アジア・アフリカ・ラテンアメリカ Asia-Africa-Latin America(AALA) 京都版 No.142 2016年9月1日 京都府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会 連絡先 〒606-0033 京都市左京区岩倉南四ノ坪町44 辻﨑忠由方 電話/FAX 075-722-7888 [email protected] 年会費(6,600 円)は郵便振替 00970-4-223429 京都府 AALA 連帯委員会へ ホームページ新版 http://kyoto-aala.com/ (旧版へのリンクあります) 会員のみなさんへ 『戦争するな! どの国も』 「国際署名」の取り組みを強めましょう。 2年前(2014.8.末)、日本 AALA は「戦争するな!どの国も 東アジアを不戦、平和、協力、繁栄 の共同体に」の国際署名を提起、署名活動が始まりました。昨年11月には、東アジアサミット議長 国マレーシアに駐日大使館を通じて1万余筆が届けられました。 署名の目標数は個人10万筆・団体1,000団体ですが、今年7月の到達は19,000筆に止まって います。今年9月下旬に「東アジアサミット」が、今年の議長国ラオス(首都ビエンチャン)で開かれま す。日本 AALA はラオスツアーを企画し、署名を直接届けます。 東アジア、特に日・中・韓3ヵ国間に横たわる過去、現在における諸課題は軽々に解決が図られ るものではありませんが、正々堂々かつ粘り強い外交努力を通じてのみ、その解決の方向が展望 できるものと確信しています。「紛争を戦争にさせない」ことが何よりも重要で、当事国は勿論、第 3 国まで巻き添えにする戦争は、憎悪と復讐という連鎖しか生まない最悪の殺戮と破壊の行為です。 年間1,000回以上話し合いを重ね、決して「紛争を戦争にしない」地道な努力をしているアセアン (東南アジア諸国連合)こそ、東アジア共同体の模範となる共同体の姿ではないでしょうか? 北朝鮮の度重なるミサイル発射実験の動きや南シナ海での中国と沿岸諸国の対立など、東アジ アを取り巻く情勢を見るとき、「国際署名」の重要性が益々増大している感を否めません。京都 AA LA の到達は8月現在、388筆(電子署名分含む)で、1,000筆以上を達成している他府県 AALA に比しても、その取り組みは十分とは言えません。署名用紙も今年になって見直され、わかりやす い内容(今号の機関紙に1部同封)になっています。 会員のみなさんには、ご自身、ご家族をはじめ、友人・知人などに広く訴えて署名を広げて頂きま すよう、よろしくお願い申し上げます。なお、署名用紙の不足分はコピー(モノクロ可)して頂くか、又 は日本 AALA のホームページを検索すればありますのでご活用ください。また集まりました署名用 紙の取り扱いについては、事務局までご連絡下さい。 1 緊張高まる「南シナ海」、何が問題なのか!? 南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に違反するとして、フィリピンが中国 を相手に提訴した裁判で、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月12日、中国の主張に法的根拠がない と裁定(判決)を示しました。 各国が領有権を争う南シナ海問題を巡り、常設仲裁裁判所が示した裁定のポイントは以下の3点です。① 中国が独自に主張する境界線「九段線(注1)」について、国際法上の根拠がない。②中国が九段線の内側 で築いた人工島は、排他的経済水域(注2)や大陸棚が認められる「島」ではない。中国は南シナ海の 90%に 対する領有権を主張しているが、周辺国も海域内の島や岩礁の領有権を主張しています。その上で、③沿 岸諸国が海域に公正な権利を持つことを基礎に、南シナ海の紛争を平和的に解決するよう求めました。 これは南シナ海問題に関する初の司法判断です。中国が進める人工島造成などの正当性は、これで国際 法上は認められなくなりました。中国の習近平主席は判決を受けて、「南シナ海諸島は古来から中国の領土 だ。中国の領土主権と海洋権益は、いかなる状況下でも、仲裁の判断の影響は受けない」と強調しました。 