Tokyo University of Marine Science and Technology サンマの流通形態(氷詰または冷凍) による環境負荷と品質評価への影響 東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 食品生産科学部門 渡 辺 学 テーマの背景 冷凍はエネルギー多消費型の保存方法? 環境負荷低減の可能性 市場価値が低くなるので生で流通 しかし、 「品質が不十分」というイメージ 技術が発達した今日ではそれほど顕著な差があるとは考えにくい 3 目的 CVM 環境負荷 (仮想市場法) + 品質評価 コールドチェーンの最適化を行った 4 評価対象 サンマ • 生と冷凍両方流通している • 漁業時のデータが入手可能だった 5 研究内容 • 環境負荷の定量化 • 消費者の意識調査 • 官能評価 6 環境負荷の定量化方法 定量化方法 : LCI分析の積み上げ法を使用 製品のライフサイクルにおける各プロセスの 資源消費量や排出物量(CO2、NOx、SOxなど)を定量的に分析する手法 宮城 築地 築地から10km のスーパ 生品 箱詰め 輸送 漁獲 冷凍品 凍結 箱詰め 保管 輸送 販売 8 生品 箱詰め 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 販売 冷凍品 生 8kgサイズの発泡スチロールでサンマ:水:氷は4:3:3で輸送(3.2kg/箱) 水 (㎥) CO2排出係数 (kg-CO2/箱) 氷 ( kg ) 1.5 118 750 CO2排出係数 (kg-CO2/箱) 0.045 必要な 発泡スチロール (箱) 312.5 必要な箱 (kg) 排出係数 (kg-CO2/ kg ) 89.3 氷30% 水30% サンマ40% 1tあたりのCO2排出量 (kg/t) 777 6.34 冷凍 サンマ100% 8kgサイズのダンボールでサンマのみを入れて輸送(8kg/箱) 必要なダンボール (箱) CO2排出係数 (kg-CO2/箱) 125 1tあたりのCO2排出量 (kg/t) 0.28 *参考資料:全国ダンボール工業組合連合会 段ボールは、人にも環境にもやさしい優れた包装資材 包装用緩衝材のLCA研究報告書 社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会 技術委員会 包装技術小委員会 (財)北海道地域総合振興機構 新冷凍技術を活用した北海道~首都圏間等の複数企業連携による省エネルギー調査 35 9 生品 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 凍結・保管 販売 冷凍品 凍結 凍結は陸上凍結と船上凍結の2パターン計算した 陸上凍結 (kg-CO2/t-サンマ) 船上凍結 (kg-CO2/t-サンマ) 38.4 203 保管 2ヶ月冷凍庫で保管したとして計算した。 保管 (kg-CO2/t-サンマ) 12.4 *参考資料:(財)北海道地域総合振興機構 新冷凍技術を活用した北海道~首都圏間等の複数企業連携による省エネルギー調査 10 輸送 女川市場 石巻港 ① ② 東京貨物 ターミナル 築地・スーパー ③ 大井埠頭 ① トラック ② 鉄道 ③ 船舶 11 輸送(トラック) 生品 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 販売 冷凍品 生輸送 25t型保冷車で1800ケース輸送 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 448 4 軽油 1tあたりのCO2排 出量(kg/t) 運搬量 (kg-サンマ) CO2排出原単位(kgCO2/ℓ) 2.62 5760 50.94 冷凍輸送 25t型冷凍車で1800ケース輸送 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 448 軽油 CO2排出原単位(kgCO2/ℓ) 2.9 2.62 1tあたりのCO2 排出量(kg/t) 運搬量 (kg-サンマ) 14400 28.31 12 *参考資料:駒木ひかる、卒業論文、「食品の輸送形態(活魚輸送)と環境負荷」(2009年3月) 生品 鉄道輸送 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 販売 冷凍品 女川~築地 女川~石巻港駅 東京貨物ターミナル駅~築地 (トレーラー) 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 28.7 7.5 軽油 運搬量 (kg-サンマ) CO2排出原単位(kg-CO2/ℓ) 2.62 1160 石巻港駅~東京貨物ターミナル駅(JR貨物) 燃費 (g-CO2/t・km) 距離 (km) 422 コンテナ重量 (t/teu) 10.9 25.43 リーファーコンテナ(女川~築地) 時間 CO2排出原単位 (kg-CO2/teu-h) 2.72 27時間40分 築地~スーパー(2t型保冷車) 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 10 軽油 CO2排出原単位(kgCO2/ℓ) 5.4 2.62 *参考資料:国土交通省 国土技術政策総合研究所 コンテナトレーラーの燃料消費特性の把握 JR貨物コンテナ時刻表 1tあたりのCO2排 出量(kg/t) 運搬量 (kg-サンマ) 1160 13.5 13 船舶輸送 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 販売 冷凍品 女川~大井埠頭(コンテナ船) 距離 (km) 生品 速度 (knot) CO2排出原単位 (g-CO2/teu-km) 494.07 24 164.8 大井埠頭~築地 輸送(トレーラー) 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 9.9 CO2排出原単位(kgCO2/ℓ) 7.5 軽油 2.62 リーファーコンテナ 時間 CO2排出原単位(kgCO2/teu-h) 2.72 21分 築地~スーパー 距離 (km) 燃費 (km/ℓ) 燃料 10 軽油 5.4 