
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2014 年 7-9 月期
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不動産関連証券のバリュエーション

優良資産の資産価額は完全に回復し、平均で今や 2007 年半ばに達成した過去最高水準
を 10%以上上回っている。これに伴い、7-9 月期末に REIT 市場は全体として、純資産価額
(NAV)と等しいかほぼ等しくなった。留意すべきなのは、中核不動産セクターと金融会社/
2005 年 第 3 四半期
配当指向のセクターのバリュエーションが大幅に乖離している点。前者(賃貸住宅、モール)
は NAV に対してディスカウントで取引されているのと対照的に、後者(ヘルスケア、ネット・
リース)は NAV に対して大幅プレミアムを付けている。ここで歴史的に、高キャップ・レート資
産が大幅なプレミアムで取引されるのは異例なことが注目される。
Global Property
米国:市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* 2014 年 9 月末現在
出所:Green Street Advisors、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
*情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。
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2014 年 7-9 月期
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カナダ
概況

2005 年 第 3 四半期
カナダの不動産株の 7-9 月期のリターンは米ドル建てで-5.4%となった。しかしながら、カナ
ダ・ドルが対米ドルで上昇したことを映して、現地通貨建てではわずか-0.8%の下落にとど
まった。その結果、年初来のリターンは 3.6%(カナダ・ドル建てでは+8.9%)となった。期中
の株価下落は金利の上昇が不動産業界にネガティブな影響を及ぼすとの懸念が逆風となっ
たもようだ。カナダ・ドルの下落も株価下落に拍車をかけた。7-9 月期の株式発行額は 7 億
カナダ・ドルとなった。年初来の発行額は 16 億カナダ・ドルにとどまって、2012 年の 68 億カ
ナダ・ドル、2013 年の 47 億カナダ・ドルを大幅に下回った。株式市場からの資本調達額が
このように減少した原因として、株価のバリュエーションの上昇や投資機会が限定的なことに
加え、資金調達の代替手段として、企業が非中核資産の売却に一段と前向きになったことが
挙げられる。さらに、極めて好ましい信用状況を背景に、過去最高の無担保社債が発行され
たことも、エクイティ・ファイナンス減速の一因となった。カナダの上場不動産企業は 2014 年
7-9 月期に 16 億カナダ・ドルの無担保社債の発行を行った。年初来の発行額は 56 億ドルと
Global Property
なり、2013 年通期の発行額 40 億カナダ・ドルを上回った。7-9 月期末にはカナダの不動産
株は NAV に対し約 53%のディスカウントとなった。カナダの不動産会社の場合、NAV は
キャップ・レートの圧縮を牽引役とする資産価値の力強い改善を、すでに反映していることを
銘記したい。
13
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2014 年 7-9 月期
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欧州
概況

2005 年 第 3 四半期 し
欧州不動産株は 7-9 月期に米ドル建てで 7.2%下落したが、期中に米ドルが大幅に上昇
たことを反映して、現地通貨建てでは 0.5%の下落にとどまった。その結果、年初来の上昇
率は米ドル建てで 6.4%、現地通貨建てでは 13.2%となった。欧州不動産株は 7 月に
2.2%下落、8 月は 1.1%上げ戻したものの、9 月には 6.1%反落した。最も高いパフォーマ
ンスを記録したのはオーストリア、ドイツ、英国で、騰落率は米ドル建てでそれぞれ+2.1%、2.3%、-3.5%となった。パフォーマンスが最も低迷したのはイタリア、フランス、フィンランドで、
それぞれ-24.9%、-15.8%、-13.2%となった。

