事例報告 KIT Progress№24 №24 KIT Progress 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー Intensive Summer Seminar Aiming to Train Designers of Composite Aircraft 田中基嗣,岡部朋永 Mototsugu TANAKA, Tomonaga OKABE 機体重量の 50%に複合材が使用されている Boeing 787 が就航し,次世代型の超音 速旅客機の国内開発が期待される中で,複合材を用いた航空機設計について学ぶ機会 はほとんど無いのが現状である.しかし,複合材航空機を設計するためには,空力・ 構造・材料・成形をトータルに理解した人材の育成が急務となっている.そこで,筆 者らは,包括共同研究契約を締結している金沢工業大学の材料システム研究所および 航空システム研究所と東北大学の次世代航空機研究センターの共催で,複合材航空機 の設計・開発に関する基礎的内容を講義・実習を通じて修得することを目的とした夏 期集中型セミナーを開始した.本セミナーの対象者は,本学および東北大学をはじめ とする大学の機械系の修士・学部学生や関連企業の研究者・技術者である.本稿では, この取り組みを紹介する. キーワード:夏期集中型セミナー,技術者育成,複合材航空機設計者 In recent years, Boeing 787, where composite structures are applied to 50 % of total weight, went into service. As next step, the domestic development of next-generation supersonic transport is desired. However, there is scarcely no chance so far to study aircraft designing using composite structures. In order to design composite aircraft, it is imperative to develop human resources, who totally understand aerodynamics, structures, materials and molding. Therefore, authors incubated an intensive summer seminar, aiming to enable young students and engineers to master basic contents on designing and development of composite aircraft through lectures and practices. The main targets of this seminar are undergraduate and graduate students of Kanazawa Institute of Technology, Tohoku University and other Universities. Young engineers of affiliated companies are also target persons. In this paper, we introduce this intensive summer seminar. Keywords: Intensive seminar, Engineer education, Composite Aircraft 1.はじめに 「複合材料」とは,複数の素材を物理的・化学的に組み合わせた材料のことである.これにより,素 材の長所同士を兼ね備えた材料,素材の欠点を補いあった材料,素材単体では発現しえない新しい特性 を発現できる材料,などを創製することが可能である.このような複合材料の中でも,近年,最先端の 分野での適用が拡大しているものとして,繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)が挙 げられる.これは,エポキシ樹脂などのプラスチックを炭素繊維やガラス繊維などで強化した複合材料 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 203 であり,炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は特に「軽くて強い」特性 を有している.一般的に,CFRP は,繊維を一方向にひきそろえて樹脂を含浸・半硬化させた「プリプレ グ」と呼ばれるシート状素材を,任意の方向に重ね合わせて焼き固めた「積層板」と呼ばれる状態で用 いられることが多い.これは,プリプレグの重ね合わせ方を制御することによって,材料特性の異方性 を設計することができることを意味している.このような CFRP をはじめとする先進複合材料は,最新 の旅客機である Boeing787 において機体重量の約 50%に用いられており,航空機構造の軽量化に寄与し ている.