確率統計三章 「大数の法則」 カジノがかならず勝つ理由 カジノで勝負する客 • 一回一回の賭けでは,勝つ人もいれば,負け る人もいる. • 大金持ちになる人もいれば,破産する人もい る. • 一日中賭け続ける人もいれば,ほんの数分 で去ってゆく人もいる. カジノは着実に利益をあげる • 個々の客が儲けたり,損をしたりすることはあ るが,それは賭けの回数が少ないからである. • カジノの営業成績全体は,個々の賭けが無 数に積み重なった結果であるということだ. • カジノは,様々な種類の賭けを客に提供する が,どれも少しだけカジノに有利にできている. • つまり,カジノの理論的な勝率が5割を少し超 えているならば,数多くの賭けをするとき,カ ジノが実際の勝つ割合は,まず間違いなく,5 割を超える. 大数の法則 • 理想的なコインに十分な回転を与えて振り続け ると,表のでる割合は 1/2 に近づいてゆく. • 理想的なサイコロを十分な回転を与えて振り続 けるとき,6 の目の出る確率は 1/6 に近づいて ゆく. • 勝率が p の勝負を繰り返し数多く行うとき,実際 の勝利の割合は p に近づいてゆく. • 何であれ,ランダムな実験を十分な回数だけ繰 り返すと,成功の割合は,真の確率に近づいて ゆく. クイズ • 次の勝負のうち,カジノが嫌う賭けはど ちらか? – カジノの勝率が 0.52 の賭けを,掛け金 $100 で 1000 人の客がそれぞれ 100 回 行 う. – カジノの勝率が 0.52 の賭けに,一人の客 が掛け金 $10,000,000 の一発勝負を挑ん できた. 実験をしてみよう • コインを投げて表が出たら $1 もらえ,裏が出 たら $1 失う賭けを100回続ける. • 最初の持ち金を $0 として,持ち金がどのよう に変化するかを観察しよう. • 勝ちの相対度数がどのように変化するかを観 察しよう. カジノは理論的に計算できる確率が 実現するよう努力する • サイコロは,どの目も等しい確率で現れるよう, 偏りのないものを用いて,出る目に傾向の出 ないように振る. • カードはよく作られたものを,よくシャッフルし て用いる. • ルーレットは,どの数も等しい確率で出るよう に精密に作ったものを使い,ホイールを十分 回転させる. • 「大数の法則」がカジノの利益を保証する. バスただ乗りの罰金 • ヨーロッパの国の中には,バスや電車の支払 いは客の良心に任されている. • 友人のチャーリーは,乗車券が €1 で,ただ乗 りの罰金は €10 その確率は 1/20 だと推測し, 大数の法則に従えば1乗車あたり €0.5 で済 むと考えているようだ. • あなたは,交通局に罰金を €20 にするよう提 案する. 大数の法則(期待値の場合) • 同じ設定の賭けを数多く繰り返すとき,一回 当たりの利益(損失)の平均値は,賭け1回あ たりの期待値に近づいてゆく. • ルーレットで赤か黒に賭けるとき,確率 18/38 で $1 を獲得し,20/38 で $1 を失う.このとき の期待値は, 18 20 2 1× + −1 × =− = −0.0526 38 38 38 • である. ギャンブラーの破産問題 (ルーレットの赤黒を例にとる) • ギャンブラーが $1000 の元手から始めて,ルーレッ トの赤黒に $10 ずつ賭け続ける. • 彼の持ち金が 2 倍になる前に破産する確率はいく らだろうか? • この勝負は,$100 の元手から始めて,$1 ずつ賭け 続けるとき,持ち金が $200 になるまえに破産する 確率であり, 200 100 20 20 18 18 p (100) 200 20 1 18 0.999973 より一般的には • ギャンブラーが $1 を元手に,$𝑛 になるまで賭 けを続ける. • 賭けは勝率 𝑝 で,勝てば $1 を獲得し,負ければ $1 を失う.