2014 年 1-6 月期に記録的なペースで株式発行が行われた後、7-9 月期にはエクイティ・ファ
イナンス活動が減速。とりわけ大陸欧州の発行額は 22 億ユーロにとどまった。とはいえ、年
初来 9 ヵ月間の調達額は 146 億ユーロとなり、2013 年 1-9 月の発行額 57 億ユーロを大幅
に凌いだ。2014 年 1-6 期中に 15 件の REIT が上場され、市場からの調達額は合計 48 億
ユーロに上った。これに対し、7-9 月期に完了した IPO はわずか 1 件で調達額は 3 億
Global Property
6,000 万ユーロにすぎなかった。10 月には 2 件の IPO が予定されており、調達額は 15 億
ユーロ程度に達する可能性がある。欧州の上場不動産会社による起債活動も 31 億ユーロ
に減速した。うち転換社債の発行額は 7 億 7,500 万ユーロで、第 2 四半期の水準を 35%
下回った。

欧州の商業用不動産投資額は賃貸住宅市場の減速にもかかわらず、7-9 月期も一段と増
加した。7-9 月期の投資活動は 484 億ユーロに上り、前年同期の水準を 27%、4-6 月期の
水準を 9%、それぞれ凌いだ。年初来の投資活動は 1,330 億ユーロに上り、2013 年 1-9 月
期の 1,050 億ユーロを上回った。7-9 月期には引き続き英国が欧州最大の投資市場となり、
投資額は 184 億ユーロになって前年比 24%増加した。7-9 月期には投資家は引き続きロン
ドン以外の市場での活動を活発化させ、英国で行われた全投資額の 59%がロンドン以外の
市場に向けられた。これは 2006 年以降で最も高い比率。ロンドンでは限定的な投資物件を
巡って競争が厳しさを増していることが一因だが、ロンドン以外の資産でも、優良テナントが
入居している資産に対しては投資家の確信が強まっていることも寄与した。ロンドンでは引き
続き外国勢の存在感が際立っており、7-9 月期には投資額の 72%を外国人投資家が占め
た。

大半の市場を通じて負債へのアクセスも改善を続けた。銀行の流動性及び貸出意欲が力強
く改善、その結果、価格競争が大幅に熾烈化した。さらに、CMBS 市場が息を吹き返すなど、
別の源泉からの流動性も市場に提供された。2013 年には英国の CMBS 発行額は 9 億ポ
ンドに上り、2012 年からほぼ倍増。もっとも、市場がピークとなった 2006 年の 204 億ポンド
と比較すれば微々たるものにすぎない。大陸欧州も同様に回復が遅れており、昨年のディー
ルは 51 億ユーロにとどまった。とはいえ、同市場は顕著に回復に向かっており、6 月以降に
合計 5 件、総額 20 億ユーロのディールがプライシングされた。さらに、10-12 月期には欧州
14
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2014 年 7-9 月期
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全体で数件の新規 CMBS ディールが予定されている。その中には金融危機以降、CMBS
が発行されていなかった国のディールも数件含まれている。

欧州投資市場の活況、史上最低の債券利回り、貸出条件の改善を受けて、7-9 月期には欧
州数市場で優良物件の利回りがさらに低下。平均で欧州の優良オフィスの利回りは 12bps
低下した。7-9 月期には債券利回りも欧州全体でそれ以上に大幅な低下を見せ、欧州全体
2005 年 第 3 四半期
で利回りが平均 40bps 低下した。その結果、期中に欧州の優良オフィスの利回りと国債利
回りの平均スプレッドは 28bps 拡大、7-9 月期末には同スプレッドは 299bps に達し、過去
最高を更新した。これは過去 10 年間の平均 122bps の 2 倍以上に相当する。現在の大幅
なスプレッドを踏まえると、債券利回りが引き続き低位にとどまるならば、優良物件の利回り
は一段と縮小する可能性がある。さらに、借入がより容易になり、投資家の需要が最優良物
件以外にも広がりを見せている点を勘案すると、現在過去最高水準をつけている優良資産
と二流資産の利回りスプレッドは、今後縮小に向かうと予想される。

