第25号

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城西クリニック
サ
ポ
第 25 号
―
ト
2011 (平 成
23 年 ) .10.20
発行
画像診断の質の向上のために
城西クリニック
院長 松本満 臣
画像 診断し ている と、ど こまで が今 のスタン ダード なのか をいつ も考え させ
られます。CT や MRI というすばらしい診断装置を使えるようになってから 30 年
以上が経 ちます 。人体 の正常 と異常 をこ れほどま で鮮明 に画像 化する ことが でき
るように なった 今、ど こまで 早期に 診断 できるか 、どこ まで正 しく診 断でき るの
か、その ために 私は何 をすべ きなの かを いつも気 にしな がら過 ごして きたよ うな
気がします。
CT や MRI では撮像プロトコルを省略したり、画像処理を省略したりするとキ
ャッチで きるは ずの病 変を見 落とす こと がありま す。こ れを防 ぐには 現有機 種で
最高の検 査技術 を駆使 する必 要があ りま す。もう 一つ重 要なこ とは、 画像所 見を
どう解釈 するか です。 撮像プ ロトコ ルを 含む検査 技術と 密接に 関係し ますが 、所
見の解釈は研究成果の積み重ねによって時代とともに深化しています。5 年 10 年
単位でみれば、診断基準が着実に更新され高度になっています。
個人的に は年齢 的にも なか なか 難 しいこ とですが 、要は 自分自 身の再 教育 つま
り生涯教育 continuing medical education (CME) しかないと思います。放射線科
医になった昭和 42 年(1967)から購読していた original article 中心の Radiology
は思い切って平成 20 年(2008)で止めて、RadioGraphics という CME を目的とし
た同じ北 米放射 線学会 発行の 隔月の ジャ ーナルに 切り替 えまし た。今 の私の 画像
診断のスタンダードを設定する上で大変役立っています。
この原 稿を書 き始め たら、 日本医 学放 射線学 会 のガイ ドライ ン担当 の新委 員長
から学会のメーリングリストを通じて「(前略)画像診断においては①適応を明確
にするこ と、② 撮像の 質を担 保する こと 、③画像 の読影 の質を 確保す ること を目
的として改訂版の作成に当たりたい(後略)」旨の改訂方針が示されました。考え
ていることは誰も同じだと改めて思いました。
画期的な製品で夢を与え続けてくれた Steve Jobs 氏が 10 月 5 日に亡くなったと
いうニュースが飛び込んできました。彼が 2005 年にスタンフォード大学の卒業式
で述べたという ”Stay hungry, stay foolish”の言葉は印象的でした。Steve Jobs の
いう foolish は、これまでの概念にこだわらない自由な発想をという意味だと思い
ます。知識人に対する風刺のようにも思えます。70 歳になった私はいまさら Steve
Jobs のいう foolish にはなれませんが、高精細画像で精度の高い画像診断をした
いというハングリー精神だけは持ち続けています。考えてみると、 10 分間の 朝 礼
のときに 口にす るのは “検査 技術と 読影 力の向上 ”に関 する内 容ばか りのよ うな
気がします。私たちが地域医療に貢献できる術はこれしかないのですから。
イ メ ー ジ ・ ギ ャ ラ リ ー No.25
A
B
C
図1
D
一次 結核 によ る 結核 性リ ンパ 節炎 ( 20 歳代 男性 )
1 か 月 前か ら咳 漱、喀 痰、発熱 が 続き 、血 痰が 出た ため 胸 部 X 線 撮 影が 行わ れ右 肺 野異 常影
を指 摘さ れ検 査 依頼 を受 けま した 。問診 で は喘 息の 治療 中と の こと でし たし 、処方 薬に 喘 息
薬が 記載 され て いた ため、造 影 CT を撮 り たい とこ ろで した が 単純 CT のみ とし まし た。気
管支 喘息 では 造 影剤 投与 は原 則禁 忌 とな って い るか らで す。CT では 右肺 門か ら 縦隔 にか け
て著 明な リン パ 節腫 大が あり まし た。右上 葉 の S1 の領 域に 微 細粒 状濃 度が あ った こと から 、
一次 結核 とそ の リン パ節 炎を 疑い ま した。リン パ節 腫大 が主 所 見で した ので 悪性 リ ンパ 腫や
サル コイ ドー シ スと の鑑 別に 造 影 CT が必 要 で ある 旨を 記載 し まし た。その 後、気管 支 喘息
では ない こと が 判明 し、 症状 が続 い てい るこ と もあ って 初 回 CT から 3 週間 目 に再 度造 影
CT を 行い ま した 。図 A-D は 2 度 目の CT です 。る いる いと 腫 大し たリ ンパ 節 は辺 縁の みが
造 影 さ れ内 部 は 造 影 不 良 で 低 吸収 域 を 呈 し て い ま す (A-C→)。 乾 酪 壊 死 を反 映 し た 造影 CT
所見 です 。右 上 葉 S1 領 域の 粒 状濃 度は やや 進 行し てい まし た ( D→)。 喀痰 の PCR 法で 結