𝑞 = 1 − 𝑝 • このとき,持ち金が $n に前に破産する確率は, n k q q p p p(k ) n q 1 p ルーレットの賭け方 (ダズン:12個の数字に賭ける) • 「ダズン」: 1~12,13~24,25~36のいずれ かに賭ける方式. • 勝てば掛け金が戻りさらに掛け金の 2 倍を受 け取る,負ければ掛け金が没収される. • この賭けで,一回あたり $1 をかけるときの期 待値は, 12 26 2 2 (1) 0.0526 38 38 38 ルーレットの賭け方 (シングル:1個の数に賭ける) • 「シングル」: 1~36のいずれかに賭ける方式. • 勝てば掛け金が戻りさらに掛け金の 11 倍を 受け取る,負ければ掛け金が没収される. • この賭けで,一回あたり $1 をかけるときの期 待値は, 1 37 2 35 (1) 0.0526 38 38 38 カジノは少しだけ有利な賭けを数多く 行うことにより安定的に儲ける • 様々な客が集まって,期待値が $1 あたり, マイ ナス$ 0.0526 の勝負を膨大な回数を行ってくれ れば,カジノの一勝負あたりの平均利益は,プラ ス $0.0526 に近づいてゆく. • この勝負を膨大な回数行えば,カジノの利益は, ほぼ, • (賭け金の総和)× 0.0526 となるる. • 要点は,少しだけ有利な賭けを,膨大な数こな すことなのだ. • 賭けに勝つ唯一の方法は,賭けの胴元になるこ とである. イソップ寓話 「ウサギとカメ」 • 事実のみに目を向ければ,要するにウサギと カメの平均速度の問題である. • 道徳的な問題にするのはいかがなものか,と 著者は言っているが・・・・・ • ウサギにカメのように歩けと言っても,それは 苦痛でしかない. 「キーノ」とは, • 客は,1 ~80 までの番号の中から,10 個の 番号を選ぶ. • カジノはブローアーという器具を使って,20 個 の番号をランダムに選ぶ. • 20 個の番号のうちいくつの番号を客が選ん でいたか(マッチ数)で,客の賞金が決まる. キーノの賞金 $10 を支払ったときの配当金 • • • • • • • • 10 個マッチしたら: $120,000 9 個マッチしたら: $50,000 8 個マッチしたら: $5,000 7 個マッチしたら: $1,050 6 個マッチしたら: $200 5 個マッチしたら: $20 4 個マッチしたら: $10 3 個以下のマッチなら: $0 マッチ数とその確率 • 1 ~80 までの番号のうち,20個の番号が選 ばれる組み合わせの数は, 80 80! 80 C 20 20 20! 60! 80 79 78 61 20 19 3 2 1 3,535,316,142,212,174,320 マッチ数とその確率(4個のとき) • 客が選んだ 10 個の番号の中から 4 個が選 ばれ,残りの70個の番号の中から 6 個が選 ばれる組み合わせは, 10! 70! 520,818,874,870,186,200 10 C 4 70 C16 4! 6! 16! 54! • 客が選んだ 10 個の番号の中から 4 個が選 ばれ,残りの70個の番号の中から 6 個が選 ばれる確率は, 10 C4 80 70 C16 C20 520,818,874,870,186,200 0.1473 3,535,316,142,212,174,320 マッチ数とその確率(8個のとき) • 客が選んだ 10 個の番号の中から 8 個が選 ばれ,残りの70個の番号の中から 12 個が選 ばれる組み合わせは, 10! 70! 10 C8 70 C12 8! 2! 12! 58! 478,750,232,633,400 • その確率は, 10 C8 70 C12 80 C 20 478,750,232,633,400 0.000135419 3,535,316,142,212,174,320 マッチ数とその確率 マッチ数 確率 払い戻し金 戻ってくる金額の期待値 0 4.58% $0 $0 1 2 17.90% 29.53% $0 $0 $0 $0 3 4 5 6 7 8 9 10 26.74% 14.73% 5.14% 1.15% 0.16% 0.014% 0.00061% 0.000011% 100% $0 $ 10 $ 20 $ 200 $1,050 $ 5,000 $50,000 $120,000 $0 $ 1.47 $1.03 $ 2.30 $ 1.69 $ 0.68 $ 0.31 $0.01 $ 7.49 合計 ロト6の賞金( 200円 支払って) 等数 当選条件 賞金額 確率 1等 6 個すべて一致 