7-9 月期には英国上場不動産市場は米ドル建てで 3.5%下落し(ポンド建てで 1.8%上昇、
ユーロ建てで 4.6%上昇)、年初来では米ドル建てで 8.0%の値上がりとなった(ポンド建て
で 10.4%上昇、ユーロ建てで 17.8%上昇)。英国不動産株は 7-9 月期末現在、公表 NAV
に対し約 1%ディスカウントとなった。12 月末に決算期を迎える英国の不動産会社の中間決
Global Property
算は予想を上回り、コンセンサス NAV 予測の上方修正につながった。とりわけ注目される
のは利回りの大幅な低下と賃料の成長見通しの改善。経営陣は楽観的な声明を発表、ロン
ドン以外の市場においても賃貸市場や投資市場が堅調に推移し、資産価額が引き続き伸び
ていると報告した。2014 年 6 月までの 6 ヵ月間に NAV は加重平均ベースで 8.7%増加し、
2013 年 12 月までの 6 ヵ月間における 7.9%増加から加速した。平均して不動産企業は
2014 年 6 月までの 6 ヵ月間に NAV が 6.3%上昇し、同じ時期に資産価額が 5.8%上昇し
た IPD 指数を上回った。

英国不動産市場は流動性改善と広範な景気回復に牽引されて上昇基調を維持した。投資
家のセンチメントと賃貸需要が引き続き改善するに伴い、3 部門すべてにわたって資産価額
が上昇した。取引事例ではなく不動産評価額を基にした投資用不動産のデータバンクである
インベストメント・プロパティ・データバンク(IPD)指数によれば、7-9 月期に資産価額が
3.2%伸び、第 1 四半期に 2.3%増加、第 2 四半期に 3.5%増加した流れを引き継いだ。79 月期にはロンドン中心部のオフィスが引き続き最大の牽引役を果たし、期中にオフィス資
産の価額は 4.0%増と再び最も高い伸びを記録した。次に高い伸びを示したのが産業用資
産と商業用施設で、資産価額はそれぞれ 3.9%と 2.4%増加した。利回りの低下が引き続き
リターンを押し上げたが、賃貸住宅市場の好転もパフォーマンスを後押しした。7-9 月期に賃
貸住宅の賃料は 0.8%上昇、とりわけ 9 月は 2008 年 8 月以来初めて賃料が上昇に転じた
(+0.3%)。

IPD によれば、7-9 月期に当初利回りは 14bps 低下して 5.57%となった。それでもまだ当初
利回りは 2007 年 6 月の底を 96bps 上回っている。期中に 10 年物英国債利回りが 25bps
低下したのに伴い、7-9 月期末の不動産当初利回りと 10 年物英国債利回りとのスプレッド
は 314bps に拡大した。7-9 月期末現在、利回りスプレッドは長期平均をいまだに 200bps
以上上回っている。さらに、賃料の一段の上昇や、景気回復を受けて投資家の需要が引き
15
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2014 年 7-9 月期
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続き伸びている点を踏まえるならば、不動産利回りは低下傾向が続くと考えて良いだろう。と
りわけ大きな恩恵を享受するとみられるのが、高利回りの二流資産。現在過去最高水準に
拡大している優良資産の利回りと二流物件の利回りの格差は、今後縮小に向かうものと予
想される。

大陸欧州の不動産株は 7-9 月期に米ドル建てで 9.5%値下がりし(現地通貨建てで 2%下
2005 年 第 3 四半期
落)、年初来の上昇率は 5.3%(同 15.1%上昇)となった。7-9 月期末に大陸欧州の不動産
株のバリュエーションは公表 NAV に対しおよそ 7%プレミアムとなった。ここで留意すべきな
のは、英国の不動産株との間には今も大きな相違が存在することだ。英国の不動産株のバ
リュエーションが、今なおピーク水準からの資産価額の大幅な下落(主に商業用施設の下落
を反映)を反映した公表 NAV に基づいているのに対し、大陸欧州の不動産株のバリュエー
ションは、2008 年の信用危機の勃発以降わずかな資産価額の下落しか反映していない公
表 NAV に基づいている。しかも、英国企業は明るい景気見通しが追い風となるうえ、大陸欧
州の企業よりも財務体質が健全で、負債比率が低く、平均的に債務の満期もより長い。この
ような観点から、欧州の不動産企業は上値が限定的だとみられるため、英国の不動産株よ
Global Property
りも依然として魅力に欠けると考える。