核と 診断 され 治 療が 開始 され との こ とで す。一 次結 核の 結核 性 肺炎 につ いて は群 馬 県医 師会
報 No.755 号 (平 成 23 年 6 月号 )で 報告 しま した が、 1 年 の うち に成 人の 一 次結 核を 2 例
も遭 遇す ると は 筆者 自身 も驚 きま し た。
A
B
C
D
図 2 肛 門周 囲 膿瘍 (20 歳代 女 性)
A:T1WI 冠 状断 像。B:Gd 造影 脂肪 抑 制 T1WI。C:T1WI 横 断像 。D:Gd 造影 脂肪 抑 制
T1WI。肛 門周 囲膿 瘍の 治 療開 始後 に MRI 検査 を依 頼さ れま し た。T1WI (A, C)で は骨 格 筋
とほ ぼ等 信号 の 病変が 3-4 時 の領 域 から 後下 方 に肛 門周 囲の 脂 肪組 織内 に進 展し て いま す。
Gd 造影 脂肪 抑 制 T1WI で は辺 縁が 強 く造 影さ れ、内部 に 低信 号域 の液 体 貯留 すな わち 膿が
描出されています。肛門周囲膿瘍の表在膿瘍は強い疼痛を伴うことが多く、肛門周囲の腫
脹、発赤、圧痛が特徴的ですが、深部膿瘍はそれほど強い痛みがないようですが、発熱、
悪寒 、倦 怠感 を 伴い やす いと され て いま す。 深 部膿 瘍に 対し て は CT また は MRI が よい 適
応になりますが、肛門周囲膿瘍や肛門直腸瘻孔(痔瘻)の広がりや治療方針の決定には組
織コ ント ラス ト に優 れた MRI の 情報 量が 多く 、さ らに 治 療効 果判 定に 有用 な 評価 法と して
有用性が認められています。肛門直腸瘻孔は、一方は肛門管に開口し、他方は通常肛門周
囲の 皮膚 に開 口 しま すが 、内 視 鏡で 評価 でき な い深 部の 状態 把 握に も MRI が も たら す情 報
が治 療に 役立 ち ます 。
テクニカルレポート No.17: 上肢 ( 手 指・ 手関 節) MRI 撮 影シ ーケ ンス の 標準 化
四肢 領域 は、 骨 、軟 骨、 筋、 腱 、靭 帯な どに よ り構 成さ れて お り、 これ らに 対 する 優れ た
コン トラ スト 分 解能 を有 する MRI の有 用 性は 高い とい えま す 。今 回は 上肢 、特 に 手指 ・手
関節 につ いて 説 明さ せて いた だ きま す。 体位 は 撮影 部位 を磁 場 中心 にな るべ く 寄せ 、伸 展回
内位 にて 確実 に 固定 しま す 。コ イル は 、手 関節 専用 コイ ルま た は表 面コ イル( FOV が小 さ く、
SNR の高い コイ ル を選 択し ます 。) を用 い ます 。ま た、 手指 等 の小 さな 撮影 部位 を 撮影 する
にあ たり 、必 要 に応 じて マイ クロ コ イル を用 い ます 。
手指 ・手 関節 の シー ケン スに つ いて 、プ ロト ン 脂肪 抑制 は、 骨 挫傷 の診 断に 使 用し ます 。
STIR(ま た は T2-FS、PD-FS)は浮 腫・炎 症 等の 診断 に有 用 です 。手根 幹症 候 群は 水平 断を
中心 に撮 影し 、 舟状 骨骨 折や キ ーン ベッ ク病 は 矢状 断の 撮影 を 追加 する こと で によ り診 断が
し易 くな りま す 。ま た、 リウ マ チの 診断 には 造 影剤 を用 いる こ とで 、滑 膜の 染 まり をみ るこ
とで 鑑別 が可 能 とな りま す。 ま た、 手関 節や 手 指の よう な小 さ な撮 影部 位の 場 合は 、マ イク
ロコイルを用いることにより小さな病巣を描出することが 可能となります。これは大きな
FOV では パー シ ャル ボリ ュー ム効 果 によ り 、異 常信 号が 正常 信 号に 埋も れて しま う ため です 。
パー シャ ルボ リ ュー ム効 果を 回避 す るた めに は 、小 さな FOV で薄 いス ラ イス を用 いて 対 処
しま す。 触診 で は小 さな しこ り があ るが 、画 像 診断 では 描出 さ れな い。 この よ うな 場合 はマ
イク ロコ イル を 用い て撮 影す る こと で異 常信 号 を描 出す るこ と が可 能と なる ケ ース が散 見さ
れま す。当 院 で使 用し てい るマ イ クロ コイ ルは 県内 最小 の 23mm/47mm の 2 種類 を使 用し て
いま す。
磁気共鳴専門技術
Cor (3mm) :T1
者認定機構推奨シ
Trs : T1
ーケ ンス
上
OP:T2*-3D
(手
節)
関
城西 クリ ニッ ク
上
肢
(手
関
節)
肢
T2-FS(STIR)
T2*
(PD-FS)
T2-FS
造影 検査 :T1-FS (T1-FS-3D)
Cor (3mm):T1
T2*
Trs (3mm):T1
PD
Sag (3mm): T1
PD-FS
造影 検査 :T1-FS
PD-FS
STIR
STIR
T1
城西 クリ ニッ ク 事務 長
磁 気共 鳴専 門 技術 者
医療法人 社団 高仁会
大竹
知弘
城西クリニック
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℡:027-234-7321
FAX:027-234-7325
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