インドネシア産天然アスファルトの補修材への適用性に関する検討

インドネシア産天然アスファルトの補修材への適用性に関する検討
独立行政法人土木研究所
◯寺田
同
剛
川上篤史
株式会社ニチレキ技術研究所
丸山
陽
1.はじめに
近年、石油アスファルトの高騰や生産量の減少が問題になっている。未利用アスファルト資源の
有効利用として,天然アスファルトの利用技術の開発が期待されている。天然アスファルトとして
は、レイクアスファルトやロックアスファルト、オイルサンド等があるが、現在、日本では、鋼床
板舗装の基層に用いられるトリニダットレイクスファルト(以下、TLA)が多く使用されている。そ
こで、土木研究所では、未利用アスファルト資源の有効利用として、日本での使用実績はないが埋
蔵量が豊富なインドネシア産の天然ロックアスファルト(以下,AsButon)について、舗装材料とし
ての適用性を様々な活用方法を評価することを目的として検討を行っている1)。今回補修材への適
用性について検討を行ったので、本報ではその結果について報告する。
2.試験方法
AsButon をポットホール補修材としての適用を検討するため、室内での簡易ポットホール走行試
験と舗装走行実験場でポットホールを擬似的に作製し耐久性走行試験を行った。
2.1
2.1.1
簡易ポットホール走行試験
表-1
使用材料
(1)試験材料
試験に用いた AsButon は、インドネシアのブトン島周辺で産出す
る天然アスファルトで地表露頭から直接採掘できることから,比較
的安価な舗装用アスファルト資源になるものと期待されている。As
Buton は、ミネラル分を 70~80%含む天然ロックアスファルトで、写
真-1 に示すように土のう袋で粒状にして市販されている。本検討で
は,AsButon の中でも埋蔵量の多い KABUGKA と LAWELE で製造された
3種類(BRA-1,BRA-2,BRA-M)を用いた。また、比較試料として日
粒度、針入度、軟化点
通過質量百分率(%)
ふるい目の
(アスファルト抽出前)
呼び寸法
(mm)
BRA-1 BRA-2 BRA-M
19
100
100
100
13.2
100
100
98.2
4.75
60.5
100
57.9
2.36
33
98.5
34.9
0.6
7.8
50.4
8.5
0.3
2.1
18.8
2
0.15
0.1
4.7
0.2
0.075
0
1
0.1
針入度
28.0
0.5
42.0
軟化点
61.0
85.4
78.2
本で一般的に用いられている常温補修用混合物 1 種類も試験した。
AsButon の 3 種類の外観を写真-2~4 に、表-1 にアスファルト付着状態での粒度と抽出後の針入度、
軟化点の結果を示す。最大粒径は一番大きいのは BRA-M の 13mm、次に BRA-1 の 5mm、BRA-2 はほと
んど細粒の 2.5mm であった。針入度は 3 種類とも 42 以下と硬く、BRA-2 は 0.5 と非常に硬かった。
写真-1 AsButon の土のう袋
写真-2
AsButon
(BRA-1)
写真-3
AsButon
(BRA-2)
写真-4
AsButon
(BRA-M)
(2)ホイ
イールトラッ
ッキング供試
試体を製作
作するための
の母体混合物
物
疑似ポッ
ットホールを
を空ける母体
体混合物は、 密粒度アス
スファルト混
混合物(13)を
を使用した。
2.1.2
簡
簡易ポットホ
ホール走行試験方法
試験は、ホイールト
トラッキング
グ供試体(W
WT供試体)に擬似ポッ
ットホールの
の穴を開け、この穴に
する AsButonn 等を転圧し
しWT走行試
試験を行った
た。その方法
法は、東京都
都の簡易ポッ
ットホール
今回試験す
)
走行試験2)
やびつくば
ば舗装技術交
交流会(TPT)で
で提案3)され
れている方法
法を参考に下
下記の方法で
で行った。
(1)母体
体混合物の作
作製
型枠高さ
さ 10cm のWT
T供試体用型
型枠に 3cm 分
分の鉄板を敷
敷き、3.5cm
m 分の混合物
物を型枠に投
投入し振動
タンパで平
平らに転圧し
し1層目を作
作製する(写
写真-5①と②
②)。その後
後、中央部に
に擬似ポット
トホールを
模した軸付
付き円柱板(
(φ14.8×高
高さ 3.5cm) を設置(写
写真-5③)し
し、2 層目と
として軸付き
き円柱版分
を減じた重
重量の混合物
物を投入(写
写真-5④) し、ローラコンパクタで
で転圧し(写
写真-5⑤)母体混合
物を作製す
する(写真-
-5⑥)。
(2)供試
試体の作製
作製した
た母体混合物
物の疑似ポッ
ットホールへ
へ AsButon 等の混合物を
等
を投入する (写真-5⑦)
)。投入時
の混合物温
温度は、事前に基準密度になりやす い温度をマーシャル供試体で確認 し、AsButon
n(BRA-1,
BRA-M):600℃、AsButoon(BRA-2)
常温補修用混
混合物:20℃
℃とした。混
混合物投入後
後、ローラ
:100℃、常
コンパクタ
タで転圧し、WT供試体を
W
を作製する。
。転圧後の供
供試体外観は
は写真-5⑧に
に示すとおりである。
写真-5
母体混合物
物の形状(平
平面図および
び断面図)
T走行試験
(3)WT
① AsButonn のWT走行
行試験は 20±
±2℃で 5 時
時間以上養生
生した後、
常温補修
修用混合物の
の走行試験は
は転圧後ただ
だちに実施し
