第 3 回 UNI-Apro 地域大会 (2011 年 7 月 5∼6 日

第 3 回 UNI-Apro 地域大会
(2011 年 7 月 5∼6 日、フィリピン・マニラ)
議題 5:地域書記長報告
UNI-Apro ブレイキングスルー活動報告
序文 ......................................................................................................................... 2
第 1 章:世界の中のアジア、アジアと世界.............................................................. 7
第 2 章:グローバル化時代の UNI......................................................................... 20
第 3 章:ステッピングアップ@UNI-Apro ............................................................. 30
第 4 章:リーダーシップは社会的なアジア太平洋地域を形成する ........................ 30
第 5 章:加盟組織は連帯し、方向性を定める ........................................................ 33
第 6 章:UNI-Apro 部会の成長.............................................................................. 38
第 7 章:専門委員会の統合と強化.......................................................................... 49
第 8 章:将来を展望して........................................................................................ 55
UNI-Apro の成長‐ボレ!
アジア太平洋地域で UNI プレゼンスの影響力を拡大する..................................... 56
1
序文
UNIグローバルユニオンとして知られるユニオン・ネットワーク・インターナショナルは、約
11年前の2000年1月に、経済・技術のグローバル化という多面的な挑戦課題に立ち向かうために、
より高いレベルの国際連帯を構築すべく、加盟組織と共に努力する、新しいグローバルユニオン
として創設された。UNIの連帯は、UNIの組合員の生活の質と労働条件を向上させるという極め
て重要な任務と共に、世界、地域および各国の経済社会発展の中で、人々を第一に考える創設組
合共通の構想を基盤としている。
我々が直面している世界的な変化の中で、我々に突きつけられた雇用の欠如、正義の欠如、ジ
ェンダー平等の欠如および対話の欠如はすべて、グローバル化のプロセスの中で、人々を第一に
考える上での障害になっている。
UNI-Apro 加盟組織は、他の地域の加盟組織と同じように、雇用創出の拡大とディーセント・
ワークを促進する政策に直面するのではなく、アジアの労働市場を襲い、雇用、労働組合および
労働者の所得保障を侵し、一般の失業者を増大させている経済のグローバル化という危険な海で
の舵取りの中で、困難な課題を体験している。
アジア太平洋地域のUNI加盟組織は、今日、労働組合主義に対してこれまで以上に敵対的な環
境の中で活動を行っている。その特徴は、特定の使用者と多国籍企業が、特に世界競争を底辺へ
の競争、労働者の権利を後退させる競争に変えようと、絶え間なく努力していることである。
市場勢力に全面的に依存する偏狭なネオリベラル的哲学に煽られ、不透明な規則と権限の下に
運営されている国際金融機関や貿易機関が促進している経済の多国籍化と、民営化に有利な経済
環境が与えられていることから、グローバル化が労働者およびアジア社会の大多数に及ぼす悪影
響が増大している。
幹部経営者の法外な給与、腐敗したアナリスト、独りよがりの役員と疑わしい会計慣行などの
悪しき企業統治が、世界的に蔓延している。経済実績と役員給与の関係が乖離し、ビジネス慣行
に対する信頼とCEOや企業行動の信頼性の危機を迎えている。
世界経済は、社会資本や社会的保護を無視または破壊し、その一方で国境を越えた資本の自由
な移動と資本逃避を擁護するIMFや世界銀行によって、深刻な打撃を受けてきた。
WTO、GATS交渉、およびその他の貿易自由化のプロセスで、経済の主要部門であるサービス
部門が自由化、民営化、そしてグローバル化され、銀行、電気通信、郵便、流通、マスコミおよ
び印刷などの産業で、伝統的な雇用と組合保障を奪い去っている合併熱によって、富と権力の再
集中が起きている。
グローバル化は失業の増大と労働者の国境を越えた選択的移動を生み出している。それは、多
くの使用者が移民労働、特に女性のようなもっとも弱い立場のグループを搾取しようとしている
からである。これにさらに利己的な社会が加わると、不平等、差別、人種差別のレベルが高まる
ことを意味する。
このような状況から、我々は、現在の世界経済危機は企業、特にグローバル企業がその責任を
果たさなかったことの直接の帰結であると考えている。今日、誰もが拝金主義、特にグローバル
企業の拝金主義が世界の金融バブルの根源であると非難しているのは、そのためである。
実際に、一般の労働者の報酬の150倍以上の報酬を得ているCEOの良心は、どこにあるのだろ
うか?退職者が苦労して稼いだ数十万ドルのお金を投機的で生産性のないデリバティブに出資
するためにつぎ込み、向こう見ずにも、このような年金生活者の生活を不確実な将来に賭けた銀
行家やエクイティの経営者の善悪の観念は、どこにあるのだろうか?
我々が企業の社会と労働に対する使命を取り戻す必要があるのは、明らかである。我々は明確
な社会・労働規則のある新しい世界経済秩序を構築する必要がある。我々はグローバル化のプロ
セスと考慮すべきあらゆる問題の中で、人々を第一に考える必要がある。グローバル化は資本の
自由な移動だけを意味するのではない。UNI-Aproとしては、グローバル化を社会正義と労働組
合権のグローバル化にも向かわせなければならない。
このことはUNI-Aproに、人々第一の考え方と行動を求めている。 すなわち、次の事項を含め
た包括的な政策の必要性を意味している。
雇用創出と雇用保護を重視する経済政策
2
社会的セーフティ・ネットを強化する政策
教育と訓練への投資
女性と弱い立場のグループの平等な教育・訓練機会を保障する措置の導入
仕事における公正な規則
児童労働の撤廃
移民労働者の保護
情報技術革命が労働者に及ぼす影響への対処とデジタル・ディバイドの克服
我々は、仕事と正義が保障されるグローバルな世界を目指すUNIの構想を主張する。この構想
では、人々が第一に扱われ、労働組合があらゆる社会・経済発展のプロセスに不可欠な要素にな
っている。
我々は、経済のすべての部門で労働組合がしっかりとした存在感を持つこと、および雇用を促
進し、民主主義を強化し、環境的に持続可能なグローバル化の勢力を活用するための地域および
世界の活動を支援することが我々の目標であることを主張する。
我々は、労働組合運動を、各国、地域および国際レベルで多国籍企業に対処でき、公正で進歩
的な開発プロセスの下に、確実で、豊かな、質の良い雇用を求めるあらゆる地域の働く人々の要
求を推進することができる社会変化を目指す、近代的な運動に変化させようという我々の決意を
主張する。
ブレイク・フリーのための団結
UNI-Aproはこの目標に向かって、以下の事項を実施するために、加盟組織、ITUC、国際産別
組織および同じ考えを持つNGOとの協力をこれまで通り、今後も続けるつもりである。
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多数の潜在的組合員を労働組合運動に参加させるために、具体的な組合組織化と組合員獲得
運動を開発し、立ち上げる。
男性、女性、移民およびインフォーマル労働者等、すべての労働者の完全な労働組合権を求
めてキャンペーンを実施する。これに関して、我々はすべての政府と使用者に、ILOの基本
的権利に関する宣言と中核条約を完全に履行し、遵守するよう要求する。
債務救済、貧困削減、人権・労働組合権および統治の改善を含めたグローバル化と地域経済
統合の社会的側面、およびIMF、世界銀行、アジア開発銀行、WTOのようなグローバルな機
関に十分な民主主義を確保するための改革を求めて、キャンペーンを実施する。
政府および使用者との交渉を通して社会的対話の創設と変革の管理を要求し、また、貿易協
定、経済改革、社会的保護のような労働者に影響を及ぼすすべての問題に関して、ASEAN、
SAARC、APEC、ASEM等の世界および地域の機関との話し合いの場への参加を要求するキ
ャンペーンを実施する。
すなわち、これが2007 – 2010年の期間に実施されたUNI-Aproの活動の目的である。第2回
UNI-Apro地域大会の指示に従い、UNI-Apro書記局は戦略を改善し、創造的活動を展開させ、キ
ャンペーンを強化し、グローバル化の挑戦に立ち向かい、仕事の世界の変化に対応しようと努力
する加盟組織を支援する新しいプログラムを導入した。それには次のプログラムが含まれている。
多くの専門職・監督職や契約、パートタイム、臨時労働者を含め、増え続ける新しい非典型
的従業員をターゲットにする新しい組織化戦略と技術を開発する。
非正規従業員、専門職・監督職員が自分の意思で選択して労働組合に加入し、そのような従
業員の組合組織化を促進する権利を宣伝する。
組織化や新しい問題の交渉に関する組合の技術を向上させる。
労働者を代表し、その利益を擁護する革新的な方法を加盟組織と共に開拓、開発し、共有す
る。
雇用と所得保証を保護する戦略の一環として、「社会運動労働組合主義」のような新しい従
業員・労働組合エンパワメント・プログラムを導入し、人的資源開発政策を促進する。
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グローバル化の下で人々を優先する開発アジェンダを擁護する中で、アジア太平洋地域の労
働組合とこの地域で事業を展開している企業の米国、欧州およびアフリカの労働組合の間の
組合連帯を促進し、他の労働組合、学会および同類の非政府組織とのネットワーキングを育
てる。
労働組合運動の影響力、および様々な問題に関する労働組合の役割とその方針に対する認識
を回復させるための総合的戦略の一環として、様々な地域および国際フォーラムに積極的に
参加する。
UNIの代表が存在するすべての国にUNI加盟組織のための全国連絡協議会(NLC)を設置し、
既存のNLC内における加盟組織間のより緊密で積極的な協力を促進する。そのような協力は、
同じ部門および/または東アジア、ASEAN、SAARCなどの経済・政治グループ間の緊密な
協力を促進するための小地域機構を設置することによって、強化するべきである。
ソーシャル・パートナーシップという幅広い概念の下に、企業、部門および各国の発展への
労働組合の建設的参加を宣伝し、奨励し、推進する。
労働組合権・人権を求めるキャンペーンやグローバル化のプロセスに社会的側面を求めるキ
ャンペーンの中で、NGOとのより緊密な同盟や、他の国際産別組織やICFTU Aproとの協力
を追求する。
UNI-Apro のブレイキングスルー
この期間中に実施された活動のまとめは、関連する章に記されている。それには活動の評価、
業績のハイライト、および将来の活動に対する提案も含まれている。
私はUNI-Aproのいくつかの感動的なブレイクスルーのみを取り上げたいと思う。
真の積極的経営者・労働組合パートナーシップの好ましい影響
UNI-Aproは、未組織労働者を組織化し、雇用労働条件を改善するための団体交渉を促進する
ために、経営者・労働組合パートナーシップを、労働組合権を求めるキャンペーンの戦略的対応
の一環として宣伝してきた。UNI-Aproは、そのようなウィン-ウィンの戦略が、労働組合に対す
る使用者の抵抗を低減し、職場と社会における労働組合の影響力を強化すると考えている。 し
かしそれは、労働組合が選ばれた指導者に導かれ、組合員に支持される、真に独立した労働組合
である場合に初めて、機能するのである。
私は美辞麗句を並べているのではない。UNI-Aproにおいては、強力な労働組合主義、高度な
協力、生産性の向上、企業の競争力の強化が、同時に起こりうることを見事に示しているアジア
の企業と加盟組合の数が増えている。
一つの例は、インドネシアで事業を展開しているインターナショナル・デイリー・ファームの
スーパーマーケット・チェーン、ヒーローである。ここではすべての従業員がAspekインドネシ
アに加盟するヒーロー労働組合に組織されている。ヒーローの組合と経営者は、UNI-Aproの指
導と支援の下に、真のパートナーシップを発展させ、企業と従業員の両方を繁栄させ、組合の力
を強化した。
ヒーローは、労働組合主義と正規雇用に強い抵抗があることで知られている産業においてさえ
も、労働組合主義とビジネスが共に繁栄できることを発見し、喜んでいる。組合は企業の生産性
と収益性の向上に大きく貢献し、その見返りに、ヒーローの従業員は、小売業部門で最高の賃金
とボーナスを含め、すばらしい雇用・労働条件を享受している。
労使関係のこのモデルは、特にインドネシアの小売部門の労働組合と使用者にも、これに習お
うという意欲と元気を与えた。ヒーロー労組、Aspekインドネシア、およびUNI-Aproは、イン
ドネシアの労働組合、使用者団体およびインドネシア政府から高い評価を得ており、今では地域
社会全体の支持さえ得ている。
ヒーローにおけるパートナーシップ関係の発展にUNI-Aproが重要な役割を果たしたことを認
めて、ヒーローの大多数の従業員が住んでいる地域社会は、道路にUNIの名前(Jln UNI Global)
を、またもう一つの道路にヒーローという名前を付けるよう地方自治体に陳情した。またもう一
つの道には、ヒーローでパートナーシップを発展させる道を開いた、オーストラリアSDA(UNI
商業部会のオーストラリアの加盟組織)の財務担当書記のジョセフ・デブリュンUNI会長が果た
した重要な役割を認めて、Jalan SDA 労組と名付けられた。
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パートナーシップ労使関係の原則は、UNI-Aproとインドネシア労働省が開催した第1回インド
ネシア小売業者三者構成会議で、小売業によって採択された。
初めてのグローバル枠組み協定
UNI-Aproと加盟組織は、グローバル協定に関して多数の「初めて」を実現し、ブレイクスル
ーを成し遂げた。
髙島屋百貨店と日本流通労組に加盟する髙島屋労働組合のアジア(日本)で初めてのグローバ
ル協定
全国オーストラリア・グループと金融部門労組の太平洋(オーストラリア)で初めてのグローバ
ル協定
アンタラ通信(ニュース・マスコミ)とAspekインドネシアに加盟するアンタラ労組のインドネ
シアで初めてのグローバル協定
メディアプリマとUNI-MLCマレーシアに加盟するTV3労働組合のマレーシアで初めてのグ
ローバル協定
Aspek インドネシアの立ち会いの下にテレコム・インドネシアと結ばれたアジアで初めての
テレコム部門のグローバル協定
これら「初めて」のグローバル協定は、UNI-Apro が広めているよりよいパートナーシップ労
使関係を目指す組合−経営者参加の強力な基盤を築き上げた。
国際産別組織に加盟した初めてのベトナムの労働組合
ベトナム全国郵便テレコム労組(VNUPTW)は2007年10月に、UNIに加盟した。国際産別組
織に加盟した初めてのベトナムの労働組合である。これは移行過程にある経済国の労働組合が、
社会・経済の市場経済への移行過程の中で発展し、変化に対応するよう支援するUNI-Aproの戦
略が結実したものである。
UNI-AproがASEANで開始した三者構成の社会的対話
インドネシアの小売業部門でパートナーシップ労使関係を発展させる上で果たしたUNI-Apro
の建設的役割と、マレーシア、ベトナム、ラオスにおけるそのような関係に対する我々の支援が、
ASEANのプロセスにおける社会的対話を促進する努力を前進させた。
地域レベルでは、UNI-AproはBWI APおよびPSI APとの緊密なパートナーシップの下で、
ASEANおよびASEAN事務局との社会的対話の機構として、ASEANサービス労組協議会
(ASETUC)を発展させた。3年間という短い間に、ASETUCは承認を勝ち取り、ASEAN事務
局およびASEAN上級労働事務官会議(SLOM)との関係を強化した。
ドイツのFESが支援し、UNI-Apro、BWI AP、PSI AP、ASETUC、ベトナム労働・傷病兵・
社会省がハノイで共同開催した第1回ASEAN部門別社会的対話会議には、ASEAN10カ国すべて
の労働省、ASEAN使用者連盟およびASEAN事務局の代表が参加した。会議の勧告は、2009年の
ASEAN労働閣僚会議のコミュニケに記録され、社会的対話に関するASETUC/FESプログラム
は、2011-2015年のASEAN労働閣僚労働プログラムの一つに挙げられている
勧告
私は、ネパールのUNI NLC、マレーシアのUNI-MLC、日本のUNI-LCJ 、およびインドネシ
アAspekの加盟組織の職員や組合員の組織化キャンペーンの感動的な成功に感謝し、賞賛したい。
これは組合員数の増加や、新規に設立され、UNIに加盟した労働組合の数にも反映されている。
謝辞
本報告書は業績の記録であると共に、学んだ教訓の参考資料でもある。以下に続く報告から、
まだなすべきことがたくさんあることに気づくだろう。従って、UNI-Aproが構想を実現させな
ければならないとしたら、その主張と組織化活動を強化しなければならないことは、明らかであ
る。UNI-Aproは、企業、地域およびグローバルなレベルで、活動規則に影響を与える運動を強
5
化しなければならない。仕事のすべての分野において、いわゆるレベルを引き上げなければなら
ない。
私の最後の報告で指摘したように、UNI-Aproを労働者、労働組合および社会にとって今まで
以上に意義のある存在にするために、我々は絶えず成長しなければならない。この目的のために、
我々は活動方法をさらに双方向的で参加的なものに変え、労働組合間および非政府組織との各国、
小地域および地域レベルの協力をさらに強化できるようにする必要がある。
人を中心においたグローバル化を構築するためには、社会のすべての部門の誠意ある参加が必
要である。労働者とその家族の懸念が中心に置かれている世界というUNI-Apro の構想を成功さ
せるためには、労働組合活動家間のさらなる団結が必要だということを、UNI-Aproは認識して
いる。UNI-Aproはすべての加盟組織に対し、団結して対応するよう要請する。
この報告を終わらせるにあたり、私は各加盟組織と友好組織の支援と協力に感謝し、その継続
的支援を期待する。次に私はUNI-Apro執行委員会、特にUNI-Aproのジョセフ・デブリュン会長
の指導と支援に感謝する。
私は、UNI書記局がUNI-Apro書記局にさしのべた協力に感謝し、フィリップ・ジェニングス
UNI 書記長の指導と支援に感謝したい。
さらに私は、地域書記局と東京事務所の私の同僚の献身、惜しみない支援および並外れた協力
に対する私の感謝の気持ちを記したい。私は彼らの卓越した活動を賞賛する。
最後に、私は鈴木則之ITUC-Apro書記長をはじめとして、この地域で活動している様々なグロ
ーバルユニオンを代表する私の同僚の協力と支援に感謝したい。UNI-Aproは国際産業別組織の
仲間に不可欠な一員として、ITUC Aproおよびこの地域で活動している様々な国際産別組織との
緊密な関係を大切にしている。
私は、2011年7月5 – 6日にフィリピンのマニラで開催される第3回UNI-Apro 地域大会で審議
するために、本報告書を提出することを嬉しく思っている。
UNI-Apro地域書記長
クリストファー・ウン
2011年6月1日
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第 1 章:世界の中のアジア、アジアと世界
2007−2009年の世界的な金融危機は、未曾有のものだった。この危機によって、世界の金融シ
ステムはほぼ崩壊寸前に陥った。
危機の発端となった米国では、2009年だけで280万の抵当付きの不動産が、差し押さえ通知を
受け取った。2008年末までに、米国もまた世界最大の負債国となり、全負債は13兆6千億米ドル
にのぼった。次に9兆4,000億米ドルの英国、5兆3,000億米ドルのドイツ、5兆米ドルのフランス、
2兆4,000億米ドルのオランダと続いている。
歴史的な役割の逆転(Boquet、2011年)の中で、米国の最大の債権者は今や、中国(8,918億
米ドル)、日本(8,836億米ドル)、英国(5,413億米ドル)、石油輸出国(2,180億米ドル)、
ブラジル(1,808億米ドル)、バハマやケイマン諸島のカリブ・バンキングセンター(1,556億米
ドル)、香港(1,382億米ドル)、カナダ(1,346億米ドル)、台湾(1,319億米ドル)、ロシア
(1,062億米ドル)である。
興味深いのは、二大政党で構成される米国議会の「金融危機調査委員会」が2011年1月に、金
融の規制緩和、企業の経営ミス、ウォールストリートの思慮のない投機的なリスクを冒した行動
が世界金融危機を招いた、という結論を出したことである。
同委員会によれば、米国政府がビル・クリントン(民主党)とジョージ・ブッシュ(共和党)
の2つの政権の下で、金融規制機能を緩和していなければ、グローバル危機は避けられた可能性
がある。世界大恐慌をきっかけに1930年代に定められたこれらの規制機能は、投機会社になりは
てた大手銀行や大手格付機関が行った、悪名高いCDO(債務担保証券、一連の米国サブプライム
住宅ローンを取引可能な金融商品または「デリバティブ」にまとめたもの)の店頭取引のような
リスクの高い投機的な金融活動を食い止められたはずである。
上記の金融危機調査委員会の発見は、地域、世界レベルの金融規制緩和は1997−98年のアジア
経済危機の主な言い訳である、と常に非難してきたUNIやUNI-Aproにとっては、驚くことでは
ない。
「バブル」−WWW:労働なき富
1990年代の規制緩和に向けた動きは、ジョージ・ソロス氏のような世界的投機家や、ブラック
ストーンといったプライベート・エクイティ・ファンドが、紙(「証券投資」)で取引している
株、通貨、不動産、商品の価値を作為的に引き上げ、ひとたび規制緩和された市場で大もうけを
したら一斉に撤退する、ということを可能にした。
これは億万長者だけが行うことができる、収益は非常に高いが、リスクを伴う活動である。ま
た、組織的な金融危機の引き金となり、最終的には金融機関や、工業企業がドミノ倒し的に崩壊
し、大規模な解雇を生み出す恐れのある、極めて非生産的な活動(雇用の創出がない、または限
られている)である。
つまり、これが1997−98年のアジア金融危機の物語であり、2007−09年の世界金融危機では、
これがさらに大規模に再生されたのである。
世界金融危機が世界の労働市場に負わせた社会、労働の分野の傷は、詳しく記録されている。
2010年の長崎でのUNI世界大会で報告されたように、危機によって世界中で3,500万人の労働者
が解雇され、さらに数千万人の労働者が「非正規」になることを強いられ、1億人以上の労働者
が絶対的貧困に陥った。
労働組合運動は、次のような質問を提起している。無謀で非生産的な金融投機を抑制し、アジ
アと人類の未来を危険にさらす恐れのある未来のバブルを阻止するための政策対応とは何か?
これは労働組合運動が提起してきた質問である。残念ながら、明確な回答は得られていない。
さらに気がかりなことに、一部の世界の指導者の対応は混乱を招くもので、仕事と生活が経済の
安定化に依存している人々の心配の種になっている。
ケース1:世界の金融システムにおいて有意義な改革が行われていないこと。このことは世界
の通貨市場の現在の不安定性と、アジア市場への活気ある資本の流れの復活に明確に反映されて
いる。G20、IMF、世界銀行および世界の指導者は、世界の金融システムの重要な弱点に対処し
て来なかった。
7
ケース2:いくつかの改革は、労働者や労働組合をターゲットにしていて、経済を無謀にも金
融化した張本人をターゲットにしていない。欧州で進められているいわゆる安定化策は、年金や
最低賃金制度といった長い歴史のある社会的セーフティ・ネットの解体を目標としていると考え
ると、困惑させられる。
危機の原因の誤った分析
誤った対処法
アジア開発銀行研究所が発表した論文(2010年)の中で、「アジア政策フォーラム」を構成す
るアジアの多くの経済シンクタンクが、「アジアにおいてバランスの取れた持続可能な成長を確
保する」ための一連の、斬新で、革新的な改革措置を考案している。
労働組合にとって、提案されている対処法の中でもっとも面白いものは、社会的セーフティ・
ネットを強化し、GDPにおける労働のシェアを拡大することを勧告するものである。この提案の
裏にある論理は単純であるが、疑う余地はない。経済における労働のシェアを強化することは、
労働者による商品やサービスの消費を拡大し、経済の良好なバランスを生み出すうえで極めて重
要だという論理である。
これが経済原理である。最低賃金と、結社の自由や団体交渉といった労働者の権利の遵守が世
界的に要求される中で、探そうとて見つけられる経済原理とはこのようなものである。2003年に
はすでに、金融の実践者で著者である人(Duncan、2005年)が、グローバル化の下で大規模な
社会の不均衡が起きること、およびグローバル経済における労働のシェア拡大の必要性について
予見し、警告した。
UNI-Aproの研究チームが記しているように、底辺への競争は商品とサービスの過剰生産を促
し、そのほとんどがファクトリー・アジアとサービス・アジアによって、一握りの北の先進国に
輸出されている。(Ofreneo、2009年)
一方、世界競争は、労働者の賃金、諸給付、結社の自由や団体交渉といった基本的権利を搾り
取る理由として、輸出国に利用されている。
この底辺への競争で予測される結末は、開発途上国の労働者が過剰生産した製品とサービスの
世界的な過少消費である。ILOの世界賃金報告書(2008∼09年)は、グローバル化の推進者にと
って活気にあふれた時代だった1995―2007年に、賃金と労働者の交渉権が侵食されたという事実
を証明している。
世界的な底辺への競争:
より深い説明
しかしながら、世界的な金融規制緩和とそれが生み出す危機の物語は、これで完成したわけで
はない。現実は労働組合運動にとって十分に明確である。危機の根源は、悪しきコーポレート・
ガバナンスの世界的な蔓延によってさらに進んだ世界的な経済的不平等である、ということであ
る。ビジネス慣行に対する国民の信頼とCEOや企業の行動の信頼性は、経済的業績に比べて著し
く不釣合いな役員給与が発覚した驚きによって、かなり揺れ動いている。これが、今日誰もが拝
金主義、すなわち企業の拝金主義を、世界的な金融不安定の原因であると非難している理由であ
る。
UNI-Aproが繰り返し指摘してきたように、アジア金融危機と世界金融危機もまた、ともに、
今日の世界で起きている不平等なグローバル化のプロセスに根ざしているのである。具体的に言
うと、これらの危機は、世界的な金融投機家、多国籍企業、統合が進む世界市場で繫がり合って
いる様々な国の大手国内企業を巻き込んだ、一見すると避けられない「世界的な底辺への競争」
にたどり着くのである。
底辺への競争とは?
