については全く従来の診療を続けてもらう。 それはテーマによって全く違うものですから、 ものによっては施設が違うものもありますし、 決して、あらゆる臨床試験は無作為化比較試 同じ施設内で両群をとるということもやって 験でなくてはならない、ということを申し上 おります。時間的にガイドラインを導入する げてはおりません。倫理上もいろいろな問題 以前と導入後との比較という、そういう研究 があって、行われない場合は次のグレードの デザインだけではないのです。 研究方法によるデータを用いるのはそれはそ 革島:(医師、外科)もう一つは、無批判 インターネットによる医薬品情報検索 医薬品安全性情報の入手とその利用 EBM はランダマイズド・コントロール・スタ おられましたが、これにはちょっと問題があ ディでなくてはならないということを主張し ると思います。と言いますのは、確かに有効 ているものではありません。ただし、データ 性の検定のためには、理論上はベストですが、 としてあった場合には、無作為化比較試験が 先ほど村井さんがおっしゃったように、副作 より信頼できるデータであることが多いとい 用情報に関してはこれは「3 た論法」でもいい う意味です。 山本美智子 薬剤師(研究員) れで全く構わないわけです。繰り返すすが、 に無作為化比較試験がベストであると述べて やまもと み ち こ インターネットによる医薬品情報(Drug Info Guide)サイトの 運営 日本病院薬剤師会 放送企画委員(1996 年 5 月−現在) 厚生省「医薬品情報システムの高度化に関する研究班」ワーキン ググループ委員 1998 年1月− 1999 年 3 月 医薬品機構「新薬のブリッジング試験のための国際比較研究」喘 息班班員(1998 年 4 月−現在) から迅速に出せといった意見もありますし、 この数年において、インターネットは、情報 情報収集の方法について、 て、福井次矢氏の許可を得、福井次矢編集 伝達交換の手段として急速に普及してきました。 1.各国各機関の安全性情報 ないかと思います。もう一つの欠点としては、 「EBM 実践ガイド」を参考に編集部で一部 インターネットは、情報の流通、質、処理など 2.医薬品集、ファクトデータ 倫理上の問題があります。アメリカでも実際、 手を加えさせて頂きました。詳細は福井次 に大きな変革をもたらそうとしています。医薬 3.検索 貧困層が対象になっていたり、国内では無理 矢編集「EBM 実践ガイド」 (1999 年 6 月、 品情報の分野においても、インターネットは有 −検索エンジン(AltaVista など) だからと外国に出向いて臨床試験したりして 医学書院)を参照下さい。 用なソースとしてどの程度活用できるのでしょ −文献検索(Medline, 各ジャーナルのサイト)の 有効性の検定に関しましても無作為割り付け 講演内容は、講演そのものに加え の欠点に関してももう少し意識するべきでは いる。そういう事実があるということを無視 うか。具体例を用いて情報の検索を行い、イン してはいけません。 ターネットによる情報入手のメリットとデメリ まず、各国各機関の安全性情報には、 ットを理解した上で、有効な活用方法を探って 1)FDA-MedWatch、 みます。 2)NIH(Clinical Alerts) それから日本で臨床試験をする時のインフ ォームド・コンセントをどうするのかという 順序でお話します。 問題です。特に無作為割りつけに関してです 3)CDC(MMWR,EID) ね。それをきっちりやると脱落例が増えてく 4)NCI(CancerNet) る。脱落例が増えてくると結果が正しくない。 インターネットは、簡単に言うと、強力な通 5)Center Regional de Pharmacovigilance、 そういう非常に大きな問題を抱えているのに 信手段となり、豊富な情報源を有するコンピュ 6)Australian adverse drug reaction bulletin 無作為化比較試験がベストであると最初から ーターネットワーク間を結ぶネットワークです 7)WHO Adverse Reaction Report Database- 言い切るのはいかがなものでしょうか。 福井:全くそれはおっしゃる通りでして、 スライドに全てを書き込むことはできません (図-1)。ネットワーク上に国内外から必要な情報 が提供されることにより、またネットワーク上 から情報を取り出すことが容易になります。 Adverse Reaction Newsletter、その他に、 8)FIP(World Drug Alerts) 9)ATSDR(National Alerts-Toxic Substances)な どがあります。 