また,最近では,ナイロンやポリプロピレンなどの熱可塑性プラスチックを用いた CFRP を自 動車の一次構造部材として適用する研究・開発 1), 2)が盛んにおこなわれており,金沢工業大学を中心と する文部科学省革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM) 「革新材料による次世代インフラ システムの構築」プロジェクトにおいては,インフラ分野への適用が検討されている.このように,自 動車やインフラ分野などへ複合材料の適用範囲を広げるためには,航空機分野などで確立・蓄積された 知見・ノウハウを有効に応用することが重要である. しかしながら,航空機構造への複合材料適用にあたっては,従来の金属材料による設計コンセプトを 踏襲したアプローチがなされており,異方性を設計可能な複合材料のポテンシャルを最大限に引き出し たアプローチはいまだに確立されていないのが現状である.特に,等方性組織を有する金属材料に比べ て,CFRP のボルト穴部における応力集中度は極めて高く,この部分の厚さを増大させることで問題が 生じるのを回避しているケースでは,むしろ,金属材料構造よりも CFRP 構造のほうが構造重量が増す ような状況もあり得る.従来の金属材料による航空機設計においては,重要な要素である空力・構造・ 材料・成形(加工)を別々に検討し,それらの最適解周辺でのすりあわせによってベターな解を選択す ることが可能であった.しかしながら,CFRP をはじめとする複合材料においては,充分な空力性能を 発現可能な「カタチ」を実現できる成形方法の制約があるだけでなく,成形方法が異なると材料特性が 大きく変化する,寸法依存性などのためにクーポンレベルの材料強度と構造強度が異なる,といった状 況が存在する.そのために,空力・構造・材料・成形を個別に最適化する従来の手法では,材料のポテ ンシャルを引き出した複合材料航空機を設計することは不可能である.したがって,空力・構造・材料・ 成形をトータルに理解した人材を育成することが必要不可欠であると言える. そこで,筆者らは,包括共同研究契約を締結している金沢工業大学の材料システム研究所および航空 システム研究所と東北大学の次世代航空機研究センターの共催で,複合材航空機の設計・開発に関する 基礎的内容を講義・実習を通じて修得することを目的とした夏期集中型セミナー「夏の学校 -複合材 航空機設計入門-」を 2014 年に開始した.本稿では,この取り組みを紹介する. 2.第1回「夏の学校」の活動実績 2.1 実施概要と参加者 本セミナーでは,空力・構造・材料・成形をトータルに理解した人材の育成に必要となる複合材航空 機の設計・開発に関する基礎的内容のうち,金沢工業大学の材料システム研究所および航空システム研 究所と東北大学の次世代航空機研究センターの教員で担当可能な科目群を表1のように設定した.この うち,空力に関係するものは「航空機設計論」 「航空機概念設計および演習」であり,構造に関係するも のは「構造力学,有限要素解析およびその演習」である.また,材料に関係するものは「高分子の力学」 「粘弾性」 「複合材料の力学」であり,繊維強化プラスチックの母材である高分子の力学から理解をはじ め,複合材料の力学へとつなげる狙いとした.さらに, 「成形」に関係するものは「複合材料成形」であ り,講義で学んだ成形方法のうちの1つを実際にやってみて,複合材料成形の難しさと勘所を体験して もらう狙いとした.加えて, 「最適設計」という科目を設定し,空力・構造・材料・成形それぞれの最適 解をすりあわせるための基礎的概念について修得してもらう狙いとした. 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 204 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 表1 第1回「夏の学校」の時間割表 日程 1 8:30-9:30 午前 2 3 9:40-10:40 10:50-11:50 8月18日 月 8月19日 火 8月20日 水 8月21日 木 8月22日 金 4 12:00-13:00 複合材料成形 廣瀬康夫 斉藤博嗣 航空機概念 設計演習 片柳亮二 航空機概念 設計演習 片柳亮二 有限要素解析 演習 岡部朋永 有限要素解析 演習 岡部朋永 航空機概念設計 宮野靖 複合材料の 力学 田中基嗣 複合材料の 力学 田中基嗣 片柳亮二 青柳吉輝 最適設計 佐々木大輔 14:00-17:00 航空機設計論 粘弾性 高分子の力学 午後 構造力学 有限要素解析 岡部朋永 構造力学 有限要素解析 岡部朋永 本セミナーの開催通知を日本複合材料学会および日本材料学会・複合材料部門委員会の会員メーリン グリストに配信したところ,第1回のためにトライアル的な要素を多く含む内容であったにもかかわら ず,本セミナー開催通知に対する反響は大きかった.日本複合材料学会所属のある韓国企業からは,英 語でのレクチャーを実施する予定はないか,問い合わせがあったほどである.