簡単に言えば、底辺への競争とは、大手の外国・国内企業、特に多国籍企業が、世界的な営利
活動を盲目的に追い求める中で、世界の労働、社会、環境基準を無視しようとすることを意味し
ている。世界の資本が、労働組合のない輸出加工区(EPZ)を含め、一番安い生産の場を求めて、
8
規制緩和された国の市場に出たり入ったりしているために、こういった底辺への競争と労働運動
の極度の弱体化は、ほぼどこにでも見られる。このことが、世界または国内の労働、社会、環境
基準を犠牲にして、世界資本を誘致しようと受け入れ国を躍起にさせ、互いに競わせさえしてい
る。
アジアでこの底辺への競争を示す良い例が、ファクトリー・アジア(Baldwin、2007年)の台
頭、あるいはアジアの様々な場所、主に労働組合主義を排除している輸出加工区や飛び地で多国
籍企業が実施し、あるいは外部委託している生産チェーンの増大である。
この底辺への競争は、レーガン式/サッチャー式の「民営化」プログラムがOECD諸国に広が
った1980年代に、明確に現れた。ほぼ同時期に、世界銀行とIMFが、巨額の債務を抱えた開発途
上国に対して、低開発に取り組む均一の解決策として、卸売業の民営化、経済の規制緩和、貿易
と投資の自由化という複数のプログラムを指示する悪名高い構造調整プログラム(SAP)を押し
つけた(SAPRIN、2004年)。
1990年代には、「自由市場」の名の下に、世界中の市場を開放しようというネオリベラルなグ
ローバル化の推進者の執念が、ほぼあらゆる場所で、金融規制緩和を加速する道を開いた。一つ
の結果が、世界貿易機構(WTO)が新しく規定した規則に、「サービス貿易」、特に金融取引が
加えられたことである。
WTOのサービスの貿易に関する一般協定(GATS)の下では、サービスも次の4つの方法で貿
易することが可能である―国境を越える取引(例:インターネットまたは送金を通じた交易)、
海外における消費(例:他の国の景色を楽しむために海外に行くこと)、商業上の拠点(例:他
の国で外国の銀行の支店を設立すること)、サービスを行う人の移動(例:企業の取引に同行し
あるいは、完了させる専門職)。GATSが圧倒的に重点を置いているのは、多国籍企業(TNC)
が様々な国で買い付けや店舗の設立事業に携わることを実際に可能にする、商業上の拠点である。
しかしながら、WTOがGATSを実行できないうちに、多くのWTO加盟国が、国際金融機関(IFI)
や多国籍企業の圧力を受けて、「自主的な」金融の自由化をすでに導入してしまったのである。
ほとんどのアジア諸国、特に東南アジア諸国は、1990年代半ばにこれを行った。
米国では、連邦準備制度理事会のアラン・グリーンスパン議長が、積極的に金融の規制緩和を
推進した。それが頂点に達し、ついには商業銀行業を規制し、商業銀行業を投資銀行業から分離
させた大恐慌時代の法律、グラス・スティーガル法が1999年に廃止されたのである(Mah-Hui
Lim、2008年)。
1997−98年のアジアの金融の病原菌と同じように、ウォールストリートの「過度の金融化」を
促した米国の金融規制緩和は、いわゆる米国の金融バブルに明らかに根ざしている。そしてそれ
がはじけて、痛ましい米国の金融システムのメルトダウンと2007−09年の世界的な景気後退に突
入したのである。
しかしながら、世界のマスメディアによって伝えられた単純すぎる物語は、金融システムのメ
ルトダウンは「拝金主義」の1つのケースであり、それは一部の金融投機家が作り上げた「過度
の拝金主義」であるというものである。これは真実であるが、ある程度までのことである。
大局的に見ると、この過度な投機・金融化現象は、世界および地域の底辺への競争の当然の帰
結であり、それはネオリベラルな市場の規制緩和プログラム、または1990年代に「ワシントン・
コンセンサス」と呼ばれた規制のない「自由市場」の崇拝によって促進されたのであった。
世界的な不均衡:
過剰生産、過少消費
この底辺への競争は、世界市場における不均衡、または世界の供給と需要の不均衡を引き起こ
した。製品の世界的な「過剰生産」、特に中国やその他の国のファクトリー・アジアで多国籍企
業が製造した製品の世界的な「過剰生産」が生まれた。同時に、不平等で不公正な底辺への競争
の下で、これらの製品を生産する労働者と農民の賃金や所得が減少しているために、同じ製品の
世界的な「過少消費」が増大した。
底辺への競争によって生まれたこの世界的な過剰生産−過少消費というパターンは、多くの国
に広がる格差、具体的には1980年代から2000年代の労働生産性の向上と労働報酬の格差で、簡単
に立証できる。国連開発計画、UNDP(1999年、2006年)とグローバル化の社会的側面世界委
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員会(2004年)が発表した主な世界報告は、世界的に生産性とGDPが伸びていることを示してい
る。しかも、この生産性とGDPの向上には、世界の生産性に対する世界の賃金のシェアの減少を
含めた、不平等の深刻化が伴っており、多くの国では失業さえ伴っている。あるILO世界賃金報
告(2009年)によると、1995年から2007年の間の一人当たりのGDPの伸び率は年間1%であった
のに対して、世界の賃金の伸びは年間0.75%であった。
その上、世界のGDPに占める企業収益のシェアは増え、最高賃金所得者と最低賃金所得者の格
差が広がり、団体交渉の対象範囲が狭まっている。米国では、人口のトップ1%が2002―07年の
すべての所得の伸びの65%を享受していた(Freeland、2011年)。グローバル化の世界的な象
徴である中国では、中華全国総工会(ACFTU)が、GDPに対する賃金の割合が、市場の自由化
以来、20%下がったと推定している。その一方で、資本収益率は同じ割合で増えている(ILO、
2011年)。
その上、世界的な生産・サービス・チェーンから莫大な収益を集めることができる多国籍企業
もまた、1980年代から2000年代までのネオリベラルの時代に、金融化と金融投機にさらに目を向
けるようになった。ゼネラル・エレクトリック社や、フォード、トヨタといった大手自動車メー
カーは、金融に進出して企業収益を拡大し、一方、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ
会社、投資銀行は、世界的な金融と市場の規制緩和を利用して、株式市場、通貨市場、住宅市場、
商品市場および先物市場で、投機的なバブルを生み出した。中国でさえ、約3兆米ドルの貯蓄を
形成した後、そのうちの1兆米ドルを世界最大の米国金融市場に投資し、世界の大手民間エクイ
ティ会社であるブラックストーンの株を買い込んだ。
アジア太平洋地域における失業、不平等、気候変動による災害
2011年初頭現在、世界の景気回復はいまだに不安定で、下向きの危険性が潜んでいる。米国で
はGDPが回復したにもかかわらず、労働と住宅という2つの経済の非常に重要な部分がいまだ脆
弱である。経済活動の回復がいくつかの雇用創出を支えたものの、労働市場は脆弱なままである。
失業率は2010年4月のピークの9.8%から、2011年2月の8.9%へとわずかに下降しただけで、長期
の失業率は依然として高い状態である(ADB、2011年)。
一般的に、2011年の米国の成長率は、2010年のレベルに近く、現在の予測は2.8%である。し
かも、住宅・労働市場が脆弱なことから、経済を危機以前のレベルに引き上げるために必要とさ
る消費の拡大を、家庭が支えることはできないだろう。また公的債務に対処するための信頼でき
る中期計画がないために、経済の安定性や持続可能性が危険にさらされていることから、事態は
さらに予測不可能である(同書)。
ユーロ圏を見ると、2010年の第3、第4四半期の成長率は0.3%と低く、2010年全体の成長率に
深刻な影響を与えており、わずか1.7%(同書、p7)と報告されている。これはEU加盟国の生活
水準とマクロ・ファンダメンタルズが集中するか拡散するかにかかっている。今後数ヶ月間に金
利が上がると、欧州でもっとも問題を抱える国々、主にギリシャ、アイルランド、ポルトガルだ
けでなく、イタリア、スペイン等、さらに大きい経済国の困難も増大する可能性がある。後者二
国はともに、厳しい緊縮財政策に乗り出したところである。
しかし注目すべき変化が起きている。危機の間に加速した変化である。今では、アジア太平洋
地域自体が世界経済に与える影響が、大きくなっていることである。特に発展するアジアの経済
的影響力が高まったのは、アジアが世界の中の主要なプレーヤーに変化した結果である。インド、
中国、インドネシアを含めた新興市場が、世界の抜本的な経済再編をリードしている。
実際に、発展するアジアと日本を合わせて考えると、米国、EUと共に、世界経済の三大ハブ
の一つになる。またこの地域は、今では、世界最大の真の資本輸出国である(同書、19-22)。 危
機の最中や雇用の早期回復期に、発展するアジアへの輸出が堅調に伸び続けていたことは、世界
の他の市場が縮小していたときでさえも、この地域が実際に、非常に必要とされていた需要を提
供していたことを示している。
もっとも成長している経済国、中国は、日本を追い越し、世界第二位に上り出た。中国は2008
−2009年の世界金融危機の略奪にも耐えたのに対して、世界第一位の米国は、未だに歩みが遅く、
金融・雇用危機から抜け出す方法を模索している。中国は輸出への依存を減らし、賃金を引き上
げ、社会的セーフティ・ネットを拡大して、国内消費に依存する方向に、経済を変えつつある。
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中国の最低賃金の引き上げは、この地域の他の諸国の労働者の賃金引き上げを促した。バング
ラデシュでは、昨年、最低賃金が87%引き上げられた。2011年の中国の最低賃金は、様々な省に
よって様々であるが、12%から北京では21% に引き上げられると予想されている。
1980年から2010年の間に、この地域は年間平均7%以上で成長し、2010年には南の経済生産の
60%以上を生み出した。これは中国とインドの業績によるところ大である。
OECDのためにH Kharasが行った調査によると、アジアの中産階級の2010年の消費者支出は
世界全体の約23%を占めており、2020年には約42パーセント、2030年には54パーセントに増え
ると予想されている。これは北米の約5倍以上である。
しかしながら、発展するアジアもまた、世界の挑戦を同じように受けており、世界的な石油価
格と食糧価格の上昇が再来したことが、この地域にさらなにやっかいな問題を提示している。持
続可能性と成長のために、この地域のマクロ経済的最優先課題として、中・長期的成長を再度主
張する必要があるだろう。
アジア開発銀行の2010−2011年の勧告がいみじくも指摘しているように、アジア太平洋地域の
将来の持続可能で包括的な成長は、人的資源/資本への投資、質の良い大量のインフラ建設、健
全な金融の発展、南・南協力の模索という中核的柱に左右されるだろう(ADB 2010年)。そし
てこれらすべてが良い統治と有能な機構によって、強化されなければならない。
しかしながら、このことが、アジア太平洋はグローバル危機を免れたことを意味しているので
はない。北米や欧州に比べると、アジア太平洋は実際に、危機からずっとうまく抜け出した。こ
の一つの理由は、l997−98年のアジア危機の後に、多くのアジア諸国で銀行の再資本増強プログ
ラムを実施した結果、ほとんどのアジアの銀行の資本比率が高かったことにある
それでも、アジア経済−工業、農業およびサービス業−への悪影響は、目に見えている。2008
−2009年に、この地域では雇用市場までもが縮小した。これは中国、インド、日本、オーストラ
リア、台湾、韓国、マレーシア、シンガポールなどの輸出中心経済国で強く感じられた。
これらの国は景気刺激策として国内支出に重点を置いて、景気後退の影響を抑えようとした。
インド、韓国、タイもまた、マレーシア型の資本管理を課して、国内経済の安定化を図ろうとし、
IMFは何もできなかった。一方中国は、人民元の再評価と中国の金融市場の開放を求める西欧の
要求にこれまで動じていない。
しかしながらやっかいなのは、UNDPとILOが世界金融危機以前に描いた一般的なパターン、
多くの国における失業の増大と中国およびほぼすべての国における不平等の増大が、続いている
ことである。危機以前には、アジア太平洋地域で8,700万人が公に失業していた。2010年には、
この数が9,200万人に増大していた(ILO、 2011年)。
インフォーマル経済と脆弱な雇用の増大
危機は当然のことながら、巨大な「インフォーマル経済」をさらに増大させた。ここでは雇用
が一般的に不安定で、保護されていない。危機以前に、ILOは、アジアの労働市場の65パーセン
トがインフォーマル部門に入ると予測している。グローバル化の中の奇跡的経済国と称えられて
いるインドでは、雇用労働者の93パーセントまでもがインフォーマル経済で雇用されている
(Foreknew、2008年)。その近隣のパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ネパールもま
た、同じように、インフォーマル雇用の割合が大きい。また中国やモンゴルのような北東アジア
諸国やカンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムなどのASEAN諸
国でも、インフォーマル部門の雇用が圧倒的多数を形成している。
最新のILOアジア太平洋報告(2011年)は、「脆弱な雇用」に就いている労働者の数が11億人
以上、全労働力の60パーセントと報告している。別のILO統計は、世界のワーキングプアーの73
パーセントがアジア太平洋地域にいること、8億6,800万人の労働者、または全労働力の46パーセ
ントが1日2米ドル以下で家族と生活していること、約4億2,200万人が、1日 1.25米ドル以下の極
貧で暮らしていることを明らかにしている。
フォーマル部門に関しては、インフォーマル化のプロセス、あるいは「弾力化」(様々な短期
雇用取り決めによるカジュアル化または非正規化)が、収まることなく続いており、地域および
世界的な底辺への競争が続いていることで促進され、また危機および危機から回復するためのい
わゆる「世界的競争力」の必要性によって、悪化している。
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開発段階は様々ではあるが、ほぼすべてのアジア諸国が「外部の弾力化」に向かって進んでお
り、CEOや人事管理者が、「派遣労働者」、「基準外労働者」、「仲介労働者」、「臨時労働者」
「非正規労働者」など、様々な名前で呼ばれる「短期労働者」の雇用や利用の拡大に頼るように
なっている。
周知のように、このような状況はすべて、労使関係の危機を深刻化させ、組合組織化と団体交
渉の環境を厳しいものにした。多くのアジアの労働者とって、問題はさらに深刻で、通常の大家
族制度から切り離され、深刻な影響を受けている人々が信頼できる社会的セーフティ・ネットが
ないために、問題はさらに悪化している。
さらに悪いことに、アジア太平洋は危機の最中に、地球温暖化の危機または気候変動に大きく
起因する惨事に次から次へと見舞われた。2009−2010年に、洪水、地震、地滑りがオーストラリ
ア、ニュージーランド、日本、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、パキスタン、フ
ィリピン、台湾、タイおよびベトナムの広い地域を襲った。これらはインフラや生命に大きな損
害を与えただけでなく、食糧不足に対する地域および世界の恐怖を再燃させ、また労働者には食
糧インフレの懸念を再燃させた。これは世界が2008年に経験したことと同じである。
そして、この地球温暖化/食糧危機は、一部は中東の社会・政治の混乱に煽られた燃料危機と
時を同じくして起きたのだった。つまり、世界は未だに非常に不確実なのである。そして世界金
融危機は多層構造になり、労働市場に深刻な影響を与えている
ここで我々は、世界の人口の半分以上がアジア太平洋地域に住んでいて、若者の割合が多いこ
とを想起するのである。2020年のインドの平均年齢はわずか29歳、中国は37歳、西欧は45歳、
日本は48歳になるだろう。
危機以前は、アジアの労働市場は次の特徴を持っていた。不平等の拡大、多くのアジア諸国に
おける失業の増大、開発途上のアジアの大規模なインフォーマル経済の増大、先進国と開発途上
国の両方のほとんどすべての国におけるフォーマル部門の大規模なインフォーマル化または弾
力化である。
危機の後、そして止むことのない世界と地域の底辺への競争の中で、このような労働市場のパ
ターンが存続し、一部の国ではさらに顕著になった。食糧・燃料・気候変動の危機と共に、労働
者が直面している雇用と所得の不確実性がさらに深刻になった。
グローバル危機と危機のサイクルの幕引き
未解決の世界的課題
このことはおそらく、危機は終わったという米国のバラク・オバマ政権や国際金融機関の発表
に、飛び上がって喜んでいる人はいないように思えることを説明している。第一に、回復は遅く、
不平等で、不均一である。
さらに悪いことに、根本的原因はほとんど対処されていないのである。たとえば金融規制に関
しては、G20が提案しているもっとも大胆な措置が、現在ある銀行預金をさらに全面的に保護す
るために銀行準備金を増やす、というものである。金融破綻の引き金になった金融ヘッジ商品に
対する規制が未だにない。銀行業のCEOやトレーダーが自らに与えている途方もない、あきれた
金額のボーナスに対する制限もない。
さらに重要なことに、回復を進め、成長を維持するためにどのような道を取るべきかについて
も、意見の一致が得られていないのである。米国はケインズ的資金の放出(貨幣供給量の量的緩
和)に向かっており、しかもこれが期待された雇用の成長を生み出していないのである。過去40
年にわたる製造業のグローバル化の結果、米国の製造業は米国の多国籍企業によって、国外で行
われているというのが、周知の理由である。米国の製造業のほとんどが、アジアにある。米国が
管理し、情報技術で可能になったインドネシア、マレーシア、フィリピンのコールセンターを介
する米国の通信事業もまたそうである。
一方欧州は、緊縮財政型の公共部門の縮小と財政赤字に突入している。予想通り、これは社会
的に爆発寸前の状態となり、労働組合や若者までもが、第二次世界大戦後にこの地域で発展した
社会保障ネットの大規模な解体に抗議している状態である。その結果、ピッグス諸国(PIIGS−
ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の経済危機が本格的な社会政治危
機となって、欧州の経済停滞を深刻化させ、世界経済の回復を混乱させる恐れが生じている。
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従って、世界は実際には、危機や常につきまとう危機の再来の恐れから全面的には回復してい
ない、という世界的懸念が引き続き広がっている。世界はただ足を引きずりながら前に進んでい
るだけで、景気後退−回復−景気後退という二番底またはW型のサイクルの脅威が実際に非常に
現実味を帯びているという認識が高まっている。
一方多くの経済学者や政府指導者は、過去のネオリベラルな自由貿易政策の悲惨な影響を非難
しながら、皮肉にも同じことを要求している。アジアでは、特に東アジアで、明らかに、二国間
および地域内の自由貿易協定(FTA)が増えている。これらのFTAは、サービスと調達および国内
競争に関する政府の規則のさらなる自由化を求めており、WTOの規制緩和規則よりも遙かに先に
進んでいる。東アジアはこの10年間だけでも、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、
インド、ロシア、欧州連合と百以上のFTAを結び、あらゆるところで、アジアの各国および経済
圏としてのASEANとFTAを結んでいる。
米国も負けじとばかり、一部のアジアおよびラテンアメリカ諸国と自由貿易協定のための「環
太平洋戦略的経済連携協定(TPP)プログラムを通して、アジア−太平洋自由貿易構想を復活さ
せた。 (Kelsey、2010年).
地域主義に対する労働組合の姿勢
政府と企業の支持者の熱い思いにもかかわらず、APECやASEANのような域内貿易自由化プロ
ジェクトは、労働者の支持を得ていない。
労働組合の指導者は、APEC、ASEAN、TPPおよび様々なFTAを、グローバル化のネガティ
ブな部分のもう一つの象徴とみている。これらは多国籍企業の参入や投資を促進する協定であり、
多国籍企業は様々な財政奨励措置や輸出加工区のような特別な便宜を通して受け入れ国が提供
する、財政奨励措置や安い労働力を利用している。多くの輸出加工区では、労働組合主義や団体
交渉が、通常は密かにあるいは公然と抑制されている。その結果、輸出加工区の工業団地には労
働者が大量に集中しているにもかかわらず、多くの輸出加工区には労働組合主義が存在しない。
グローバル化自体が、反労働者的であるとみられている。すでに指摘したように、グローバル
競争は、確固たる「合理化」または「リエンジニアリング」の名の下に、様々な「弾力化」措置
を通して、労働力を安く抑えるグローバルな労働慣行を導入した。これらの措置は、世界、地域、
各国および産業レベルの仕事のアウトソーシングから、「非正規」(韓国のように)、「派遣」(日
本のように)、あるいは臨時、仲介、季節労働者(ほとんどの国のように)として、短期取り決め
の労働者の雇用まで、様々である。
弾力的労働力の供給源は、農村地域の移住労働者、海外労働者、民営化された国有企業からの
派遣労働者(中国ではxia-gang と言う)、「余剰」労働者および大量の失業/不完全失業労働者で
ある。実際に、グローバル化は短期的な職員配属や派遣産業の成長を促進し、またマンパワー、
ランドスタッド、ヴェディオール、アデコ、モンスター、ケリー・サービスなど、短期であるが
大規模な多国籍人材派遣会社のアジア太平洋地域への進出を促した。
さらに、安定した雇用を擁する本国または国内のいくつかの企業が不安定になり、破綻さえし、
その結果、これらの企業の派遣業務の再編や企業の閉鎖をもたらした。全体としては、グローバ
ル化は雇用の不安定と労働組合主義および団体交渉の衰退を生み出している。
拡大するグローバル市場の中で、経済自由化に伴う競争の激化は、多国籍企業によって、より
安い、従順な労働力を求める競争へと変えられた。この「底辺への競争」現象は、終わりのない
人的資源のリエンジニアリング、アウトソーシング、仕事の再構築および短期雇用への移行を釈
明する言い訳である。最終的には雇用はさらに不安定になり、労働組合権と労働権は競争力の名
の下に、堂々と蹂躙される。
地域主義とグローバル化の方向に影響を及ぼすための
労働組合運動の努力
このような状況の中で、労働組合はグローバル化と経済統合の方向に影響を与えようと努力し
て来た。グローバルな労働組合組織は、特に輸出加工区における中核的労働権の普遍的適用と承
認、および特にAPECとASEANにおける労働組合運動の「話し合いへの参加」を求めてきた。
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APEC:太平洋を平和と社会発展の大海に
アジア太平洋経済協力(APEC)フォーラムは現在21才となり、青年期にある。米国の主導で
1989年に創設されたAPECは、今では、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、韓国、
米国、フィリピン、香港、インドネシア、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パ
プアニューギニア、ペルー、ロシア、シンガポール、タイ、台湾、ベトナムの21の加盟国を擁し
ている。全体で、世界のGDPの40パーセントを生み出している。
実際に、世界貿易と生産の大部分が大西洋から太平洋に移動していると思われ、地域主義が太
平洋の両岸に利益になるという臆面もない公式見解から、APEC諸国間および諸国内のより緊密
な経済関係を育成することを目的とする地域主義プログラムとして、APECは立ち上げられたの
である。世界の商業における中国、インドおよび東南アジア諸国連合(ASEAN)の台頭と、日本お
よびアジアNICs(韓国、台湾、香港、シンガポール)のグローバル経済における相変わらずの優位
性は、この予測が正しかったことを証明している。
グローバルな労働組合は、APECではAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の正式の認定を受
け、団体によって使用者連盟が全面的に認められていることを知り、ショックを受けた。ABAC
は主なAPEC会合で定期的に諮問を受けている。しかも、ABACにはそれに対応する労働組合組
織がないのである。
さらにAPECはそのプログラムを推進するために、様々な作業グループや委員会を設置してい
る。そのような委員会の一つが、人的資源作業グループである。これは他の多くの域内および二
国間FTA機関と同じように、労働者の権利と労働組合主義に関するあらゆる討議を慎重に避けて
きた。人的資源グループが圧倒的に焦点を置いているのは、技能開発、労働者派遣、雇用戦略、
職場におけるエイズ、相互認証協定(MRAs) 等である。
このような総合的状況から、グローバルな労働組合は1995年にABACの対抗勢力として、また
労働者の権利と労働組合主義を第一義的に重視する人的資源のアジェンダをAPECで進めるため
に、アジア太平洋労働ネットワーク、APLNを結成することを決定したのであった。APLNは
APECへの参加を求めており、APECおよび各加盟国に、労働組合に参加の場を与えるか、ある
いはAPLNのアジェンダを聞き入れるよう要求している。APLNは幅広い基盤の開発パラダイム
の課題を明示してきた。その中では、人々の幸福が、人々が中心となる地域主義の究極の目的と
して扱われている。
近年、APECの議題がある程度広がり、「包括的開発」や「持続可能な成長」といった用語が、
現在ではAPECの活動プログラムの修飾語に加えられつつある。一部の共感する政府もAPLN代
表と話し合い、APLNのアジェンダに耳を傾けるようになった。
アジア経済共同体の社会化
ASEANの指導者は、2015年を東南アジアの全面的地域統合の年と定めた。この年に、この地
域は一つの「ASEAN経済共同体」(AEC)になるのである。2007年のシンガポール首脳会議で承
認されたAECの青写真の中で詳しく説明されているように、ASEANは2015年には、ものの自由
な流れ(地域内のゼロ関税体制を意味する)、サービスの自由な流れ(無制限のサービス貿易)お
よび投資の自由な流れ(いくつかの制限地域のみ)を特徴とする、単一市場と単一生産拠点になる
だろう。
このような統合過程とプロジェクトは、我々が好むと好まざるとにかかわらず、この地域で生
活するすべての人の生活の方向を、良くも悪くも変化させている。たとえば、ASEANのビザ、
ASEAN飛行自由化プログラム、およびASEAN社会・文化・経済プログラムが絡み合って、旅行、
専門職、技能労働者、官僚、学者、そしてもちろん労働組合活動家や地域のCSO活動家の交流と
域内の移動をたやすくしただけでなく、通常の日常的なことにした。人と人とのASEAN交流が
実際に、何とか行われつつある。
UNI-Aproは、ASEAN経済共同体はこのグローバル化の時代に、経済成長に拍車をかけ、より
大きな雇用機会を提供し、地域の総合的な社会経済開発を促進することによって、ASEAN加盟
国に競争上の優位を与える可能性を持っている、と信じている。
しかしながら全体としては、地域主義の理論と実践には大きな格差があり、社会により多くの
利益が生まれるという擁護者の主張にもかかわらず、恩恵に関しては、労働者を排除する傾向に
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ある。同様に、ASEAN諸国の間にも幅広く、根強い開発の格差がある。ADBさえも、「アジア・
太平洋には貿易の二つの顔」があることを認めている。中国といくつかの国の小グループ(主に
インドと新興工業国)の急速な台頭と、この地域の大多数の開発途上国の地域開発における最低
の成長とシェアである(ADB、2007年)。
ASEAN加盟国の場合には、格差は明らかで、10カ国がそれぞれ10の発達段階にある。ざっと
