ISSN 0910–4593 Engineering Advancement Association of Japan 2 0 1 3 J a n u a r y N o .1 3 3 日本のエンジニアリング業の 強みを考える 一般財団法人 エンジニアリング協会 Engineering Advancement Association of Japan 2013 January No.133 日本のエンジニアリング業の 強みを考える Contents 1 2013 新春対談 2013年、新たな年を迎えて 世界経済の動向とエンジニアリング産業 渡辺 博史 久保田 隆 7 ㈱国際協力銀行 (JBIC)代表取締役 副総裁 エンジニアリング協会理事長/千代田化工建設㈱ 代表取締役社長 寄 稿 研究力と産業競争力 日本企業に求められること 藤村 修三 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授 ENAAレポート① エンジニアリングシンポジウム 2012 の報告 12 18 招待講演 イクシスそして次の10 年の成長に向けて 北村 俊昭 15 国際石油開発帝石㈱ 代表取締役社長 福江 一郎 特別講演 科学と技術とエンジニアリング、 そして哲学 松本 紘 小山 京都大学 総長 28 業界セミナー 2012 の報告 30 CUI抑制 安全・安心のe’ -AIM®(エコ-エイム)工法 日揮㈱ 代表取締役社長 26 ㈱神戸製鋼所 執行役員 資源・エンジニアリング事業部門 若手社員によるパネルトーク 会員のひろば ㈱神鋼エンジニアリング&メンテナンス ニチアス㈱ 32 エンジニアリングビジネスの魅力 森崎 計人 ENAAレポート③ バイナリ発電設備による低位排熱利用について 基調講演 東京会場 基調講演 大阪会場 丸紅㈱ 経済研究所 副所長 チーフ・アナリスト 東南アジアにおける協会活動の強化 人類のロマンとチャレンジ エンジニアリング・ザ・フューチャー 24 (一財)日本エネルギー経済研究所 常務理事 首席研究員 〈コーディネータ〉 ENAAレポート② 川名 浩一 堅 三菱重工業㈱ 特別顧問 猪本 有紀 エンジニアリング産業研修会 22 パネルディスカッション エネルギーの将来像と エンジニアリング産業の役割 パストラーレ 『氷山』 中村 庸夫 33 海洋写真家 平成 25 年 新年賀詞交歓会 編集後記 表紙の写真:京都大学 提供 2 0 13 新 春 対 談 日本のエンジニアリング業の 強みを考える 2013年、 新たな年を迎えて 世界経済の動向とエンジニアリング産業 世界的な人口増加や新興国の経済成長等もあり、現在、海外でのインフラ需要は拡大している。また、 北米のシェールガス革命により世界のエネルギー事情には変化の兆しが見える。こうした流れを意識し ながら世界の経済動向が変化するなか、 グローバルな視点から日本のエンジニアリング産業が今後競争 力を高めていくにはどんなことが必要なのか、官民連携はどうあるべきか、そして、多額の資金を要する 海外インフラプロジェクトにおける国際協力銀行(JBIC)の金融面からの支援について、さらには、 エンジニアリング産業に求められることなどを語っていただいた。 渡辺 博史 株式会社国際協力銀行(JBIC) 代表取締役 副総裁 久保田 隆 エンジニアリング協会理事長 千代田化工建設株式会社 代表取締役社長 久保田:エンジニアリング産業のミッ 権益の確保といった国益にも結び 加価値の提供を軸としたパッケージ ションは、エネルギー、生産設備を つくものと期待されています。昨年 型インフラのような提案に重きを置 含めた人間の社会生活に必要な広 度エンジニアリングビジネスの規模 き、単に技術の差別化だけでなく、 義のインフラ建設を通じ、豊かで安 は、約 14 兆 円、輸 出が 3.1 兆 円と イノベーションを念頭においた絶対 定的持続可能な社会を実現するこ なっています。今後は、単純なプラン 価値の提案が必要だと考えていま とにあると思っております。特に、資 ト輸出に限らずオペレーション・メ す。グローバルな視点で日本のエン 源国への案件提案、実施は、資源 ンテナンスを含めた将来にわたる付 ジニアリング産業が高度な技術力を ENAA Engineering No.133 2013.1 1 発揮するためには、新たな技術やシ ステムを提案する民間企業としての この様な背景のもと、まず、これ 努力に加え、プロジェクトのコーディ からの世界経済の見通しとそれが ネーション能力を持つJBIC の様な エネルギーやインフラ投資に与える ファイナンスセクターと案件形成の 影響、またわが国がグローバル社会 初期段階から協働することが重要 で存在感を高めていくための政府、 だと認識しています。ことに、エンジ JBIC、エンジニアリング産業の役 ニアリング産業が関わる資源開発プ 割、さらにエンジニアリング産業の ロジェクトや社会インフラ開発プロ 海 外 展開、業 容 拡 大に向けての ジェクトは、長期かつ巨額な資金を JBIC の支援策、エンジニアリング協 必要とする案件が多く、景気変動や 会と JBIC との関係強化やグローバ カントリーリスクにさらされる危険も ル人材の育成などについて対談させ 高く、JBIC の関与は特に重要だと ていただきたいと存じます。 1 渡辺 博史 株式会社国際協力銀行(JBIC) 代表取締役 副総裁 1972年 4月 大蔵省入省 1989年 6月 (財) 国際金融情報センター総務部長 1994年 7月 主税局税制第二課長 1995年 6月 大臣官房秘書課長 1998年 7月 大蔵大臣秘書官 2003年 1月 国際局長 2004年 7月 財務官 2008年 4月 一橋大学大学院商学研究科 教授 10月 株式会社日本政策金融公庫 代表取締役 副総裁、 国際協力銀行経営責任者 2012年 4月 株式会社国際協力銀行 代表取締役副総裁 2 ENAA Engineering No.133 2013.1 思っております。 世界 経 済の今 後の見 通しと エネルギー事情 渡辺:日本経済自体は新政権の発 たブラジルも調整が始まっています。 足以来、気分的には高揚し、よい状 全体に悪いというわけでもなく、か 況と言えます。東日本大震災への財 といってどこかが頑張っていけば明 政出動が今年も行われるということ るくなるというわけでもありません。 とあいまって本来の想定される成長 そういう意味では、当面、安定成長・ 率より上にいくとみています。世界全 中成長でいくのが一番いい状態で、 体では、まず、先進国では、ヨーロッ それをどうやって協力してやってい パは今年もゼロ成長くらいであろう くかが国際的な協調だと思います。 と予測しています。ポイントはアメリ 久保田:天気でいえば曇りやや薄日と カですが、経済自体は比較的強い きどき小雨、というところでしょうか。 状況であり、特にエネルギーの関係 エンジニアリング産業は、エネルギー で追い風になっています。途上国 オリエンテッドなビジネスを主体として は、リーマンショックで先進国が混 いますが、今後の世界経済がエネル 乱したときにそれを補って成長し、 ギー・インフラ投資に対してどのよう 特にアジアでは中国とインドを中心 に影響していくとお考えですか。 として、その周辺のインドネシアやベ 渡辺:エネルギーは1〜 2 年のターム トナムも良い成果を残してくれたの ではなく、5年先、10 年先をみなが ですが、今年はやや減速が進むも ら、長いタームで考えるべきもので のと思 われます。中国、インドは す。2050 年に人口が 90 億人くらいに 2011年終わり頃から減速に向かって なりますが、そのときどのくらいのエ おり、前年にくらべ 2 ~ 3%下がって ネルギー需要があるか、そういう目 くるなど、減速がアジアのなかでも でみていかなければいけません。現 起こっています。南米でも牽引してき 在、一番に影響が出ているのが、北 2 0 13 新春対談 米のシェールガス革命で、世界のエ 仕事は減らないのではないかという ネルギー生産の拠点が変わりつつあ 気がしています。 り、同時に貿易の流れが変わり、IEA 久保田:中東など資源を持っている (国際エネルギー機関)の見通しでは 国では、従来型の資源開発案件がな サウジよりもアメリカのほうのエネル かなか成立しなくなっています。雇用 ギー輸出額が増える時代がくること が創成されるよう、ダウンストリーム も指摘しているほどです。 の複雑な工程を持ったプラントをつ 久保田:米国と並んでエネルギーの くるような流れになってきています。 大消費国である中国は、シェールガ 渡辺:供給側のどこの国でも、付加 スの埋蔵量のポテンシャルも高いと 価値を国内でつくるために上流に近 言われています。 いところでやれる分野は、全てやる 渡辺:正確な埋蔵量は不明ですが、 という傾向になっています。一方、消 シェールガスを採掘するには水が必 費地側では、これまで日本でリファ 要です。中国ではその水が足りない イナリーやペトロケミカルをつくり、 現状があり、大規模な生産になるこ それを東南アジアに売ってきました とはないと捉えています。アメリカが が、逆に日本でつくったものは日本 買い手から売り手に変わっていき、 で、アジアでつくったものはアジア 売り先のドミノ現象が起こってくるで で消費する地産地消が起こり、その しょう。アメリカに売っていた西アフ ためのプランを各国がつくっていく リカはどこに売るか。候補はヨーロッ ことになるかと思います。リーマン パ。するとロシアが売れなくなり、ロ ショックの前の、2006 ~ 07 年には、 シアが次にどこに持っていくかなど、 案件ラッシュとなり、人が足りなくな 流れが大きく変わっていきます。同 り、資材の高騰が生じました。2008 時に先進国とは別に、途上国でガス 年のリーマンショック直後は一時的 と石油を輸出しているところは、現 にお金が滞ったために、多くのプロ 地で付加価値を高めようとしていま ジェクトが止まりましたが、今は違 1969年 東北大学工学部化学工学科卒業 す。原油の輸出は止めて、リファイナ い、先に手をつけたほうが有利な状 1991年 PGFジャカルタ事務所所長 リーまでではなく、ナフサから中流 況であり、どこの国が先に投資プラ 1998年 取締役 豪亜プロジェクト総室長 のペトロケミカルまでやって、現地で ンをつくるかで差がでてくるという 付加価値を高めていく。そういう意 チャレンジングな世界になっている 味では、世界的にエネルギー関連の と思います。 久保田 隆 エンジニアリング協会理事長 千代田化工建設株式会社 代表取締役社長 千代田化工建設㈱入社 1995年 海外第2プロジェクト本部部長 1999年 取締役 海外プロジェクト総本部長 2001年 常務取締役 兼 執行役員、海外プロジェクト統括 兼 海外営業本部長 2004年 取締役 兼 執行役員、国内プロジェクト副統括 2005年 常務取締役 兼 執行役員 2007年 代表取締役社長 (現職) 2011年 一般財団法人エンジニアリング協会理事長 (現職) 2 世界のエンジニアリング産業の現 状と グローバ ル人材育成 久保田:世界では、従来のインフラ ントの考え方を持っていかないと有 建設でも、上流の計画段階設計か 利にビジネスを展開できない状況に ら建設、オペレーション・メンテナン なってきました。中東の某国ではオ ス、そして廃棄までを含めた大きな ペレーション・メンテナンスまで入り 構想によるポートフォリオのマネジメ 込んで、いろいろな提案をしている ENAA Engineering No.133 2013.1 3 と聞いていますが、実態は、計画は ションが出来て、日本の歴史や文化を い、プロアクティブに行動し、プロ 欧米勢がしっかり入ってやっている しっかり話ができるということがよく ジェクトの最初のときから入っていく ようです。話が飛びますが、日本人 言われますが、一番は、日本の本社 ことをめざしています。世界は今、モ は能力があるにも拘わらず、そうい 機構を変えることではないかと思い ジュラー型に変化していますから、 うところに踏み込まないのはグロー ます。この点、中立的なお立場からど どこでつくったかではなく、よりよい バルな人材が不足しているからかも のようにご覧になっておられますか。 ものを完全な規格でいかに早く提 しれないと感じています。 渡辺:基本的には本社のグリップが 供できるかというパーツの提供側の 渡辺:これまで、コンサルティングや 強すぎるような気がします。分権が 対応があって、それを束ねていくの デザイン分野はアングロサクソン系 いまひとつできていないのかもしれ がエンジニアリングの世界であり、 の人たちが担ってきましたが、デザ ません。スピンアウトして、会社から 我々がそれを上流の過程からバック インのところから日本人が手がけ、 の 「しばり」をはずして仕事をする人 アップするということに変わっていく その計画に日本勢が進出しやすくし を増やしていくということも考えてい のだと思います。 ていくことが必要だと思います。グ く時期になっているのではないかと 久保田:資源エネルギー、社会開発 ローバルな人材の問題では、日本の 思います。グローバルな人材教育は と大きく2つに分けることが出来ま 場 合、組 織のなかで仕事をします 大学側も意識して、これからかなり すが、社会開発の場合は、交通シス が、コンサルタントやデザイナーは個 変えていこうと、みんなが考えていく テムやスマートコミュニティ等があり、 人の世界なので、同じ組織に10 年、 臨界点に至っていると思います。非 そちらは地産地消の割合が大きく、 20 年もいるのではなく、能力のある 常に悪いところから脱却するには、 別の課題もあります。 人はそこからスピンオフではなく、ス 今までの延長線で伸ばすだけでは 渡辺:資源エネルギーは比較的単純 ピンアウトしていく。これから会社も 駄目だと皆さんもうわかってきてい で相手も少ない。一方、社会インフ そういうことを奨励してもいいのか ると思います。 ラの場合は、そこにいる人が使うと もしれません。優秀な人間を中に留 久保田:戦後レジュウムの大きな転 いう前提で考えなければいけません めておくよりは、外に出て色々な経 換期なのでしょうか。 し、関係者が増えますね。官民連携は 験をしてもらえば、国全体でトータ 渡辺:今や雁行型の中で2、3番目 よく、PPP (Public Private Partnership) ルで利益がでますから、そういう視 を飛んでいるに過ぎないということ と3つの P で表され、1つ目の P は 点で、人材の育成を考えることが必 であれば、10 年先を睨んで、モノ作 ホストカントリーのパブリック、2つ 要かもしれません。 りも、マネジメントも同じ形で改めて 目の P は投資家側のプライベートを 久保田:人材教育ではコミュニケー 先頭を切るよう進むべきでしょう。 指すことが多いように思います。で すが、実際のプロジェクトはそれだ 3 社会インフラ開 発、資 源エネルギー開 発に おける海 外 展 開の課 題 けでは動かないことも多く、私は、P はこの 3 つだけではなく、5 つ必要 だと最近云っています。例えば 「パ ブリック」についても、ホスト国が料 4 久保田:社会インフラシステム、 省エ アをしっかり固めて出て行かないと 金設定をしっかりさせ、お金が回る ネインフラシステムにしても10年20 なかなかうまくいかないのが現実で ような保 証をするために、私ども 年単位でグローバル的には、20 ~ す。 また、JBICのようにコーディネー JBICや国際機関が外から補完する 40兆ドルと大きなマーケットがあり ションやアレンジメントに長けている という、もう一つの 「パブリック」が ます。 しかし今までの様なプラント輸 機関とのコラボレーションも必要で あってもいいだろうということです。 出のアプローチでは困難で、 技術的 す。 この展開については、 どのように また、 「プライベート」についても、社 な強みなどは、 日本にこだわらずグ お考えでしょうか。 会インフラは現地でやるために現 ローバルに一番いいものを集め、 コ 渡辺:私たちもさまざまな改革を行 地の優良な企業に一緒に参画して ENAA Engineering No.133 2013.1 2 0 13 新春対談 もらう事が重要ですので、海外 投 資家だけでなく、現地のプライベー トカンパニーというもう一つの 「プラ イベート」のウェイトが今までのエネ ルギー型の仕事よりかなり大きく なってきています。発電までは昔の 仕組みで成立していても、水や交通 になると5Pじゃないとワークしな い。インドやフィリピンに行ったとき に首相や大統領には、そういう形 でやってほしいと言っています。そ ういう意味でも5つの P が必要で す。これは、逆に相手の数がふえる ことになりますから、その調整は 我々がやりますし、2番目のP では、 我々も貸し手になっていますから、 大使や外交団のように大所高所か らの話ではなく、ネゴがしやすく、 トラブル回避のための直接担当者 になれる強みもあります。 久保田:なるほど、その5Pは今後重 要なキーワードですね。資源エネル んでいるので、それをベースに価格 渡辺:リニューアブルエネルギーに ギーについてはいかがでしょうか。 