した。
② 走行試験
験は、60 分とし、走行
分
行試験時の試
試験温度は 20±2℃
2
とした。 その他の条
条件(載荷荷
荷重,接地圧
圧,走行速度
度)は通
試験と同じとした。
常の WT 試
③ 変形量の
の測定は最初
初に中心部を
を通過した時
時のダイヤル
ルゲージ
の読みを
を原点とし、走行試験に
によって得ら
られた変形曲
曲線から
変形量を
を読み取った
た。
写真-6
耐久性試験
験に用
いた無人荷
荷重車
2.2
2.2.1
耐久 性走行試験
験
試 験材料
耐久性試
試験に用いた
た AsButon は、
は 簡易ポッ
ットホール走
走行試験に用
用いた同じ3
3種類(BRA-1,BRA-2,
BRA-M)と
とした。
2.2.2
耐 久性走行試
試験方法
土木研究
究所構内の舗
舗装走行実験
験場でポット
トホールを擬
擬似的に作製
製した穴に A
AsButon を施工し施
を
工性を調査
査するともに
に耐久性試験
験として、写真
真-5 に示す
す無人荷重車
車を 49kN 換
換算で 70,000 輪走行
(N4 交通で
で約 5 年相当)した後の破損状況 を目視調査した。写真-7 に施工し
示す。
した手順を示
写真-7
写
耐
耐久性試験の
の施工手順
結果と考察
3.試験結
3.1
簡易 ポットホー
ール走行試験
験結果
行試験状況を
を写真-8 に、試験後
に
の供試体状
状況を
WT走行
写真-9 に
に示す。また
た、各混合物
物の走行時 間と変形量
量の関
係を図-1 に示す。
の結果から 60
6 分走行後
後の変形量は
は、常温補修
修用混
図-3 の
合物は 9mmm であったが
が、AsButon
n は 3 種類 とも変形量
量は、1
mm 以下で殆
殆ど変形はしなかった
た。これは製
製造温度の差
差もあ
写真-8
走行試験状
状況
るが、AsBuuton は高い
い変形抵抗性
性を有する ことが分か
かった。なお
お、BRA-2 は
は、写真-9 で示した
ように 60 分走行試験
験後に母体混
混合物との界
界面で層間剥
剥がれが生
生じていた。BRA-2 は粗
粗骨材がな
細かい粒度の
の混合物であり、アス
スファルトも
も針入度 0.5
5 と非常に硬
硬いため、既設混合
く非常に細
物との接着
着性が劣り、
、母体混合物
物との層間
間で剥がれが
が生じたもの
のと考えられ
れる。
写真-9
写
試
試験後の供試
試体状況
3.2
耐久 性走行試験
験結果
耐久性走
走行試験結果
果として、As
sButon 施工
工前の
疑似ポット
トホール、施
施工直後、荷
荷重車走行 1 4,000
輪後、21,0000 輪後及び
び 70,000 輪後の路面状
状況を
写真-10 に
に示す。施工
工性は BRA-1
1 および BRAA-M は、
適度の粒度
度とアスファ
ァルト量を有
有しているた
ため常
温でも問題
題なく施工が
ができたが、BRM-2 は非
非常に
細かい粒度
度の混合物で
で表面積に対
対するアスフ
ファル
ト含有量が
が少ないため
め、バーナー
ーで温ためて
ても落
ち着きが悪
悪かった。耐
耐久性の結果
果は、BRA-1 およ
図-1
図
各混合
合物の走行時
時間と変形量の関係
び BRA-M は
は、14,000 輪通過後で細
輪
細いひび割れ
れと
若干の飛散
散が見られた
たが、70,000
0 輪通過後ま
まで
大きな損傷
傷は発生しな
なかった。こ
これに対して
て、
BRA-2 は、 14,000 輪通
通過後でひび
び割れと飛散
散が
々にひび割れ
れと飛散が増
増加していき
き、
見られ徐々
70,000 輪通
通過後では破損した状態
破
態となった 。
BRA-2 は、 施工性が悪
悪く既設混合
合物との接着
着性
ため早期に破
破損したものと思われ
れる。
が劣ったた
4.まとめ
め
今回の検
検討は、粒状
状の AsButon の出荷状態
態の
ままで特に
に材料を加え
えず、ポット
トホール補修
修材
に適用可能
能か検討した
た。以上の結
結果から、ア
アス
ファルトが
があまり固くなく粗粒が
があり通常の
の方
法で施工が
が可能な特性
性を有する BRA-1 と BRAA-M
は、アスフ
ファルトが固
固く細粒しか
かない BRA-22 よ
り、ポット
トホール補修
修材への適用
用は有効と考
考え
られる。な
なお、今回の
の検討は、室
室内の簡易ポ
ポッ
トホール走
走行試験と舗
舗装走行実験
験場での 70, 000
輪までの耐
耐久性試験の
の結果である
るため、今後
後は
耐水性、耐
耐骨材飛散性
性及び接着性
性等の試験や
や耐
久性の継続
続試験も含め
めた検討を行
行い、AsButoon の
補修材とし
しての適用を
を提案したい
いと考えてい
いる。
写真-10
写
耐久性走行試
耐
試験の路面状
状況結果
<参考文献
献>
1)寺田剛、 川上篤史、久保和幸、佐々木厳: インドネシ
シア産天然ア
アスファルト
トの綱床版へ
への適用に
検討、第 30 回日本道路会
回
会議、2013..10
関する検
2)峰岸順一
一、竹田敏憲
憲:低騒音舗
舗装のポット
トホールに使
使用する高性
性能型常温混
混合物の評価
価、舗装工
学論文集
集、第 12 巻、
、2007.12、pp131~1399
3)つくば舗
舗装技術交流
流会:維持修
修繕に関する
る検討、TPT Report、No
o.13、2013..9