見て、ミャンマーの国民一人あたりのGDPは約200米ドル、カンボジアとラオスは500米ドルで
ある。一方石油資源に恵まれたブルネイと資本が豊富なシンガポールの国民一人あたりのGDPは
約30,000米ドルである。他のすべてのASEAN 諸国は、この両極端の間に散らばっている。
ILOのエコノミストは、前者の高成長と後者の低成長というシナリオの下で、後発開発途上国
がもっとも発展しているASEAN諸国に追いつくには、半世紀かかると推定している。これはも
ちろん、ほとんどあり得ないことである。2001年に、ASEANはハノイ宣言を通して、この格差
問題を正式に認めた。しかしながら、ASEANの解決策は比較的脆弱で、資源と情報技術のノウ
ハウの共有、人的資源開発および域内の情報に関しては特にそうである。
従って、ASEANの立派な目標は、それに社会的側面が含められ、人々が開発および地域と世
界の政策と戦略の中心に置かれれば、さらに有効になるだろう。
労働組合運動、特にASEANの労働組合は、これを人間中心のプロセスにするために、ASEAN
諸国政府およびASEAN事務局との持続的な参加プログラムを通して、この進化するASEAN地域
統合の構築に、先見性を持って対応しなければならない。
UNI-Aproが他の国際産別組織、特にBWIやPSIと緊密に協力しながら、ASEANのプロセスに
社会的側面を持たせるために、努力している主な理由は、これである。
我々は、社会的ASEAN、移民を含めた労働者の中核的労働権を尊重するASEAN、そして
ASEAN社会の様々な部分の間の真の思いやりと分かち合いを促進するASEANの構築に寄与し
たいと願っている。
我々は、ASEANの経済界が普遍的な労働基準を遵守するだけでなく、ASEAN労働者およびそ
れを受け入れている地域社会の他の利害関係者と社会的対話を実施することによって、真の企業
の社会的責任を果たすことを望んでいる。
社会的・経済的一貫性に向けて:
人々を中心に
グローバル危機は大胆で断固たる改革措置を求めている。しかしこれまで、G20や国際金融機
関は脆弱で効果の上がらない措置でしか対応して来なかった。アジア太平洋地域の政府が採択し
た政策調整も、不干渉政策(または何もしない)から景気刺激支出やIMFが認めた(あるいはお大目
に見た)ある程度の資本管理まで、様々である。
明らかに不確実性が残っている。世界およびアジア太平洋の経済の方向性に対する、根深い不
確実性がいつまでも続いている。世界が異なる姿勢を示すときが来ている。
UNI-Aproは、世界の開発パラダイムを変えるときが来ていると、再度主張する。「働く人々
を地域および世界経済統合の中心に置く」ときが来ている。規制のない自由化や歯止めのきかな
い世界/地域内の底辺への競争のための「構造改革」や構造調整プログラムではなく、国連社会
開発研究所(UNRISD、2010年)が提案する社会的・経済的変化のための「構造変革」、労働市
場と社会−経済政策の調整、および雇用中心の開発の促進に、UNI-Aproは賛成する。ネオリベ
ラルな構造調整経済によって「グローバル化された」アジア太平洋と世界経済の中で、そのよう
な構造変革の構想は、次のような改革の課題に関する思い切った措置を必要とするだろう。
政策の一貫性に向けたネオリベラリズムの正式な放棄
ネオリベラル的な経済学的思考が間違っていたことを正式に証明し、世界および各国の経済計
画、プロジェクトの企画と評価、環境監査と監視などの新しい経済的アプローチの採択に、移行
しなければならない。実際のところ、多くの場所では、ネオリベラリズムの失敗が暗黙のうちに
広く認識されているが、経済官僚や専門家は依然として、ネオリベラルから学んだ方法を続けて
いる。例を挙げると、経済プロジェクトの実効可能性を測定または評価するときに、海外または
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国内の民間投資を誘致できるかどうかに焦点を当て、プロジェクトの社会的側面や人々がそのよ
うなプロジェクトに情報を得て参加する可能性を無視しているのである。
危機に取り組んだG20の最初のいくつかの会合では、ゴードン・ブラウン前英首相などの一部
の指導者が「ネオリベラリズム」の終焉を公然と発表さえしたが、金融の分野でG20が合意でき
たのは、せいぜいのところ、銀行預金を保護するために銀行の資本総額を増やす必要性であった。
今のところ金融投機家の規制という重要な課題に、G20は十分に対処しておらず、それ故に、投
機的な金融投資商品が今日、再び、各経済国から出入りしているのである。UNIが長崎大会で主
張したように、「金融は再び」実体経済に貢献しなければならないのである。
公正でバランスの取れた貿易
これに関連して、世界は、規制のない市場に対するネオリベラル的執着を捨て、すでにコール
(2000年)やロドリック(1997年)が提唱しているように、必要に応じて部門ベースで、より弾
力的で、バランスが取れ、調整された経済の自由化・保護プログラムを支持すべきである。
これは本質的には、WTOの設立文書にほぼ百回近く繰り返されているWTOの条件、「特別か
つ異なる待遇」(SDT)を意味している。SDTは、すべての国が平等に生まれているのではなく、
各国がそれぞれの開発レベルに基づいて、開発を遂行し、計画する権利を持っていることを意味
している。
すなわち、貿易取り決めは、抽象的な自由貿易体制や、主に力のある大国の利益になる、柔軟
性のない、関税の相互撤廃制度ではなく、双方の利益になる取引原則の下で締結すべきだという
ことである。またこれは、外国直接投資(FDI)の投資プログラムやキャンペーンは、科学技術、
市場、付加価値など、その国の真の開発ニーズに基づいて行うべきだということを意味している。
すなわち、すべての国が経済、社会、労働、環境政策の一貫性を促進し、あるいは追求するた
めに、最大限の余地を与えるべきだということである。
すべての人のための社会・労働基準の向上と強化
人々を中心に置くということは、すべての人にライフライン、特に失業者、避難民、弱い立場
の人やインフォーマル労働者への社会的セーフティ・ネットを提供することを意味している。こ
れらの人々はすべて、危機の主な犠牲者である。すべての経済刺激策の主要な中身は、経済再生
措置(これには雇用が含まれない可能性がある)だけではなく、すべての人の最低の社会的保護の
正式な承認と提供でなければならない。
万人のための社会的保護制度とは、特に事故や雇用の移転のような逆境の時に、すべての国民
が、所得、食糧、住む場所、教育と健康の欠如のために社会から転落してはならないこと(ILO、
2001年)を認めている制度を意味している。
20世紀半ば(1940年代∼1970年代)に欧州と世界が経験したことは、包括的な社会的保護制
度が、成長の過程における要因を安定化させ、維持することに役立つことを教えている。という
のも、これらが総需要の減少を食い止めることによって、危機における自然な反循環的経済プロ
グラムとなるからである。
しかし、開発途上国が万人のための社会的保護を提供することができるのだろうか?アジア太
平洋地域がそれを提供できるのだろうか?ILOの研究は(社会保障局、2008年)、基本的セーフテ
ィ・ネット、すなわち社会のすべての市民のための基本医療、基本的な児童給付、万人のための
高齢・障害年金、および年間に最低100日の雇用を満たすために必要な資金は、国のGDPの6パー
セントであることを示している。
要するに、すべての人に社会保障を提供できないほど貧しい国はないということである。実際
に、欧州は第二次世界大戦後のほとんどが壊滅状態であったときに、万人のための社会保障権と
いう概念を取り入れたことを、歴史は教えている。金銭的な最低限の社会保障は国ごとに決める
べきである。しかし一般的な原則は、普遍的でなければならない。
グローバル・グリーン・ニューディール
国連環境計画(UNEP、2009年)は正しい。世界は景気回復と持続可能な成長を、グローバル・
グリーン・ニューディールに照らして再検討すべきである。環境に配慮することなく通常通りに
16
ビジネスを行うこと自体が、持続不可能である。マーク・リナスの『+6 』は、地球温暖化の暗
いシナリオを、次のように明確に指摘している。
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•
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暖房を1度上げると – 洪水と干ばつ、熱波の増大、珊瑚礁の白化現象の進行など
2度上げると – 種の消滅、海洋の酸性度の上昇、海洋生物の死滅、氷河の後退し、海面の上
昇など
3度上げると – 海岸の浸水、高潮、津波、国の消滅、食糧供給の減少
4度上げると – 気候変動による大量の難民、資源戦争、急速な腐敗など
5度上げると –南極と北極の不凍化、変わり果てた地球、内陸の住民にまで到達する巨大津波
など
6度上げると – 温暖化の暴走、大量の有毒硫化水素、猛烈な嵐に苦しめられる赤道地帯など
炭酸ガス削減協定、環境改革、母なる大地の回復に関する世界的結束の見込みが全くないこと
は、想像するだけでも破滅的である。労働組合運動は気候変動の影響を懸念しており、気候を安
定化させ、環境を保護するための持続可能な開発戦略を実施するために、政府や企業を含めた他
の社会の関係者と連携して活動したいと熱心に考えている。
企業、起業家、労働者および労働組合には、環境の課題に立ち向かい、経済を「グリーン化」
するために協力して活動したいという熱意がある。環境の変化に適用するための様々な包括的戦
略が、新技術、環境に優しい新しい製品やサービスへの投資という形で、新しいビジネス・チャ
ンスを提供するだろう。
このプロセスは持続可能な開発の新しいチャンスを生み出す可能性が、その一方で、この変化
の多くは先進国と開発途上国の両方において、エネルギー集中型で汚染型の産業のような一定の
部門の雇用の消滅を引き起こすだろう。
労働組合運動は、これは避けられないことを認めており、環境保護への投資が新しい雇用、特
にグリーン・ジョブを生み出すだろうということで、慰められている。
しかしながら、多くの国の過去の経済再編の苦い経験から、労働者と労働組合は、環境変化に
立ち向かうために提案されている様々な戦略に、懐疑的になっている。このために、世界の労働
組合運動は、低炭素で持続可能な経済への移行をできる限り公平なものにするために、一連の「公
正な移行枠組み」の採択を押し広めている。
この目的のために、枠組みには、持続可能な経済における社会正義の概念に基づいた、公正な
移行を確保するための効果的な政策を発展させ、実現可能な戦略を実施するためにソーシャル・
パートナーと連携して活動できるメカニズムを組み込まなければならない。
これには次の原則が含まれる
「グリーン・ジョブ」がクリーンな経済成長、開発、貧困削減に大きな貢献を果たすために
は、これが社会的観点から見て、ディーセントジョブであることが不可欠である。家族を養
うことができるディーセントな賃金と給付を支払わなければならない。上向きの、真のキャ
リア・パスの一環でなればならない。
また、労働者が将来の仕事に適した技術を習得し、改善することができるように、グリーン・
ジョブ推進戦略が、労働者の訓練と技術のニーズを考慮に入れる緊急の必要性がある。
グリーン・ジョブ政策の中で正義と公正性を実現するためには、社会的保護制度を強化し、
一部の国では創設しなければならない。さらに、社会保険を低所得世帯にも提供しなければ
ならない。
我々は、使用者や企業が移行過程のリスクと不確実性の被害を受けることを認め、気候の挑
戦に革新的に対応するよう促すために支援と援助を行うよう、政府に要請する。
これに関連して、我々は、科学技術革新に対する制限と妨害を撤廃するよう求める要求を支持
する。また、技術移転は開発途上国に対する不利益や偏見を取り除くために不可欠である。気候
の挑戦に立ち向かう中で、すべての国が、グリーンな産業革命と社会変化の進化におけるあらゆ
る変化の利益を享受できるようにすることが重要である。
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三者合意と社会的対話
我々は、成長している部門と縮小している部門の両方において移行をリードする、部門、国お
よび地域レベルの三者合意が、挑戦課題に取り組む上で不可欠である、と固く信じている。定期
的で、組織化された、有意義な社会的対話を通して、ソーシャル・パートナーは、職場や産業レ
ベルおよび国家レベルで、職場や環境のグリーン化を含めた気候変動の影響に対抗する効果的な
合同戦略を開発し、実際に役立つ活動やサービスを実施することができるだろう。
グリーン・ジョブ運動は、労働者に影響を及ぼすことから、労働者に気候変動の悪影響を認識
させ、グリーン経済に向けた変革を管理するプロセスに関与させる必要がある。労働者が環境保
護政策と戦略の強力な擁護者になりたいという熱意を持つためには、これが不可欠である。また
気候に関連した災害への準備に関する社会の意識を高めるためにも、これが不可欠である。
このプロセスに労働者が効果的に参加するためには、結社の自由がなければならない。結社の
自由と団体交渉権の尊重は、科学技術と同じように、低炭素世界の解決策の一環でなければなら
ない。
労働組合運動は、雇用中心の政策、効果的な社会的保護および地球温暖化と環境悪化の改善に
よって、持続可能な開発を促進したいと強く願っている。
世界の気候危機を、グリーンで持続可能な経済を生み出すチャンスとして利用しようではない
か。我々がすべてのソーシャル・パートナーと連帯し、努力を結束することができれば、これが
実現できる。これがすべての人に利益をもたらす、ウィン・ウィンの公式である。
また「ゴー・グリーン」とは、国の技能、ノウハウ、および科学技術の向上を基にした国内販
売と輸出促進のさらに均衡の取れたプログラムを推進するために、輸出か自滅かという枠組みを
国が捨てなければならないことも意味している。底辺への競争があってはならないのである。
トップへの競争
最後に、悲惨な底辺への競争とはかけ離れ、明確に異なる、新しいビジネスシステムがなけれ
ばならないことを、国内および海外の投資家を含め、社会のすべての部門に明確にしなければな
らない。それに代わって、より高い生産性と競争力につながるより強力な労使協力の好循環に基
づく、トップへの競争がなければならない。これはさらに高い成長、雇用および発展のより大き
な可能性を、社会に提供する。
トップへの競争の主軸は、ILOのディーセント・ワーク・アジェンダの推進である。ディーセ
ント・ワークは、「自由、平等、安全、人間の尊厳の条件の下で」得られる「生産的な仕事」と
定義されている。具体的には、ディーセント・ワークは次のようなときに生まれる。
基本的労働権が尊重されている
公正で生活を支えることができる賃金が与えられている
人道的な労働条件が提供されている
労働者に現在および将来の社会・経済的安定性が保障されている。
ディーセント・ワーク・アジェンダ(DWA)は、中核的労働基準、社会的対話、雇用創出、
およびフォーマル・インフォーマルな労働市場の両方のすべての人のための社会的保護の促進を
目指している。後者は従業員の労働条件の向上と並行して、インフォーマル企業の経営の向上を
目指すプログラムを必要としている。
ディーセントな仕事を求めて
同時に、良識の水準を引き上げる必要がある。ガイ・スタンディングが正しくも主張したよう
に(2010年)、労働力の移動性と移住を含めたあらゆる形態の仕事が、良識の普遍的規則に従わな
ければならない。それは、底辺への競争が、グローバル化の下で世界、地域、各国および産業の
弾力化のために、各国の労働規則を企業が排除できることに、深く根ざしているからである。こ
の弾力化は、労働基準の引き下げにつながることも多い。
労働者を中心にした、人々を中心にした開発が、すべての人に持続可能で公平な成長と開発を
保障することを、我々は確信している。各国、地域および世界レベルの社会のすべての関係者は、
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公正でより公平な社会・経済秩序を構築するための、実現可能な政策と実際に役立つ戦略を開発
するために、正直で生産的な社会的対話に継続的に参加するべきである。
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第 2 章:グローバル化時代の UNI
第3回UNI世界大会(2010年11月9∼12日、長崎)
第3回UNI世界大会は、華やかな開会式と共に幕を開けた。印象的な日本文化の紹介と共に、
3000人の観衆に、壮大な大会テーマ「ブレイキングスルー」が披露され、アクション(行動)が
呼びかけられた。
伝統的な和太鼓のエネルギッシュな演奏、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」からの素晴らしい
詠唱、ダイナミックな書道、そして純心女子高校合唱部が1945年8月9日の長崎原爆投下の日を追
悼して毎年捧げる清楚な歌声が披露された。
日本の総理大臣は、UNI世界大会に「雇用が成長の基盤だ」と強調した。
G20ソウル・サミット出席のため、UNI世界大会への出席が叶わず、菅総理大臣の代理として
福山哲郎官房副長官がメッセージを伝えた。「かつてないほどにグローバル化した社会において、
UNIの今後の政策課題をはじめ、世界規模でサービス産業における不安定な労働者のより良い待
遇について議論するなど、今大会で扱われるテーマは、私たちが今日暮らしている社会の現状を
踏まえれば、非常にタイムリーな話題だと思う。私は、雇用が成長の基盤だと確信している。安
定した雇用があればこそ、需要も増大し、経済は活性化する。そして更なる雇用を創出する。賃
金も上昇し、デフレスパイラルから脱却できる。現在私は、成長と雇用の好循環によって、我が
国の再建を強力に推進しているところだ。世界平和のテーマでも議論されると聞いている。私も、
核軍縮と不拡散の重要性を広めていきたい。」
日本のナショナルセンター連合からは古賀伸明会長が挨拶し、「国際的に平和運動をリードす
る町へようこそ」と大会参加者を歓迎した。続いて、中村法道長崎県知事は、「長崎を最後の被
爆地に」と世界に訴え、田上富久長崎市長も「平和都市長崎へようこそ」と歓迎の意を表した。
桜田高明UNI日本加盟組織連絡協議会議長は、ホスト国を代表して歓迎の挨拶を行った。
シャラン・バロウ国際労働組合総連合(ITUC)書記長は、国際労働運動はどこにおいても労
働者や家族の平和のために闘っていこうと呼びかけた。バロウ書記長は、「グローバルな戦士」
フィリップ・ジェニングスのリーダーシップの下、UNI最初の10年間の活動を称賛した。「私た
ちのメッセージはシンプルだ。企業によるいじめに警戒せよ。」ITUCは2011年に一企業を特別
に注視していくと発表し、「1月にワシントンの組織化フォーラムで、私たちにとっての第1のタ
ーゲットをどこにするか決め、その会社に労働者の権利を確実に尊重させるよう、私たちの決意
と資源を結集して当たる」と述べた。
ファン・ソマビアILO事務局長は、大会へのビデオメッセージの中で次のように述べた。「私
はちょうど10年間のUNIの成果と共に歩んできた。実に印象的だ。皆さんはUNIを、サービス産
業の企業で働く2000万人組合員と1000の加盟組合にとっての最強のグローバルユニオンに育て
てきた。この強い基盤があってこそ、恐れることなく基本的な団結権を擁護し、組合員の集約さ
れた意見が聞き入れられるようにすることができる。だが周知の通りそれはたやすいことではな
い。公正な雇用、尊厳のある仕事、逆境における連帯―これは闘いの中心にある。ますます規制
緩和が進むグローバル経済の中で、仕事の尊厳は著しく過小評価され、拝金主義が限度を知らな
いような世界では極めて重要だ。これらの価値観を中心に据え、UNIはグローバル化する世界の
チャレンジに、明確なビジョンと実行力をもって対抗してきた。分裂した世界において、UNIは
連帯をグローバル化するイノベーター(革新者)であり続けた。グローバル枠組み協定の交渉を
通じて、組合員のためにディーセント・ワークを求めて闘う一国一国の労組にグローバルな力を
与えてきた。」
ジョー・ハンセンUNI会長は、ウォルマートに対しUNIとのグローバル枠組み協定を交渉する
ための圧力行使を継続強化していこうと訴えた。「ウォルマートのようにグローバルなリーディ
ングカンパニーになりたいと思う企業は、労働者に対する責任も理解する必要がある。」「企業
責任、労働者の権利、環境の持続可能性は連動し得る」と強調した。
世界大会開会式で、ホスト国の青年の声を聞くことはUNIの伝統となっている。大阪の郵便局
で働く佐々木舞さんのスピーチは非常に感動的だった。この日はまた彼女の23歳の誕生日でもあ
20
った。彼女は、どのようにして自分自身や郵便局の若い仲間が組合(JP労組)の活動に積極的に
参加するようになったかを語った。彼女の場合、組合へ関わり始めたきっかけは「ケーキにつら
れた」ことだった。
大会運営の前線で、桜田議長率いるUNI日本加盟組織連絡協議会をはじめとする日本の15加盟
組合は、努力を惜しまなかった。大会の企画・運営に加え、日本のホスト労組は長崎に若い組合
員をボランティアとして派遣し、彼らはガイドとして、友好大使として、通訳として、あらゆる
場面で大会参加者を助けた。ボランティアの活躍によって、大会の雰囲気は最高に盛り上がった。
JP労組の尽力によって、日本郵政から、UNI世界大会記念切手が発行された。日本郵便事業会
社の白金専務執行役員と野村九州支社長が、ジョー・ハンセンUNI会長とフィリップ・ジェニン
グスUNI書記長に記念切手を贈呈した。日本郵政の歴史の中でも、「組合の」切手が発行された
のはこれが2度目である。
UNI大会参加者、ブレイキングスルー戦略を承認
ジョー・ハンセンUNI会長が議長を務め、長崎世界大会初日のセッションの口火が切られた。
ジェニングス書記長が、世界平和のため、公正な世界のため、強い労働運動によってつくること
ができる世界の実現のためにブレイキングスルー戦略を支持する覚悟ができているかと問いか
けると、代議員は皆喝采して応えた。
「ブレイキングスルーは単に本大会のテーマであるだけではない。ブレイキングスルーは、私
たちの計画であり、行動のきっかけでもある。もっと多くの労働者を組織し、もっと多くの協定
を結び、もっと女性リーダーを増やし、新世代とも連携し、もっと多くの人々に新たなブレイキ
ングスルー計画に参加してもらうよう、新しい使命を求めているのだ」とジェニングス書記長は
述べた。
そして、もしブレイクスルー(突破)する覚悟があるならば、行動を起こすべきだと訴えた。
ジェニングス書記長のしめくくりの言葉「Let’s get it started(さあ、始めよう)!」と共に、
大会会場にはブラック・アイド・ピーズの同名の有名な歌が流れ、アクションに突入した。若い
ブレイクダンサーがステージに登場し、UNIスタッフ、UNI青年委員会、UNI女性委員会メンバ
ーらが、場内を元気良く行進した。2000人の代議員は新しい計画に高揚し、拍手喝采した。
「組合の成長のためにブレイキングスルー」というセッションでは、ルーベン・コルチナUNI
米州地域会長が、キャンペーンの成功事例やブレイクスルーについて様々な人にインタビューを
行った。ドイツver.diのハインリヒ・ブライヒャー・ナーゲルスマン「もしUNIの全員が戦略計
画に沿って取り組めば、将来は我々のものだ。」ジュディ・ロックとクリスティン・モンクは、
オランダの清掃員の生活を改善するキャンペーンの成功事例を報告。1,000人以上の同国の清掃
員が2010年春、9週間に渡るストを実施。オランダでは1933年以来最長のストとなった。彼らは
2年間3.5%の賃上げ、移民労働者に対するオランダ語の授業、ストにより失職した労働者の復職
などを勝ち取った。
ジョー・デブリュンUNIアジア太平洋地域会長は、SDAがオーストラリアの8万5千人のマクド
ナルド労働者をカバーする団体協約を結ぶに至った経緯を詳述した。SDAはまずより良い賃金を
勝ち取り、今では組合オルグのアクセス権も得た。「ビッグマックを売るのと同じくらい当たり
前に、組合オルグがマクドナルドに訪問することも当たり前になってほしい」と述べた。
新たにUNI副書記長に任命されたクリスティ・ホフマンは、UNIのグローバル協定の取り組み
について報告し、世界の大手民間多国籍使用者はUNIの各部会に関係することを指摘した。
No.1はウォルマート。190万人労働者。
No.2はG4S。115カ国に60万人以上の労働者。
No.3はDHL。約50万人の労働者。
UNIは既に1000万人の従業員をカバーする40のグローバル協定を交渉した。
髙島屋、日本企業初のグローバル協定
日本の百貨店・髙島屋の鈴木弘治社長は、日本で初めてUNIとグローバル協定を結んだ経緯を
説明した。
「グローバル協定を締結して以降、労使で、最高の協議機関で経営行動計画の相互検証プロセ
21
スを実施してきた。GFAを締結した日本で最初の労使として、私たちは先駆者としての責任を共
に果たし、スリーピング協定にさせないようにするつもりだ」と鈴木社長は述べた。
鈴木社長に感謝して、ジェニングス書記長は代議員に、髙島屋が協定周知のために1000回もの
職場集会を開催し、従業員全員がこれについて説明を受けたことを強調した。「責任感のあるビ
ジネスリーダーが必要だ。環境問題、企業責任、働く人々への配慮といった問題は常に片隅に追
いやられてしまう」と書記長は述べた。
代議員は満場一致で、ブレイキングスルー戦略を支持し、向こう4年間取り組んでいく動議を
可決した。
日本におけるブレイキングスルー
日本加盟組合によるブレイキングスルーの達成。組織人員が過去最高の100万人を突破した。
商業部会加盟組合UIゼンセン同盟の橋本和秀代議員は、UNI-LCJを代表して、以前は組織され
ていなかった非正規労働者にも組合は手を差しのべ始めた、と報告した。
大会は、UNI-LCJに対し、設備面や運営面への類稀なる貢献だけでなく、定めた目標の全てを
大会までに達成したことに敬意を表した。100万人組織人員を達成した他にも、UNIと髙島屋の
間で日本企業として初のグローバル協定を結んだ。大会参加者は、日本加盟組織が実施した若手
組合員を対象とした、英語で国際労働運動を学ぶ研修の意義ある成果を目の当たりにすることが
できた。200人を超える赤いジャケット着用のボランティアの殆どが、これらの研修に参加した
という。
「日本の労働生活」と題する非常に興味深い報告が、UNI-LCJ及びUNI東京事務所によって提
出された。本報告書には、いかに終身雇用モデルから不安定な契約労働へと代わっているかが説
明されている。
UNI加盟組合のブレイクスルーを支援するための組織化基金がつくられた
この日のセッションが終わりに近づいた頃、圧倒的多数の代議員が、UNI加盟費を簡素化する
新しい加盟費体系と組織化専門の基金設置に賛成票を投じた。UNIは世界中で組織化を進める組
合員を支援するためにこの基金を活用する。組織化基金は、ブレイクスルーしたい!と願うUNI
加盟組合を助けるものだ。
組織化のチャレンジに挑戦する組合を表彰するブレイキングスルー賞
UNIはまた、組織化のチャレンジに挑戦した組合を表彰する、ブレイキングスルー賞を本大会
から創設し、4つの組合に授与した。
受賞組合は、アテントの何千人ものコールセンター労働者の組織化という厳しい闘いの渦中に
あるメキシコのSTRM、清掃員のための厳しい闘いに勝利したオランダのFNV Bondgenoten、
商業部門に14の新たな組合を結成するなど組織化に成功したマレーシアUNI加盟組織協議会、シ
ョップライト・チェッカーズとのグローバル協定締結に導いた南アの商業労組SACCAWU。
大会は、女性の代表性決議を満場一致で支持
代議員は満場一致で、UNIの全ての役員議席において、男女共に少なくとも40%を維持しなけ
ればならないとする女性代表に関する決議を可決した。これは更に多くの女性がUNIを導いてい
くための道を切り開く、まさにブレイクスルーである。
「私たちは真の、根本的な、持続可能な変化を期待している。」「女性に交渉の場についても
らいたい、組合の役員になってもらいたい。それは、限られた女性だけがガラスの天井を破れれ
ばよいという意味ではない。全ての女性にとっての壁を取り除くということだ」とデニス・マク
ガイアUNI女性委員会議長は強調した。
会場内の男女共に、彼女の訴えを支持して総立ちになった。