の安定を考えていくことがポイント は限界があるので、ガス、石油や石 渡辺:先方の政府、特にエネルギー で、短期的中期的に需要のほうで抑 炭を夫々どのように使っていくのか を所管しているところが資源エネル 制できるというスマートな仕組みを が課題です。石油は、ぺトケミ材料 ギーをどう考えているか。国によって つくっていくのが必要だと思います。 に使うので、燃やすのは、もったい は、最初のエネルギーから脱硫まで たとえば送電にいろんな機能をつけ ないとなると、当面は石炭ですね。 は公的機関で、次のペトロケミカル てラインを組む送受電ネットワーク 燃焼で余計なものを出さない、出た の世界になるとプライベートでいいと など、広い意味でのグリッドシステ ものを上手く吸収するといった仕組 いうようにその仕分けについても考 ム、双方向でいろいろ組み合わせた みを作る必要があります。 えています。それについても早く情 いわゆるディストリビューションシス 久保田:ところで食料については如 報をとり、こんなことが現地側の課 テムの需要が大きくなると思います。 何でしょうか。 題になっていますと皆さんへフィード これを組み込んだスマートシティを 渡辺:食料については、植物工場で バックできればいいと思っています。 何千人ではおもちゃみたいですか の水耕栽培をやっていただくといい 久保田:資源エネルギー分野は、大 ら、10 万人くらいの都市で実施して ですね。少なくとも野菜の世界では 変大きなポテンシャルのあるマー みるなど、実際に動かすためにはそ 有効ではないかと思っています。と ケットには違いありません。それに のくらいの規模でやってみるといい うもろこしや小麦の世界では難しい 併せて、消費側の省エネルギー投資 と思います。 ですが、水が希少になっていくと、 も増えてくるでしょう。 久保田:化石燃料は有限ですから、 ぐるぐる回して、どう循環的につかっ 渡辺:需給関係では、資源側は、リ その使い方は、後世にしっかり伝え ていくか、野菜の場合は、工場型は ソースが安定的に使われることを望 ていく必要がありますね。 不可避ではないかと思っています。 ENAA Engineering No.133 2013.1 5 4 分の責任で動けるシステムを作り、自 J B I Cとの連 携の強化と エンジニアリングへの期 待 ら行動することだと思います。他が逡 巡しているとき、うまく金融を使うと、 タイミングによっては投資効率も違って 久保田:当協会は約150社の幅広い 世界で具現化していただく。今までと きますので、是非自律的にチャレンジ 企業の賛助会員で構成され、今年 同じことではなく、これからはそうい してほしいと思います。私どもも相当苦 設立35周年を迎え、 地下利用や海洋 うこともやっていくべきですね。 しんだ状況を経てきましたから、次の 開発などいろいろ取り組んできまし 久保田:日本では、規模としてはグ ステップは別の次元にいくという気分 たから、 今までの成果を世に問うか ローバルには中位以下の企業が多 でいかなければいけません。ちょっと たちで、 エンジニアリングを軸とした く、間口をひろげて経営基盤を安定 成長率をあげようかとか、利益率をあ シンクタンクの方向に進むべきだと することは難しいのですが、業容拡 げようという世界ではないと思います。 思っていますが、 そういう観点では 大やM&Aなどで海外の会社を買う 銀行でも国内よりも海外の方が利益 JBICとの接点がもっと増えてくるの とかそういったときには支援いただ が高いこともあり、いかに短期の資金 ではないかと思っています。 けるのでしょうか。 を長く固定し、エンジニアリング産業 渡辺:何でもできるのがエンジニアリ 渡辺:M&Aについては政府からの のみなさんの海外の業務の拡大に役 ングの世界です。これまで 縁がな 支援もあります。JBICは国内の仕事 立てるかということに極力努めていく かった業界や仕事を横断的につなぐ にはファイナンスできませんが、海外 方向です。こうした海外案件について 仕事がエンジニアリングだと思いま であればファイナンスが可能です。現 は、日本の民間金融機関の皆様とも、 す。われわれはファイナンスをしていき 地に強い企業があればそれを取り込 一緒に協調していこうとしています。さ ますが、金融では特定分野のテリト んでいくのも一つの道です。特に地 らに、もはや日本単独ではなくて、広 リーがあるわけではありません。ひと 域の状況や情報に詳しい会社を取り い意味で他の国の組織とも一緒にやっ つの分野でやっていくとうまくいかな 込んでいくことが大切だと思います。 ていくことが必要となっている時代に い、こっちもくっつければいいな、と 久保田:最後に日本のエンジニアリ 入っていると思っています。 業界にいうと、それはめちゃくちゃで ング産業に対し、どのような役割を 久保田:お話の中から、エンジニア すよ、と言われることがあります。しか 期待されますか。 リング業界が挑戦すべき場が見えて し、そういうものをブレークスルーし 渡辺:世界経済が揺れて、景気が悪く きました。種々ご相談させて頂きな ながら前に進んできましたので、ある なると業界でも金融でも残念ながら、 がら、今年もがんばっていきますの 程度高めの玉を投げて考えていくの 一斉にみんなが小さくなりがちでした。 でよろしくお願いいたします。本日は は私どもがやり、エンジニアリングの 今の経営者に求められているのは、自 ありがとうございました。 渡 辺 副 総 裁 のご 趣 味 につ いて 渡辺副総裁は、お仕事に関連して金融市場あるいは税制についての書物を数多く上梓されておられます。 一方で、趣味としてミステリ小説を好んでおられ、ご自身の国際経験を生かし、国際関係論や比較文化論の 観点から 120 カ国を 626 冊のミステリ小説で案内する 「ミステリで知る世界 120 カ国‐ 開発途上国 ミステリ案内」なる異色な著書を 1993 年に上梓されています。 また、毎年発表される早川書房のハヤカワ・ミステリ・ベスト10 の 審査にも永く携わってきておられます。 「厳しい現実に立ち向かう勇気。誰もが思いつかないような発想。 そんなミステリ小説にこそ、困難を乗り越えるヒントが潜んでいます。 企業の企画部門の方々や、与野党のリーダーにも読んで頂きたい ですね。 」と日経新聞 「インタビュー領空侵犯」にお答えになられる ミステリ通の第一人者です。 6 ENAA Engineering No.133 2013.1 (広報誌編集委員会記) 寄稿 研究力と産業競争力 日本企業に求められること 藤村 修三 ふじむら しゅうぞう 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授 1955年生まれ。1978年千葉大学理学部物理学科卒。1993年千葉大学大学院自然科学研究科博士(工学) 。1978-1998年 富士通株式会社、 株式会社富士通研究所勤務。 半導体プロセスの研究・開発に従事。 その間、 千葉大学、 武蔵工業大学非常勤講師。 1998年米カリフォルニア州にてJLM Technologies設立に参加。1999年ANNEAL Corp.(JLM Technologiesを改称)CTO。 2002-2008年一橋大学イノベーション研究センター寄付研究部門客員教授。2005年4月より現職。1997年科学技術庁注目発明 (半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法) 、2001年第1回日経BP BizTech 図書賞( 「半導体立国ふたたび」 日刊工業 新聞社) 、2010年東工大教育賞受賞。 テレビや新聞 ・ 雑誌で日本企業、特に製造業について「技術 国際競争力は非常に高く、例えば電子材料では多くの製品分野で はあるのです、あとはそれを如何に市場に出して行くのか、 日本企業のシェアが 90%を超えていることが知られています。 利益につなげるのか、そこが今後の課題ですね。」というような これに対し、コンピュータ科学分野では 100 位に入るのは 2 研究 言葉をよく見聞きします。かつて DRAM 世界市場の 80%を 機関だけとなっていて、化学や材料科学ほどの研究力は無いよ 握ったと言われる半導体産業の凋落は言うまでもなく、液晶 うに見えます。そして、産業界でもコンピュータのソフトウェア、 テレビ、スマートフォン、タブレット PC 、等々、デジタル家電、 システム構築などの分野で日本企業は必ずしも世界のトップを 家庭用情報端末と言われるような、本来でしたら日本のお家芸 制するほどの競争力を有しているわけではありません。これらの と呼ばれていいはずの市場で、日本企業が韓国、台湾、中国等の ことから、ここに示された研究機関ランキングは産業競争力と 企業の前に苦戦を強いられています。本稿では恐らくその要因 全くの無関係ではないように思えます。 の一端であろうと思われることについて述べようと思います。 我が国のビジネス研究機関 一方、表 2 のビジネスに関係する分野を見ると、上位 100 位 までに入っている研究機関は一つもないことがわかります。単に 100 位以内に入っていないだけでなく、精神医学・心理学では 表 1(8 頁) 、表 2(9 頁)は学術文献データベースとして有名な 日本トップの東京大学がノミネートされている全 432 機関中 ISI Web of Knowledge に登録された 2002 年 1 月~ 2012 年 322 位、社会科学一般ではやはり東京大学が日本トップで全 2 月に発表された学術論文の被引用数(2012 年 5 月時点)を 825 機関中 275 位となっており、いずれの分野でもトップ 100 に 論文発表元の研究機関順に並べた世界研究機関ランキングの内、 入りそうな機関がありません。経済・経営に至ってはノミネート 上位 100 位までに入った我が国の研究機関をリストアップした 全 212 機関中に日本の研究機関 0(ゼロ)という惨状です。 ものです。一般に被引用数の多い論文ほど、論文の学術的価値が すなわち、我が国にはビジネスの研究に関係する学術分野トップ 高い、と考えられていますから、このランキングは研究機関の 100 に入りそうな研究機関が存在しないと言うことができます。 研究力ランキングと見なすことができます。表 1 は工学各分野の ここで、ビジネスについて、精神医学・心理学と社会科学 ランキング、表 2 はビジネスに関連する分野のランキングです。 表 1 の工学系分野を見ると、化学分野は上位 100 機関に 10 の機関が入っており、内 7 つが 30 位までに入っています。 (大学では「化学専攻」は理学部に入っていますが、ここでは 「応用化学」や「高分子化学」など工学部で扱う内容も化学分野 一般分野に強力な研究機関がないことはそれほど深刻な問題 ではないのではないか、と考える人もいらっしゃるかもしれま せん。しかし、精神医学・心理学と社会科学一般分野はかなり ビジネスと深く関係しています。 まず、精神医学・心理学ですが、職場環境が人に与える心理的 に分類されていますので、化学を工学系分野に入れています。) 影響や、職場での人間関係などの研究は応用心理学の学術誌 また、材料科学分野も 100 位までに 9 つの研究機関が、こち に数多く発表されていますし、消費者心理なども心理学の分野 らも 29 位までに 7 つの研究機関が入っており、どちらの分野も で扱われています。また、企業倫理や技術者倫理、CSR 活動など 我が国の研究レベルが国際的に高い位置にあることが判ります。 の企業の社会性に関わる研究成果はこの分野に分類されている 産業界においても、化学や材料科学の知識が製品開発に直結し 学術誌に数多く掲載されています。 ている高品質素材、高機能材料などの分野では我が国企業の ですからこの三分野のいずれでも我が国には研究力世界 ENAA Engineering No.133 2013.1 7 トップ 100 に入りそうな研究機関が無いというのは実はかなり Composites”、 “Materials Chemistry”、 “Metals and 深刻な問題なのです。 Alloys” 、 “Surfaces, Coatings and Films”の 5 つでも日本 は米国に次いで 2 位となっています。 我が国のビジネス研究力 これに対し、 “Business, Management and Accounting”の それでも、国全体で見れば研究力はもっと違っているのでは ないか、と言う疑問も残ります。 分野は“Accounting”、 “Business and International Management” 、 “Industrial Relations” 、 “Management オランダの国際的出版社 Elsevier 社が提供している学術 Information Systems” 、 “Management of Technology and 文 献デ ータベ ース Scopus (http://www.scimagojr.com/ Innovation” 、 “Marketing”、 “Organizational Behavior index.php) を見ると、この疑問に答えることができます。 and Human Resource Management” 、 “Strategy and Scopus は THE 世界大学ランキングや QS 世界大学ランキ Management”、 “Tourism, Leisure and Hospitality ングの算出にも用いられているデータベースで、1996 年から management” 、 “miscellaneous”の 10 のサブ ・ カテゴリー 2010 年までの論文を対象とした国別の被引用数ランキングを に分けられていて、各カテゴリーでの我が国の被引用数国際 27 の学術分野毎に調べることができます。こちらでは「経済」 と ランキングは 「 経 営 」が“Economy”と“Business, Management and Accounting”の別カテゴリーとして集計されているほか、その分野 もサブ・カテゴリーまで国別ランキングを知ることができます。 それではデータを見てみましょう。 (データは 2012 年 11 月 Accounting →23位 Business and International Management →19位 Industrial Relations →29位 Management Information Systems →27位 Management of Technology and Innovation →19位 Marketing →3位 時点でのものです。) “Chemistry” 分野は“Organic Chemistry” “Electrochemistry” 、 、 等 7 つのサブ ・ カテゴリーに分類されています。日本の被引用数 ランキングは“Chemistry”分野全体で米国についで 2 位で、 Organizational Behavior and Human Resource Management →19位 Strategy and Management →21位 Tourism, Leisure and Hospitality management →25位 miscellaneous →19位 “Organic Chemistry” 、 “Electrochemistry” 、 “miscellaneous” となっています。 “Chemistry”や“Material Science”分野と の 3つのサブ ・カテゴリーでも米国に次いで2 位となっています。 比べると明らかに見劣りがします。しかも多くの産業で現在 ISI Web of Knowledge の“Chemistry”分野で日本の研究 日本の競争相手となっている東アジアの国々、シンガポール、 機関が論文被引用数世界トップ 100 に 10 機関入っていたこと、 台湾、香港、中国、韓国と比べると、これらの国々全てをランキ 先端電子材料や高機能高分子材料で日本企業が高い競争力を ングで上回って、アジア 1 位となっているのは“Marketing”のみ 有していることと整合的な結果と言えると思います。 です。その他のサブ ・ カテゴリーで中国より上位にあるのは また、研究機関別論文引用数ランキングで化学分野と同様に “Organizational Behavior and Human Resource 上 位 100 位までに 9 つ の 研 究 機 関 が 入っていた材 料 科 学 Management” (日本 19 位、中国 20 位)だけで、韓国を上回って (“Material Science”) 分野も全体で米国に次いで 2 位で、8 いるのも“Organizational Behavior and Human Resource つのサブ・カテゴリーの内“Biomaterials” 、 “Ceramics and Management” (日本 19 位、韓国 24 位) 、と “miscellaneous” (日本 19 位、韓国 21 位)の 2 つだけです。企業の 実 務に 直 結 する“Accounting” 、 “Business and International Management” 、 “Management Information Systems”、“Management of Technology and Innovation” 、 “Strategy and Management”の 5 部門はいずれも東アジア 6 カ 国中最下位で、中でも“Management Information Systems”では 香 港 4 位、台湾 5 位、韓国 7 位、 シンガポール 9 位、中国 14 位に対して日本 27 位と ダントツのビリとなっています。