CO2排出原単位(kgCO2/ℓ) 2.62 1tあたりのCO2排 出量(kg/t) 運搬量 (kg-サンマ) 1160 *参考資料:国土交通省 国土技術政策総合研究所 コンテナトレーラーの燃料消費特性の把握 財団法人 日本船舶技術研究会 「船舶輸送におけるカーボンフットプリント策定に関する調査研究」 (2009年度報告書) 4.2 14 販売(解凍) 生品 箱詰め 輸送 凍結 箱詰め 保管 輸送 漁 獲 販売 冷凍品 氷水解凍 水 (㎥) 排出係数 (kg-CO2/ ㎥ ) 0.5 氷 ( kg ) 118 1tあたりのCO2排出量 (kg/t) 排出係数 (kg-CO2/ kg ) 100 0.045 *参考資料:(財)北海道地域総合振興機構 新冷凍技術を活用した北海道~首都圏間等の複数企業連携による省エネルギー調査 63.5 15 CFP制度試行事業事務局(社団法人産業環境管理協会) カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベース(暫定版)ver. 3.0 結果 t‐CO2/t‐サンマ 1.2 冷蔵 1 1.32 CO2排出量 1.4 0.4 冷凍 冷凍の方が 約40~50% 低い 輸送 0.8 箱詰め 0.6 保管 0.82 0.81 凍結 0.67 水 0.2 製氷 0 漁獲 冷蔵 冷凍 価値の決定方法 仮想市場法(CVM:Contingent Valuation Method 環境評価手法の 一つ)を応用し、支払意志額の推定を行う。 定義:実在する状況、または仮想的な状況を想定したアンケートを基 に、 環境や行政サービスの変化に対する人々の金銭的な評価を直 接聞き出すことができる方法。 例:あなたが住む町に流れるA川の水質を良くする事業のために、 あなたは月にいくら支払ってもよいですか? (答)○○円←支払意志額(WTP:Willingness to Pay) =事業の価値 27 官能評価概要 • 実施日 2011年10月17日 • 実施場所 服部学園 • 評価者 103名(有効回答数102) • 評価試料 北海道産サンマ(生と凍結解凍品) • 調理方法 刺身 29 評価試料ー③ ・霧鮮サンマを使用(180g/匹) 同一漁獲海域、時間、重量のサンマを用いる 同一サンプルとした =生品 到着後発泡スチロールに入れたまま官能評価開始まで常温保管 =冷凍品 凍結し、一晩冷凍庫で保管して氷水解凍 32 アンケート項目 ①サンマに関するアンケート調査 ②試食、購入金額調査 ・生と冷凍サンマの総合評価(0~10点) ブラインド「情報なし」と生と冷凍の情報を提示「情報あり」の2回評価 を行った。 ・生を基準とした冷凍サンマ購入時のWTP調査「情報なし」と 「情報あり」、さらに環境情報を提示した「環境情報あり」の3回行った。 ③試食特性評価 生を基準にしたときの冷凍サンマの品質特性について評価 (-3~3点で0が生と同じとした。肉の赤み、外観全体、におい、水っぽさ、 脂の乗り、味・風味、歯ごたえ、滑らかさ、プリプリ感、総合的な好ましさ の10項目について評価)「情報なし」と「情報あり」の2回行った。 34 ①総合評価 0~10点で評価 36 ②WTP(支払い意思額) 生を基準(300円)に冷凍を評価 38 ③品質特性評価 終了後シートを回収、新しい箸、サンプル、シートを配り 情報を提示して①~③を繰り返して2回目実施 40 ④環境情報を提示したWTP 41 総合評価 冷凍品 30 25 25 20 20 人数(人) 30 15 15 10 10 5 5 0 0 0 1 2 3 4 25 5 6 7 8 9 10 0 1 点数(点) 情 報 提 示 30 2 3 4 30 25 5 6 7 8 9 10 7 8 9 10 点数(点) 情 報 提 示 6.7点 20 6.4点 20 人数(人) 人数(人) 人数(人) 生品 15 15 10 10 5 5 0 0 0 1 2 3 4 5 点数(点) 6.4点 6 7 8 9 10 0 1 2 3 4 5 6 点数(点) 5.3点 有意差あり 品質特性評価 肉の赤み n.s. 0.4 *** 総合的な 好ましさ * プリプリ感 0.2 外観全体 * 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 におい * 「情報なし」 「情報あり」 -1 ** 滑らかさ 水っぽさ n.s n.s 歯ごたえ 脂の乗り * 味・風味 ** 全項目で評価が下がった 冷凍という情報は評価にも影響を与える WTP① 20 18 16 情報なし 人数(人) 14 12 291.2円 10 8 6 4 2 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800 金額(円) 情 報 提 示 20 -33.8円 18 16 情報あり 人数(人) 14 12 10 257.4円 8 6 4 2 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 金額(円) 500 550 600 650 700 750 800 54 WTP② 20 18 16 人数(人) 情報あり 14 12 257.4円 10 8 6 4 2 0 50 20 100 150 200 250 300 350 400 450 金額(円) 情 報 提 示 500 550 600 650 700 750 800 +13.2円 18 16 人数(人) 環境情報あり 14 270.6円 12 10 8 6 4 2 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800 金額(円) 56 環境効率 製品の価値 ライフサイクル全体における温室効果ガスの排出量 製品の競争力を図る指標のひとつ 生品と冷凍品を評価 57 環境効率 価値 (円/kg-サンマ) 環境負荷 (kg-CO2/kg-サンマ ) 環境効率 生品 1,667 1.320 1216.88円/kg-CO2 冷凍品 1,503 0.823 1827.49円/kg-CO2 環境情報あり 鉄道 冷凍品の環境効率は生品の約1.5倍となる 環境効率で評価すれば冷凍の方が明らかに優位
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