その一方で、近隣諸国との紛争解決を重視しているとも述べ、翌13日に発表した「南シナ海白書」では「南 シナ海諸島は中国固有の領土だ」とした上で、フィリピンが一部を「不法占拠」し、仲裁裁判への提起など 「紛争を複雑化」させる行動をとっていると批判。その上で「判決結果に基づいた対話には参加しない」と述 べ、「判決の棚上げ」を求めています。8月9日には、フィリピンのドゥテルテ大統領が指名した南シナ海問題 担当特使のラモス元大統領が、中国側の関係者と接触するため香港を訪れています。 上記①に関して、中国は2009年5月、国連事務総長宛の外交文書で、U 字形(別称「牛の舌」)の「九段 線」の地図を示し、南シナ海のほぼ全域に「主権的権利と管轄権」があると主張し、国連海洋法条約(注3)で 制度化した排他的経済水域(EEZ)と相いれないこの立場について、中国は同条約を適用されない「歴史的 権利」があると正当化していました。この主張について仲裁法廷は「国際法でどのように水域への権利が生 じるか」を検討、重視したのは EEZ 制度の成り立ちです。国際社会の交渉過程では、「A 国の伝統的な漁業 の権利を B 国の EEZ 内でも保障するか」という問題が検討されましたが、結局採用されなかったことを指摘し、 EEZ 制度の成立で「中国の資源に対する歴史的権利の主張は消失した」と判断しました。法廷はまた歴史 の事実も検討し、中国と他の沿岸国が南シナ海で歴史的に漁業や採取を行っていても、それは独占的に管 理・支配していたこととは異なり、排他的な権利や歴史的権利を生まないと指摘し、「九段線」の主張は国際 法上「根拠がない」と結論付けました。 ②に関しては、紛争のもととなっている南シナ海の南沙(英語名スプ ラトリー)諸島は、満潮時海上に出ている地形でも法的にはすべて EEZ などの権利を生まない「岩」だと結論 づけました。 そして最も重点を置いた③に関して、判決は「紛争の根源はどちらかの国に一方の合法的権 利を侵害する意図があることにではなく、海洋法条約のもとでの権利についての理解の違いにある」と指摘 し、中国の立場自体を非難することは避け、理解を正す余地を残しています。今回の国際司法判断は南シ ナ海の紛争の平和的解決に向けて、各国に公正な法的基盤を提供し、前進の機会を作ろうとするものです。 紛争エリアは狭まり、対立点も減少します。関係諸国は平和的解決に向けた外交努力を促されたことになり ます。 中国が周辺諸国と対立する南シナ海の領有権問題とはそもそも何なのか?どこまで深刻なものになるのだ ろうか?豊富な海洋資源を埋蔵し、海上交通の要衝でもある南シナ海の権益をめぐり、中国と東南アジア諸 国は1960年代末期から摩擦を繰り返してきました。南シナ海にはパラセル(西沙)諸島とスプラトリー(南沙) 諸島を中心に200以上の島や岩礁などが存在します。中国はすべての島嶼(とうしょ)の領有権を主張し、 ベトナムなどと争ってきました。74年にはパラセル諸島で南ベトナム軍(当時)と衝突し、同諸島全域を掌握。 88年にもスプラトリー諸島でベトナム軍を攻撃し、一部の島を実効支配下に置きました。 2 *上記地図上の九つの太線部分が中国が管轄権を主張する「九段線」(別称:牛の舌)、点線部分が中国をはじめ沿岸各国の排 他的経済水域を其々表す。また◯印は紛争の渦中にある島々、 (注1)「九段線」とは、中国が南シナ海の権利を主張するため、地図上に引いた9本の境界線で、境界線の内側にはフィリピンや ベトナムなどが領有権を主張する南沙(英語名スプラトリ―)諸島や西沙(同パラセル)諸島も含まれます。第2次世界大戦後、 中華民国政権が「十一段線」を引いたのが発端。1949年の新中国成立後、一部の線を除いた九段線としました。 (注2)排他的経済水域(EEZ)とは沿岸国が領海基線から200カイリの範囲(他国と重複しない場合)で独占的に漁業や海底資源 を管理、開発「する「主権的権利と管轄権」を持つと認め合った制度。 (注3)国連海洋法条約とは1982年4月30日にジャマイカのモンテゴ・ベイにおいて第 3 次国際連合海洋法会議で採択された条 約で、1994年11月16日に発効した。「海の憲法」と呼ばれる。領海(12カイリ)や大陸棚、排他的経済水域(EEZ、200カ イリ)などを定義。