アジアのライバル 諸国に対して劣勢であることは明らかです。 ISI Web of Knowledgeより (表1) 工学系研究機関論文 Citation ランキング(2002.1 〜 2012.2) 8 ENAA Engineering No.133 2013.1 ではトップとの差はどうでしょうか。ほとんどの 学術分野で 1 位は米国です。 寄稿 “Chemistry”全 体での 米 国 の 引 用 数は 約 624 万件であるのに対し、日本は約 224 万件で 36%となっており、サブ ・ カテゴリー は 最 小 31%(Analytical Chemistry) ~ 最 大 57%(Electrochemistry)になって い ま す。 “Materials Science”は 全 体 で 米 国 257 万件、日本 122 万件で 48%であり、8 つ のサブ ・ カテゴリーでは最小“Biomaterials” → 35%、 最 大“Surfaces, Coatings and Films”→ 81%、となっており、国の規模を 考えると対等以上にがんばっていると言え そうです。 では“Business, Management and ISI Web of Knowledgeより (表2) 社会科学系研究機関論文 Citation ランキング(2002.1 〜 2012.2) Accounting”の 分 野 は どう でしょう か。 “Business, Management and Accounting”総合では 1 位 ここで考えなくてはならないのは産―学の相互作用です。 米 国 の 被 引 用 数 985,466 件 に 対し、9 位 の 日 本 の そ れは 工学の研究機関ランキングのところで、産業競争力と論文の 32,559 件で比率は 3.3%、約 30 分の 1 です。サブ ・ カテ 被引用数で見た研究力には関係があるように見える、と述べま ゴリーはどうかというと した。これはある意味当然と言えば当然です。なぜなら、技術 Accounting → 0.5% において世界有数の産業競争力を持つ分野では、次世代製品 Business and International Management → 1.8% を開発するために常に新しい科学的 ・ 技術的知識が求められる Industrial Relations → 2% からです。そうした分野の企業は、最先端の研究成果を産業化 (ここのみトップは僅少差で英国なのですが値は英米どちらに対しても同じ。) Management Information Systems → 0.7% Management of Technology and Innovation → 1.9% Marketing → 13.2% Organizational Behavior and Human Resource Management → 1% する競争を行っている、と言っても過言ではありません。一方、 大学の研究者も世界に認められる研究成果を出すには、社会、 産業をより発展させるためには何がわかればいいのか、すなわち Strategy and Management → 1.4% 最 も 先 進 的 な 社 会 や 産 業 の 課 題 を 知 ることが 重 要 で す。 Tourism, Leisure and Hospitality management → 1.8% 筆者は、ベル(Bell)研究所の最盛期の最後である 90 年代に miscellaneous → 2.3% となっており、Marketing の 13% を除くと総じて 1 ~ 2% で、 Bell 研究所の研究者として働き、現在は米国の大学で教員と して働いている科学者数人にインタビューをしたことがありま 米国との差は圧倒的です。最も健闘している Marketing で すが、共通する意見の一つが、大学に入ってからは、最先端の さえ、Chemistry や Material Science で米国との比率が 産業界の情報が入ってこないので、社会のニーズがどこにある 最も低いサブ ・ カテゴリーよりも低い値となっており、経営学 のか知るのが大変だ、というものでした。単に大学と企業が の研究力の低さは悲惨と言っても良い状況です。 併存しているだけではダメで、相互に活かし合うことが必要 これらの結果は、テレビの討論番組や経済雑誌などでよく なのです。実際、東京工業大学でも理工系の研究科では数多く 見聞きされる「日本には技術があるのにそれが産業競争力に の企業との共同研究が行われて、多数の企業研究者が大学で 活かされていない」との指摘が真実であることを裏付けている 研究しています。 ように思います。技術を産業化する方法を研究する分野の研究 力が著しく弱いのですから。 ではどうしてこれほど日本のビジネス研究力は弱いのでしょうか? 紙面の都合もありデータで示すことはしませんが、少なくとも 国立大学の本務教員数や公的研究機関の研究員数では社会科学 が工学に比べ数十分の一しかない、という状況ではありません。 しかし、経営学の分野で大学と企業の共同研究実施について はあまり耳にしたことがありません。反対に、企業からデータを 入手するのが難しい、と言う声は数多く聞きます。どうも日本 企業は企業秘密の壁が高いようなのです。 企業と大学を繋ぐ人 平成 23 年 6 月の科学技術審議会「人文学及び社会科学の振興に 一般に大学のビジネス研究者にとって重要なのは対象企業 関す巣委員会」の参考資料では、私学を含めた社会科学の大学本 固有の事情ではなく、より多くの企業、産業にとってそれを解決 務教員数は 22,863 人、工学のそれは 26,436 人となっています。 することが必要だろうと思われる未知の課題、特に社会の発展と ENAA Engineering No.133 2013.1 9 共に現れ、今後さらに深刻化するであろうと予想されるような 余儀なくされている現在では、日本社会、日本企業自らが世界の 課題です。ですから、大学の研究者は実際の企業情報を望んで 誰もが未経験の問題を解決しなくてはなりません。問題を分析し、 いるといっても、各企業特有のノウハウや秘伝のたれを教えて 問題を解決するために解くべき未知の課題を抽出する能力、課題 もらうことを欲しているわけではありません。まるっきり生の、 発見能力が重要なのです。そして、この課題発見能力は研究者に ノウハウや秘伝のたれ満載の情報をもらっても、そこから一般 最も必要とされる能力なのです。すなわち、研究経験を持って 性のある学術的な課題を抽出する作業の方がむしろ大変です。 企業に勤める企業内研究者こそが企業と大学を繋ぎ、双方に 大学の研究者が欲している企業情報と企業が重要な企業秘密 優れた成果を実現させるキーパーソンだと考えられるのです。 と考える情報は恐らく同じではないのです。 もし企業に生の情報からノウハウなどの企業個別の諸事情を では日本には企業内研究者はどのくらいいるのでしょうか。 「科学技術要覧 平成 23 年版」に企業における本務研究者数 より分け、一般的だが未知の問題を抽出して大学の研究者に が 示されています。それによると、企 業 の 本 務 研 究 者 数は 伝えてくれる人がいるとこれは便利です。ノウハウなどの企業が 全産業では 534,568 人。うち理学 84,702 人(15.8%) 、工学 利益の源泉と考える個別情報を出すことなく、しかし企業内で 411,353 人(77.0%) 、人文 ・ 社会科学 7,568 人(1.4%) となっ 労力をかけて研究し解決すべき課題に大学の資源や労力を利用 ています。 (図1参照) して取り組むことができるからです。 この具体的な情報に関する扱いは理工系でも同じです。日本 でも多くの企業が大学と共同研究を行っていますが、製品の 設計そのものを委託したり、生産現場に大学の研究者を入れて 製造方法上の問題解決を依頼したりすることはほとんどないで 自然科学 - 保健 自然科学 - 農学 2.91% 人文・社会科学 2.88% 1.42% 自然科学 - 理学 15.84% しょう。製品に組み入れることが可能な機構の開発や設計を 共同で行ったり、あるいは製造方法上の問題に関わっていると 思われる現象の解明を大学の実験装置で行ったりするのが一般 自然科学 - 工学 的な姿だと思います。理工系の場合でも製品に直結するノウハウ 76.95% や詳細情報を大学に出すことはまずありません。大学に開示 されるのは研究対象となる基礎的で一般的な課題であり、それに 関する情報です。ビジネスの研究も恐らく同じです。すなわち、 企業が大学を上手に使うためには、利益に直結している個別 固有情報と一般的な情報をより分け、一般的ではあるが解決が 10 科学技術要覧 平成23年版より (図1) 企業内研究者数 望まれる未知の課題を抽出できる人が企業にいることが重要な 日本企業には、確かに、工学には多数の企業内研究者がいる のです。そしてその人たちは逆方向にも情報を加工できるはず のですが、社会科学には企業内研究者はほとんどいないのです。 です。すなわち、大学で得られた基礎的(=学術的)知識に自社 日本企業はおそらく自社のビジネスの状況を研究することも、 固有の事情やノウハウを結合して企業の具体的な課題解決に 新しいビジネスを開発するために大学を利用することもして 適用可能な知識にする知識の実用化です。 いないのです。 ではそれはどのような人なのでしょうか。絶対的に求められる ところで、わずかに存在する社会科学の企業内研究者とは のは、利益に直結している個別固有情報と一般的な情報をより どのような人たちなのでしょうか?テレビのニュース番組や 分け、一般的ではあるが解決が望まれる未知の課題を抽出する 新聞、雑誌の経済ニュース、経済トピックスのコーナーに○○総研 能力です。そして基礎的、あるいは学術的な知識に現実の諸事 といった民間のシンクタンクに勤める研究者が時々登場します。 情を加えて実用化する能力です。一般に前者は課題発見能力、 彼らがコメントする対象のほとんどが市場動向であり、製品トレ 後者は課題解決能力と呼ばれています。もしすでに知られている ンドです。それらの知識は学術的には主としてマーケティング 基礎的 ・ 学術的知識を応用すれば課題が解決されることが 分野で扱われます。Scopus の“Business and International 分かっているならば、求められる能力は課題解決能力だけです。 Management”の 中 で“Marketing”だ け が 国 別 論 文 受験問題を速やかに解く能力と類似しています。日本が欧米を 被 引用数で 3 位であり、アジア 1 位、対米国論文被引用数 追いかける時代では欧米で生まれた知識を日本の状況に合致 比率で 13% というのはおそらく偶然ではありません。今日本 させるよう応用するために必要な能力でした。しかし技術でも 企業に求められるのはビジネスの勉強ではなく、ビジネスの 社会制度でもそして企業経営でも世界の最先端を走ることを 研究ではないでしょうか。 ENAA Engineering No.133 2013.1 E ■ 2012年10月29日 (月) ・30日 (火) の2日間にわたり、 日本都市センター 会館(東京平河町) において「エンジニアリングシンポジウム2012」 が 開催され、 約3000名近い参加を得て成功裏に終了することができました。 「日本創生に貢献するエンジニアリングの力~日本の底力で、 震災後 のビジネス変革をリードしよう~」 初日は、 国際 を統一テーマとして、 石油開発帝石㈱ 代表取締役社長 北村 俊昭氏による招待講演、 京都大学 松本 紘総長による特別講演、 さらに三菱重工業㈱ 特別 顧問 福江 一郎氏、 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 常務 理事 首席研究員 小山 堅氏、 丸紅㈱ 経済研究所 副所長 チーフ・アナ リスト 猪本 有紀氏により「エネルギーの将来像とエンジニアリング 産業の役割」 をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。 2日目は、 「震災後のエネルギービジネス変革」 「新興国に負けない海外 ビジネス変革」 「世界が評価する日本の底力」 の3つのサブテーマに分かれ、 9セッションとエンジニアリング功労者受賞記念講演4テーマが行われた。 Engineering Symposium 2012 ENAA Report 1 エンジニアリングシンポジウム 2012 2012年10月29日(月) ・ 30日(火) 日本都市センター会館 プログラム 10月29日(月)9:30開場 10月30日(火) 9:15開場 震災後の エネルギービジネス変革 理事長挨拶 久保田 隆 A–1 エンジニアリング協会理事長 千代田化工建設㈱ 代表取締役社長 実行委員長挨拶 林 敏和 川崎重工業㈱ 顧問 ストラテジックアドバイザー イクシス そして次の10年の成長に向けて 北村 俊昭 国際石油開発帝石㈱ 代表取締役社長 特別講演 科学と技術とエンジニアリング、 そして哲学 松本 紘 田中 一成 エネルギーの将来像と エンジニアリング産業の役割 〈パネリスト〉 〈コーディネータ〉 猪本 有紀 三菱重工業㈱ 特別顧問 一般財団法人 日本エネルギー経済 研究所 常務理事 首席研究員 丸紅㈱ 経済研究所 副所長 チーフ・アナリスト C–1 ベトナム ホーチミン市 ベンタイン駅周辺総合開発事業 カタールGTLプラント 建設プロジェクト ㈱日建設計シビル 施設設計部門 設計部長 日揮㈱ 専務取締役 伊藤 俊治 経済産業省 資源エネルギー庁 総合政策課需給政策室長 A–2 赤羽根 勉 B–2 ~日本は世界一の環境エネルギー大国~ 平沼 光 公益財団法人 東京財団 研究員 兼 政策プロデューサー C–2 イオンの成長戦略と アジア事業現地化の歩み 田中 秋人 イオン㈱ 中国・アセアン事業顧問 A–3 東京スカイツリー建設について ~世界一への挑戦~ 田村 達一 ㈱大林組 技術本部企画推進室 部長 B–3 我が国の再生エネルギー戦略と 海洋エネルギー利用の現状 木下 健 東京大学 生産技術研究所 機械・生体系 教授 C–3 サムスンに学ぶ 炭素繊維複合材料で 産業を変革する 石田 賢 エムアイ総研 代表(元日本サムスン顧問) 小田切 信之 東レ㈱ ACM技術部長 エンジニアリング 功 労 者 賞 受 賞 記 念 講 演 京都大学 総長 パネルディスカッション 世界が評価する 日本の底力 B–1 今後のエネルギー政策 再生可能エネルギーの動向 招待講演 福江 一郎 小山 堅 新興国に負けない 海外ビジネス変革 功B–1 大規模免震建物の高品質確保 功C–1 ~武田薬品工業(株) 湘南研究所の建設~ ニュージーランド ナ・アワ・プルア(NAP) 地熱発電所の建設 ㈱竹中工務店 東京本店設計部 部長 構造担当 富士電機㈱ 発電・社会インフラ事業本部 発電プラント事業部 主幹 上村 昌之 功B–2 堀江 理夫 功C–2 羽田再拡張D滑走路建設工事 イスタンブール地区大規模橋梁耐震補強工事 鹿島建設㈱ 土木営業本部 営業部 専任部長 ㈱IHIインフラシステム 海外プロジェクト室 イズミットプロジェクト部 主幹 照沼 敏之 社浦 潤一 ENAA Engineering No.133 2013.1 11 エンジニアリングシンポジウム 2012 招待講演 イクシスそして次の10年の成長に向けて 北村 俊昭 国際石油開発帝石株式会社 代表取締役社長 1948年生まれ 1972年 東京大学法学部卒業 通商産業省入省(現経済産業省) 2006年 経済産業審議官 2007年 東京海上日動火災保険㈱顧問 2008年 早稲田大学大学院 客員教授 2009年 国際石油開発帝石㈱ 副社長執行役員 2010年 国際石油開発帝石㈱代表取締役社長 本年 1 月、国際石油開発帝石株式会社は、わが国需要の 現状は、石油 ・ 天然ガスともに国産の比率が小さく、ほとんどを 約 1 割に相当する生産能力を有するイクシス LNG プロジェ 海外から輸入しています。日本への安定供給という意味では、 クトの最終投資決定 (FID)を行いました。本日は、わが国で 海外の石油や天然ガスを自らの手で安定的に確保していく 初の大規模 LNG プロジェクトのオペレータを目指して歩ん 自主開発をすすめる必要性があります。 できた当社の軌跡とイクシス以降を見据えた今後の挑戦を ご紹介します。 ■ 世界と日本の石油開発企業の違い ■ 欧米の石油開発企業は、自国内の油ガス田を開発することで 1 世界と日本の石油開発の歩み ■ 石油開発の歴史と天然ガスの需要 ■ 資金力や技術力を蓄積し、それを基に海外へ進出する道筋 をたどってきました。たとえば、ノルウェイのスタットオイルは、 1972 年に北海のノルウェイ域内での油田開発に取り組むた 近代石油産業は、1859 年のドレークによるペンシルバニア州 めに設立され、1990 年にメジャーの BP と戦略的な提携を タイタスビル油田の発見から始まりました。日本では、それに 組み、BP の指導を受けて国外への進出を始めました。