スティーブ・ジョブズは何を遺したのか -松下幸之助との比較- 土曜倶楽部例会資料 2012.12.16 ■ Steve Jobs (1955-2011/S30-H23) (Ref. Jobs 伝記 ウォルター・アイザックソン/講談社) 私生児(母親は未婚の大学院生)として生まれ、養子縁組、大学中退。ビル・ゲイツと同い年。 飛び級して中学へ、高校でマリファナ&LSD、エレクトロニクス/文学/クリエイティブなことが好き 高校時代、5 歳年上の卒業生スティーブ・ウォズニアック(当時から天才だと伝説)と出会う。 大学 1 年の頃からベジタリアンに。19 歳の時 7 ヵ月間インド放浪(with ダン・コトケ)。 禅宗を中心とする東洋思想に傾倒(大学図書館に通う) → ぎりぎりまでそぎ落としてミニマリスト的な美を追求、厳しく絞り込む集中力も皆、禅から ■ 松下幸之助 (1894-1989/M27-H01) (Ref.「ジョブズ VS 松下幸之助」竹内一正/アスキー新書) 和歌山出身、8 人兄弟の末っ子、小学校中退、幼尐の頃より体が病弱(すぐ熱を出して寝込む)、 読み書き不得意、9 歳 : 大阪船場の自転車店に丁稚奉公(時代は日露戦争の真っただ中、日本 中大不況)、15 歳 : 大阪電燈に転、27 歳 : 家族全員を失う 「金儲け」と低く見られていた「商売」を、社会に貢献する「哲学」に進化させた。 「会社を経営するのはお金のためではなく、社会を良くするため」 自分ひとりで考えてダメなら、周りから知恵を得る、衆知を集めることの重要性を強調 1976 (21 歳) : $1000 を元手にアップルコンピュータ設立、設立 4 年目で株式上場 (25 歳で資産 1 億ドル) 1916 (22 歳) : 独立 1918(大正 5, 24 歳) : 最初のヒット商品はアタッチメントプラグ ・ あれもいらない、これもいらないを割り切る「引き算の設計」 ・ 周囲を信じて、敵でも見方にする「足し算の経営」 ・ 最優秀な部下達と火花を散らしてすごいものを生み出そうとする。 ・ 平凡な人を優秀な人材に変える力を持つ。 ・ 経営哲学は「選択」と「集中」、開発情報は徹底的に秘匿 「松下電器は、ものを作る前に、人を作る会社」 ・ 支配的な完璧主義者、製品を完璧にしようとしない人間は、全員まぬけ扱い 困難に直面させ、懸命に努力するという切実な場面を体験させる。 ・ Apple は Jobs がすべてをコントロール、全体まとまり損益計算書が一つ ・ 感情にまかせて Jobs 以上に怒鳴りつける時も。 ・ ソニー、京都が大好き。Walkman を語りだすととまらない。 ・ 人の話をよく聞く。聞いてその上で相手を説得にかかる。 ・”Unbelievable”, ”Wouldn't it be great ?” ■ 2 人の共通点 ・ 親の七光りどころか、学歴もお金もなし。自分だけをよりどころに自分の力で打って出て、自分の努力で成功を手にした、正真正銘の本物の経営者。成功への信念だけが唯一の武器。 ・ 数多くの失敗を経験。大切なことは、失敗で止めてしまわないこと。あきらめず立ち上がったからこその成功。 「失敗とは、成功する前にあきらめることだ」 (幸之助) ・ 檄を飛ばす! 「何がなんでもやり遂げると決心すれば、できる。必ず作れるという確信を持つか持たないかがそのポイントだ。僕は君達がやり遂げることを信じる。だから断じてやりたまえ」 (幸之助) ■ Steve Jobs - Working Style 初期の問題点 : 考えがなく、しかも間違った判断で行動する / 認めるべき功績を認めず、しばしば感情的に反応 / 話に平気で割り込むが、他人の話は聞かない / 好き嫌いで部下と接する / 気分次第で言うことがころころと変わる / 約束は守らず、無責任で何より思慮が足りない / 技術を十分理解せずに思いこみで突っ走る / 楽観的過ぎる予測 ↓復帰後 ・ 「何をしないのかを決めるのは、何をするのか決めるのと同じくらい大事。会社についてもそうだし、製品についてもそうだ」 アップルを救ったのは、彼の「絞り込む力」。 ・ 「緊密なコラボレーション」 + 「同時並行のエンジニアリング」 → アップルの開発プロセスでは、様々な部門が協力しながら作業を進める。 ・ 「「顧客が望むモノを提供しろ」という人もいる。僕の考え方は違う。顧客が今後、何を望むようになるのか、それを顧客本人よりも早くつかむのが僕らの仕事なんだ」 「欲しいモノを見せてあげなければ、みんな、それが欲しいなんてわからない。歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが僕らの仕事なんだ」 ・ 「デザインがエンジニアリングを導く」 全体像を捉えることで、社員のモチベーションを上手に高める。 (「曲を出すのに 3 回もボタンを押すなんてダメだ」) ・ 抽象的思考や論理的思考よりも、直観的な理解や意識の方が重要。「直観は知力よりもパワフル」。 (直観や洞察を重視する仏教の教えに強い影響を受けている) ・ いきなり高い目標を掲げる。社員全員と仕事をする気は毛頭ない。厳選した A クラスのメンバーだけを相手に、鬼軍曹的にムチを入れ、不可能と思えることをやり遂げようとする。 ・ 周りのメンバーを怒鳴りつけ、プレッシャーをかけて駆り立て、その力を限界まで引き出すことで、実現不可能な壁を乗り越える。 ・ 誰もが困難と思えるような交渉を、自分に有利な条件で決着させる能力。→ 常識ではできっこない現実をできると思わせる = 「現実歪曲フィールド」 (Reality Distortion Field) = カリスマ的な物言い、不屈の意志、目的のためならどのような事実でもねじ曲げる熱意が複雑に絡みあったもの ・ マイクロ マネジメント : 担当者に任せておけばいいのにと思うようなことまで口に出す。社長が一つの製品の設計仕様にまで口を出すのは常識では考えられないこと。 → 最高指揮官が製品(作品)の細部にこだわることには、全体の出来栄えをより素晴らしいものに進化させる効果があると教えてくれる。 ・ 毎週水曜午後 : 広告代理店、マーケティング、コミュニケーションのトップを集め、メッセージ戦略の自由討論を 3 時間も続けるミーティング開催
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