ブリキのアメ車:田中翼コレクション

<プレス・リリース>
プレス担当:
塩原邦子(
[email protected] / 212-715-1249)
[email protected] / 212-715-1223)
ホイル治子(
ジャパン・ソサエティー・ギャラリー企画
展覧会
ブリキのアメ車:田中翼コレクション
~ミニチュア世界で復活 アメ車黄金時代~
リスティング・インフォメーション
会場:
JS ギャラリー
333 East 47th Street, NYC (at First Avenue)
展示期間:
2009年7月9日(木)~8月16日(日)
開館時間:
火曜日~金曜日:午前11時~午後6時
土曜日・日曜日: 午前11時~午後5時
月曜日・祝日は休館
入場料:
一般5ドル、シニア・学生3ドル、 会員・16歳以下 無料
JS ギャラリーは7月9日(木)から8月16日(日)まで、第二次世界大戦後に作られた日本製のブリキ
模型自動車の展覧会、『ブリキのアメ車:田中翼コレクション』を開催いたします。
終戦直後の1945年、おもちゃ製造家の小菅松蔵は町を走る占領軍の車両を見ながら、廃棄されたブ
リキ缶を金槌で打ち、米軍ジープの小型模型を仕上げました。こうして戦後第一号のブリキのおもちゃ
が誕生し、この粗雑に色が塗られた、わずか10cm 足らずのゴム動力の「小菅のジープ」は、のちに小
型模型の世界に巨大な自動車産業を生み出すことになったのです。
戦後のブリキ玩具
「黄金時代のデトロイト産自動車の小さなパーツまで精巧に再現した玩具の車は、日本の産業界が軍
需から平和時代の生産へと移行する助けとなりました。また、当時の貧しい日本のみならず、新たに富
裕国となったアメリカでの美しいものや魅力的なものに対する欲望を満たす役目も果たしたのです」
(JS ギャラリー・ディレクター、ジョー・アール)。
これまで未公開だった田中翼コレクションの秘蔵品を集めた『ブリキのアメ車』展では、この時代に活発
に芽生えていた人々の物に対する憧れの気持ちを顕著に感じ取ることができます。
「占領下日本製」と表示された暗緑色のキャデラックで幕を開ける本展では、戦後日本における玩具産
業の創始期に製造された初歩的で小型な作品から、高級志向のアメリカ市場向けに作られた後期の
精巧な作品まで、多岐にわたる70点の乗り物が展観されます。後期のモデルには、電池作動のライト、
フリクション(はずみ車付き)や、ゼンマイの代替品として登場した電動モーター、リモコン、クロム装飾、
取り外し可能な部品などが見受けられるようになります。セダン型自動車に加え、オープンカー、ステー
ションワゴン、配送用ワゴン、バス、トレイラー、レーシングカーのほか、1950~60年代にアメリカ人
の心をとらえたモーターショーの出品車(コンセプトカー)なども含まれます。コンセプトカーとしては、同
時期の航空機の構造に着想を得た試作品を発展させた全長約25cm の「ポンティアック・クラブ・ド・メ
ール」、GM デザイン部門のトップ、ハーリー・アールが1956年に手がけたタービン搭載の「ファイヤー
バード II」、実際に製造されることはなかったものの1960年代のテレビ番組『バットマン』で「バットモー
ビル」として不朽の名声を得た「1955年型フォード・リンカーン・フツーラ」が挙げられます。また、当時
日本のブリキ玩具産業で製造された幅広い製品を網羅するため、ジェット機、ヘリコプター、快速艇な
ども数点展示されます。
ここで紹介される乗り物の多くはオリジナルの箱も併せて保管されています。「驚嘆の押しボタンが自
動的にトップギア、前進、後進、操縦を行います」との謳い文句が踊る「1959年型フォード・フェアレー
ン500スカイライナー」の紙箱や、自由時間に恵まれた裕福な家族が車を飛ばしてアウトドアへ繰り出
す様子が描かれたブリキ車の外箱に加え、ジープやキャデラックなど数々のアメリカ車に乗った日本の
子供たちが描かれた1951年のすごろくなど、当時の世相を垣間見ることの出来る様々な関連品も併
せて展示されます。
幻の名作・希少品
ブリキの語源はオランダ語の blik に由来すると言われています。戦後間もない日本ではアメリカ車に
関する資料が入手しづらかった為、初期の製造元はブリキの模型自動車を作るにあたり、その型の製
作を写真に大きく頼らざるを得ませんでした。
玩具業マルサン商店は、製造工程が模索段階であったブリキ玩具産業に早くから参画し、創意工夫に
富んだ第一人者的立場となりました。マルサンは実際の車に似せるため、業界で初めてプレス加工し
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たブリキに座席用布地の模様を石版印刷することを発案し、より実物に近い仕上げを実現しました。今
回の見所のひとつである「1954年型シボレー・ベル・エアー」は、鮮やかな赤と黄色の本体内に、細密
にデザインされた赤、黄、青の縞模様の車内装飾が施された、マルサンの技術と工夫を代表する逸品
です。
本展のもうひとつのハイライトは、アサヒ玩具製造による全長約40cm の「1962年型クライスラー・イ
ンペリアル」です。「最高峰のアメリカ製自動車」と賞賛される贅沢なモデルに基づいた黒の洒落たセダ
ンは、広角のフロントガラス、ホワイトウォールタイヤ、クロム製グリルガードとライン、サイドミラー、ロ