現在 遅 れること約 30 年、新潟の尼瀬油田の開発 が始まりと では、北米、メキシコ湾、カナダ、北米ではシェールオイル・ガス 言われています。その後、日本の石油産業は、世界の石油 分野にも進出してかなり広範囲に開発を進め、イタリアの 産業に大きな遅れをとることになりました。その理由は、国内 ENI、アメリカのコノコフィリップスを凌ぐレベルに成長してい の低い資源ポテンシャルと、第一次世界大戦直後に欧米の ます。一方、日本企業は国内の資源が乏しく、そこで資金力や 列強が中東の油田を分割支配する体制を確立しメジャーが 技術力を蓄積するという機会には恵まれなかったわけです。 大きく成長したことによります。石油の歴史は、誰が石油を このため、海外の権益を取得する場合も、オペレータとして 支 配してきたかの歴史でもあり、メジャーによる支 配は イニシアチブをとったうえでの進出は難しく、日本企業が産油国 100 年ほど続き、その後、支配権は二度のオイルショックを にオペレータとして乗り込み探鉱開発をする機会はなかなか 経てメジャーからOPECに移り、現在では産油国の権益 与えられませんでした。 国有化が進んでいます。 世界のエネルギー需要は、2010 年に石油換算で約 127 億 12 ■ 大型オペレータを務めることの重要性 ■ トンでした。その内訳は、1 位が石油、2 位が石炭、3 位が天 石油開発は、オペレータであるかないかで雲泥の差が 然ガスで、石油と天然ガスで約 53%のエネルギーを担ってい ある世界です。また、国内の安定供給をめざすには、資源 ます。この需要は、2035 年にはさらに 35%延び 171 億トンに へのアクセスを恒常的に増やしていくことが不可欠であり、 なるだろうというのがIEAの見通しです。その構成は、石油が そのためには、大型オペレータプロジェクトの実績を積み 依然として 1 位、石炭と天然ガスが逆転し、1、2 位の石油と 国際石油開発会社 (IOC)としての地位を向上させることが 天然ガスをあわせると 51%強ということになります。日本の 必要です。その理由のひとつは、資源を持っている国は信頼 ENAA Engineering No.133 2013.1 ENAA Report 1 できるオペレータを求め、信頼できなければアクセスを認め ■ 開発コンセプトと課題 ■ ないからです。第二は、石油の探鉱開発はリスクが高く、世界の 各生産井から集めたガスとコンデンセートをフローラインを IOC 同士が互いにリスクヘッジをする取引が日常的に行われ 通して中央沖合生産処理施設 (CPF)に送り、液分、コンデン ている世界であり、この仲間に入れなければ権益にアクセス セートを分離して貯め、沖合貯油・出荷施設 (FPSO)から するチャンスが極めて限られるためです。権益にアクセス 出荷します。残りは、約 900km の海底のパイプラインを通して できず経験も蓄積できない、経験が足りないので地位が上が ダーウィンの陸上 LNG 液化プラントに運び、コンデンセート、 らない、といった厳しい状況が続いたのが日本の石油開発企業 LPG、LNG に分けて貯蔵し出荷するという開発コンセプト の歴史です。そんなマイナス状況を突破する可能性を切り開 です。その開発には四つの課題がありました。ひとつが、 いたのがイクシスプロジェクトです。日本企業が 100% 権益を 政府の主要許認可の問題、生産面だけでなく環境の許認可も もつオペレータとして探鉱をスタートした初の大型プロジェクト 含まれています。ふたつ目は、技術、スケジュール、コスト等 であり、これを成功できれば IOC の中での地位が飛躍的に プロジェクトそのものの 信 頼 性。三つ目が LNG 固 有の 向上することでしょう。 マーケティング。四つ目がファイナンス。FID を行うためには、 以上の四つにメドがついていないとできませんが、今年 1 月 2 イクシスLNGプロジェクトについて ■ プロジェクトの経緯と概要 ■ の FID までにすべてのハードルをクリアしました。 FEED のフェーズでは、徹底的に先行プロジェクトを分析 することで工程、コスト管理などの重要性を強く認識し、多く イクシスのガスコンデンセート田は、オーストラリアの北西に の教訓を学んでこれに反映しました。そして大きな決断は、 位置しています。1993 年に豪州政府の公開入札が始まり、 予定していた FEED 期間を 1 年間延長したことでした。 1998 年に応札、落札しました。その後、2000 年に試掘で コスト見積とエンジニアリングの精度を向上させなければ必ず ガスコンデンセートを発見、イクシスガスコンデンセート田と 失 敗するという思いから、1 年間の延長を決定しました。 名前をつけ、第 2 次掘削キャンペーンにより現在の規模の また、地元との信頼関係を時間をかけて丁寧に築くことも 埋蔵量を確認しました。イクシスの探鉱が成功したポイントは 延長のもうひとつの目的であり、結果として、地域社会との 四つあります。その第一は、ノンオペレータながら当社前身の 良好な関係が構築できました。 インドネシア石油での経験があり、この地域にそれなりの さらに、許認可では、土地の使用権、ガスパイプラインの 知見があったこと。第二は、当社の技術陣が地質屋としての ライセンスや、豪州では大変厳しい環境の許認可をいずれも 執念、心意気を持っていたこと。第三は、当時のマネジメントが FID までにすべて取得しました。また、マーケティングについ オペレータをやらなければ成長できないという強い意志を ては、これも FID までに、840 万トン全量について、販売相 持ち支援したこと。そして、第四は運があったこと。数年前に 手先と 2017 年から 15 年間の長期の売買契約を結びました。 オーストラリア企業が周辺で試掘に失敗、撤退していましたが、 ファイナンスについては、全体 340 億ドルのうちの当社の 当社の場合は、1回目の試掘キャンペーンですべて成功する 負担額 247 億ドル対して、自己資金とプロジェクトファイナンスを 非常に恵まれた運があったことです。 主体とする外部借り入れのふたつの組み合わせで資金調達を イクシスガス田の規模は、ほぼ東京 23 区の広がりに匹敵し、 考えています。JBIC や NEXI など日本の政府系の輸出信用 地下 4000m にブリュースター層、4500m にプローバー層の 機関をはじめとして、日本や韓国、豪州、フランスの輸出信用 ふたつのガスコンデンセート層が 存在します。また、年間 機関、世界の主要市中銀行のコンソーシアムによるプロジェクト 840 万トンのLNGを 20 年間の長期にわたって生産可能な ファイナンスを活用、ほぼドキュメンテーションが終了し、年内 埋蔵量があります。LPG、コンデンセート等の液分が普通の には契約が成立する見通しです。 プロジェクトよりも大変豊富にあることがイクシスの特徴で あり、プロジェクトの経済性を優れたものにしています。コン デンセートの日量はピーク時に約 10 万バーレルで、これだけ でも豪州最大の油田になる見込みです。 ■ プロジェクトマネジメントの課題と取り組み ■ 現在、EPC 段階に入り、パイプラインの製造も始まってい ます。プロジェクトマネジメントでは、スケジュールの遅れへの 対応、コストオーバーランを最小化するためのさまざまな努力を ENAA Engineering No.133 2013.1 13 エンジニアリングシンポジウム 2012 しました。洋上施設、陸上施設のそれぞれの機器と設備に シェルなどスーパーメジャー以外にはオペレータシップを担う ついて、EPC 契約に基づき、インターフェースも含めて徹底的 ことができないのが現状です。四つ目のフロンティアは、隠れた な工程管理を行います。また、モジュール方式の採用 (陸上) 、 フロンティアとも言うべき既存油田の回収率向上です。通常の パッケージごとの競争入札 (オフショア) 、ランプサム部分の 技術では、現在でも埋蔵量の 30%から 40%しか回収できま 最大化 (全契約の約 75%)などによりコスト削減を図っています せん。逆に言えば、原始埋蔵量の 60 ~ 70%は回収できずに 豪州は環境に厳しい国であることも踏まえ、環境と安全に 地下に残っています。この回収率を 5%上げるだけでも、巨大 は最高レベルの配慮をし、さまざまな環境許認可取得に取り 油田の新規発見に匹敵することから、隠れたフロンティアには 組んでいます。特に温室効果ガスについては、オフセット手段 相当な魅力があるわけです。石油が油層内でどう動いて、どう として、植林、地下貯留 (CCS) 、排出権取得などさまざまな いう形態で取り残されているかを正確に捉える油層キャラクタ 手段を検討しています。また、ローカルコミュニティとの信頼 ライゼーションという技術があります。これはメジャーに勝るとも 関係の構築においては、一例として、ララキア職業訓練校を 劣らない日本の得意分野であり、今回のイクシスプロジェクト 私どもの支援で設立しました。ララキアはダーウィンの主要な でも成功へと導く大きなツールとなりましたが、この技術は、 アボリジニの名前で、第一期卒業生の大半がイクシスプロジェ 我々にとって今後も大きな決め手になると考えています。 クトに就職したと聞いています。 次に天然ガスへのシフトですが、供給面ではシェールガス 当社のイクシスへの取り組みの基本姿勢は、ステークホル 革命がそれを支えていくことになると思います。さらにフロー ダー間の絆、相互信頼を大切にしようということです。プロ ティングLNG、これはLNGプラントを搭載した巨大な船 ジェクトのオーナー同士、コントラクター間、ベンダー間、政府 (FLNG)で天然ガスを液化し、直接LNGタンカーへ出荷 や地元、こういったステークホルダー間の信頼関係を最も する開発方式です。LNG のサプライチェーンには巨額の投資が 尊重しています。 必要で、中小規模のガス田は、せっかく発見されても経済性 が確保できす開発に至らないケースが増えています。この問 3 エネルギーを取り巻く環境の変化と挑戦 ■ エネルギーの3 つの潮流 ■ イクシスプロジェクトは、当社が日本の石油開発企業として 題を解決する方法のひとつがFLNGによる開発です。当社 では、オペレータとしてインドネシアでアバディFLNGプロジェ クトにも取り組んでいます。 そして環境の変化と再生可能エネルギーです。日本勢と 世界に認知される挑戦の第一歩だと思っています。その一方で、 しては、環境対策という切り口からCCSやメタン再生に取組 エネルギーを取り巻く環境の大きな変化への対応も重要で んでいますが、こういった技術が将来的に得意分野になると す。変化として、イージーオイルの払底、天然ガスへのシフト、 期待しています。今後の自主開発資源の確保を目指して、 再生可能エネルギーの三つがあげられます。 当社も、こうしたさまざまな新しい流れの一端を担いたいと 既にイージーオイルは払底したと言われており、資源ナショ ナリズムの高まりとも相まって、アクセスが容易な資源は埋蔵 考えており、エンジニアリング産業の皆様にもご協力をお願い したいと考えています。 量全体のわずか15%という限定された状況になっています。こ のため、今後は、開発が困難なエリア、すなわちフロンティアに 活路を見出していかなければなりません。そのフロンティアの 14 ■ 石油開発の未来に向けて ■ 現在、当社は、世界の上流専業企業の中位にありますが、 第一は大水深域です。北海、メキシコ湾は 300 mを超える大 イクシスプロジェクトやその他のプロジェクトに挑戦して世界 水深はですが、近年は、1500m を超える超大水深でも探鉱が の上流専業企業のトップクラスを目指すことが私たちの中長 進んでいます。今後、大水深域での探鉱開発に世界の石油開 期ビジョンです。近代石油産業が発足して以来、日本の石油 発企業が注力する中で、日本の培ってきた海洋技術が活かさ 開発企業は欧米メジャーの後姿を非常に遠くから追ってきま れると期待しています。ふたつ目は超重質油。粘度が高く流動性 した。当社がイクシスのオペレータ経験を土台に欧米企業に に乏しい重質油特有の課題があるために、操業コスト削減を 肉薄し、上流専業企業のトップクラスを目指すのは、過去 150 含めた上下流技術のパッケージ化が必要です。三つ目は極地、 年間、苦難の歴史を歩んできた日本の石油会社の歴史のなか 北極海です。こちらは残念ながら、現時点ではエクソンや で最大にして最後のチャンスと確信しています。 ENAA Engineering No.133 2013.1 ENAA Report 1 特別講演 科学と技術とエンジニアリング、 そして哲学 松本 紘 京都大学 総長 1942年生まれ 1965年 京都大学工学部卒業 (1967年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了 1973年工学博士) 1987年 京都大学 超高層電波研究センター 教授 2002年 京都大学 京都大学宙空電波科学研究センター長 2004年 京都大学 生存圏研究所 所長 2005年 京都大学 理事・副学長 2008年 京都大学 総長 山中伸弥教授がノーベル賞を受賞されましたことで、ここの シャトルチャレンジャーの事故があり、たくさんの宇宙飛行士の ところ私も慌ただしくしていました。彼が京都大学に来てから、 命が失われたときのアメリカ国民の声は 「大変痛ましい事故 iPS 細胞の研究論文を発表したのが 2006 年です。私は当時、 だった。だが、彼らは勇敢だった。これを乗り越えていかなけ 研究担当の副学長をしておりましたが、これは革命的な研究 ればならない。 」でした。日本はもっと論理的な議論をしてほ 論文になると思いました。医療に役立つようにするとなると、 しいと常々思っています。二極対立ではなく、冷静に科学的 かなり時間がかかります。山中教授一人ではできないので、iPS に議論をしてあるべき姿を描いてもらいたいと思います。 細胞研究のセンターを作ろうと思いました。皆さんご存知の さて、どんなエネルギーがこれから考えられるのか。私は ように、大学は重い組織で、組織を立ち上げるには教授会で 宇宙を専門にしてきましたので、大きな視野で考えてみようと 審議して、普通は 2 年ぐらいかかってしまいます。そんなに 思いました。私が考えたのは 「外エネ」 。これは、地球の外から 時間をかけていては世界と競争できないので、2ヶ月でセンター エネルギーを持ってくることができないか、ということです。 を立ち上げました。すぐに研究所に格上げし、約 200 人の 現代、多くの方が地球上でなんとなく先行きに不安を感じて 研究者やスタッフを招いたことが奏功して、このような成果が います。人口は現在 70 億人、今後はさらに増加し、食料、 あがったと思っています。 エネルギーが足りなくなる問題は避けられません。最終的に 地球上だけで住めないと、私は強く感じています。太陽系を さて今日は講演の機会をいただきありがとうございます。 フルに使うような文明が次にくるだろうと考えています。それ タイトルの 「技術」と 「エンジニアリング」 、このふたつは必ずしも は 30 世紀なのか、40 世紀なのか、いずれにしても 1000 年 一対一ではないと、私は思っていますので、別の言葉で表現 単位です。1000 年前といえば平安の昔ですが、歴史も遺跡も しました。最後に哲学、そんな重々しい話はできませんが、 残っていますし、そう遠い先の話ではないと思っています。 関係したお話をしたいと思っています。 ■ 宇宙を拓くのは、技術の仕事 ■ ■ エネルギーと太陽系を使う文明 ■ 宇宙を知るのは科学の仕事です。宇宙を見る、観測する、 東日本大震災後の日本をどうするかが大きな命題になって それも科学の仕事です。宇宙を再現して理解することも科学の います。いいかえれば、日本のエネルギー政策をどうするか、 仕事です。宇宙を拓く、開拓する。これは技術の仕事といえます。 真剣に考えなければならないという教訓だと思います。原子 私 が 長 年 研 究してきた宇 宙 太 陽 発 電 所 (Space Solar 力に関しては、脱原発か反原発か原発推進か、意見が振り Power Station (SPS) )は、宇宙空間に大きな太陽電池パネル 子のように揺れます。ロケットの打ち上げが失敗すると、新聞 を打ち上げ、発電したエネルギーを無線で地上に持ってくる 各紙の論調から国民から 「700 億円、宇宙のごみ」といいます。 というものです。概念は非常に単純です。太陽電池パネルで 幸い人身事故はありませんが、もし宇宙飛行士が死亡したり、 発電した直流電流を、交流マイクロ波に変換して地上に送り、 大ケガをしたら、猛反対する国民性です。アメリカでスペース 地上で受電し、マイクロ波を直流に戻して送電網に繋ぎます。 ENAA Engineering No.133 2013.1 15 エンジニアリングシンポジウム 2012 原子力発電は発電量 1kw あたり 22g しか炭酸ガスを出しま 問題があると思います。年配の我々の世代は、わが社が生き せんが、震災で原子力発電が停止し、電力会社は、急遽、 延びるかどうかを心配し、若い人に、頭で考えずインターネット 石油や石炭火力発電に切替えています。これらは 1kw あたり をやるならもっとその内容を考えろと言いますが、若い人は 846g の炭酸ガスを排出します。SPSは 20g しか炭酸ガスを 違います。