春の大三角 - 独立行政法人 国立青少年教育振興機構

 星空学習テキスト ~中級(小学校中学年~高学年向け)編<春>~
★ 春の大三角
国立立山青少年自然の家 《子ども用シート》
【春の星図】 (5月上旬,20時ごろの空)
北極星 ●
● 1等星(1.50以上)
● 2等星(1.51 ~ 2.50)
● 3等星(2.51 ~ 3.50)
● 4等星(3.51 ~ 4.50)
●
北斗七星
●
うしかい
●
●
●
●
●
●
●
●
りょうけん
●
●
●
●
●
●
しし
アークトウルス
●
●
●
デネボラ
●
●
●
●
●
●
●
レグルス
おとめ
●
●
●
●
●
●
● スピカ
南
★ 南に向かって星図を使う場合,星図の方位,南を手前(下)に,おいてみる ★
=春 の 大 三 角 =
【観察時期・時刻】5月上旬~6月中旬 19時30分すぎ~20時30分前
【準 備】
( 児 ) 子ども用シート(星図)
星座早見盤 懐中電灯(赤いセロハン紙で包む)
( 指 ) 投光指示灯 双眼鏡 ( 7×5㎝,三脚付 ) 天体望遠鏡 ( 組立て・調整済み )
【学習のねらい】
★ 春の星や星座を見つけることが,できるようになること。
⑴ 明るさや色などに目をつけて,星空の中で目立つ星や星座を見つけること。
⑵ 北極星や北斗七星からみた,春の星や星座の(空に見える)位置を見つけること。
⑶ 春の星座を見つける目印,「春の大三角」を見つけること。
⑷ 大三角と結ぶ「春のダイヤモンド」を見つけること。
【学習活動の展開】( 学習過程の概要 )
《事前指導》星を観察するには,どんな場所がよいか考えてみよう。
⑴ 空が広く見渡せて,周りに灯りがない暗い場所。
⑵ 足もとが安全な,平坦な場所。
北極星 ●
《野外活動》夜の広場へ出て,春の星や星座を
探してみよう。
1 春の星や星座を見つけるには,どんなこと
に目をつけたらよいか考えてみよう。
⑴ 春の星空を見渡して,北斗七星と北極星
の位置を確かめる。
⑵ 星空の中,すぐ目につく星は,どんな星
か考えてみる。
北斗七星
ζ
●
η
●
●α
●β
●
●
ε δ
●
γ
●
●
●
コルカロリ
●
●
●
●
●
アークトウルス
●
●
●
●
2 最も目立つ星はどれか,探してみよう。
●
●
デネボラ
レグルス
⑴ 東の空で,最も明るく,オレンジ色に輝
く星を見つける。
⑵ その星の位置を,北斗七星から見つける
● スピカ
方法を考え,試してみる。
① どれか2個の星から見通す直線を伸ばしてみたらどうか?
② 北斗七星の柄を,平らな曲線に見なして,延長してみたらどうか?
⑶ その星は,北斗七星の柄の曲線を東の空へ約2倍伸ばした位置にあることを見つけ
星座早見で名前を調べてみる。★固有名「アークトウルス」★和名「五月雨星」
●
●
●
●
●
●
⑷ アークトウルスを目印に,その周りに集まる星をまとめた星座の形を,星座早見の
線画を参考になぞってみて,星座名を確かめる。★星座名「うしかい座」。
3 次に明るく目立つ星を探してみよう。
⑴ 南東の空に,真珠色に,美しく輝く星を見つける。
⑵ 北斗七星からみた,その星の位置を考え試してみる。
⑶ その位置は,北斗七星の柄の曲線をアークトウルスから,さらに南東の空へ伸ばし
た線と,北斗七星α・γを見通す延長線の交点にあることを,星座早見で確かめ名前
を調べてみる。★固有名「スピカ」★和名「真珠星」
⑷ スピカを目印に,その周りに集まる星をまとめた星座の形を,星座早見の線画を参
考になぞってみて,星座名を確かめる。★星座名「おとめ座」
4 北斗七星の柄から考えだした曲線,アークトウルスやスピカの位置を見つける曲線を,
何といったらよいか,考えてみよう。★「春の大曲線」
5 春の星空の中,アークトウルスやスピカとともに目立つ星を探してみよう。
⑴ アークトウルス・スピカとつなぐと,目立つ三角になる星を見つける。
⑵ その三角が目立つわけを考えてみる。
① 「正三角」のように目立って見える。