各地域の女性代表が私といっしょに壇上に立ち、世界女性大会の報告と、もっと平等なUNIが
必要な理由と利点を説明した。ニュージーランドのマクシン・ゲイが歩み出て、「Never Going
Back」を歌い出した。美しい声で、まさに私たちの感情にぴったりだった。
22
金融危機:ゲームのルールを変えなければ
デニス・マクガイアUNI女性委員会議長が、「グローバル経済危機において雇用と公正を」と
題するセッション前半の議事を進行した。このセッションでは、経済危機の中、グローバル化の
進むべき道をいかに変えていくかを検討した。大会最終日に同テーマの続きが行われ、ルーベ
ン・コルチナUNI米州地域会長が議長を務めた。
Re-Define(Rethinking Development, Finance & Environment 金融改革、ガバナンス改善、
および持続可能な発展促進に取り組んでいる国際シンクタンク)代表、ソニー・カプール氏が基
調講演を行った。
以前、町には小型車しかなく、制限速度があり、取り締まりもあったが、今では大型トラック
が猛スピードで走り、酔っ払い運転もあれば、規制もないようなもので、ものすごい渋滞に悩ま
されている。おまけに視界も悪い。トラックは互いが見えないし、一般市民は事故を恐れ、車を
車庫から出せない状況だ。
これは、ソニー・カプールが昨今の金融市場を描写するのに使ったイメージである。
テクノロジーのおかげで世界中から情報が得られるようになった。ローカル市場はグローバル
になり、突然、全てが結び付けられた。インドの大豆収穫高はブラジルの価格に影響を及ぼす。
スピードは加速し、システムは不適切な状況を正す時間や可能性をも残さない「ジャストインタ
イム金融」モデルへと変わってきた。競争はもはや存在しない。なぜなら小さな銀行には、タッ
クスヘイブン(非課税地域)でグローバルプレーヤーに勝てる見込みはないからである。銀行は
もはや、イノベーション(新しいアイデア)、品質や価格では競っていない。更にグローバル金
融市場にはいかなる調整もなくなった。
より規制され、透明で簡素化した金融市場と、必要とされるところに資金を提供する元来の任
務に戻る、責任ある銀行が必要である。私たちのために機能し、儲けるために私たちを締め上げ
ることのないシステムをつくることが目標だ、とカプールは述べた。
G20におけるUNI
ベルナデット・セゴールUNI欧州地域書記長は大会に、ソウルのG20 会議に労組代表団の一員
として出席した経験を報告した。
労働組合の介入により、G20の最終声明には、雇用への言及がなかった前回の情勢は改正され
るだろうとの期待を寄せていると、彼女は述べた。彼女は、労働組合も国際フォーラムに参加す
るよう主張した。そうでなければ、労働組合の懸念は聞き入れられないだろう。UNIはこうした
役割を引き受けるにふさわしい立場にある。
彼女はまた、欧州労働組合連合(ETUC)次期書記長候補として支持してくれている仲間に感
謝し、就任後も引き続きサポートしてほしいと期待を述べた。大会はスタンディング・オベーシ
ョンで彼女に応えた。12月1日のETUC執行委員会は満場一致で、ベルナデット・セゴールを次
期書記長として承認した。
APECのルールを変える−UNI、「頂点への競争」を求める
APEC諸国からのUNI加盟組合が長崎大会に先立って集まり、APEC加盟国の生活水準や権利
を脅かしている激烈で破壊的な「どん底への競争」に代わるような、ゲームのルール変更を主張
した。
フィリピン大学のルネ・E・オフレネオ教授は、APEC地域の労働組合が直面する課題を強調
し、人間優先のAPECは可能だとする、もうひとつの発展の青写真を指摘した。もし労働組合と
企業のCSOが団結し、社会の中で強い主張を発展させれば、その声はAPECの全会議室だけでな
く、APECの指導者や担当大臣にまで届くだろう。その主張を発展させるためは、継続的な意識
化、ネットワーキング、そして人間優先のAPECと人間の顔をしたグローバル化を目指した組合
間の連帯行動が必要である。
「グローバル経済のバランスがアジアへとシフトするには、この地域で、基本的な労働法によ
る保護と適切な社会的保護を確保するために取り組む、強力な労働運動が不可欠だ。ここでは労
働者の権利は軽んじられてきたが、私たちはゲームのルールを変えるためにここにいる。」とジ
23
ェニングス書記長は述べた。
ジョー・デブリュンUNI-Apro地域会長は、グローバル経済の崩壊によって、APEC改革の必要
性、すなわち中国、日本、米国、ロシア、フィリピン、オーストラリアなど、環太平洋地域の21
カ国をまとめるAPEC協定が強化されたと述べた。
「現在の経済及び環境危機への対処には、APEC改革など、グローバル経済構造の大幅で大胆
な変更が求められている。指針となる改革の原則は、いかに労働者や一般市民を発展の中心に置
くかでなければならない。つまり、自由貿易の崇拝という狭義のネオリベラルなアプローチをや
めるという意味だ。」とデブリュン地域会長は述べた。
クリストファー・ウンUNI-Apro地域書記長は、 UNIと加盟組合は、アジア並びに世界中で、
グローバルに労働基準を引き上げ、企業がそれを遵守するようにさせ、「頂点への競争」となる
よう闘っていく。この取り組みには、UNI-AproとUNI米州地域の緊密な協力が必要となると呼
びかけた。
APEC加盟国からのUNI加盟組合を代表する組合役員は、満場一致で、APECの焦点を自由貿
易協定から、経済・社会発展へのより広範なアプローチへと変えるよう求める声明を確認した。
それは、11月13∼14日、横浜で開催されたAPEC首脳会議に提出された。
平和のためにブレイキングスルー
大会セッション2日目の午後は、ジョー・デブリュンUNI-Apro地域会長が議長を務め、平和の
テーマが扱われた。
開会式から閉会式に至るまで、多くの講演者が世界の歴史における長崎の重要性に触れ、長崎
を最後の被爆地にしなければならないと訴えた。
長崎は、毎年、学生を平和大使として国連に派遣して核兵器の廃絶を陳情し、世界中に平和の
メッセージを届ける活動を行っている。
田上長崎市長は、2000人を超える大会参加者に、ひとりひとりが平和大使となって、帰国した
ら、平和と核軍縮の願いを広げてほしいと訴えた。
原爆で家族全員を失い、偶然ひとりだけ生き残った被爆者・奥村アヤコ氏の体験に聞き入った
会場は、静まり返った。何年もの間、彼女は自分の体験を人前で語ることはできなかったが、こ
の頃は、世界がその事実を忘れないように、大量破壊兵器を二度と使うことがないようにと願い
つつ、休むことなく経験を伝える取り組みを行っている。
彼女の感動的な証言に続き、地元長崎の組合員と家族から成るグループにより、原爆の惨状を
伝え、平和の必要性を音楽と言葉で綴る「構成詩」が上演された。
核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)のギャレス・エバンス共同議長は、今でも
地球上には23,000発の核弾頭があり、その爆破能力は長崎型原爆15万発に相当することを、代議
員に想起した。これらの3分の1以上は実戦用に開発されたもので、発射準備が整っている。「答
えはひとつしかない。核兵器拡散をストップさせ、今ある備蓄兵器をゼロにするには、ゲームの
ルールを変えることだ。今からでも遅くない」と彼は訴えた。しかし、簡単にはそうならないだ
ろう、と深刻な懸念を示した。「今こそ転換期だと確信している。関係者が真剣に前進させよう
としない限り、残された機運も行き詰まり、核不拡散プロジェクトが崩壊する危険性が大いにあ
る」と警鐘を鳴らした。
元UNI世界執行委員のフィン・エリック・トーレソンは、ノルウェージャン・ピープルズ・エイ
ドの活動を紹介した。1939年にノルウェー労働運動によって設立された人権団体で、1990年代初
頭から地雷及びクラスター爆弾撲滅キャンペーンを行っている。彼は、ラオスには戦後40年を経
ても未だに8000万発のクラスター爆弾が残っていると指摘した。レバノンには、イスラエルが投
下した400万発中、100万発の不発クラスター弾が残っている。「10歳の息子を不発弾の暴発で亡
くした母親と話したことがあるが、その子は木にぶらさがっていたクラスター弾をおもちゃだと
思ったらしい。」
この団体は、国際的な地雷禁止キャンペーン成功に貢献している。現在までに157カ国が地雷
禁止条約を批准している一方、米国、ロシア、中国他数カ国が未だ承認していない。同様なクラ
スター爆弾禁止条約は現在45カ国が批准している。
この議論を終えると、大きな連帯を示すため、世界900余の組合を代表する長崎大会参加者は、
24
大会会場から象徴的な平和公園まで2キロの道のりを、地元高校の生徒による素晴らしいブラス
バンドに先導され、笑顔でいっしょに行進した。長崎市民も手を振って歓迎の意を表明した。
平和公園での平和集会で、参加者はUNIアフリカの女性と共に、「We shall overcome(きっ
と乗り越える)」を歌った。背後は、象徴的な平和祈念像。製作者の北村西望は、「国際協調の
闘いの道標として造った」と述べている。「人類にとって最高の希望の象徴である。」
右手は原爆の脅威を、水平に伸ばした左手は恒久平和を象徴している。
ミュージシャンのなかがわこうき氏(情報労連長崎県協役員の子息)が、UNIと長崎大会のた
めに特別に作曲した平和の歌を熱唱した。UNI-Apro青年委員会のコーラス隊も加わって、ビー
トルズの「All You Need is Love」など有名なスタンダートナンバーを合唱した。
フィリップ・ジェニングスUNI書記長は、この公園は世界平和のためにつくられた、平和や、
民主主義、正義のために専心する全ての人たちの目標でもあると、参加者に想起した。「国際協
調を希求する象徴であり、戦争や弾圧の犠牲者を追悼する場所であり、恐怖から解放され、核兵
器のない世界の実現を主張する場所だ」と述べた。「皆さんの周りには、世界中から寄贈された
平和のモニュメントがあるだろう。ここには、1945年に命を失った、様々な国籍の全ての犠牲者
をまつる神社もある」と述べた。
アフリカ、米州、アジア太平洋、欧州のUNI役員は、平和を求めるメッセージを、フランス語、
ドイツ語、スペイン語、アラビア語、英語で繰り返した。参加者は、世界中の戦争とテロの犠牲
者を偲び、黙祷を捧げた。
恐怖からの解放、職場の暴力撲滅
このセッションは、ボンズ・スクルUNIアフリカ地域会長が議事進行を務め、労働者が人権及
び労働組合権への攻撃を受ける恐怖から解放され生活できる世界をつくることに焦点を当てた。
英国USDAWのジョン・ハネット書記長は「英国では1分に1人の店舗従業員が、仕事をして
いるだけなのに、乱暴されたり侮辱されたりしている」と報告した。接客労働者の10%が暴行を
受けているという。USDAWが策定した「恐怖からの解放憲章」に、優良な使用者は調印してい
る。彼は、UNIが「恐怖からの解放」というテーマを取り上げたことを評価した。
カナダ郵便労組のリン・ブーは、特に性差別、同性愛嫌悪、人種差別、身体障害者差別を理由
とする「労働者対労働者の暴力の蔓延」について発言した。家庭内暴力の職場への延長も潜在的
な暴力であり、彼女は、パートナーが相手の職場まで乗り込んできて殺傷した事例を報告した。
彼女はまた、組合に対しても、組合員と活動家の間の不一致が解決されるよう、より良い対処法
を促した。「私たちは互いに非常に残酷になることがある。私の組合では、私たち自身の中に潜
む暴力の種を変えていくことを公約しようとしている」と述べた。
コロンビアUNEBのイデルブランド・レオン委員長は、同国の組合活動家が受けている弾圧に
ついて報告した。政治的敵対勢力は暗殺され、400万人が追放された。しかし彼は、反撃の気迫
は強いと述べた。「今こそ希望の時だ。恐れずに夢を持ち続けなければならない」と訴えた。
スウェーデン商業労組のラルス・アンデル・ハグストロン委員長は、組合員が武装強盗に遭う
危険性について取り上げた。「商業労働者にとって最大の問題だ。スウェーデンでは1日当たり
3店が強盗被害に遭っている」と述べた。従業員に危険性回避の訓練を提供するよう、使用者に
奨励する新しい計画を実施中だという。
UNI、「恐怖からの解放」平和賞を授与
フィリップ・ジェニングスUNI書記長は、「恐怖からの解放」UNI平和賞について紹介した。
UNIは人権擁護の闘いに尽力しており、コロンビアやフィリピンにミッションを派遣した。「こ
れも私たちの任務のひとつだと思っている。世界のどこかで人権問題が発生すれば、私たちはど
こへでも行く。」彼は、この難しい任務に関わった組合員やUNIスタッフに感謝した。
「恐怖からの解放」UNI平和賞は、民主政権を復活させ労働運動を立て直したエルサルバドル
の組合、軍事政権発足後に社会の安定のために尽力したギニアのUNIメンバー、民主主義を求め
て最前線で闘ってきたネパールの組合、コロンビアの組合のための連帯支援を行った英国の組合
に与えられた。
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UIゼンセン同盟、AOKIの組合攻撃に連帯を要請
UIゼンセン同盟に加盟する専門店ユニオン連合会AOKIグループユニオン委員長が、メンズウ
ェア全国チェーン経営者との闘争について発言した。会社側の配転の脅しによって、組合員数は
1600人から250人へと激減した。こうした暴力団まがいの戦術は日本では余りないので、AOKI
の闘争は全国メディアの注目を引いている。
組合も気候変動と持続可能な開発について発言
英国/アイルランドUniteのピーター・スカイトは、炭素排出量の半分は職場ないしは業務関
連の出張に起因するものであり、気候変動は職場の問題だと想起した。彼の組合は、「私の職場
はどのくらい環境に優しいか?」というガイドを作成し、組合員の環境担当者を含む一連の取り
組みを提案している。彼は、役員報酬は環境パフォーマンスに関連づけるべきではないかと提案
した。
グリーンピース・インターナショナルのクミ・ナイドゥ事務局長は、ビデオで挨拶した。彼は、
環境問題に労働組合の関与の重要性を強調した。労働者の権利は環境問題と表裏一体である。
「貧しい人々は、気候変動に殆ど責任がないのに、真っ先にその悪影響を受ける」と彼は述べた。
安全で持続可能な地球のために行動しなければならない。
気候変動に関する動議は満場一致で可決された。
ディーセント・ワークを求める若い組合活動家
フランスFOのセリーヌ・マッソンは、UNIと加盟組合に、若い人々がディーセント・ワーク
に就けるよう支援を求めた。「組合の中で正当な立場を若い人にも与えてほしい。私たちはぜひ
引き受けたい」と彼女は訴えた。スウェーデンHandelsのソフィー・コニーソンは、29歳の店員
だと自己紹介した。彼女は、組合は若い人々に積極的に関わってほしいと願っていると述べた。
その理由は、若い組合員が労働運動の将来を担うからだけでなく、若い人々の労働条件がとりわ
け良くないからである。「労働運動にはもっと女性が必要だ。そして、もっと若い人々も必要だ」
と彼女は訴えた。
若い労働者に関する動議は、満場一致で可決された。
世界大会決議
大会は、アン・セリンUNI副会長(フィンランドPAM)が議長を、クリスティ・ホフマンUNI
副書記長が事務局を務め、23人から成る決議委員会の取り組みに敬意を表した。
36の動議案と、多くの修正案が加盟組合によって大会に提出された。
決議委員会の検討を経て、いくつかの動議案は結合されたり、既存の動議にまとめられたりし
た。結果として、決議委員会から17の動議案が、大会での採択を勧告された。
大会は、このうち「国境を越えた団体交渉の発展」、「言語面で差別なきこと」の2つの動議
について、世界執行委員会に今後のフォローアップを委託することを確認した。
大会で採択された15の決議は、下記の事項に関するUNIグローバルユニオンの立場を明確にす
るもので、その全文は後日、出版物として回覧される。
1: UNI グローバルユニオン・ブレイキングスルー戦略計画
2: UNI における女性の代表性に関するブレイキングスルー
3: 2011∼2014 年度 UNI 加盟費
4: 金融・経済危機
5: 平和
6: 移民労働と女性の人身売買
7: 一般組合員への周知
8: サプライチェーン−労働者を擁護する倫理的取引
9: 専門職・監督職のためのアクションをステップアップ
10: 社会保障と健康管理はディーセント・ワークに不可欠
26
11: UNI は職場の暴力撲滅に尽力する
12: 健康管理はディーセント・ワークに不可欠な人権である
13: 気候変動と持続可能な開発
14: 中東
15: 青年とディーセント・ワーク
ブレイキングスルー戦略への圧倒的支持
下記に対する連帯声明が採択された。
世界中で反労組的行為や労働者の権利侵害に直面する DHL 労働者のために、UNI 郵便・ロ
ジスティクス部会は、国際運輸労連(ITF)と共に、グローバルに労働者の権利を確保する
ためのグローバル協定を求めて闘っている。
ビルマ国民は、2010 年 11 月 7 日にミャンマー/ビルマで実施された不正な選挙を非難し、
アウン・サン・スー・チー氏と 2200 人の政治犯全員の即時無条件釈放と、民主主義の回復
を求めている。
米国、カナダ、ポーランド、インド、ポルトガルの UNI 加盟組合は、セキュリタスによる
反労組的不当待遇に直面している。これはセキュリタス/UNI/スウェーデン運輸労組のグ
ローバル協定の条項違反である。
UNI 郵便・ロジスティクス部会加盟組合は、郵便の自由化と民営化の影響を受けている。欧
州連合に対し、第 3 次郵便指令実施に関する猶予を即時制定するよう要求している。
Pick n Pay の SACCAWU 組合員は、長期化した賃金紛争が未だ解決せず、スト続行中であ
る。
トルコの銀行労働者は、「不可欠なサービス」と見なされているため、法律でストが認めら
れていない。トルコ政府は法律を変更すると約束したが、最近この公約を反故にした。
ウォルマート労働者は、労働者に公正な基準を設定し、世界中の労働者に組合の権利を確保
することを謳った、UNI とのグローバル協定締結を会社に要求している。
T モバイル従業員はドイツテレコムに対し、その海外事業所で働く従業員へのダブルスタン
ダードをやめ、グローバル協定に署名し、ドイツ以外の国の従業員に対する抑圧的な戦術を
やめるよう要求している。
UNI 加盟組織、UI ゼンセン同盟の加盟組合である AOKI グループユニオンは、AOKI ホー
ルディングス及び AOKI 経営側による不当な労働組合潰しに直面し、会社に不当労働行為と
脅迫の即時停止と、団結権の尊重を要求している。
ダンスケ銀行アイルランド支部であるナショナル・アイリッシュ銀行の従業員のための連帯
声明。従業員代表、金融労組 IBOA との調停による交渉を終える前に、確定給付年金の終了
を一方的に決定した後、会社は従業員に将来の給付を無しで済ませるため 1 回だけの 5%賞
与を提示した。
UNIは中東の平和のために取り組むことを誓う。
フィリップ・ジェニングス書記長は、パレスチナ及びイスラエルに4人から成るUNI代表団を
派遣したことを大会に報告した。UNI代表団は、労働組合役員、政治指導者、NGO代表、政府閣
僚らと話をした。「私たちはこの問題への関わりに新たな展望を開こうとしている」と述べた。
「平和を願う。両国には平穏に共存してほしい。私たちは民主的なパレスチナ国家の建設を支
援していかなければならない。パレスチナ国家には、強力な労働運動がなくてなならないし、強
力な労働市場の制度が必要だ。中断するわけにはいかない。パレスチナの教育、医療、エネルギ
ー、水道、交通、司法、警察、国防といった民主国家のあらゆる制度を整備しなければならない。」
大会は全会一致で、中東の平和と、イスラエル、パレスチナ両国の労働組合が平和に向けて連
携するという解決策並びに協力関係を求める動議を可決した。動議は、加盟組合が使用者に、非
合法な入植地から利益を得ている企業とのビジネスをやめさせるよう求めた。
新たなブレイクスルー−2011年にUNIプロスポーツ部会創設
27
大会は、2011年にUNIプロスポーツ部会を創設する取り組みを歓迎した。大会直前にUNI世界
執行委員会は、3万人強のEUアスリートをメンバーとして承認した。この組織は、欧州全域のプ
ロスポーツ選手を代表している。UNI欧州プロスポーツ部会とUNIプロスポーツ部会は、UNIの
最新事業だ。
大会で挨拶した、EUアスリートのウォルター・パルマー書記長(元プロバスケット選手)は、
代議員に、選手も自分たちの雇用状況に深刻な問題や懸念を抱える労働者であり、大抵はそれほ
ど高給取りではないことを想起した。例えば、2008年のバスケット選手の調査を見ても、約半数
が、年収3万ユーロ以下であることがわかる。「スポーツはグローバルなビジネスだから、アス
リートにもグローバルユニオンが必要だ」とウォルターは強調した。
大会は新役員を選出
UNI 会長にジョー・デブリュン
ジョー・デブリュンは満場一致でUNIの新会長に選出された。
就任挨拶でデブリュン新会長は、大会から与えられた栄誉を謹んで受けたいと述べた。「アジ
ア太平洋地域から選ばれた初の会長であり、オーストラリア労働運動や出身労組SDAにとっても
名誉なことである。労働運動に関わって37年余になるが、個人的にも非常に光栄だと感じてい
る。」彼は、退任するジョー・ハンセン前会長の多大な貢献に感謝した。
「会長として、私たちが定めた目標全てに全力で取り組みたい。私たちは団結している。私た
ちは共通の計画を立てたところだが、やるべきことはたくさんある。この取り組みは、ジェニン
グス書記長やスタッフにただ任せておけばよいというわけではない。私たち全員が関与していか
なければならない」と抱負を語った。
「ケープタウンで再会する時には、『よし、突破できた! 組合員のためにこの世界をより良
い場所にすることができた』と心から言えるようになっていなければならない」と強調した。
フィリップ・ジェニングスは書記長に再選
フィリップ・ジェニングスも満場一致で書記長に再選された。
ジェニングス書記長は、大会の信任に感謝し、再選は自身にとって非常に重要なことだと述べ
た。彼はUNIが着手した新たな活動計画について、「計画は立てられた。手段も整いつつある。
だが一刻の猶予もない。これはチームとしての取り組みだ」と述べた。
彼はまた、副書記長として彼を支えるクリスティ・ホフマンと、最近退任したフィリップ・ボ
イヤー前副書記長の貢献にも敬意を表した。妻のブリジットと家族のサポートにも感謝した。
ジョー・ハンセン前会長にも最大の賛辞を送った。「書記長の仕事は、会長とできる限り緊密
な協力が不可欠だが、いつも私のために時間を割いてくれて、本当にありがとう。」
ジョー・ハンセン、会長職を退任
ジョー・ハンセン前会長は、大会を成功に導いた全ての人々に感謝の意を表して閉会した。「こ
の7年間は最もやりがいのある経験をした」と述べた。
大会は、新たな世界執行委員会も選出した。スイスSYNDICOMのミシェル・ゴベは、世界執
行委員会によってUNI財政局長に再任された。
大会は、4人の内部監査委員とその予備委員を選出した。
正委員
予備委員
ノルウェーFSU ジョルン・ベルランド
スウェーデンFSU マグナス・ニストロン
英国UNITE ロブ・マックグレゴール
英国UNITE アグネス・トルミー
ベルギーSETCa クリスチャン・ローランド ベルギーSETCa ミリアム・デルミー
スイスUNIA ミルコ・セレナ
オーストリアGPA-DJP ベレナ・ワイスナー
ケープタウンで会おう!UNI長崎世界大会、歓喜に包まれ閉会
UNI世界大会は銅鑼に始まり、日本とアフリカの太鼓の素晴らしい競演に終った。2014年の大
会開催地である南アフリカのケープタウンへバトンを渡す、象徴的な閉幕の瞬間だった。
28
「UNIグローバルユニオンは行くべきところを知っている」とジェニングス書記長は閉会の挨
拶で述べた。「一刻の猶予もない。私たちは協力すればもっと強くなる。これはチームとしての
取り組みだ。皆さんは私を選んでくれたが、チームを承認してくれたのだ。」
ジェニングス書記長は、世界中の事務所で働くスタッフがチームとして協力し、ブレイキング
スルーに取り組んでいく、と力強く約束した。
そして「素晴らしい大会」に貢献してくれた日本チームに心から感謝した。
クリストファー・ウンUNI-Apro地域書記長コメント
確かに、参加した代議員一人一人の心に深い印象を残した大会になりました。例外なく全ての
参加者が、歴史的な大会に出席できたことを誇りに思っています。また、大会の企画から実施ま
で非常に効率的であったことに感銘を受けました。UNI-LCJ役員をはじめ、ボランティアや地元
の方々から温かい歓迎を受けたことにも感謝しています。
長崎市にこの規模の国際会議施設がないことを考えると、本大会の成功は実に注目に値する実
績となりました。UNI 長崎世界大会は、国際会議にふさわしい会場についての教科書通りの定義
を問い直すきっかけになったでしょう。更に重要なことは、UNI 長崎大会の成功によって、今後
もっと多くの国際的イベントがこの「平和都市」長崎で開催されることが期待されます。そうす
れば平和のメッセージがより多くの様々な国の人々に届けられるでしょう。
UNI-LCJ、長崎市関係者及び市民の方々に、歴史的偉業を心よりお祝い申し上げます。ユニー
クで、ダイナミックで、現実的な「日本らしいやり方」が有効で、あらゆる制約を克服できると
いうことを、皆さんがあらためて証明したのです。この精神をもってこそ、日本は、平和と調和、
安定と繁栄を国家と国民にもたらすため、経済的、政治的課題に立ち向かうことができるのです。
私たちUNIアジア太平洋地域組織(UNI-Apro)は、素晴らしい大会の一員として参加できたこ
とを大変誇りに思い、2014年のケープタウン世界大会を楽しみにしています。
29
第 3 章:ステッピングアップ@UNI-Apro
第2回UNI-Apro地域大会(2007年、クアラルンプール)詳細報告のため翻訳割愛
第 4 章:リーダーシップは社会的なアジア太平洋地域を形成する
UNI-Apro執行委員会とUNI-Apro運営委員会
現在のUNI-Apro執行委員会とUNI-Apro運営委員会は2007年7月クアラルンプールで開催さ
れた第2回UNI-Apro地域大会で選任された。その時から、両委員会の役員は入れ替わり、委員会
構成は変化し続けている。以下の報告は、この活動報告の作成時点のUNI-Apro執行委員会及び
UNI-Apro運営委員会の構成名簿である。
UNI-Apro 運営委員会(2011年5月現在)
UNI-Apro会長:
オーストラリア
UNI-Apro会長代行:
日本
UNI-Apro副会長:
日本
UNI-Apro副会長:
日本
UNI-Apro副会長:
マレーシア
UNI-Apro選出UNI副会長: 日本
UNI-Apro女性委員会議長代行:
UNI-Apro運営委員:
シンガポール
UNI-Apro運営委員:
インド
UNI-Apro地域書記長:
UNI書記長:
SDA
JP労組
サービス・流通連合
UIゼンセン同盟
UNIVEN
情報労連
SBEU
AIBBEF
ジョセフ・デブリュン
竹内 法心
八野 正一
落合 清四
モハメド・シャフィー PB.ママル
加藤 友康
マクシン・ゲイ
マイケル・リム
ミリンド・ナドカルニ
クリストファー・ウン
フィリップ・ジェニングス
UNI-Apro 執行委員会 (2011 年 5 月現在)
正委員
第 1 予備委員
第 2 予備委員
日本
渡辺
日本
情報労連
拓也
サービス・流通連合
日本
情報労連
日本
サービス・流通連合
日本
UI ゼンセン同盟
日本
UI ゼンセン同盟
日本
損保労連
日本
損保労連
日本
自動車労連
日本
自動車労連
第 1 地区:中央・東アジア
日本 情報労連
加藤 友康
日本 サービス・流通連合
八野 正一
日本 UI ゼンセン同盟
落合 清四
日本 損保労連
關 裕
日本 自動車労連
相原 康伸
日本 JP 労組
竹内 法心
韓国 KHMU
ナ・ソンジャ
韓国 KPWU
リー・ハング
台湾 CPWU
ツァイ・リャンチェン
日本 JP 労組
日本 JP 労組
韓国 KICTU
チョイ・ドンファン
韓国 NUMW
チョイ・サンジェ
台湾 CTWU
チャン・ツーチェン
韓国 KFSU
カン・ジュヒョク
韓国 KITU
パク・ヒュンシク
台湾 CPWU
ルー・シェンカオ・ジェリー
30
香港 UPOE
イプ・カンフー
第 2 地区:東南アジア
カザフスタン RTUCWKU
ラシャー・バイサリエ
モンゴル FCSWTU
ドンドフツェン・オイドフ
シンガポール SBEU
マイケル・リム
フィリピン NUBE
ホセ・P・ウマリ
マレーシア UNIVEN
モハメド・シャフィー BP.
