大会が選手を育てる 2005年宣言の実現に向けて②

Technical
news
Vol.24
特集① 大会が選手を育てる
大会ガイドライン
対談∼技術と審判の協調の観点から
特集② 2005年宣言の実現に向けて②
トレセン改革と指導者養成改革
ユース年代大会テクニカルスタディ
財団法人 日本サッカー協会
大会が選手を育てる
大会ガイドライン
対談∼技術と審判の協調の観点から
育成年代の大会
2
8
1 4
特集②
2005年宣言の実現に向けて②
第86回全国高校サッカー選手権大会
テクニカルスタディ
高円宮杯第19回全日本ユース(U-15)サッカー選手権
テクニカルスタディ
50
32
34
連載 What's
15
連載 キッズドリル紹介・第19回
16
連載 一語一会
17
活動報告 目指せ世界のトップ10
18
GKプロジェクト活動報告
21
2008年度ユースディベロップメント体制
26
連載 My Favorite Training
27
2007ナショナルトレセンU-12総括
28
JFAアカデミー福島活動報告
30
各地のユース育成の取り組み
36
海外指導者研修会報告 コパ・チーバス2008
40
海外で活躍する指導者⑥
42
連載 育成の現場をたずねて・・・
44
連載 JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
46
めざせファンタジスタ! 検定実施レポート
48
技術委員会刊行物・販売案内
60
A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
62
vol.24
1 3
2 4
Technical news
特集①
① 第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
② カタールU-19国際親善トーナメントより
③ 全国技術委員長会議より
④ 第86回全国高校サッカー選手権大会より훿Jリーグフォト㈱
○制作協力:エルグランツ㈱
○印刷:製本:サンメッセ㈱
※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。
本誌はJFA指導者登録制度において、所定の手続きを行ったJFA公認指導者の方に無償で配布されています。
1
1
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
特集① 大会が選手を育てる
日本サッカーにはまだまだ改善していか
今回、
「大会が選手を育てる」という特集
なくてはならない課題があります。それに
を組みました。育成年代でサッカーをより
ユース年代において、試合、大会は、育
は実にさまざまな要素が絡み合っていると
考えられます。大会の環境にもさまざまな
良く学んでいくための大会のあり方に対す
るガイドラインの考え方・趣旨、育成環境
成に大きな役割を果たします。選手を育て
るのは、トレーニングと試合であり、より
側面があります。育成年代で、日常的に良
いサッカーができる環境があり、その中で
のための技術と審判の協調ということで、小
野剛・JFA技術委員長と松崎康弘・JFA審判
良い育成のためには、その両方の環境が育
成に理想的であることが大切です。そうい
さまざまなリスクにもトライしながら成長
していけるよう、育成年代のサッカー環境
委員長の対談、そしてこの夏に向けてさま
ざまなアイデアでできることからアプロー
った意味で、大会が選手を育てると言って
に関わる大人、すなわち指導者、審判、大
チしていくことを奨励し、いくつかのアイ
も過言ではありません。大会のあり方は、育
成に大きな影響を及ぼします。
会の形式、親・サポーターが力を合わせて
改善していく必要があります。
デアを提示したいと思います。
イントロダクション
大会ガイドライン 2007
はじめに:
大会は選手を育成する
重要な機会である∼
プレーヤーズファースト
は、トレーニングと試合であり、より良い育
成のためには、その両方の環境が育成に理想
場合との、両方のガイドラインを提示するこ
ととしました。これは基本的に、あくまでも
的であることが大切です。そういった意味
で、大会が選手を育てると言っても過言では
週に1回程度の単発の試合の場合と連戦の場
合という意味であり、
「トーナメントとリー
ありません。大会のあり方は、育成に大きな
グ戦」という形式の区別のみから考えている
ポイント!
・試合、大会は育成の大きな柱の一つ。健
影響を及ぼします。
ユース年代の大会に関し、ユース育成にお
ものではありません。つまり、リーグ戦形式
であっても連続して行われたり、同日に続け
康・安全の観点に加え、育成、サッカー
の習得の観点からガイドラインを提示す
ける技術的観点から、すなわち、長期的視野
に立った育成の過程における技術の効果的習
て行われたりするのであれば、それは連戦と
いうことです。
る。
得の観点と、選手の成長における安全・健康
また、連戦の中でも季節や天候、また連戦
・サッカー協会に登録しているすべてのチ
ーム・選手がJFA主催の大会に出場でき
の観点から、大会ガイドラインを作成しまし
た。
の試合数等により条件は異なることと思われ
ますが、趣旨や優先順位を理解した上で、調
る環境をつくる。
・趣旨・意図が重要であり、そのためのロ
国内のユース年代の大会は、休みの期間を
利用して集中開催することが多いために、ど
整を考えてください。
単にガイドラインを示すのみではなく、こ
ーカルルールの適用は47FAユースダイレ
クターとの協議のもとで実施可能。
うしても連戦が多く、理想的な条件でなく開
催されていることが多くあります。
の解説を示すのは、ガイドラインの意図、狙
いをご理解いただきたいからです。特にユー
ユース年代において、試合、大会は、育成
に大きな役割を果たします。選手を育てるの
た上で、理想的な形である週1回程度の試合
の場合と、実際にどうしてもありうる連戦の
それは現状としてあるということを踏まえ
2
スの大会では、さまざまな状況があります。
その中で判断をする際には、
「プレーヤーズ
ファースト」の精神のもと、ガイドラインの
特集① 大会が選手を育てる
趣旨、意図に立ち返ってご判断いただきたい
日本の課題であるゴール前の攻防のプレーを高
に設定します。
と思います。年代に応じた最適な育成を目指
動かずに待っていることがなるべくないよう
めるため、その意味でも、ゴール前の攻防が数
すためのガイドラインです。そのことをぜひ
忘れずにそれぞれのケースでご判断をお願い
に、皆が楽しめるようにしましょう。人数も必
多く出る8対8を推奨します。
(下記データ参照)
8対8と11対11は両方ともサッカーです。分け
ずしも同数である必要はありません。
します。趣旨に即するためには、地区大会等
では必ずしも全国大会の規定通りではなく、
U-8では、サッカーの基本形ともいえる4対4を
て考える必要はありません。チーム戦術や固定
積極的に活用してください。全員が常に関わる
的な役割分担で勝利を目指すのではなく、あく
ローカルルールの適用が必要になる場合もあ
ことができ、サッカーで起こるあらゆる状況を
までも良いサッカー選手になるための準備と考
ります。その際には47FAユースダイレクタ
ーとの協議の上でローカルルールを適用して
シンプルな形で頻繁に経験することができます。
えれば、どちらの形も同じサッカーです。子ど
U-10であれば、スキルの習得のためにも、一
もたちの成長にとって効果の高いものを選択す
ください。
人ひとりがプレーに深く多く関わることができ
全員が関わることのできる
ゲーム形式
人数に関して
ポイント!
・8人制も11人制も同じサッカーである。11
人制でなければサッカーではない、とい
う考え方から脱却する時期に来ている。
・すべては子どものため。子どもがサッカ
べきです。
るように、4対4、8対8等のスモールサイドゲー
若年層には人数とピッチサイズを減らしたゲ
ムを推奨します。さまざまなテーマを設定し、オ
ームが適しており、11人制の開始時期は12歳以
ーガナイズを変えた4対4の活用も有効です。さ
降と考えます。U-10では育成の観点から望まし
まざまな状況を経験させることができます。
くありません。
キッズ年代では、ボールに関わる回数が多く、
全員がプレーに関わり楽しむことが目的です。し
U-13であっても8対8の活用はスキルや個人戦
たがって、11人制は適切ではありません。大勢
術、グループ戦術の習得の面から意義がありま
でやる場合もボールを増やす等の工夫をし、十
す。
U-14からは体力的にも向上してくるので、大
分にボールに関われるようにしましょう。
人のサッカーに向けてのステップとして、11人
■ ユース年代
制を行っていきます。
U-12では、スキルのより効果的な習得のため
ーをより楽しむことができ、将来により
良いサッカー選手になるための準備をす
に、8対8を推奨します。一人ひとりがボールに
しかし、スモールサイドゲームはサッカーの
さわる回数、直接プレーに関わる回数を増やす
習得に非常に有意義であることから、トレーニ
るために適した形を選択すべき。
ことが、スキルの向上に重要です。また、全員
ングやフェスティバル等さまざまな設定での積
が常にすべての攻守に積極的に関わり、さらに
極的活用を奨励します。
・一人ひとりのボールタッチ数、また日本
の課題であるゴール前の状況の発生頻度、
22
全員が常にプレーに関わる、という観点
から、U-12以下での8人制の推奨。11人
制開始年齢は12歳と考える。
・8人制、11人制の比較資料の提示(ボー
ルタッチ数、ゴール前のプレー回数)
8人制も11人制も同じサッカーです。
「11
人制でなければサッカーではない」という考
え方から脱却する時期に来ています。プレー
Maximum Participation, Maximum FUN
40
32
ヤーズファーストの精神のもと、一人ひとり
の子どもがサッカーをより楽しむことがで
き、また将来に向けより良いサッカー選手に
なるための準備をするために適した形を選択
すべきです。将来に向けての準備時期である
育成段階では、決められた形の中の決められ
た役割分担を徹底することで、勝利を目指す
ことよりも、技術を高め、サッカー理解を深
めることにより、サッカーの局面を解決する
力をつけさせていくことが重要です。
日本サッカーの中・長期的課題にアプロー
チするためには、育成年代で、全員が常にプ
レーに関わり、また、シュート場面が多く起
こる中での攻防を経験させることが非常に重
要です。
■ キッズ年代
キッズ年代は、参加者の人数に応じて、柔軟
ボールタッチ回数(5分間あたり)
BOX近辺の攻防∼試合人数による比較
11人制:全日本少年サッカー大会
8人制:チビリンピック
140
120
128
125
100
108
114
123
80
11人制
8人制
72
60
(準決勝・決勝)
シュート数
ペナルティー
エリア
進入回数
40
20
0
4対4
5対5
6対6
7対7
8対8
11対11
サッカーおもしろ科学 ー科学的分析に基づいた合理的な練習ー
掛水隆 大橋二郎 赤木真二 1996年 東京電気大学出版局
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
※フィールドプレーヤー 1人 1試合(40分)あたり
3
きます。U-16では大人のサッカーあるいは世
界の大会での規定に合わせていきます。
すべてのポジションを経験
∼11人全員が
フットボーラー∼
ポイント!
・ポジションは早期に固定せず、U-14まで
はさまざまな経験をさせる。
・現代サッカーの傾向として、GKである前
に優れたフットボーラーであることがま
すます重要になってきている。フィール
ドプレー、ゲーム理解を高めるためにも、
フィールドプレーの経験が重要。
⇒ FPにGK、GKにFPを経験させる。
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
交代に関して
たくさんプレーをすることが趣旨となりま
す。
そのためには、1チームの試合登録選手数
・これを実現するための、ユニフォーム規
定の柔軟な適用。
が出場選手数の2倍の場合、1ピリオドと2ピ
早期にポジションを固定せず、さまざまな
経験させることは、将来に向けてサッカーを
・全員が良いフットボーラーになるため経
験をさせる。
リオドで全員の交代、3ピリオドは自由等、
多くの選手を出場させる規定を設けることが
学ぶ上で非常に意味のあることです。それは
フィールドばかりでなく、ゴールキーパー
・特にU-12以下は誰もが大きな可能性を秘
めているので、大勢の選手に多くの機会
望ましいです(本来であれば規定で縛るので
はなく、指導者のフィロソフィーとして多く
(GK)も同様です。現代サッカーでは、GK
ポイント!
も含め、
「11人のフットボーラー」が、どこ
のポジションで流れの中でどのゾーンでプレ
を与えることが大切。
の選手を出場させることを望みます)
。
なるべく多くの選手を実際にプレーさせる
育成では、全員が良いフットボーラーにな
という趣旨で、チビリンピック8人制サッカ
るための準備であり、試合はそのための経験
を積ませる貴重な場です。特にU-12以下は、
ーでは、16人の登録、第1ピリオドと第2ピ
リオドで全交代という規定を採用していま
誰もが大きな可能性を秘めているので、大勢
の選手に多くの機会を与えることが大切で
す。
あるいは、チーム登録の人数を少なくし
す。子どもの健康・安全の面からも、育成の
て、1人のプレー時間が試合時間全体の2/3に
のではなく、さまざまな経験を積むことで将
来に向けてサッカーを学ばせ、力を伸ばして
面からも、限られた人数ばかりにプレーさせ
るのではなく、日ごろのトレーニングで多く
なることを目標とします。そのためには複数
チームの参加も推奨します。
いくことが大切です。適性を見つけ、将来的
に個性を輝かせる準備のためにも、ユース年
の選手の力を伸ばし、試合では多くの選手が
できるだけたくさんの経験をできるようにす
あくまでも重要なのは規定そのものではな
く、趣旨、狙いです。特にユース年代では、
代ではさまざまな経験をさせましょう。
べきです。
指導者が育成のフィロソフィーをしっかり
と持ち、試合という機会を有効に活用してく
ださい。
■ キッズ年代
「プレーヤーズファースト」
、一人ひとりのプ
GKに関して
■ キッズ年代
あり、各大会規定はその考えに基づいて決定
し、運用してください。
レーヤーが状況に応じてゲームの中で自由に
キッズ年代に関しては、身体的に無理のな
U-14までは、交代自由とし、身体的にも負
担を避け、また大勢が実際にピッチ上に出て
プレーできることを奨励します。それに伴
できないように、
「なるべくたくさんが参加」
し、十分に動けるようにすることが趣旨とな
い、登録人数を設定することが望ましいで
す。人数が多いチームに関しては大会規定と
ります。
して同一チームから複数チームの参加も積極
的に検討していただきたいと思います。
U-12では、なるべく大勢の選手が実際にプ
U-15以降は大人のサッカーに近づいていく
レーできるように、ピリオド制の導入も推奨
します。ピリオド制の場合は、多くの選手が
ということで、交代、登録人数に制限を設
け、その条件の中で闘うサッカーに入ってい
4
特にU-14まではさまざまな経験をさせるこ
とが重要です。特定の選手に特定の役割を固
定してそれを遂行させることで勝利を目指す
レーヤーの育成の観点から、多くの選手が十
分にプレー機会を得る、ということが重要で
い範囲で、大勢がゲームに参加して楽しめる
ようにします。休んで待っている時間が極力
■ ユース年代
ーしようとも、やるべきプレーができる技術
とゲーム理解を持っていることが重要です。
U-8程度までであれば、GKを固定せず、プ
ゴールを守るという形をとります。身体を思
い切り動かしたい年代であることから、1人
2007ナショナルトレセンU-12東海より
훿AGC/JFAnews
特集① 大会が選手を育てる
(走力、キック力等)に適したサイズ、また
それに伴い、技術・戦術の習得に適したサイ
ズを考えることが重要です。
人数の考え方と同様、フルピッチでのサッ
カーのみがサッカーであるわけではありませ
ん。子どもたちが十分に楽しむことができ、
全員が常にプレーに関わり、状況に応じた技
術・戦術の習得に適したサイズを選択すべき
です。
■ キッズ年代
キッズ年代に関しては、場に応じて大勢が
関われるように工夫します。こうでなければ
いけない、というよりも、使える場に応じて
柔軟に対応することが第一です。
ただし広くなりすぎると子どもに負担にな
ります。狭くてもかまいませんが、広すぎに
ならないようにしましょう。
■ ユース年代
U-12までは体力面(走力・キック力等)そ
の他の要素を考慮し、正規のピッチよりも小
さいピッチで、負担なく、また全員が常にプ
レーに関われることを重視します。広すぎて
もスペースを持て余し、キック力を越える距
のプレーヤーがゴール前に立ち止まって待っ
ていなくてはならない状況は避けます。
にGK、GKにFPを経験させることを推奨しま
す。
離を観てプレーすることは難しく、有効に幅
一般的に、GKはポジションが固定されが
と厚みを持ってプレーすることができませ
ん。まずは体力面に応じた距離の中のスペー
くさんの子どもたちが交代でGKを経験でき
るようにしましょう。ボールを手で扱う練習
ちです。また1つしかないポジションであり、
控えのGKが経験を積みにくい面があります。
スを有効に使ってプレーすることが先です。
12歳から11人制の導入が始まりますが、U-
は、全身コーディネーションのトレーニング
として、全員に経験させましょう。
したがって、U-12に関しては、3ピリオド制
の場合、GKが2人いたら両方とも出場させる
12までは11人制の場合は少年用スモールピ
■ ユース年代
ようにします。また、前・後半制の場合に
ッチで行います。少年用ピッチは狭いとの意
見もありますが、この年代の全国レベルの大
現代サッカーでは、GKのフィールドプレ
ー能力がますます重要になってきていること
も、GKをローテーションさせましょう。
3以上のピリオド制の場合、GKにも1ピリ
会を見ても、少年用ピッチをフルに活用して
ゲームを行っているチームは多くありませ
から、GKが十分にフィールドプレーを経験
していることが重要です。特別なポジション
オドはFPをさせましょう。
ん。成長の個人差が大きな時期ではあります
が、少年用ピッチで行うことが望ましいと考
U-10∼U-12年代までは、ゲームの中でた
えます。
としてではなく、
「手が使えるフィールドプ
これを実現するためには、ユニフォームに
レーヤー」ととらえることが重要になってき
ています。同じサッカー選手としての技術・
関し、FPとの判別を明らかにする目的でビ
ブスの使用等で十分であり、GKをプレーす
8人制の場合はハーフピッチで行います。
距離の上で、この年代でもピッチ全体を有効
戦術理解が必要です。
また、低い年齢であれば、ポジションを固
る上で安全な装備さえなされれば、ユニフォ
ームの規定は柔軟な適応で可とします。
に使うことができ、全員が常に攻守に積極的
に関わることができます。また、ゴール前の
定せず、多くの子どもたちにGKを経験させ、
その中で、GKの楽しさの発見、適性や可能
性の発見の機会を与えることを奨励します。
また、そのことは、フィールドプレーヤー
(FP)
、GK双方のゲーム理解にもつながりま
体力に応じた
ピッチサイズと時間
ピッチサイズに関して
す。
ゴールデンエイジのうちに技術をしっかり
ポイント!
・多くの人数が楽しめることを優先する。
と身につけておくことは、GKとしてプレー
・技術、戦術の習得に適したサイズを考え
する上でも、また、場合によって後からFP
に転向することがあっても、重要なこととな
る。
・フルピッチの固定観念からの脱却
ります。
また、サッカー理解を深めるためにもFP
ピッチサイズに関しては、子どもの体力面
JFAキッズ(U-6)サッカーフェスティバル2007東京より
훿Jリーグフォト㈱
5
攻防が出やすいという大きなメリットがあり
ます。また、ピッチの確保が簡単ではない
中、一つのピッチで2面同時に並行して行う
ことができ、オーガナイズ上の面でもメリッ
トがあります。
U-13、14に関しても、プレッシャーの中
でのスキルの発揮を効果的に習得するため
に、スモールピッチを活用することも考えら
れます(例:AFC U-13/14フェスティバルで
は80m×60mのピッチで、意図的にプレッシ
ャーの高い状況を創出)
。意図を持って効果
第38回全国中学校サッカー大会より훿AGC/JFAnews
的に活用してください。
U-14からは、フルピッチでのゲームに慣れ
夏季大会に関して
ていくようにします。
■ ユース年代
試合時間に関して
大会は夏休みに開催されることが多く、夏
季の暑熱下の環境で行われることが多いで
ェアプレー精神を育むことを狙いとします。
1人の審判がすべてを見て判断することはで
■ キッズ年代
す。それについての考え方を以下に示しま
きないというのがこの制度の前提です。互い
全員が試合時間の100%プレーでき、待ち時
す。
可能な限り、日中の暑い時間帯を避けるこ
の了解で判定しゲームを進めていく、という
のがスポーツの原点です。そしてそれによっ
間がないようにすることを目標にします。
U-8では1人が合計20∼45分。参加者には
とが望ましいです。照明設備の問題はありま
すが、ナイトゲームの積極的活用も検討して
て、プレーヤーばかりでなく審判、指導者や
保護者のサッカーに関わる人々が互いに尊重
最低でも20分は保障できることを目標にしま
す。
ください。
選手の健康と安全を第一に考え、ユース年
し合い、フェアプレーの意識の向上を図りま
す。
U-6の場合、1人のプレー時間が15∼30分。
■ フェアプレーの推奨
キッズ年代では1人審判制を推奨します。
ゲームを1人で審判することによって、フ
U-10では1人が合計30∼60分。参加者には
代の大会では、従来通り飲水タイムは必要に
キッズ年代の試合やユース年代では47FA
最低でも30分は保障できることを目標にしま
す。
応じてとるようにします。ただし、飲水タイ
ムに頼るのではなく、プレー中の飲水につい
リーグ戦等においても、ぜひ1人審判制にト
ライしてみてください。
キッズ年代U-10の場合、フェスティバルは
半日程度とします。試合数は3試合まで、1人
ては、日ごろから指導し、習慣をつけさせる
必要があります。実際に、タイミング良く飲
また、U-12まではグリーンカードの積極的
活用を推奨します。グリーンカードに関して
の出場時間は試合時間の最大2/3までとしま
水をすることがうまくできない選手が多く見
は、レフェリーが試合中に使用するばかりで
す。
「全員がたくさんプレーすること」を重視
受けられます。この点についても、サッカー
の指導の一環として、日ごろから各チームで
なく、日常的にさまざまな場で積極的に活用
していただきたいと思います。
してください。
しっかりと指導していただきたいと思いま
す。
■ たくましい選手の育成
■ ユース年代
U-12年代の場合、15∼20分×2としますが、
同日2試合の場合は、1試合15分×2、1人の
たくましい選手の育成
プレー時間は合計45分までとします。
U-15の場合は、35∼40分×2としますが、
同日2試合の場合は、1試合30分×2、1人の
世界トップ10を目指し、世界で闘うことの
できる選手育成のために、自立したたくまし
い選手を育成していかなくてはなりません。
それには、技術と審判の協調、そして双方の
レフェリング/
フェアプレーの推奨
努力が必要です。双方がサッカーを十分に理
解し、互いに「スピーディーで、フェアで、
また、FIFA U-17ワールドカップを目指す場
ポイント!
・自立したたくましい選手の育成。そのた
す。
日本人に多いプレーとして、攻守とも少し
合に15歳でアジアの1次予選の90分ゲームを
中1日で闘います。そのようにこの年代で45
めに技術・審判の協調と双方の努力、サ
ッカー理解が必要。
「スピーディーでフェ
の接触ですぐに倒れ、審判の方を見てファウ
ルを要求してしまう、また、ヘディングの競
分×2で闘うことになることも踏まえ、その
ような経験を公式戦でまったくつめないこと
アでタフなゲーム」を目指す。
・「ささいなファウル」は「ファウル」
、激
り合いの前に手を使って自分をかばったり相
手を探したりしてしまう、1対1の球際で身体
も問題として指摘されています。大会の決勝
しくてもフェアなコンタクトはノーファ
の重心を移動せずに手で相手につかみかかっ
戦等では場合によっては45分ハーフの導入も
検討していただきたいと思います。
ウル。
・ファウルであってもプレーを続ける意志
てしまう、といったプレーが見られます。バ
ランス良くボールを保持し、積極的にしかけ
U-16の場合は、リーグ戦では40∼45分×
2。連戦の場合は35分×2とします。
があれば、アドバンテージの適正かつ積
極的な活用
ていく、また守備でも積極的にボールを奪い
に行く。倒れてもすぐに起き上がり次のプレ
U-18の場合は、リーグ戦では45分×2。連
・選手はプレーに集中する。指導者からの
ーを続けることができる、そういったプレー
プレー時間は合計90分までとします。
連戦の場合はU-15で30分×2としています。
戦の場合は40分×2とします。
6
働きかけが重要
タフなゲーム」を目指していくことが重要で
ヤーを育てていく必要があります。
特集① 大会が選手を育てる
「ささいなファウルを見逃してほしい」
、
といった意味では、リーグ戦は非常に大きな
と、負け続けること等さまざまな状況の中
と言っているわけではなく、ささいであって
要素となります。現在、長期にわたる、能力
で、トレーニングを積んで試合を重ねていく
もファウルはファウルであり、反対に、激し
くても正当なコンタクトは正当なプレーで
別リーグ戦の創出に向けて、各地域で努力し
ています。それは、1回戦で負けて終わりで
ことで、技術・戦術・メンタル面でも力がつ
いていくはずです。
す。
正当なコンタクトを指導する一方で、ファ
はなく、選手にとっては長期にわたるモチベ
ーションとなること。指導者にとっては、M-
リーグ戦を創出していく上では、物理的に
もさまざまな負担、障害があることは確かで
ウルであってもプレーを続ける意志があれ
T-Mで、試合で日ごろのトレーニングの成果
すが、運営の簡素化やさまざまな工夫によ
ば、ゲームの流れやプレーヤーの意図を読
み、アドバンテージを適正かつ積極的に採用
を確認し、その結果を分析してトレーニング
を重ね、また次の試合に臨むというサイクル
り、克服していくことができるはずです。ス
ケジュールの過密がよく指摘されますが、現
していただきたいということです。
そのためには、技術サイドとしては、ルー
の中で課題克服にトライし、一つ一つ取り組
み、積み重ねていくことができるという面が
在のカレンダーを思い切って整理し、現状の
試合を統廃合すること、リーグ戦とカップ戦
ルを正しく知り、日ごろの指導で、正しいコ
あります。それは、選手ばかりでなく、指導
を効果的に組み合わせること等を検討するこ
ンタクトスキルを習得させ、コンタクトプレ
ーで負けないようにすること、ファウルをし
者が分析、計画、トレーニングといったサイ
クルを重ねていくことで、指導者自身がスキ
とで、可能性を探ることができます。年間ス
ケジュールの中でうまく配置することによ
ないでボールを奪うこと、またプレーに集中
し、プレーを簡単にやめない選手を育成する
ルアップしていくことにつながります。刹那
り、種別の移行の際に大きなブランクができ
ず、連続性を持ってサッカーを行う環境が創
よう働きかけをしていく必要があります。ま
た、ベンチにおいても、選手の自立したたく
になるのではなく、試合のチャンスが続くた
め、課題の克服に向けリスクにトライしやす
出されることが可能になると思います。
ましいプレーを決して阻害しないような態度
くなります。このことは、リーグ戦が推奨さ
を示すべきです。
一方、審判サイドとしては、プレーの流れ
れる理由の中でも大きい要素です。負けて終
わって次の機会が巡ってこないと、負けてし
おわりに:
大会ガイドラインは
プレーヤーのためのもの
を重視し、フェアプレーの基にプレーヤーの
プレーの意図を読み、両チームの選手に思い
まった試合での課題や反省がリセットされて
しまい、積み上げていくことがなかなかでき
繰り返しになりますが、ガイドラインで重
切りプレーをさせるようにしていっていただ
ない現状もあります。長期にわたるリーグ戦
要なのは形ではなく意図、狙いです。ユース
きたいと思います。
われわれ指導者、審判は、選手の未来に触
を創出し、定着させていくことが必要です。
もう1点として、能力別という要素が挙げ
育成の観点からは、意図、狙いに基づいて、
柔軟な判断をしていただくことが必要です。
れています。大人はさまざまな面で、選手に
大きな影響を与えます。われわれ大人がサッ
られます。大量得点差の試合から成果や課題
を見出すことは難しく、育成の観点からはあ
長期的な育成の過程の中で、多くの子どもた
ちが十分にプレーをし、楽しむ機会を得るこ
カーの理解度を深め、サッカーというスポー
まり意味のあるものとは言えません。トップ
と、安全であること、その上で技術・戦術等
ツの「こころ」を知る努力をし、自立したた
くましい選手を育成していきたいと考えま
ばかりでなく、2部、3部までが含まれる、一
つの大きなピラミッドを構築して、拮抗した
を適切に伸ばすことができる環境、設定を与
えることを目指しています。
す。
実力のチーム同士で試合を重ねる環境をつく
ることで、誰もが実力に応じて充実したサッ
日ごろのトレーニングで課題克服へのトラ
イを積み重ね、サッカーのさまざまな局面を
カーの経験を積む環境が、育成に大きな意味
があると考えます。複数チームの参加も含
自分たち自身で判断し、解決をする力をつけ
させた上で、そのやってきたことの成果と新
リーグ戦の創出、
リーグ戦文化の醸成・定着
め、登録しているすべてのチームのすべての
たな課題を確認する場として、指導者の適切
選手に、有意義な経験の積める環境をつくる
ことが重要です。リーグ戦はトップの選手を
な働きかけで、試合・大会を有効に活用して
ください。
ポイント!