結果として,学生21名 (金沢工業大学・東北大学・東京理科大学・山口大学・東京大学・静岡大学) ・企業の若手研究者4名(東 レ・住友ゴム・サカセアドテック・羽生田鉄工所) ・本学革新複合材料研究センターの研究員2名・大学 教員5名(金沢工業大学・東北大学・山口大学・琉球大学)の合計32名の受講者を得ることができた. 特筆すべきは,静岡大学2年生の学生が,鳥人間サークルの活動のための勉強になるならと個人で参加 してくれたことである. 2.2 講義および実習の内容 2.2.1 航空機設計論 セミナーの最初に,航空機設計を貫く概念設計の考え方を,実際に航空機の設計に携わってこられた 金沢工業大学・航空システム研究所・所長の廣瀬康夫教授に講義いただいた(図1) .本項目では,航空 機の設計に関する基本的な事項について講義を行った.すなわち,揚力発生の原理と航空機に働く力に ついて説明し,重量軽減と抵抗低減が航空機にとって極めて重要であることを説明した.次に,航空機 の形状に関する主要パラメーター(アスペクト比・後退角等)について説明し,これらのパラメータが 航空機の性能等にどのように影響しているかを実機の例を示しながら説明した.さらに,航空機の性能 (航続距離・離陸滑走路長・着陸滑走路長等)を推算する方法についても説明した.また,航空機構造 設計に関する基本的な考え方・構造様式・複合材の適用状況についても説明した.講義は座学と若干の 演習問題を組み合わせて行い,航空機全般に関する解説ビデオの視聴や航空機産業の現状の説明なども 随時行って一般的な知識も得られるように配慮された.初日の午前中一杯の廣瀬教授の熱い(喉を枯ら すまでの)講義によって,本セミナーの成功はほとんど約束されたと考える. 2.2.2 航空機概念設計および航空機概念設計演習 金沢工業大学・航空システム研究所の片柳亮二教授には,航空機の開発を決心するために実施される 事前設計確認,いわゆる概念設計について,理論と演習により理解を深めることを目指した講義と演習 を実施いただいた(図1) .まず,これまで開発されてきた旅客機について概観した後,航空機を開発す る際の設計要求条件について学んだ.次に,航空機の形状を決めるパラメータについて理解し,具体的 な性能要求である航続距離・離陸性能・着陸性能・接地速度を満足する機体諸元を決める方法について 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 205 学んだ.航空機の形状および諸元が決まると,次に実施するのは安定性・操縦性の検討である.具体的 には,安定に飛行するための尾翼の設定方法について学んだ.これらの理論を学んだ後,航空機の設計 解析プログラム KMAP(ケーマップ)を用いて,実際に旅客機の設計演習を行った. 図1 廣瀬教授および片柳教授による講義・演習風景 2.2.3 高分子の力学 次に,東北大学・次世代航空機研究センターの青柳吉輝准教授に,微視的な観点から結晶性高分子材 料の力学特性について講義を行っていただいた(図2) .まず,高分子材料の基礎的な力学特性について 金属材料との違いを踏まえながら紹介し,微視的な分子鎖構造が巨視的な機械的特性に与える影響につ いて説明した.また,結晶性高分子材料の結晶相と非晶相の力学モデルについて説明し,微視的情報を 反映した数値解析の方法について解説を行った.本モデルを用いた数値解析の例として,球晶を含むポ リプロピレンを想定した引張試験の解析結果を示し,実験結果と比較しながら球晶構造が力学特性に与 える影響について学んだ. 図2 青柳准教授および宮野教授による講義風景 2.2.4 粘弾性 金沢工業大学・材料システム研究所・所長の宮野靖教授には,工業製品として実際に多量にかつ多種 多様に利用されている複合材料としての FRP の母材であるプラスチックの粘弾性について講義いただ いた(図2) .プラスチックは鉄鋼などとは異なり,少し温度を上げただけで,あるいは時間が経つと柔 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 206 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー らかくなる性質がある.この性質は製品に形作る時は便利な性質であるが,使うときには様々な不都合 を生じることがある.プラスチックのこの性質を「粘弾性」と言い,FRP を特に高度な信頼性が必要な 構造物に利用する上では,母材であるプラスチックの「粘弾性」を充分に把握することが必要不可欠で ある.そこで,力学モデルを活用して粘弾性の基本的概念を説明し,クリープ現象・応力緩和現象・時 間と温度の等価性などについて解説した. 2.2.5 複合材料の力学 本事例紹介の筆者の1人である金沢工業大学・材料システム研究所の田中基嗣教授は,複合材料の力 学について講義を行った(図3) .本項目では, 「複合材料の力学」について,演習を交えながら適宜小 テストを実施することにより理解を深めることを目指した.まず,異方性材料の応力とひずみの関係か ら,一方向繊維強化複合材料平板における変形について導出した.次に,一方向繊維強化複合材料の繊 維方向ヤング率・ポアソン比・繊維直角方向ヤング率・せん断弾性率・線膨脹係数に関する複合則につ いて学習した.