ママル
シンガポール SATSWU
ビクター・パン
インドネシア ASPEK
コスワラ
マレーシア
サラワク銀行労組 SBEU
リーン・ハディア
シンガポール SUBE
K ゴビンダサミィ
タイ UNI-TLC で調整中
ネパール NTCWU
シャンカール・ラミッチャン
インド AIBBEF
ミリンド・ナドカルニ
第 4 地区:オセアニア
バングラデシュ BKF
モハマド・ムスタフィザル・ラーマン
インド FNTO
K ヴァリナヤガム
パキスタン NOPE
サイド・ハッサン
インド FNPO
テガラジャン
オーストラリア SDA
ジョセフ・デブリュン
オーストラリア FSU
レオン・カーター
オーストラリア ASU
リンダ・ホワイト
オーストラリア CEPU
エド・ヒューシック
オーストラリア CPSU
ステファン・ジョーンズ
フィジー FPTEA
アッター・シン
印刷・パッケージング部会
議長
メディア部会議長
オーストラリア SDA
イアン・ブラッドソン
オーストラリア FSU
オーストラリア SDA
ジョセフ・バロック
オーストラリア FSU
マレーシア NUNW
R チャンドラセカラン
第 3 地区:南アジア
UNI-Apro 女性委員会議長
UNI-Apro 女性委員会副議長
オーストラリア
ASU
オーストラリア CEPU
ロス・イースン
オーストラリア CPSU
ルイーズ・パース
フィジー FBFSEU
プロモド・ラエ
オーストラリア AMWU
ロレイン・キャシン
オーストラリア アライアンス
クリス・ウォーレン
ニュージーランド NDU
マクシン・ゲイ
調整中
オーストラリア
ASU
オーストラリア
CEPU
オーストラリア
CPSU
フィジー TEA
マナサ・コナタシ
UNI-Apro 青年委員会議長
フィリピン NUBE
ミッシェル・ベリーノ
UNI-Apro 専門職・監督職委員会 シンガポール SMMWU
議長
ジョン・デペイバ
前回のUNI-Apro地域大会以降、5回のUNI-Apro執行委員会会議が開催された。
第8回UNI-Apro執行委員会(2007年8月27日、クアラルンプール)
31
第9回UNI-Apro執行委員会(2007年8月30日、クアラルンプール)
第10回UNI-Apro執行委員会(2008年4月2∼4日、ハノイ)
第11回UNI-Apro執行委員会(2009年3月29∼30日、シンガポール)
第12回UNI-Apro執行委員会(2010年3月22∼23日、シンガポール)
前回のUNI-Apro地域大会以降、6回のUNI-Apro運営委員会会議が開催された。
第18回UNI-Apro運営委員会(2008年4月2日、ハノイ)
第19回UNI-Apro運営委員会(2008年11月10日、ニヨン)
第20回UNI-Apro運営委員会(2009年3月29日、シンガポール)
第21回UNI-Apro運営委員会(2009年11月12日、ニヨン)
第22回UNI-Apro運営委員会(2010年3月22日、シンガポール)
第23回UNI-Apro運営委員会(2011年4月18∼19日、シンガポール)
32
第 5 章:加盟組織は連帯し、方向性を定める
2011年5月現在、UNI-Aproは、22ヶ国187労組2,016,580名を代表している。
UNI-Apro 加盟組織および加盟組合員 (2011 年 5 月現在)
地域
国、地域
加盟
組織数
申告された
加盟
組合員数
加盟費納入し
た加盟
組合員数
第 1 地区:
中央・東アジア
(7 ヵ国)
香港、日本、韓国、台
湾、モンゴル、カザフ
スタン、キルギス
40
1,028,585
1,102,975
第 2 地区:
東南アジア
(7 ヵ国)
インドネシア、マレー
シア、フィリピン、シ
ンガポール、タイ、東
ティモール、ベトナム
54
278,205
63,314
第 3 地区:
南アジア
(5 カ国)
バングラデシュ、パキ
スタン、ネパール、イ
ンド、スリランカ
73
341,965
10,107
第4地区:オセアニア
(3 カ国)
オーストラリア、ニュ
ージーランド、フィジ
ー
20
368,825
339,121
UNI各国加盟協における成長と連帯
UNI各国加盟協は、各国においてUNIおよびUNI-Aproを支える重要な組織となっている。運
営面においては、各国加盟協は、加盟組織間の調整や連絡の様々な面でUNIを助けており、各国
におけるUNIの可視化に貢献している。最も重要なのは、各国加盟協が労働運動の真の連帯精神
を目指し、UNI加盟組織間に一致をもたらすという重要な機能を果たしていることである。
見直しを経て、各国加盟協は、様々な能力開発プログラムにおいて組合を支援するためにより
野心的でエキサイティングな活動に取り組むために強化された。各国加盟協は、UNI-Aproの組
織化及びアドボカシー活動の中心となった。
以下は、各国の加盟組織により設置された各国加盟協である。
UNIバングラデシュ加盟協(UNI-BLC)は、バングラデシュの全UNI加盟組織の連絡調整機
関である。バングラデシュには、現在、金融、テレコム、郵便、印刷部門の9つのUNI加盟組織
がある。
UNI-BLCは、グローバル化における労働組合の役割について、労働組合リーダーを対象に意
識喚起を行い、労働組合活動運営スキルの向上、組織化の奨励、連帯と組合同士の協力を促進す
る教育・訓練プログラムを実施してきた。これらのプログラムは、スウェーデンLO TCO、フィ
ンランドSASKの支援を受けている。
これらの労働組合開発活動の結果、連帯精神と同じ目標を目指す共通の精神が醸成され、同じ
目標を達成するための加盟組織合同の取り組みが増え、UNI-BLCの活動範囲と構成人員数が拡
大した。
BKF バングラデシュのマンズラル・ハク氏がUNI-BLC事務局長を務めている。
UNI フィジー加盟協(UNI-FLC)は、最も新しい加盟協である。2008年6月27日にフィジー
の首都・スバで行われた結成大会で結成された。大会は、フィジー郵電労組書記長のアッター・
シンハ氏を事務局長に、プラモド・ラエ氏を議長に選出した。
33
UNIインド加盟協(UNI-ILC)は、2003年に結成され、AIBBEFのミリンド・ナドカルニ氏が
議長、FNTOのトーマス・ジョン氏が事務局長を務めている。UNI-ILCは、UNI管轄部門の多く
の未組織労働者の組織化においてUNI-Aproと緊密に連携してきた。
インドは、世界の民主国家の中でも最も巨大で急速な経済成長を遂げている国であり、UNIが
網羅する産業部門の主要なグローバル企業にとって、潜在的・実際的に、巨大な世界市場となっ
てきた。また、多くの急成長を遂げているグローバル企業やコングロマリットを輩出している国
でもあるが、その組合組織率は極めて低い。これは、特にUNIの管轄範囲である新しい成長産業、
すなわち、IT、商業、金融、テレコム、セキュリティ・サービス、さらにインドに大々的に進出
している印刷・メディア産業の多国籍企業において顕著である。
世界中で組合の力を強化し承認を得る、というUNIグローバルユニオンの戦略に沿って、イン
ドにおける戦略は、ふたつの重要な要素から成る。すなわち、
UNIに関連する産業部門の全ての組合をUNIに結集させる。
組合をUNIの部会に結集し、特に組合が存在しない、または今日のインドで組合が弱いグロ
ーバル企業に組合を作る。
このビジョンを実現するために、UNI、UNI-Apro、UNI-ILCは、組合が存在しない部門での
組織化において連携し、組織化アジェンダを達成するためにインドの企業とのグローバル協定締
結を目指す。
見直し期間において、UNI-Aproは、SASKフィンランド、LO TCOスウェーデン、FNV オラ
ンダ、SETCAベルギーとともに、特にITを利用したサービス、セキュリティ・サービス、印刷、
商業、メディア部門で従業員のための組合結成を目指した様々なプロジェクトを立ち上げた。
インドの活動を支援するために、UNI-Aproは、ハイデラバード、デリー、バンガロールの3ヶ
所にUNIDOCを設置した。UNIDOC(労働組合開発センター)のコンセプトは、UNI-Apro地域
事務所によって2005年に提唱され、インドを含む数カ国でUNI-Aproプロジェクトや活動の実施
における技術的・事務的な支援を提供した。UNIDOCインドは、FNTOインド出身のJSR プラ
サド氏が代表を務めた。
2010年7月に全てのプロジェクトが保留となった。プロジェクトの費用やUNIDOCの運営費に
関する支出をまかなうための外貨の受け取りについてUNIDOCインドへの政府の承認が遅れた
ためである。そして、UNIDOCインドは、2011年3月に閉鎖された。FCRAから外貨受け取りの
許可が下りなかったためである。
UNI日本加盟協(UNI-LCJ)は、商業、金融、印刷、メディア、テレコム、郵便産業で働く100
万人以上の労働者を組織する11組織で構成される。
2009年9月、民主党、社民党、国民新党の連立政権が成立した。2009年8月30日の選挙の結果
は、日本に非常に歴史的なブレイクスルーをもたらした。鳩山政権が僅か8ヶ月で終わってしま
ったことは非常に残念である。この短期政権の間、鳩山首相は、「生活を守る」というスローガ
ンの下、様々な雇用問題の解決を最優先に取り組んだ。続く菅政権は、鳩山政権が始めた改革、
すなわち戦後の行政システムの一掃、経済、金融、社会保障の大々的な再構築といった全面的な
改革の実行を引き継ぐことを約束した。雇用及び人材面での戦略に関しては、あらゆる成長分野
における実用的な能力開発、ディーセント・ワーク、ジェンダー平等社会の実現促進を目指し、
非正規労働者の正規雇用を含む雇用の安定化を強調した。
残念ながら、2010年7月11日の参議院選挙で民主党は議席を失った。しかしながら、UNI加盟
組織の4名の候補者は全員当選し、我々は、今後のこれらの議員とUNIの大きな成功を祈ってい
る。
2005年、UNI-LCJは、3つのマストウィン目標を設定した。すなわち、
加盟人員100万人達成
グローバル枠組み協定を最低1つの日本の多国籍企業と締結する
34
青年(男女)の国際労働運動への関心を高める
これらの目標は全て長崎世界大会までに達成され、UNI-LCJ幹部は、日本のUNI加盟組織を組
合成長の次の段階へと導く新しいブレイキングスルー成長目標の設定のためにすでに動き出し
ている。
2011年2月現在、落合清四氏がUNI-LCJ議長を務めている。
UNIマレーシア加盟協(UNI-MLC)は、2001年3月21日に結成された。現在24の構成組織か
ら成り、加盟人員は、金融、テレコム、郵便・ロジスティクス、商業、印刷、メディア・エンタ
ーテイメント、観光部門で働く6万人である。
2007∼2010年には、組織化と組合成長イニシアチブが進展し、UNI-MLCは大きな成果を達成
した。このプロジェクト・キャンペーンは、マレーシアのコールセンター労働者の組織化を目的
としたもので、ベルギーLBC NVK の支援を受けている。これは、マレーシアのコールセンター、
P&MS、テレコムベンダー労働者を代表するUNIVENマレーシアの結成につながった。スウェー
デンHandels-LOTCOとUNI-MLCは、マレーシアで小売部門組織化プロジェクトを行い、14の
主要小売企業で約2万人の労働者の組織化に成功し、そのうち9つの組合は、マレーシアの正式な
労働組合として登録された。全ての12小売労組が産別労組UNICOMEマレーシアを結成し、マレ
ーシアの小売部門労働者を代表する組合として認知されるようになった。
UNI-MLCは、ASEANプロセスにおける社会対話を目指したキャンペーンでも重要な役割を果
たしている。
UNIVENのモハメド・シャフィー・BPママル氏がUNI-MLC議長を、UPUSのサフィアン・ユ
ノス氏がUNI-MLC事務局長を務めている。
UNIモンゴル加盟協(UNI-LCM)は、商業、郵便、テレコム部門の2,000名以上の労働者を代
表する3つのUNI加盟組織で構成される。彼らの成功は、UNI-LCJによる支援に多くを負ってい
る。
UNI LCMのグローバル経済へのスムーズな移行を助ける支援活動の一環として、UNI-LCJは、
ITと英語の訓練センターを設置し、UNI-LCMメンバーにサービスを提供している。ドンドフツ
ェン・オイドフFCSWTU委員長がUNI-LCM議長を務めている。
UNIネパール加盟協(UNI-NLC)は、現在、銀行、保険、テレコム、携帯電話、小売/商業、
テレビ/ラジオ、政府系印刷、民間印刷、カジノ、郵便、理容部門の12加盟組織、5万人を代表
している。
03年のUNIネパール加盟協の結成以来、全ての加盟組合が団結し、強力な国内の組織化方針の
採択に合意、2004年から組織化キャンペーンを開始した。2005年からは、UNIおよびUNI-Apro、
労働組合連帯支援組織(TUSSOs)の支援を受けた。UNI-NLCは、労働者を彼らの経済的、社
会的利益を効果的に代弁することができる労働組合に組織化することに力を注いでいる。そのた
めに、UNI-NLCは、UNICOME、UNILOGE、UNITEL、FIEUNなどのUNIブランドの下、サ
ービス業の労働組合連合の結成を推進している。
2005年∼2006年にかけてのネパールにおける王政の終焉は、労働者にとって国づくりの長期的
ビジョンに参加する新しい機会を与えるものであった。労働組合の今後の役割は、人権を交渉の
余地のない議題とすること、選ばれた組合員による団体協約の技術的委員会における組合の役割
の強化、民主的な政治に経済を結び付けること、社会保障と労働者の権利を盛り込み、民主主義
と平和の制度的柱を支援することである。労働組合は、労働者の状況を改善し、エンパワメント
する、5つの重要な資源、すなわち、知識、つながり、声、組織、連帯を与えてきた。これらの
役割は、政党政治から組合自治を生み出すことによりさらに制度化される必要がある。
UNI ネパール加盟協(UNI-NLC)は、ネパールの新しい憲法制定に影響を与えるため、労働
組合と政治的力を結びつける意欲的な役割を果たしている。UNI-NLCは、ネパールにおいて認
知されたステイクホルダーとして、定期的に労働及び諸問題に関する社会対話に参加している。
UNI-NLCは、国家政策の形成過程においても責任ある対話パートナーとして台頭してきた。ネ
パールの加盟組織を通じて、人々の力を動員して変化をもたらすカタリスト的役割を担っている。
35
ネパール国民は、90年代初頭から王政を打倒し、民主主義を樹立するために闘ってきた。
ネパール金融労組(FIEUN)は、そうした組合のひとつで、ネパールにおいてUNI-Aproの前
身Apro-FIETによって民主化闘争の初期に結成された。自信と組織化スキルにあふれていた
FIEUN、その幹部と活動家達は、組合をネパールにおける30以上の金融労組を代表する国レベ
ルの連合体へと成長させた。FIEUNは、ネパール・スタンダード・チャータード銀行及びネパー
ルSBI銀行(ネパールにおけるインド国立銀行のジョイントベンチャー)を組織化した。責任あ
る労働組合連合として、FIEUNは、積極的な労使関係をネパール銀行協会と構築しており、定期
的な社会対話を行っている。
同様に、UNICOMEネパールは、国内のあらゆる小売企業の労働者を組織し、組合員数を確実
に伸ばしている。2010年、スパイス・テレコム(ネパールにおけるテリアソネラの100%出資子
会社)では、労働組合の承認を得ただけでなく、多国籍企業と初めての労使協約を締結した。
UNI-Aproは、SDAオーストラリアの財政的支援を受け、IT訓練センターをカトマンズに開設し
た。訓練施設は、青年・女性組合員に非常に好評であった。IT訓練施設は、ネパールでの組織化
にとって大きな魅力となっている。UNI-NLCは、ネパールで初めて部会を超えた専門職・監督
職(P&MS)協議会を設置した。多くの若い労働組合活動家がネパールの労働組合で働いており、
UNI-Aproの実施する様々な能力開発プログラムに参加している。
青年、女性、そして全ての労働者をグローバル経済に立ち向かうための知識と技術によりエン
パワメントすること、また同時に、平和で民主的な国家づくりは、UNI-NLCのビジョンである。
UNI-LCJの目標設定に触発され、UNI-NLCも2012年末までに10万人の加盟人員を達成すると
いうブレイクスルー目標を設定した。
UNI-NLCの議長は、レッカ・プラサド・バーラコティ氏、事務局長はシャンカー・ラミッチ
ャネ氏が務め、UNIDOCネパールのラジェンドラ・アルチャヤ所長が二人を助けている。
UNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)は、金融、商業、印刷、テレコム、郵便、民間医療部門
の約4万人を代表するUNI加盟組織で構成されている。フィリピンUNI加盟組織の共同の活動の
結節点となっており、組合としての目標を追求する数多くのプロジェクトや活動を実施している。
UNI-PLCは、いくつかの重要なプロジェクトにUNI-Apro、UNI-LCJ、ILOからの支援を受け
ている。すなわち、社会運動的組合主義の促進、グローバル化による企業再編のチャレンジに対
処するためのUNI加盟組織の能力開発、コールセンターの組織化、組合の女性・青年の役割の強
化などである。また、JP労組からの支援で郵便労働者の子供たちに奨学金プログラムを実施して
いる。
サービス産業の労働組合が直面する課題に対するより統一的な対応の必要性に応えるべく、
UNI-PLC率いるフィリピンのサービス部門労働組合は、ユニオン・ネットワーク・フィリピン
(UNP)を結成した。2010年10月30日の結成大会で、UNPは、非正規雇用、低い組織率、小売
業において特に顕著な中小企業の多さ、企業再編やICTの発展による雇用保障への多大なる影響
など大きな問題を抱えるサービス産業労働者の生活と労働条件の向上に貢献することを誓った。
サービス産業の多くはインフォーマルセクターであり、伝統的な組合の組織範囲から外れている
労働と雇用を担当するロザリンダ・バルドス氏は、結成大会で基調講演を行い、新たに選出さ
れたフィリピン大統領ベニグノ・ ノイノイ ・アキノ3世が掲げる22か条の労働アジェンダを
代議員に紹介した。バルドス氏は、フィリピンの賃金を合理的に決定し、特定の産業の労働者の
利益を標準化するために労使交渉を導入すべきであるという自身の考えをUNPと共有している
ことを留意した。
UNP結成大会に特別来賓として招待を受けたUNI-Apro地域書記長は、UNPの結成労組10組合
に祝辞を述べ、UNPがサービス産業を取り巻く問題に応える新しい戦略を追求することを祈念し
た。また、組合の目標を追及する手段として社会対話を模索するよう求め、加盟組合による
UNI-Apro活動への協力にも感謝した。
大会は、UNP規約を採択し、役員を選出した。UNP議長には、ALUのジェラルド・セノ氏、
副議長には、AFWのアンジェリト・カルデロン氏、BMRCPIのデオベル・デオカレス氏が選出
された。また、NUBEのホセ・ウマリJr.氏、PEUPのディアスダド・デ・グスマン氏がそれぞれ
事務局長及び副事務局長に選出された。
36
UNIパキスタン加盟協(UNI-PALC)は、2005年10月に結成され、金融、テレコム、郵便、
印刷、メディア芸術産業の10の加盟組合で構成される。これらの組合は様々な背景を持っている
が、共通の目標のために集まっている。
NOPEのサイド・タヒブ・ウル・ハッサン氏がUNI-PALC議長を、PBIFEFのイフティカール・
A ・シェイク氏が事務局長を務めている。
UNIシンガポール加盟協(UNI-SLC)は、金融、テレコム、メディア、印刷、商業、ビル管理
部門の10のシンガポールUNI加盟組織の活動を調整しており、全加盟人員は4万人である。
UNI-SLCは、シンガポールのUNI加盟組織のUNIおよびUNI-Apro活動への参加を支援し促進す
る価値ある調査・情報を提供する効果的な調整機関である。
UNI-SLCは、毎年恒例のUNI-SLCゴルフ・トーナメントで集まった基金を使って、加盟組織
が多くのUNIの活動に参加できるよう支援を行っている。
議長は、SMMWU のジョン・デペイバ氏が、事務局長はSIEUのウィリー・タン氏が務めてい
る。
UNIスリランカ加盟協(UNI-SLAC)は、2003年6月に結成され、テレコム、メディア、印刷、
郵便、金融部門の14,000人の労働者を代表する8つの加盟組織で構成される。
スリランカの現代史の大部分は、市民による暴動と紛争の歴史であった。2009年5月、スリラ
ンカ大統領は公式に内戦の終結と反政府組織「タミールイーラム解放のトラ」の主要幹部を打倒
したことを宣言し、スリランカは国の復興に向けた道程にある。
政治的・社会的不安定さにもかかわらず、同国のUNI加盟組織は、労働運動における連帯を構
築するため現実的なプログラムを実施するために一致団結してきた。人々と労働者はUNI SLAC
を信頼しており、内戦終結後、UNI-Aproのエンパワメント・プログラムは、「反対派」であっ
た北部地方出身者の参加を招聘する活動のひとつであった。多くの参加者は女性であった。
それ以降、UNI-SLACは、セキュリタスやISS(ビル管理)、トーマス・デ・ラ・リュ(印刷・
パッケージング)などの同国に進出している多国籍企業の情報収集や活動状況のマッピング、携
帯電話企業での組織化について各UNIの部会を支援する能力の構築を行っている。
NPTWUのガヤン・ムナウィーラ氏がUNI-SLACの議長代行を務めている。
UNIタイ加盟協(UNI-TLC)は、金融、テレコム、郵便、商業、印刷部門の6つの加盟組織で
構成される。
タクシン前首相の追放以来、政治的危機の影響により未だ混乱しているが、現在の政府は、2011
年7月4日に選挙を実施し、赤シャツ隊、黄シャツ隊として一般的に知られる極端に二極化した社
会における新しい政治的マンデートと政治的安定が築かれる予定である。この動きは、労働運動
を政治化するにはいたらず、かえって逆に運動の分裂を引き起こしており、同時に同国での多国
籍企業は、益々成長し、そのプレゼンスを拡大している。
こうした困難にも関わらず、UNI-TLCは、加盟組織間の連帯をもたらすという使命を忘れずに
タイ政府によるILO条約87号および98号の批准を求めるキャンペーンを続けている。UNI-TLC
は、ASEANプロセスの社会化や労働運動の発言権を求めて活発なアドボカシー活動を行ってい
る。
2011年初頭、UNI-TLCの成長に焦点を当てた戦略が作成され、組織化文化を導入し、テスコ
ロータスやテレノール(DTAC)、また印刷・パッケージング部門での様々な組織化プログラム
の実施を支援するため、同国にUNIDOC機構が発足した。
UNI-TLCは、SEWUCAT副委員長のニライモン・モントレカノン氏 が議長を務め、UNI-TLC
を支えるUNIDOCタイの所長をソンブーン・サブサーン氏が務めている。
37
第 6 章:UNI-Apro 部会の成長
2008∼2009年にかけての世界金融危機は、グローバル経済インフラを破壊する大きな出来事で
あった。仕事、雇用、労働世界に与える悪影響は、明らかで疑う余地がない。今日まで、我々労
働運動は、危機の原因となった古いやり方を変えようとしないグローバルなガバナンスと闘い続
けている。
こうした状況を鑑み、第3回UNI-Apro4部会大会が開催された2009年、UNI-Aproは、底辺へ
の競争を打倒し、強力で独立した労働組合が経営側とのパートナーシップの下で競争の激しいグ
ローバル経済の頂点を目指す企業を構築するための新しい労使関係が必要であるというメッセ
ージを強調する機会を持った。
世界金融危機に応えて、第3回UNI-Apro4部会大会は、「底辺への競争との闘い:世界金融危
機への我々の対応」というテーマを採択した。大会は2009年7月にジャカルタで開催予定であっ
たが、2009年7月17日にジャカルタの複数のホテルで爆発があったため、延期された。
各部会大会は、以下の日程で再召集を成功裏に果たした。
• UNI-Apro金融部会大会(2009年10月25∼26日、バンコク)
• UNI-Apro商業部会大会(2009年11月4∼5日、クアラルンプール)
• UNI-Aproテレコム部会大会(2009年12月11∼12日、ハノイ)
• UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会大会(2009年12月12∼13日、ハノイ)
UNI-Aproの4つの中核的部会、すなわち、商業部会、金融部会、郵便・ロジスティクス部会、
テレコム部会では、地域のサービス部門労働者の雇用条件や労働基準の向上に資するという共通
の目標を持ちつつ、各部会の組合と組合員の持続的成長のための目標達成を実現する部会独自の
戦略目標を設定している。
UNI-Apro商業部会
「未来の工場」とは、サービス産業における小売・流通業の潜在的な拡大規模や範囲の真の大
きさを表現するのに使われてきた言葉である。消費の傾向やパターンは、成長する豊かなアジア
太平洋地域にグローバルな消費市場の傾向を決める巨大な国内流通センターを持つ多国籍小売
企業によって形成されている。
ゆえに、UNI-Apro商業部会が決めたように、労働者を組織化するためのアクセス権獲得のた
めに既に締結されたグローバル枠組み協定を最大限活用し、同時に新しい協定締結を追及してい
くことが最大の優先事項である。それに加え、商業部門が典型的に多くの青年・女性労働者を雇
用しているという状況に対応し、UNI-Apro商業部会は、特に意識して労働運動において女性を
段階的にエンパワーし、所有意識・参加意識を強化していく。
労使パートナーシップを基調とした使用者との社会対話の取り組みについては、加盟組織は良
い成果を出している。
インドでは、メトロ・インドの経営側がバンガロールとハイデラバードにおける組合承認に関
する紛争でのUNI-Apro地域書記長の介入に対して、前向きな反応を示した。労使は、建設的な
関係を発展させるために協力し、全ての紛争を対話と協議によって解決するよう努力することで
合意した。
タイでは、組合承認を含む様々な問題に関する労使紛争への友好的な解決策をみつけるべくテ
スコロータスの経営側と進められている対話は、経営側とUNI-Apro地域書記長との協議が持た
れており、良い方向に進展している。2010年にはテスコロータス労組がUNIに加盟した。
インドネシアでは、UNI-Aproの報告でも紹介されているように、へーロースーパーマーケッ
トでの建設的労使関係が大きく進展した。報告は2009年2月に出版された。
ヒーロースーパーマーケットの建設的労使関係は、韓国のロッテの経営陣がマクロ・スーパー
マーケットの買収後に組合承認を認めたように、他の小売業者に彼らの例に倣いたいという思い
を抱かせた。最も重要なことは、これにより、マンパワー省が、UNI-Aproを第1回インドネシア
小売業三者構成会議に招待するという決定をしたことである。同会議は、2009年7月22日にジャ
カルタで開催され、インドネシア小売業における三者構成委員会を発足させ、益々グローバル化
38
する経済においてインドネシア小売業の競争力向上のため、社会パートナーシップの下で協力し
ていくことを宣言した共同コミュニケを採択した。
この部門での良い進展を最もよく表す例は、日本最大の小売業者・髙島屋がUNIとのグローバ
ル枠組み協定を締結したことである。この協定は、2008年11月11日のUNI世界運営委員会にお
いて署名された。
JILAF、スウェーデンLO TCO、自動車総連、サービス・流通連合、UIゼンセン同盟など多く