・長期にわたる、基軸となる能力別リーグ
鍛える強化の場だけではなく、すべての選手
に同じゲーム数が確保されている普及の場で
プレーヤーズファースト。常にこれを判断
のよりどころとし、年代に応じた適切な試合
ある意義が大きいと言えます。勝ち続けるこ
でプレーヤーを伸ばしていきましょう。
大会が選手、指導者を育てる
戦の創出
的な勝利を目指すあまりリスクを避ける闘い
・M-T-M。トレーニングとゲームによる選
手の育成。課題へのトライ。指導者のス
キルアップ(分析、計画、トレーニング
等)
・リスクにトライ
・長期にわたるモチベーション
・メンタリティー
・カレンダーの整理
・運営の簡素化
大会のあり方が育成に大きな影響を与える
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
7
対談∼技術と審判の協調の観点から∼
日々のゲーム環境が選手を育てる。
ったときによく起こることが、日本の選手
にはどうしようもないのです。選手にまず意
選手のため、子どもたちのために、われわれ
大人−指導者・審判・親・サポーター…−が
が、ファウルがあったと思い自分でプレーを
やめてしまったり、レフェリーを見てしまっ
志がある。そこをうまく育てていく。そこで
起こることに対し、ファウル、ファウルでは
すべきこととは――。
たり、場合によってはそうしている間にやら
れてしまったり、というケースまで出てきま
ない、アドバンテージをとりましょうと、そ
の判断をしていくのはレフェリーです。まず
す。やはりもっともっと自分の意志でプレー
を続けていく、何があっても自分でゴールを
選手の意志があって、それをうまく引き出せ
るように、レフェリーが機能していけるよう
目指していく、ボールを奪いに行く、という
にすればいいのではないかと思います。
姿勢を示していかなくてはならない。そうい
う、タフであり、しかもクリエイティブな選
布:今、松崎さんから「選手がゴールに向か
手を育てたいと考えます。この2つはまった
く反比例するものではありません。タフであ
っていく意志がないとアドバンテージもとれ
ない」
、ということが出ました。指導の立場
りかつクリエイティブな選手を育てていきた
から、なぜその部分が不足しているのかを考
いです。それには審判とも協力しながらやっ
ていくことが不可欠だと思っています。
えていかなくてはいけません。
技術と審判の協調の観点から、小野剛・JFA
技術委員長と松崎康弘・JFA審判委員長が、
選手の育成についてディスカッションを行い
ました。
進行:布啓一郎・JFA技術副委員長
タフでありかつクリエイティブ
な選手を育てたい
布啓一郎・技術副委員長(以下、布):JFA
では、育成における「技術と審判の協調」と
いうことで、さまざまな取り組みを連携して
行っています。フットボールカンファレンス
松崎康弘・審判委員長(以下、松崎)
:お互い
小野:先ほど松崎さんから、
「ピッチは選手
たちがプレーするところ」とありました。そ
委員長として、それぞれの分野のトップから
う考えると、われわれコーチも、レフェリー
(以下、カンファレンス)でも2003年より毎
回「技術と審判の協調」というテーマのセッ
グラスルーツまで見ている立場です。日本の
トップを今すぐ強化するには、今そこにいる
も、あるいは運営サイドも、皆プレーヤーの
良いプレーを引き出すために協力してやって
審判を強化するしかないのですが、全体とし
て今後を長期的に考えると、やはり育成年代
いくところですよね。いろいろなことが少し
ずつ絡み合って、世界に出ていくとちょっと
の強化が必要です。
ひ弱なところが出てきてしまっているのでは
術と審判が両輪である」という言葉が出てき
たと記憶しています。
技術、コーチは、選手を育てる。選手がピ
ッチで闘う人です。われわれにとっては、ピ
ないかと思います。何か1つの要因でと考え
るよりも、いろいろなことが複合されている
最初に、日本選手を育成していく中で、ど
ッチで実際に実行するのはレフェリーなの
で、レフェリーを育てます。ピッチ上で起こ
のだと思います。運営サイドも含め、
「どう
いうサッカーを目指そう」
、
「ではこのように
るさまざまなことに対し、プレーヤーの環境
を整える人として機能できるよう、レフェリ
指導していこう」
、
「こういう大会にしていこ
う」
、
「レフェリーとしてこのようにやってい
ーを育てていかなくてはなりません。育成年
こう」
、といったように多方面からアプロー
代から良いサッカーができる環境にしていか
なくてはならないと考えています。
チしていって、それでたくましい選手を育成
していかないといけないと考えています。
小野さんがおっしゃった「意志」というの
は非常に大切だと思います。タフなプレーと
松崎:アプローチとしてはまさにそうなので
言われますが、意志がある、ゴールに向か
すが、結果としてどこを目指していくかとい
う。選手が意志を持っていないとレフェリー
うと、日本のサッカーの文化がそのようにな
る。われわれが目指すタフなプレー、子ども
ションを設けています。
前回(2007年)のカンファレンスで小野、
松崎両委員長から、
「選手育成のためには技
のような部分で、技術と審判を両輪としてと
らえていくのか、という点について、ご意見
をうかがいたいと思います。
小野剛・技術委員長(以下、小野)
:布さんも
若い代表選手を世界に連れていった際に実感
され、報告されていたと思いますが、もっと
もっとタフで、なおかつそこで自分の意志を
プレーに込めてプレーしていかないと、なか
なか世界で闘っていけない。最初に連れてい
たちが意志を持ってゴールを目指す、それ
を、誰もがそういうものだと思えるようにな
れば良いということだと思います。その手段
として、小野さんがおっしゃったように、
「どういうふうに運営していこうか」
、
「どう
いう大会にしていこうか」
、あるいは「技術
的にレフェリーはどういうふうにしていけば
いいか」
、ということが出てくるのだと思い
ます。最終的には、誰もがそれがサッカーな
のだ、と当たり前にとらえるようになること
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
8
ですね。倒れたら笛が吹かれるのが当たり前
ではなく、がんばってさらにゴールに向かっ
特集① 大会が選手を育てる
た場合は吹かないで、それを皆が賞賛できる
ような意識を共有できるようになることが文
しまう、という印象は持っています。それに
対し、少しずるく小さくファウルをしていて
とについてお話しいただきたいと思います。
化だと思います。そうなればいいのではない
も吹かれにくく、世界に出たときに戸惑うこ
松崎:技術の方々に感謝すべきなのですが、
かと思っています。
とはしばしばあります。ただ、それを今、声
高に言うつもりはありません。昨年のカンフ
ナショナルトレセン等、技術の施策を参考に
して、いろいろなことができるようになりま
布:そうありたいと思いながら、文化の成熟
にはまだなかなか至らないですね。われわれ
ァレンスでも強調した点なのですが、
「誰か
が何かをしてくれたら自分たちもこうしま
した。まだ1年目ですが、審判トレーニング
センター(審判トレセン)によって、トップ
コーチの側のアプローチも足りない面もある
す」
、
「レフェリーがこれをやってくれたら、
だけではなく、地域、都道府県にさまざまな
かもしれないと思います。ベンチでファウル
を要求したり等、現実にありますね。われわ
われわれコーチもこうします」というようで
は、日本のサッカーは進んでいきません。
ことを伝えることができるようになりまし
た。例えば、タフなプレーに関しても、先ほ
れがもっと育てていくという意識が大切だと
思います。
「こういう大会にしてくれたら」
、
「誰かがこ
うしてくれたら」ではなくて、まず、われわ
ど小野さんが言われたように、強く当たって
倒れたら笛を吹く、いやこれは違うのだ、と
レフェリーの視点として、今の観点と重な
れコーチサイドというのは、何があってもプ
いうことが、地域、都道府県に浸透させられ
る面があるかもしれませんが、なぜ吹かざる
を得ないのか。こういうふうにやってくれれ
レーを続ける意志、ゴールに向かう意志、ボ
ールを奪う意志、それを持ち続ける選手を育
るような仕組みができてきたというところで
す。
ば吹かなくてやっていける、といった点につ
いて、共通理解が不足している面があると感
てようと。まずそれをやることが大事だと思
います。
「誰かが何かをやってくれたら」で
審判の中央トレセンでは、技術と共同のセ
ッションも設けています。ここで意見交換が
じています。
はなく、
「自分たちが何をできるか」をスタ
でき、有意義な連携になっていると思いま
松崎:不足している面にはわれわれの問題も
ート地点に持っていかなくてはなりません。
そういう子どもを真剣にコーチサイドはしっ
す。
また、毎年われわれはスタンダードビデオ
あります。ファウルかファウルでないか、究
極にはサッカーとは何かということにもつな
かり育てていかなくてはなりません。その上
を作成していますが、先日も小野さんと布さ
んに参加していただきました。判定基準につ
がりますが、まずファウルかファウルではな
いかが、まだうまく理解できていないレフェ
ということできると思っています。
いて、あるいはそれ以外にタフなプレーにつ
いて、議論を交わし、こういうビデオをつく
リーも少なくないのが現実です。少年の試合
松崎:カンファレンスでは、いろいろ感動的
っていきましょう、という話ができたのは、
を吹くのは4級の人が多いのですが、その辺
りまで浸透させていかなくてはなりません。
な言葉があったのですが、中でも今、小野さ
んがおっしゃった「われわれがやりましょ
やはり非常に有意義だと思います。
ファウルかファウルでないか。ファウルでな
いのに笛を吹かれては当然不満です。アドバ
う。誰かが将来やるだろうではなく、自らや
りましょう」というのがまさにそうだと思い
布:審判トレセンというのは具体的にどのよ
うに行われているのでしょうか。どのような
ンテージという言葉が出ましたが、アドバン
ました。今、レフェリーの取り組みをいろい
位置付けで、どのように発展させていこうと
テージの前に、倒れたらまずファウルかファ
ウルでないかを判断しなくてはなりません。
ろやっていますが、極力、今やれることは今
やろう、と考えています。いろいろな調整が
されているのか、技術の側もまだよく知らな
い面もありますので、少しお話しください。
判断ができた上で、次にゲームの読みがあっ
て、アドバンテージをとるべきかどうかにな
あって大変ですが…。今やろうということが
ないと、今やってもらえない人たち、子ども
松崎:審判トレセンは始めてまだ1年目です。
ります。その辺りをこれから発展させていか
たちがかわいそうだと思います。
この2、3年は、インストラクターの養成に重
小野:二言目には、
「だってレフェリーがこ
点を置いていこうと思っています。個々のレ
フェリーはわれわれにとってはプレーヤーで
布:一番難しいところですよね。ファウルか
ファウルでないかの判断をするということ
うやって吹いてしまうから」
。そうではない
と思う。まず自分たちでできることをやる。
す。プレーヤーを直接教えるということも重
要ですが、プレーヤーを教えるコーチ、イン
と、流れを読むというところは本当に難しい
何かをやらないと、不利益は選手たちのとこ
ストラクターの養成をまずは重点的に行う。
ところだと思います。自分もそうだったとこ
ろもありますが、では日本のコーチが本当に
ろへしわ寄せとして行ってしまうわけですか
ら。
プレーヤーに教えると、その人だけにしか伝
わらない。インストラクターに教えることに
サッカーを理解して、本当に流れが読めてい
るのか。それができていれば、選手の育て方
布:そうですね。どうしても日本の場合、お
よって、われわれの考えが広められる、とい
うことがあります。本来ならボトムアップで
ももう少し違うアプローチがあるのかなと思
っています。レフェリーサイドで少し足りな
互いに「相手が悪いんだ、相手がこうしてく
れていれば」
、という意見が現実として出て
いきたいところなのですが、今はまず地域を
中心に、地域から何人かが中央へ、という形
いところがあるという話が出ましたが、技術
いると思いますね。
でやっています。
サイドとしてはどうでしょうか。
人が何かをしてくれる、ではなくて自分た
ちが何かをしていこう、考えていこうという
また、今われわれはレフェリーカレッジと
いう活動を行っていますが、これはエリート
小野:そうですね。両面言わせていただくと
すると、世界と比較したとき、若干、正当で
ことで、今いろいろな施策がなされていると
思います。具体的にレフェリーサイドで始め
教育の場です。そこに、審判トレセンから何
人か入れることを考えています。審判トレセ
あっても激しく当たった場合に笛が吹かれて
たこと、今後実施していこうと思っているこ
ンは、われわれの基本的考え方、あるいはレ
で、またお互い、皆で協力して選手を育てる
なくてはならないところです。
9
フェリングの技術等を普及させる場ですが、
それだけではなく、発掘の場にしていきたい
プラスで評価していく。また、ベンチや観
客、サポーターの行動、子どもだったらその
こったことは変えられないのだし、間違いが
あったとしても、「次に向けて直してほし
と考えています。
チームの親や応援団がどのように子どもたち
い」
、
「どういうふうに直しましょうか」
、
「技
に接するかも含めて、そういうのも含めてフ
ェアプレーを考えたいのです。そうすれば、
術から見たらどういうふうに思っています」
、
ということを言っていただかないと、発展し
∼ポジティブな指標での評価を
審判をなじったりするコーチや親から、そう
いうところから良い方向にスタンダードを示
ていかないです。ものの見方を常に一方向だ
けで見ていては、物事は大きくは発展してい
布:実際に、2007年のナショナルトレーニン
すことができるのではないかと考えていま
きません。
グキャンプU-16で一緒にディスカッションを
させていただいて、非常に有意義だったと感
す。大きな規約としてということではなく、
モデルをつくったので、できれば多くの都道
小野:その点については、私は今、技術委員
じています。プレーの映像を見ながら技術、
トレセンコーチサイドと審判トレセンのイン
府県で、いろいろな大会でぜひ採用してみて
いただきたいと考えています。
長の立場になって、ちょっとした驚きを感じ
ているんです。このように、こうしていきま
フェアプレーの概念の転換
ストラクターの方々とで話しができたという
しょう、ということについて絶えず一緒に話
のはとても有意義で、こういうことを繰り返
していけば、だんだん方向性が定まっていく
布:そうですね。どうしても、われわれはマ
イナスの見方、言い方になりがちですね。松
す機会がある。それから、先日のスタンダー
ドビデオ作成のディスカッションでも、ビデ
のではないかと感じました。
技術としては、これからどのように取り組
崎さん、この辺の考え方についてはいかがで
すか?
オを見て、コーチサイドとしたらこういうシ
ーンをもう一つ二つ入れてほしいとか、これ
んでいこうと考えていますか。
はちょっと微妙なのではないか、といった意
小野:まずは指導者への啓発、プロモーショ
松崎:フェアプレーの考え方は100%賛成で
すね。日本人にとって、ネガティブポイン
見を吸い上げてもらえる。大会に行けばよ
く、
「今日のレフェリングはどうでしたか」
、
ンですよね。これは地味だけれど続けていか
なくてはなりません。一つはどういう選手を
ト、マイナスポイントからのものの考え方と
いうのは、早く脱却したいところですね。良
と意見を聞きに来てくれる。絶えず意見交換
ができる。以前、チームを指導していたこ
育てたいかということを指針として伝えてい
く。指導指針はとかくマニュアル化だとかい
いところは認め、褒めてもっと良くしていき
ましょう。悪いところを指摘するのではな
ろ、あるいはプレーしていたころは、もっと
何か、いわば「聖域」のような非常に遠い存
う批判はされますが、その批判を恐れず、も
く、悪いところは良くしていきましょう。そ
在であると感じていました。自分がそう誤解
っともっとこうしていきましょう、と伝えて
いくことは怠ってはいけないと思います。ま
ういう方向でいかないと、技術とか審判とい
う以前に、われわれのものの考え方を変えて
していたように、おそらくわれわれがここで
日本のサッカーを良くするためにこうしてい
た、トレセンなどでも絶えずタフなプレーを
目指していく、まずこれが一番の大きな柱だ
いかなくてはならないと感じています。レフ
ェリー界でもそのように言ってきているので
きましょうと、いろいろ意見交換をしている
ようなことが、地域や都道府県に行くとひょ
と考えています。
すが、なかなか難しいことも事実です。レフ
っとしたらあまり知られていないかもしれな
ただ、それだけではなく、多方面からやっ
ていかなくてはなりません。その一つで、フ
ェリーもどうしても、いけないことを指摘す
るところから始まるので…。でも、われわれ
いと感じています。もっともっと一緒にいろ
いろやっていける余地はたくさんあるのでは
ェアプレーの概念をつくっていこうとしてい
ます。イエローカード、レッドカードの減点
も始めています。
ないかと感じていますね。
法だけのフェアプレーの考え方から脱却しよ
布:実際に松崎委員長は、例えばゲームが終
松崎:スタンダードビデオの話しのときに、
うと。どういうプレーが、どういうサッカー
が推奨するサッカーなのか、ということをポ
わった後に、お互いが冷静な判断のもとに、 「確かに引っ張られているが、ここでもう少
技術、ベンチの指導者、レフェリーとが同じ
しがんばって続ければ、次はアドバンテージ
ジティブな指標で評価しようと考えていま
す。例えば、攻撃的にサッカーをすることで
ビデオを見てディスカッションをして、何か
あれば言ってきてください、というスタンス
を適用する、という説明をしてください」と
いう話がありました。まさにそういうような
あり、プレーに集中し、プレーをできるだけ
ですよね。
ことを技術サイドとしては聞きたいのだなと
スピーディーにすることであり、常にプレー
を続ける意志を持とうとか、そういうことを
松崎:ののしりあっても何も生れません。起
分かり、うれしかったところです。単にイエ
ローカード、レッドカードの基準を示すだけ
では次への進展はありませんね。レフェリー
にとってはまず判定基準を明確に示すことが
必要ですが、技術や一般の人と話す場合に
は、こういうシーンがあったら次はどうして
いけばいいかとか、選手に教えるにはどうし
たらいいかとか、そういう話をした方が良い
ですね。
布:確かに今松崎さんに言われたことは重要
2007ナショナルトレーニングキャンプU-16より 훿AGC/JFAnews
10
だと思います。どうしても、
「はい、これは
特集① 大会が選手を育てる
イエローカード」
「この映像はレッドカード
です」となると、聞く方も、
「ああ、そうで
が、もしかするとまだ全国、また年代でいう
と、低い年代の方であればあるほど浸透して
すか」で終わってしまう。今言われたような
いない面があるのではないかと思います。
考え方こそ重要です。松崎さんと先日もお話
ししたのですが、タックルであってもしっか
子どもが良くならないと、日本全体を良く
していくことは絶対にできないと考えていま
りした正当なタックルか。後方からとか横か
らとかだけではなくて、正当なタックルかど
す。2007年度から公認A級コーチU-12という
ライセンスを新設したのですが、その中での
うか、ということ。意志がそこにあったの
ディスカッションで、県の2級審判インスト
か。たまたま当たっただけなのか、でもここ
は実際に当たっているのだから警告だ、と
ラクターもやっている方が受講していて、
「現実問題として県レベルまで話が下りてく
の選手は関係なく自分でプレーを続ける意志
を持っているという話をしました。これには
か、そういう考え方をわれわれが分かれば、
すごく指導しやすくなると思いますね。
るのが、まだまだ時間がかかるんです」とい
う話をしていました。その辺のことについ
いろいろな要素があるとお話しましたが、そ
の一つとして、彼らは1人審判制に慣れてい
て、トレセンの活用等、何か良い方法はない
ることがあると思います。昨年はU-15日本代
小野:このディスカッションはおもしろかっ
たですよね。ビデオを見ながら、
「ここでが
でしょうか。
表でイタリア遠征に行き、そこでも1人審判
制でした。代表チームが参加する国際大会で
んばれば、これは吹かないですむよ」という
のもあったし、決定的な得点機の妨害でレッ
松崎:今、布さんがおっしゃったように、ト
レセンのところで、地域あるいは都道府県へ
も、です。全然問題なくやっています。オフ
サイドかな、と思って、笛を吹かれる場合も
ドカードになったケースも、
「カバーリング
伝えていくことですね。審判トレセンは地域
あるし、吹かれない場合もある。それがサッ
の選手がもっとがんばって良いポジションま
で来ていれば、これはファウルだけどイエロ
で前期4回、後期4回行っています。この中で
技術の地域インストラクターをお招きしてデ
カーだ、という前提の中でプレーしているん
ですよね。やはりそういう中からたくましさ
ーカードで済むんですよ」とか。そういった
ところを一緒に話していくと、指導者として
ィスカッションするというのも一つの方法と
して考えられます。
であるとか、選手もミスする、それは1人審
判制だから審判も多少のミスも出る。それも
非常にためになると感じました。
もう一つ、これはどういうふうにやればい
いか考えている最中なのですが、4種のとこ
含めてサッカーで、その中でどれだけゴール
を目指して勝ちにこだわれるかというような
松崎:われわれも技術の側、あるいは選手が
ろだと、多くの方は審判資格と指導者資格の
こと等、選手もレフェリーも1人審判制の中
どのように考えているかということを聞くと、
レフェリングに役立つんですよね。非常に大
両方を持っていますよね。そういう人たちに
どうにかしてきちんと伝えたいですね。それ
からいろいろなことを学べるのではないかと
思います。
切なことです。技術の方々も、ルールはどう
か、ということを知って、それを戦術や指導
にはやはり、都道府県レベルでもあるいは地
域レベルでも、カンファレンスまで大きくな
松崎:U-13、14あたり、そしてグラスルーツ
に生かせる部分があるのかなと思います。
いにしてもあのようなことをやっていけない
のレベルでは、審判の勉強をするには、1人
かな、と考えています。
でできるようになった方が良いと思います。
1人でオフサイドを見て、1人で試合全体をコ
布:そうですね、都道府県レベルでもカンフ
ァレンス等を実施しているところが増えてい
ントロールできるようにならないと。それに
は選手とのコミュニケーションも含まれま
審判は選手を、
コーチは選手を、審判を、
すべてがお互いを尊敬し合う
第31回全日本少年サッカー大会より 훿Jリーグフォト㈱
ますしね。
す。自分は笛を吹いたけど、選手が文句を言
布:最初に出てきましたが、
「流れを読む」
ということはサッカーを理解しているかどう
子どもの年代では多くの人がコーチと審判
の両方をやっています。下の育成年代になれ
ってきた。間違えても「ごめんなさい、分か
ってほしい」とコミュニケーションがとれ
かだと思います。だから、われわれコーチで
あれ、レフェリーであれ、サッカーを理解す
ばなるほどコーチと審判は両方やっている人
が圧倒的に多いです。
て、皆が納得できれば良い。そういうことを
やっていくことによって、レフェリーは技術
る。サッカーの「こころ」は何か。いつもわ
例えば、低年齢であれば、1人審判制を、
が高くなる。また、選手、コーチに関して
も、審判は間違えることもあるし、こっちか
れわれトレセンコーチでよく使う言葉なので
すが、ハウツーではなく本質、
「こころ」を
松崎さんもどんどんやってくださいと言って
くださっていますが、そういう中で、お互い
理解してやっていかなくてはならないと話し
ています。
がお互いをリスペクトする環境をつくってい
きたいと考えています。それについてはどう
れど、オフサイドではない、と言ったら行け
ばいいではないか、ということを皆が理解す
お考えですか。
ることは非常に重要なことだと思います。そ
れがサッカーなのではないかと。
小野:難しいですけどね。これで分かった、
ら見たらオフサイドに見えるかもしれないけ
というところがないことですから。絶えず勉
松崎:こちら側からもお聞きしたいのです
強して、絶えず追求していかなくてはならな
い部分ですね。
が、1人審判制はどうですか?
布:もともとサッカーというのはレフェリー
がいなかった競技ですからね。そういう1人
布:そういう中で、今われわれがこれだけ技
小野:私は、1人審判制は大賛成です。先ほ
ど、海外に遠征に行くと日本の選手はすぐに
審判制をやることによって、お互いがリスペ
クトし合う態度が生まれ、それが最終的には
術と審判が頻繁に話しをしているという部分
自分でプレーをやめてしまうのに対し、海外
選手が育っていく過程につながりますよね。
11
今、コミュニケーションという言葉が出まし
たが、例えばレフェリーとして、子どもの試
選手は育ちません。自分で考えてプレーす
る、ということをリスペクトして、なおかつ
小野:そう考えると、やはり試合こそが一
番、考えて自分でチャレンジしていく機会で
合のレフェリーをするときに、こういうこと
一生懸命やってくれるレフェリーをリスペク
あり、その試合が選手を伸ばしてくれると思
を心がけてほしいというようなことはありま
すか。
トして、そこでの最大の主役である人たちを
皆でリスペクトして。そのようにお互いにリ
うんですよね。そのためには、そこにコーチ
としてどう関わっていくか、レフェリーとし
松崎:上からの目線で、相手を子どもだと思
スペクトをするということで良い環境が生れ
るのではないかと思いますね。そのことに関
てどう関わっていくか、そしてどういう大会
を子どもたちのためにやっていくか。それを
ってレフェリーをしてはいけないと思いま
しても今、ユース育成で、子どものサッカー
皆がちゃんとやっていけば、良いサイクルが
す。確かに上から物を言ってしまえば簡単で
すが、それは違います。子どもであっても選
の世界に関わるにはこういう心がけをしまし
ょう、ということをつくっている段階です。
できると思います。そこに向かっていきたい
と思いますね。
手として扱うことが大切です。逆に大人のゲ
ームでも、中学生がレフェリーをしたら、そ
た、と皆が考える。こういうふうになってい
かなくては、もっと良いサッカー文化、競技
試合こそが、考えて、
自分でチャレンジしていく機会
その試合が選手を
伸ばしてくれる
規則の精神の理解は進まないと思います。お
互いに尊重すること。上から見るのではな
布:先ほどのポジティブ指標でとらえたフェ
く、下から上を見るのではなく。そうでない
アプレーの精神。また、子どもであっても、
と子どもたちは、レフェリーの目を見てプレ
ーするようになる。まずは大人の審判がそう
レフェリーも子どもを選手としてリスペクト
するし、コーチも子どもを選手としてリスペ
松崎:ゲームでは本当にさまざまなことが起
こります。いろいろと練習をして、ゲームで
いうことから始めていかないといけないと考
えています。
クトする。そういう環境がつくっていけれ
ば、子どものサッカー環境は良くなっていく
起こるさまざまなことへの状況判断を養うた
めにはやはりゲームです。レフェリーもまさ
のではないかと思いますね。
にそうですね。
も大人が子どもに対し、上から接して言うこ
小野:そうすると、教える、教えられる、で
布:少し観点が変わりますが、レフェリーで
とを聞かせてしまう。そうなってはいけな
い。
はなく、自分で考えて自分で育っていく、試
合を通じて伸びていく、そういう環境が、皆
はユース審判を養成していますね。ユース審
判の狙いについてお聞かせください。
の人はこの試合にレフェリーとして来てくれ
布:「ゲームが選手を育てる」ということ
で、ゲームに関わる大人というのがコーチで
あり、レフェリーであるので、そこでわれわ
れがどう関わるかということが、日本の選手
育成に非常に大切になっていくということで
すね。
布:技術でも大切なことですよね。どうして
で協力すればできていくかなと思いますね。
小野:リスペクトという言葉が出ましたが、
松崎:サッカーには、規範、競技規則がある
いったんプレーが始まったら、お互いにリス
松崎:自分で考える、ということは本当に大
ので、やはりそれを知った上でプレーしなく
ペクトしていくことが大事ですね。レフェリ
ーが選手をリスペクトしてくれる。そういう
切ですね。上からガンと言ってしまうと考え
ない。サッカーは考えるスポーツなのだか
てはなりません。全17条の競技規則を勉強す
ることは必要ですが、やはりゲームなのだか
方向を持ってくれるのと同じように、ベンチ
も選手を、あるいはレフェリーをリスペクト
ら、考えないと。ボールは止まっていない
し、コーチが言うのは一つのアドバイスであ
ら、そこで何がどのように起こるのかという
ことを、実際に身をもって知らなくてはなり
する。さらに言うと、子どもの試合だと親や
って、やはり自分で考えてプレーしないと。
ません。ですからレフェリーをやってもらい
周囲のサポートをする大人の影響力は大きい
ですよね。それらの大人が選手のプレーの意
どうしたらゴールに向かえるのか、と自分で
考えないといけません。
たいと考えています。競技規則、その精神、
フェアプレーということを学んでほしい。決
志をリスペクトしてくれないと、たくましい
して、レフェリーになるためのレフェリーに
ならないでほしい。中にはレフェリーを目指
す人もいる、それはそれでもちろん良いので
すが、ユースのうちは、サッカーをやって、
審判もやって、さまざまなことを学んでほし
い。レフェリーにとってはサッカーを知るこ
とが必要です。ユース審判というのはそうい
う狙いでどんどん発展させていきたいです
し、サッカーを知るということをいろいろな
角度で考えていきたい。選手を目指す人も競
技規則はよく知った方が良い。レフェリーの
気持ちも知った方が良い。
布:分かれてはいない、ということですよ
第31回全日本少年サッカー大会より 훿Jリーグフォト㈱
12
ね。レフェリーとコーチは別なものではな
特集① 大会が選手を育てる
分たちだけでは楽しめないスポーツですから
ね。相手チームがいて、レフェリーがいて、
サッカーを楽しむことができるわけですか
ら。
松崎:相手を傷つけたら選手はいなくなって
しまうからサッカーはできないんだ、と。レ
第31回全日本少年サッカー大会より 훿Jリーグフォト㈱
く、若い選手もレフェリーのことも競技規則
も知らなくてはならないし、だけどプレーは
ーチになりたてのころは、審判に対して少し
距離を感じていました。しかし、勝手に思い
し続けてほしい。われわれコーチもコーチで
あり、特に育成年代ではコーチでありながら
込んでいただけで、実はそうではないのだと
いうことを、皆さんにも知ってほしいと思い
他の試合のレフェリーをやるわけですから
ね。そういう意味では本当に別のものではな
ます。こういった話をいろいろなレベル、各
市町村等でも積極的に行い、技術と審判とで
布:お互いにリスペクトしながら、その中
い、ということを広めていきたいですね。
コミュニケーションをとって、
「すべてはプ
レーヤーのため、子どものため」
、というよ
ポイントを本当に出せるような選手をお互い
が育成していく、という観点で協力していけ
松崎:両方を知らないと、相手方の気持ちに
うな動きがどんどん広がってほしいと思いま
ればいいですね。
なれないですからね。
す。
小野:そういう意味ではユースレフェリーを
松崎:試合後に、熱くなった状態ではやめた
積極的に導入しようとしてくれているし、ま
だ実際には出てきていませんがJリーグを引
方がいいのだけれど、少し冷えたなら、
「今
日のレフェリングはどうだったね。
」
、
「中で
退した選手がファストトラックでレフェリー
の道を進めるようにする準備をしてくれてい
見たらあの選手すごく良かったね。
」
、
「あの
プレーはどうだったの?」
、
「僕はこう思った
ます。そうするとますますお互いが近い存在
よ」というような会話をもっともっとしたら
小野:日本人らしさという点では、勤勉さと
かあきらめないとか、現代社会ではとかくダ
になって良いコミュニケーションができるの
ではないかと思います。
良いと思います。
サいとバカにされがちな要素だったりします
フェリーも試合をうまくコントロールして相
手が生きるようにやって、そうしてこそ自分
の存在感があるのだ、と言っています。
で、日本人らしい選手、日本人のストロング
松崎:私も、日本人らしいレフェリーを育て
たいと考えているんです。例えば勤勉さ等を
生かして。判定はもちろん共通ですが、レフ
ェリングには個性があります。
が、勝手にそう思い込んでしまっていること
こそに、われわれのDNAが持っている日本人
Players First!