経済発展は望んでいません。家もクルマも欲しくあり 排出しません。温暖化対策としても優れています。宇宙太陽 ません。また、生まれた時からインターネットやパソコンのある 発電も原子力発電と同様に1kw あたり 20g しか炭酸ガスを 生活環境で育ったデジタルネイティブの世代では、13 歳が 出さない優れた発電です。しかも地上の太陽光発電は、太陽 インターネットで起業する時代。世代間のギャップがますます が真上にあるときのみしかフルに発電できないのに対し、 広がっています。こうしたギャップのある世界になっている 宇宙で発電すると、昼夜無関係に 24 時間発電でき、地上 ことも意識した上で、マーケットを考える必要もあると思います。 発電の 5 倍~ 7 倍の発電量になります。それも理論的には 既存の技術を組み合わせることで実現が可能です。 ■ グローバルリーダーの育成へ ■ エンジニアリングという単語はエンジンからきている、と聞い ■ 科学と技術と哲学について ■ 哲学とは何をなすべきか、べき論を語ります。科学は、実験 頼らず、自分のつくった機械で大きな力が得られることがはじ してそれが正しいか、可能か、不可能かを明らかにします。 めてわかりました。熱力学、摩擦学、流体力学、電気工学や 技術は科学のなかで成果を実用化します。経営活動は将来 機械工学などエンジンを作るのはこれらすべてが一緒になら リスクを考慮しながら技術を選択して実用化する。政治は、 ないとできない。総合技術です。エンジニアリングはそもそも総 私たちはこうします、と意志を示します。これらを混同しては 合的に考えることがスタートだったのです。水力発電、原子力 いけないと思います。常々若い方々には、ビジョンをしっかり 発電もそうですが、宇宙発電も、宇宙土木、宇宙科学、建築学、 持ってほしいと私は言っています。 ロボット学、そこにはエンジニアリングのすべてが必要です。 最近の社会の動向を見ていると、大きなスケールを持った 昔は、例えば土木や電気、化学などを専門とする人たちも 技術者がいなくなりました。技術者だけでなく、総合文化人 教養が豊かでした。またかつては自然科学から人文科学 も減ってしまっています。なぜそうなったか。情報通信技術産 まで、全体をみることのできた総合文化人がいました。京都 業の発展が大いに関係していると思います。 大学では湯川秀樹先生や桑原武夫先生といった方々です。 電車の中で見る光景は、誰もが一点を見つめています。 それは、携帯電話です。私は、これを群衆の中の孤独と呼ん でいます。ツイッターやフェイスブックで、アイ デアや情報は一瞬のうちに世界をめぐります。 たとえば、オバマ大統領の就任演説のとき、 世界で 4 ~ 5 億人がツイッターでつぶやい たと言われています。1 羽のにわとりがえさ を食べ始めると、すべてのにわとりがいっせ いに食べ始めるにわとり現象のようでもあり ます。血縁社会から、利便性で動く社会に 変化し、あっという間に情報が届きます。 こういう時代にビジネスも設計をしなければ いけないということを、エンジニアの方も考 えてほしいと思います。ツイッターやフェイス ブックの 「いいね」は、猛烈な勢いです。感覚 的に押しています。しかし、思慮が足りない と思います。充分に考えていません。ここに 16 ています。蒸機やエンジンが発明されたときに、馬や牛などに ENAA Engineering No.133 2013.1 しかし、現代は専門化が進み、理系は特に研究室が増え、 枝を見て幹をみない、そういった専門家が増えています。 ENAA Report 1 今は、専門職が多く、 ジェネラリストが少ないという社会になった。 最終的に、技術は人間関係が基本です。つまるところ、 社会だけでなく会社も家庭もそうですが、総合的に物事を エンジニアリングも必然的に人間社会の成長に関する人間 考えることができる人が著しく少なくなってしまっています。 関係だと思います。これを徹底的に教え込まないとだめだと これで世界に立ち向かえるか。そういう思いをしています。 思います。総合技術者をどう育てるかを考えないといけません。 社会全体を設計する、エンジニアリング業界の人はぜひ考え 研究体質偏重ではなく、基本中の基本を教えるようなことを てみてください。人類の英知を結集した技術、または学術、 していかなければいけません。 社会が抱えている非常に難しい課題を解決するような人材 伊能忠敬は、伊能家に 17 歳で養子に入り、村の名主として がでてこない。産業界も余裕がなくなり、しっかりした基礎的な 活躍後、50 歳で隠居それから奮起して 19 歳年下の高橋 勉強ができている人は少なくなってきました。高度に細分化 至時の門下に入り、西洋天文学、西洋暦学を勉強しました。 されているなかで、全体を知らないとエネルギー問題、環境 55 歳から 17 年間、日本全国を回って有名な大日本地図を 問題は解決できません。細かい専門家ばかりでは解決できま 作った。伊能忠敬が立派なのは、50 歳から勉強を始めたこと せん。リーダーになる人は広い知識をしっかり勉強しておいて です。こういう体制が現在のわが国では、なかなかとりにくい ほしいと思います。 ですね。これをやらないといけないと思います。 そこで、京都大学では 「思修館」という 5 年一貫制の大学院 をつくり、平成25 年 4月からのスタートに向け準備をしています。 自分で考えしっかり実行できる。その実践的能力を伴った 最後になりますが、私がいつも学生にも大事だと言って いること、 「4つのガク力」についてお話しします。ここにおら れる若手のエンジニアの皆さんにも重要なことと思います。 グローバルリーダーの育成を目指します。国際的でプロジェクト 推進能力があり、マネジメント能力を持った人材を創出したい と思っています。人間力、リーダーシップ、柔軟性、難しいこと ばかりですがこれを教えます。 「学寮」 (合宿型研修施設)には、 教員と学生が共に切磋琢磨できる環境を整えます。これは、 オックスフォード大学やケンブリッジ大学のカレッジにある 「学寮」と同じです。1、 2 年目は論文研究や専門科目が中心 で、3 年目は、これらに加え、共通基盤科目として、人文・哲学、 経済・経営、法律・政治、語学、理工、医薬・生命、情報・ 環境に加え芸術の 8 分野からすべてを学んで貰えるように しています。4 年目は特殊研究のフィールドワークにおいて、 1 番目は学力です。これは必要ですよね。2 番目は額力です。 海外へ 「武者修行」に出させます。費用は大学が負担します。 額の後ろにある前頭葉の力です。人間の記憶や意志を司ると 5 年目は特殊研究のPBR:プロジェクトベースリサーチ (発展 ころです。思いやりと気迫です。最近の子供は甘やかされて 型PBL:プロジェクトベースラーニング)を行い、学生自らが 育てられていて、こういったものが足らないと思います。3 番目は プロジェクトを立ち上げるようにします。厳しい教育課程なの 顎力です。あごの力、しゃべる力、食べる力です。最近の子は で、20 人が入学しても修了次は 10 人くらいかもしれません。 食が細い。食べることも大事、言葉で表現することも非常に これらを乗り越えた人は必ずリーダーとして資格があると 大切なこと、あごの力は重要です。 自信を持って送り出すようにしたいと思っています。 最後の4番目は楽力、楽しむ力ですね。仕事していて上司が 楽しくやってないと部下は動きません。大昔に孔子も言ってい ■ 技術とエンジニアリングは人間関係が基本 ■ 最近サステナビリティといいますが、維持するのは非常に ます。 「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を 楽しむ者に如かず」と。人間力は楽しむ力の見せ方です。 むずかしい問題です。これからはサステナビリティからサバイバ 生存学をもとに、どうやったら生き残れるかという人間 ビリティへ、 「生存」ということを考えないといけません。日本は 社会や文明の大設計、デザインをエンジニアリングにぜひやって それをいちばん早く感じています。少子高齢化が進み、資源が いただきたいと思います。それもすべて我々の孫の時代の 不足しているからこそ、我々が世界の教師だと思っています。 ためだと思っています。どうもありがとうございました。 ENAA Engineering No.133 2013.1 17 エンジニアリングシンポジウム 2012 パネル ディスカッション エネルギーの将来像と エンジニアリング産業の役割 〈パネリスト〉 三菱重工業株式会社 特別顧問 福江 一郎 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 常務理事 首席研究員長 小山 堅 〈コーディネータ〉 丸紅株式会社 経済研究所 副所長 チーフ・アナリスト 猪本 有紀 猪本:9月中旬に政府のエネルギー・環 気が必要です。2030 年は随分と先の話 のエネルギーであるシェールガスの開発が 境会議から 「革新的エネルギー・環境戦 なので、現時点では、どうなるかよくわか 急速に進み、供給サイドが拡大している 略」が発表されました。安定供給、安全 らない。しかし、わからないから、何もし 点です。数年前の時点ではアメリカは、 性、経済性、環境適合性を考慮したエネ ないというわけにいかないということで 2030 年には世界最大の LNG 輸入国に ルギーミックスの選択肢に対して、電力の す。そういった点も踏まえて、お二人には なるだろうといわれていました。そこに、 需要供給構造の変革とそのための技術 論じていただきたいと思います。それで シェールの中に閉じ込められていたガスを 革新や制度改革など、エネルギーの将来 はまず小山さんから政策や経済面の視 ハイドロフラッキングという技術により、 像への一定の方向性は示されました。そ 点からお話しいただきたいと思います。 経済性を持って大量にとりだせるように なり、今後、逆にアメリカは LNGを輸出 こで、新たなエネルギー政策の考え方と 実現に向けた課題を整理し、エネルギー ビジネスの変革を論じていただき、エンジ エネルギー政策をめぐる 現状と方向性 また、ガスの価格が非常に安くなってきた ため、石炭や再生エネルギーにも影響を ニアリング産業の役割と今後のビジネス 小山:いま世界で問題になっていること 与えていると同時に、安いガスを使って まず、大切であろうと思うことを2つお のひとつは、エネルギーの価格が高く、 製造業が復活しようとしているなど、大きな 話しさせていただきます。1つは、議論す 非常に不安定なことです。その理由は、 ビジネスの変化が起きています。この るとき時間軸を整理することが大切だと 中国、インド、ASEAN等、新興国を中心に 非在来型ガス資源は世界中にあり、ラテン いうことです。将来に向かって何をする 需要が増えていることです。特に石油の アメリカやアジアにも豊富にあります。 か、将来は何をめざすのか、整理して話 純 輸入量で中国は増加の一途、2020 特に中国に豊富に存在し、このガス資源の す必要があるかと思います。2 つ目は、日 年位にはアメリカを抜いて世界一位の 開発がどうなるかによって世界が変わって 本のエネルギー、電力システムは優秀だ 石油輸入国になるという見通しもでてい くるかもわかりません。 といわれてきましたが、これまで享受され ます。一方供給側は、ここ2-3年大きく 一方、CO2 の排出量はアジアを中心 てきたシステムから一歩踏み出すには勇 変わってきています。アメリカで、非在来型 にして増大しています。2050 年までに 展開を探っていただきたいと思います。 18 する国になる可能 性がでてきました。 ENAA Engineering No.133 2013.1 ENAA Report 1 世界全体で温暖化ガスを半減する大きな 考えています。エネルギービジネスにとっ すと、率直に言って、 「 我慢の省エネ」の 目標がありますが、このままでは減らす ては、変化へのチャレンジであり、大きな 部分、かなり無理をしたところもあったと どころか増えてしまいます。これをどう乗り チャンスであるともいえるからです。 思います。家庭も産業も、経済合理性を 越えるか、最も期 待されているものの 猪本:なかなか広範にわたるお話しでし 超えた部分で、省エネをやったといえます。 一つが、再生可能エネルギーです。太陽 たが、技術面からみていかがでしょか。 家庭では、暑さにもかかわらずエアコンを 光も風力も、これから先、世界で大幅に 福江:全体の流れを技術的な観点から つけなかった。これは単純な我慢です。 拡大します。しかし、自然由来のための いいますと、化石燃料は有限ですし、価格 産 業では、工 場 の 操 業を夜にしたり、 不安定性にどう対応するか。またコストが も常に変動しています。エネルギー源は 週 末にしたりしました。これらを持 続 高く、これをどう抑えていくか。先行する 1つに集中するのではなく、それぞれの 可能な省エネとして織り込むことには ヨーロッパでも試行錯誤が続いていて、 セキュリティを考え、分散していくことが 無理がある可能性がある。例えばLED 決して安楽な道ではありません。さらに 大切だと考えています。LNGに過度に など、省エネ効率の高い製品を積極的に 原子力。日本は福島の事故のあと、不安 依存するのではなく、石炭をできるだけク 取入れていくことは持続可能な省エネに が高まりましたが、実は世界全体、特に中 リーンに効率よく使って、全体のバランスを 繋がると思います。 国、インド、ASEAN で原子力発電所の 保つことが重要でしょう。もう1つは、再生 福江:省エネについては、ネガティブに 建設計画が進んでいます。アジアでの原 可能エネルギーです。現在は、10%です 考え、節電に協力してきたのではないで 子力発電の安全に対して、福島の事故の が、これは本当にどこまで増やせるのか、 しょうか。これからは、もっとポジティブに 教訓を活かして貢献していくのは日本の 日本全体の力を合わせて解決していく 考えるべきだと思います。現在、原子力は 責任ではないかと思っています。 必要があるという認識を持っています。 動かずに、化石燃料も高騰しています。 小山:いろいろな組み合わせを活用し、 産業界にとっても家庭にとっても経済効果 基 本 問 題 委員会やエネルギー・環 境 分散化を図るという意味では、石炭を高 のある省エネは重要だと思います。 会議での議論を経て、3 つのオプションが 効率に使うのは、日本にとっては重要です。 出されました。原子力発電の安全確保、 買手として交渉力をもつという意味でも、 そしてエネルギー安全保障の強化、地球 日本の関連産業界が世界に対して発信 温暖化防止への貢献、エネルギーコスト増 やイニシアチブをとっていける分野である と産業空洞化の防止、この 4 つの視点を と期待できるという意味でも、これから 猪本:それでは、福江さんに技術の側面 もとに、発電電力量に占める原子力発電 政策的な議論のなかに石炭をどう位置 から将来のエネルギーはどうなっていく の割合で、0 シナリオ、15 シナリオ、25 づけるかということが必要だと思います。 かご説明していただきたいと思います。 シナリオが出され、様々な議論が行わ 一方、日本の政策の場合、温暖化も考慮 福江:震災後2年、企業も家庭も頑張り、 れていきました。世論調査では 0 シナリオ に入れる必要があるので、石炭を使う上で、 節電生活で乗りきってきました。これは への支 持が多いようにも見えますが、 CO2 対策をどうするか、総合的な視点、 素晴らしいことです。これからの、エネル 産業界は国際競争力にあたえる影響を 時間軸をもった議論が大事です。 ギー政策では、原子力依存の低減、再生 懸 念しています。原 子力が止まれば、 猪本:東京は、震災に伴い計画停電を 可能エネルギーの拡大、省エネの促進・ 2020 年までに 20 兆円の国富が流失 経験して、省エネ意識が高まったと思い 節電、この3つのキーワードを軸に政策 していくことになる可能 性があります。 ますが、省エネという観点からはどうで が組み立てられて行くと考えられています。 そうしたなかで 9 月に 2030 年代に原発 しょうか。 一方 で、実 現 性、経 済 問 題・産 業 の ゼロをめざすという、 「革新的エネルギー・ 小山:省エネはエネルギー政策の中で 空洞化、そして、エネルギーの安全保障 環境戦略」が発表されました。しかし、実現 最も大事なものの一つです。日本は省エ など、企業経営や家庭に対して不安が のための具体的手法がまだ明確でない ネのトップランナーで、さらなる省エネの かなりあるのも事実です。 うえ、今後もこの問題を引き続き検討し 余地はもうないとまでいわれてきました。 最初に、我が国の電力コストは、輸入 ていく必要があります。このように、わが しかし、昨年関東圏では、 ピークカットでは、 するエネルギー価格に依存するもろい体質 国を巡る環境は厳しく不透明ではありま 二桁を超えるような節電が行われた実績 になっています。統計的にみますと、ここ すが、私自身は、もう一度日本はどうするか があり、もう一度深掘りを検討することは 数年間 GDP に対するエネルギーコストは 再考する時間が与えられたと前向きに 大事だと思います。