の連帯支援組織やUNI加盟組織の支援を受けUNI-Aproが実施する様々な訓練コースにおいて、
地域の女性・青年の商業部会リーダー達を含む多くの組合役員や将来組合を主導するリーダー達
に訓練が提供された。
日本のJILAFからのタイ・テスコロータス労組への支援によって、同労組幹部たちは、経営側
と対峙するためのスキル、知識、経験を身につけることができた。マレーシアでは、サービス・
流通連合がUNI-MLCによる伊勢丹マレーシアでの組合開発の取り組みを支援してきた。UIゼン
セン同盟は、Aspek商業部会を過去数年間に渡って支援し、Aspekインドネシアに加盟する商業
部会加盟組織の強化と影響力拡大に関してAspek商業部会の発展に大きく貢献した。UNI-LCJ商
業部会は、UNIモンゴル加盟協を支援し、モンゴルの商業労組活性化に役立った。
UNI-Apro商業部会は、現在、16ヵ国25加盟組織838,000人以上の登録加盟人員を有している。
この間の、UNI-Apro商業部会の機関会議は次の通り。
•
•
•
•
第7回UNI-Apro商業部会委員会(2007年11月5∼6日、バンコク)
第8回UNI-Apro商業部会委員会(2008年10月24∼25日、マニラ)
第9回UNI-Apro商業部会委員会(2009年11月4日、クアラルンプール)
第10回UNI-Apro商業部会委員会(2010年9月27∼28日、ジャカルタ)
UNI-Apro 商業部会委員会および役員 (2011 年 5 月現在)
中央・東アジア
日本
サービス・流通連合
八野 正一
日本
UI ゼンセン同盟
藤吉 大輔
日本
自動車総連
相原 康伸
韓国
KPSU
キム・ヒュングン
東南アジア
シンガポール SMMWU
ジョセフ・チュア
マレーシア
NUCW
プラスマシバム・アル・チェラクティ
インドネシア
ASPEK
ルスディ・サラーム
インド
CS&CEWU
ラーマン・パンディ
ネパール UNICOME
ディーパ・バラワジ
オセアニア
オーストラリア
SDA
イアン・ブラッドソン
オーストラリア
SDA
調整中
UNI-Apro 商業部会
議長:
オーストラリア
SDA
書記次長
イアン・ブラッドソン
委員会役員
副議長:
日本
サービス・流通連合 会長 八野 正一
副議長:
日本
UI ゼンセン同盟
副会長 藤吉 大輔
副議長:
シンガポール SMMWU 書記長 ジョセフ・チュア
副議長:
インド
CS&CEWU 会長
ラーマン・パンディ
運営委員: 香港
HKCCGRU 書記長 チュン・ライハ
UNI-Apro 商業部会を代
正委員
予備委員
表する UNI 世界商業部会 日本 サービス・流通連合
日本 サービス・流通連合
運営員会委員
八野 正一
俣野 勝敏
日本 UI ゼンセン同盟
日本 UI ゼンセン同盟
橋本 和秀
中野 英恵
オーストラリア SDA
オーストラリア SDA
ジョセフ・デブリュン
イアン・ブラッドソン
シンガポール SMMWU
シンガポール SMMWU
ジョセフ・チュア
ジャッキー・タン
39
マレーシア UNICOME
マレーシア UNICOME
メイリリ・ルジーナ・シャアリ プラムスワリー・アプ・タンガベル
インドネシア ASPEK
インドネシア ASPEK
ノライニ
ディア・アングラヒニ
UNI 世界商業部会運営委員会副議長:
オーストラリア SDA
ジョセフ・デブリュン
UNI-Apro商業部会担当部長
アリス・チャン
UNI-Apro金融部会
UNI-Apro金融部会は、様々な地域・国際金融機関に対して、世界金融のメルトダウンを契機
に、コンプライアンスのための効果的な規制及び監視を伴った地域金融システム改革と同時に世
界金融システムの再構築が緊急に必要であると最も声高に求めてきた。UNI-Apro金融部会は、
UNIが提唱する責任ある金融商品販売憲章を支持しているが、これは、1997年のアジア金融危機
という過去の経験から地域における持続可能な金融システムを求める重要なキャンペーンであ
る。
オーストラリア、インド、日本、韓国、マレーシア、フィリピンの参加者から構成された
UNI-Apro金融部会代表団が2009年2月24∼25日にジュネーブのILOで開催されたILO主催グロ
ーバル対話フォーラムに参加し、地域および世界レベルでの世界金融システムの安定化と改革の
ために重要な優先課題を訴えた。
アジア太平洋地域の市民社会組織やASEAN事務局とともに、UNI-Aproは、地域の重要な産業
への世界経済金融危機の影響に関する地域会議を共同開催した。様々なステイクホルダーで構成
されるCivil Society Voices とASEANは、この危機が、食糧及び気候変動の現実と相まってどの
ような影響を我々の社会の主流から取り残された部門に与えるのかを危惧している。この地域対
話は、ASEANにおける地域の支払い・決済システム導入のための地域金融協力を強化する必要
性を認める大会声明を出して終了した。
オーストラリア、インド、韓国、マレーシア、シンガポールにおける規制システムおよび販売
とアドバイスに関する慣行についての研究がUNI-Apro金融部会によって始められた。この研究
の成果は、ジャカルタで行われた第12回UNI-Apro金融部会委員会に合わせて行われたワークシ
ョップで分析された。キャンペーン戦略もそのワークショップでUNI-Apro金融部会運営委員に
より提案され、各国の銀行および保険会社において責任ある販売とアドバイスに関するUNI金融
部会憲章を促進することが確認された。
ASEAN金融部門へのASEAN経済統合の影響に関するUNI-Aproの研究は、2010年10月にマニ
ラで開催された第1回ASEAN三者構成対話会議での議論のベースとなった。本会議は、ASEAN
金融部門における他の三者構成パートナーとの議論のフォローアップの基礎を築いた。
この間に、UNI-Apro金融部会は、地域の成長トレンドや金融部門におけるパラレルな雇用の
増加に合わせ、保険産業における組合ネットワークの強化を行った。これにより、東アジア地域
で台湾保険労組(TNUIE)の新規加盟があった。保険産業の発展は続いており、今後も大きな成長
が期待できよう。
ASEAN銀行労組協議会(ABUC)に参加するASEAN加盟国のUNI金融部会加盟組織は、
ASEANプロセスに影響を与えるために緊密な協力を続けた。
インド、インドネシア、ネパールの新しい民間銀行の多くの未組織労働者の組織化は、
UNI-Apro金融部会にとってのもうひとつの優先課題であった。ASPEKインドネシアは、ラボ銀
行、オーストラリア・コモンウェルス銀行労働者をインドネシア最大の民間銀行であるダナモン
銀行労組と共に組織化し、現在ではASPEK加盟組合となっている。
ネパール金融労組(FIEUN)は、民間銀行10行と生命保険会社8社を組織化対象とした。FIEUN
は、ネパール・スタンダード・チャータード銀行、ネパールSBI銀行(ネパールにおけるインド
国立銀行の共同ベンチャー)で組合員を獲得した。FIEUNが行っていることは、産業のステイク
ホルダーたちとの提起的な社会対話である。FIEUNは、責任ある労働組合連合として、ネパール
40
の民間銀行で組織化や組合員勧誘を行う際の組合に対する敵対心を減らす観点から、ネパール銀
行協会との良好な関係を築いてきた。
UNI-Apro金融部会には、現在17ヵ国39労組538,000人以上が加盟登録している。
この間の、UNI-Apro金融部会の機関会議は次の通り。
•
•
•
第9回UNI-Apro金融部会委員会(2008年8月6∼7日、東京)
第10回及び第11回UNI-Apro金融部会委員会は、第3回UNI-Apro金融部会大会と併せて開催
(2009年10月25∼26日、バンコク)
第12回UNI-Apro金融部会委員会(2010年7月30∼31日、ジャカルタ)
UNI-Apro 金融部会委員会および役員 (2011 年 5 月現在)
中央・東アジア
正委員
日本 損保労連
關 裕
第 1 予備委員
日本 損保労連
久保田 大
第 2 予備委員
日本 損保労連
増田 香織 ※(2011 年
7 月の委員会で確認予定)
韓国 KFIU
キム・ムンホ
韓国 KFCLU
チョン・ヨンクン
東南アジア
シンガポール
SIEU
ルーク・ヒー
マレーシア
NUBE
J・ソロモン
フィリピン
NUBE
ホセ・P・ウマリ
インドネシア ASPEK
アントニー
南アジア
インド AIOBEU
S・スリニヴァサン
パキスタン PBIFCEF
タンヴェール・アフメッド
ネパール FIEUN
K・C・ガネシュ
バングラデシュ BKF
マンズルル・ハク
オセアニア
オーストラリア FSU
レオン・カーター
ニュージーランド
FINSEC
アンドリュー・キャシディ
職権上の UNI-Apro UNI-Apro
地域書記長
金融部会委員
クリストファー・ウン
UNI-Apro
議長:
日本
金融部会役員
副議長:
オーストラリア
副議長:
マレーシア
副議長:
インド
韓国 KFIU
日本 労済労連
チュン・ヒュンソク
滝沢 聡
韓国 KFCLU
韓国
パク・ユンソク
調整中
シンガポール
シンガポール
SBOA
DBS 労組
ウィー・スーン・グアン ジャスミン・チュア
マレーシア
ABOM
マレーシア NUCW
ウン・チューソン
調整中
マレーシア
マレーシア
サバ銀行労組 SBEU
サラワク銀行労組 SBEU
キャサリン・ジクナン
ロウ・キアット・ミン
タイ FBFT
インドネア ASPEK
調整中
サリ・マラ・アル
インド AIBOBEF ミ インド INBEF
リンド・ナドカルニ
パドマシュリ・パルルカ
パキスタン HBEFP ム パキスタン PBIFCEF
ハンマド・シャビール
イムラナ・アズマン
スリランカ FBSOL
ネパール FIEUN
R・D・ウィマラセナ
イシュオリ・カタヤト
バングラデシュ BOAB バングラデシュ BKF
ハレス・A・マジュンデル
アフラニ・スルタニ
フィジー FBFSU
オーストラリア FSU
プロモド・ラエ
ウェンディ・ストリート
フィジー
ニュージーランド
FBFSU
FINSEC
プロモド・ラエ
ベラ・パルドエ
UNI
UNI-Apro
世界金融部会担当局長
金融部会担当部長
オリバー・レティク
ジャスリ・プリヤラル
損保労連
中央執行委員長
關 裕
FSU
書記長 レオン・カーター
NUBE
書記長 J・ソロモン
AIOBEU
書記長 S・スリニヴァサン
41
UNI-Apro 金融部会
を代表する UNI 世
界金融部会運営委
員会委員
日本 損保労連
關 裕
ニュージーランド
FINSEC
アンドリュー・キャシディ
マレーシア
サバ銀行労組 SBEU
キャサリン・ジクナン
UNI-Apro金融部会担当部長
日本 損保労連
久保田 大
オーストラリア
FSU
レオン・カーター
ネパール
FIEUN
K・C・ガネシュ
韓国 KFIU
チュン・ヒュンソク
シンガポール
DBS 労組
ジャスミン・チュア
マレーシア
NUBE
J・ソロモン
ジャヤスリ・プリヤラル
UNI-Aproテレコム部会
第3回UNI-Aproテレコム部会大会は、広範囲なテレコムネットワーク網の構築に伴うITおよび
関連サービス分野の企業および労働者の増加に対応するため、UNIの決定に沿い、UNI-Apro
ICTS部会の創設と発展を検討する決議を採択した。アクションプランに沿って、IT部門におけ
る組合成長のターゲットが徐々に増加し、計画は強化された。
インドのUNITESは、国内主要都市での影響力と存在感を高め、様々なBPOコールセンター労
働者への働きかけを進めており、産業の発展における建設的かつ重要なパートナーとして承認さ
れるため企業にも働きかけている。
UNITESのような前向きな例に刺激され、同様の組織化の取り組みが開始され、現時点で様々
な成果を挙げている。マレーシアのUNIVENは、コールセンター、BPO業者、IT産業の専門職
および管理職労働者を団結させるため、組織化に焦点を当てた取り組みで素晴らしい結果を出し
た。ベルギーのLBC-NVKの支援により、この新しい組合組織は、今後2年間の組織拡大に焦点を
当てている。
金融部門の発展と同様、急速に発展している地域では、個人の携帯電話利用が急激に増加した。
それ故、組織化と組合成長のためUNI-Aproテレコム部会が民間テレコムおよび携帯電話会社を
ターゲットとして選定することが重要である。
スウェーデンのTeliaSonera社が株式の80%を所有するネパールのMero Mobile社のSpice
Telecom労組はネパールの携帯電話事業者における最初の組合である。彼らはSpice Telecom株式
会社の経営側と初の団体協約を締結した。UNI-DOCネパールおよびネパールUNI加盟協、そし
てネパールテレコム労組(NTCWU)は組織化の成功と団体協約の交渉の支援を行った。
22,000人以上の組合員を持つインドネシア最大のテレコム労組、SEKAR TELKOMがUNIに
加盟した。日本のNTT労組の支援を受け、インドネシアのテレコム部門における、多数の潜在的
組合員を組織化する目的で様々な活動が行われてきた。
加えて、第3回UNI-Aproテレコム部会大会は環境を保護、保全すると同時に、産業におけるデ
ィーセント・ワークの促進、保護のために、急速な技術進歩がもたらす課題に応対し、労働組合
が果たす重要な役割を認識する。
ASEAN地域のUNIテレコム部会加盟組合は、ASEANテレコム労組協議会(ATUC)のもと集ま
り、ASEANのプロセスに影響を与えるため、キャンペーンで緊密に連携する。
東アジアのテレコム加盟組合を集めた、東アジアテレコム労組フォーラムが様々な機会で開催
され、進展を見直し、直面する課題への対応を調整した。
UNI-Aproテレコム部会は現在、19カ国、41組合、365,000人以上が加盟登録している。
この間の、UNI-Aproテレコム部会の機関会議は次の通り。
•
•
•
•
•
•
第8回UNI-Aproテレコム部会委員会(2007年2月23∼24日、ウェリントン)
第9回UNI-Aproテレコム部会委員会(2007年4月21日、アテネ)
第10回UNI-Aproテレコム部会委員会(2008年10月25∼26日、マニラ)
第11回UNI-Aproテレコム部会委員会(2009年12月11日、ハノイ)
第3回UNI-Aproテレコム部会大会(2009年12月11∼12日、ハノイ)
第12回UNI-Aproテレコム部会委員会(2010年9月2∼3日、香港)
42
UNI-Apro テレコム部会委員会および役員
中央・東アジア
東南アジア
(2011 年 5 月現在)
正委員
予備委員
日本 情報労連
加藤 友康
韓国 KTTU
キム・ジュ・ヒュン
韓国 KICTU
チョイ・ドンファン
台湾 CTWU
チュ・チュアンピン
マレーシア
UNITESS
情報労連
渡辺 拓也
韓国 KTTU
調整中
韓国 KICTU
調整中
台湾 CTWU
ホン・ショウロン
マレーシア NUTE
調整中
モハメド・シャフィー PB.ママル
南アジア
オセアニア
女性委員
UNI-Apro テレコム部会
委員会役員
UN-Apro テレコム部会を
代表する世界テレコム部
会委員会委員
シンガポール UTES
ロガラジャ s/o J.K.サバパシ
ベトナム VNUPTW
ホアン・フイ・ロワット
インドネシア ASPEK
ラチャマド・スギアルト
パキスタン PTEU
ハッサン・モハマド・ラナ
ネパール NTCWU
シャンカール・ラミッチャン
オーストラリア CEPU
調整中(UNI-FLC 選出)
マレーシア UNITESS
ファリダ・アブドゥラ
議長:
日本
情報労連
副議長: シンガポール
UTES
副議長: ネパール
NTCWU
副議長: 調整中(オーストラリア
日本 情報労連
加藤 友康
マレーシア UNITESS
モハメド・シャフィー・BP・ママル
インド BSNL-FNTO
トーマス・ジョン
オーストラリ CEPU
UNI 世界テレコム部会副議長:
UNI-Aproテレコム部会担当部長
シンガポール UTES
調整中
ベトナム VNUPTW
調整中
インドネシア セカテレコム
調整中
調整中(UNI-ILC 選出)
調整中(UNI-SALC 選出)
中央執行委員長 加藤 友康
書記長 ロガラジャ s/o J.K.サバパシ
会長
シャンカール・ラミッチャン
CEPU)
日本 情報労連
渡辺 拓也
マレーシア UTES サラワク
モハメド・イブラヒム
調整中(UNI-ILC 選出)
日本
オーストラリア CEPU
情報労連
加藤
友康
クン・ワルダナ・アビョト
UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会
この間において、UNIと万国郵便連合(UPU)とのグローバル枠組み協定(GFA)締結の成
功を反映し、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会は、アジア太平洋郵便連合(APPU)とのGFA
43
を締結するという決定的な達成を成し遂げた。地域で様々な共同セミナーが開催され、UNI-Apro
郵便・ロジスティクス部会とAPPUの間で、理解と信頼が築かれ、協定締結および組合と郵政の
綿密な連携に向けた土台が構築された。
UNIの中で、公共郵便サービスは最も組織化された部門であるが、民間宅配会社における多数
の潜在的組合員を組織化する取り組みが進行中である。最優先課題はDHL、UPS、FedEx、TNT
の大手4社の労働者組織化であり、DHLへのグローバル組織化キャンペーンの調整が行われた。
次に、地域の民間宅配会社の労働者組織化に取り組む。
その他、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会が取り組む優先事項としては、郵便におけるユ
ニバーサルサービスの防衛と郵便金融事業の発展が含まれる。
ASEAN地域のUNI郵便・ロジスティクス部会の加盟組合は、ASEAN郵便労組フォーラム
(APUF)のもと集まり、ASEANのプロセスに影響を与えるため、キャンペーンで緊密に連携する。
東アジアの郵便加盟組合を集めた、東アジア郵便労組フォーラムが様々な機会で開催され、進展
を見直し、直面する課題への対応を調整した。
UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会は現在、12カ国、19組合、379,000人以上が加盟登録して
おり、2009年の部会大会で、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会委員会に2名の女性副議長を選
出している。
この間の、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会の機関会議は次の通り。
•
•
•
•
•
第9回UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会員会(2007年12月5∼6日、ハノイ)
第10回UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会員会(2008年10月27∼28日、マニラ)
第11回UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会員会(2009年12月12日、ハノイ)
第3回UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会大会(2009年12月12∼13日、ハノイ)
第12回UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会員会(2010年12月16∼17日、バンコク)
UNI-Apro 郵便・ロジスティクス部会委員会及び役員(2011年5月現在)
中央・東アジア
東南アジア
南アジア
オセアニア
正委員
日本 JP 労組
竹内 法心
韓国 KPWU
リー・ハング
台湾 CPWU
チャン・ツーチェン
第1予備委員
日本 JP 労組
調整中
韓国 KPWU
調整中
台湾 CPWU
調整中
第 2 予備委員
日本 JP 労組
調整中
モンゴル MPWU
オトゴンビレク
香港 UPOE
イプ・カンフー
調整中
空席
空席
マレーシア UPUS
サフィアン・ウノス
ベトナム VNUPTW
ホアン・チ・チュアン
調整中
SEWU-THP
フィリピン PEUP
ダド・ガズマン
空席
シンガポール UTES
ロガラジャ s/o J.K.サバパシ
インドネシア ASPEK
アントニー
インド FNPO
テガラジャン
スリランカ UPTO
ウィーラセカラ
オーストラリア CEPU
キャメロン・ティエル
ニュージーランド
インドネシア SPPI
コスワラ
インドネシア ASPEK
サリ・マラ・アル
インド NFPE
クリシュナン
パキスタン NOPE
サイド・ハッサン
オーストラリア CEPU
調整中
フィジー EPTEA
空席
空席
インドネシア ASPEK
調整中
ネパール NPAWU
パンディ
バングラデシュ
BPOEU アラム
空席
空席
44
女性委員
EPMU
アンナ・ケニー
調整中
調整中
JP 労組
中央執行委員長
UNI-Apro 郵便・ロ 議長: 日本
副議長: 韓国
KPWU
会長
ジスティクス部会
副議長: ベトナム
VNUPTW 副会長
委員会役員
副議長: インド
FNPO
書記長
副議長: ニュージーランド EPMU
UNI-Apro 郵便・ロ 日本
JP 労組
ジスティクス部会
韓国
KPWU
を代表する UNI 世 ベトナム
VNUPTW
界郵便・ロジスティ インド
FNPO
クス部会委員会役
ニュージーランド
EPMU
員
UNI 世界郵便・ロジスティクス部会委員会副議長:
日本
JP 労組
UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会担当部長
伊藤
竹内 法心
リー・ハング
ホアン・チ・チュアン
テガラジャン
アンナ・ケニー
竹内 法心
リー・ハング
ホアン・チ・チュアン
テガラジャン
アンナ・ケニー
竹内
法心
栄一
UNI-Apro 印刷・パッケージング部会
UNI 印刷・パッケージング部会は、 当期において以下の活動を行った。
グローバルな側面の重点事項は、多国籍企業内、特に Kimberly Clark、Amcor、Gieseke &
Devrient(G&D)、Tetra Pak 内での組織化である。LO TCO、GS によって支援されたプロジェ
クトを通して、UNI 印刷・パッケージング部会は、特に Tetra Pak、Amcor、Kimberly Clark
と G&D に焦点を当て、「多国籍企業の組織化」に関するセミナーを行った。
このセミナーに加え、マレーシア、タイ、インドネシア、インド国内での活動が行われた。イ
ンドの活動家のためのオルグ訓練セミナーが、UNI SCORE の支援を受けて実施された。重要な
ことは、主要なパッケージング工場で組織化活動を発展させることであった。
また、マレーシアの G&D の工場は組織化され、労働組合は承認を受けるため労働省に申請を
行った。印刷・パッケージング部会加盟組織は、労働者の組織化と組合員の権利と条件を保護す
るために闘い続けている。
今後集中的な組織化活動を可能にするグローバルな対話協定が Kimberly Clark と締結された。
タイの加盟組織 PPFT がこの協定締結のためのキャンペーンに関わった。
2010 年、ミシェル・ミュラー議長とスティーブ・ウォルシュ担当局長が、日本の加盟組織か
ら 35 人以上が参加した印刷産業に関する UNI-LCJ セミナーに参加した。伊藤栄一 UNI-LCJ 事
務局長と同行したウォルシュ担当局長は、加盟組織と今後加盟の可能性がある組織を訪問した。
新聞労連もまた、ヨーロッパでのセキュリティ印刷会議に出席した。宇田川全印刷書記長は、
公的セクターの手に紙幣印刷施設を維持することへの労働組合の役割について会議で発言した。
UNI 印刷・パーケージング部会は、IFJ、UNI MEI との共同セミナーを行った。この地域の
労働組合の協調は初めてのことであった。このセミナーでは、増加している非正規雇用、派遣、
アウトソース労働者の活用、また報道の自由の喪失を含め労働者が直面している問題について議
論した。
Apro 地域の UNI 印刷・パッケージング部会委員会は、オーストラリア AMWU のロレイン・
カッシン氏が議長、マレーシア NUNW のチャンドラセカラン氏、日本全印刷の竹井京二氏、イ
ンド AINEF の L.Talwar が副議長を務めている。
スティーブ・ウォルシュ UNI 印刷・パッケージング部会局長が UNI-Apro 地域についても担
当している。
45
UNI メディア部会(アジア太平洋地域)
2010 年 11 月 15 日∼16 日に東京で行われた UNI メディア部会委員会は、アジア太平洋地域
では 2 回目、日本では初めての会議であった。同会議は、部会委員や他の参加者達に日本とアジ
ア太平洋地域のメディアとエンターテイメントの状況について情報交換の機会を与えた。
アジア太平洋地域放送連合(ABU)会長を務める今井 NHK 副会長は、同委員会で講演を行った。
これは、2010 年 10 月の、ABU 会長と UNI メディア部会、UNI-Apro 間の初めての会議のフォ
ローアップである。
UNI メディア部会は、特にアジア太平洋地域で多くの重要な重点項目の戦略目標に実施におい
て大きな進展を見せた。3 月に、UNI MEI は、マレーシアのトップメディア企業、メディアプリ
マ、インドネシアの新興企業アンタラと、メディア・エンターテイメント・芸術部門では初めて
のグローバル枠組み協定に署名した。この 2 つの協定は、長期にわたる組織化、対話、UNI と加
盟組織の共同の努力の結果である。これらの協定は、現在、UNI の現地、地域、部会スタッフ、
加盟組織によりフォローアップされており、我々は、マレーシアとインドネシアで 10 月に一連
の会議を行った。
この間に開催された他の重要な会議は、2010 年 9 月 28 日∼30 日バリで開催されたアジア太
平洋地域におけるメディアの組織化に関する UNI-Apro/IFJ セミナーである。これは、アジア
太平洋地域で UNI と IFJ が初めて共同開催したセミナーである。このセミナーでは、IFJ、UNI
印刷・パッケージング部会、UNI メディア部会の加盟組織間で組織化について情報交換と研修が
行われた。また、本セミナーは地域における IFJ と UNI 間のより緊密な協力の土台を築いた。
参加者は、IFJ アジア太平洋地域運営委員会と UNI との連携と枠組みのフォーマル化に関する議
論を続けるため両グローバルユニオンのアジア太平洋地域事務所間の正式な協力を進めること
により、より強い組合を作るための共同行動を求める共同宣言を採択した。
アジア太平洋地域の UNI メディア部会活動拡大の準備段階として、ヨハネス・ストゥディン
ガーUNI メディア部会担当局長は、地域での活動の更なる発展を優先的に計画するため、インド
ネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、日本、韓国、インド、香港でワークショップ
を開催した。結果として、アジア太平洋地域において UNI メディア部会は成長し、加盟組織を
増やした。
また、UNI-Apro と協力して UNI メディア部会は、香港、インドネシア、マレーシア、フィリ
ピン、インドで、組織化と能力開発に関する一連のキャンペーンやプロジェクトを開始した。こ