ケット式尾灯などが特徴です。車内には、年代物の計器盤、ハンドル、革張りに似せた車内装飾が見ら
れ、本体横面には、「Imperial」の金文字が光ります。今日、62年型のクライスラー・インペリアルは、
聖杯同様の価値を持つとみなされ、日本製ブリキ車のコレクターの間では垂涎の的となっています。
ブリキの小片に金髪の学生の顔が描かれ、窓から見えるようになっている全長約30cm の1950年代
半ばのグレイハウンドバスは、1955年のオールズモビルに引かれたキャンピングトレイラーとともに、
珍しい例として挙げられます。キャンピングトレイラーを引く原色使いの車の中には、運転席の父親、助
手席の母親、後部座席の子供たちという、50年代の幸福な核家族の姿が見られます。
ブリキ産業も新進のマンガやアニメなどの影響とは無縁ではいられませんでした。60年代前半に発売
された「1962年型キャデラック・エル ドラ ド・ ビアリッツ」の ハ ン ドルは、手塚治の 同名コミ ックの ミニ
フィギュア、マグマ大使が握ります。
『ブリキのアメ車』展は60年代中頃までの日本のブリキの模型自動車に焦点を当てます。これ以降の
製造産業に到来したプラスチックとのシェア争いに敗れ、ブリキ玩具業者のおよそ12社が5~10年と
いう瞬く間に倒産しました。以来ブリキ製玩具は衰退の一途をたどり姿を消す運命となりますが、ジョ
ー・アールが述べるように、「プラスチックは安価で安全という点では優れていますが、見事な技術で作
られたブリキ作品のような“本物らしさ”は伝えることができません」。本展覧会では、一時代を凌駕した
アメ車の黄金期をミニチュア世界で再演します。
コレクター
田中翼(たなか・よく)。1944年東京生まれ。16歳の頃からアンティーク収集に興味を持ち、玩具やポ
スター、着物などを幅広くコレクション。特に約15年前までの20年間はブリキ玩具の収集に熱中し、飛
行機、車、船の日本製ブリキ玩具の収集に力を注ぎました。日本製ブリキ玩具史上の最高傑作が揃っ
たアメリカ車70台を集めた本展は、一般初公開となります。
キュレーター
『ブリキのアメ車』展は JS バイス・プレジデント兼ギャラリー・ディレクターを務めるジョー・アールが企
画・監修しました。アールは英国・オックスフォード大学にて中国語と中国文学を学び、1974年よりヴ
ィクトリア&アルバート美術館の東洋美術部門にて日本美術およびデザインの分野を専門に手がけた
後、83年に英国国立 美術館史上 最年少 で 同館東洋 美 術部長 に任命されました。91年、『 Japan
Festival 1991』で磯崎新によるハイライト企画、『Visions of Japan』展に携わったのち、主要美術館、
オークションハウス、美術商のコンサルタントとして、日本、欧米で数々の展覧会企画を手がけました。
2003年、ボストン美術館初のアジア・オセアニア・アフリカ美術部長に就任。2007年9月より JS にて
勤務。
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展覧会図録
展覧会にあわせ、ジョー・アール執筆による同名のカタログが JS より出版されます(96頁、19ドル95
セント)。日本のブリキの自動車を歴史的・文化的角度から解説し、展覧会出品作70点を詳細に記録
します。配本はイェール大学出版局で、JS ショップ、www.japansociety.org ほか、一般書店にて販売
されます。
後援・協力
◘ 協賛
米国新日鐵
◘ メディア協賛
WNYC、Louise Blouin Media
◘ 輸送協力
日本航空
◘ 準協賛
ライラ・ワレス・リーダーズ・ダイジェスト基金、JSギャラリー友の会
ヘンリー・コーネル氏(インスタレーション)、スペンサー財団(カタログ)
JS ギャラリーについて
当ギャラリーは日本と東アジアの伝統美術および現代美術を扱いながら、日本と東アジアを包括する
新しい文化的視点を切り開いています。1971年以来、古典仏教彫刻、書画、現代写真、陶磁器、日
本刀、輸出向け磁器、13世紀から15世紀の絵画など、広範囲にわたる展覧会を企画開催し、展覧会
図録の出版、講演会の開催とともに、さまざまな分野の美術を紹介しています。2008年からは、3ヶ
月づつ開かれる春・秋の展覧会に、短期開催で小規模な夏期展覧会が加わりました。2009年秋には
JS ギャラリー開館以来、第百回目の展覧会にあたる『芹沢銈介 – 型絵染の巨匠』を開催します。
JS について
JS は、1907年(明治40年)にニューヨークに設立された米国の民間非営利団体です。全米唯一の規
模を誇る日米交流団体として、両国間の相互理解と友好関係を促進するため、多岐に渡る活動を続け、
2007年に創立100周年を迎えました。活動範囲は政治・経済、芸術・文化、日本語教育など幅広く、
展覧会、舞台公演、映画上映会、講演、試食・試飲会、シンポジウム、国際会議、セミナー、ワークショ
ップ、人物交流などを通じて、グローバルな視点から日本理解を促すと同時に、日米関係を深く考察す
る機会を提供しています。今日、JS は日米の個人・法人会員をはじめ、政財界のリーダー、アーティス
ト、教育関係者、学生など様々な参加者を対象に年間100件以上のプログラムを提供し、1907年の
創立以来、その数は数千件にのぼります。
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