② 三角の中や近くに明るい星がなく,見つけやすい。
⑵ アークトウルス・スピカと結ぶ正三角の頂点の位置にある星の名前を星座早見で調
べてみる。★固有名「デネボラ」
⑶ デネボラを目印に,その周りに集まる星をまとめた星座の形を,星座早見の線画を
参考になぞってみて,星座名を確かめる。★星座名「しし座」
6 春の星空で目立つ「正三角」を,目印にした星座の見つけ方をまとめてみよう。
⑴ うしかい座の目印「アークトウルス」,おとめ座の目印「スピカ」,しし座の目印「デ
ネボラ」をつなぐ三角をなぞって,目立つ「正三角」に見えることを確かめる。
⑵ 春の星座(うしかい,おとめ,しし)を見つける目印の三角を,何といったらよい
か考えてみる。★「春の大三角」
7 「春の大三角」とつなぐと,ダイヤ形になる星を見つけ,星座早見で星の名前を調べ
てみよう。★りょうけん座「コルカロリ」※ダイヤ形の呼び名「春のダイヤモンド」
《活動のまとめ》春の主な星座の見つけ方をまとめてみよう。
⑴ まず,北斗七星を見つけ,星の配列を確かめる。
⑵ 「春の大曲線」を考えて,アークトウルス,スピカを見つける。
⑶ 北極星と北斗七星の位置から見たスピカの位置を確かめる。
⑷ アークトウルス・スピカとつなぐ正三角の頂点に,デネボラを見つける。
⑸ 「春の大三角」を目印に,うしかい座・おとめ座・しし座を見つける。
指 導 上 の 留 意 点
1 初級編では,春夏秋冬,それぞれの季節の一つの星座を対象に,星空を探る導入段階
の活動事例を記述した。この中級春編では,初級春編で扱った「おおぐま座」の見つけ
方を,「春の大三角」を目印にした広い星空の中,いくつもの星座を探る活動に発展さ
せる事例の展開を考えてみることにした。
2 春の星座は大きさの割に明るい星が少なく,星のまとまりもまばらで,一つ一つの星
座を確認することは容易ではない。このような過疎の星空の中,いくつもの星座を見つ
けるには,子どもが自ら発想を転換して,北斗七星の柄を曲線に見なすことや,明るい
星をつなぐ三角を目印にすることを考え,星座の見つけ方を自らの力で見つけだすこと
である。それは,星座を見つけることの楽しさや喜びを体験させることでもある。
3 星座の指導では,広大な星空のスケールを実感することを大切にしたい。野外に出る
前に,星座早見を使って星空の様子を知らせておくことも考えられるが,星座早見で見
る星空と実際の星空とではスケールの差が大きすぎて,野外では見当がはずれ,まごつ
くことが多い。それで星座早見を星座観察の現場に持ち込むことを考えてみた。
この場合,懐中電灯を不必要に点灯しないことや,光源の光をじかに目に入れないこ
となどの注意を,子どもたちに事前に徹底しておくことが大切である。
4 春のダイヤモンドの菱形に囲まれる,春の星空の中央部分は,一見して暗く寂しい星
空に見える。しかし,この辺りの一帯は「小宇宙の原」と呼ばれるほど,おびただしい
数の銀河が集中して見える場所である。春の星空の観察には,双眼鏡や小望遠鏡を持ち
込んで,星が全く見えない暗い空の奥底に,銀河と呼ばれる星の集団が無数に存在する
ことの一端を,子どもたちに,ぜひ体験させたいと思う。
春は,M53やM64やNGC4565などが観察できる好機である。
5 春の星空では最も明るく目立つオレンジ色のアークトウルスは,-1等級,全天3位
の明るい星である。この星は梅雨のころ南中することから,季節に敏感だった昔の人々
が名づけた和名に「五月雨星」や「麦星」がある。また,この星のオレンジ色の光を,
おとめ座のスピカの純白の光と対比させて「春の夫婦星」とよぶ和名もある。星の固有
名にふれる場合,このような星の和名と,そのいわれを子どもたちに考えさせてみたい。
平成19年度調査研究事業
子どもが科学する心を培うための「星空学習」プログラムの研究開発
星空学習テキスト 中級(小学校中学年~高学年向け)編<春>
【文と星図の作成】二川 正雄
2008年3月 発行
独立行政法人国立青少年教育振興機構 国立立山青少年自然の家