れらの活動の一部は、UNI-Apro 活動基金、UNI 組織化基金の支援を受けており、その他は
TUSSOs の支援を受けている。
オーストラリア The Alliance のクリストファー・ウォーレン氏が UNI メディア部会代表とし
て UNI-Apro 執行委員会に参加している。UNI メディア部会委員会への UNI-Apro 地域代表は、
モハメド・カイルザマン(マレーシア KSKSTMB)、アニル・クマール(インド ARTEE)、マー
ラー・サバド(フィリピン NABU)である。
マグダレーン・コーンが同部会活動とキャンペーンの企画・実施を担当している。
UNI-Apro派遣部会
UNIが管轄するサービス産業では非正規労働者の割合が高くなり、正規労働者の職場にも進出
している。派遣労働者、契約労働者、パート労働者が従事するインフォーマルな労働市場の国内
および国境を越えた拡大は、益々労働組合の交渉力を低下させている。国内のみで活動する組合
でこのような状況を止めることができる組合はひとつもない。
派遣会社はUNI-Apro地域の多くのサービス産業で事実上の使用者である。グローバルな労働
組合運動の結束した強さと国際連帯のみが労働者の権利を守り、ニューエコノミーで働く人々に
ディーセント・ワークを保障し、アジア太平洋地域のよりよい未来を築くために底辺への競争を
止めることができる。UNI-Aproは、労働組合運動の未来がインフォーマル労働市場の多くの未
組織労働者にあると確信している。
我々は、益々競争が激化する中でより柔軟性の高い雇用が求められる世紀に直面しており、派
46
遣会社の需要は高まり続けている。UNI-Aproは、この挑戦を認識し、状況を改善するために移
民労働者と派遣労働者の関係に関する状況についても注意深くモニターを続ける。UNI-Aproで
は、派遣労働者に関する特別な取り組みを行っている。
UNI-Aproは、CIETTとの覚書におけるUNIの立場を改めて表明し、あらゆるレベルで
UNI/CIETT 覚書の実施を確保するため、CIETTメンバーや地域組織との対話を開始、また
は現在行われている対話を続けていく。
UNI-Aproは、地域における各国の派遣会社協会、特にインドネシアのABADI、フィリピン
の PALSONとの対話を開始し、民間派遣会社が派遣労働者にディーセントな労働条件を保
障することを確保する取り組みを進めるよう求めている。
UNI-Apro加盟組織は、インドネシア、日本、オーストラリア、ニュージーランドで非典型労
働者の組織化を積極的に絶えず行っている。
UNI-Aproは、UNI派遣部会およびUNI SCOREと協力し、労働組合運動、部会・地域を越え
た大きな課題を分析している。これは、移民パターンや雇用関係の大きな変化を含む。全ての労
働者のディーセントな労働条件と平等な扱いを実現するためにUNI管轄部門で営業する企業で
派遣労働者の組織化や団体交渉の対象化を推進する。主な民間の派遣会社におけるグローバル労
組同盟の構築を支援する。
UNI-Apro事務局は、UNI-Apro派遣部会の設置についてフィージビリティ評価を行い、派遣労
働者の組合結集の取り組みを支援し、焦点を当てていく。
マグダレーン・コーンが当部会のキャンペーンおよび活動の企画・実施を担当している。
UNIゲーム部会
PwCコンサルティングによる最新の報告は、アジア太平洋地域のカジノ市場が2009年の218億
米ドルから2014年には23.6パーセント増の629億米ドルとなるだろうと予測している。UNI-Apro
地域は、世界最大のカジノ市場であり続ける米国との差を急速に縮めている。この西から東への
シフトは、世界のギャンブル企業トップ10社のうち5社が、アジア、特にシンガポール、マレー
シア、フィリピン、マカオ、韓国を拠点としている事実からも分かる。ネパール、ラオス、カン
ボジアでもカジノが営業している。しかし、多くの国で殆どのカジノ労働者は組織化されていな
い。UNI-Aproに加盟しているのは、マレーシアとネパールのカジノ労働者を代表する2つの労組
だけである。ゲーム産業には、組合への組織化、UNIゲーム部会へ結集されるべき労働者が依然
として多く存在するのである。
UNI、UNI-Aproゲーム部会の長期的目標は、組織化活動のための支援ネットワークを構築し、
ゲーム産業多国籍企業とのグローバル協定を締結することである。これらのキャンペーンには重
要な要素として、キャンペーン計画策定のための企業調査、法律面・通信面での戦略、国内及び
国境を越えたUNI加盟組織を巻きこむボトムアップ、トップダウン両方の活動などを含むべきで
ある。
UNI-Aproは、UNIゲーム部会と緊密に連携し、特にマカオ、フィリピン、シンガポールで巨
大な潜在的組合員を組織化する地域レベルのキャンペーンを企画、実施する。
マレーシアRWEUのロバート・V・ヘンリーが、UNIゲーム部会アジア太平洋地域担当コーデ
ィネーターを務めている。
UNIビル管理サービス部会
ビル管理サービス部門の労働者の多くは、清掃やセキュリティなどのメンテナンスを行う労働
者である。彼らの特徴は、低い雇用条件である。この部門の労働者はフォーマルセクター、イン
フォーマルセクターの両方にみられ、組合組織化が進んでいない潜在的組合員が多い。
UNIビル管理サービス部会の目標は、強い組合づくりと産業全体の最低基準を確保する政治的
アジェンダへの支援により、労働者の労働条件を改善することである。UNIビル管理サービス部
会の計画は、以下の3つの要素を含む。1)実践的アドバイスと財政的支援により産業全体での
47
組織化キャンペーンにおいて足元から組合を支援する 2)組織化を可能にする項目を含むグロ
ーバル枠組み協定を多国籍企業と交渉する 3)「責任ある請負業者」だけを使って清掃・セキ
ュリティ業務をアウトソーシングする企業と共にキャンペーンを行う
この産業における慣行の現実は、新しい組合サービスを作るなどの伝統的な組織化手法では、
低賃金で非常に転職率が高いこの産業では成功しないことを決定づけている。組織化の成功のた
めには、労働者へのアウトリーチとともに使用者との合意が欠かせない。
UNI-Aproは、UNIビル管理サービス部会と協力し、地域(特にインド、香港)で営業するグ
ローバルなビル管理サービス企業数社の従業員を対象とした組織化キャンペーンを企画・実施し
ている。
ラジェンドラ・アルチャラUNIDOCネパール所長が当部会のキャンペーンや活動の企画・実施
を担当している。
48
第 7 章:専門委員会の統合と強化
UNI-Apro女性委員会
「人生の決断(DFL)」プロジェクトは、2009 年に、ITUC、ウェイジインジケーター財団、
アムステルダム大学によって始められ、オランダ政府の資金援助を受けた新しい 2 年のプロジェ
クトである。目的は、サービス産業で働く若い女性労働者と求職者の間に、労働者の権利、特に
女性が人生は自分で決定する権利があることを意識させ、労働市場における正規雇用と社会にお
ける平等な機会を促進することである。インドでは加盟組合 UNITES が、インドネシアでは
ASPEK が共同パートナーとして協力している。
第 2 回 UNI-Apro 女性大会(2007 年 8 月 25∼26 日、クアラルンプール)において採択された
UNI-Apro 女性行動計画が、活動の基盤であった。以下はその要約である。
•
•
•
•
•
•
•
•
ジェンダーの平等:貧困緩和への鍵
国際労働基準の遵守を構築
ディーセント・ワークの推進
ワーク/ライフ・バランスの推進
職場でのジェンダー格差と闘う
ジェンダー問題を UNI-Apro 活動で主流化する
ジェンダー平等のための社会対話と社会パートナー
より多くの女性を組織化する
2010 年 11 月、第 3 回 UNI 世界大会は、女性代表に関して 2014 年までに 40%達成という明
確な数値目標を掲げた重要な決議を採択した。従って、UNI-Apro は同地域の加盟組合に、この
決定を実行に移すための準備をするよう支援してきた。
UNI-Apro の様々な活動において、ジェンダー平等と全ての人にとってのディーセントワーク
を促進する際に、例えば女性のエンパワメント・プログラムや UNI-Apro4 部会大会における発
言など、女性組合員や代議員が重要な役割を果たしていることには、非常に勇気付けられる。
この間の、UNI-Apro 女性委員会の機関会議は次の通り。
•
•
•
•
•
第2回UNI-Apro女性大会(2007年8月25∼26日、クアラルンプール)
第9回UNI-Apro女性委員会(2007年8月25日、クアラルンプール)
第10回UNI-Apro女性委員会(2008年10月28∼29日、マニラ)
第11回UNI-Apro女性委員会(2009年12月7日、クアラルンプール)
第12回UNI-Apro女性委員会(2010年11月5日、長崎)
UNI-Apro 女性委員会委員および役員 (2011 年 5 月)
正委員
第 1 予備委員
中央・東アジア
日本
UI ゼンセ同盟 日本 UI ゼンセン同盟
滝澤 八千代
和田 水穂
日本
日本
サービス・流通連合
サービス・流通連合
石黒 生子
調整中
日本 情報労連
日本 情報労連
宇田 珠美
調整中
日本 JP 労組
日本 JP 労組
祖川 美幸
調整中
台湾(中国)CTWU
台湾(中国)CPWU
ルー・シューチン
ロー・フイジュ
第 2 予備委員
空席
空席
空席
空席
台湾(中国)CTWU
ティン・イーヒュアン
49
東南アジア
南アジア
オセアニア
UNI 世界女性委員
会役員
韓国
KHMU
香港(中国)HKCCRGU 空席
リー・サクヒー
チュン・ライハ
シンガポール
シンガポール
シンガポール
SATSWU
DBSSU
SBEU
ジャッキー・タン
オン・スーギョク
スージー・フー
インドネシア
タイ
空席
ASPEK
SEWU-CAT
シティ・ザロア
ニライモン・モントレカノン
マレーシア
マレーシア
マレーシア
UPUS
AME
KSKSTMB
ハヌン・アブドゥル・ガニ
サムンデスワリ
ジュナイダ・Bt.ハルン
フィリピン
ベトナム
フィリピン
VNUPTW
NABU
NUBE
ホアン・チ・チュアン マーラー・H・サバド
ベルナデット・M・コラド
ネパール
パキスタン
調整中
UNICOME
(スリランカ、
ディーパ・バラドワジ ナスリン・ヤコブ
UNI-SLAC 選出)
インド
バングラデシュ
空席
NUBSNLW-FNTO
BKF
マドフ・トリヴェディ タスリマ・アクテル・リナ
ニュージーランド
フィジー
ニュージーランド
NDU
FB&FSEU
NDU
マクシン・ゲイ
アン・カーン
ライラ・ハーレ
オーストラリア SDA
オーストラリア SDA
空席
テレーズ・ブライアン バーバラ・ネバート
ト
オーストラリ CEPU
オーストラリア CEPU 空席
調整中
調整中
議長:
ニュージーランド NDU マクシン・ゲイ
副議長:
空席
UNI 女性委員会副議長: オーストラリア
SDA テレーズ・ブライアント
日本 情報労連
日本 JP 労組
日本
宇田珠美
祖川美幸
サービス・流通連合
石黒生子
台湾 CTWU
台湾 CPWU
台湾 CTWU
ルー・シューチン
ロー・フイジュ
ティン・イーヒュアン
ニュージーランド
シンガポール
調整中
NDU
SATSWU
(マレーシア
マクシン・ゲイ
ジャッキー・タン
UNI-MLC 選出)
空席
オーストラリア CEPU オーストラリ CEPU
調整中
調整中
オーストラリア
オーストラリア
空席
SDA
SDA
テレーズ・ブライアント
バーバラ・ネバート
UNI-Apro 女性活動担当部長
小川
陽子
50
UNI-Apro青年委員会 第 3 回 UNI-Apro 青年大会は、とても象徴的な会場である長崎原爆資料館で行われた。荘厳で
歴史的な街・長崎は、(第 3 回 UNI 世界大会も合わせて開催され、)UNI-Apro と UNI-Apro
青年委員会が今年の青年大会テーマ「平和のためにブレイキングスルー:パートナーシップを通
じた組合作り」を議論するのに最もふさわしい場所であった。
UNI-Apro 青年委員会は、各組合による取り組みと青年メンバーの運動によって達成された過
去 4 年間の成果を強調した。
つまり、青年組合員は、組合員数の増加と組合の成長のための組織化という目標達成に重要な
役割を果たした。青年が主体となって行ったいくつかの組織化キャンペーンの成功例について、
UNICOME/UNI NLC、インドUNITES、NDU、SDA、NTT労組、UIゼンセン同盟、JP労組か
ら報告があった。青年オルグとコーディネーターが企画・運営しているこれらの革新的な組織化
と組合勧誘キャンペーンは、各国の多くの産業で組合員数を増やすという具体的な結果に結びつ
いた。
第 3 回 UNI-Apro 青年大会開催に際し、地域における青年活動や組織化の好事例について紹介
する小冊子が製作された。
新しいメディアツールとソーシャル・ネットワーキング・サイトは、UNI-Apro 青年ネットワ
ークの拡大と維持に役立った。ニュースや活動の進捗状況が、青年ネットワーク間で即時に共有
された。
組合代表性および教育・訓練について青年労働者の機会均等意識の向上を目指した「100%青
年」キャンペーンは、成功を収めており、地域でも世界でも、特にあらゆる UNI の活動で青年
参加者が着ている人目を引く T シャツによって認識されている。
UNI-PLC 青年委員会と Aspek 青年委員会によるフィリピンのパヤタス、インドネシアのヤヤ
サン・テレダン、タナ・アバンでの「児童労働」キャンペーンは、世界中の労働組合から多大な
支援を得た。
フィリピンでは、パヤタスの給食プログラムが 3 年目を迎えており、リサイクル活動を通じた
失業中の親達のための収入向上などの更なるプロジェクトを模索し展開する計画で、益々活動に
勢いが増している。
日本では、2010 年長崎 UNI 世界大会を開催するにあたり、加盟組合の青年メンバーを集めて
外国人講師と共に英語と国際労働運動を学ぶセミナーを開催した。
次世代の労働働組合指導者の育成、労働組合運動への青年労働者の加入促進という目標達成の
ため、地域の青年活動が毎年実施されている。年 1 回の UNI-Apro/UNI-LCJ 郵便テレコム部会
青年ワークショップと UNI-Apro/NTT 労組青年セミナーは、今日それぞれの組合で指導的な地
位についている多くの優れた有望な若い指導者の育成に貢献してきた。
更に、UNI-Apro 青年委員会は、各産業の非正規雇用形態の現状を調査し、こうした労働市場
の変化が若いサービス産業労働者のディーセント・ワークに与える影響について把握するという
より大きな責任を担う準備をしてきた。
この間の、UNI-Apro青年委員会の機関会議は次の通り。
•
•
•
第5回UNI-Apro青年委員会(2007年8月27日、クアラルンプール)
第6回UNI-Apro青年委員会(2009年10月27日、クアラルンプール)
第3回UNI-Apro青年大会(2010年11月8日、長崎)
UNI-Apro 青年委員会委員および役員
中央・東アジア
東南アジア
日本
日本
日本
日本
フィリピン
(2011 年 5 月現在)
JP 労組
情報労連
UI ゼンセン
日放労
NUBE
五十嵐 俊之
白濱 恵美子
柴田 美千子
小磯 亮
ミッシェル・ベリーノ
51
南アジア
オセアニア
UNI-Apro青年活動担当部長
シンガポール DBSSU
インドネシア ASPEK
マレーシア
UPUS
インド
UNITES
ネパール
CWU
調整中(UNI-PALC 選出)
調整中(UNI-SALC 選出)
オーストラリア
SDA
ニュージーランド
NDU
調整中(UNI-FLC 選出)
議長:
フィリピン
NUBE
副議長: 日本
JP 労組
副議長: インド
UNITES
副議長: オーストラリア SDA
ケンディ・ハン
アセップ・ラッチャマン
アカシャ・ジャマル
プリエシュラフール・ティワリ
アミール・ハドラ
ピーター・マリナスカス
イングリッド・ベッカーズ
ミッシェル・ベリーノ
五十嵐 俊之
プリエシュラフール・ティワリ
ピーター・マリナスカス
マグダレーン・コーン
UNI-Apro専門職・監督職(P&MS)委員会
専門職・監督職(P&MS)労働者は、それぞれの職場の非現実的な目標を達成するため、上司
と部下の中間で挟まれ、自身のディーセント・ワークとワークライフバランスを犠牲にしている。
P&MSの組織化はすべての労働組合にとって優先事項でなければならない。UNI-Apro P&MS
委員会は、「組合にはP&MSが必要であり、P&MSには組合が必要である」という事実に焦点を
当てるため、多数の活動およびキャンペーンを開始した。どのようにP&Mに働きかけ、組合へオ
ルグするかといったガイドラインが作られ、それにはUNIによるP&MSの倫理的、社会的、職業
的責任の規範も含まれる。
UNI-Apro諸活動の集大成として、2008年3月8日、第2回UNI-AproP&MS大会が、第3回UNI
世界P&MS大会と平行して、オーストラリアのメルボルンで開催された。
アジア・太平洋地域からは、7カ国、23組合から45人(代議員23人、オブザーバー22人、ゲス
ト10人)が参加した。女性の参加は、45人中13名であった。
大会では、ルネ・オフレネオ教授のプレゼン「中間管理職のためのディーセント・ワーク」に
続いて、活発な討論が行われた。オフレネオ教授は、定義の誤りを指摘し、「P&MSは企業方針
や事業計画を作成するトップ経営者の一部ではない、そのかわりに彼らはトップ経営者への過渡
期にある」と述べた。従って彼らは組合に加入する権利がある。ひいては、雇用確保、公正な賃
金と待遇に関しては、一般労働者と同様の懸念を持っている。オフレネオ教授は、上記のすべて
のP&MSのカテゴリーは意見を反映させる権利が与えられるべきであると強調した。そのため、
彼らがディーセント・ワークとワークライフバランスを享受するためには、組合に組織し、職場
での権利を保護する必要がある。
また、P&MS組織化のテーマの下でパネルディスカッションが行われ、発言者から、「プロフ
ェッショナリズムの役割」、「生涯学習の役割」「ダイバーシティーマネジメントの役割」、「ワー
クライフバランスの役割」と題するプレゼンが行われた。
UNI-AproP&MS委員会議長としてシンガポールSMMWUのジョン・デペイバ氏が再選され、
副議長にはNTT労組の渡辺保氏が選出された。
第2回UNI-AproP&MS大会は、以下の優先課題(2008∼2012年)を採択した。
前進するために、新しい経済において、ウェブを活用した新しい組織化戦略を策定・促進し、
P&MSに連絡が取れるようコミュニケーションチャンネルを確立する
変化に遅れを取らないようP&MSのための学習ネットワークを作り、新しいスキルや能力を
身につける支援を行う
52
ニューエコノミーが専門職・監督職に及ぼすインパクトを調査する(例えば、新しい福利制
度、利益共有、ストックオプションなど)
統合されつつある地域経済におけるP&MSの報酬のベンチマーク。P&MS雇用の最低基準。
企業が最低遵守すべき採用、配置、労働基準。P&MS自身がそうした雇用基準に同意する
ジェンダー平等を促進し、女性が専門職・監督職に就くことを支援する
ワークライフバランスの新しいコンセプトを発展させ促進する
P&MSの専門的、社会的、倫理的責任規範を促進する
必要に応じ、P&MSの労働組合権を擁護し、ディーセント・ワークを確保できるよう支援す
る
現存のUNI-Apro加盟組織連絡協議会に、各国のP&MSの状況を調査させ、未組織の専門職と
接触し、彼らの権益を促進するため、国毎にP&MS協議会を結成する
ASEANサービス枠組み協定の進展をモニターし、外国人専門職・監督職のサービスを送り出
す国と受け入れる国の間の相互認証協定について、加盟組織に最新情報を周知する
UNI-AproP&MS委員会は、優先課題に沿って多数の活動を行い、日本の加盟組合であるNTT
労組と協力し、東京でUNI-AproP&MSフォーラムを開催した。
「P&MSの倫理的、社会的、職業的責任――持続可能なビジネスと雇用のために」をテーマに
議論を行い、「P&MSを労働組合に勧誘、組織化、サービス提供、維持するための新しい革新的
アプローチ」について経験を共有した。
UNI-Apro 専門職・監督職(P&MS)委員会および役員
中央・東アジア
日本
情報労連
日本
サービス・流通連合
東南アジア
シンガポール SMMWU
マレーシア
ABOM
南アジア
インド
UNITES
オセアニア
調整中(オーストラリア APESMA 選出)
議長: ジョン・デペイバ
副議長: 福地 英明
UNI-Apro P&MS 活動担当部長
福地 英明
俣野 勝敏
ジョン・デペイバ
ウン・チューソン
カルティック・シェカール
ジャヤスリ・プリヤラル
移民労働者
雇用のための移住は、今後数十年で急速に増加すると予測されている。人々が住んでいる場所
で十分な仕事を得られない状況は、グローバル経済の最も大きな失敗のひとつである。競争とい
う圧力のために企業のフレキシビリティが益々求められる中、雇用のための移住は益々多くなる
だろう。多くの移民の労働条件は、搾取的であり、益々悪くなるだろう。法的地位にかかわらず、
移民は雇用条件の差別から保護されなければならない。送出国でのディーセントな雇用を促進す
る共同の施策を含む送出国と受入国の間での2国間および多国間対話が一層求められている。
UNI-Aproは、移民問題に社会的・人道的側面を求めるNGOとのパートナーシップを築いてい
る。ASEANにおいて、UNI-Aproは、移民労働者に関するASEANタスクフォースと協力し、中
核的労働基準および他の人権の尊重に基づく国境を越えた労働者の運動に関する各国の法と慣
行のためのASEAN多国籍フレームワークを構築することを目指している。
国際レベルでは、UNI-Aproは、他のGUFと協力し、グローバルな移民政策を求めるキャンペ
ーンを行っている。これは、受入国・送出国双方への移民労働者の良い意味での貢献を認めるも
ので、政策と合意の中心に移民の福祉と権利を据えるものである。
グローバルユニオンが移民労働者のためにできることは少なくとも以下の4つある。
53
移民労働者が組合に組合員として加入できるよう組織化センターとして彼らを支え、彼ら
が団体交渉などの組合行動に参加するだけでなく、中心的になって活動し、他の移民労働
者を助けることができるようにする。
移民問題や最新の動向について重要なデータや分析にアクセス可能な資料センターとし
て機能する。
特に法的ニーズやカウンセリングのニーズに応える支援センターとして機能する。
アドボカシーセンターとして機能し、移民労働者が国および ASEAN レベルで公的な政
策形成において効果的に代表されるようにする。(移民労働者を含む全ての労働者のため
の公正で適正な雇用の保護、賃金の支払い、ディーセントな労働および生活条件を促進す
る。)
マレーシアのUNI-MLC 移民労働者ヘルプデスクと移民労働者組合(UNIMIG)は、は、Aspek
インドネシアによって結成され、その具体的なイニシアチブは、 移民労働者の組織化を可能に
する組織化センターとして機能し、それにより、彼らが労働組合活動に参加できるようにするこ
と、また、移民労働者の支援センターとして特に雇用面、法律面、相談面でのニーズに応え、ア
ドボカシーセンターとして機能し、移民労働者を国、地域、国際レベルで効果的に代表すること
である。特に、AspekインドネシアとUNI-MLCは、覚書に署名し、労働搾取や労使紛争の際、
移民労働者に組合としての支援を提供し、彼らを代表するために緊密に連携していくことを約束
した。
54
第 8 章:将来を展望して
大きな闘いに向けてギアを上げる:
社会的側面を持ったアジア太平洋地域の形成
闘いの準備ができた労働組合運動の構築
世界金融危機は、経済の安定という根本的な問題と大胆な改革の必要性を投げかけている。し
かしながら、アジア太平洋地域、世界の多くの政府は、この機会を逃そうとしている。今こそ、
労働組合が不公正、不平等、持続不可能な構造に対してNoというときである。
我々UNI-Aproは言う:「発展の中心に働く人々を!」
しかしながら、これを実現するためには、労働組合運動が自らを鍛え、反改革勢力と闘う準備
ができていなければならない。すでに大きな闘争がこの危機の発生源である北米や欧州で起きて
いる。欧州では、政府が、2世紀にわたる組織化、抵抗、交渉、政治的行動の苦難の末に労働組
合運動が作り上げた社会保障制度を取り壊そうとしている。財政上の問題を理由に、ユニバーサ
ルな社会的保護、最低賃金など労働者が苦労して手に入れた権利を奪おうとしている政府もある。
これは、労働基準から開放された自由市場は早く成長する、という古典的な新自由主義の思考で
ある。これは1980年代∼1990年代にかけてIMFや世界銀行による構造調整計画を押し付けられ
たアジア、アフリカ、ラテンアメリカの体験からも明らかなように間違った理論である。
米国では、この問題は更に明確に出てきている。ウィスコンシン州や他の共和党が支配する州
でのケースに見られるように、復活した共和主義者の新保守層は、労働者(特に公共部門労働者)
の団体交渉権を剥奪しようとしている。これは、労働組合運動に対する純然たる攻撃である。
アジア太平洋地域では、世界の多くの地域と同様に矛盾した傾向がある。2008年以来、中国が
体制に反抗的な労働運動に対応し、社会格差を縮小するために保護的労働法を施行し、最低賃金
を上方修正した。しかし、隣国韓国では、労働者に与えられた法的保護の低下がみられ、特にイ
ンフォーマル労働者の数が激増した。オーストラリアでは、労働党により、共和党政権の作った
反CBA法を無効にする新しい法律が施行され、団体交渉権への脅威が未然に防がれた。にもかか
わらず、その隣国ニュージーランドでは、ワーナーブラザーズの組合不要主義の要求を政府が即
座に了承した態度にも表れているように、外国投資促進の名の下に労働権を犠牲にしようとして
いる。
これら全ては、労働組合運動が決してそのガードを緩めてはならず、また、世界金融危機後の
世界で社会的なアジア太平洋地域の労働・経済ルールを形成できるよう、その地位を強化し、よ
り大きな社会での役割の拡大を常に目指さねばならないということを示している。
UNI-Aproは、公正でバランスの取れた持続可能な社会的アジア太平洋地域の明確なビジョン
を持っている。重要なのは、社会において多くの人がそうしているように、実現に向けて動くこ
とである。様々な重要分野が示すように、目の前の道は、UNI-Aproの5つの幅広い各活動分野の
ためにある。ダイナミックな行動、創造性、構造、そして最も重要な要素、心をもつ余地はまだ
あるが、組合を前進させ、地中に根を張らせるように成長させるのは、そのメンバーである。こ
の安定した力なしには、組合は落ち葉のように負けてしまうのであり、自然の土に還り、肥料と
して加えられたときに初めて実を結ぶのである。
UNI-Aproが今後の4年間を歩むにあたり、マニラで開催される第3回UNI-Apro地域大会に全て
の加盟組織が集まり、大会に提出されるUNI-Apro戦略計画を議論するよう求める。
この戦略的行動計画は、UNI-Apro事務局により、地域・世界の各部会および専門委員会との
協議を経て作成され、第3回UNI-Apro地域大会での議論と採択に付すようUNI-Apro執行委員会
により承認された。
この戦略的行動計画は、2015年に開催される次回のUNI-Apro地域大会までの間、各部会、専
門委員会、各国加盟協、加盟組織の活動を導くものとなる。
55
UNI-Apro の成長‐ボレ!