主な投資戦略
・ 英国のオーバーウェイト
・ ベルギー、フランス、オランダ等のアンダーウェイト
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2014 年 7-9 月期
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欧州主要オフィス市場賃貸料騰落率*
都市
2011年
2012年
2013年
2014年
1-3月
ロンドン・シティ地区
22.2 %
ロンドン・ウェストエンド地区
17.9
7.3
0.0
10.5
0.0
7.1
10.6
-7.2
-7.8
3.5
-2.9
0.0
0.0
6.1
ミラノ
4.0
1.9
-5.7
-10.0
ストックホルム
8.1
5.0
4.8
マドリッド
-8.4
-4.6
バルセロナ
-8.3
-3.9
0.0
17.0
パリ中心地区
フランクフルト
アムステルダム
ブリュッセル
欧州全域



Global Property
2010年
5.4 %
0.0 %
5.3 %
4-6月
0.0 %
7-9月
0.0 %
0.0 %
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
4.4
0.0
2.3
0.0
0.0
-5.8
0.0
0.0
1.0
2.0
-2.7
-4.2
0.0
0.0
1.4
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
3.0
-3.2
-5.0
0.0
0.0
0.0
-3.5
-1.5 %
0.1 %
1.1 %
0.4 %
4.0 %
3.6 %
2005 年
0.0 第 3 四半期
0.0
0.0 %
2014 年 7-9 月期、欧州のプライムオフィス賃料は前期比変わらず。
主要都市の賃料ではアムステルダム(+3.0%)、ミラノ(+4.4%)、マドリッド(+2.0%)で上昇。
一方、デュッセルドルフ(-3.6%)、ブリュッセル(-3.5%)、リヨン(-3.2%)の賃料は下落。
欧州主要オフィス利回りと 10 年債利回りの比較*
主要オフィス利回り
都市
6月末
9月末( a )
10年債利回り(ご参考)
当期
変化幅
9月末( b)
当期
変化幅
9月末
スプレッ ド
( a ) -( b)
ロンドン・シティ地区
4.50 %
4.50 %
0.00 %
2.43 %
-0.25 %
2.08 %
ロンドン・ウェストエンド地区
3.75
3.75
0.00
2.43
-0.25
1.33
パリ中心地区
4.00
4.00
0.00
1.29
-0.42
2.72
フランクフルト
4.70
4.65
-0.05
0.95
-0.30
3.70
ミラノ
5.15
4.80
-0.35
2.33
-0.51
2.47
ストックホルム
4.00
4.00
0.00
1.49
-0.36
2.51
マドリッド
5.25
5.00
-0.25
2.14
-0.52
2.86
バルセロナ
6.00
5.50
-0.50
2.14
-0.52
3.36
アムステルダム
5.45
5.45
0.00
1.09
-0.39
4.36
ブリュッセル
5.75
5.75
0.00
1.22
-0.48
4.54
平均
4.86 %
4.74 %
1.75 %
-0.40 %
2.99 %
-0.12 %
 当期不動産利回りは 4.74%(対前期比-0.12%)であり、10 年債利回りに対するスプレッドは
過去 10 年間の平均スプレッドである 1.22%を引続き大きく上回る過去最大となる 2.99%(対前期比
+0.28%)。
出所:Jones Lang LaSalle、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
*情報提供を目的としたものです。現在の市場環境によるもので、予告無しに変更される場合があります。過去
の実績は、必ずしも将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
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2014 年 7-9 月期
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市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* 2014 年 9 月末現在
Global Property
2005 年 第 3 四半期
出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
汎ヨーロッパ:英国、フランス、スペイン、スウェーデン、フィンランド、オランダ、イタリア、オーストリア、ドイツ、スイ
ス、ベルギーを含みます。ヨーロッパ大陸には英国を含みません。
*情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。
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2014 年 7-9 月期
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アジア
概況