小野:自分の都道府県を強くするためにどう
したらいいか、とかね。そういう中で、話を
すべては選手のため、子どものために
していけるようになれば、まだまだいろいろ
としてのものすごいストロングポイントがあ
るのではないかな。そこをもっともっと出し
なことができると思います。
ていって、最終的には「われわれは日本人
布:最後に、レフェリー側から技術に要望が
だ」という誇りを持っていきたい。
あれば、お聞かせください。
布:お互いに同じサッカー仲間なのだという
ことでやればいろいろなことができますね。
松崎:納得のいかない判定があったときに、
誰にでも不満を感じ、それをそれなりに表し
まだまだ少ないけれど、試合後に両ベンチも
レフェリーに握手をしに行くような姿がたく
てしまう面がある。それは仕方ないとして、
さん出てくると良いですよね。
異議を唱える、あるいはレフェリーを追い詰
めるようなことはしないでほしい。レフェリ
ベルなのだから、卑屈になることはない。日
本人として誇りを持ってやっていくべきだと
松崎:相手と競っているので、お互い熱くな
思います。
ーのことも育ててほしいと思います。4級や
3級のレフェリーは、少し上のレベルの試合
るようなことはもちろん出てきてしまいま
す。しかし、全部は難しいかもしれません
布:選手もレフェリーも誇りを持って、日本
に行くとどうしてもナーバスになります。選
が、もっと一緒にやっていける関係ができる
手も同じだと思います。それをそこまで追い
詰めないようにしてほしい。
と思います。海外のように、ピッチの横のパ
ブで試合後に一緒に飲むようなこともおもし
もう一つは、仲間に入れてください、ある
いは仲間に来てください、ということをどん
ろいですね。
どんやってほしいし、やっていきたいです
小野:そうですよね。松崎さんも私もイング
ね。下の年代のところはコーチもレフェリー
も両方やっているのだから、一緒になって育
ランドにいた経験があるのですが、本当にそ
うでした。サッカーの試合は90分で終わりで
てるにはどうしたらいいのかということを、
共に考えていきましょう。
すが、その後はシャワーを浴びて、パブに行
くと相手チームも来て、後からレフェリーも
松崎:審判も同じです。われわれにもストロ
ングポイントがあって、レフェリーもFIFAワ
ールドカップに出場するような世界トップレ
人らしいサッカーを共に育てていきましょ
う。
来て、一緒に乾杯をして、そこまで含めてサ
小野:途中でも言いましたが、選手時代やコ
ッカー。とても良い関係だと感じました。自
写真左から布啓一郎・技術副委員長、
小野剛・技術委員長、松崎康弘・審判委員長
13
育成年代の大会
(5)指導者や応援へのグリーンカード/イ
エローカード/レッドカード
関わる大人の望ましい行動促進
に向けて!
旨に沿った大会をつくっていただきたいと
思います。
育成年代に関わる大人の望ましい行動に
関しては、以前より、年代別指導指針、大
(3)親、応援団の観戦位置制限
親の応援は、子どもたちがサッカーに取
会ガイドライン、保護者向けハンドブック
「めざせベストサポーター」等によって、発
り組むための大きな力となります。JFAで
は、保護者向けハンドブック「めさせ!ベ
チ養成講習会、公認キッズリーダー養成講
習会等
信しています。しかし、さまざまな大会で
まだまだ徹底されているとは言えない現状
ストサポーター」を作成し、望ましい関わ
り方に関して啓発を続けてきています。
(7)大会期間中の子ども(応援の弟・妹)
が、依然として多々見受けられます。今回
の特集でテーマとしているように、そのこ
しかし、依然として、ベンチの真後ろに
陣取り、子どもたちのあらゆる世話を焼き、
とは望ましい育成の阻害要因となりえるも
また大声で指示を出したり、相手や審判に
のです。より良い育成に向け、より良い育
成環境を整えるために、関わる大人に広く
文句を言ったりする姿が見受けられます。
子どもたちの自立のため、準備や片付け
積極的に発信し、輪を広げていく必要があ
ります。
は子どもたち自身がやるようにしましょう。
JFAでは、大会ガイドラインの改訂を機
また、指導者や子どもたち、審判に影響を
与えるような声や態度を示さず、反対のサ
に、特に4種・キッズ年代の大会に関し、こ
の夏に向けて、さまざまなキャンペーンを
イドで応援に徹するようにしましょう。
検討しています。各都道府県、各地区の大
会でも、ぜひいろいろなアイデアを出し、
(4)ポジティブな指標でのフェアプレー賞
(6)大会期間中の親向け研修会
ベストサポーター研修会、公認D級コー
向け企画
JFAチャレンジゲーム めざせクラッキ、
めざせファンタジスタ オープンプレ検定等
(8)審判と技術のセッション
育成の観点から、大会での試合に関して、
審判のインスペクター、技術関係者のディ
スカッション
2.配布・掲示物関連
(1)子どもの大会に関わる大人向けハンド
のトライ
「イエローカード、レッドカードの減点
ブック
関わる大人(指導者、審判、大会運営、
いと思います。
下の年代であればあるほど、多くの方が、
が最も少ないチームがフェアプレー賞」
、と
いうのが一般的かもしれません。そうでは
保護者・サポーター)という切り口での新
ハンドブックを、JFAにて作成準備中です。
指導者であり、審判であり、大会運営者で
もある場合が多いのではないでしょうか。
なく、ポジティブなプレー、フェアでタフ
できることからどんどん広げていただきた
(2)めざせベストサポーターダイジェスト
以下、アイデアの例をいくつか挙げてみ
なプレーをしたチーム、子どもたちをポジ
ティブに励まし、大勢の子どもたちに出場
ます。ご参考にしていただき、トライして
みていただきたいと思います。全国でのア
機会やさまざまなポジションを経験する機
会を与えているベンチ、相手も含めて子ど
クションで、育成年代の競技環境に影響を
与えていきましょう!
もたちを応援し、ポジティブな雰囲気を生
み出すサポーターも含めて、ポジティブな
さまざまなツールをJFAにて検討・準備
中です。都道府県や地区でもアイデアを出
指標でフェアプレー賞を選ぶ考え方にトラ
してみてください。
1.運営・企画関連
版
(3)ポスター、ステッカー等
イしていきたいと思います。
(1)監督会議でガイドラインの趣旨の説
明・徹底
大会ガイドラインの趣旨を、参加する各
チームの監督皆で共有して大会に臨んでい
ただきたいと思います。
(2)ガイドラインの趣旨に沿った大会運営
大会ガイドラインの趣旨に沿って、大会
形式を検討していただきたいと思います。
地区大会レベル等では、趣旨に沿うために
ローカルルールの適用が必要になる場合が
出てくると思います。
「全国大会の規定がそ
うであるから」ということではなく、47FA
ユースダイレクターとの協議で、必要なロ
ーカルルールを適用し、ガイドラインの趣
14
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
種別を超えた連携
成で常に強調しています。この考え方を全国の指導者で共有す
ることで、年代が上がりチームを移っていっても、基本的な幹
が共有されることを常に目指しています。しかし、その一方で、
システムによって物理的にどうしようもない問題も生じます。
このような問題を解決するために、種別を超えたさまざまな
連携が非常に重要になります。種別の各担当はもともと、その
年代を特化して専門的に詳細に考えるために設定された重要な
ものです。そして、それを一歩進め、選手の長期にわたる順調
な育成をさらに促進するためには、ブランクを極力小さくし、
種別の移行をスムーズにしていくことが重要です。
トレセンの区切りは現在U-12、14、16とされています。これ
もその考え方の一環です。さらに細分化した活動を実施してい
ただいている地域も多くあります。FIFAの区分である1月1日生
まれ区切りを採用することによって、一つ上の学年に所属する
早生まれの選手に注目する意識も高まってきました。
国体少年の部のU-16化も、この問題の解決を狙った大きな改
革です。これによって、学年によるスケジュールの過密/過疎
の調整ももちろんありますが、それ以上に、都道府県内での長
期一貫指導体制の確立への動きを促進することが大きな狙いで
もあります。各都道府県内で、種別をまたがったさまざまな努
第62回国民体育大会サッカー競技・少年の部より훿Jリーグフォト㈱
本誌vol.7(2005年5月)のこの項『
「種別」と「年齢区切り」
』
で説明したように、日本サッカー協会(JFA)の加盟登録チー
ムは、年齢により種別に分かれています。基本的には学校の区
切りに対応しており、大会は、各種別の区切りにしたがって行
われているものがほとんどです。
学校単位ということで、3年ごとの区切りとなります。下の
年代に行けば行くほど、3年間の成長の差は心身共に非常に大
きく、同じカテゴリーとして活動したり、試合に出たりという
ことが負担になる場合が多々あります。その成長過程で大事な
ことと、その中でプレーしていく上で有利となることが異なる
面があり、早熟の子ばかりでチームが構成されるようなことも
珍しくありません。成長速度には個人差が大きく、その種別で
活動する間に、最適な環境を与えることが時に困難なこともあ
ります。
また、その種別の大会による試合機会が、最上級学年の選手
に集中し、下の学年では機会を得ることが難しいことも多くあ
ります。さらに、その種別ごとにチームが変わり、指導者が変
わるケースが多いと思いますが、移行期に試合や活動のない長
期のブランクが生じることがあります。また次のチームに入り、
最下級生としてしばらくの間機会がないと、そのブランクは実
質非常に長いものとなります。これは、それぞれが特有の貴重
な時期である選手の若年層の育成過程において、非常にもった
いないことです。
長期的視野に立った一貫指導の重要性の考え方は、指導者養
力がなされ始めていることは、今後に向けて非常に大きな変化
を生むことになると期待しています。各種別の指導者が合同で
指導を行ったり、トレセンマッチデーを共有して活動を共にし、
交流、ディスカッションの場を持つ等、さまざまな工夫がなさ
れ始めています。
キッズ年代からU-12への移行も例外ではありません。新たな
取り組みとして、専門の組織をつくって開始したキッズの活動
は各都道府県FAで定着してきました。今度はその子たちを、U10からU-12年代へと、サッカー環境の面でうまくつなげていか
なくてはなりません。
また、現在、リーグ戦の導入とともに、全体の競技カレンダ
ーの調整の実現に向けて、検討が行われています。これも、4
種から3種、3種から2種へのブランクを小さくし、プレーでき
る機会を長くし、移行をスムーズにすることにつながっていき
ます。
各種別内での努力だけでは解決しない問題も増えてきました。
種別をまたがったトータルな問題の把握、解決、交流を促進す
るために、育成年代全体を見る存在として、JFA、9地域、そし
て47都道府県FAに『ユースダイレクター』という役割を設定し
ています。これは、非常に多岐にわたる仕事であり、各種別と
の密接な関係がなければ困難な仕事です。ぜひ地域の皆さんが、
趣旨を理解する仲間となり、協力して活動を進めていただきた
いと思います。
困難な問題はたくさんあると思いますが、何よりも、
「プレ
ーヤーズファースト!」
。長期的に見た選手のより良い育成を
目指して、協力してがんばっていきましょう。
★このページでは、JFAが推薦している事業や活動、サッカーに関する用語・事項を毎号1つ紹介・解説していきます。
15
連 載 第 19 回
キッズドリル紹介
(動きづくり)
1 ジャンケンゲーム
進化ジャンケン
勝ち
ステップ1:
ハイハイジャンケン
負け
勝ち
ステップ2:
ひざ立ちジャンケン
負け
勝ち
ステップ3:
ジャンケン
<ルール>
・グリッドの中で全員、
「ハイハイ」からスタート
・勝ち進んでゴールを目指す
ゴール!!
2 ヘイヘイゲーム(オニごっこ)
(1)
<ルール>
(1)
・コーンにタッチしているとオニにつかまらない
・1本のコーンには、1人しか入れない
・後から人が入ってくると、前からいた人は、移動しな
くてはならない
・タッチされたら、オニは交代する
(2)
<ルール>
・オニは空いているコーンを狙ってタッチする
オニ
(2)
・他の4人は協力してオニに空きコーンをタッチされない
ように移動して空きコーンを守る
・時間を区切ってオニを交代する
オニ
[サンフレッチェ広島 重富計二]
2007Jリーグアカデミー キッズ研修会より
16
一語一会
すばらしい選手が誕生するのを待っていたら、
永遠に待ち続けることになるかもしれない。
アンディ・ロクスブルク
アンディ・ロクスブルク氏(写真は第5回フットボールカンファレンスより)훿Jリーグフォト㈱
アンディ・ロクスブルク(UEFA技術委員長)
。
「すばらしい選手が誕生するのを待つのも良いでしょう。しかし永遠に待ち続けることになるかもしれません。
成功するためには、デザイン、つまりプランを立て、設計をして取り組んでいかなければなりません。
偶然に勝利を得ることはない、と言うことです。
」
第3回フットボールカンファレス(2003年)での言葉。
17
活動報告
Reports from
Japan National Teams
目指せ!世界のトップ10
U-19日本代表
【報告者】牧内辰也(U-19日本代表監督)
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
カタールU-19国際親善トーナメント
できる走力の向上
(グラウンドを素早くアップダウンできる動きの連続性をさらに
高めたい)
●攻撃時のリスクマネージメント
攻撃時の相手マークの確認と処理、セカンドボールの予測。攻撃
時に全員が前がかりになりすぎ起点となる選手のマークを外し、
1.概要
(1)日程:2008年1月15日∼31日
(2)会場:カタール・ドーハ
2.目的
カウンターを受けて失点につながった。
6.まとめ
エジプト代表、ドイツ代表、ポーランド代表の強国とグループ予
選を戦えたことは貴重な経験となった。厳しい対戦の中から自分た
・国際親善試合を通して選手強化育成、選考
ちのサッカーを展開し、ポイントを重ねて予選突破を果たし、決勝
までの5試合を戦うことを今大会のチーム目標とした。
・チームコンセプト理解、実践
・AFC U-19ユース選手権(アジア最終予選)に向けたシミュレー
エジプト戦は、初戦ということもあり、過度に緊張したことと、
初めて組み合わせる選手がいたこともあり、簡単なパスミスが目立
ション
3.大会結果
った。相手にもミスが多く助けられたが、身体能力の高さ、ボール
扱いの巧みさ、わずか2、3歩でトップスピードに乗ってしかけて
くる個人技の高さは目を見張るものがあった。
【予選リーグ】
日本 3-0 エジプト 日本 4-2 ドイツ 日本 0-1 ポーランド
局面の1対1の攻防に加え、攻守に数的優位をつくり出す動きを
意識し、粘り強くプレーしたことが勝利に結びついたと思う。
【決勝トーナメント】
(準決勝)
ドイツは、フィジカル面に優れ、組織的な守備も見せた。1対1
に強く、スピードのある選手が前線に構えていた。中盤には展開力
日本 2-1 中国 ポーランド 1-0 ウズベキスタン
(3位決定戦)
(決勝)
ウズベキスタン 2-1 中国 日本 6-1 ポーランド
のある選手が試合をコントロールする、今大会最も力のあるチーム
だった。ボールを支配される時間帯が長く、後方にブロックを築き
カウンターをしかける展開になった。後半に入り、前線が積極的に
4.成果
DF背後を狙って起点をつくり、そこに複数の選手が絡んでゴール
を奪い、相手を突き放したことは大いに評価したい。効果的に点数
●特徴の異なる国との対戦により、チームの強みと課題が明確にな
を奪い、試合を優位に進め、慌てず自分たちの戦い方に責任を持っ
った。
●自分たちのプレーに自信を持ち、落ち着いた試合運びができるよ
てプレーしたことが、勝利に結びついた要因だと思う。
グループリーグ最終戦で対戦したポーランドは、フィジカル面に
うになってきた。
●前方への「くさび」
、スペースへのボールを効果的に入れて起点
優れ、堅く組織的な守備から、スピード溢れるFWを前線に配置し
カウンターアタックをしかけてくる相手だった。守備に関しては大
をつくり、後方から複数の選手が絡んで決定機をつくり出すプレ
きく崩されてピンチを招くシーンは少なく、むしろ自分たちのビル
ーが増した。
●前線と連動して方向を限定して奪う、ボールを中心とした意図的
ドアップミスや奪って前に出て行くときに入れ違いになり、何回か
危ない場面もあった。しかし、1対1、2対2の局面の戦いで上回る
な守備が見られた。
5.課題
●ボールを失わないようにしながら前にプレーすること (カウン
ことが多く、試合の展開を優位に進めていた。奪ってから前線に思
うように起点をつくれず個人に頼る場面が増え、後方からの飛び出
しにも影響した。後半に入って裏を突く動きが増し、起点をつくっ
て後方から飛び出す回数も増え、決定機も幾度となくつくり出した
ターアタックができないときにDF、MF間で落ち着いてボールを
が、最後までゴールを割ることはできなかった。
展開し、前線の動き直しの時間と相手DFに隙間をつくるパスワ
ーク)
準決勝の中国は、上背があり技術も確かで運動量も豊富と警戒し
なければならない相手だった。立ち上がり、ミス絡みで先制された
●走力
1way→2wayへ。攻撃と守備の両面をダイナミックに素早く移行
が、落ち着いてプレーを続け、早い時間帯にセットプレーから同点
とした。後半に入りボールと人がスムーズに動き始め、主導権を握
18
U-18日本代表vsU-18ミャンマー代表훿JUN MATSUO
Reports from Japan National Teams
って試合を進めたが、最終局面で時間をかけ過ぎてゴールを奪えな
トレーニングでは息苦しさを訴えており、初戦のゲームでは後半、
いまま延長戦に突入した。中央に集まりがちだったボールを一度サ
イドに展開し、そこから中に折り返して決勝点を奪うことができ
足が止まったが、それ程大きな問題ではなかった。気候は日本の初
夏を思わせるような気候で、日中は30度近くまで上がるが、湿度が
た。
低いので日陰は涼しく感じた。
決勝は予選で惜敗したポーランドとの対戦。選手も決勝戦という
こともあり、高いモチベーションで臨むことができた。試合の展開
2.大会形式
も主導権を握り、攻撃では時間をかけずにボールを素早く動かし、
複数の選手が絡む攻撃が随所に見られ、よりタイトにマークに来る
6チーム4ブロックに分かれ、各ブロック上位2チームが決勝トー
ナメントに進出する方式であった。カテゴリーはU-18で、U-19の
守備陣を翻弄した。守備は奪われた瞬間から前線の選手がボールア
オーバーエイジが3人まで認められた。出場チームはヨーロッパか
タックに行き、周りがすぐさま反応する「ボールを中心とした守
備」が機能し、相手から自由を奪った。相手の単調なカウンター狙
らレアルマドリード(スペイン)をはじめ、ノルウェー、ロシア。
アメリカ大陸からアメリカ、コスタリカ、アルゼンチン、チリ、パ
いと比較的絞りやすい攻撃に押さえ込んでいて、前半で4得点を挙
げ、相手の戦意を抑え込むことに成功していた。後半も自分たちの
ラグアイ、ボリビア、ベネズエラ、ウルグアイ。そして地元メキシ
コのクラブチームが出場。日本とアメリカはU-17の代表チームとし
やるべきプレーに意識を集中させ、最後までチームとしてまとまっ
てプレーするよう働きかけた。後半、カウンターから1失点したが、
て参加した。
最後まで集中力を切らすことなく戦い勝利したことは評価できる。
われた。
大会全体を振り返り、どの試合も積極的にプレーし、集中を切ら
すことなくチームとしてまとまった戦い方ができてきた。ボールを
3.大会結果
試合時間は70分で予選リーグから決勝まで8日間、毎日連戦で行
支配され苦しい時間帯や先制されて後手に回った展開など、さまざ
まな局面においても冷静に自分たちのやるべきプレーに意識を集中
【予選リーグ】
第1戦 日本 1-2 スタバエク(ノルウェー)
して戦い続け、勝利に結びつけたことは、選手たちにとっても大き
第2戦 日本 0-3 モンテレイ(メキシコ)
な自信につながったと思う。
今後、所属チームに戻り、今回課題として自身の中に残ったも
第3戦 日本 1-2 サプリサ(コスタリカ)
第4戦 日本 3-3 カトリカ(チリ)
の、また強みとして自信となったものを発展させ、継続して力を発
揮できるよう努力を続けてほしいと思う。
第5戦 日本 0-4 アトラス(メキシコ)
※日本は予選リーグ6チーム中6位
【決勝トーナメント】
(準々決勝)
チーバス(メキシコ)
3-2 エストリアンテス(アルゼンチン)
サプリサ(コスタリカ) 2-1 ネカクサ(メキシコ)
ロコモティブ(ロシア) 1-3 レアル・マドリード(スペイン)
フベントゥ(メキシコ) 1-5 アトラス(メキシコ)
(準決勝)
チーバス 1-1(PK8-7) サプリサ
アトラス 2-0 レアル・マドリード
(3位決定戦)
カタールU-19国際親善トーナメントより
U-17日本代表
【報告者】布啓一郎(JFAユースダイレクター)
コパ・チーバス2008
サプリサ 1-0 レアル・マドリード
(決勝)
チーバス 3-0 アトラス
4.成果
(1)攻守の切り替え
初戦もそうであったが、2戦目のモンテレイ戦で、相手はボール
を奪ったら時間をかけずにしかけてきた。そしてチャンスにはゴー
1.概要
(1)期間:2008年1月23日∼2月4日
(2)場所:メキシコ合衆国・ハリスコ州グアダラハラ市
ル前に人数をかけパワーを持って攻撃をし、ボールを奪われたら相
手より早く帰陣していた。特に日本がボールから遠い逆サイドの選
手が守備に戻らずに失点したのに対して、相手は逆サイドがピンチ
のときには全速力で戻っている。ミーティングでその場面の映像を
人口約200万人のグアダラハラはメキシコ2番目の都市であり、標
見せる等を通して、サッカーとして当たり前のことができている相
高1,500mに位置し、メキシコのプロチーム・チーバス、アトラス、
テコスの本拠地になっている。高地であるため、選手は到着翌日の
手と、できていない日本の差を選手は理解した。そして3戦目、4戦
目はチーム全体が常にアラートなサッカーを展開することが徐々に
19
Reports from Japan National Teams
できてきた。
(2)早い判断からのパスワーク
まだ回数は決して多くないが、ボールを動かしながら早く判断し
て、ボランチやFWを起点にした展開や、前線の動き出しに他の選
手が反応して、スペースを共有する場面もつくることができた。日
本が世界で闘うためには判断と技術の質を上げて、人とボールが動
くサッカーを展開しなくてはならない。まだ十分とはいかないが、
選手はコンセプトを理解し、トライしていた。
(4)個の守備力
守備ではブロックをつくり、連動しながらプレスディフェンスを
行うコンセプトは理解して行えていた。しかし、個人の守備力に関
しては、1対1で確実に守れる選手はいなかった。どのチームもセン
ターディフェンスには、屈強で1人で守れる選手がいる。サイドデ
ィフェンスにおいても、スピードがあり1対1の対応は厳しく行って
いた。日本ではしかけが弱く表面に現れないが、海外のアタッカー
のしかけを受けると明らかに1対1の対応には弱さが出ていた。ヘデ
ィングにおいても最高地点でとらえられないことや、競り合い時に
不必要な手を出してファウルをとられる場面があった。また、コー
(3)ファーストディフェンスのボールプレスとラインコントロール
初戦のスタバエク戦では、チーム全体でブロックをつくり、連携
してボールを奪うことを意識して行えていた。しかし2失点は、ボ
ールプレスが甘く、前方へのフィードが可能な状態で、日本のディ
フェンスラインが下がる準備を怠ったために喫したものであった。
ブロックをつくりプレスをかけるためにラインを上げるときと、相
手の縦へのフィードに対応する準備、判断をミスすると即失点につ
ながる。それは、ボールプレスが甘ければ、オフの選手がタイミン
グ良くディフェンスの背後に走り込んでくるからで、攻撃の優先順
位は間違えない。だから守備の準備も隙をつくることなく、ボール
プレスとラインコントロールの関係が徐々に良くなっていった。
5.課題
(1)キックの質(シュートを狙う姿勢も含む)
シュート力(シュートレンジの広さや常にゴールを狙う姿勢)や
ディフェンスライン背後へのロングフィードの精度の差、サイドチ
ェンジのボールスピードなど、キックの質には大きな違いがある。
日本は背後にフィードされたボールを反転して蹴る力がなく、前に
押し戻せない。また、ビルドアップに関してのパススピードの違い
もあり、海外のチームは68mの幅を有効に使うことができている
が、日本はピッチを広く使えない場面が多かった。
ナーキックの守備も、マークをしているつもりでも先に走り込まれ
てシュートをうたれてしまう場面が多かった。個人の守備力はDF
だけの問題ではなく、全員がもっと相手を近くでとらえ、身体を当
てていくことが必要だと思われる。
6.全般的な印象
海外、特に中南米のチームはシンプルにサッカーを行っていた。
言い換えればシンプルにサッカーを行える技術を有していた。プレ
ッシャーがあっても失わない技術があり、切り替えではディフェン
スラインの背後に精度の高いパスを供給してくる。また、相手の守
備が整っているときにはボールを動かしてビルドアップを行う。状
況に応じてサッカーを行っている印象を強く受けた。
日本選手との違いを考えると、サッカーの理解度の違いがあると
思われる。変化する状況下で何をするべきか、ロングフォワードパ
スを主にするチームや、ビルドアップを行うチームとか色分けはな
い。ゴール奪う強い意識から逆算したプレーが多く、積極的でダイ
ナミックなサッカーを展開している。
現代サッカーでは、チームも個人も「or」では通用しない。ドリ
ブルタイプとかパスタイプとかではなく、ドリブルもパスもできる
選手、ダイレクトプレーもポゼッションも行えるチーム、攻撃も守
備もできるチームであり個人であるのが、今回の上位に進出したチ
ームに共通していた。
(2)ビルドアップ
海外のチームが余裕を持ってセンターディフェンスがビルドアッ
プしてくるのに対して、日本はセンターディフェンスでボールを動
かすことができず、ボランチがディフェンスラインまで下がってボ
ールを受け、自陣内の人数が多くなってしまうことが多い。また相
手陣内でも意図的にFWに縦パスを入れてオフで関わること、また
幅を使うことが少ない。相手のプレッシャーの中でのコントロール
と判断に関して十分とは言えず、意図的なビルドアップがなかなか
うまくできなかった。