同時に、分析してみま 徐々に上がっており、更に現在は、原子力 さて昨年の秋以降、精力的に議論され、 将来のエネルギー政策の 動向と課題 ENAA Engineering No.133 2013.1 19 エンジニアリングシンポジウム 2012 コーディネータ 猪本 有紀 福江 一郎 パネリスト 小山 堅 丸紅株式会社 経済研究所 副所長 チーフ・アナリスト 三菱重工業株式会社 特別顧問 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 常務理事 首席研究員 1957 年生まれ 1981 年 東京大学法学部卒業 丸紅㈱入社 海外統括部(現市場業務部)配属 1994 年 丸紅オーストラリア会社 企画開発課長兼財経総務部長代理 1999 年 丸紅㈱ 市場業務部 欧米課長 2003 年 丸紅㈱ 経済研究所 チーフ・アナリスト 2011 年 丸紅㈱ 経済研究所 副所長 チーフ・アナリスト 著書:「進化する香港」 (共著エヌ・エヌ・エー 2007 年)他 経済産業省 不公正貿易政策・措置調査小委員会 委員 1946年生まれ 1969年 九州大学工学部卒業(1971年九州大学大 学院工学研究院 機械工学専攻修了) 1971年 三菱重工業㈱ 入社 2001年 三菱重工業㈱ 高砂製作所長 2002年 三菱重工業㈱ 取締役高砂製作所長 2005年 三菱重工業㈱ 取締役常務執行役員 原動機事業本部長 2008年 三菱重工業㈱ 取締役副社長執行役員 2011年 三菱重工業㈱ 特別顧問 著書: 「エネルギー維新―「フクシマ」 後の戦略を デザインする」 (日刊工業新聞 2011年) 1959年生まれ 1982年 早稲田大学政治経済学部卒業(2001年 英国ダンディ大学PhD課程修了 PhD取得) 1986年 (財) 日本エネルギー経済研究所 入所 2007年 (財) 日本エネルギー経済研究所 理事 2010年 東京大学公共政策大学院 特任教授 2011年 (財) 日本エネルギー経済研究所 常務理事 首席研究員 著書:田辺靖雄編「アジアエネルギーパートナー シップ」 (共著 エネルギーフォーラム2004年) 他 2011年 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会委員 発 電 所を止めて、90%の電力を化 石 エネルギーを補うディバイスであり続ける 銚子沖、福島、遠州灘、北九州沖です。 燃料で発電していますので、3.2 兆円の でしょう。リチウムイオン電池も、今後は その北海道に、現在固定価格買取制度 燃料代が余計にかかっています。原子力 コストダウンが進み、その役割を担う時 で申請のある太陽光や風車をいれるとな 発 電 所 が 稼 働していれ ば 燃 料 代 は が来ると確信しております。 ると、1兆1千7百億円かかる送電網整備 15兆円ですので、単純計算すると、20% 再生可能エネルギーをいれるためには、 が必要と言われています。 電気料金が上がることになります。この 電力送電系統網の強化が必要となりま ように、エネルギー価格の変動により、 すが、整備には時間がかかります。再生 細かな変動は蓄電池等で吸収し、大きな 日本の経済は影響を受けやすい構造に 可能エネルギーを増やすには、5 年、10 年 変動は通常の火力発電で吸収します。 なっています。 ではなく、もっと長期で考え、その方向も これに電気自動車の蓄電池が使えれば フレキシブルに考えていく必要があります。 一石二鳥です。 次に、将来の電源構成についてですが、 20 パネリスト また、太陽光は、天候予測を入れながら、 これから再生可能エネルギーの大量投入 電力のベストミックスは、原子力と石油 最後にCO 2 についてです。1990 年 を図っていく必要があります。再生可能 火力が少し減って、石炭とLNGをうまく から 20%以上削減、2007 年からですと エネルギーは、発電量が大きく変動します バランスさせながら、再生可能エネルギー 30%以上削減しなければいけません。 ので、この変動を補う電源を準備しておく が拡大することで、達成されるのではな 産業部門の削減率 15%とすれば、電力 必要があります。我が国の電力需要の いでしょうか。今、すぐに原子力をゼロに 部門は節電 10%、原単位 25%削減、 ピークは、2時から3時で、その後も夕方 するのは無理があります。再生可能エネ 運輸部門では、ハイブリット等の次世代 までだらだらと高い状態が続きますので、 ルギーの問題点・課題は、買取価格が 自動車にどんどん入れ替え、30%削減し、 太陽光が発電しない時間帯でも、ピークに 高いことです。早急に下げて行かないと、 民生部門は 80%削減して、漸く達成で 近い電力が必要で、バックアップ電源は、 巨 額のインフラ設 備 投 資が 継 続する きる目標です。特に、家庭用と業務用は 再生可能エネルギーを入れる前、すなわち ことになります。 徹底的にやることが必要だと思います。 現 在と同じ容量だけ必 要となります。 洋上風力についていえば、日本で可能 猪本:広範なお話をうまくまとめて説明 当面は、火力発電、ガス発電が再生可能 性が高いのが北海道と津軽海峡、そして、 いただきありがとうございました。送電網の ENAA Engineering No.133 2013.1 ENAA Report 1 チャレンジしなければなりません。 強化が必要と指摘がありましたが、小山 さんもそういう認識ですか。 小山:送電網で注目したいのはヨーロッ エンジニアリング産業への 期待 太陽光発電の分野ではコストダウンと 性能向上で頑張っていく。電気自動車や リチウム電 池、燃 料電 池もあります。 パ、中でもドイツの状況です。ドイツでは、 福島の事故後、メルケル首相が原子力を 猪本:残り時間が10 分くらいとなってし 電 気自動 車が一 番 普及しているのは フェーズアウトして、代わりに節電、省エネ まいました。最後にまとめとして、エンジ 日本、リチウム電 池 の 技 術も日本が をすすめて、再生可能エネルギーを導入し、 ニアリング産業への期待をお二人からお 世界一です。エネルギーの分野で新しい 同時に石炭火力を増強していく政策を 願いします。 イノベーションを起こす。これからが勝負 発表しました。しかし、詳しく見ていきます 福江:4点お話したいと思います。エンジ だと思います。 とむずかしい現実もあります。例えば、 ニアリングという切り口では、まず1点目 小山:日本はエネルギー情勢について、 主力の再生可能エネルギーとして期待さ は原子力だと思います。福島の収拾は、 大変な問題をつきつけられています。国内 れる風力は国土の北部に集中しています。 日本の面子にかけて責任を持ってやる。 の状況も厳しく、外のマーケットの状況 一方、廃止される原子力は南部にある 原子力発電をどうするかの議論は続ける も厳しい。厳しさに包囲されているような ため、南北に3000キロを超える送電網を にしても、国として福島も含めて原子力 感じをもっています。ただ、世界的に著名な つくる、ことが計画されていますが、実際は、 に正面から向き合い、国全 体をあげて エネルギー問題の権威であるダニエル・ 遅れていて目途がたっていません。送電 真剣に取り組む必要があると思います。 ヤーギン氏の最近の講演では、日本の 線の強化はドイツでも早急に解決しなけ 2点目は、エネルギー改革です。世界 石油危 機 以来のエネルギー問題への ればならない大きな課 題です。一方で 中が同様の試練を受けています。原子力 対処法、すなわち、日本にはエネルギー ドイツは、EUという大きな送電網の中で、 をどうするかの問題、省エネや再生可能 資源はないが、頭の中に資源がある、 つまり、 風力発電による電力の増加は近隣地域 エネルギーの問題、ドイツは成功してい 英知で乗り切ってきた、ということが指摘 の電力網全体で吸収されています。他方、 るわけではなく、今からが勝負です。日本が されました。この点は今後も大事です。 南ではフランスから原子力発電による エネルギー改革をどう進めるかその実力 また、これから2035 年までにエネルギー 電力を輸入している。残念ながら日本は が問われています。 分野で、世界全体では31兆ドルの投資が 3点目はコストの問題です。太陽光 必要だとされています。省エネ強化を含め 今後も決して容易ではありません。その 発電のコストは、現状の半分ぐらいが 先進技術導入が進展する場合には、さら ため、基 本的には、日本の中で問題を 適切なレベルとも言われています。コスト に追加で20兆ドルの投資が見込まれてい 解決しなければいけません。長期のチャ を半分にするような厳しい状況に追い込 るなど、この分野には大きな可能性があ レンジになると思います。 んで進めていく。まさに、エンジニアリング ります。英知という資源を活用して大きな 猪本:送電網を作る資金を誰がだすのか 業界の挑戦です。一般的なプラントを考え ビジネスチャンスに挑戦していく、これまで、 が問題になりますね。 れば、アメリカやヨーロッパよりも日本で エンジニアリングがやってきたことです 福江:電力の年間の投資額と道路の年間 作る方が 安いでしょう。太陽光 発電と が、まさにそれを継続することによって、 の投資額ですが、道路は一時 10 兆円を 風車が何故日本では高いのか。コスト面 日本の未来も拓けていくと思います。 はるかに超えていました、電力は多いとき での改善は可能だと思います。 猪本:本日は、エネルギーの将来像につ 島国で、国際的な電力網は存在しておらず、 でも4兆円程度、最近は2 兆円程度です。 最後の4点目は技術イノベーションです。 いて、経済面、技術面、また国際的な視 道路も送電網も同じ生活インフラです。 現在は技術的に初歩的な段階の洋上 点からの考察を踏まえてヒントをいただ 50と60ヘルツの連携が弱いので、連繋 風車ですが、浮体が 4000トン、上の部分 きました。国際 的にも膨大なビジネス 強化、または統一案も出ています。大変 は 1000トンあります。送電線を引っ張って チャンスが広がっていると捉え、チャレン 大雑把な試算ですが、全国を統一しても アンカリングして固定して、風とか台風の ジングではあるけど大きなチャンスでも 10兆円程度といわれています。エネルギー 影響を受けないようにしなければなりま あるという発想で、世の中が変わるとき が本当に大変な時なので、お金がかかる せん。世界中で挑戦していますが、まだ にエンジニアリングとして新しい可能性 といわれていますが、しっかりと目標・予定 だれも完全に成功していません。技術的に を切り開いていただきたい、そして国際 をたてて投資をしていけば、問題の解決 非常に難しいものですが、日本は陸上風 的な競争に勝っていただきたいと思いま は意外と早いのではないかと思います。 力のポテンシャルは少ないので、洋上に す。ありがとうございました。 ENAA Engineering No.133 2013.1 21 ENAA Report 2 エンジニアリング産業研修会 業界セミナー 2012 東京:2012 年12月8日( 土 ) 13:15 ~ 代々木 / 国立オリンピック記念青少年総合センター 大阪:2012 年12月15日( 土 ) 13:15 ~ 天満橋 / 大阪マーチャンダイズ・マート2F 今年で 7 年目を迎える業界セミナーは、12 月8日 (土)に東京会場、12 月15日 (土)に大阪会場で開催された。 第 1部では、業界を牽引してきたトップリーダーの経験を基に、エンジニアリング産業の実際とその魅力、社会的意義を アピールする基調講演が行われた。第 2 部では若手社員が登壇したパネルトークにより、具体的な仕事ぶりや醍醐味などが語られ、 さらに第 3 部では会員企業と学生との懇談会が開催され、当日集まった大学生・院生に向けて、 社会での新たな飛躍を夢見る学生への有効なガイダンスとなり、両会場とも熱気に包まれた。 ※本事業はその一部を㈶JKAの補助を受けて実施したものです。 基調講演 東京会場 川名 浩一 日揮株式会社 代表取締役社長 ●1982年 ●2001年 ●2007年 ●2009年 ●2011年 慶応義塾大学経済学部卒業 日揮株式会社入社 ロンドン事務所長 執行役員営業統括本部新事業推進本部長代行 常務取締役営業統括本部長 代表取締役社長に就任 人類のロマンとチャレンジ エンジニアリング・ザ・フューチャー 日揮株式会社 代表取締役社長 川名 浩一 エンジニアリングという言葉には、 あまりなじみがなく、 実態はどうなのだ 22 人類の課題を解決する エンジニアリング 2枚 が4枚 に 増えていく。30日間で 葉っぱが一杯になり池の中の生物に ろうかと感じている方が多いと思います まず、 私自身がどうしてエンジニアリ が、 エンジニアリングは、 非常に知的な ングに興味を持ったか。 それは、 ローマ あるとき気がついたら池の半分が葉っぱ 産業であり、 かつロマンチックでエキサ クラブの 「人類の危機、 成長の限界」と になってしまった。今日は、何日目か。 イティングなビジネスです。 本日は、 その いう本との出会いがきっかけでした。 答えは、29日目。残りは1日しかない、 エンジニアリングに興味を持っていた 冒頭に、 子供向けの謎々がありました。 という寓話です。その頃、地 球上には だきたいと思っています。 例えば、不忍池、 あるいはモネの絵画 30億人がいましたが、 このまま人口が の池。 そこにハスの葉っぱがあります。 増えれば、 食糧の問題、 水の問題、 エネ この葉っぱは、1日ごとに1枚が2枚、 ルギーの問題、 人類の生存に不可欠な ENAA Engineering No.133 2013.1 光が届かなくなって、 生物が死んでしまう。 ENAA Report 2 地球の限りあるものが枯渇していく。 イノベーションで新しい素材が出来上 ため、若くても責任を持たされるのが そして汚染。 当時は部分的な汚染問題 がります。 それから産業プラント。 例え エンジニアリング業界の大きな特徴です。 があり、人 類の成 長を阻んでいると ば、iPS細胞を、 将来的に医学に役立て 示唆していました。 こうした人類の課題 られ、 患者さんに使われるときには必ず を解決できるのはエンジニアリングし 産業プラントにおいて商品化されてい 世界の人口は増え続け、2050年には かない。 そこで、 私はエンジニアリング、 きます。 多様でエキサイティングなビジ 90億を越えるといわれ、 現在の倍程の そして日揮を選びました。 ネス。 それが我々エンジニアリング産 エネルギーが必要になってくるとされて 業の特長といえます。 います。 私自身も、 エネルギー、 水、 食糧、 エンジニアリングのイメージとは エンジニアリング産業は、 エンジニ エンジニアリングの喜びと醍醐味 夢を切り開くフロンティアとして 資源、 こういったものをいかに供給して いくか。 それが大きな課題だと思います。 アリング協会によると、 「社会インフラ 私たちの喜びはふたつあると感じて また、 アメリカでシェールガスが話題に や石油精製、 製鉄、 発電等のプラントを います。 ひとつは受注したとき。 もう1つ なり、 シェールガスレボリューションとい 対象として企画設 計、調達、施工まで は、 建設して受電して輝いて、 完成して われていますが、 このガスをいかにこれ 一括して請負い、 これらのサービスを 本当にお客さんに喜んでいただいたとき。 からうまく使っていくか。 それも新時代 提 供する産業」と定義されています。 政 府や地元の人達から、いいものが の鍵だといえます。 さらに再生可能エネ 私は、 さらに「時代時代の趨勢に関わ できたありがとう、といわれたときは ルギー。太陽光、太陽 熱、潮力。また、 大きな喜びです。 スマートシティ、 どうやってマネージしな らず、 常にその時代の問題を解決して 日揮が手がけたカタールのGTLプラ がら、 世界と環境にマッチしたかたちで ントは、1兆5千億円位の世界最大の 都市をつくっていくか。 それもエンジニ 具体的には、 どんなイメージか。 ゼネ 規模でした。 1日5万人以上の人が働き、 アリングの世界であり、 役割です。 コンの場合、安全に暮らせる耐 震設 60数カ国の人間が集まりましたが、 計、防 災に強い設 計、あるいはICTを 日本人はたった0.2パーセント。 少数の 可能性です。 EEZ、 排他的経済水域、 使ったインテリジェントな最新建築な 日本人が、 こういう人たちをリードして 聞いたことあると思いますが、 日本は どです。次に新幹線。鉄 道は、世界に プロジェクトを作り上げていかなければ 海に囲まれ、 しかもEEZの面積では世界 誇る日本の看板、 最先端の産業です。 なりません。そのため、人間力が最も で6位。 この海洋資源をどう使うか。 今、 非常に正確な運行を担保できるのは、 求められます。 客先と交渉し、 サブコンと いわれている熱水鉱床。 レアメタルも 日本のエンジニアリングの本領です。 交渉し、 我々が目指すゴールと一致させ 海底からとれるでしょう。 メタンハイド エネルギー関係では、製 油所と天 然 ながら、 クオリティとコストとスケジュール レートといわれるエネルギーも日本近海 ガス。 そのガスを冷却して液化して消 を守っていく。 これが我々のキーです。 には存在しています。 それから宇宙におい 我々人類がめざす夢をかなえる、 そういう 存在である」 というように思っています。 さらに夢のある話、 それは海や空の 費地に持ってくることによって経済合 私の場合、 大学を卒業し、 すぐにイン ても、3万6千キロ上空に静止衛星を飛 理 性 が 達 成できるLNGプラントも ドネシアの現場に行きました。 