アジア太平洋地域で UNI のプレゼンスと影響力を拡大する
UNI-Aproの成長‐ボレ!‐アジア太平洋地域におけるUNIのプレゼンスと影響力の拡大、
2011∼2015戦略活動計画は、UNIブレイキングスルー・グローバル戦略活動の一環である。
1.
組織化と能力開発
戦略目標:アジア太平洋地域のサービス業及び関連部門で組織力と団体交渉力を養うために、
UNI グローバルユニオン全体が協力する
1.1.
a)
b)
1.2.
a)
UNI 加盟組織数の増大
加盟の可能性がある組織を明らかにし、未加盟組織と関係を結んで、UNI グローバルユ
ニオンに参加させる。
加盟維持と UNI グローバルユニオンから離れた組織の再加盟を促す戦略的アプローチの
分析と開発
新しい戦略的領域の成長
UNI ICTS 部会の 2011 年発足準備に向け、UNI テレコムと UNI IBITS との協力による
UNI ICTS 部会支援:地域活動のマッピングと地域の 2 部門の合併調整を含む。
b)
UNI SCORE と協力し、またグローバル部会との緊密な調整のもと、中国、インド、イ
ンドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスにおいて調和の取れた UNI 成長戦略を立案、
実施する積極的な活動を行う。
c)
UNI スポーツ部会発足準備に積極的に参加することにより UNI スポーツ部会を支援。マ
ッピング、プロ選手とスポーツ部門に雇用されるその他の労働者を代表するスポーツ団体
への接触。
d)
UNI-Apro 加盟組織、UNI 各部会、UNI SCORE とのパートナーシップのもと、非正規
労働者、契約/派遣労働者、移民労働者を含む新規成長部門で部会を横断する組合加入キ
ャンペーンを実施するとともに、こうした労働組合の発展を支援する。
1.3.
協力と労働組合の連帯精神の再強化を促す
UNI グローバル部会、UNI SCORE とのパートナーシップのもと、各種レベルで部門相互、各
部門、地域、小地域の調和的な戦略的優先課題を明確にしたメカニズムと機構の発展を目指し、
共同組織化キャンペーンの実施を含めた加盟組織間の協力を促進する。UNI-Apro は今後とも以
下の確立と支援を続ける。
a)
各国レベルで協力と連帯を促進するため、国内の UNI 加盟組織の連絡協議会を強化‐
UNI-MLC マレーシア、UNI-SLC シンガポール、UNI-LCJ 日本、UNI-NLC ネパール、
UNI-ILC インドなど
b)
ASEAN、SAARC など同じ小地域の UNI 加盟組織のための小地域協議会
c)
小地域の同じ部会の UNI 加盟組織のための小地域協議会‐ASEAN 銀行労組協議会
(ABUC)、ASEAN テレコム従業員労組協議会(ATEC)、ASEAN 郵便労組協議会
(APUC)、東アジアテレコム労組フォーラム、東アジア郵便労組フォーラム、 SAARC
テレコム労組協議会(SATUC)、SAARC 金融労組協議会(SAFSUC)など、
56
d)
1.4.
a)
b)
ASETUC‐ASEAN サービス労働組合会議‐UNI、PSI、BWI がアジア太平洋地域組織
ASEAN の経済統合プロセスに影響力を行使するために発足させ支援しているプラット
フォーム・メカニズム。ASETUC は現在、ASEAN 諸国の PSI、BWI、UNI の加盟組織
によって構成されている。
組織力と能力・スキル開発
UNI グローバル部会及び UNI SCORE とのパートナーシップのもと、オルグの研修プロ
グラムを含め、UNI 及び UNI-Apro ブレイキングスルー戦略と活動計画をリンクさせた
組織化キャンペーンを支えるプログラムやプロジェクトの開発し、その実施を支援する。
加盟組織の組織、財政、機関の能力と持続可能性を向上させるため、支援能力の構築活動
を行う。
c)
UNI-Apro 加盟組織の勧誘員、オルグ、研修担当者のエンパワメント。
d)
労組指導者、オルグ、女性や青年などが効率的に組合員を代表し、労働者の利益を主張す
る力を養うため、これらターゲットグループの組合員を対象とした研修プログラムの見直
しと評価、開発、実施を継続的に行う。これにはコミュニケーション・スキルを開発する
研修プログラムも含まれると予想され、その関連で UNI-Apro は引き続き加盟組織の役
員と主要なスタッフを対象とする英語教育と IT スキルの研修プログラムの開発実施に支
援を提供する。
e)
UNI グローバル・ブレイキングスルー戦略の実施にあたっては、総合的なアプローチが
不可欠である。UNI-Apro スタッフのスキル開発と積極的関与は成功の鍵となる要素の一
つである。したがって UNI-Apro は UNI SCORE との緊密な連携のもと、以下を開発す
る
f)
調査、組織化、キャンペーンなどの具体的な責任を各スタッフが分担するためのガイドラ
イン
g)
UNI-Apro スタッフが早期の段階からすべての関連活動に積極的に関与する。
h)
スタッフの組織化とキャンペーンスキルをさらに向上させ、UNI SCORE プロジェクト
の組織化キャンペーン企画・実行プロセスと労働組合開発活動及びプロジェクトへの積極
的な関与を促すメカニズムをつくるため、定期的な研修プログラムを開発する。
1.5.
UNI 成長イニシアチブの年間イベント
a)
UNI 成長イニシアチブと UNI SCORE の政策、戦略、活動に UNI-Apro の専門性が積極
的に活かされ、インプットが行えるようにする。
b)
地域で、UNI-Apro 戦略的目標と優先課題に添った具体的なイベントを企画する。
1.6.
組織化と能力開発の責任
UNI-Apro 加盟組織及び UNI グローバル部会と協力して、UNI-Apro 執行委員会、UNI 世界
執行委員会、UNI-Apro 部会、UNI グローバル部会に、UNI-Apro の成長:アジア太平洋地域に
おける UNI のプレゼンスと影響力を拡大するためのプログラムの実施・進捗状況を定期的に報
告する。
2. グローバル、地域、国内企業
戦略目標:UNI 加盟組織、UNI-Apro、UNI グローバル部会、UNI SCORE は、アジア太平洋地
域で事業を行っているグローバル、地域企業における組織力と団体交渉力を強化する。これは、
57
労働組合権の尊重、ディーセント・ワーク、国内企業の労働者を含め全ての人に社会保障と公正
な雇用を確保するために重要である。
2.1 グローバル企業、地域企業における労働組合の連携
a)
グローバル企業と地域企業の労働組合の力と影響力を発展させるために、UNI-Apro は
UNI グローバル部会と緊密に協力して、アジア太平洋地域でターゲットとなるグローバ
ル企業や地域企業で働く従業員を代表する労働組合内部及び労働組合間の緊密な協力を
促す。このようなグローバル企業と地域企業の労働組合同士の連携によって、共同調査に
よって得られた企業の問題や労使協定を含む労使関係などについての情報をもとに労働
組合が共同で政策や対応戦略を策定し、ターゲット企業で社会対話を実現することが可能
になるだろう。
b)
多国籍企業や地域企業のグローバルまたは地域の労組同盟の発展を支援するため、
UNI-Apro は UNI-Apro 加盟組織、UNI グローバル部会および UNI SCORE との緊密な
協力とパートナーシップの下、戦略を策定し、戦略的活動を実施する。
2.2
既存及び新規のグローバル協定と地域協定
グローバル枠組み協定や地域枠組み協定という考え方は、当地域の加盟組織や企業にとっては
いまも比較的目新しいものである。したがって、UNI-Apro は UNI グローバル部会と緊密に協力
し、UNI SCORE の支援を得て、次のことを行う。
a)
加盟組織にグローバル・地域枠組み協定の考え方を広め、より多くの企業が UNI と GFA
や RFA を結ぶよう促すために集中的な努力を行う。
b)
地域企業との社会対話を展開し、ターゲット企業と地域枠組み協定について交渉する。
c)
社会対話を通じて、結社の自由と団体交渉、職場における差別の禁止、強制労働の禁止と
児童労働撤廃などの中核的労働基準が明示された ILO のディーセント・ワーク活動プロ
グラムに関連する CSR を受け入れるように、グローバル企業や地域企業に促す。
d)
グローバル企業や地域企業において労働者の権利を推進するため、国際労働基準、多国籍
企業に関する OECD ガイドライン、IFC パフォーマンス基準とグローバル枠組み協定な
どのグローバルなツールについて、加盟組織のエンパワメントを図る。
e)
UNI 加盟組織、UNI グローバル部会、UNI SCORE とのパートナーシップの下、当地域
のグローバル枠組み協定と地域枠組み協定の実施状況をモニターする。
f)
UNI SCORE と協力して地域の調査能力の向上を図る。調査担当スタッフ、UNI 加盟組
織と関連調査機関の調査担当者のネットワーク、UNI GROW リサーチ・プレース内での
地域企業に関する専門的知識の構築。
g)
地域企業について、企業の問題、労働組合組織、団体協約、労使関係、レバレッジポイン
ト、組織化の機会などの調査を行う。
3.
全ての人に社会保障と公正な雇用を
戦略目標:地域及び全世界のサービス業と関連部門の全労働者のために、雇用基準の改善、雇用
と職場の条件の向上を目指して、UNI 加盟組織、UNI-Apro、UNI グローバル部会、UNI 専門
委員会、UNI 地域組織が緊密に協力する。
3.1. 行動指向型調査
a)
地域の雇用供給源、労働者の移動、非典型労働について、部会にまたがる
新たな地域的趨勢に関する充分な調査とモニタリング
b)
地域の各産業の雇用慣行と労働編成の趨勢に関する UNI 各部会の充分な
調査とモニタリングに積極的に参加し、支援する。
58
c)
加盟組織にそれぞれの調査結果を共有するように促す。
3.2. 全ての人に公正を求めるキャンペーン
UNI-Apro は加盟組織、UNI SCORE、UNI グローバル部会と緊密に協力して、すべての労働
者に労働組合権と団体交渉権の尊重とディーセント・ワークを実現するキャンペーンを実施し、
以下を含め、当地域で行われる産業横断的なキャンペーンの展開と実施に積極的に参加する。
a)
労働組合権を求めるキャンペーンや国際連帯税キャンペーンについて、他の GUF と協力
する。
3.3. 機会と待遇の平等
UNI機会均等局と協力して、男女どちらのジェンダーの代表も少なくとも40パーセントを確保
することを目標に、UNIの意志決定機構への女性の代表と参加を強化するとともに、すべての
UNI戦略で平等を推進する。
3.4. 各産業のすべての労働者を団体交渉に参加させる
以下を通じて、加盟組織が団体交渉の権利を全労働者に確保し、効果的な団体交渉を行う能力
と力を養えるように支援する。
a)
他の GUF と協力して、すべてのレベルですべての労働者に労働組合権と団体交渉権を確
保するキャンペーンを展開し、支援する。
b)
未組織労働者が代表され、交渉力を強化できるように、未組織労働者の組織化に支援を提
供する。
c)
団体交渉政策、戦略、要求の作成について加盟組織を支援するための調査を実施し、デー
タベースを構築する。
d)
労働組合の団体交渉担当者のスキルを向上させる研修プログラムを企画、実施する。
e)
専門職・監督職を組織化する戦略を策定し、専門職・監督職を組織化する加盟組織を支援
する活動を行う。
3.5. 派遣労働者と非典型労働者
a)
全労働者にディーセント・ワークと待遇の平等を実現するために、派遣労働者の組織化を
促進し、UNI 部会業種の企業で団体交渉を行うように促す。
b)
主な民間雇用斡旋機関におけるグローバルな労組同盟の構築を支援する。
c)
UNI/CIETT 了解事項覚書の履行を全レベルで確保することを目指して、CIETT(国際人
材派遣事業団体連合)と地域組織のメンバーとの既存の対話の継続や新たな対話開始を求
める。
d)
とくにオーストラリア、ニュージーランド、日本、インドネシア、UNI インド加盟組織
連絡協議会で、労働組合側の対応の展開を支援し、調整を図る。
e)
欧州連合の場合に習い、ASEAN 諸国の UNI 加盟組織や ASETUC と緊密に協力して、
派遣労働斡旋機関に ASEAN 規制枠組みの採択を求めるキャンペーンを展開する。
4. 政治的影響力と規制への影響力
戦略目標:UNI-Apro、UNI-Apro 加盟組織、UNI グローバル部会および専門委員会、他の UNI
地域組織は緊密に協力し、また他の GUF や志を同じくする NGO などとも協力して、地域の経
済統合プロセスと経済及び産業規制の枠組みについて、労働組合がパートナーとして認識される
ことを確保する。これはグローバル及び地域の統合に社会的側面を確保し、常に人々が最優先さ
れるために不可欠である。
59
4.1. グローバルな規制問題
UNI-Apro は、欧州連合の労働組合の機構構築と対話パートナーとしての承認獲得に関する
UNI ヨーロッパの経験と専門性を参考にして、小地域と地域をまたいだ協力を強化することを目
指す。
UNI-Apro は以下のように、政治プロセスの企業化に反対していく。
a)
各国政府、地域組織、地域及び国際金融機関への関与と社会対話を強化する
b)
国際金融機関とアジア開発銀行などの地域金融機関の政策決定機構に労働組合を参加さ
せるよう求めるロビー活動を続ける。
c)
さまざまな方法で ASEAN と G20 諸国の新たな集まりへの参加を確保する斬新なアプロ
ーチを編み出す。
d)
サービス部門に関連して WTO などの機関で検討されている政策が関係部門の労働者に
悪影響を与えないよう、そのような政策について調査を行う。
4.2. 地域経済統合
UNI-Apro は引き続き ASEAN、EAS、SAARC、アジア太平洋フォーラム、APEC、ASEM な
どの小地域及び地域機関の政策決定に積極的に参加しようとする労働組合の努力を支援する。
直近の優先課題は、2015 年に ASEAN コミュニティが現実のものとなることを踏まえて、労
働組合に ASEAN の「会議における議席」を求めるキャンペーンとなる。
このため、UNI-Apro は以下のことを実行する。
a)
ASEAN に認められ、各部門の対話パートナーとして承認されるために、UNI ABUC、
UNI ATEC、UNI APUC など ASEAN 各国の関連部門の労組をグループ化するキャンペ
ーンと、今後の ASEAN 部会協議会結成を目指した取り組みを強化する。
b)
ASEAN、ASEAN+3 と ASEAN+6 で、対話メカニズムと労組の効果的な発言のための機
構としての ASETUC の展開を支援するため、ASEAN 地域で活動している GUF との協
力を続ける。
c)
可能な場合、必要な調整を行った上で、地域統合プロセスに社会的側面を取り入れるにあ
たって成果があったプロセスを認識し、適用することを推進する。
4.3. 他の社会公正組織との戦略的連携
たとえば共同キャンペーンなどを通じて、小地域及び地域レベルの政策決定への労働組合の関
与について、アジア太平洋地域の GUF や ITUC との協力と調整を強化することは、あらゆる戦
略的対応の中核的要素として継続されなければならない。UNI-Apro はさらに、UNI グローバル
部会、ILO、国連機関、GUF、ITUC AP、その他地域の NGO などの志を同じくする組織協力と
コミュニケーションを強化する。
4.4. 人権と労働組合権へのコミットメント
UNI-Apro は移民労働者を含むすべての人に人権と労働組合権を求める闘いに充分に努力し、
労働組合の自由の原則を踏みにじるすべての政府当局や使用者に対する連帯キャンペーンへの
支援を続け、イニシアチブをとっていく。
a)
UNI-Apro は、当該地域で活動する GUF や同様の諸組織と緊密に連携し、移民労働者や
その家族の人権および労働組合権を守り、組織化に取組む。
b)
我々の喫緊の優先事項は、移民とその家族の権利の保護と促進を求める ASEAN インス
トゥルメントの採択である。この ASEAN インストゥルメントは、移民の世紀に相応し
60
い移動性と柔軟性を両立しつつ移民労働者とその家族の社会権及び人権を守る発展的な
アプローチを可能にするものでなければならない。
4.5. 気候変動対策
UNI-Apro は以下のことを実行する。
a)
UNI SCORE と協力して、組織化や能力構築のプログラムのなかで研修と認識喚起モジ
ュールを実施する。
b)
UNI 郵便・ロジスティクス部会と協力して、UNI-UPU 持続可能な開発プログラムを実
施する。
c)
UNI 印刷・パッケージング部会と協力して、グリーン・インダストリーの考え方の実現
を支援する。
d)
ITUC、ICEM、BWI、ITF、PSI、IMF と気候変動アジェンダに関する地域協力を推進
する。
5. 斬新で包括的な組織としての UNI-Apro
戦略目標:UNI-Apro は UNI-Apro 加盟組織と UNI 傘下の労働者が直面するさまざまな課題に
対して戦略的対応を続けるべきである。UNI-Apro は組織各部の既存の意志決定機構を通じて、
加盟組織とその組合員を含め、企画から実施、説明責任までのプロセスに対する全員の積極的な
関与を確保するべきである。
5.1..実効性と信頼性の維持
UNI-Apro は以下を追求する。
a)
意欲的で生産的な行動指向型の会議や大会を目指す。このことは UNI-Apro と UNI グロ
ーバルユニオンが戦略目標を実現し、加盟組織にとって価値ある存在になるために役立つ。
b)
戦略と政策をすべての加盟組織にとって意味があるものにする。
c)
開発プロジェクトとブレイキングスルー戦略の優先課題を明確に関連づける。
d)
連帯的支援であっても、労働組合開発活動へのリソースの支援であっても、建設的で加盟
組織にとって意味がある支援にする。
5.2. 戦略的課題に引き続き画期的なアプローチと対応をするために
各国、特にインドネシアでの労使関係のパートナーシップを推進する UNI-Apro キャンペーン
は、組合員の相当な増加と関係使用者との労使関係パートナーシップにおける各労組の影響力の
拡大によって示されたとおり、効果的だった。
UNI-Apro は引き続き以下のことを行う。
a)
労使関係パートナーシップという考え方を広め推進するとともに、企業や産業レベルで労
組と使用者のパートナーシップ関係実現を促すプロジェクトや活動を支援する。
b)
ますます競争が激化し複雑化するグローバル経済の労働の世界で労働者と労働組合が直
面するさまざまな課題に対応するため、その他のアプローチの実効性を探る。
c)
アジア太平洋でグローバル・ムーブメントの力と影響力を発展させるために、UNI-Apro
は姉妹組織であるグローバルユニオン・フェデレーション(GUF)、ITUC やその地の地域
組織との協力を強化する。
5.3.より効率的な作業メソッドと調和の取れた組織機構の展開のために
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UNI-Apro 部会及び専門委員会、各国のスタッフと UNI グローバル部会との相互協力がさらに
緊密になり、知識と経験が共有され、調和のとれた戦略計画とキャンペーンの企画実施が行われ
るように、UNI-Apro は引き続き既存の組織構造の見直しと評価を行い、必要なら改革を実行す
る。
具体的には UNI-Apro と新設された UNI SCORE は緊密に協力して、野心溢れる UNI グロー
バルユニオン戦略の実行を確保する。我々すべてが以下を通じて戦略的レバレッジの最大化を目
指し、協力すべきである。
a)
チームワークを通じて連携、団結、レバレッジ、相乗効果と集中を確保し、優先課題の矛
盾を回避するために、定期的な協議を行って、共に戦術を検討する。
b)
達成可能なターゲットと明確な目標、結果指向、信頼性、実効性を集中的に目指す。進捗
状況と結果を密にモニターする。
c)
開発プロジェクトを UNI と UNI-Apro のブレイキングスルー戦略的優先課題に添ったも
のとする。
d)
各 国 レベ ルで は 、各 国加 盟 組織 連絡 協 議会 が各 部 門に また が る連 携と 各 部門 及び
UNI-Apro の戦略的優先課題の調整を確保するメカニズムとなるだろう。
5.4. コミュニケーションの改善
UNI-Apro は、スタッフ間及び加盟組織や UNI グローバルユニオンの各機構とのコミュニケー
ションを容易で直接的で手軽なものとするため、ニューテクノロジーの活用とコミュニケーショ
ンツールの開発に努める。
チームワークを通じて連携、団結、レバレッジ、相乗効果と集中を確保し、優先課題の矛盾を
回避するために、UNI グローバル部会や UNI SCORE との定期的な協議を行ってともに戦術を
検討する。
5.5. UNI-Apro が引き続き財政的に良識的で効果的な方法で運営されるために
a)
支出を厳しくコントロールして、プロジェクトや活動への配分を含めたすべての支出を予
算内におさめる。
b)
全加盟組織に UNI-Apro 活動基金への定期的で潤沢な拠出を呼びかける。
c)
全加盟組織が UNI の規約に基づいて定期的に UNI の加盟費を納入するように、加盟費
納入状況をモニターし、世界執行委員会、地域執行委員会、部会に地域の加盟費納入状況
を報告する。
d)
UNI グローバル部会、UNI SCORE とともに、加盟費納入組合の増加に努める。
e)
定期的なリスク・アセスメントを実施する。
5.6. 説明責任
a)
UNI-Apro は UNI-Apro 執行委員会、UNI 世界執行委員会、UNI-Apro 部会委員会、UNI
グローバル部会委員会が戦略を見直し、成果を測定し、戦略実施能力を明確にし、必要で
あれば改革を行えるよう、戦略の実施状況について毎年レポートを作成する。
b)
UNI-Apro は 2014 年にケープタウンで開催される第4回 UNI 世界大会にさまざまなイ
ニシアチブの成果を示す報告を行う。
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