ので、一般的にデータそのものの信頼性とい 今回は、医薬品安全性情報の観点から、主に う立場で、特に治療法についてはランダマイ 海外からの情報収集を試みますが、テルフェナ 1)の FDA-MedWatch は後で述べます。非加熱 ズド・コントロール・スタディが最も信頼で ジンの副作用(QT 延長)についての具体例で示 血液製剤のエイズへの感染の可能性を指摘した きるという意味で書いたものです。 しながら、実際にどのような医薬品の情報ソー CDC の MMWR(Morbidity and Mortality Weekly スがあり、それらをどのように収集、利用でき Report )は、Web 上でも入手可能ですが、メー るのかみてみましょう。 リングリストに登録すると、海外の利用者に対 治療法だけでなく、検査がどれくらい役に 立つかということを見たりする場合は、ケー ス・コントロール・スタディが好ましいとか、 しても、目次のみ、Acrobat pdf ファイル、また は ascii ファイルで毎週配送するシステムを取っ 290 291 医 薬 品 評 価 の 方 法 そ の (3) │ ︵ M ・ N ・ O ︶ キュメントを探すには、FDA サーチを利用しま 検索エンジンについての簡単な検索方法を以下 す。1985 年に認可され、同 1990 年 6 月に不整脈 にお示しします。一つの検索エンジンは、ロボ が指摘されて、同年 8 月にラベル改定がありまし ットが自動的にホームページにアクセスして, た。1992 年には"Black Box"Warning があり、1994 そこにある公開データを収集します。 年にドクターレターが出ました。1997 年 1 月に 回収の意向が発表されるまで改訂、警告を含め、 Alta Vist 全部で 64 件のドキュメントが得られ、一連の流 HotBot れとしてとらえることができます。 ▲図-1 インターネットによる医薬品情報基盤構築プラン ています。 and 検索 +terfenadine QT 36 件 or 検索 terfenadine QT 467 件 特徴 言語毎に検索可能 terfenadine and QT 90 件 terfenadine QT 1117 件 期間、地域毎の検索可能 米国の処方薬の添付文書集である RxList は患 NLM からフリーの MEDLINE として PubMed が 者用情報(Patient Package Insert)も併せて掲載し 提供されるようになりましたが、まずその特徴 ています。 についてお話します(図-2) 。 項目としては、Actions/Clinical Pharmacology, PubMed は、NCBI(National Center for Biotechno- Warning, Contraindications, Precaution(Drug logy Information)のプロジェクトで、生物医学系 Interactions, Carcinogenesis, Pregnancy, Category の出版社と共同で開発されました。PubMed は、 C),Adverse Events, Overdosage があります。また、 MEDLINE、PreMEDLINE、分子生物学データベ 目的で作られましたが、医療関係者はもちろん、 FDA が代替薬として勧めている fexofenadine につ ースを含み、将来的には NLM の医学データベー NCI(National Cancer Institute)からは、がん情 消費者からの重大な副作用および医療用の製品 いての添付文書も掲載されています。化学物質 スも加わる予定です。PreMEDLINE に毎日新し 報が CancerNet で患者、医療関係者、基礎研究者 に関わる問題報告を受け、それをフィードバッ および医薬品等に関するデータベース くレコードが加わり、毎週 MeSH term やその他 別に提供されています。治療法、予防や抗がん クするプログラムです。その報告用紙は、Web Chemfinder では、構造式、物性データが入手可 インデックスデータを付けて MEDLINE に供給さ 剤のデータベースである PDQ(Physician Data 上で PDF ファイルで提供されており、米国では、 能です。他に、Internet Mental Health(カナダの れます。MEDLINE は、1966 年から現在まで、世 Query)もこの中に含まれます。 情報公開法に基づき、他のメディアと同様に、 精神用薬集) 、PharnInfoNet(出版記事を中心とし 界 70 ヵ国、3800 誌以上のジャーナルから 860 万 インターネットが活用されています。 