2005 年 第0.2%値上が
3 四半期
7-9 月期にアジアの不動産株は米ドル建てで 4.9%値下がり(現地通貨建てで
り)した結果、年初来のリターンは-1.0%(同+1.3%)となった。株式市場の乱高下と 9 月の
通貨の下落が 7-9 月期のリターンの足枷となった。中国と日本のマクロ・データがマチマチ
だったうえ、日銀が追加緩和に踏み切らないとの懸念が広がり、投資家の先行き不透明感
が高まってリスク回避へと向かわせた。米国が早期に利上げに動くとの不安も、こうした流れ
に拍車をかけた。
各国の不動産市場の動向

日本
日本の不動産事業会社は 7-9 月期に米ドル建てで 11.4%(円建てで 4.1%)値下がりした。
Global Property
主に円安と、経済目標達成に対する日銀と安倍政権への信頼感が揺らぐなどのマクロ問題
が足枷となった。日本の REIT(J-REIT)は米ドル建てで 4.8%下落(円建てで 3%値上がり)
し、不動産事業会社をアウトパフォームした。日銀による追加買入れ及び日本の地銀による
継続的な買いに対する期待感が追い風となった。7-9 月期には J-REIT による IPO は行わ
れなかった。J-REIT による増資は 1,650 億円に達し、4-6 月期の 1,110 億円を凌いだ。7-9
月期の都心 5 区の優良物件(グレード A)の空室率は 4.8%で前期比横ばいとなった。新規
供給は緩やかで、JP タワーの 7,000 坪の賃貸契約をはじめとする旺盛な需要により吸収さ
れた。昨年、不動産会社は丸の内地区の優良物件で賃料が年初来伸び悩んでいるのは、
JP タワーの賃貸状況が捗々しくないためだと示唆していた。だが JP タワーの重しが外れた
今、市場は東京都心部の中核地域の賃料の上昇ペースに焦点を合わせている。不動産会
社は新規賃貸契約時に提示賃料を既存テナントの契約終了時の水準の 10-20%に引き上
げており、新たなテナントと賃貸契約を結ぶ際に、こうした賃料を達成するのにある程度成功
している。しかしながら、テナントの入れ替えは概ね少ない。既存テナントの契約更新の際の
賃料引き上げははるかに小幅で、これまでのところ、全体として 3%程度の値上げを達成し
ているだけだ。賃貸物件のキャッシュフローは同一基準ベースで低下を続けている。これは、
over-rented リース(現在の賃料が実勢賃料を上回っている物件)のネガティブな影響が、賃
料引き上げのポジティブな寄与を上回っているためだ。7-9 月期末に日本の不動産事業会
社は NAV に対し若干のディスカウント水準で取引された。一方、J-REIT は引き続き NAV に
対して大幅なプレミアムを付けている。しかしながら、主要なオフィス市場の中で、資産価格
が 2007 年以降、天井から大幅なディスカウントを付けているのは東京だけであることに注
目したい。

香港
香港の不動産事業会社は 7-9 月期に米ドル建てで 1.6%上昇した。オフィス市場における事
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2014 年 7-9 月期
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業ファンダメンタルズの安定と、住宅セクターにおける取引高及び販売価格が予想以上に堅
調だったことが追い風になった。「中環を占拠せよ(オキュパイ・セントラル)」運動が 9 月後
半にネガティブな影響を及ぼした。香港中環では、好調な物件の正味入居動向を受けて、79 月末の空室率は 3.6%に低下した。引き続き中国の金融機関の事業拡大が中環の賃貸
需要の大半を牽引した。中環地区以外では、湾仔/銅鑼湾、香港東、九龍東でも物件の正味
2005 年 第 3 四半期
入居が増加。7-9 月期に中環地区のグレード A オフィス市場の賃料は約 0.4%値上がりした。
中環地区以外では、九龍東を例外にすべてのオフィス市場で賃料が約 0.5%伸びた。九龍
東は同じ期間に 0.2%下落した。7-9 月期にオフィス投資活動は大幅に活発化し、フロア全
体を占める物件やブロック全体を占めるビルの取引が、例えば九龍東では 1 平方メートル
当たり 12,400 香港ドル、香港中環では 20,000 香港ドルといった高いバリュエーションで取
引されている。取引のキャップ・レートは概ね 3%前後だった。