さらに,積層板理論により剛性行列を導出し種々の積層板の変形について理解するとと もに,層間に生ずる応力について説明した.最後に、複合材料積層板の破壊力学モデルについて解説し, 複合材料積層板の破壊を予測する手法について学んだ. 図3 田中教授による講義風景 2.2.6 複合材料成形 金沢工業大学・材料システム研究所の斉藤博嗣准教授は,複合材料成形について講義・実習を行った (図4) .複合材料は幅広い分野への適用が進められているが,その成形方法は一様ではなく,目的に応 じて多種多様なものが存在する.本項目では,複合材料の代表的な成形方法について紹介し,その特徴 と適用分野について学習した.その上で,炭素繊維プリプレグを用いた CFRP 積層板のホットプレス成 形の実習を行ない,複合材料積層板の成形法について理解を深めた.さらに,作製した CFRP 積層板に 落錘衝撃損傷を与え,超音波探傷法により内部損傷の非破壊観察を行って,複合材料積層板で生じうる 損傷について実験的な検証を行った. 2.2.7 構造力学・有限要素解析および有限要素解析演習 本事例紹介の筆者の1人である東北大学・次世代航空機研究センター・センター長の岡部朋永教授は, 構造力学・有限要素解析の講義と関連する実習を実施した(図5) .本項目では,航空機機体設計に欠か すことの出来ない構造における力学についてポイントを絞って説明した.特に,各部材における変形と それによって生じる応力を算出するための理論式について,物理的意味を明らかにしながら導出した. 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 207 図4 斉藤准教授による実習風景 図5 岡部教授による講義・演習風景 また,実際の設計の現場にて用いられる有限要素法をその定式化から具体的な計算の手順まで例題を 用いながら説明した.この際,汎用コードを利用することで,航空機構造の簡単なモデルを解析し,そ の評価を行った. 2.2.8 最適設計 金沢工業大学・航空システム研究所の佐々木大輔准教授は,空力・構造・材料・成形それぞれの最適 解をすりあわせるための基礎的概念について講義いただいた(図6) .航空機の設計において,構造設計 や空力設計に最適化を取り入れることで高性能化を図ることが一般になっている.本項目では,最適化 に関する基礎事項についての講義を行った.最初に,最適化の基礎事項について,勾配法に基づく手法 を紹介しながら説明した.次に,大域的最適化手法として遺伝的アルゴリズムに代表される進化的手法 についての解説を行った.実際の適用例として,多目的最適化手法を用いた航空機の空力設計について の紹介を行った.最後に,近年の最低設計手法の話題として,応答曲面法に基づく効率的な手法やロバ スト最適化・データマイニング等について触れた. 3.今後の課題 3.1 アンケートによる今後の課題の検証方法 アンケートを取り,各講義・演習・実習の内容などについて調査を行った.参加者の負担とならない 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 208 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 図6 佐々木准教授による講義風景 よう,できるだけ簡単なアンケートで,なおかつ次年度以降の改善点を有効に抽出できる質問を心がけ た.実際に実施した質問の内容は,以下のとおりである. 1)本講習会を受講してどのようにお感じになられたか,お答え下さい. (○をつけて下さい. ) とても良かった 良かった 普通 あまり良くなかった 良くなかった 2)今後, 「夏の学校」で講義や設計の対象として欲しいものがありましたらお教えください. 3)今回は初回のため,事前のご案内が遅くなるなど,いろいろとご心配・ご迷惑をおかけしたことと 思います.このようなことも含めて,全体の運営でお気づきの点やその他のご意見・ご要望がありまし たらお教え下さい. 3.2 アンケートによる今後の課題の検証 アンケートの結果得られた感想は, 以下のとおりである. 1回目のトライアルであったにも関わらず, きわめて良好であった. これは, テーマ設定とそのための手法が間違っていなかったことを示している. また,今後対象としてほしいことやその他の要望として,以下の意見が出た. 1)本講習会を受けての感想 とても良かった:13名,良かった:10名,普通:3名 2)今後対象としてほしいこと ●自動車の設計 ●既存の自動車設計概念しかない自動車会社でFRPを構造材に使うときに何が問題で FRP の利点 でどこまでカバーできるか等をくだけて議論する場 ●オートクレーブ成形,プレス成形,複合材料の立体成形や成形キュアスケジュール作成などの実技 ●CFRP 試験片の引張試験 ●樹脂について ●有限要素法の実技の時間 ●構造の破壊シミュレーションや材料の破壊について ●空力側から見た航空機設計,空力の観点からだけでなく強度や変形特性の観点からの内容 ●複合材を航空機に適用した力学や設計 ●CFD(Computational Fluid Dynamics) 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 