(3)オンの選手がパスとドリブルの選択肢を持っていない、またオ
フの選手の関わり不足
海外のチームはボール保持者が前を向いているときには、ダイア
ゴナルランやプルアウェイなど、多くの選手がスペースに動き出
す。しかし日本は、ボール保持者はドリブルしかない突破になって
いること、そしてボールのない選手の動き出しが少なく、攻撃の選
択肢を多く持つことができていなかった。
コパ・チーバス2008より
20
活動報告
JFA GK
プロジェクト
キリンチャレンジカップ2008
(日本代表vsボスニア・ヘルツェゴビナ代表)より
훿Jリーグフォト㈱
日本代表候補
トレーニングキャンプ
【報告者】加藤好男(日本代表GKコーチ)
1.キャンプ概要
2008年1月15日より1月23日まで鹿児島
県指宿市で2010FIFAワールドカップ南ア
フリカ・アジア3次予選に向けたキャンプ
JFA Goalkeeper Project
since 1998
1976年4月15日生 187cm/80kg
今号では日本代表トレーニング
キャンプほか、U-19日本代表が
出場したカタールU-19国際親善
トーナメント、U-17日本代表が
出場したコパ・チーバス2008
の報告をお送りします。
・ボール感覚が戻ると、次第にゲーム感覚
●川島永嗣(川崎フロンターレ)
が戻り、大学生相手に行った練習試合で
1983年3月20日生 185cm/80kg
●西川周作(大分トリニータ)
少ない時間の中、確実にプレーが行えた
こと。
1986年6月18日生 183cm/78kg
・チーム戦術を浸透させる中で目的意識を
持ち、各自が集中してトライしたこと
4.GKトレーニング
(1)コンディション調整
(接近・展開・連続)
。
・自主トレ時間を設けたことで、個人が不
が開催された。天皇杯が終了して2週間後
オフ明けからシーズン期へ向けた一般
足するところや課題に対する取り組みを
の集合だけに選手のコンディションはまち
まちであったが、31名の中から25名前後
体力の回復およびGKの特異性に応じ
たフィジカルトレーニングを行った。
積極的に行えたこと。
・オリンピック日本代表監督(反町康治監
に選考される厳しい競争の中でキャンプは
行われた。このキャンプ中、紅白戦をスタ
(2)ボールフィーリング
ボール感覚の回復、空間認知、ボール
督)が参加したことで、世代間を越えた
つながりと連携がとれたことは今後の両
ートに鹿屋体育大学、九州学生選抜と練習
を使った調整力向上、巧緻性の回復、
試合を行い、コンディション調整および選
考、そしてチーム戦術確認を目的に実施さ
キャッチ・パンチ・ディフレクトなど
(3)シュートストップ
れた。経過は良好で通常2∼3週かかる作
業を9日間で順調に終えた。
キャッチング、移動技術、ローリング
ダウン&ダイビング、ディフレクティ
2.キャンプ目的
(1)コンディション調整
オフ明けの体力回復およびボール・ゲ
ーム感覚の回復
(2)選手選考
2010FIFAワールドカップ南アフリ
カ・アジア3次予選第1戦対タイ戦に
向けた選考
(3)チーム戦術の確認
「接近、展開、連続」といったチーム
戦術の確立
(4)ゲーム体力の強化
ローパワートレーニングを採用した体
力強化促進
(5)コミュニケーション
選手間、スタッフ間、チーム間のコミ
ング、アングルプレーなど
代表にとって円滑に交流できるものとな
った。
6.今後の展開
このキャンプから選手を選考してキリン
チャレンジカップ2試合を戦うこととなる。
(4)ブレイクアウェイ
フロントダイビング、ブロッキング、
したがって当面の目的である2010FIFAワ
ールドカップ南アフリカ・アジア3次予選
1対1、1対1(アングルプレー)など
(5)クロス
対タイ代表を踏まえて選手選考しなければ
ならない。また、キリンチャレンジカップ
ノーマルクロス、アーリークロス、プ
ではチリ代表、ボスニア・ヘルツェゴビナ
ルバック、パンチング、ゴール前の状
況(1対1、2対1、2対2、3対2、3対3)
代表という、タイプの違った相手と戦わな
くてはならない。現状の相手チーム分析と
など
(6)フィールドプレー
パス&コントロール、クリアリング
(ワンタッチ、コントロール)
、パス&
サポート
(7)ディストリビューション
スローイン、キック(プレス、ボレー)
など
日本代表チームのゲーム戦術を構築して、
指宿から都内宿舎へ移行する中、取り組ま
なければならない。
日本代表
キリンチャレンジカップ2008
【報告者】加藤好男(日本代表GKコーチ)
5.成果
1.大会概要
3.GK招集選手
・オフ明けにしては選手個人が自覚を持っ
てキャンプ・インできたこと。
「キリンチャレンジカップ2008」が
2008年1月24日より1月30日まで国立競技
●川口能活(ジュビロ磐田)
1975年8日15日生 180cm/77kg
・高い意識を持って集中して取り組み、コ
ンディション回復およびゲーム体力の回
場で開催された。日本代表は指宿でのキャ
ンプを終えて、選手が31名から25名に選
ュニケーション
●楢崎正剛(名古屋グランパス)
復ができたこと。
考され都内で再集合となった。キリンチャ
21
レンジカップでは、1月26日にチリ代表と、
1月30日にはボスニア・ヘルツェゴビナ代
表と戦った。チリは、1月2日よりチリ国
内でキャンプをスタートさせ、1月21日に
はJヴィレッジへ入って試合の準備をした。
若手中心のチームではあったがコンディシ
ョンも良く、まとまりのあるアグレッシブ
(5)フィールドプレー
パス&コントロール、クリアリング
(ワンタッチ、コントロール)
、パス&
サポート
(6)ディストリビューション
スローイン、キック(プレス、ボレー)
など
なサッカーを展開した。また、ボスニア・
ヘルツェゴビナは、平均身長で日本を大き
5.成果
く上回る大型チームで旧ユーゴスラビアの
・25名に絞られたメンバーでの集合に気
チームらしく個々のスキルではレベルの高
さを発揮していた。日本は1勝1分けで2戦
持ちも新たに闘うモードとなってきたこ
と。
を終えたが、2月6日の2010FIFAワールド
カップ南アフリカ・アジア3次予選対タイ
・相手チームの分析から、いかに自分たち
のサッカー、スタイルを主導で闘うかと
代表戦に向けて良い調整となった。
いった取り組みができたこと。
フリカ・アジア3次予選」に向けたミニキ
ャンプが開催された。このキャンプでは、
キリンチャレンジカップで招集された25
名がそのまま呼ばれ再集合となった。キャ
ンプでは、雪に見舞われる悪天候の中でも
選手たちは集中した取り組みで試合に向け
た準備を進めた。アジア3次予選第1戦は、
2月6日にタイ代表と埼玉スタジアム2002
で戦った。
タイは、1月中旬よりイングランドでキ
ャンプをスタートさせ、2月2日には日本
へ入って試合の準備をした。しかしながら、
慣れない悪天候にいら立ちを隠せず、関係
者に当たっていた。また、試合直前になっ
てアジア2次予選の累積警告が持ち越され
2.大会結果
・ゲーム戦術を構築していく中で、非公開
練習を実施し、集中した環境でトレーニ
ることが判明し、2名の主力選手が日本戦
において出場停止となった。
1勝1分け 総得点:3、総失点:0
第1戦 対チリ 0-0
ングが行えたこと。
・セットプレーの見直しから、攻守におい
試合は、FKから遠藤保仁が直接決めて
先制したものの、カウンターから同点に追
出場GK:川口能活
て時間をかけた中でトレーニングが行え
いつかれる厳しい展開となった。しかし、
国際Aマッチ111試合出場
第2戦 対ボスニア・ヘルツェゴビナ 3-0
たこと。またその成果の一端が試合で見
られたこと。
後半に入ると日本が地力を発揮して追加点
を重ねた。終わってみれば、相手退場者を
得点者:山瀬功治2、中澤佑二
出場GK:楢崎正剛
国際Aマッチ52試合出場
3.GK招集選手
●川口能活(ジュビロ磐田)
●楢崎正剛(名古屋グランパス)
●川島永嗣(川崎フロンターレ)
4.GKトレーニング
(1)コンディション
ステップワーク、身体調整能力の回復
と向上、アジリティー、体幹筋力向上、
メディシンボール(4kg)など
(2)シュートストップ
キャッチング、移動技術、ローリング
ダウン&ダイビング、ディフレクティ
ング、アングルプレーなど
(3)ブレイクアウェイ
フロントダイビング、ブロッキング、
1対1、1対1(アングルプレー)など
(4)クロス
的、選手の関わりにおいて狙いのシーン
が出てきたこと。また、そのことによる
課題の抽出ができあがったこと。
6.今後の展開
キリンチャレンジカップ2試合を経て、
自チームの分析と評価を実施して、当面の
目的である2010FIFAワールドカップ南ア
出したものの4-1と圧勝した。
2.試合結果
第1戦 対タイ 4-1
得点者:遠藤保仁、大久保嘉人、中澤佑二、
巻誠一郎
出場GK:川口能活 失点:1
国際Aマッチ112試合出場
3.GK招集選手
フリカ・アジア3次予選対タイ戦(2/6)に
向けた準備をしなければならない。また、
●川口能活(ジュビロ磐田)
●楢崎正剛(名古屋グランパス)
現状のタイの分析と日本代表チームのゲー
ム戦術を構築して、2月1日より千葉県習
●川島永嗣(川崎フロンターレ)
志野市へ移動して、新たな切り替えで取り
組まなければならない。
日本代表
2010FIFAワールドカップ
南アフリカ・アジア3次予選
【報告者】加藤好男(日本代表GKコーチ)
ノーマルクロス、アーリークロス、プ
ルバック、パンチング、ゴール前の状
1.大会概要
況(1対1、2対1、2対2、3対2、3対3)
2008年2月1日より2月4日まで千葉県習
志野市で「2010FIFAワールドカップ南ア
など
22
・チーム戦術である「接近・展開・連続」
において、時間的、空間的、タイミング
4.GKトレーニング
(1)コンディション
ステップワーク、身体調整能力の回復
と向上、アジリティー、体幹筋力向上、
メディシンボール(4kg)など
(2)シュートストップ
キャッチング、移動技術、ローリング
ダウン&ダイビング、ディフレクティ
ング、アングルプレーなど
(3)ブレイクアウェイ
フロントダイビング、ブロッキング、
1対1、1対1(アングルプレー)など
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
U-17日本代表
コパ・チーバス2008
【報告者】阿江孝一
(ナショナルトレセンコーチ)
1.日程
1月23日 集合、トレーニング
24日 トレーニング、移動
(メキシコ入り)
25日 トレーニング
26日∼30日 コパ・チーバス2008
(35分ハーフ×5試合)
2月1日 練習試合対チーバスUSA
(アメリカ)
(40分、35分)
2日 練習試合 対ナシオナル
(パラグアイ)
(35分×2)
2.招集GK
日本代表候補トレーニングキャンプより훿Jリーグフォト㈱
●金谷和幸(ガンバ大阪ユース)
(4)クロス
ノーマルクロス、アーリークロス、プ
ルバック、パンチング、ゴール前の状
況(1対1、2対1、2対2、3対2、3対3)
など
(5)セットプレー
FK、CK、スローイン、ゴールキック、
PKなど
(6)フィールドプレー
パス&コントロール、クリアリング
(ワンタッチ、コントロール)
、パス&
サポート
(7)ディストリビューション
たこと。またその成果の一端が試合で見
られたこと。
・チーム戦術である「接近・展開・連続」
において、時間的、空間的、タイミング
的、選手の関わりにおいて狙いのシーン
が出てきたこと。また、そのことによる
1991年4月9日生 184cm/72kg
●中村隼 (浦和レッズユース)
1991年11月18日生 182cm/70kg
3.大会結果
第1戦 日本 1-2 スタバエク
(ノルウェー)
第2戦 日本 0-3 モンテレイ
(メキシコ)
課題の抽出ができ上がったこと。
6.今後の展開
GK:中村 70分出場 1PK
昨シーズン終了後から短いチームで約1
カ月後、長いチームで約2カ月というオフ
を挟んだ新シーズンが幕を開けた。代表チ
ームの公式戦が国内リーグ開幕より約1カ
第3戦 GK:金谷 70分出場
日本 1-2 サプリサ
(コスタリカ)
スローイン、キック(プレス、ボレー)
月早いスタートを切った中で2010FIFAワ
など
ールドカップ南アフリカ・アジア3次予選
が行われ、当初の狙い通り勝点3を得るこ
第4戦 GK:中村 70分出場
日本 3-3 カトリカ(チリ)
とができた。
今後は第2戦対バーレーン戦(3/26、ア
第5戦 GK:金谷 70分出場 1PK
日本 0-4 アトラス(メキシコ)
ウェイ)が控える。しかしながら、代表ス
練習試合① 日本 5-0 チーバスUSA
(アメリカ)
5.成果
・アジア3次予選第1戦を勝利し、勝点3を
挙げたこと。
・ホームではあるものの4得点を挙げたこ
と。
ケジュールとして東アジアサッカー選手権
決勝大会(中国・重慶)への参加がある。
・相手チームの分析から、いかに自分たち
のサッカー、スタイルを主導で闘うかと
対朝鮮民主主義人民共和国戦(2/17)、対
中国戦(2/20)、対韓国戦(2/23)といっ
いった取り組みができたこと。
た3試合に向けた遠征が2月12日から始ま
・ゲーム戦術を構築していく中で、非公開
練習を実施し、集中した環境でトレーニ
る。怪我やコンディション不良の選手を除
く22名での参加となる。この3連戦でさら
ングが行えたこと。
・セットプレーの見直しから、攻守におい
なるチーム戦術の確立と対戦相手分析およ
び各選手間のコンビネーションプレーの確
て時間をかけた中でトレーニングが行え
立を目指し大会へと挑む。
GK:金谷 70分出場
2CK
GK:中村 40分+35分出場
練習試合② 日本 4-2 ナシオナル
(パラグアイ)
GK:金谷 70分出場
4.成果と課題
今大会に入る前にGK2人と話をして主な
テーマを3つに絞った。
(1)ゴールを守るための良い準備を続ける
23
グッドポジションの連続・コーチング
による味方と連動した守備のオーガナ
高いクロスにチャレンジできたのは収
穫。ただ、質が高いのでクロスが上げ
を引き出すサポートでチームを助けてい
た。
られる前の準備が遅れるとチャレンジ
できないときもあった(CKでも同じ
モンテレイのGKも味方DFがプレッシャ
ーを受けて困っているときに、バックパス
ことが言える)。つかむことができる
を受けようと自分から良いタイミングで引
状況で弾いてしまうという判断の課題
も新たに出てきた。
き出すことができていた。また、日本戦で
の3点目はオウンゴールだったが、GKから
今大会では失点数が多かったが、それぞ
のカウンターのロングフィードからであ
り、前線の状況(2対2)が確実に把握で
(1)2人共、連続して良い準備を続けてい
れに意味があるということを2人は感じ取
きている上での必然的に起きたプレーであ
た。ゴール前でのシュートストップも
良い部分が多かった。ペナルティーエ
っていた。今後、技術的なものの成長はも
ちろんだが、精神的な成長も必要で、後方
り、戦術眼を持った選手だという印象が残
った。
リア内でのブレイクアウェイは勇気の
あるプレーが多く出せ、味方を助ける
からの守備のオーガナイズを、自信を持っ
て行えるようになることが重要だと感じ
この世代の中南米のGKは身体能力が高
く、身のこなしがスムーズな選手が多かっ
ことが多かった。課題としてはDFラ
た。これからチームに戻ってそれぞれの課
た。キャッチングの技術はそれほど高くは
インが上がったとき、位置が低いまま
でカバーリングが遅れる場面があった
題に対しての取り組み方次第では大きく成
長できると考えられる。
ないが、それでカバーできているようだっ
た。また、空間認知能力が高く、クロスボ
ことが挙げられる(この問題からの失
点もあった)
。
5.トピックス(他国のGK)
ールには絶対の自信を持ってチャレンジ
し、ボールをつかむ選手がほとんどだった
対戦した中では、サプリサのGKは身長
が190cm以上あり、胸板も厚く見た目で威
ことに強い衝撃を受けた。
また、パス&サポートの意識、バックパ
った。パス&サポートの意識が低く、
圧できる選手だった。プレーでも力強さが
スを引き出すサポートのタイミングの良
相手選手のプレッシャーを受けてから
慌ててサポートしようとするが、味方
あり、ハイボールへの処理は安定していた。
また、キック力、キックの精度も高く、味
さ、キックの正確性(プレス・パント)と
質(パススピード・スペースか足元か)な
DFが困る場面もあった。また、状況
に応じた配球にならないこともあっ
方選手は安心してバックパスを出してい
た。ゲーム中はあまりしゃべるタイプの選
ど、サッカー選手としての基礎がしっかり
している選手を多く見ることができた。
た。同様に長距離のキックをするとき
手ではなかったが、必要に応じて大声で味
に意図が分からないものもあった。
(3)クロスへのチャレンジは共によくでき
方DFを指示し、まずいプレーをした選手
には集中させるように叱咤激励をしてい
U-19日本代表
ていた。強い相手と対戦する中で質の
た。常にゲームに参加していてバックパス
カタールU-19国際親善トーナメント
イズ。
(2)攻撃への参加
パス&サポート、ディストリビューシ
ョン(配球)の判断と質。
(3)積極的に挑戦する
特にクロスへのチャレンジを要求。
以上3点に対して
(2)普段から連続して攻撃参加していない
のか、結果として課題が浮き彫りにな
【報告者】慶越雄二
(U-19日本代表GKコーチ)
1.日程
2008年11月、サウジアラビアで開催さ
れるAFCユース選手権大会(FIFA U-20ワ
ールドカップ・アジア最終予選)に向けて、
カタール・ドーハで行われた国際大会に参
加し、強化を図った。昨年のU-18日本代
表メンバーを土台に選手選考し、チームを
立ち上げて新たな目標に向けてスタートし
た。現地に入って5日間でコンディション
を上げ、大会に備えた。
2.招集選手
●松本拓也(順天堂大学)
1989年2月6日生 182cm/76kg
コパ・チーバス2008、U-17日本代表トレーニングより
24
●権田修一(FC東京)
1989年3月3日生 187cm/80kg
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
くプレーできた。
・優勝して終えたこと
6.課題
・シュートストップの状況下で、ドリブル
で持ち込まれたときに慌ててしまい、先
に動いてセットポジションがとれず、対
応がまずくなり失点してしまった。
・DFとの連携の部分で背後に出たボール
に対して一瞬ジャッジが遅れてGKがイ
ニシアチブをとれず、DFの判断で(GK
の声)プレーしてしまう。予想以上にボ
ールスピード・タイミングが早いので遅
れてしまう。また声のタイミングが全体
的に遅いのと声を出さずにプレーしてし
カタールU-19国際親善トーナメントより
●大久保択生(帝京高校)
1989年9月18日生 190cm/84kg
5.成果
3.GKテーマ
・積極的に切磋琢磨し、トレーニング、ゲ
ームと取り組んでくれた。
(1)積極的かつ堅実な守備
・クロス、ブレイクアウェイと積極的に飛
(2)良い準備
(3)DFとの連携
び出し、広範囲に守れた。
・攻撃への参加の部分で、奪ってからの切
(4)つかむか弾くかの判断とそのプレー
(5)攻撃への参加
り替えが早く、スローまたは前線にキッ
クで配球し、決定的なシーンまで持ち込
(6)リスクマネジメント
めることが多く、スムーズな展開ができ
昨年11月のAFCユース選手権1次予選ま
でのテーマを確認し、もう一度トレーニン
グから意識して行った。
4.試合結果
(予選リーグ)
1月21日 vs U-19エジプト代表 3-0
た。
・予選を突破し、5試合のゲームを行えた
ことと厳しい中で3人のGKが経験を積め
たこと。サブGKになっても準備を怠ら
ずチームに貢献してくれた。準決勝で途
中、怪我人が出て、サブGKが出場する
緊急事態に見舞われたが、動じることな
まうシーンが1試合に1回はあり、連携
面でスムーズさを欠いた。
・リスク管理の部分で、バランスが悪く、
人はいるがマークがはっきりしておらず
カウンターを受けるシーンがあり、決定
的な所まで持ち込まれてしまった。流れ
の中で相手の動きを予測して、状況把握
をしっかりした中で的確な指示が出せて
いなかった。
7.今後の展開
今回招集しなかった選手を含め、各クラ
ブのキャンプ等を視察し、所属チームの指
導者との情報交換、選手の現状の状態の把
握を行い、所属クラブとの連携を深める。
同時に、U-19GKラージグループを形成し、
今後の活動に役立てたい。
GK:松本
得点者:山本、香川、比嘉
1月23日 vs U-19ドイツ代表 4-2
GK:松本
得点者:山崎、山本、香川、山本
1月25日 vs U-19ポーランド代表 0-1
GK:大久保
(準決勝)
1月28日 vs U-19中国代表 2-1
GK:権田(85分)
、松本(35分)
得点者:浦田、香川
(決勝)
1月30日 vs U-19ポーランド代表 6-1
GK:松本
得点者:山崎×3、浦田、白谷、鈴木(惇)
U-19日本代表トレーニングより
25
2008年度ユース
ディベロップメント体制
活動内容はフィールドプレーヤー(FP)のコーチと同様の活動
を行います。専任コーチは年間フル活動。JFA専任でないクラブ派
トレセンコーチの役割
トレセンチーフコーチ
(地域ユースダイレクター)
遣のコーチは年間35日程度の活動とします。
(FP・GKと分かれていますが活動は同じです。例⇒GKキャンプは
GKコーチが中心に行いますが、FPのコーチも関わっていきます)
チーフコーチはJFAの主催行事、各カテゴリーナショナルトレセ
ン活動(ナショナルトレセンU-12地域開催は統括責任者)
、指導者
養成(公認B級コーチ養成講習会の地域開催ほか)
、ユース改革等、
JFAインストラクター
JFAの諸政策に関わり推進していきます。
主に指導者養成に関わり、地域のチーフコーチと連携しながら、
地域ユースダイレクターを兼務し、育成の責任者として地域技術
委員長をサポートします。地域のトレセン活動、指導者養成、地域
公認B級コーチ養成講習会、同A級、B級リフレッシュ研修会、A級
トライアルなどを中心的に企画運営します。
協会主催の大会運営、ユース改革などで必要な活動を行います。ま
た各FAに関しても連携をとりながら関わっていきます。活動はフ
また、指導者養成だけでなく、ナショナルトレセンおよび地域の
トレセン活動等にも可能であれば関わっていきます。活動日数は40
ル活動とします。
日程度とします。
トレセンコーチ
U-12ナショナルトレセンコーチ地域担当
トレセンコーチはチーフコーチと同様な活動を行い、チーフコー
チをサポートします。
U-12はキッズも含めて活動の対象も広く、サッカーに出会う年代
として重要性が大きい年代と言えます。そのU-12(キッズ含む)に
専任コーチは年間フル活動し、クラブ派遣コーチも年間120日程
関して、地域でナショナルトレセンU-12およびU-12活動全般に関わ
度の活動を行います。
りトレセンコーチをサポートしていきます。活動日数は40日程度と
します。
トレセンコーチ(GK)
2008年度ユースディベロップメント体制〔男子〕
ダイレクター
統括
ユース育成
サブダイレクター
布 啓一郎(S)
ダイレクター
吉田 靖(S)
JFA
JFA
チーフ
(地域ユースダイレクター)
サブチーフ
山橋 貴史(S)
(U-16日本代表コーチ)
山崎 茂雄(S)
JFA
JFA
足達 勇輔(S)
菊池 利三(A)
指導者養成
サブダイレクター
眞藤 邦彦(S)
GKプロジェクト
ダイレクター
サブチーフ
塚田 雄二(S)
JFA
加藤 好男(S)
川俣 則幸(S)
(日本代表GKコーチ)(U-23日本代表GKコーチ)
JFA
JFA
U-12・キッズ
ダイレクター
サブチーフ
山出 久男(A)
ナショナルトレセンコーチ
北海道
東北
担当
四方田 修平(A)
JFAインストラクター
GK担当
チーフ
サブチーフ
尾形 行亮(C)
山崎 茂雄〔兼務〕
中山 雅雄(A)
U-12ナショナル
トレセンコーチ
地域担当
(未定)
JFA
井上 祐(A)
鎌田 安久(S)
内田 一夫(S)
(未定)
中田 康人(S)
大西 正幸(S)
金子 隆之〔兼務〕
JFA
関東
吉田 靖〔兼務〕
高田 哲也(S取得中)
金子 隆之(S)
北信越
木村 康彦(S取得中)
関西
四国
若杉 透(S)
大塚 一朗(UEFA・A)
伊藤 裕二(A)
大野 真(S)
(未定)
河野 和正(B)
望月 聡(S)
(なでしこジャパンコーチ)
阿江 孝一(B)
眞藤 邦彦〔兼務〕
JFA
池内 豊(S)
(U16日本代表監督)
大橋 浩司(S)
JFA
JFA
柳楽 雅幸(A)
(U-16日本代表GKコーチ)
JFA
星原 隆昭(S)
大熊 裕司(A)
(U-19日本代表コーチ)
慶越 雄二(A)
(U-19日本代表GKコーチ)
JFA
中国
藤原 寿徳(A)
前田 信弘(B)
(なでしこジャパンGKコーチ)
中村 忠(B)
JFA
東海
望月 数馬(B)
JFA
JFA
黒田 和生(S)
(未定)
JFA
牧内 辰也(S)
(U-19日本代表監督)
眞藤 邦彦〔兼務〕
JFA
JFA
西村 昭宏(S)
猿澤 真治(A)
沢田 謙太郎(B)
加藤 寿一(A)
(未定)
JFA
川村 元雄(A)
吉田 明博(A)
福井 哲(S)
岩永 健(B)
中山 雅雄〔兼務〕
山口 隆文(S)
川村 元雄〔兼務〕
JFA
九州
吉武 博文(S)
橋川 和晃(A)
JFA
地域担当なし
アカデミー
26
和田 一郎(A)
菅原 大介(B)
JFA
JFA
島田 信幸(S)
須藤 茂光(S)
JFA
JFA
原田 貴志(B)
JFA
須永 純(A)
JFA
※名前の後の( )内は保有ライセンス
(未定)
My
F avorite
T raining
第10回
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
ラン・ウィズ・ザ・ボール
∼Run with the ball∼
【報告者】大塚一朗(ナショナルトレセンコーチ)
現代サッカーにおいて、カウンターアタッ
クが大事な要素であるのは言うまでもありま
ヨーロッパの試合では、カウンターアタック
の得点では、ラン・ウィズ・ザ・ボールが関
せん。ボールを奪ったら速く攻め、奪われた
わった得点が一番多いそうです。ロングボー
ら速く攻めさせない。このことに対して、ど
のチームも意識が高くなっています。
ルを蹴るよりも、ラン・ウィズ・ザ・ボール
でボールを運びショートパスをつなぐ方が、
では、カウンターアタックの得点と言うの
は、ロングボールで相手の裏を狙ったものが
確率が高いからではないでしょうか。
速く、正確なカウンターアタックを実現さ
多いのでしょうか?