た薬のデータベース)なども参考になると思われ 件のレコードデータを有しています。CO-ROM ます。 での検索に比べ、検索機能は絞ってあるものの、 スウェーデンのウプサラにある WHO Collaborating Centre for International Drug Monitoring では、世界 47 ヵ国から集められた医 薬品の副作用報告が収集されており、WHO MedWatch のページに掲載されている情報は、 (1)MedWatch とは何か、(2)副作用報告の方法 Adverse Reactions Database ON-LINE(登録制)が (2)の様式は医療従事者用と消費者用の 2 種類が 提供されています。ダイジェスト版として、各 あります。また(3)は、"Dear Health Professional" 国の副作用情報がニュースレターとして掲載さ Letters(ドクターレター)Talk Paper、Labeling れています(※)。 Changes Related to Drug Safety(ラベリング改訂情 PharmWeb は、イギリスのマンチェスター大学 Recalls and Market Withdrawals of Fractionated が設置され世界的な薬系ネットワークですが、 Blood and Plasma Products、FDA Medical Bulletins、 PharmWeb が 連 携 し て い る FIP の World Drug Adverse Drug Reaction Reporting Data Files(副作 Alerts に登録すると、医薬品に関する警告情報が 用(ADR)報告データファイル) 、Adverse Drug メールで送信されてきます。terfenadine 回収の意 Reaction Reporting Data Files(副作用(ADE)年 向を示す FDA talkpaper が送信されました。 次報告)などがあります。 292 きます。 科学系に強いといわれる AltaVista、HotBot の 医 薬 品 評 価 の 方 法 報) 、FDA Enforcement Report(製品回収情報) 、 から発信され、世界 6 ヵ国 9 個所にミラーサイト MedWatch は、最初は全医療関係者を啓蒙する Basic Search に加え Advanced Boolean search がで と様式(PDF ファイル)、(3)安全性情報などです。 FDA における terfenadine についてのすべてのド ▲図-2 そ の (3) │ ︵ M ・ N ・ O ︶ ▲図-3 293 ています。 よる配送メーリングリストは別として、ニュー 実際に、PubMed において terfenadine and QT で その会誌 1997 年 8 月 1 日号で、ニュースグルー スグループなどでは、情報が検証されることな 検索すると 43 件のレコードが得られました。し プ sci.med.pharmacy と DICs(drug information く一人歩きすることもあり、信頼性に欠ける点 かし、Mesh term である torsades de points と and 検 centers)から得られる医薬品情報の比較を行って もあることに留意が必要でしょう。 索を行うと 48 件ですが、両者の重なりは 15 件で います。25 の質問を両者にぶつけ、その正当率 また、情報の共有が可能です。ネットワーク した。また、astemizole で 20 件、ebastine で 2 件、 を比較していますが、sci.med.pharmacy 31 %に対 の利用により、データベースの共有化、相補的 QT 延長の報告がありました(図-3)。 し、DICs56 % でした。 なデータ作成、編集も可能ですし、医薬品の治 治療法については、米国の厚生省の機関の一 験から審査、承認、市販後の情報が一つのシー つ AHCPR(Agency for Health Care Policy and ムレスな流れとして提供されれば、開発に関わ インターネット上で提供されているジャーナ Research)からは、現在、19 の疾患に対しての治 った人から臨床現場の人まで、情報の共有化が ルも多くあります。米国エモリー大学からの 療ガイドラインが、医師向け、患者向けに対に 可能になります(編集部:まったくそうあって MedWeb のページには、ネット上で見ることがで なる形で出されています。また、NIH の各研究 ほしいですが、現状は逆の流れを思わせます。 