209 ●KMAP をもう少ししたかった(帰ってやります) ●実際の航空機設計の現場で使われている手法についての情報を紹介して欲しい ●構造・空力・制御など連成解析が必要になっている例とその方法を紹介して欲しい ●ジェットエンジン,ロケットやスペースシャトルを対象とした内容 ●工大の研究室見学ツアー,フライトシミュレータ 3)その他の要望 ●空力の講義が増えると良い ●受講対象者のレベル(履修済科目等)をあらかじめ通知した方が良いかも ●事前に資料を配布してくれると準備ができてより効果が高まる,事前の情報(シラバスなど)をも う少し多めに欲しかった,関数電卓の持参の通知 ●9月に入ってからのほうが集まるかも,8月上旬または9月下旬だと参加しやすかった 3.3 次回に向けた収穫・反省点 以上の結果を受けて,運営側から見た次回に向けた収穫・反省点は,以下の通りある.したがって, 平成28年度の第2回「夏の学校」では,表2のようなスケジュールを組むこととした.なお,新しい 講師として,東北大学・次世代航空機研究センターの河合宗司准教授と東京理科大学・小柳潤講師にお 越しいただくこととした. ●大筋はうまくいった,講義スケジュールなどは非常に良かった,ただし4コマ連続はしんどい ●次回は CFD を入れたい ●開催時期の変更や資料の事前配布は難しい,学内の見学ツアーを組み込むことも時間的に厳しい ●日本航空宇宙学会にも声をかけたい 表2 第2回「夏の学校」の時間割案 午前 1 9:00-10:30 8月17日 月 航空機設計論 航空機概念設計 廣瀬 康夫 片柳 亮二 8月18日 火 複合材航空機設計 最適設計 廣瀬 康夫 佐々木 大輔 FRP母材の粘弾性 複合材料の力学 宮野 靖 田中 基嗣 14:00-17:00 複合材料成形実習 (7号館で実施) 斉藤 博嗣 KMAPによる 航空機概念設計演習 片柳 亮二 KMAPによる 航空機概念設計演習 片柳 亮二 8月20日 木 複合材料の力学 構造力学 有限要素解析演習 田中 基嗣 岡部 朋永 小柳 潤 8月21日 金 構造力学 CFDの基礎 CFD演習 岡部 朋永 河合 宗司 河合 宗司 8月19日 水 2 11:00-12:30 午後 日程 4.まとめと今後の取組み 初日から最終日まで,終日びっしり学習・体験するタイトなスケジュールにもかかわらず,手弁当で 出講いただいた講師陣の入念な準備と熱意のある講義内容に対して,受講者は最後まで集中力を切らさ ずに必死に受講していた.中日に開催した懇親会により受講者の連帯感が格段に増したこともあり,非 常に高い教育効果が得られた.従来,複合材航空機に関連する多岐にわたる分野を本講習会ほど網羅的・ 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 210 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 体系的に勉強できる機会はまったく存在していなかったため,複合材航空機分野における本講習会の位 置付けはきわめて重要なものであると言える.次年度以降は,さらに内容を精査して開催し,複合材料 分野および航空機分野における夏の恒例イベントへと育てていきたい. 謝辞 本セミナーの遂行にあたり,金沢工業大学材料システム研究所・所長 宮野靖教授および金沢工業大 学航空システム研究所・所長 廣瀬康夫教授をはじめとして,片柳亮二教授(航空システム研究所) ,斉 藤博嗣准教授(材料システム研究所) ,佐々木大輔准教授(航空システム研究所) ,青柳吉輝准教授(東 北大学・次世代航空機研究センター)には,手弁当で講師をご担当頂いた.記して謝意を表する. 参考文献 1) 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) ・革新的温暖化対策技術プログラム「自 動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発」成果報告書,(2008). 2) 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) ・革新的部材産業創出プログラム「サス テナブルハイパーコンポジット技術の開発」成果報告書,(2013). [受理 平成 27 年 8 月 24 日] 田中 基嗣 金沢工業大学工学部機械系機械工学科 教授・博士(工学) 金沢工業大学材料システム研究所 研究員 金沢工業大学先端材料創製技術研究所 研究員 複合材料学,バイオマテリアル,バイオメカクス,計算力学 岡部 朋永 東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 教授・博士(工学) 東北大学大学院工学研究科次世代航空機研究センター センター長 金沢工業大学 材料システム研究所 客員教授 複合材料学,計算力学,連続体力学,構造力学 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 複合材航空機の設計者養成を目指した夏期集中型セミナー 211
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