何も知ら ばし、 電磁波でエネルギーを得る。 そう 日本のエンジニアリング会社は得意と ない状態で、 まさにイロハのイからはじ いうことを真剣に考えている人もいます。 しています。次は、発電プラント。最近 まり、 現地で50人程を部下として管理 まさに、 こういう夢のある新しいイノ ではIGCCといわれるガス化 発 電と しました。 そこで学んだことは、 指示を ベーションを常に目指していきます。 呼ばれている発電プラントもあります。 するときは具体的なゴールをきちんと いわゆるメーカーと違い、 私たちは常に それから再生可能エネルギーでは太陽 示し、 さらにその手順も示しあくまでも 抱えている問題を解決していく、 あるいは、 熱発電。 スペインで私どもが投資した フェアに扱う。 そういったマネジメントの こうありたいと思う社会をつくり出して プラントでは、熱を利用してスチーム 要諦を初めて学んだ時代です。30代 いく。そういうロマンと夢にあふれた タービンを回すものもあります。 太陽光 前半は、 イランの石油精製のプロジェクト ビジネスが、 エンジニアリングだと理解 発電、 あるいはバイオマス発電、 さらに、 にアサインされました。私は文系出身 していただきたいと思っています。 ぜひ、 風力発電や地熱発電、潮力発電など だったこともあり、人事、総務、財務を 皆さんにも私たちと一緒に新しい明るい 様々なタイプの再生可能エネルギーが 統括するマネジャーになりました。 プロ 豊かな社会をつくるチャレンジをして あります。化 学プラントでは、新しい ジェクトは限られたメンバーで取り組む いただきたいと思います。 ENAA Engineering No.133 2013.1 23 エンジニアリング産業研修会 業 界セミナー 2012 基調講演 大阪会場 森崎 計人 株式会社神戸製鋼所 執行役員 資源・エンジニアリング事業部門 ●1983年 京都大学大学院工学研究科修士課程化学工学修了 株式会社神戸製鋼所入社 ●2009年 機械エンジニアリングカンパニー エンジニアリング事業部調達部長 ●2010年 理事、 資源・エンジニアリング事業部門 プロジェクトサポートセンター長 兼資源・エンジニアリング事業部門 プロジェクトサポートセンター調達部長 ●2012年 執行役員 エンジニアリングビジネスの魅力 株式会社神戸製鋼所 執行役員 資源・エンジニアリング事業部門 本日は、 エンジニアリングビジネスの システムです。 筋肉・骨は建屋、 内臓は 核にしながら、 その上流では、 技術開発 魅力と題し、 神戸製鋼の事例や私の体験 機械・装置、 それから血管は電気設備、 やプロセス開発、 プロジェクトファイン を踏まえ、 お話をさせていただきます。 神経は計装設備とたとえることができる ディングを行い、 下流では操業指導、 と思います。 このような様々な機能を メンテナンス、 アフターサービス、 そこから エンジニアリングとは まず、 エンジニアリングについて、 辞書を ひもときますと「多分野に渡る人間の 果たす個々の設備を統合して所定の 得られた様々な情報のフィードバック 製品を生産するような複合体をプラント による技術・プロセスの改良・改善等を と呼んでいます。 行っています。 この一連の流れをマネージ 知恵を結集、 統合し、 一定の課題を達成 また、 我々エンジニアリング業界では、 する科学技術的な活動」 と定義されて EPCという言 葉を頻 繁に使います。 プロジェクト全体のコスト・品質・スケ います。 また、 エンジニアリングビジネスと Eは、Engineering(設 計) 、お客 様の ジュールの最適化を図っていくことです。 は「エンジニアリングという活動を対価 構想や要望にしたがった最適なプロ このサイクルに携わるチームメンバーは、 の対象として提供する、 典型的な知識 セス、設 備 機 器、電 気、計 装、土 木、 文系・理系を問わず様々な専門領域の 集約型ビジネス」 と定義されています。 建 築 の 設 計をすることで す。Pは、 出身者で構成されています。 することがプロジェクトマネジメントで、 そのエンジニアリングのハードとして Procurement(調達) 、 プラントを構成 さらにエンジニアリング会社では、 通常 の成果物は、 大きく二つに分類すると、 する個々の設備や機器をそれぞれの 一定規模のプロジェクトを遂行するとき プラント系とインフラ系に分けることが 専門メーカーに設計製作委託して、 調 にはプロジェクトチームを編成します。 できます。プラント系は、最 近 話題に 達購入することをさします。次にCは、 プロジェクトマネージャーは、 このチーム なっているものでは、 シェールガスの精 Construction(建設) 、設計要求仕様 の最高責任者であり、 オーケストラに 製装置や都市ごみの焼却発電設備が どおりにプラントを組立て、全体が性 たとえると指揮者のような役割を果たし 具体的な例として挙げられます。 一方、 能を発揮するかの確認調整、最後は ます。 各々のチームメンバーの方々は、 インフラ系は新交通システムや羽田空港 試 運 転をすることです。このように 専門の楽器の奏者とたとえることができ の新しい滑走路、 桟橋タイプの滑走路 EPCとはエンジニアリングの一連の ます。様々な分野の専門家の知恵を のような巨大な構造物のようなものが 仕事の流れを表す言葉です。 結集して、 決められたコスト、 納期、 品質を 挙げられます。 プラントを人間の身体にたとえると、 脳はDCS、 いわゆるコンピュータ制御 24 森崎 計人 ENAA Engineering No.133 2013.1 エンジニアリング会 社は、EPCの ゴールとし、困難を乗り越えゴールに 範囲だけを対象にしているかというと、 到達することが、 我々エンジニアリング 大半のエンジニアリング会社はEPCを ビジネスの醍醐味といえるかと思います。 ENAA Report 2 技術を結集して、 当社独自の制御爆破 神戸製鋼グループの ® エンジニアリングビジネス 神戸製鋼グループでは、 製鉄プラント、 原子力関連プラント、遺 棄化 学 兵 器 処理プラント、 都市交通システム、 防災 あり、 プロセスエンジニアとしての設計 技 術、DAVINCH システムを開 発、 業務を経て建設工事から試運転までの 国内・海外で幅広く、 化学兵器の無害 様々な現地での業務を担当しました。 化、安全 確 保という社会のニーズに 特に試運転計画の取りまとめに参画し、 貢献しています。 実際にプラントを運転する経験をし、 また、 この技術の開発、 プラント建設、 最 初の尿 素 の 粒を手にして、多くの 構造物、 廃棄物処理プラント、 水処理 無害化処理・操業、 メンテナンス、 これら チームメンバーと喜びを分かち合うこと プラント、 エネルギー・化学プラントなどを から得られた知見による改良・改善の ができたのが忘れられない出来事で 国内海外において幅広くビジネス展開 一連のサイクルは、 既に、 ご説明したサイ ありました。 しています。 クルの具体的な事例の一つと言えます。 製鉄プラントは、 第1世代が高炉法、 インフラ系の事例として新交通シス 第2世代はDR(Direct Reduction)と テムを紹 介します。市 街 地の短 距 離 いわれる直接還元製鉄法、 そして、 第3 交通や、 空港内のターミナル間の移動に ® エンジニアリングの 魅力とメッセージ エンジニアリングビジネスの魅力とは、 世代の新たな製鉄法であるITmk3 と、 利用されているゴムタイヤ式 車両を 社会貢献ができるビッグプロジェクトに 新たな製鉄 法が次々と生みだされて 無人運転する新交通システム、 駅舎の 携われること、 チームワークによる人と います。 第2世代のDRは世界で70基に ような土木建築系、 信号・配電のような の一体感、 連携を深めることができる 近い納入実績を誇り、 世界シェアでは 総合制御システム系、 そして車両その こと、 ビッグプロジェクトを終えた後の 6割強を誇っています。 さらに第3世代、 ものと様々な分野のパートナーと共同 大きな達成感が得られること、 さらにプロ ITmk3 は 石 炭 ベースの 還 元 溶 融 プロジェクトになるのが通例です。 例えば、 ジェクトを通じて一生ものの人脈が得ら 製鉄法であり、 神戸製鋼が開発、 米国 神戸のポートライナーや六甲ライナー、 れること、そして世界を舞台にグロー のパートナーと共に、 ミネソタ州で商業 東京のゆりかもめなどが身近な事例 バルな活動ができることなどです。 運転を行っています。 ® です。 これらには当社独自の信号通信 そして、 エンジニアリングビジネスの 新しいプロセス、 製造技術を開発する 等の総合 制 御システムが採 用され、 社会的意義は、 エネルギー資源の枯渇、 際は、通常、 実験室レベルから開発を 韓国釜山等の海外にも展開しています。 地球温暖化、 震災復興、 リサイクル、 環境 スタートして、 「パイロット・プラント」 、 さて、 エンジニアリング会社に入ると 浄化など、 このような重要な社会的課題 「パイロット・デモンストレーション・プラ どんな仕事をするのか、 私自身の経験を を解決するために様々な分野の知恵を ント」 、準 商 業 機、商 業 機とスケール 紹介します。 私は1983年に神戸製鋼に 結集し解決に導いていくことであります。 アップしながら商業機として様々な性能 入社し、 当時のエンジニアリング部門に これはまさにエンジニアリング会社が 保証に耐え得る、 プロセス、 製造・保全 配属されました。 そこで最初に担当した 得意とする分野であり、 これこそがエン 技術を完成させていきます。ITmk3 の のは、 すでにプロジェクトを受注して ジニアリング会社に課せられた社会的な 開発は、 まさしくこの流れに沿ったもので、 設計を展開中のマレーシア向けのアン 使命だと思っています。 1996年の開発着手から10年以上の歳 モニア尿素肥料プロジェクト、 当時の 月をかけて商業化レベルに至りました。 契約金額で約600億円という大きな なんといっても人が財産です。社会に 遺棄化学兵器プロジェクトは、 当社 仕事でした。 このプロジェクトに携わった 貢献したい、 グローバルな舞台で活躍 グループが保有する技術を結集した 関係者は、 まさしく国際色豊かな面々 したい、 新たなことに挑戦したい、 コミュ 非 常に ユ ニークなプロジェクトで、 でした。 客先はマレーシア、 そのコンサ ニケーション、チームワークを大切に 戦 時中につくられ、遺 棄された化 学 ルタントは米国企業、 プロセス技術の したい、 そういう人はぜひ我々エンジ 兵 器を無害 化し、安全を確 保すると アンモニアはドイツ、 尿素はオランダ、 ニアリングビジネスのチームメンバーに いうものです。 尿素を粒にするグラニュレーションは なってください。 これからの就職活動、 神戸製鋼グループ内の化学プロセス ベルギー、 現地工事は韓国企業がサブ そして社会人になっても何事にも興味、 技術・原子力分野で培った安全技術・ コントラクトとして対応し、 まさしくグロー 好奇心を持ち、 様々なことにチャレンジ 爆破技術・高圧の圧力容器製造技術・ バルな仲間と一緒にした仕事でした。 する気持ちを、 ぜひ忘れないでほしい 分析技 術、等のグループが保持する 私自身の専攻は化学工学ということも と思います。 ® 我々エンジニアリング会社にとっては、 ENAA Engineering No.133 2013.1 25 エンジニアリング産業研修会 業 界セミナー 2012 業界セミナー 若手社員によるパネルトーク 基調講演の後、東京・大阪会場共に若手社員がそれぞれ 4 名登壇して、パネルトークが行われた。みずほ情報総研の江淵氏 がナビゲーターを務め、若手社員にインタビューするかたちで就職活動の道標となるような興味深い内容で、エンジニアリング 業界の魅力や醍醐味などが浮き彫りにされ、東京 300 人、大阪 150 人に及ぶ学生たちが熱心に聞き入った。 東京 会場 12 /8 大 小さまざまなタンクを建 設して お客様に届けるのが主要業務。配管を 据え付ける工事を車両の配置、クレーン をどう使うかなどの計画を担当。2 年目 に、装置をグレードアップする計画を したとき、1 人で費用や工事の書類を ▼ナビゲーター まとめてお客さんに引き渡せたときは 大きな達成感がありました。 田阪直樹:コスモエンジニアリング㈱ 3PKヤード建設プロジェクト 2007 年入社 (化学科出身) 江淵 弓浩 みずほ情報総研㈱ コンサルティング業務部 上席調査役 労働政策、人的資源管理のコンサ ルテーションを担当。10 年来人材 マネジメントにおいて当協会活動に 取り組む経験を持つ。 現在はパプアニューギニアの液化天 然ガスプラントの機器資材の調達、工程 管理を担当。世界のメーカーとの調整、 世界各地の港に行って積み込みの立会 いなどをしています。将来は、トータル マネジメントができるプロキュアメント マネジャーになりたいと思っています。 杜多尚子:千代田化工建設㈱ 調達センター工程管理ユニット 機器工程管理グループ 2004 年入社 (法学部出身) 26 ENAA Engineering No.133 2013.1 地図に残るような大きな仕事をしてみた い、また、イギリスに留学したこともあり、 日本の技術を世界に広めたいと思い入社。 現在、肥料プラント、ペットボトルなどの石 油化学製品をつくるプラントを担当。三菱 のつくったプラントなら信用できる、と世界 で評価されるようになることが目標です。 二ノ宮裕未:三菱重工業㈱ エンジニアリング本部 環境・化学プロジェクト統括部 環境・化学プラント計画部 化学プラント計画グループ 2011年入社 (化学工学出身) ある食品工場のプラント設計でお客様 から資料集と CD 一枚の資料だけで設計 してくれと言われた。建物の規模やペット ボトル関連施設の詳細まで計算して提案。 お客様からよくやっていただいたと言わ れ、設備を引き渡したとき、清水さんを選 んでよかったといわれたことは嬉しかった。 生江徹:清水建設㈱ エンジニアリング事業本部 生産プラント事業部 計画・設計部 プロセス設計グループ 2007 年入社 (物質応用化学科出身) ENAA Report 2 5 年間ほど水 族 館を作り、水 槽の 水をきれいにする水 処 理プラントの 大阪 会場 12 /15 設計と義岩の設計も行いました。特殊 設備を担っているので、プロジェクトの 中東のトルクメニスタン向けの肥料 中心となって進めているところが魅力 プラントを担当。客先の運転のトレー です。これからも引き続き、大型建築に ニングをしたとき、その後の親睦会で 乾杯するときに 「本当に感謝している。 この友情を保って国のためにも一緒に やってくれ」といわれたことは、この 仕事の醍醐味だと思いました。 挑戦したいと思っています。 高橋良美:大成建設㈱ エンジニアリング本部 ライフサイエンス統括グループ 食品施設グループ 2007 年入社 (環境リスク工学出身) 武田大輔:川崎重工業㈱ プラント・環境カンパニー 化学・低温貯槽プラント統括部 化学プラント部 2007 年入社 (応用化学科出身) 入社 4 ヶ月目にカタールへ 10 ヶ月間の 研修に行き、そのとき、海外の人たちと 一緒にできる仕事が魅力だと感じました。 大きい機械をつくりたい、さらに海外 で仕事をしたい、そして一人で多くの こと、全体に関わる仕事がしたい、と いうのが入社の動機。海外ではインド で製 鉄プラントを担当。製 鉄関連の いいところは、1 基納めたら自分の名前 海外では、設計でもコミュニケーション 不足からミスが起こるので、思ったこと をはっきり伝えることが大切だと学べた のも大きかったと感じています。 西内俊平:東洋エンジニアリング㈱ プラントライフサイクルプロジェクトグループ 2010 年入社 (機械材料系出身) が残るとこだと思っています。 島村智之:スチールプランテック㈱ 第二技術本部 圧延技術部 プロセス機器グループ 2008 年入社 (機械創造工学出身) エンジニアリング業界への理解を深め、 より具体的に各企業を知る懇談会も盛況。 本業界セミナーが東京・大阪の会場で行われるようになって 3 年目となる。今回もそれぞれの 会場で基調講演、パネルトークの後、30 社に及ぶ参加企業と学生との懇談会が行われた。学生 たちは、エンジニアリング業界の実際の姿をさらに明確に把握するとともに、各企業の特長と魅力を 肌で実感。担当社員と学生が熱心に会話するシーンが多く見られ、熱のこもった懇談会となった。 (文責:事務局) ENAA Engineering No.133 2013.1 27 ENAA リポート③ 東南アジアにおける 協会活動の強化 ミャンマー及びベトナムに おける日本型プロジェクト マネジメントセミナーと 業界紹介セミナーの実施 スピーチする筆者 当協会の会員企業は、日本企業の ミャンマー及びベトナムにおいて、プロ 豊富な資源を有する 「フロンティア」 です。 中でも最も海外事業活動を重視して ジェクトマネジメントセミナーと業 界 ミャンマーについては、日本企業のみな おられる企業であり、その事業活動の 紹介セミナーを実施いたしました。以下、 らず、欧米企業や中国・韓国企業なども 焦点の一つは東南アジアです。 簡単に概要をご報告いたします。 