住宅部門では、7-9 月期にデベロッパーによる新築物件の売り出しが大々的に行われた。売
り出しは市場に好意的に受け止められた。物件取引は 4-6 月期に 78%増加した後、7-9 月
期も新築物件については 59%、中古物件は 15%それぞれ増加した。需要の中心となって
いるのは概ね最終ユーザーで、とりわけ借り手が住宅価額の 9 割まで住宅ローンを借りら
れる、1 件当たり 700 万香港ドル以下の住宅に対する需要が旺盛だ。物件取引動向は明る
Global Property
いが、こうした水準が持続可能かどうか、あるいは取引高のうちどの程度が需要の積み上が
りによるもので、どの程度が 2013 年 4-6 月期に導入された政策と行政措置の相乗効果に
よる需要先取りの影響かは、定かではない。流通市場における住宅用不動産価格を反映す
る Centaline 住宅価格指数は 4-6 月期に 3.4%上昇した後、7-9 月期にも 5.8%上昇し、年
初来の上昇率は 7.6%に達した。一部の投資家は、中古物件の年初来の大幅な値上りを受
けて、政府がさらなる住宅市場抑制策を導入するのではないかと懸念している。

7-9 月期末に香港の不動産事業会社は NAV に対して約 35%ディスカウント水準を付けて
おり、絶対的にも相対的にも、アジアのみならずグローバル・ベースで最も高い価値を提供し
ている。事業ファンダメンタルズの軟化、金利上昇、政治リスクの拡大といった様々なリスク
を考慮してもなお、こうした極端なディスカウントを正当化するのは困難である。香港の不動
産事業会社の株価は、依然として金利上昇に対する懸念を織り込んでいる。また、上場不動
産会社が所有している収益物件のバリュエーションも、取引キャップ・レートの低下を反映し
ていない。香港の不動産事業会社はレバレッジ水準が極めて低い事実が、バリュエーション
の割安感を一層募らせている。

シンガポール
シンガポールの不動産事業会社は、7-9 月期に米ドル建てで 2.7%値下がりした(シンガ
ポール・ドル建てで 0.5%下落)。小売りや産業部門の見通し軟化と住宅部門の一段の悪化
が嫌気された。シンガポールの REIT は米ドル建てで 3.8%値下がりした(シンガポール・ド
ル建てで 1.6%下落)。厳しさを増す事業ファンダメンタルズと米国の金利上昇に対する投資
家の懸念が逆風になった。オフィス市場では、7-9 月期は正味入居が引き続き伸びた。テナ
ントの需要は主に中核の CBD 地区に集中している。中核の CBD オフィスの空室率は
3.4%に改善し、グローバル金融危機以前の水準に戻った。これに対し、CBD の周辺地区で
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は正味入居がややマイナスとなった。周辺都市の各オフィス市場では正味入居が若干プラス
となった。CBD の周辺地区及び周辺都市の各オフィス市場の空室率はそれぞれ 5.6%と
2.6%となった。7-9 月期には底堅い需要と緩やかな新規供給を背景に、優良(グレード A)オ
フィス物件の賃料は 3.3%値上がりした。7-9 月期にはオフィス投資市場の取引高は 18 億
シンガポール・ドルに達した。住宅セクターでは、7-9 月期に民間住宅取引は 58%減少した。
2005 年 第 3 四半期
2014 年に需要が減速したのは、政府が導入した政策措置の影響である。需要低迷に加え、
販売期間延長に対する追加ペナルティの支払いを避けるため、売れ残り在庫の払拭を優先
したい思惑から、デベロッパーはほとんどの新規プロジェクトの開始を手控えた。都市再開発
庁(URA)が発表している民間住宅価格指数によれば、民間住宅価格は 1-3 月期の 1.3%
下落、4-6 月期の 1.1%下落に続いて 7-9 月期も 0.7%続落した。株価が事業ファンダメンタ
ルズの悪化とマクロ環境の軟化を織り込むに伴い、シンガポールの不動産事業会社と REIT
は NAV に対してディスカウントで取引された。