せるために、ラン・ウィズ・ザ・ボールのト
イングランド(the FA)の統計によると、
レーニングをよく取り入れています。
훿AGC/JFAnews
SBSカップ国際ユースサッカー
(U-18日本代表vsU-18アメリカ代表)より훿AGC/JFAnews
トレーニング1
ルール
・グリッド間はラン・ウィズ・ザ・ボール。
・グリッドまで来たらパスする。パスを受けた味方は
ワンタッチでグリッドを出てラン・ウィズ・ザ・ボ
ールをするか、グリッド内の味方にパスする。
・ボールを取られたらDF交代
キーファクター
・ファーストタッチ
・少ないタッチで速く
・ヘッドアップ
・DFを観てパスの判断
・プレースペースをつくる
15m
10m
20m
10m
トレーニング2
ルール
・グリッド内で4対2。
・パスを3本以上回して、
ワンタッチでグリットを出る。
グリッド間はラン・ウィズ・ザ・ボール
オプション
・グリッド内に相手と味方を1人ずつ入れる
・ワン・ツーなどを入れる
キーファクター
・ファーストタッチ
・少ないタッチで速く
・ヘッドアップ
・DFを観てパスの判断
・プレースペースをつくる
25m
オプション
15m
30m
15m
27
2007
ナショナルトレセンU-12総括
【報告者】中山雅雄(ナショナルトレセンコーチ)
1.選手のためのナショナルトレセン
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
2.2007ナショナルトレセンの狙い
2007ナショナルトレセンU-12は、10月から12月にかけて9地域
今回のナショナルトレセンは、JFAアカデミー福島(以下、ア
において実施されました。5年目を迎えた9地域開催はすっかり定
着してきました。各地域では常に前回の反省を踏まえ、より良い
カデミー)でのトレーニングコンセプトとトレーニング方法を共
有し、現在のアカデミーU-13でのレベルをナショナルトレセンU-
トレセンが実施できるよう努めています。イベントとしてのナシ
ョナルトレセンではなく、4日間が選手にとって有意義なトレー
12の目指すべき基準として示すことが目的でした。
フィールドプレーヤーのテーマは以下の4つのテーマです。
ニングキャンプになるような運営を、これからも続けていく必要
(1)ゴールへ向かうプレー
があります。ナショナルトレセンに選ばれたことよりも、
「トレセ
ンで何をしたのか」
、
「何を学んだのか」を大切にしたいと考えて
(2)ポゼッション(組み立て)
(3)ゴール前の攻防
います。そして、その経験が明日のプレーやサッカーへの取り組
みに良い影響を与え、さらにレベルアップしていくきっかけにな
(4)ポゼッション(崩し)
これらのテーマを基本に「動きながらのテクニック(ボールを
ってほしいと考えています。
止める・蹴る・運ぶ)の習得」、「状況に応じたスキル(判断力)
の発揮」
、
「持久力の向上」を常に意識しながら、コーチは選手の
トレーニングを実施しました。
また、ゴールキーパーについては、
(1)コーディネーション
(2)キャッチングの徹底
(3)ボールのコースに身体を運ぶ
(4)奪ったボールを味方選手につなぐ
といったテーマを基に「ゴールを守る」という強い気持ちを持
って、一つ一つの動作を正確に行うことを指導しました。
3.トレーニングを通して見えた課題
∼各地域からの報告
北海道 「止める」「蹴る」「失わない」という基本技術は、いま
だ北海道の課題です。その上に、今回のテーマである「動きなが
ら」が加わるとなると、さらなる基本の徹底が急務になると思わ
れます。質を求める指導者の日ごろの姿勢こそ、北海道のサッカ
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
28
ーを変える大きな力となるに違いありません。それと同時に、北
東北 GKもパス&コントロール、シュートトレーニングをはじめ、
ポゼッションや2対2などの個人戦術のトレーニングもフィールド
プレーヤーと同様に行いました。全体トレーニングへ合流するま
での時間が短かったため、GK選手には20分早出をさせて50分間の
GKトレーニングを行いました。課題は今回のテーマそのものであ
り、それらのことを継続して指導していく必要があります。また、
今回気になった部分としては体が硬い選手が多かったことです。
これらの報告から、ある程度のレベルまでは達していますが、
まだまだアカデミーのレベルにまでは達していない選手が多くい
ることがうかがえます。
4.女子選手の参加
今回は、各地域で女子選手が数名参加しました。男子の中に入
っても十分に通用する選手が多く、今後も女子選手の育成・発掘
について、U-12年代では連携していくことが大切であると思われ
ます。ある女子選手に聞いたところ「レベルの高い練習、上手な
選手と混じって練習できたことは、自分自身にとって良い刺激に
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
海道の選手はプレー中の自己主張が少ないように思われます。コ
ミュニケーションという点でも課題があるように感じました。
なった。参加できて大変良かった」と答えてくれました。
5.指導者講習会
各地域で、多くの参加者が積極的に取り組んでいただけました。
中国 テーマである動きながらボールをコントロールし、動きな
がら判断し関わる、そしてプレーの反復により持久性を刺激して
いくトレーニングを追求することができました。選手の表情は決
して明るくないのですが、トレーニング終了時には一転して表情
が充実感に浸って緩んでいたように感じます。やはり動きながら、
最後に四国からの報告を紹介したいと思います。
「参加者の皆さんは意欲もあり、笑いもあり、歯を食いしばっ
たり、最後の試合結果に一喜一憂したり、サッカーを楽しんでい
た様子でした。ぜひ、子どもたちとの活動でもこうであってほし
いと思いました。
」
考えながら頭も身体も休めないプレーをするには、相当の集中力
が必要であったことが理解できました。
四国 選手は時間を追うごとに、少しずつトレーニングの狙いを
理解していった様子でした(できる、できないは別として)
。また、
悪天候にもひるむことなく、ボールを追っていたし、随所に複数
が関わることで、個人としてもグループとしても打開するシーン
も見られました。ただ、毎年の課題のように、普段のボールに触
れている時間の少なさを露呈し、テクニックの質の部分では今年
も課題が残りました。今回は特に、動きながらのタイミングを意
識したものを習得するものだったので、より顕著だったように感
じました。
関東 日常での体調管理、生活指導をチームに啓発し、指導者、
選手の意識を徹底させていく必要性が感じられました。 選手のク
ローズドスキルについては高まってきていますが、判断、動きの
中でのスキルといったオープンスキルの習慣化をより一層図って
いかなければならない課題です。
指導者講習会では、多くの参加者が研鑽を積んだ(2007ナショナルトレセンU-12東海より)
훿AGC/JFAnews
29
JFAアカデミー福島
훿AGC/JFAnews
男子 【報告者】須藤茂光(JFAアカデミー福島男子U-14監督)
Grow up…選手たちとの一年
も伴います。
この単純な繰り返しとプレーのクオリテ
もいますが)磨くことです。しかし磨いた
私がJFAアカデミー福島に来て一年が経
過しました。一年間の大きな変化は、真新
ィーを要求する中で、順調とは言えません
が、選手たちは間違いなく成長しています。
からといってすぐに美しくはなれません
し、本物の美しさは時間のかかるものです。
しい柊寮に引っ越したこと。そして後輩の
2期生が入り、1期生が先輩になり、兄貴に
それは選手たちもどこかで実感していると
思います。しかしまだ完成品ではありませ
だからあきらめず根気よく接することが大
切だと彼らに教えられ、私も成長した一年
なったことです。
ん。未熟であり、まだまだ学び続けなけれ
だったように感じます。
「育成年代のサッカーはしつけである。
そのためには良い習慣を身につけることが
ばならない年代です。学び取るどん欲な気
持ちを失わせてはならない大切な年代で
私生活の面で、
『お前たちはアカデミー
の選手としての自覚はあるのか』としかる
大切で、それには継続して基本を徹底する
ことだ。それは社会も同じだ」
。
(クロー
す。人はとかく私も含めて、何か成功する、
あるいは何かできるようになると、すべて
ことが時々(?)あります。ただ、よく考
えてみると、この年代にありがちなことが
ド・デュソー氏の言葉)
を理解したような錯覚に陥ります。本当は
ほとんどであり、もしかしたらそれらも含
この一年間、この年代で身につけなけれ
ばならない基本を徹底して繰り返し行って
何も理解していないのに…。それに気づか
せなければなりません。
めて彼らが順調に成長している証であると
も言えます。
きました。反復したトレーニングを通して
技術力・判断力・持久力を磨いてきまし
サッカーにおいて、走ることや守備をす
ることはどちらかというと楽しいとは言え
サッカーのレベルを上げる中で、1期生と
して、これから入学してくるみんなのあこ
た。
ません。サボりたくなるものです。それは
がれの兄貴分として、自覚を持ちアカデミ
ドリル → ポゼッション → (シュート)
→ ゲームというトレーニングの流れは一
見方を変えると、走ること、ボールを奪い
返すこと、が良い習慣として身についてい
ーを引っ張っていってほしいと思います。
『ならぬものはならぬ』
。良い習慣と躾
貫して変わりません。オーガナイズもシン
プルで、動きながらコントロールし動きな
ないということになります。毎日歯を磨く
ことが自然のことのように、走ること、ボ
をテーマに彼らの成長を見守っていきたい
と思います。
がらパス、そしてまたボールを受けるため
に走る。走ることは味方の選択肢を増やす
ールを奪うことが歯を磨
くことのようにできるま
ことにもつながります。ボールを失ったら
で、習慣化するまで要求
攻撃するために奪い返す。そのために走る。
プレーのすべてに意味がなければいけない
していくことが必要だと
感じています。ボールを
ことも伝えてきました。単純なことを毎日
繰り返しています。最近、トレーニングの
奪ったら攻撃し、失った
ら守備をする。常に関わ
中で選手に意識的に要求していることは、
り続ける習慣を身につけ
速さの中でのプレーの精度です。そのため
にオーガナイズを少し狭くしています。当
なければなりません。ま
だまだ多くの課題がある
然のことながら守備に対する要求も高め
て、プレッシャーの強度を上げています。
ことを感じています。
躾(しつけ)という字
コントロールからパスまでを素早く行うこ
は、身を美しくすると書
とを要求しています。必然的に判断の速さ
きます。何もしないで美
30
しくはなれません。
(まれにそうでない人
훿AGC/JFAnews
女子 【報告者】小林 忍(JFAアカデミー福島女子GKコーチ)
1.はじめに
もありますが、そのようなときこそ果敢に
挑む姿勢が成長へのカギだと感じていま
一人で守るものではないのでフィールドプ
レーヤーとの連携が不可欠です。しかし、
2008年の女子サッカーは北京オリンピッ
す。もちろん無闇にトライすればいいとい
最後の砦としてのGKが日常の生活から自
ク、FIFA U-20女子ワールドカップ、FIFA
U-17女子ワールドカップと各年代における
うことではありません。また、ポジティブ
の意味を履き違えてエラーを繰り返すこと
己中心的な考えや軽率な行動では誰も耳を
傾けようとはしないでしょう。信頼感を構
世界大会が開催されます。日本はなでしこ
ジャパンをはじめ、昨年行われたアジア予
もよくありません。意図を持った判断をし
たかどうか、トライした結果の原因を自分
築していくには非常に難しくプレッシャー
のかかることでもあると思いますが、日常
選をすべてのカテゴリーの代表が激闘の末
勝ち抜き、世界大会へ出場します。また、
自身で分析できるかどうかが重要です。積
極的な失敗は決して恥ずかしいものではあ
生活の中から他の選手の模範となるような
発言や行動を心掛けることが大切です。他
女子選手のタレント発掘・育成における国
りません。人の失敗を見て侮る行為が最も
人に流されることなく芯の強さを持ち、慣
内活動においてもさまざまなプロジェクト
を通じて、可能性を秘めたなでしこジャパ
恥ずかしいことなのです。
れ合いや甘えのない協調性を築いていくこ
とでいざというときに力を発揮し、信頼さ
ンを志す多くの若い選手が切磋琢磨してお
り、2008年は日本の女子サッカーの今後へ
●観て、感じて、行動に移す
状況の変化を素早く感じ取り、行動に移
れる存在となることでしょう。
向けて非常に重要な年となるに違いありま
すということを意識させています。今後、
せん。
そんな中、アカデミー生も2月に行われ
社会に出ていく上でもやはり社会の流れや
仕組みをよく知った上で行動をとるという
2月下旬から3月初旬にかけてアカデミー
女子では昨年に引き続きアメリカ・フロリ
た東アジア女子サッカー選手権大会での新
生なでしこジャパンのひたむきに闘う姿勢
ことが重要になってきます。そして自分の
とった行動に対して責任が生まれるという
ダ遠征が行います。フィジカル的に大きく
上回るFIFAランキング2位の世界を相手に
と最後の最後まであきらめない奮闘ぶりに
ことも十分理解しなくてはなりません。
自分たちのこれまで培った力がどこまで通
大きな刺激を受け、代表としての情熱・誇
り・責任をあらためて感じ取っていたよう
また、感じることまではできていてもな
かなか行動に移すのに時間がかかることが
用するのか肌で感じる絶好の機会となるは
ずです。
です。
多々あります。それは自分自身への甘えで
す。
『分かる』から『できる』までには多
そして、4月からは新たなメンバーが加
わり、いよいよ6学年そろった体制となり
くの時間と反復が必要ですし、どんなに正
ます。サッカーの技術・戦術等の向上はも
しい知識や知恵、優れた能力を持っていた
としても甘えによって行動に移すことがで
ちろんのこと、それらを向上させるための
土台となる心の成長をさらに育くむことに
自信に満ち溢れた立ち居振る舞いのできる
選手』というフィロソフィーのもと、なで
きなければ宝の持ち腐れになってしまいま
す。何事も先頭に立って行動を起こすこと
努めていくとともに、選手自身いつも夢と
希望に満ち溢れひたむきな姿勢で取り組
しこジャパンを目標にすると同時に真のリ
ーダーとして国際社会で活躍できるスーパ
や苦手なものに手をつけることは非常に勇
気のいることですが『まぁ、いいか』とい
み、多くの人々に勇気と感動を与えるなで
しこらしい選手になるような指導を心掛け
ー少女の育成を目指しています。その要素
う甘えをなくし、与えられた環境と限られ
ていきたいと考えています。
としてピッチ内外において以下の3つの能
力を兼ね備えることが重要だと考えていま
た時間の中で最大限成長できる
ことを考えて踏み出すことが大
す。特にゴールキーパー(GK)というポ
ジションはこれらの要素が必要不可欠だと
切です。
考えていますし、さらにはどんな場におい
●リーダーシップ
ても失敗を成功に変える、ピンチをチャン
スに変える、危機的状況を救う、頼れる存
今の日本のGKに一番足りな
い部分だと感じています。リー
在になれることを望んでいます。
ダーシップを発揮するというこ
とは人の『心』を動かすことの
●何事にも積極的にトライする
できる信頼感や存在感が必要で
2.アカデミーの目指す
ゴールキーパー像
『常にポジティブな態度で何事にも臨み、
どんな状況でも積極的にトライすること
を求めています。もちろんトライにエラー
す。
「GKの声は神の声」と言わ
れるくらいですから、その声を
はつきものです。しかしエラーを怖がって
いたら後の成長につながりません。トライ
発する者としては正義感を持っ
た自信に満ち溢れた立ち居振る
するかしないかの判断に非常に困難な状況
舞いも必要です。ゴールはGK
3.最後に
31
第86回全国高校サッカー選手権大会・決勝戦より 훿Jリーグフォト㈱
第86回
全国高校サッカー選手権大会
テクニカルスタディ
【報告者】齋藤 登
(全国高校体育連盟サッカー部技術委員/
都立東久留米総合高校)
1.大会全般
動き出し、幅をつくり上げて展開するチームが以前より増えた。ポ
ゼッションの意識が高くなり、各チームでトレーニングしてきた結
全国高校体育連盟サッカー部加盟4,029校のうち3,815校が予選に
参加し、各都道府県大会を勝ち抜いた48代表校が全国の頂点を目指
果の現れだと思う。しかし、DFやボランチも、幅をつくることによ
って生まれる前方のスペースへ自ら持ち出す積極性が見られず、横
して熱戦を繰り広げた。
48,884人の大観衆が見守る国立競技場での決勝戦は、流通経済大
へ横への消極的な展開になっていた。ボールを失わないポゼッショ
ンはできても、効率良く中央と両サイドを意図的に使い分ける、崩
学付属柏高校(千葉県)と藤枝東高校(静岡県)の対戦となった。
すための展開は少なかった。
流経大柏が前線から速いプレスをかけ、奪ったボールを素早く攻撃
につなげる展開で藤枝東を圧倒。高円宮杯全日本ユース(U-18)サ
<活動性>
前方にいる選手が前を向いてボールを保持したときに、積極的に
ッカー選手権大会に続いて2冠を達成した。
追い越す動き(オフの関わり)が多くのチームで見られた。DFやボ
ランチといった2列目・3列目の選手の攻撃参加に対する意識は高く
2.大会の特徴
(1)攻撃
なり、動きの量も増えた。しかし、新たなスペースをつくり・使お
うとする意図的なポジションチェンジは乏しかった。それがポゼッ
ションはするものの有効な攻撃に至らない一つの原因となっていた
①ポゼッションの意識とビルドアップ(崩す)
ポゼッションの意識が高く、ボールを大切につないで攻撃しよう
と思われる。
とするチームが以前に増して多くなってきた。しかし、突破をうか
がうというよりは、ボールをつなぐためのつなぎに過ぎず、ゴール
③個人の技術・判断
「止める・蹴る・運ぶ」といった基本技術は向上してきている。
を目指すための意図的な組み立て(どう崩す?)を見ることは少な
しかし、時間とスペースを与えない現代の守備に対応できる技術は
かった。
また、カウンター狙いのリアクションに徹しているチームもあっ
いまだ不足していると言わざるを得ない。ボールを奪いに来るハイ
プレッシャーの中では、止まってプレーすることはボールを奪う機
た。しかし、リトリートした守備からボールを奪い、素早く切り替
えて攻撃をしかけるものの、前線に残っているFWのソロまたはデ
会を相手に与えていることに等しい。ハイプレッシャーの中でもブ
レない「動きながらの技術」が求められている。動きながらボール
ュエットによる個人の能力に頼った攻撃が多く、チームとして押し
を扱う技術に未熟さを感じた。さらに言えば、動きながらプレーし
上げて厚みのある攻撃につなげる意図が見られず、単発に終わる速
攻が多かった。
ようとする意識そのものが乏しく感じられた。
②攻撃におけるプレーの原則
<突破>
DFラインの背後を積極的に突く突破の動きと、それを狙うロング
パスを見る場面は多かった。しかし、DFが良い対応をしていても精
度の低いキックで蹴り込み、ボールを失うことの方が多かった。数
年前の大会と比較して、全く判断なしに蹴り込む場面は少なくなっ
たが、今後より良い判断と、より精度の高いキックの技術が求めら
れる。
<幅・厚み>
相手からボールを奪った瞬間に、集中・集結した守備から素早く
32
第86回全国高校サッカー選手権大会・1回戦より 훿Jリーグフォト㈱
④コミュニケーションの重要性
攻撃の「形はできている」という場面で、単純なパスミスからボ
第86回全国高校サッカー選手権大会・決勝戦より 훿Jリーグフォト㈱
ールを失う場面が多かった。技術のミスとともに、出し手と受け手
の「コミュニケーションミス」によるパスミスが多く見られた。ボ
高くなり、全員がハードワークできるチームが増えてきた。ただし、
ール保持者の状態・受ける側の状態を「観る」重要性を再認識し、
「個人の守備技術」という面ではあまり進歩は見られなかった。特に、
「アイコンタクト」や「タイミング」といったキーワードを大切に、
トレーニングに取り組む必要性を感じた。
サイドバックの選手に1対1の強さが感じられず、ボール保持者に対
応する技術の未熟さが見られた。また、相手のロビングボールをは
⑤セットプレー
どのチームもFKについては素早く再開しようとする意図が見られ
た。しかし、守備側も素早く切り替え、隙を見せない体勢を整えて
いたため、早いリスタートから隙を突いてチャンスをつくるような
じき返すセンターバックのヘディングの強さも不足していると感じ
た。いかに堅固な守備網をつくっても、サイドアタックやロングボ
ールを放り込んでくるプレーに対して、個人の能力で対応できる強
さがなければ、盤石な守備とは呼べないことは言うまでもない。
シーンは少なかった。
また、FK・CK共に、セットした状態からはインカーブでゴール
(3)ゴールキーパー
今大会では、守備をコントロール(指示・ポジション修正)し、
に向かう弾道のボールを蹴るチームが多かった。特にFKでは、その
ボールに対しGKの目前に飛び込みコースを変えてゴールを狙う形が
リーダーシップのとれるゴールキーパー(GK)に注目した。守備へ
の指示は全般的にできていたが、ゲームをコントロールするまでに
多く見られた。
は至っていなかった。また、技術レベルは向上しているものの、リ
(2)守備
ーダーシップのとれるGKが少なく、プレーにムラがあり、精神面の
充実したGKはあまり見られなかった。特に、これが原因でゴールを
①組織化された守備戦術の浸透
どのチームも守備に対する意識は高く、守備のチーム戦術はかな
奪われるシーンは多かった。
シュートストップ、クロスへの対応に関しては、
「ゴールを守る」
り浸透してきている。特に、ブロックを形成する守備は多くのチー
という意識はあったものの、個で守ろうとしてボールウォッチャー
ムで徹底されていた。しかし、ボールを奪う場所(エリア)があい
まいで、チームとして「どこで、どのように」ボールを奪うかとい
になってしまい、マークを受け渡したり、DFと連携してボールを奪
ったりするシーンはそれほど見られなかった。
う意図を感じないチームも少なからずあった。
対戦相手や試合の状況によって変わるが、多くのチームが相手陣
また、基本姿勢(いつでもどこへでも動き出せる姿勢)やスター
ティングポジション(位置・身体の向き)が正しくないために、フ
内のセンターサークル付近から前線の選手がプレスを掛け始め、中
ァインセーブも少なかったように思う。ただ、シュートに対するセ
盤(ミドルサード)でボールを中心に数的優位をつくり出し、挟み
込み(プレスバック)によりボールを奪おうと意図していたと思う。
ービングスピードは速くなっている。基本技術(姿勢・ポジショニ
ング)をしっかり習得すれば、数多くのファインセーブが生まれる
リトリートしてカウンターを狙っているチームの中には、
「ボールを
奪う」というよりは、
「ゴールを守る」といった意識しか感じられな
のではないか。
ディストリビューションに関しては、チームとして確実にボール
いチームもあり、消極的な守備になっていたのは残念であった。し
保持することをコンセプトにしているチームが多く、GKがキャッチ
かし、自陣でDFラインの背後にリスクを負わない守備をするチーム
が結果を出していたのも事実である。
後、素早く味方選手にスローし、ビルドアップを開始する場面が多
く見られた。しかし、その後サポートに入り、相手チームのプレッ
②チャレンジ&カバー
シャーを回避してビルドアップし直す場面は少なかった。
他には、むやみに前線に蹴ってしまうGKが多かった前回大会に比
最終ラインの背後のカバーリングは、どのチームも徹底されてい
たように思える。しかし、人数が足りているにもかかわらず、ボー
べ、GKからのキックで試合の局面を変え得点チャンスを多くつくれ
ていた。これは特筆すべきことであろう。
ル保持者に対してチャレンジに行かない場面が非常に多く見られた。
今後のGK像を考えたとき、GKもサッカーの理解度を深め、チー
「第1ディフェンダーの決定」は、守備の重要なポイントである。
個々の選手の判断とともに、グループおよびチームのコミュニケー
ム全体にコーチングができ、イニシアチブが取れる選手が望まれる。
また、1試合を通じて、安定したゴールキーピングができるのも条
ションを大切にし、トレーニングの中から意識してほしいと感じた。
また、中盤においても、局面におけるチャレンジ&カバーの意識が
件になるだろう。そのためには、日ごろのトレーニングの中で、GK
のトレーニングはもちろん、フィールドプレーヤーとしてのトレー
まだ不足しており、理想とするチーム戦術を具現化するためにも
ニングやGKを含めた攻撃練習にも積極的に取り組んでほしい。
「チャレンジ&カバー」は重要なキーファクターとして認識してほし
い。
③個人の守備技術
一人ひとりが守備に関わろうとする「個人の守備意識」は格段に
今回お伝えした「大会の特徴」以外に、全国高校サッカー選手権
大会TSG(テクニカルスタディグループ)は、テクニカルとして
「いつ攻める?どう崩す?」をキーワードに分析を行った。詳細につ
いては、全国高体連サッカー部全加盟校に送られる「テクニカルビ
デオ」と「テクニカルレポート」をご覧いただきたい。
33
高円宮杯第19回全日本ユース
(U-15)
サッカー選手権大会・決勝戦훿Jリーグフォト
(株)
高円宮杯
第19回全日本ユース
(U-15)
サッカー選手大会
(U-19)
テクニカルスタディ
【報告者】池内 豊(U-16日本代表監督)
山橋貴史(U-16日本代表コーチ)
1.大会全般
です。
高円宮杯第19回全日本ユースサッカー選手権大会は、全国9地
守備ではゴールを守る意識が高く、身体を張りシュートブロッ
ク、ボールを奪うことができていたチームが多くありました。し
域の予選を勝ち抜いた28チームおよび2007年度全国中学校サッカ
かし、ボールと相手を観てチャレンジとカバーの両方を可能にす
ー大会上位2チーム、2007年度日本クラブユース(U-15)サッカ
ー選手権大会上位2チームの計32チームが出場。4チームずつの8
るポジションをとり続ける守備範囲の広い選手が少なく、無駄に
自陣ゴール前に人が余っていることが多くありました。もちろん
グループに分かれてリーグ戦を行い、各グループ上位2チーム(計
16チーム)が決勝トーナメントを戦いました。
GKに関しても同様で守備範囲の広い選手はあまり多くいませんで
した。一人ひとりがポジションを修正しながら、なるべく高い位
予選リーグでは得点差のあるゲームもありましたが、ノージャ
置でボールを奪いに行く意識を持ち続けることが、ゲームを支配
ッジでロングパスを前方にフィードするプレーや自陣ゴール前で
守備を固め、カウンターを狙うようなチームは少なくなってきた
するためには必要になってきます。
と言えます。逆にボールを失わないようにポゼッションしながら
ゲームを組み立てようとしていたチームが増えてきたことも事実
(2)ミドルゾーン
攻撃ではボールと人が動き、相手を変化させて常に数的優位を
です。
これは指導者が世界のサッカー、日本のサッカーの方向性を共
つくり出していたチームが主導権を握り、ゲームを有利に進めて
いました。このようなチームには動きながらプレーする選手が多
有して指導に取り組んでいる成果だと思います。その中で決勝ト
く、オフの選手の関わりが多いので選択肢も多くなり、数的優位
ーナメントを勝ち進み、決勝戦を戦ったガンバ大阪ジュニアユー
ス(G大阪JY)と東京ヴェルディ1969ジュニアユース(東京VJY)
もつくれてボールを失わずに攻撃をしかけることができていまし
た。
は、個人の質が高くビルドアップしながらゲームを組み立て、人
とボールが動く流動的なサッカーを見せてくれました。世界のサ
多くのチームの課題としては動きながらのパス、コントロール
の質を高めていくこと、ドリブルorパスの選択肢を持ちながらプ
ッカーが「攻守にハードワークし、甘えの許されないサッカー」
、
レーすることが必要です。上位に進出したチームの多くはDFの押
「11人全員がフットボーラー」という言葉で表されているように、
ポジションにこだわらずゾーンでそれぞれがやるべき役割をプレ
し上げが早く、DFがタイミング良く攻撃参加できていました。ま
た、セットプレーを含む守備から攻撃の切り替えも早く、ドリブ
ーしています。日本のU-15年代のサッカーがどのように行われて
いるのか、3つのゾーンに分けてまとめてみました。
ルやパスでボールが常に動き続ける、選択肢が多いスピーディー
な攻撃ができていました。
2.技術・戦術的分析
(1)ディフェンスゾーン
上位進出チームの中には、守備でできるだけ高い位置でボール
を奪いに行こうとしている選手が多くいました。しかし、周りの
選手との関わりでポジションをとり、アプローチorディレイを判
攻撃ではGKを含めたビルドアップから攻撃を組み立てるチーム
が増えてきました。GKがボールを持ったときの切り替えも早く、
幅をとってボールを動かしていく場面も見られました。しかし、
落ち着いてパスを回そうとはしていましたが、パスの質が必ずし
も高いとは言えず、ミドルゾーンやアタッキングゾーンへボール
を運ぶことに時間が掛かりすぎて、相手の守備が整いプレッシャ
ーを掛けられる場面も多くありました。そのために最終的にロン
グパスを出す単調な攻撃になってしまうことも多くありました。
また、ゴールキックから攻撃を組み立てることができるチームが
少なく、単調にロングキックを多用していました。このゾーンで
は攻撃の優先順位を理解し、良い習慣から正確な技術でシンプル
にアタッキングゾーン、ミドルゾーンへボールを運ぶことが必要
34
高円宮杯第19回全日本ユース
(U-15)
サッカー選手権大会・決勝戦훿Jリーグフォト
(株)
断してプレーしている選手はあまり多くいませんでした。また、
は、質を追求してゲームの主導権を握れるチームが上位に進出す
ミドルゾーンやアタッキングゾーンでボールを失った後の切り替
えの早さには課題が多く、相手の攻撃を意図的に遅らせてボール
る確率が高くなります。試合時間が短ければ、この決勝のカード
はなかったでしょう。
を奪うことができるチームは多くありませんでした。
参加チームの中でも個人の質が高く、ビルドアップしながらゲ
ームを組み立て、人とボールが動く流動的なサッカーを見せてく
(3)アタッキングゾーン