大きな関心を持っており、日本企業が 当協会としても、2009 年以来、タイ、 マレーシア、フィリピンで、主に日系企 業でプロジェクトに関与する実務担当 者を対象としてトレーニングコースを 実施してまいりました。 1. ミャンマー及びベトナムにおける 日本型プロジェクトマネジメントセミナー ①ミャンマーにおけるセミナー ミャンマーは、皆様ご存じのとおり、 さらに、会員企業の海外事業活動を 民主化が急速に進んでいる国であり、 一層支援するため、2012 年 11月に、 また、日本企業にとって天然ガスをはじめ ミャンマーで活躍するためには、日本企 業のもつ素晴らしい 「プロジェクトマネ ジメント手法」をミャンマーの人々に PR することが重要と考え、今回のセミ ナーを企画しました。 11月 9 日にはミャンマー商工会議所 連合 会 (UMFCCI) 、10 日にはミャン マー・エンジニアリング・ソサイアティ (MES)でセミナーを開催いたしました。 講師は、協会事務局及び国際協力委 員会から 6 名の方にお願いしました。 セミナー終了後に行ったレセプション では、MES の U Win Khaing 会長から、 当協会と MOU を結ぶなどして、連携を 深めていきたい、との発言がありました。 ②ベトナムにおけるセミナー 成長著しく社会インフラの需要の多い ベトナムは、日本企業にとって重要な 市場であり、会員企業の直接投資も 年々増加しております。 ミャンマーと同様、他国の企業に打ち 勝っていくためには、日本企業の優れた 「プロジェクトマネジメント手法」を PR することが重要である、との在越大使館 MES (ミャンマー)との会合風景 28 ENAA Engineering No.133 2013.1 のご指導もあり、今回のセミナーを企画 いたしました。 11 月 29 日に、ハノイで実 施した セミナーでは、約 231 名の参加者が 集まりました。当協会が実施したアン ケートによれば、回答者の過半数が 本セミナーを素晴らしい (excellent 又は very good)と評価しており、96%が 「このセミナーを同僚や友人に推薦し たい」と回答しています。また、ベトナム 建 設 省からは、 「今後の 継 続実 施を 話し合いたい」という申し入れがあり、 共催者であるベトナム・エンジニアリング・ コンサルタント協会 (VECAS)からは、 ホーチミンなどほかの都市でも実施し てほしい、との要請がありました。 2. ベトナムにおける学生向け業界 日本型 PM セミナー(ミャンマー) 紹介セミナー 会員企業の海外展開が 進む中で、 現 地における優 秀な人材の 確 保が 一 つ の 課 題となっています。また、 「Global 採用」ということで、日本人か 外国人かに関係なく、優秀な人材を確保 しようという動きも広がってきております。 こうした動きを踏まえて、会員企業の 進出の著しいベトナムにおいて、学生 向けの業界紹介セミナーを実施いた しました。 実施に当たっては、日本に留学経験 のある学長がおられるベトナム国家 業界紹介セミナー(ベトナム・ダナン) 大学ハノイ校 (11月 3 日)とダナン大学 (11月 5 日)を選び、会員企業 8 社 (ダ いただき、ベトナム人を採用、育成する エンジニアリングという意味が学生に ナンは 6 社)の参加をいただき、ハノイ 際のキーポイントをお教えいただきま も理解してもらえた」といったご意見を では約 250 名、ダナンでは約 110 名 した。 (藤井様からは、3月27日 (水) に、 頂きました。 の学生の参加を得ました。 東京において講演会をしていただくこと 学生向けセミナーの実施に先立ち、 となっております。 ) 参加した学生からも、セミナー全体 の感 想として、 「 期 待以 上であった」 ベトナムで長年人材関係の仕事をして 参加いただいた企業の皆様のご意見 おられるベトナム日本人材協力センター は、 「思ったより英語の能力が低かった」 (VJCC)のチーフアドバイザー藤井 といった意見もあるものの、 「学生の 今後は、学生数の多いホーチミン市 やる気をひしひしと感じ、採用の手ごた での開催などを含め、検討してまいり 「ベトナム人材と人材育成を支援する えを実感できた」 「 学 生とのコミュニ たいと思っております。 VJCC の活動」と題する講演を行って ケーションを図ることができ、実際の 孝男様から、参加企業様を対象として、 「満足した」が多く見られました (ハノイ: 62%、ダナン:75%) 。 (当協会専務理事 前野 陽一 記) ENAA Engineering No.133 2013.1 29 ピックアップ最新トレンド 会員のひろば Engineering Front バイナリ発電設備による 低位排熱利用について DATA 株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス プラント事業部 地熱および石油化学プラントなどの低位排熱の有効利 [本社] 兵庫県神戸市灘区岩屋北町4-5-22 [URL] http://www.shinkoen-m.jp 図1.「地熱フラッシュ発電設備へのバイナリ発電設備の増設例」 用の観点から最近注目されているのが、 バイナリ発電です。 当社では、 (株) 神戸製鋼所の製品であるラジアルタービンを 用いた1000 ~ 5000kW級のバイナリ発電設備の基本設 計を含むEPCに対応しています。 たとえば地 熱 発 電では、 一次 流 体である地 熱としての スチームは、 直接タービンに導入し発電することが可能ですが、 地熱としての熱水は、 このままではタービンを駆動させること はできません。 そこで、 熱水を温熱源としてイソペンタンなど の二次流 体となる中間媒体を沸騰 気化させ、 これにより タービンを駆動、 発電を可能にするものがバイナリ発電です。 (図1参照) タービン駆動後の中間媒体の蒸気は冷却塔など の冷熱源により凝縮液化させ、 再度、 温熱源と熱交換させる よう循環使用することで閉サイクルとでき、 いわゆるバイナリ サイクルとなります。 図1の左側は、 地熱のシングルフラッシュ発電の例です。 この例では地熱スチーム をフラッシュ分離した残りの熱水は、 そのまま還元井に戻すのが一般的ですが、 この熱水を温熱源と見て、 図1の右側に示すとおりバイナリ発電設備を増設 することができます。 図2.「バイナリ発電による低位排熱利用の例(蒸留塔コンデンサ排熱利用)」 バイナリ発 電は温 熱 源と冷 熱 源の 温 度 差を利 用しま すので、温熱源が必ずしも高温である必 要はありません。 たとえば、液 化 天 然ガス(LNG)の受入基 地にてLNGを 海水により気化させる際に、 海水(25℃程度) を温熱源とし LNG(大気 圧下沸点-162℃) を冷熱源として中間媒体を 循環させる冷熱発電は神鋼グループにて建設したバイナリ 発電の一種です。 また、 温熱源も地熱に限定する必要はなく、 石油化学プラ ント等における蒸留塔のコンデンサを、 いわゆる低 位排熱 の温熱源とみることができます。 たとえば、 温熱源をコンデンサ の90 ~ 120℃の熱源とし、 冷熱源を冷却水(25℃程度) と 図2の左側は、 石油精製などの蒸留設備の例であり、 このコンデンサが低位排熱の 温熱源となり得ます。 この温熱源にバイナリ発電を適用した例が、 図2の右側です。 蒸留塔のコンデンサに替えてイソブタン蒸発器を設置し、 中間媒体のイソブタン 蒸気をタービンに導入し発電できます。 して、 中間媒体を適切に選定することでバイナリサイクルを 適用した実績もあります。 (図2参照) なお、2011年度に上市された(株) 神戸製鋼所の「マイク ロバイナリ」 (送電端出力60kW) は小規模のバイナリ発電 設備をコンパクト化、 標準化した商品です。 30 ENAA Engineering No.133 2013.1 ○この技術・工法の問合せ先 営業本部 プラントエンジニアリング営業部 TEL.078-881-3252 FAX.078-881-3375 プラント事業部 プロジェクト部 TEL.078-881-3416 FAX.078-881-3392 会員のひろば ピックアップ最新トレンド Engineering Front 【 保 温 のメン テ ナンス 革 命 】 CUI抑制 安全・安心の 石油精製、 石油化学プラント、 発電所等の多くは建設から 30年以上経過し老朽化が 進み、 保温材下配管外面腐食 (CUI) に起因する配管からの漏洩事故の危険性が増大して DATA ニチアス株式会社 [本社] 〒105-8555 東京都港区芝大門一丁目1番26号 [URL] http://www.nichias.co.jp/ 新保温材料パイロジェルTMXT ●シリカ超微粒子(エアロジェル) を 繊維に含浸させたフェルト状の断熱材 います。 外装材の隙間から雨水が浸入すると、 保温材は水を ●トップクラスの断熱性能 吸い込み、 配管外面に水膜が形成され腐食が進行します。 ●水蒸気透過性 ●はっ水性 e’ -AIM ®(エコ-エイム) 工法は、 既設の配管保温において 雨水の浸入を防ぎ、 保温材の乾燥状態と断熱性能を維持し、 配管をCUIから守る画期的な工法です。 使用する保温材料は、 はっ水性と水蒸気透過性の2つの イメージ 特徴を持つ新材料パイロジェルTMXTです。 施工法はいたって 簡単で、 従 来のけい酸カルシウム保温材等の上にパイロ ジェルTMXTを巻きつけ、 その上に新しい外装材を取り付けて 完成です。 内部温度が上昇してけい酸カルシウム保温材等に 浸み込んだ水が蒸発して乾燥するとともに、 パイロジェルTMXT パイロジェルTMXT のはっ水性が雨水の浸入を防止します。 e’ -AIM ® (エコ-エイム) 工法は、 蒸気配管等では既設外装材 を取外す必要は無く施工でき、 また右図の様にけい酸カル けい酸カルシウム 保温材等 シウム保温材等の上からパイロジェルTM XTを直接巻きつ けることにより50℃という低い温度でも確実に保温材が 乾燥します。 新規外装材 e’ -AIM ®(エコ-エイム) 工法は、 新設の配管保温にも適用 できます。中 性 子 水分 計を使 用した 保 温 材中の 含 水 率 測定等による配管設備の維持管理と併せて、 ライフサイクル コスト(LCC) の低減に寄与します。 e’ -AIM ®(エコ-エイム) 工法は蒸気配管等の省エネルギー ※「パイロジェルTMXT」 は米国Aspen Aerogels社の製品です。 「e’ -AIM」 はニチアスの登録商標です。 「パイロジェル」 は米国Aspen Aerogels社の商標です。 にも大きな効果を発揮し、 放散熱量、CO2排出量削減に 貢献します。 当社はe’ -AIM ® (エコ-エイム) 工法の普及を通じ、 安心・安全の設備構築と省エネルギーの実現に貢献したい と考えております。 ○この技術・工法の問合せ先 工事事業本部 エアロジェル事業推進チーム TEL.03-3533-7825 FAX.03-3538-9768 工業製品事業本部 省エネ製品技術開発部 TEL.03-3433-7237 FAX.03-3438-4728 [URL]http://www.nichias.co.jp/ ENAA Engineering No.133 2013.1 31 Pastorale 海洋写真家 中村 庸夫 パストラーレ なかむら つねお Marine Photographer : Tsuneo Nakamura 『氷山』 氷山は海水が凍ったものではない。 陸に降り積もった雪の上に、さらに大量の雪が積もると、 重さの圧力で長い年月の間に氷化して固まる。南極大陸で は、何千年も雪が降り積もると、千 m を超える厚さの氷床 となる。氷床は標高の高い内陸から徐々に海岸に移動し、 海に張り出して浮かぶ棚氷となる。そして、割れて切り離れ て海に浮かんだものが氷山なのだ。南極海に浮かぶ水面 上の高さ数百 m もある大きな氷山の場合、5,000 年もかけ されている。氷山の氷は圧力を受けて密度が高く、硬いた め、ぶつかれば鋼鉄製の船体も簡単に割れてしまう。 こんな氷山を水不足のアラブの砂漠地帯に運び、水資 源にしよう、という考えがある。砂漠地帯の沿岸では、海水 の塩分を取り除き真水を作っている。しかし、脱塩法は高コ て雪が固まり、海に流れ出たものとされる。 ストで多くのエネルギーを必要とし、大気汚染、温暖化の の氷のかけらでオンザロックを飲む。氷の中には、積雪時 トン、長さ 1km ほどの大きさの氷山を、大きなタグ・ボー グラスの中で氷が解ける時、気泡が圧力から解放され、 横切り、灼熱のアラブまで運ぶ間に溶けてしまうのでは 私は、南極に行く時、ウイスキーとグラスを持参し、氷山 にすきまに入った空気が圧縮され、閉じ込められている。 ピチピチと鳴りながら浮かび上がってくる。数千年も前の空 気の泡、溶けた水は紀元前のミネラル・ウオーター、だから 氷山の氷のオンザロックはロマンに満ち、格別に美味しく感 じられるのだ。 氷山にまつわる悲劇もある。船が座礁する事を英語で オンザロックと言う。タイタニック号が衝突したのは、グリーン 原因ともなっている。そこで、10 年ほど前から、重さ 1 億 トで曳航してこようと提唱されている。南極海から赤道を ないか?と思われるが、約 1/3 は残るという。 しかし、氷山の曳航方法、専用の船舶、氷山を格納する プラントなど解決 しなければならな い様々な技 術 的 問 題もある。さら に、大 量 の 冷 た ランドから流れ出た氷山だ。当時、客船による大西洋最速 い 真 水 がもたら えようと無理な航行をしたことが事故の遠因との説もある。 も懸 念 され、実 海上に見えるのはごく一部に過ぎない。タイタニック号は、 ない。 横断記録(ブルーリボン賞)が争われており、それを塗り替 「 氷山の一 角」の言 葉 通り、氷山の 6/7 は水 面 下で、 32 氷山との衝突はかわしたが、海中に隠れている部分に右 舷船底がオンザロックし、船体が損傷して浸水、沈没したと ENAA Engineering No.133 2013.1 す環境への影響 現 には 至ってい 平成25年 新年賀詞交歓会 開催される。 1月 7 日午後3時 30分より ANA インターコンチ ネンタルホテル東京において、平成25年新年賀詞 交歓会が開催されました。 久保田理事長の挨拶、来賓の菅原経済産業省 製 造 産 業 局 長の挨 拶、理 事 長の乾 杯の音 頭で 始まった交歓会は、官庁・関連団体関係者、会員 企業の代表者等 800 名を超える出席者で大いに 賑わい、例年にも増して活気に溢れ、新年の門出に ▲会場入口にて、参列者をお迎えする、 中央より久保田理事長、左に前野専務 理事、右に宮川常務理事 相応しい賀詞交歓会となりました。 菅原製造産業局長の来賓挨拶 新年を迎え、新たな思いで創造への挑戦を続けて、エンジニアリング産業の更なる飛躍を共に実現しましょう、と挨拶する久保田理事長 編集後記 ENAA Engineering 2013 No.133 エネルギー、生産設備を含めた人間の社会生活に必要なインフラ建設に携わる我々 【広報部会「広報誌編集分科会」】 エンジニアリング業には、常に社会の要求(コト)とそれを満たすコア技術(モノ)に目を 分 科 会 長 : 岸本 健夫 配り、コトとモノの双方向橋渡しをし、高次の産業・インフラシステムをデザインするアーキ 員 : 浅川 時生 委 テクトとしての役割を果たしていくことが求められています。このようなミッションを成就す るためには、自身の課題発見能力の向上や、案件組成に際して、初期の段階から ファイナンスセクターのような他のビジネスセクターとの共創を行うなど取り組むべき多く の課題があると思います。 新春対談では、JBIC 渡辺副総裁をお迎えし、①世界経済の見通しと、それがエネル ギーを始めとするインフラ投資に与える影響、②我が国がグローバル社会で存在感を より一層高めていくための政府、JBIC、エンジニアリング産業の役割、③エンジニアリング 産業の海外展開、業容拡大に向けての JBIC の支援策、④ JBIC とエンジニアリング 協会の関係強化、⑤グローバル人材の育成などについて、大変示唆に富んだご発言 事 発 (IHI) 坂田 文彦 (荏原製作所) 栗原 昌司 (大林組) 斎藤 俊哉 (鹿島建設) 広常 雅也 (JFEエンジニアリング) 野口 慶一 (石油資源開発) 大久保 澄 (大成建設) 川腰 浩文 (東洋エンジニアリング) 笠原 文東 (日揮) 河野 浩一 (三菱重工業) 局 : 小倉 三枝子 行 : 一般財団法人エンジニアリング協会 〒105-0001 を頂きました。 東京都港区虎ノ門3-18-19(虎ノ門マリンビル10階) TEL. 03-5405-7201 FAX. 03-5405-8201 これらのご示唆を、是非業界の次のステップアップに役立て、2013 年を飛躍の年に したいものです。 務 (千代田化工建設) (岸本 健夫) http://www.enaa.or.jp/ 制 作 : 東洋美術印刷株式会社 ENAA Engineering No.133 2013.1 33 一般財団法人 エンジニアリング協会 105-0001 東京都港区虎ノ門3-18-19(虎ノ門マリンビル10階) TEL 03-5405-7201 FAX 03-5405-8201
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