オーストラリア
オーストラリアの REIT は、7-9 月期に米ドル建てで 6.2%下落した(豪ドル建てで 1.2%上
昇)。豪ドル安及び経済全般の軟化に加えて、住宅市場の不均衡を鎮静化させるため豪準
Global Property
備銀行(RBA)は恐らく何らかの措置を導入するとの懸念が、ネガティブに作用した。オフィス
市場では 7-9 月期に全豪ベースの空室率は 4-6 月期比 0.2%上昇して 12.4%に達し、
1997 年以来最も高い水準となった。パース及びブリスベーンの冷え込みが響いた。7-9 月
期にはシドニーの CBD の空室率は 12.0%となって、4-6 月期の 12.6%から低下した。シド
ニーのサブリース物件の空室率は顕著に改善した。今後 12 ヵ月間の供給見通しも引き続き
かなり抑制されている。しかも、シドニーの CBD にはすでに市場から引き揚げられたり、今
後 3 年以内に住宅もしくはホテルへの転用が決まっていて、市場から引き揚げられる予定
のビルが多数ある。そうしたビルに入居していたテナントは他のビルに移ることを余儀なくさ
れるため、全体の空室率に下押し圧力を及ぼす可能性がある。メルボルンの CBD では 7-9
月期に空室率が 10.0%となり、4-6 月期の 10.3%から小幅低下した。空室率は 2014 年 46 月期にようやく天井を付けたもようで、CBD 以外に立地するビルのテナントが、魅力的な
賃料にひかれて CBD のオフィス市場に移転してくるに伴い、正味入居動向は堅調である。
しかしながら、既存 CBD のテナントからの有機的な成長は依然欠如したままであり、メルボ
ルンのサブリース物件の空室率は 7-9 月期にじり高となった。住宅市場では、五大都市の
住宅価値は 7-9 月期に 2.9%上昇し、年初来では 6.3%の値上がりとなった。シドニーとメル
ボリンは引き続きとりわけ力強い成長を続けており、住宅価値は前年比それぞれ 14.3%と
8.1%の上昇となった。RBA は住宅価格の急騰を懸念し、国内投資家及び海外の買い手に
対する住宅ローンの抑制策の導入を検討しているという。7-9 月期末にオーストラリアの
REIT は NAV に対し若干のディスカウントとなった。

主な投資戦略
・ 香港、日本の不動産事業会社等のオーバーウェイト等
・ J-REIT、シンガポール、オーストラリア等のアンダーウェイト等
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市場価格/NAV プレミアムまたはディスカウントの推移* 2014 年 9 月末現在
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出所:モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
*情報提供を目的としたものです。予告無しに変更する場合があります。

香港の不動産事業会社は当該地域における実物不動産市場のファンダメンタルズおよび
NAV の評価水準を勘案すると、非常に割安感が強いと思われる。

日本の不動産事業会社は J-REIT に対して引続き割安感が強く投資妙味が高いと思われる。
東京・主要五区の優良物件は、今後も賃料及び空室率の改善傾向が続くと推察される。
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重要事項
本資料は、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのリアル・エステート運用チー
ムによる 2014 年 9 月末現在の見通しに基づくものです。市場および経済状況により予告無
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しに変更することがあります。
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行したレポートを邦訳したものです。邦訳に際してその解釈や表現に細心の注意を払っておりますが、邦訳
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第410号
一般社団法人投資信託協会会員、 一般社団法人日本投資顧問業協会会員
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