沿岸国の権利として、自然の島は領海や大陸棚、EEZを有するが、満潮時に水没する「低潮高地」や人工 島は有さないと規定。人の住めない岩は領海のみを有し、大陸棚やEEZは有さないと定める。沿岸国に対しては、公海など での航行の自由の確保や、海洋の環境保全、資源の適正な利用などの義務も課す。2015年1月現在で166カ国・地域と 欧州連合(EU)が加盟。 さらに92年に米軍がフィリピンから撤退すると、フィリピンが領有権を主張していた同諸島のミスチーフ環礁 を95年に占拠しました。大方の見方によれば、中国の狙いの一つは、海洋権益の確保。中国は南シナ海の 資源埋蔵量を石油が367億8千万トン、天然ガスは7兆5500億立方メートルと推計、「第2のペルシャ湾」と 期待している。 もう一つは米国の軍事力への対抗。潜水艦基地のある中国海南島は南シナ海の深海部に つながり、南シナ海から西太平洋に進出すれば、米海軍のプレゼンスをそぐことも可能になるというシナリオ。 しかし、オバマ米大統領のアジア歴訪時に決定したフィリピンへの米軍回帰は、南シナ海での軍事バランス を再び揺さぶり始めた、と言えます。 沿岸諸国及び米国と対立する中国が仲裁裁判所の裁定を「茶番」などと激しい非難を浴びせ続けるので あれば南シナ海の平和にとって重大な懸案が残ります。中国はじめ関係諸国が国際司法判断を尊重し、紛 争の平和的解決に前向きな態度をとることが地域の平和と安定を維持するうえで益々求められます。 3 内閣総理大臣 安倍 晋三 様 オバマ米大統領が検討している「核兵器先制不使用宣言」 に反対する日本政府に抗議し、その撤回を求める。 ワシントン・ポスト8月15日付は安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に対し、米国が先制不使用を宣 言すれば「北朝鮮のような国々への抑止力が弱まる」と反対を表明したと報道しました。この報道が事実 ならば、日本政府が北朝鮮などの脅威を名指しし、米国の核抑止力(核の傘)への依存、さらに核の先制 攻撃までも容認する姿勢を示したことです。世界で唯一の被爆国の首相として取るべき態度ではない、と 言わなければなりません。 被爆地の式典で、「広島、長崎の悲惨な経験を二度と繰り返させてはならない」と「核なき世界」への取 り組みを約束する一方で、米国の核による先制攻撃を認める立場を示していたとすれば、「矛盾」した言 動であり、とんでもない背信行為です。今回の表明は、従来日本政府が国連総会で核兵器禁止条約を 求める決議に一貫して棄権してきた理由が改めて明瞭になったことを示すもので、怒りを禁じ得ません。 2016年原水爆禁止世界大会国際会議で採択された国際会議宣言は、「米露英仏中の核保有五大 国とこれに追随する日本など同盟国の姿勢が「核兵器のない世界」への最も大きな障害である」ことを明 言しています。また核保有国がしがみつく「核抑止力論」を、「『国益』を守るために、他国への核兵器の 使用や威嚇を認める危険極まりないもの」だと批判し、核兵器を「禁止し廃絶する条約の交渉開始と締結 を求める世論と運動を強めることに全力を尽くさなければならない」と呼びかけました。 私たち京都府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(京都 AALA)は非核・非同盟・平和の日本と 世界の実現を求めて活動する組織として、今回の首相の表明は被爆者をはじめ、核兵器廃絶を求める 国内外の多くの人々の心を逆撫でし、人類と共存できない最も非人道的な核兵器の廃絶を求める国内・ 国際世論に被爆国自らが背を向ける最悪の裏切り行為であり、断じて許し難く、謝罪とその撤回を強く求 めます。私たちは引き続き、「核兵器禁止条約」締結に向け力を尽くします。 以上 2016年8月21日 京都府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会 京都 AALA は8月21日、安倍首相に対し上記抗議声明文を首相官邸にファックス送信しました。 4
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