きる医学系ジャーナルがリストアップされてい 機関からも治療法のガイドラインを入手できま 第 2 回医薬ビジランスセミナーの 2 日目では、臨 ます。初期の頃は、全文掲載のジャーナルもい す。 床試験論文の公表を巡る問題を議論します) 。 くつか見受けられましたが、現在は、目次、バ エイズに関する最新の治療情報については、 インターネットは、海外からの疾患に関する ックナンバー検索、抄録のサービスを行ってい 国の承認を得た治療ガイドラインを ATIS(The 情報から治療(薬物治療)のガイドラインや最 るところが多いです。 HIV/AIDS Treatment Information Service)のページ 新の治療法、医薬品情報に至るまで、幅広い情 例を挙げると、JAMA、the New England Journal で得ることができ、その中で、エイズ治療薬プ 報に簡単にアクセスし、それらを相互に関連付 of Medicine On-line、Europian Journal of Clinical ロテアーゼ阻害剤の使用に際し、抗ヒスタミン けた利用を可能にしつつあります。また、それ Pharmacology、 Clinical Pharmacology and 薬(USA の分類)terfenadine,astemizole が併用禁 らの情報は共有されることで、医療関係者と患 Therapeutics などのジャーナルがあります。今回、 忌薬としてリストアップされており、その代替 者の垣根をも取り払おうとしています。医療関 terfenadine に関して、JAMA で 4 件、Clinical 薬として loratadine の記載があります。 係者はこのような状況を認識し、情報開示が医 Pharmacology and Therapeutics で 1 件検索できまし 療に対する相互理解の一助になりますことを願 た。また、Harvard Review Article in Pharmacoepi- っております。 demiology では、Torsades de Points Receiving インターネットによる医薬品情報収集と検索 ※現在、WHO EDM(Essential Drugs and other Terfenadine or Astemizole の総説、Infections in の利点は、(1)海外からの情報入手が容易(即 Medicines)から Drug Alerts と WHO Pharmaceuti- MEDICINEDrug で は Interactions Between 時性あり、地域差ない)であり、(2)文献検索 cal Newsletter が出されています。 Nonsedating Antihistamines and Anti-infective が容易、(3)印刷物、CD-ROM 等の併用により Agents の総説が掲載されています。 十分参考可能な情報となることにあります。 その他の情報源としてニュースグループの利 情報の入手については、Web 上の情報が、迅 用があります。医薬系のニュースグループとし 速かつ簡単に入手可能ですが、一方で、改ざん て、主なものに sci.med.pharmacy(一般的な薬関 される可能性もあり、電子媒体としてのリスク 連) 、sci.med.informatics(医療情報)sci.med(医 もあります。検索に関しては、種々の条件を付 学、医療関連)、fj.sci.medical(日本の医学、医療 加することが可能になってきています。Harvest 関連)、また、日本の医学関係者のためのクロー を利用した検索システムでは、信頼のおけるサ ズドなネットニュースグループとして JPMED な イトのリンク、または必要なサイトのリンクか どで、情報交換が活発に行われています。ニュ らそれらの中で検索を行うことができます。 ースグループは、まさに生の情報が行き交うわ ニュースグループとメーリングリストなどの けで、その信頼性について、旧アメリカ病院薬 利用により、情報発信・交換が可能です。各ニ 剤師会(ASHP)も、ホームページをもち、広報活 ュースグループの相互乗り入れで、より情報交 動、会員間の交流を行い、会誌の抄録を掲載し 換の活性化を図ることができます。公的機関に 294 参考:今回紹介した情報へのリンクは、国立 医薬品食品衛生研究所の Web サイト Drug Info Guide http://www.nihs.go.jp/dig/jindex に紹介して います。 医 薬 品 評 価 の 方 法 そ の (3) │ ︵ M ・ N ・ O ︶ 295
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