約 100,000,000 2等 5 個一致し,残りは ボーナス番号と一致 約 15,000,000 3等 5 個一致 約 500,000 4等 4 個一致 約 9,500 5等 3 個一致 1,000 1 6,096,454 6 6,096,454 216 6,096,454 9,990 6,096,454 155,400 6,096,454 合計 0.02717 期待値 16.403 14.763 17.715 15.567 25.4902 89.938 2個のサイコロを投げるときの確率 • 起こりうるすべての結果は、以下の36通りで、ど の結果も等しく起こりやすいと仮定して計算する. 表3・4 2個のサイコロの目の和の分布 目の合計 2 3 ペアの数 1 2 確率 1/36 2/36 % 2.78% 5.56% 4 5 3 4 3/36 4/36 8.33% 11.1% 6 7 8 9 10 11 12 5 6 5 4 3 2 1 36 5/36 6/36 5/36 4/36 3/36 2/36 1/36 36/36 13.9% 16.7% 13.9% 11.1% 8.33% 5.56% 2.78% 100% 計 サイコロを4回振るとき,六の目が一 回は出る確率はいくらか? • 4回振って一度も六の目が出ない確率は, • 5 5 × 6 6 5 × 6 5 6 × = 625 1296 = 0.482253 だから, • 少なくとも1回は六の目が出る確率は, • 1− 5 4 ( ) 6 ≅ 0.51775 • と,0.5 よりも少しだけ大きい. • 17世紀のフランスで,アントワーヌ・ゴンボーは, サイコロを4回振ったら一度は六の目がでる方 に賭けて大儲けした. サイコロ2個を24回振れば,一度は六 のぞろ目が出る確率はいくらか? • 一度は六のぞろ目が出る確率は 35 24 36 • 1− = 0.491 • であり,0.5 よりわずかに小さい. • この賭けを行いゴンボーは損をし始めた. • ゴンボーは途方に暮れ,ブレーズ・パスカルに相 談する. • パスカルは,天才数学者 ピエール・ド・フェル マーと手紙を交わし,これらの賭けの確率に取り 組んだ. クラップス • 客は2個のサイコロを振り,合計が { 7, 11 } な らば客の勝ち,{ 2, 3, 12 } ならば客の負け,そ れ以外ならばその合計を客のポイントとして, 延長戦に突入する. • 客は再び2個のサイコロを,その合計が客の ポイントか7になるまで振り続け, 先に客のポ イントがでれば客の勝ち,7が先に出れば客 の負けとなる. クラップスを樹形図で表す {7, 11} {2, 3, 12} {4} {5} ⋮ {10} {4} {7} {4,7 以外} {10} {7} {10, 7 以外} クラップスで客が勝つ確率 • 8 3 3 4 4 5 5 + × + × + × + 36 36 3+6 36 4+6 36 5+6 5 5 4 4 3 3 244 × + × + × = 36 5+6 36 4+6 36 3+6 495 • と求まり,1/2 よりもわずかに小さい 0.492929 である. • カジノが勝つ確率は,0.507071 である. • クラップスで $10 賭けるときの期待値は, • $10 × 0.492929 + −$10 × 0.507071 = − $0.141 であり, −14.1 セントの損となる. サイドベット 他の客がカジノが勝つ方に賭ける • 正式には「ドントパス・ライン」に賭けるという. • ただし,6のぞろ目が出ると合計が12であり, カジノが勝つが,「ドントパス・ライン」に賭け た人はこの場合引き分けとなり,掛け金は払 い戻される. • こうすることにより,カジノが少しだけ有利な 賭けとなる. 大数の法則を意識しよう • 実験(観察)の数が少なければ,本来の確率 とは異なる結果が起こり得る. • 結果を数多く観察することにより,偏りのない 判断が可能になる. • 大数の法則は長期戦で効いてくる. • 短期戦では,ランダムな効果の影響により, 必ずしも強い方が勝つとは限らない.
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