れたG大阪JYと東京VJYが決勝戦を戦ったことで、大会は大いに
攻撃では全体的にはゴールへの意識が少し高くなってきたよう
に感じられます。これはミドルシュートでの得点などからも言え
盛り上がりました。両チームに共通することは、守備のポジショ
ンの選手が得点に絡むことが多いことです。攻守に厚みを持たせ
ると思います。また、攻撃の優先順位を一人ひとりが理解し、共
有しているチームは自分たちからアクションを起こし、相手の変
ることを追求している結果でしょう。決勝に進出していないチー
ムの中にも、選手の良い部分をうまく引き出して、攻守に積極的
化を観ながらしかけることができていました。しかし、このゾー
にボールに関わるサッカーを展開しているチームも多くなってき
ンでは相手のプレッシャーも厳しくなり、ミスする場面がまだ多
く見受けられます。プレッシャーを受けながらでも選択肢を多く
たように感じました。しかし、1人の選手のために他の10人がサ
ッカーをプレーする機会を奪われているチームが多いことも事実
持ち、正確な技術を発揮することはいつもの課題です。一瞬の隙
を突くセットプレーやゴール前での厚みのある攻撃でチャンスを
です。ピッチにいる選手全員がゴールを目指し、ボールを奪いに
行く姿こそが観ている人たちに感動を与えるのでしょう。
ものにしていくサッカーがどの試合でも繰り広げられていくこと
が、この年代でも求められています。
守備では前線からの守備の意識が高く、失ったボールをすぐに
奪い返して攻撃することも出てきました。しかし、FWの守備の切
り替えは遅く、相手のビルドアップやカウンターでピンチを招い
ているチームも多いことも事実です。この年代のサッカーでもや
るべきことをやらなければ勝てないサッカーになっているのでは
ないでしょうか。
3.まとめ
リーグ戦文化がまだ定着していない日本においては、1つの大会
の試合時間は大切になります。この年代の40分ハーフのゲームで
公認指導者研修会報告
高円宮杯第19回全日本ユース
(U-15)
サッカー選手権大会・予選リーグより 훿Jリーグフォト
(株)
【報告者】池内 豊(U-16日本代表監督)
本大会の決勝戦が行われた国立競技場で、約80名の参加で公認指導者研修会(リフレッシュ研修会)を開催しました。研修会は講義と、
決勝戦の観戦というスケジュールで進められました。
講義においては「FIFA U-17ワールドカップテクニカルスタディ」と「U-15日本代表活動報告」の2つの内容でVTRを交えながら進めて
いきました。
■講義プログラム「FIFA U-17ワールドカップテクニカルスタディ」世界のサッカーの分析
●11人全員がフットボーラー(役割を超えるものを獲得させる) ●動きの流動化が役割の固定化を生み出す(ボックスでの闘い)
●守備における組織の充実(1対1の強化・個の状況判断) ●攻撃における個の強化(選択肢を持った確かな技術)
●90分がデザインできるゲーム運び⇒欠けるものがあったら良いものが出せないサッカーが展開
●日本の特長を生かす
「U-15日本代表の活動報告」
1.U-15日本代表コンセプト「90分のGAMEを意識する」
アクションサッカーの追求(常に主導権を握る)
●選手全員がGAMEに関わり続ける
●基本の徹底 ●クオリティーの追求
2.AFC U-16選手権予選大会報告
●試合結果 ●成果と課題
講義終了後のディスカッションでは、数多くの質問・意見をいただきました。例えばVTRの映像を見て
「FIFA U-17ワールドカップでの世界のGK
について」の質問や、
「国内のゲーム環境をどのように変えていけば良いのか?」
、
「日本代表のコンセプトをどのようにチームにフィードバックしてい
くのか?」
など、内容の濃いものになりました。
また、決勝戦では、U-15日本代表候補選手が両チーム合わせて10人以上いることで、代表報告を確認することができました。また、中学生でも飛
び級によりU-18の試合に出ている選手がいることも確認しての観戦でした。
35
ディスカッションを重ね、「長野スタイル」を構築していく(長野県・サッカーカンファレンスより)
各地のユース育成の取り組み
北信越、中国の活動から
日本サッカーの強化・発展を目的とし、個を高めていくことを目標とする「トレセン活動」とリーグ戦の創出。
ナショナルトレセンをはじめ、全国各地でさまざまな形のトレセン活動やリーグ戦の取り組みが行われています。
今号では、北信越と中国地域の取り組みをご紹介します。
ぞれの特長がある。それを生かし特長を大切にして選手の育成を行
北 長野県・サッカーカンファレンス
信
飽田 敏
越 【報告者】
(
(社)
長野県サッカー協会技術委員長)
第3回サッカーカンファレンス長野 2008
「長野スタイル」の構築
っていくことを「長野スタイル」とした。
「長野スタイル」のスター
トとして、4ブロックごとのディスカッションを充実させたいと考え、
県FA技術委員会で検討し、テーマを「U-12での8対8の推奨とリーグ
戦への取り組みを中心にした、種別を越えた長期的視野に立った育
成について」とした。
このテーマのもと、活発な討論が展開された。そこには、地区ご
とにキッズにかかわっている指導者から、4種、3種、2種、地区によ
2004年に第1回カンファレンスと題して実施、2年に一度の開催で3
ってはJリーグ入りを目指しているチームの指導者も含めたメンバー
回目を迎えた。過去2回、
「長野県サッカーの強化・サッカーのさら
なる普及のために」
、
「未来を担う子どもたちのために今始めなければ
に、4種の活動に深くかかわっている指導者、古くから活動を支えて
くれた指導者にもゲストとして参加していただき、現状や目指す方
ならないこと」と題して実施した。そのアセスメントから、長野県
の育成年代の指導者は指導の具体へのヒントを求めていること、十
向について語ってもらった。
8人制の推奨にかかわるディスカッションでは、
「8対8の良さは分
分なディスカッションを求めているという2点、そして各地の取り組
みで動き出しているものがあることを踏まえ、第3回となる今回は、
かるが、やはり11対11のゲームにこだわってしまう」
、
「8対8をやれ
といっても、グラウンドを2分割しろといっても、ゴールがないじゃ
「JFA 2005年宣言 2015年世界のトップ10をめざし長野県でできるこ
ないか。協会はそれを援助する意思があるのか」
、
「子どもが目指して
と∼全国で通用する選手の育成のために∼」をテーマに、基調講演
とディスカッション、実技と指導実践という内容とした。実技、指
いるのは11人制のサッカー」等の8人制に懐疑的な、ある意味率直な
意見も出た。しかし、指導者がどのようなフィロソフィーを持つか
導実践を行うため、参加者を絞る必要も生じ100名余りの参加にとど
まったが、内容の濃い2日間であった。
指導者の意識改革が大切であるということが確認され、4ブロック、
12地区ともに、とにかくできるところから8人制を導入しようという
今回の開催の狙いの一つは、JFAビジョンの共有と長野スタイルの
方向となった。
構築である。そこで、2015年に向けて、日本サッカーの進んでいる
方向、指導者が共有すべきフィロソフィーを小野剛JFA技術委員長の
その中のいくつかの地区では、カンファレンス終了後、地区の少
年団連盟等のリーグ運営委員会でも8人制の実施が検討された。従来、
講演によって伝えていただいた。さらに北信越ユースダイレクター
(北信越チーフトレセンコーチ)の木村康彦氏に、
「2015年へのロー
小学校6年生で11人制で実施していたリーグ戦を安曇地区、更埴地区
で8人制として開催することが決まった。また、佐久地区では、指導
ドマップ」として、そこへのアプローチについて講演していただい
者のベクトル合わせのためのミニカンファレンスを夏に実施するこ
た。そこで示されたビジョンを県内で具体的にできる形にしていく
ためブロック・地区ごとにディスカッションを行った。
とも決定した。さらに、来年度から3種で実施されるU-13リーグを、
U-12からのつながりや、試合出場機会の確保、スキルアップのため、
長野県は非常に大きな県であり、北信、東信、南信、中信という4
つのブロックに分かれている。4ブロックには12の地区があり、12地
8人制で実施していくこと、そのためにPlayers First!を踏まえたロ
ーカルルールでの積極的な運営をしていこうという話し合いが持た
区ごとにさまざまな活動を行っている。ブロックにも地区にもそれ
れた地区もある。
36
また、選手を育てる環境としての保護者の啓発を意図的に行うこ
種別で連携して地区で選手を育てようという「長野スタイル」を実
との重要性やレフェリーとの連携、1人審判制の積極的な導入も話題
行していくリーダーとなっていこうという意気込みを感じることが
となった。8人制にしても1人審判制にしても、また、保護者への働
きかけにしても、
「形」ではなく「意図」が大切であること、そして
できた。参加者のサッカーにかける熱い思いと行動力が長野県サッ
カーファミリーのすそ野を広げるとともに、トップトップの選手が
その根本は「選手」を育てるために行うことであるという共通理解、
ベクトル合わせができたと思う。
育つ環境をもつくっていくと信じている。
もう一つの目的は、指導者の現場でのスキルアップ、指導力向上
である。参加者の希望も強かった実技と指導実践を、2002FIFAワー
ルドカップの余剰金事業で県内の自治体で初めて作られた千曲市サ
ッカー場(人工芝)で行った。実技では、パス&コントロールを中
心にJFAアカデミー福島からの発信を木村ユースダイレクターを含め
た47FAインストラクターが伝えた。そして、指導実践のプランニン
グでは、あえて地区や種別をできるだけまたいだグループを編成し
中 中国地域のユース育成の取り組み
眞藤邦彦
国 【報告者】
(中国地域技術委員長/ナショナルトレセンコーチ)
今回は2月に行われた全国技術委員長会議での地域別ディスカッシ
ョンにて、中国地域で話し合われた内容を紹介します。
て行った。このことは、指導対象が異なる指導者同士がディスカッ
参加メンバーは、青山孝樹(岡山県FA技術委員長・ユースダイレ
ションする中で評価がアセスメントでも出ていた。指導実践では、人
の前で指導をする機会もめったにない中で、2人∼3人のコーチング
クター)
、上野敏夫(島根県FA技術委員長・ユースダイレクター)
、小
野明(山口県FA技術委員長)
、香川清司(広島県ユースダイレクタ
チームでプランを立て、実践することは良い刺激となり、そこでは、
あらためてキーファクターの整理やテーマへの理解度を高めること、
ー)
、山本康彦(鳥取県FA技術委員長)
、牧内辰也(ナショナルトレ
センコーチ中国地域チーフ)
、沢田謙太郎(ナショナルトレセンコー
声がけやコーチングで選手のやる気を起こさせ、集中させること等、
チ、
)
、眞藤邦彦の8名で、メインテーマは「U-15のリーグ戦化」でし
自分の指導の振り返りや、他の参加者からの良い刺激が得られたと
いう声が聞かれた。
た。
1泊2日の非常にタイトなスケジュールではあったが、3回目となる
カンファレンスに参加した100名余りの指導者は、種別の垣根を越え
(1)U-15リーグ戦化
これまでに大辻明・中国地域3種委員長の音頭でリーグ戦化に向け
てオープンマインドで討論し合うことができた。そして長野県サッ
て取り組みを始めていました。実施に向けて中国地域の状況を整理
カーの将来のあるべき姿と、それを実現するためには自分自身のス
キルアップを含め、今できるところから動くことの重要性を共有し、
し、模索していましたが実施には至りませんでした。委員長の理解
の中で1月4日、5日に、山口県でリーグ戦化の会議を行うことができ
第3回 サッカーカンファレンス プログラム
JFA 2005年宣言 2015年世界のトップ10をめざし 長野県でできること
長野県から全国で通用する選手の育成のために
講演
指導実践
○カンファレンス開催のねらいとガイダンス
(社)長野県サッカー協会技術委員会
○講演 1 「2015年に向けて」
(財)日本サッカー協会技術委員長 小野 剛
○講演 2 「2015年へのロードマップ」
ナショナルトレセンコーチ 木村康彦
○指導計画立案の留意事項と
指導実践のガイダンス
(社)長野県サッカー協会技術委員会
ディスカッション1
○リーグ戦導入の意図
○8対8の推進
○大会ガイドラインの考え方
(ローカルルール)
○地域で何ができるか
実技
○基本の徹底
○動きながらのスキル
○ボールワーク
①パス&コントロール
②崩し・突破
③フィニッシュ
(シュート)
④ビルドアップ・ポゼッション
⑤守備・チャレンジ&カバー
ディスカッション2
○トレーニング・実践等
○リーグ戦導入
○8対8の推進
○大会ガイドライン
○U-12年代の課題克服のために
○キッズへの働きかけ
○長野県サッカー協会への要望
閉会
ディスカッション内容の報告(各地区)
カンファレンス総評(木村康彦)
ました。この会議で中心的に案を考えたのは、3種の現場で活躍され
ている上野氏と辻野昌宏氏(山口県FAユースダイレクター)の2名で
した。その会での原案を基に全国技術委員長会議で話し合いました。
そこでは今後の中国地域でのリーグ戦化への方向性が確認されまし
た。
もちろん、これから中国地域3種委員長会議に提案し、承認されな
いと進めない問題ですが、4月の3種委員長会議までに大辻委員長と
連携を密に行い、2009年度には実施に向けて取り組みたいと考えま
した。すでに北海道、東北、関東では実施されており、2009年から
四国、北信越で実施することが決まっています。東海も今回の全国
技術委員長会議で、実施に向けての取り組みが決定されました。中
国地域も遅ればせながらではありますが、現場におけるさまざまな
障壁を乗り越えて進んでいこうとする中国のエネルギーを全国の皆
さんに感じ取っていただき、今後どのように中国が進んでいくのか
を見届けてほしいと思い、まだまだ未完成の案と取り組み状況を合
わせて紹介します。
方向性を決めた原案として、日本サッカー界の将来を担うユース
(U-15)のより一層のサッカー技術の向上と、健全な心身の育成を図
ることを目的として、仮称ですが「中国地域U-15チャンピオンズリ
ーグ2009」として立ち上げます。10チームの規模で80分ゲームのホ
プランニング
※本カンファレンスは、公認コーチのリフレッシュ研修として実施。
ーム&アウェイで戦います。そして拮抗したゲームを成立させてい
くために各県均等チーム数の参加ではなく、実力に合った比例代表
37
参加を考えています。初年度は各県からの推薦で決めていき、その
の抱負を述べられました。
後は各県でリーグ戦を整備し、そのリーグ戦から参入戦へ上がって
U-12年代の課題の一つに女子活動が挙げられますが、中国地域で
いく仕組みを考えています。まずは中国リーグを立ち上げ、そこか
ら各県リーグの整備を図り、理想に近づける工夫を各県の実情に合
は活発にU-12に取り組み、良い環境の中で活動できていると言えま
す。今後はより一層の指導者間の連携が重要になってきています。
わせて取り組んでいくことが決定されました。
私たちのポリシーは、
「リーグで楽しい、もっとやりたい」という
もう一つの活動として、2月23日、24日に出雲ドームでU-11島根県
トレセンが行われました。島根県は4支部に分かれており、各支部に
経験の中で選手を育て、中国地域のレベルアップを図ることです。最
3人のコーチがついて、2日間にわたって午前はトレーニング、午後
終的には「サッカーで豊かな人間性をはぐくむ」を大テーマに、選
手も指導者もM-T-Mを通じて力をつけていきたいと考えています。ま
は各支部同士総当たりの8対8のゲーム(3ピリオド制)を実施しまし
た。
だまだ理想の部分を含めた原案の段階ですが、現実にどのようにな
るのかを見届けていただければ幸いです。2009年実施に向けての準
昨年までは止まった状態でのキックやボールコントロールのトレ
ーニングが多かったのですが、今回は動きながらのトレーニングの
備ができるように、この2008年が大事な一年になっていくと覚悟し
中で、続けていけば良くなるのではないかと思われました。指導者
ています。
私たちの会議のスローガンは『必ず一歩を踏み出そう! ∼はじめ
がこのことを踏まえながら精度を上げていくことを働きかけ、良い
方向に導いていってくれることを期待します。
の一歩∼』でした。実現できることを夢見て汗をかきたいと決意を
新たにしました。
8対8の試合はとても良かったです。ボールに絡む選手が多くゴー
ル前のプレーが何度もあり、見ていて楽しいものでした。スピード
(2)8対8の推奨と女子選手の活動
その他のテーマでは、U-12を取り巻く環境について話し合いまし
感も高かったです。
以下、担当者のコメントを紹介します。
上田氏(島根県U-12トレセンコーチ)
た。
中国地域では各県で8対8のゲームが当たり前になってきており、さ
今まではボールに絡む選手も少なく、クリアとかが多くなり、蹴
り合いが多く見られていたが、今回は選手が動いた中でボールが動
まざまなリーグ戦が行われています。ただ改善の工夫が必要な大会
もあります。例えば、チビリンピックにつながる中国大会(ジョイ
き「スペースで選手とボールが出会う」場面が増えています。
堀江氏(島根県U-12トレセンコーチ)
フルカップ)は単独チームで地区から県での予選リーグが行われ、ジ
昨年のナショナルトレセンU-12のメニューを、1月に行われたU-11
ョイフルカップの中国大会(予選リーグとトーナメント)へつなが
っています。大会の方法は参加12チームが3チームごとに分かれての
大会でトレーニングしました。今回が実質2回目になります。それか
ら1カ月がたちました。8対8の試合を見て選手が少しずつ変わってき
リーグ戦を行い、リーグ1位チームが抜け、4チームでのトーナメン
トを実施しています。この大会をより良いものにするため、参加16
ていることを感じます。何も考えてないように見えるロングキック
が減ってきました。
チームにし、4チームでのリーグ戦に変えるべく、現在検討されよう
●島根トレセンの実際の活動のスタートが今回のトレセン。次につ
としています。予選リーグ後は、決勝トーナメントと交流戦で試合
数を確保していく方法です。レベルに応じた試合経験ができるよう
なげていくためにもU-11でこのメニューを行いました。
●これは昨年12月に行われたナショナルトレセンU-12(NTC U-12)
にと考えられています。
トレセンにおいても各県、取り組みはさまざまですが実施してい
を伝達し、各支部の指導者が実践し、働きかけてくれた成果 → 『出会
う』場面の増加
ます。広島の例では、県トレセンを3回実施しています。そのうち7
月はトレーニングを中心に、9月は6支部トレセンの8対8交流ゲーム
を行い、10月にチャレンジフェスティバルへ参加するチームを決定
する活動になっています。
このチャレンジフェスティバルは、中国5県の8人制交流会です。各
県32人が2チームに分かれ、5チームの2リーグを実施しています。こ
のフェスティバルにはカップも準備され、優勝チームを表彰してい
ます。トレセンの子どもたちの生き生きとした姿が見られる大会で
す。中国地域4種技術委員長の山出久男氏(JFA技術委員)は「8対8
がU-12年代で有効なことは、中国エリアで周知されている。リーグ
戦方式を含めた大会の形がどうであれ、全国大会につながっている
ことで8人制が定着していった。こうした取り組みで4種指導者に啓
発できている」と言われました。
8人制が単独チーム、トレセンチームに浸透しているので、
「今後
は大会内容やゲームの質にこだわっていくときにきている」と今後
38
U-11島根県トレセンより
●U-11の選手は昨年、試合にいつも出ている選手は少数です。だか
岡山県では行政が「ゆめアスリート」を2007年にスタートしまし
らこそ早い段階でNTC U-12のメニューに触れさせたいと考えまし
た。これはバレーボールや陸上、スケート等さまざまな種目の専門
た。また、昨年から試合に出場している選手にも良い影響があると
思いました。
家が種目を越えてジュニアの年代の子どもたちを対象に指導してい
くものです。
(3)2種のプリンスリーグ
開始年齢は小学3年生で3次選考まで実施し、種目は問わず力の高
い子どもたち20名を選んでいます。2008年は2期目に入り、3年生、4
私たちは、今できる理想的なプリンスリーグを実施していると自
年生と2学年にまたがります。年間を通して月2回の活動であるサッ
負しています。しかし、プリンスリーグをさらに充実させていくた
めに、既存の大会整備を実施する必要が出てきていることも事実で
カーは、12月と1月に計4回の指導を担当しました。主にコーディネ
ーションや種目トレーニングを実施しました。子どもたちの将来が
す。そこで中国地域の沖本周洋2種委員長(広島県FA)を中心に、2
種の委員長会議を実施し、5月に行われる高体連主催の中国大会の時
楽しみです。
期や内容を見直しすることになりました。目的は、2種の選手をより
②ジュニアユースの取り組み
長期にわたる拮抗したゲームと各県リーグの整備、複数チームの参
加を具体的に進めていくための方策でした。急遽、委員長会議が開
報告:小野 明(山口県FA技術委員長)
山口県ではU-13、U-14、U-15のトレセンを県内5ブロックに分けて
かれましたが、総論賛成で各県委員長がリーダーシップを発揮し、理
解を求めながら進めていきたいという考えが打ち出されました。す
トレセンマッチデーを活用し、取り組んでいます。そのトレセンの
成果を試すため、夏と冬の年2回、県トレセンとして地区対抗戦を実
べてにおいて「2種のチーム選手の育成強化につながること」を合言
葉に改革が進められています。中国高体連という組織の高いハード
施しています。トレセンで取り組んできたことの検証になり、選手
の発掘にもつながる取り組みになっています。
ルを、中国地域の活性化に向けて一致団結して越えよう、そして
「Players First!」は他の専門部にも伝わるはずと信じて取り組んで
います。
③ジュニアユース、ユース年代の取り組み
報告:香川清司(広島県FAユースダイレクター)
(4)広島県のアドバンスリーグ
U-16中国地域トレセンリーグを開始して、今年で4年目になります。
当初はサンフレッチェ広島ユースが活動拠点とする広島県吉田町に
そのほかの課題で、中国地域のプリンスリーグを受けて各県での
各県から集まって集中開催をしていました。また、2007年度までは
リーグ戦改革が挙げられます。ここでは広島県のアドバンスリーグ
の取り組みを紹介します。
ミニ国体までの期間中の活動であり、国体以降の活動にはなってい
ませんでした。
プリンスリーグを活性化するためには、より力のあるチームを送
り出していける県の取り組みが重要になってきます。広島県では、ア
2008年度はさらなる充実を図り、前期をミニ国体まで、後期を2月
まで延ばし、略式ホーム&アウェイで長期にわたるリーグ戦の実現
ドバンスリーグとして県の1部から3部制で実施しています。新たに
に至っています。その日程に合わせて種別を越えた連携も併せて取
複数チームが参加できる仕組みを考案しているのですが、他4県では、
広島ができるのであれば、われわれもできると注目しています。な
り組まれ、U-14、U-15も同じ会場でリーグ戦を実施するようになり
ました。
ぜなら広島は、実際に県の規模が大きいため、行事の再編成や仕組
みを変えていくことは困難と考えられているからです。そこで「広
このように、年々種別を越え、指導者も交流できるようにしまし
た。ますます進化する中国地域のトレセンリーグの取り組みになっ
島が変われば中国が変わる」と、広島は2種の力を結集して大きなエ
ています。
ネルギーに変えるため会議を重ねています。1部から3部までのアド
バンスリーグを昨年から立ち上げていますが、これにはクラブチー
(6)まとめ
ムも参加でき、ここで勝ち上がったチームがプリンスリーグに参戦
できる仕組みになっています。そこに3年目を経過する「これからリ
以上、これからの取り組みを中心に中国地域の活動をまとめてみ
ました。私自身これまで中国地域の技術委員長やナショナルトレセ
ーグ(あすなろリーグ)
」を組み込んで4部制にし、複数チームの参
加を取り入れようとしています。あすなろリーグに参加しているチ
ンコーチを務めていながら、中国地域のことがおろそかになってい
ましたことを大変申し訳なく思います。そして、今回の全国技術委
ームからは、多少気軽さがなくなり、選手や指導者の負担が増すこ
員長会議で知りえた取り組みには大変驚かされました。まさに各県
とになると言われています。それでも運営、行事の整理等は指導者
が工夫・努力すれば必ずできるという信念で取り組んでいるのが現
技術委員長やユースダイレクターの、地域における働きかけや努力
の成果だと言えます。中国担当チーフも今年から牧内辰也U-19日本
状です。
代表監督に代わりました。沢田謙太郎トレセンコーチも加わって中
国旋風が吹き荒れることと思います。これからの中国を見てくださ
(5)トピック
①ジュニアの取り組み(国体強化後の普及強化策)
報告:青山孝樹(岡山県FA技術委員長)
い。全国の皆さん、これからの中国は怖いですよ。とはいえ、互い
に切磋琢磨してJFA2005年宣言の約束を果たすべく取り組みをしてい
きましょう。すべては『Players First!』のために。
39
海外指導者研修会
コパ・チーバス2008
(メキシコ)
【報告者】吉武博文
(ナショナルトレセンコーチ)
研修会参加者
【はじめに】
○メキシコサッカー協会指導者養成講習会
●オーガナイズ等がきっちりしていない
近年の各種年代世界大会において、メキ
見学
○チーバス選手育成システムのレクチャー
(例:時間9時キックオフなのに9時10分
に開始。試合会場には本部テントなし。
シコ代表チームの躍進ぶりは著しい。また、
昨年のFIFA U-17ワールドカップ出場を前
○チーバス選手育成プログラムの実技講習
会
GKユニフォームの色と相手フィールドプ
レーヤーの色が同じでもOK、レフェリー
に代表強化の海外遠征として、U-17日本代
○自由な散策
と選手のユニフォームの色が同じでも
表がコパ・チ−バスに初出場し、その際、
メキシコサッカーの質の高さが報告された。
5.試合観戦より
OK。胸や短パンには番号なし)
。
●ハードが整っている(ピッチ数面、プー
そこで、今年もU-17日本代表を派遣すると
ともに、日本の指導者にも「世界との差」
、
U-17日本代表対メキシコチーム、メキシ
コチーム同士、アルゼンチンチーム対メキ
ル、テニス、スカッシュ、体育館)
●PKは躊躇せずにスパッととる(レフェリ
「メキシコサッカー事情」の体験を目的とし
て海外指導者研修を企画した。その内容を
シコチーム…。試合を観戦しながら、また
試合後ディスカッション形式にて、受講者
ー)
。
●背番号がトップチームから続いているの
プログラムごとにまとめる形で報告する。
全員で感じたことを述べ合った。そこで日
で、97番や105番といった大きな背番号
1.概要
本との違いとして話題となったものを挙げ
てみる。
がある。
●試合前の国歌斉唱ではどの選手たちも声
〔海外事情〕
●個々の選手の特徴がはっきりしている
で出して歌う。
●メキシコチームはクロスの質が高く、相
場所:メキシコ合衆国ハリスコ州グアダラ
ハラ市(メキシコ第2の都市、人口200万
人・標高1,500m)
(例:ヘディングの強いセンターバック、
手の逆を突く動き、フェイントが必ず入
日程:1月25日∼2月1日
参加者:13人
足の速いサイドプレーヤー、ボールが納
まりゴールへ向かうフォワード…)
。もち
る。
●アルゼンチンチームはペナルティーエリ
2.目的
ろん基本技術もしっかりしている。DFの
選手も攻撃参加できるしFWの選手も守
ア内のシュートが冷静かつ鋭い。
●ロシアのチームは攻撃と守備を分業して
・世界と日本の「違い」を実感する
れる。サイドの選手も左右、中でもプレ
いる。
・メキシコの選手および指導者の育成シス
テムを知る
ーできる。
●オフサイドがあってもプレーを止めない
6.指導者養成学校視察
・コパ・チーバスやリベルタドーレスカッ
プを観戦し、日本との差を分析する
で続ける。
●球際やライン際でもあきらめずに思い切
メキシコサッカー協会が運営する指導者
養成学校の実技講習を見学した。カリキュ
3.研修会スローガン
りプレーする。
ラムは4段階のレベルで構成されており、一
思い出に残る楽しい研修ツアーに…
●選手同士や選手とコーチ、レフェリーと
選手がコミュニケーションをとる。
番上のレベルを取得するとプロチームで監
督を務めることができる。見学したのは初
∼全員が『楽しく』&『ためになる』研修
をめざす∼
●シュートミスをすると悔しがるし、チー
ムメイトは怒る。
級・中級にあたるレベル1と2の時間であっ
た。
①そのために 臨機応変な対応をする
②そのために みんなが歩み寄る
●サブの選手もピッチ内のプレーに悲しみ、
そして喜ぶ。
インストラクターが20分近く遅れて来た
こと、何気なく始まり、何気なく終わるこ
③そのために 情報を共有する
●取られたら取り返すことや切り替えの速
と。しかし参加者の目は真剣そのものであ
4.プログラム
○コパ・チーバス大会視察(10試合)
○リベルタドーレスカップ予選視察(1試
合)
40
さ、1対1でのぶつかる音は常に聞こえ、
普通に繰り返されていることのように感
じた。
●4バックから3バックへの変更など、修正
を選手たち自身でやっていた。
ること。指導実践中に監督役以外の選手役
やインストラクターがいろいろ言うこと。
それに対し、当事者は「周りのみんなから
意見をもらうのは勉強になりうれしい」と
答えること…など、たくさんの異文化を感
のようなピンで地面に差し込んで完了。育
成年代でもプロの練習でも定番となってい
るアイテムらしい。
講習会の終わりに質疑応答があった。受
講者からの「メキシコの選手たちは止め
る・蹴る・運ぶといった技術が高いが、特
に指導の際、重要と思われるポイントはあ
るか?」の質問に他の受講者も「それは知
りたい」という雰囲気があった。しかし、
フェルナンド氏は「続けること、反復する
レクチャーの模様
じることができた。中でも、最後に見学し
ーを持っている。自分の個性を生かせる。
ていたわれわれにも「何か質問は?」と聞
本気で取り組む姿勢がある。忍耐強い。感
かれ、参加者から2∼3の質問が出たが…。
反対に質問があると言われ「なぜ日本人は
情コントロールができる。高いコミュニケ
ーション能力がある
しゃべらないのか?なぜ質問しないんだ!
それで楽しいのか?」と…。一番の違いを
8.実技講習会
感じた瞬間であった。
7.レクチャー
チーバス育成部コーディネーターである
フェルナンド・グティエレス氏による実技
指導を受けた。ミニハードルやポールを使
現在、チーバス育成部長であるホセ・ル
イス・レアル氏による「クラブの育成コン
ってのコーディネーショントレーニング。
ボールを使ってドリブルの練習。グループ
セプト」を中心に講義を受けた。
「攻撃的な
サッカーを目指し、メキシコ人のみでの構
でのパス&コントロール。ダブルボックス
でゴールをつけて4対4+GK(クロスを上げ
成にこだわり、人間としての成長が目標で
るフリーマンあり)
。
ある」と淡々と語りかけてくれた。そして
選手選考基準も説明してくれた。
それまで観戦ばかりだったので、受講者
も久しぶりにボールを蹴れる・汗をかける
①フィジカル面
という喜びの表情が見られた。しかし、ト
レーニングが始まると高地ということで息
速さ、強さ、高さ(理想:DF180cm以上、
切れの洗礼を受けた。異文化体験は、やは
MF170cm以上、FW180cm以上、GK180cm
以上)
、高いコーディネーション、瞬発力
り体感することが一番という感想が多かっ
た。
②テクニック面
トレーニングに使用したライン用ゴムは
興味深いものであった。芝に線を引くのに
ヘディング、すべてのテクニック、目ま
ぐるしい展開でもしっかりボールを扱える
幅5cmほどの長いゴムを引っ張り、端を釘
ことでメキシコ選手はできるようになって
いる」と。答えは選手が自ら編み出すもの、
というニュアンスに聞こえたのは私だけだ
ろうか?
【おわりに】
海外では予定通りに行かないのが常であ
る。実際、今回も大会のスケジュールが変
更されたり、予定の講師が来ないアクシデ
ントもあったが、受講者の協力そして真摯
な態度、現地で研修中の交換留学生のおか
げで、研修を無事に終わることができた。
心より皆さんに感謝したい。そして、最後
に以下のようなアセスメントがあったこと
に、将来の日本のサッカーの明るさを感じ
た。
「自分も日本代表の一員という自覚のも
とに、選手育成に携わらなければいけない
ことが分かった。選手には育つもの、育て
るものという2つの面を持って指導に工夫と
愛情を注ぐ必要をあらためて理解すること
ができた。
」
来年もメキシコ研修があることを願って
報告を終わります。
(また強い、速いボールの処理ができ、そし
てまた同様の正確なキックができる)
③戦術面
ゲームの読解力がある。ディフェンス、
オフェンス時の両方でその都度チームが求
めていることを分析し、行動に移せる能力
がある、各ポジションをしっかりこなせる
戦術眼
④メンタル面
試合中、トレーニング中におけるボール
のあるとき、ボールのないとき、そしてグ
ラウンド内外でも常に勝者のメンタリティ
実技講習では、チーバス育成コーディネーターである
フェルナンド・グティエレス氏の指導を受けた
41
海外で活躍する指導者⑥
好評連載企画
「海外で活躍する指導者」
、
6人目の今回はカンボジアで活躍する
手島淳氏からの報告です。
●プロフィール
手島 淳(てしま・あつし)
岡山県津山市出身。1963年6月20日生まれ44歳。ドイツ、
オランダ、旧ユーゴスラビアにコーチ留学・研修し、その
縁で ハンス・オフト氏(元日本代表監督)の通訳を務め
る。
指導者としては、横浜フリューゲルス(当時)
、ジュビロ
磐田などでプロ選手から育成、グラスルーツ、日本女子サ
ッカーリーグと多岐に渡って指導経験を持つ。今回、JICA
シニアボランティアとしてカンボジアサッカー連盟に派遣、
2007年秋に開催されたAFC U-16選手権予選大会に監督と
して参加した。ドイツサッカー連盟Bライセンスコーチ。
任期は2008年5月まで。
AFC U-16選手権予選大会に出場したU-15カンボジア代表
●派遣国・地域の紹介
カンボジア王国。インドシナ半島に位置し、ベトナム、タイ、ラオ
スに囲まれている。気候は熱帯モンスーン気候で、季節は大きく6
月∼10月の雨季と、11月∼5月の乾季に分かれ、3月∼5月が最も暑
い時期で日中の気温は40度に達する。面積は18万1,000平方キロメ
ートル(日本の約半分)で、人口は約1,282万人。首都のプノンペ
ンは、人口約140万
タイ
ラオス
人を誇る政治、経済
の中心地。人口のお
よそ90%がクメール
人(カンボジア人)
カンボジア
で公用語もクメール
語 で あ る 。( 以 上 、
在カンボジア日本国
大使館、カンボジア
政府観光局ホームペ
プノンペン
ージより)。FIFAラ
ベトナム
ンキングは184位
(2008年1月現在)
。
選手権予選大会に監督として参加しました。準備としては、日程の
変更も手伝い約6週間、合宿と通い合宿を繰り返して55回のトレー
ニングを行うことができました。技術的なレベルは十分でないもの
の思ったよりも良く、また短期間で改善できたことも多かったので
すが、ヘディング、中・長距離パス(20m以上)は、これからのト
レーニング環境に大いにかかわってくる問題だと思います。戦術に
関しては、ストリートサッカーの延長線上で、とにかく守備の意識
が「ほとんどない」状況の中、この部分に多く時間を使いました。
そんな中、カンボジア人コーチ・選手の中には「手島の考え方は守
備的だ!」というような声もありましたが、それに対して「攻撃す
るにはボールが必要だろう!」が、いつの間にか私の口癖になって
いました。
大会自体は予想通り、
U-15日本代表(大会参
加時)が、頭3つほど
抜け出たような圧倒的
な巧みさ、強さだった
ユース年代の育成・強化体制の整備
∼AFC U-16選手権予選大会を通して
わけですが、カンボジ
アは初戦のベトナムに
カンボジアと言えば、アンコールワット、地雷、ポルポト政権の
1-1で引き分け。この結
果は、彼らにとってか
歴史、水上生活などが、私のカンボジアに対するイメージでした。
しかし、いざ現地に行ってみると 郊外に行けば真っ平らな平地に
なりうれしかったよう
です。日本には0-7と大
椰子の木、時折姿を見せる広大な田んぼなど、のどかな国で、これ
敗しました。現在の実
までに移動したカンボジア国内の主要な町には地雷などの危険箇所
を一度も見ることはありませんでした(タイとの国境近辺だけのよ
力では妥当だと思いま
すが、キックオフ20秒
うです)
。毎日30℃を越える厳しい暑さはあるものの、のんびりし
た国です。
で誰もボールに触るこ
とができずに失点した
私の任務は、カンボジアのユース年代の選手の育成・強化体制の
ことは、大きなショッ
JICAシニアボランティアとしてカンボジアサッカー連盟に派
クでした。
遣された手島淳氏
整備です。今回は、その一環として、昨年秋に行われたAFC U-16
42
任期も半分を過ぎたわけですが、ユース年代の選手の育成・強化
としては、とにかく練習の設備・世代別のチーム活動がほとんどな
い中、ユース指導者の養成、環境整備と強化プランに重点を置き、
活動します。
この後、私は意図的に厳しい姿勢で選手に接しましたが、選手た
ちはそれに慣れていないせいか、中には反発する選手も出てき始め
ました。香港戦では精彩を欠き1-1で引き分け、ラオス戦ではまた
しても0-6と大敗してしまいました。日本戦、ラオス戦共に戦い方
を変えていれば、こんなに大きな差は出なかったかもしれません
が、とにかく準備期から行った守備の準備(マーキング、ポジショ
ニング)
、ボールを積極的に取りに行くこと(プレッシャー)は、
ポリシーとして変えたくなかったので貫きました。しかし、それが
仇になったのは否めません。
「当たって砕けろ!」とは、まさにこ
れらの試合でした。
最終戦のインドネシア戦を前に1次予選敗退が決まりましたが、
選手たちのモチベーションは一人を除き前向きでした。その彼は今
までしかられたり、試合のメンバーから外れることがなかったよう
です。それはある意味、カンボジアの社会性を反映している面もあ
り、私は屈することなく対応したのですが、この最終戦、スタッフ
ともいろいろ相談し 彼を起用しました。前半、チームとしてはま
ずまずの内容でしたが、彼はいまだに何かを引きずっていました。
ハーフタイムの雰囲気もこれまでと違い、選手たち自身が何か手応
えをつかんでいるかのようだったので、その選手へ「私に対して感
情的になっているのは分かる。でも君の胸にはカンボジアの国旗が
ついている。そして仲間がこれだけ頑張って勝利を目指しているの
を見て、君は何も感じないのか? この試合は私とのことは忘れて、
カンボジアと仲間のためにプレーしてくれないか?」と彼に告げま
した。後半は、ピンチもありましたが、終了間際の得点を守りき
り、勝利を収めることができました。
結果、グループ4位(1勝2分け2敗)という成績。決して良い結
果とは言えませんが、大会が終わって2カ月、しだいに分かってく
る選手たちの置かれているサッカーの環境は、活動する場所(練習
場・チーム)がほとんどない中、6週間の準備で本当によくやった
と、今では思います。時々、選手たちと街中で会いますが、しかっ
た選手も「いつ、あなたの練習はあるのですか?」と聞いてきまし
た。
大会前の約6週間、合宿等を通じて55回のトレーニングを積んだ
43
育成の現場をたずねて…
このコーナーでは、小野剛技術委員長が全国各地で
育成に携わっている指導者をたずねて、紹介していきます。
今 月
の 人
江藤泰史
日本人と似た体格で世界を相手に互角に戦
(Cruz Azul
育成コーチ)
写真右が江藤泰史氏
なつっこさは憎めないかわいさがあります
江藤:幼稚園のころからみんなサッカーを
ね。
していて…、まぁサッカーといっても本当
それから、彼らはとにかくゲームの中で
学んでいくという感じですね。頭で考える
にストリートサッカー状態で、でもとても
楽しかったという記憶があります。小・中・
し、育成に情熱を燃やしている一人の若者を
というよりはゲームの中で身体にしみつい
ていくという…。だからこちらのコーチも
高とそれほど強いところではなかったので、
大学では本格的にやってみたいという気持
とりあげてみたいと思います。
小野:メキシコに来て6年とのことですが、
ゲームの中で子どもを育てるというのが重
視されているような気がします。リーグ戦
ちが強かったです。早稲田大学か慶應大学
大学に行ってサッカーをやりたいと思って、
まずその当時、このメキシコを選んだのは
どのような理由からですか?
でも必ず全員を出場させなければならない
慶應を見に行ったとき、偶然、吉井さん(仙
ルールになっていますし。自分も今、リー
グ戦の中で(選手を)育てていくというこ
台育英高校監督、2007年モンタギュー国際大
会U-16日本代表臨時コーチ)がボールを蹴っ
とにチャレンジしているところです。
実は日本にいるときは、自分が子どもた
ているところにお会いしたのです。いろい
ろ話を聞かせていただいた中で、
「選手がさ
ちの指導にこんなに興味があるとは思って
まざまな役割を持ちながら、自分たちで決
いなかったです。でも本当に楽しい。しか
もこちらでは子どもたちの指導をしている
めていくんだ」という言葉に惹かれ慶應に
進みました。
コーチでもリスペクトされる環境があると
感じています。
選手時代はただただ、がむしゃらにやっ
ていたと思います。3年になってからはフィ
小野:近年急速に力をつけてきているメキシ
ジカルコーチを兼ねながらプレーを続けま
コサッカーの秘密はどこにあると思います
か?
した。4年のときに念願の1部昇格を果たし
て、男泣きですね。そのとき「これがサッ
江藤:もともと基盤はあったと思います。す
べてがサッカーという国ですから。でも、世
カーだ」と思ったのを記憶しています。そ
れからですね。サッカーから離れられなく
界に目を向けるということを重視し、その
なったのは。サッカーのおかげで、本当に
中で、国際大会等で自信をつけてきたのは
あると思います。
「世界に目を」という観点
世界中にすばらしい仲間もできましたし。
小野:最後にご自身の今後の夢を聞かせても
日本との違いなども含めてどんどんおもし
では、若い年代から本当に多くの国際経験
を積ませる努力はしていると思います。そ
らえますか?
江藤:自分は基本的には人生を楽しみたい
ろくなっていって、気がついたらどっぷり
はまっていたという感じです。
して、その観点で指導者間の交流が頻繁に
行われ、指導が変わってきたことも大きい
という人間ですが、そんな中でもサッカー
は自分にとって特別な存在です。とにかく
小野:メキシコの子どもたちを指導していて
感じることは?
のではないでしょうか。
もっとサッカーに触れて、いろいろな人と
でもその一方で、その気質から勝負弱い
ともよく言われています。
「最高のゲームだ
知り合って知識や価値観に触れて自分を高
めていきたいです。そしてその中で感じた
ったけど、いつものように負けた」という
のがメキシコの決まり文句で、成功に対す
こと、外から見て初めて感じた日本の良さ
なども含めて、自分の培ってきたものをい
る恐怖、すなわち成功を目前にしたときに
つの日か日本で伝えていくことができれば
目標がなくなることの怖さと指摘されたり
もしていますが、少しわれわれと似たとこ
と思っています。
い、しかも育成に力を入れてきた近年、多く
の若いタレントが育ってきている国。今回
は、ある意味、われわれにとっても刺激とな
るその国メキシコの地で、自らチャレンジを
江藤:単純にサッカーが大好きだったとい
うことです。海外のサッカーを生で感じて
みたいという思いは強かったです。でも実
は、ブラジル、アルゼンチンを目指して旅
に出たのです。大学卒業後、まずは2年半、
アルバイトでお金を貯めて、旅の途中のつ
もりで寄ったメキシコにすっかり魅せられ
てしまったという感じです。
当時、プーマス(メキシコシティ3大クラ
ブの一つ)で10歳の子どもたちの指導をして
いた八田真さんという方に出会い、話をし
ているうちにメキシコのサッカーに興味を
持つようになったのが最初だと思います。そ
の後、日本人学校のサッカーのコーチをし
ながら、草サッカーからプロまでメキシコ
サッカーを見ていくうちに、人々のサッカ
ーにかける情熱やサッカーそのもの、また
江藤:とにかくやんちゃです。油断できな
い。ですから、日本で指導するときよりは
きつめの言葉を使わなければならないかも
しれないですね。怒鳴りまくったりするこ
ともあるんですけど、そんなときでさえも
スペイン語の発音(の誤り)のことを指摘
してくるといった調子です。でも、あの人
ろもあるかもしれません。だからこそ、
「い
いサッカー」から、
「タイトルを取る」とい
うことでさらに軌道に乗っていくと思って
います。
小野:少し話を変えて、ご自身のこと、サッ
「培ってきたものをいつか日本で伝えていくことができれば」
と江藤氏
44
カーを始めたきっかけと、選手時代のこと
などを聞かせていただけますか?
プロフィール
江藤 泰史(えとう たいし)
1975年2月21日神奈川県生まれ
私立駒場東邦中学校、私立駒場東邦高校を経て、
慶應義塾大学卒業。
現在はメキシコのクラブチーム、Cruz Azulで育
成コーチを務める。メキシコサッカー協会プロ監
督資格保有。
財団法人日本サッカー協会機関誌
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J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
年代別トレーニングの考え方⑦
∼ジュニアユース年代(U-14)
その4∼
【報告者】菅野 淳(JFAフィジカルフィットネスプロジェクト)
筋持久力の強化
筋力はキック力やジャンプ力、またフィジカルコンタクトにも
重要な体力要素のひとつです。以前(本誌vol.17)
、
「筋力トレーニ
をしっかり安定させ、その上で自在に動かすこと」ととらえ、大
きく「安定性トレーニング」と「可動性トレーニング」に分けて
考えるとトレーニングを進めやすいことはすでに説明しました
(図1)
。
ングはU-12年代ではまだまだ適していません」と掲載しましたが、
「安定性トレーニング」は運動の中心軸である体幹を安定させ
U-14年代になると骨の伸びとともに男性ホルモンの分泌が活発に
なり始める時期でもあり、基礎的な筋力トレーニングを開始して
ることにより、無駄な力を省いて大きな力を発揮させることがで
きると考えられます。特に「安定性トレーニング」は、キックや
もよい年代と言えます。男性ホルモンには筋肉を大きくする効果
があるため、この年代では徐々に筋肉が発達し始め、身体ががっ
ショルダーチャージなど、大きな力を発揮するときの土台として
重要です。U-12年代でもご紹介したフロントブリッジやサイドブ
しりとしてくることからもご理解いただけるでしょう。
リッジ(写真1、2)などは引き続き継続するものとして、U-14年
ただし、一般に“筋トレ”というとなにか重たいものを「うり
ゃー」と持ち上げるイメージがありますが、この年代での筋トレ
代ではこれらに加えて体幹部のトレーニングを行いましょう。体
幹部のトレーニングとは、いわゆる腹筋や背筋などがそれにあた
はそのイメージを捨ててください。この年代では急激な身長の伸
びが見られることからも分かるように、骨端線と呼ばれる骨の柔
ります。
「それなら知っている」と思われるかもしれませんが、今
回ご紹介するのは、できるだけゆっくりと行う「スロートレーニ
らかい部分が認められ、まだまだ大人の骨と違って過度な負荷を
かけることは危険を伴います。したがって、専門の知識を持った
ング」です。スロートレーニングのメリットとしては、安全で障
害を起こす危険性が少ない点です。この年代の筋トレを行う場合
コーチやトレーナーがいる場合を除いて、バーベルやダンベルな
の注意点としては、できるだけ正確な動作でゆっくりと行うこと
どの重量物は必要ないと考えてよいでしょう。
基本的に負荷は自分の体重で十分です。この年代での筋トレは、
と、やり過ぎないように適度な回数とセット数にとどめておくこ
とです。
しっかりと自分の身体を支えることを目的としたトレーニングで
あることを忘れないでほしいと思います。
図1
コーディネーション能力
体幹部のトレーニング
ジュニア年代(U-12)に適したトレーニングについてお話した
安定性トレーニング
ときにも触れましたが、コーディネーション能力を「自分の身体
1
46
2
可能性トレーニング
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
腹筋その1(写真3、4)
脚を上げ、膝を90度に曲げて、ゆっくりと上体を起こします。
対角(右手と左脚、左手と右脚)になるようにゆっくり上げます。
このとき上げ過ぎると腰が反ってしまいますので、手と脚を地面
いっぱいまで起こしたらいったん止め、その後ゆっくりおろしま
す。まずは10回から始めます。負荷の上げ方は回数を増やす前に
から10cmくらい上げて筋肉を緊張させるようなイメージで行いま
しょう。10cmくらい上げたところでいったん止め、その後ゆっく
上体を起こしたときにその状態を3秒から5秒程度キープしてみる
りおろします。回数は左右交互に20回から始めます。
のもよいでしょう。
背筋その2(写真9、10)
腹筋その2(写真5、6)
曲げた膝に逆の脚を乗せ、ひねる形で上体をゆっくり起こしま
はじめに四つんばいの状態で手と膝で身体をささえます。この
とき背中が丸まったり反ったりしないようにまっすぐになるよう
す。肘を膝につけたらいったん止め、その後ゆっくりおろします。
に保ちます。肘と膝が対角(右肘と左膝、左肘と右膝)になるよ
回数は左右10回ずつから始めます。
うにゆっくり曲げてお腹の下あたりでつけ、その後ゆっくり伸ば
します。回数は左右10回ずつから始めます。
背筋その1(写真7および8)
うつ伏せになり手足をのばし地面についた状態から、手と脚が
3
4
5
6
7
8
9
10
47
めざせ
ファンタジスタ!
検定実施レポート②
1.はじめに
훿AGC/JFAnews
フィーリング(手)の検定に選手が殺到し、どんどん合格しまし
個人練習を促し、基本技術を向上させることを主目的に、2007
た。しかし、ジャグリングになると簡単にはいかず、失敗しては
練習エリアで練習するというのを繰り返していました。失敗して
年10月より「JFAチャレンジゲーム めざせファンタジスタ!」を
開始しています。
悔しくて、一生懸命練習する姿には感心しました。これを続けて
いくことでスキル向上のみならず、失敗してもくじけない精神面
導入の背景、方法詳細については、本誌Vol.21 P.46∼47および
の向上も期待しています。時間を長く取っていたので、最後は検
ホームページ(www.jfa-challengegame.com)をご参照ください。
2008年3月6日現在、228団体から検定の申し込みがあり、基本
定の内容を生かすようにミニゲームで締めくくり、選手も楽しく
参加できたようでした。
セット「白バッチ+検定手帳」9,550セットの申し込みがありまし
た。オープン検定(自団体のみでなく一般参加可能な検定)を実
検定終了後、早速、
「
『めざせファンタジスタ!』の本が欲しい」
と言ってくる選手がいました。自分から練習する意識を持ってく
施する団体は現在16団体、今後予定している団体は82団体となっ
れたようです。コーチ陣からも、
「これは、コーチも検定した方が
ています。
検定実施レポートは、ホームページにも掲載していますが、い
いいのでは?」なんて声も上がっていました。確かにそう思いま
す。今回は、選手の保護者も含めて募集しましたが、大人の参加
くつかのレポートをご紹介させていただきます。
<千葉県八街市 八街Spiel>
者はゼロ。次回オープン開催の際は、地域の保護者を含め大人の
参加を促すようにしたいです。
<東京都世田谷区 SOMEYA KIDS>
実施日:2008年1月6日
当日は年始の日曜日ということもあり、各チームで初蹴りなど
のイベントがあったためか、「めざせファンタジスタ!HP告知」
実施日:2007年12月2日
今回SOMEYA KIDSでは、JFAの「めざせファンタジスタ!」検
を通じての参加者はいませんでしたので、地域のチーム関係者に
声をかけて、選手を集めて実施しました。当日はJFAnewsの取材
定を導入し、検定会を実施しました。JFA2005年宣言にある約束
に近づき、達成できるようになればと思い行いました。
もあり、選手らは緊張した様子で各検定項目にチャレンジしてい
ました。
子どもたちの中には「コーチ、僕無理だよ、受からないからや
検定は検定員が1名ということもあったので、まずはステージ別
らないよ」という子がいましたが、
「チャレンジしてみないと分か
らないぞ!」と声をかけ、検定をスタートしました。何グループ
に選手を集めて検定を実施しました。
①ボールフィーリング手 ②フェイント&ターン ③ボールフィー
かに分けて検定をしていく中で皆、真剣なまなざしで自分のボー
ルと向き合って練習してる子や、検定を受けている子の光景を見
リング(ジャグリングを除く)の順番でグループで行わせ、一番
検定に時間がかかるであろうジャグリングは、合格する自信のあ
ていて、近い将来この子たちが日本のサッカー界を背負っていっ
てくれるのだと思いました。
る選手からトライさせました。
参加した子どもの保護者の方々も見学に来ていたこともあり、
意外と簡単と思われた「ボールフィーリング手」ですが、例え
ばステージ8の「股下8の字回し」は、すでにステージ7をクリアし
街行く人たちも「何をしているのだろう?」と立ち止まって見た
り、検定をしている子どもたちに声援を送っていただいたりと、
ている選手たちは簡単にクリアしていましたが、ようやくステー
ジ7が合格できた選手たちの約半数がすぐにはできませんでした。
ありがたい開催になりました。
最初にあきらめかけていた子もステージ7をクリアし、ステージ
コーディネーション能力がサッカー技術の基礎になっているこ
8もクリアした子もいたり、さまざまでしたが、子どもたちの終了
と、この「めざせファンタジスタ!」での検定項目に「手」の動
作がある意味も理解させることのできる現象でした。
後の言葉は皆、
「コーチ、次のステージをクリアできるようにチャ
レンジするよ!」、「次はいつ開催するの?」という言葉があり、
千葉県は4種年代のサッカーが盛んでレベルも高いので、当地域
はなかなか大会でいい思いをさせることができませんが、こうい
検定団体に認定されて開催でき、子どもたちの気持ち、達成感の
笑顔が見れたことに感謝します。
った個人のスキルや努力を結果として評価してあげられることも、
選手らのやる気を起こすきっかけになると思います。
<静岡県磐田市 磐田北FC>
実施日:2007年12月24日
初めての試みのため、オープン検定ではなく、チーム選手のみ
での検定となりました。会員約60名へ告知しましたが、祝日とい
うこともあり、参加者は少なめでした。
検定エリアと練習エリアに分け、それぞれにコーチを配置し、
練習エリアでは積極的にコーチがアドバイスしました。検定はど
の部門から始めてもよいとしたため、初めは比較的簡単なボール
48
J F A チ ャ レ ン ジ ゲ ー ム
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サイト「BBM@BOOKCART」
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特集
②
2005年宣言の実現に向けて②
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
実現のためのロードマップの作成
トレセン改革と
指導者養成改革
全国技術委員長会議が2008年2月16日、
より具体的なものとなってきているのが印
たロードマップの柱、「トレセン改革」と
17日、JFAハウスで実施されました。今年
は、9地域および47都道府県FAの技術委員
象的でした。
今回のこの特集では、会議でも共有され
長、そして2007年度に新設された47FAユ
ースダイレクターが出席して行われました。
平成20年度全国技術委員長会議 プログラム
今回の会議のテーマは、昨年より進めて
いる「JFA2005年宣言の実現に向けたロー
ドマップ」に基づくさまざまな施策の進行
です。JFA2005年宣言、その中間目標であ
る「2015年の約束」に向け、主要な軸ごと
開会あいさつ
スタッフ紹介
「世界トップ10を目指して」
小野剛(技術委員長)
布啓一郎(技術副委員長)
吉田靖(技術委員)
2008年育成年代代表活動について
ロードマップについて
①キッズ・U-12
布啓一郎(技術副委員長)
指す姿、将来像に向けての方向性の共有が
図られました。
④トレセン活性化
⑤リーグ戦化
分科会
り組みが進んでおり、既に開始されたもの、
また開始目前のものも多く、成果と課題が
小野剛(技術委員長)
FIFA U-17/U-20ワールドカップテクニカルレポート報告
FIFA クラブワールドカップテクニカルレポート報告
に現在の取り組みを確認するとともに、目
扱いますが、一昨年、昨年と比較して、取
「指導者養成改革」について説明します。
■ 2月16日
②指導者養成
③JFAアカデミー
現在の大きなトピックの1つはリーグ戦の
改革です。こちらについては次号で詳細に
훿AGC/JFAnews
布啓一郎(技術副委員長)
眞藤邦彦(技術委員)
島田信幸(技術委員)
布啓一郎(技術副委員長)
布啓一郎(技術副委員長)
9地域ディスカッション
■ 2月17日
地域分科会のまとめ
地域ユースダイレクターによる分科会のまとめ発表
キッズ JFAチャレンジゲームについて
女子 女子委員会より
その他、育成関連諸施策について
総括 2008年度に向けて
松田薫二(技術部長)
上田栄治(技術副委員長・女子委員長)
布啓一郎(技術副委員長)
小野剛(技術委員長)
トレセン改革
日本の育成の軸・発信源として、
トレセン活動のさらなる充実
1.トレセンの歴史
(1)第1期 1977年∼1995年
(地域対抗戦)
有望な選手を集めてトレーニングやゲー
⇒ さまざまなトライ
郎氏らの尽力でスタートして、現在は日本
式のユース育成方法として定着し、海外か
らも注目を集めています。
発足の1977年から1995年までは、9地域
の選抜チームで対抗戦を行ってきました。
当時はトレセンコーチを専任化することが
ムを行うトレーニングセンターシステムを
通称「トレセン」と言います。このトレセ
できず、地域内の先生方を中心にボランテ
ィアで成り立っていました。地域内の有望
ンシステムの発足は1977年。今から30年前
選手を選考してゲームを行うことで、タレ
に当時の技術委員会、堀田哲爾氏、藤田一
ントを見落とすことなく日本の育成強化に
50
小野剛・JFA技術委員長(全国技術委員長会議より)
훿AGC/JFAnews
つなげていく狙いでした。そして開始から
地域一律ではなく地域レベルを指標にして
リートキャンプを立ち上げて、トレセンと
10年が経過してトレセンが定着してきた
1987年に、トレセンシステムから輩出され
招集人数を決定しました。これは平等の考
え方を「人数の平等」ではなく、レベルに
リンクしていくことも考慮して、カテゴリ
ーの変更は行いませんでした。
た選手が日本代表(A代表)に入り、トレ
センの成果が現れ始めました。
応じて誰もが楽しめる「能力に応じた機会
の平等」との考え方を示したものです。ま
③U-12
低年齢になればなるほど、可能性のある
た招集する選手の年齢を、学年単位での年
選手は多く存在します。その観点から全地
(2)第2期 1996年∼(トレーニン
グとゲームを行う研修会形式)
度区切りの招集ではなく、早生まれを招集
できるFIFA年齢の1月1日生まれに改定しま
域で招集人数を増やし、全国で約600名の
選手を招集しました。そして全国1カ所だっ
1993年にプロリーグ(Jリーグ)が開幕
した。FIFAの世界大会では1月1日生まれ区
切りであり、世界大会に向けてより良い発
た活動を9地域ごとに開催することとしまし
た。U-12年代では他の地域との比較よりも、
しました。そしてFIFAワールドカップ日本
開催を目指し、日本代表がレベルアップし、
掘と強化の環境を整えるための変更です。
早生まれに対する意識、学年や種別をまた
技術習得に最も有利な年代として、必要な
アプローチを地域に分かれて行うことにし
本大会出場を実現することが課題となりま
がる連携が促進されることを狙いとしまし
ました。また、U-12年代は指導者の考え方
した。そのために世界を基準とした強化策
が重要になり、加藤久強化委員長(当時)
た。
①U-17→U-16
が非常に重要です。サッカー選手としての
入口で間違えたら、選手育成の土台が抜け
を中心に、世界大会からゲーム分析をして
課題を抽出し、課題を克服するために必要
カテゴリーをU-16に変更し、U-12・14・
16と2歳刻みのトレセンとなるようにしま
落ちて次の年代にうまくリレーできなくな
ってしまいます。その観点からも、地域開
なトレーニングからゲームにつなげる現行
した。U-16は全国1カ所で年間1回の活動と
催にすることで、地域内の指導者が研修に
の方式となりました。カテゴリーはU-17・
U-14・U-12の3カテゴリーとして、全国の
しました。U-16にしたことでU-15・16の2
カテゴリーになり、より選手を見落とさな
参加しやすい環境をつくり、JFAのコンセ
プトを多くのコーチと共有する狙いがあり
選手を1カ所に集めて年間1回開催されてい
ました。また、トレセンコーチの専任化は
いことと、2種と3種の連携をさらに進めて
いくことができました。U-17年代の選手は
ました。
④エリートプログラムからJFAアカデミー
第1期からの課題でしたが、各地域1名以上
単独チームでのゲームが多くあることでそ
の専任コーチの配置を目標としました。し
かしこの専任化には時間を要し、2008年に
の活動の過密を避けるとともに、よりトレ
セン参加がしやすくチームでの活動機会の
13歳、14歳までに個人技術と個人戦術を
習得していくことが重要だと考えます。そ
なり、ようやくすべての地域で1名以上の専
任コーチを実現することができました。
少ないU-16を対象と変更しました。
②U-14
して自立した選手を育成するためにはオ
ン・ザ・ピッチだけでなく、オフ・ザ・ピ
そして1998年、悲願のFIFAワールドカッ
カテゴリーは変更せずに、招集人数を約
プ初出場を達成しました。
“見るもの”であ
ったFIFAワールドカップで日本選手がプレ
100名増やして、東西2カ所で年間1回の活
動としました。U-13にすることで4種と連
ーすることで、より正確に世界との差をと
らえることができました。そしてその成果
携を強めていく考え方もありましたが、U16年代で3学年を招集するデメリットと、エ
の立ち上げ
ッチも含めた取り組みが必要であり、
「エリ
ートキャンプ」を開始しました。日本では
特権階級的なイメージが強く抵抗感のある、
「エリート」という言葉をあえて発信してい
きました。理由は「エリート」の語源はそ
と課題をトレセンにおいて、若い選手たち
にアプローチすることができるようになり
ました。また、日本の現状は指導者で共有
することが必要であり、1999年から指導者
研修を開催して、成果と課題、そして今後
の方向性を発信していきました。選手が各
地区、47FA、地域トレセンと上がってくる
流れと、JFAの発信を全国の指導者へ伝え
ていく、双方向の流れが確立しました。
2.トレセン改革
(1)2003年の改革(ポスト2002年
FIFAワールドカップ日韓大会)
ナショナルトレセンに向け、選手はこれ
まで各地域で同人数を招集していましたが、
2007ナショナルトレセンU-14東日本(後期)より훿AGC/JFAnews
51
2007ナショナルトレーニングキャンプU-16東日本(後期)
より훿AGC/JFAnews
の能力を社会に還元し、
「戦場で先頭に立っ
しました。
る年代であり、少しでも多くの選手にアプ
て闘う者」であり、
「苦しいときにがんばれ
ること」
、また「どんなときでも自信に満ち
①U-16
U-16は大人のサッカーの入り口であり、
ローチする必要があります。しかしタレン
トといえる選手の多くがJクラブに在籍して
て堂々とした立ち居振る舞いができる」選
代表チームとして活動を始める年代に当た
おり、ナショナルトレセンの招集選手の中
手を育成するためです。
2003年度にエリートプログラムを開始し
ります。これまでは2学年を招集していまし
たが、FIFA U-17ワールドカップに向かう
でJクラブ所属選手の割合が多くなっていた
のも事実でした。しかし、中学校や街クラ
ました。エリートプログラムの1期生たちが、
2006年にAFC U-17選手権(当時の名称/
年代は代表チームとして、年間10回程度の
活動を継続的に行い、100名前後の選手を
ブにもタレントの原石が散在しており、こ
の選手たちへのアプローチも重要です。ま
U-16日本代表で出場)で優勝し、2007年の
掌握しています。しかしFIFA U-20ワール
た、240人の招集選手の中にレベル差もあ
FIFA U-17ワールドカップに出場したこと
などからも、成果が現れたと思われます。
ドカップに向かう年代に関しては、継続的
に行えていない側面もありました。そのた
り、トレーニングを同じレベルで行うこと
が難しい面もありました。そしてエリート
また、世界各国ではエリート育成が進ん
でおり、キャンプではなく、ロジング形式
め、
「ナショナルトレセン」の名称を「ナシ
ョナルトレーニングキャンプ」と改称し、
キャンプの開始により、トップレベルの選
手にとってはトレセンに対してのモチベー
で育成強化を行っている国が多くなってい
FIFA U-20ワールドカップに向かうチーム
ションも微妙に影響を受けていました。こ
ます。そして日本でもロジング形式の選手
育成をスタートすることを視野に入れて、
のキャンプと位置づけました。東西2カ所で
年間2回の活動とし、毎回80名程度の選手
れまでの成果を認識しながらも課題を改善
していくこと、および継続した活動を合わ
エリートプログラムをトライアルしました。
それが2006年にJFAアカデミーを福島県と
を招集し、代表のラージグループを形成す
ることとしました。U-15・16年代の2年間
せて考える必要性が出てきていました。
そこでナショナルトレセンでは、段階的
JFAの共同プロジェクトとして立ち上げる
で4回のナショナルトレーニングキャンプを
にJクラブの選手を外して、中学校や街クラ
ことにつながっています。
代表活動とリンクさせて行い、U-17年代で
U-20に向かうチームにスムーズに移行する
ブの選手を招集することとし、現在は2番手
であったとしても、今後に期待できる選手
ことを目標としています。
②U-14
へのアプローチを行うこととしました。ま
たJクラブの選手以外を招集することで、招
(2)2007年の改革(ポスト2006
FIFAワールドカップ ドイツ大会)
2006年のFIFAワールドカップ ドイツ大
会は、3大会連続3回目の出場であり、代表
選手の経験等を含め、成果が問われる大会
でした。結果は世界の強豪国の実力を示さ
れ、誰もが納得できるとは言いがたい結果
となってしまいました。近年、日本は急激
にレベルアップした国の一つであることは
U-14は可能性を秘めた選手が散在してい
ナショナルトレセンU-14 → エリートキャンプと連携し継続した活動
3地域開催→年間を通した活動
5月
東北
北海道
東北
関東
北信越
東海
関西
中国
四国
九州
事実です。しかし世界の強豪国はさらに進
歩しており、世界のトップに並ぶためには
さらなる改革の必要性に迫られました。
トレセン改革としては、年間1回の単発的
な活動から、選手へのアプローチをより重
要視して、継続した育成強化をしていくた
めに、年間複数回の活動をしていくことと
52
集する人数を絞り、3ブロックで年間2回の
指導者研修
6月
エリート
キャンプ
11月
12月
北海道
東北
関東
北信越
東海
関西
中国
四国
九州
エリート
キャンプ
活動とし、毎回140名程度を招集すること
出場は難しいが個人で高い能力を持った選
た。またエリートキャンプも、この年代で
としました。そしてエリートキャンプでは
Jクラブも含め、この年代のトップレベルの
手が国体でフォローされていましたが、こ
の部分はU-16化によってできなくなった面
全国から20名程度に絞ることの妥当性も課
題として挙がってきていました。そしてオ
選手を招集して刺激を与え、エリートキャ
ンプとトレセンをリンクしながらこの年代
がありました。そこで、2007年からU-17地
域キャンプを行って、地域対抗戦につなげ
フ・ザ・ピッチのアプローチを考えていくと、
身近な地域での取り組みこそが重要だと考
の育成を進めていくこととしました。
ていくこととしました。このキャンプには
えられました。
③U-12
U-12では、2004年から始めた地域開催が
選手の力量が分かりやすいJクラブの選手は
招集せずに、高体連と街クラブのチームか
そのように多角的に見ていくと、ナショ
ナルトレセンとエリートキャンプを、継続
軌道に乗ってきており、成果が見られてい
ることを考慮して、この時点では現行どお
ら選考することとしました。
した活動としてとらえるよりも、並列した
活動として考える方が自然であると思われ
りの開催としました。
(3)2008年以降の方向性の検討
ます。ナショナルトレセンでは、Jクラブ以
④U-17地域キャンプと地域対抗戦のスタート
国体少年の部が2006年からU-16化しまし
①U-16・17
ナショナルトレーニングキャンプU-16と、
外の中学校や街クラブの選手を、現行の形
た。U-18年代の大会であったときは、2種
が主に関わっていましたが、U-16になった
U-17地域キャンプから地域対抗戦に関して
は、今後の経過から成果と課題を検証して
そしてエリートキャンプは地域で行い、地
域内のトップレベルの選手を招集して、
ことで2、3、4種の種別を超えた育成が重
要になり、47FAでの一貫指導体制の構築に
いきたいと考えます。
②U-14
AFCフェスティバルや日韓交流事業等の海
外活動に関しては、各地域キャンプから選
向け、大きな前進をすることができました。
で活動を行いながら刺激を与えていきます。
U-14年代は、ナショナルトレセンとエリ
手を選抜して日本選抜として活動する方向
その他にも多くのストロングポイントがあ
る国体U-16化ではありますが、その裏側に
ートキャンプをリンクさせて、継続した活
動を行っていくことを狙いとしました。し
性で計画しています。もちろん地域エリー
トはJクラブ以外の選手も選考対象となりま
ウイークポイントも少し出てきました。今
までは、高校2年生くらいから頭角を現す遅
かし実際はエリートキャンプに招集される
選手と、ナショナルトレセンの招集選手で
す。また、Jクラブの少ない地域に関しては
数地域を1つのブロックとして活動すること
咲きの選手や、チームでは全国大会等への
リンクしている選手は少ないのが現状でし
も視野に入れていきたいと考えます。
2008年 U-13関東エリートトライアルを実施
2007 U-17地域対抗戦より훿AGC/JFAnews
53
そのために、2008年に関東でU-13の地域
以上は現時点での決定事項ということで
エリートトライアルキャンプを行い、その
結果を見て地域展開の可能性を考えていき
はなく、エリートキャンプの地域トライア
ルの状況から今後の方向性を考えたいと思
地区の拠点として、毎週1回ないし2回(ト
ライアル時は最低月2回)の選手へのアプロ
たいと思います。また、U-13の関東トライ
アルの経過を見て、U-14年代は2009年に関
います。
また、地域エリートキャンプは短期キャ
ーチおよび指導者への発信を行うことを考
えています。この「モデル地区トレセン」
東エリートトライアルキャンプを行い、
ンプを複数回行い、継続性を重要視します。
は、JFAが新規事業を行うのではなく、既
2010年以降にはエリートキャンプを地域展
開していく可能性を探っていきたいと考え
そのためには地域でのトレセンマッチデー
を統一して、マッチデーと絡めて土曜・日
存の地区トレセンにJFAから認定されたコ
ーチを受け入れてもらうことが必要になり
ています。また、U-13年代とU-14年代を同
じように考えるか、違う考え方が必要にな
曜日でトレーニングキャンプ行います。ま
た長期休業中に2泊3日程度のキャンプを行
ます。また新たに新設する場合はFAや地区
の了解が前提です。
るかを、トライアルキャンプを通して見て
うなど、地域での独自の方法を創り出して
いきたいと考えます。
いくことを大切にしていきたいと考えます。
トを共有しJFAから認定されたコーチが、
モデル地区トレセンは2008年からトライ
③U-12
アルとして開始し、JFA2005年宣言の実現の
ために、2012年に50カ所、2015年に150カ
U-12年代に関しては、多くの選手にアプ
ローチできる日常的なトレセン活動(生活
所、最終的には300カ所(4種登録チーム約
30チームに1カ所)を目標に広めていきたい
圏内の地区トレセン)が最も重要です。し
かしナショナルトレセンからの発信は9地域
と考えています。今後は47FAやJクラブから
公認A級コーチU-12養成講習会への受講者を
検討します。その際、Jクラブの少ない地
トレセン、47FAトレセン、地区トレセンと
戦略的に推薦してもらい、モデル地区トレ
域は地域を統合してブロック開催を考え
ます。
なるにつれて間接的になり、情報がダイレ
クトに届きにくく、迅速で正確な伝達に困
センをスムーズに、そしてスピード感を持
って増やしていきたいと考えています。
・地域エリートキャンプが整っていく中で、
エリートキャンプ(全国)は発展的に解
難をきたす側面もあります。この部分をサ
ポートするために、2007年より開始された
ナショナルトレセンは、現行どおり9地域
での開催としていくものとします。しかし
消(日韓交流事業、AFCフェスティバル
公認A級コーチU-12の活用を考えています。
5年間9地域開催を行った課題として、招集
に関しては継続。国内のフェスティバル
に関しては、年代も含めて検討していき
A級U-12資格保持者であり、JFAのコンセプ
選手のレベル差が出てきていることや、年
2009年∼2011年
U-13
・関東エリートトライアルの成果と課題か
ら、U-13地域エリートの拡大の必要性を
ます)
。
U-14
・2008年のU-13関東エリートトライアルの
結果を見て、U-14関東エリートトライア
ルを検討します。
・地域エリートキャンプを展開していくこ
とがこの年代も必要であれば、U-13同様
に地域エリートを基盤として、日韓交流
戦等のときのみ、全国から招集していき
ます。
今後の主な取り組み
「モデル地区トレセン」の考え方
全国で、生活圏内、
日常的なトレセン活動(週1∼2回)
A級コーチU-12取得者の中から、認定して指導者を出していく
「地区トレセン」の内容、質、方向性に直接JFAが働きかけ
「モデル地区トレセン」数目標
2008年
2009年
2012年
2015年
最終形
5
10
50
150
300
ナショナル
トレセン
9地域
地域
トレセン
事例1:
ドイツ
全国121カ所
⇒ 395カ所
(70クラブに1拠点)
事例2:フランス
全国に650の
セクター
参考:4種登録チーム数
現在8,511300で28クラブに1カ所
47FA
トレセン
モデル地区
地区トレセン
地区トレセン
布啓一郎・JFA技術副委員長(全国技術委員長会議より)
54
モデル地区トレセンの
展開を見据えて
全体を考える
地域発信
間1回の活動で良いのかなど改善点も見えて
の普及にもなり、日本サッカー全体の層の
ームではなく種別や連盟を越えて、すべて
きています。特に関東の120人をはじめ、多
く招集している地域からは同じような報告
厚さにつながっていくことと考えられます。
しかし女子特有の問題もあることなども含
の選手がサッカーを楽しめる日がトレセン
マッチデーの考え方であると考えていただ
が出されています。今後、U-12でも年間1
回の単発的な活動ではなく、複数回の継続
め、女子独自の活動を否定するものではあ
りません。
ければと思います。
また、国体少年の部のU-16化を実現する
した活動を考えていく上で、2008年は関東
で招集人数を80人に減らして年間2回のナ
ショナルトレセンをトライアルしたいと考
えます。この年代の育成の重要性を考え、
パイを絞るという意味ではなく、あくまで
3.地域・47FA・地区トレセン
∼継続したトレセン活動(毎月1回のトレセ
ンマッチデーの創出と統一)
ことができました。しかし国体自体は短期
のカップ戦であり、年間を通したゲーム環
境を維持できてはいません。この国体とマ
16歳以下において、毎月1回のトレセン
ッチデーをリンクさせて、地域内のU-16リ
ーグから国体の本大会へつなげること、ま
活動を充実させるための改革と考えていま
マッチデーをつくり、公式戦を入れずにト
た国体のためだけではなく、国体終了後も
す。地域での活動と合わせてこの年代の育
成を充実させていきたいと考えています。
レセン活動等、所属チーム以外で活動でき
る日をつくることを実現していきたいと考
U-16リーグを継続していくことにより、年
間を通して活動しM-T-Mメソッドを行うこ
この経過を踏まえて今後の各地域複数回の
展開の必要性を検討していきます。
えています。すでに多くの地域やFAで理解
を得てトレセンマッチデーが実現していま
とができることになります。また他のカテ
ゴリーにおいても、各FA内で種別や連盟を
また、女子に関して、4種年代の女子は
63%が男子と同じチームで活動しています。
す。これをさらに浸透させるために、地域
内、また各FA内の種別を越えてトレセンマ
超えて一貫指導体制を確立するために、年
間を通した定期的なトレセン活動を行って
女子のチームで活動している選手も含めて、
ッチデーを統一していくことも必要になり
いきたいと考えます。そして可能であれば、
各地区やFAレベルで女子選手の普及やタレ
ントの発掘をよりスムーズにしていくこと
ます。そのことにより地域でのFAトレセン
交流戦や、FA内での地区トレセンリーグな
年間数回は土日でトレセンデーを設けて、2
日間のショートキャンプを行う、またマッ
が重要であると考えています。2007年はナ
ショナルトレセンに約30人の女子選手が参
どが行えるようになります。また2種と3種
や3種と4種の連携が、選手も指導者も活発
チデーから出た課題を、FAトレセンとして
ウイークデーに招集が難しければ、地区レ
加し、全地域から「男子と遜色がない」と
にできると考えます。そしてトレセンマッ
ベルに分かれてウイークデーはトレーニン
の報告が届いています。U-12年代では男子、
女子と分けるより、U-12年代の選手として
チデーとは、トレセンの選手がトレセンマ
ッチを行うためだけのものではなく、中高
グを行い、マッチデーで集合するなど、ゲ
ーム環境とトレーニング環境をリンクさせ
区別することなく活動し、その上で女子と
しての活動機会ももつことが女子サッカー
校生のキッズプログラムへの参加、Bチー
ムや合同チームによる交流戦など、所属チ
て、FA独自の育成ビジョンを確立していた
だきたいと考えています。
指導者養成改革
指導者は子どもたちの未来に触れている!
2005年宣言の約束を果たすために、ロー
ドマップを現在作成中です。そのロードマ
ップを受けて、指導者養成での取り組みに
1.指導者養成の現状
日本の指導者養成の歴史は、1969年に千
と
②子どもの指導に力を注ぐこと
③指導者の養成が大切であること
ついて、47FAの技術委員長・ユースダイレ
葉県検見川でFIFAコーチングスクールを初
の3つがあります。
クターの合同会議で発表した内容を中心に、
以下の項目についてまとめてみました。
めて実施したときから始まります。このと
き、アジア13カ国から参加した42人中、日
その後、日本サッカーリーグ(JSL)が
開幕し、1993年にJリーグとして発展して
本人は12名でした。講師を務めたのはデッ
トマール・クラマー氏です。彼は、特別コ
いきました。そして現在、若年層からのリ
1.指導者養成の現状
2.公認コーチの増加
3.コース数の拡大と内容充実
4.リフレッシュ研修の充実
5.A級コーチU-12の取り組みと
今後の展開
6.モニター制度
7.海外で活躍する指導者
8.指導者養成の「こころ」
ーチとして、東京オリンピックから日本代
表チームに関わり、メキシコオリンピック
での銅メダル獲得に多大な影響を及ぼし、
その後の日本サッカーの発展に大きな貢献
をされた方であることは皆さんもご存知の
ことと思います。そのクラマー氏が日本サ
ッカーへの提言として残された言葉に、
①日本でサッカーのリーグ戦を実施するこ
全国技術委員長会議より
55
ーグ戦も急ピッチで整えられ、充実したも
指導者、世界で活躍できる指導者の養成を
には、コース期間中に、地域より推薦され
のになってきています。
子どもの指導においては、指導者の質と
行っていきたいと考えています。
た受講者とインストラクターが相互作用を
図れる環境をつくり出し、活動が創造的で、
量の向上を求めて、1994年に9,000人を目
標として準指導員(現在のC級コーチ)5カ
2.公認コーチの増加
これからJFAコンセプトを具体的に、そ
自分のためになるようなコースにつくり上
げていきたいと思います。その上で、コー
年計画が実施されました。また、1997年に
してより高いレベルで理解できる公認コー
スで養成の目標とするレベルまで受講者を
は少年少女サッカー指導員(現在のD級コ
ーチ)が創設されました。現在では、C級、
チの数をもっと増やしていきたいと考えて
います。ただし、少数の100%の理解者を
伸ばしていきたいのです。
受講枠に関して、B級は2008年度に2コー
D級取得者は58,000人(2008年1月現在)を
超えるほどになりました。指導者養成のさ
増やすことを追求するよりも、ある程度の
理解者をより多く輩出することが大切です。
ス増やし、14コースで展開します。増えた
受講枠には、地域の責任において指導実践
らなる充実を図って、1992年にはS級を、
この考えに立つと、B・C・D級では量と質
や面接を実施し、受講者を推薦していただ
1998年にはJFAインストラクター制度をス
タートさせました。これにより、養成講習
のバランスは重要課題です。そのため、イ
ンストラクターになるナショナルトレセン
きたいと思います。S級、A級に関しては質
を重視しており、また地域のモデルであり、
会の質と量が一段とレベルアップしていき
ました。
コーチや、47FAインストラクターの力量が
問われます。そこで、今後インストラクタ
リーダー的な役割を求めているので、コー
ス数の拡大はいたしません。これまでどお
さらに2001年には、公認指導者研修会
(リフレッシュ研修会)が始まり、2003年
ーの研修を充実させていきたいと思います。
JFAでの取り組みとしては、まずB級を増
りS級1コース、A級3コースです。そしてA
級の受講も、2009年度からは、9地域から
に再教育の充実を図る取り組みを始め、
やしていくことが重要であると考えます。
推薦していただくようにします。その準備
2004年に指導者登録制度が始まりました。
リフレッシュのポイント制を開始したのも
その方策の一つとして、Jクラブでの開設を
トライアルとして実施します。開設するJク
は、今回の全国技術委員長会議において9地
域で取り組まれました。選考ではJFAイン
この年でした。2004年は、ライセンスを現
在のS・A・B・C・D級に整理し、キッズリ
ラブにもメリットがあり、地域に還元でき
ればと考えます。この施策がうまくいけば、
ストラクターを地域に配置しました。その
JFAインストラクターと地域のユースダイ
ーダー、GKコーチの養成をスタートさせる
将来的にはJクラブ全体に門戸を開き、要件
レクター(ナショナルトレセンチーフコー
大きな改革の年でした。そして昨年、専門
性へのアプローチとしてA級U-12を開始し
を満たせば開設できるような方法をとって
いきたいと思っています。
チ)が地域の技術委員会、ユースダイレク
ターと協力して実施します。
たのです。
こうした取り組みの中で、地域の多くの
3.コース数の拡大と内容充実
S級においては、従来は4月に入ってから
面接、受講者決定となっていましたが、
方々の情熱によって、日本のサッカーは日
コースごとの養成目標をより具体的かつ
2007年度より募集期間を11月締め切りで12
進月歩の発展を成し遂げてきています。し
かしながら、
「JFA2005年宣言」にある約束
明確にし、評価(指針)がより適正に展開
されるように、JFAカリキュラム検討プロ
月面接に変更しました。S級は受講期間が3
カ月以上に及ぶので、職場との調整をはじ
を果たすためには、これまで以上にわれわ
れの強みを持って、われわれ日本にしかで
ジェクトで現在取り組んでいます。基本的
めとする相当な事前準備が必要となります。
きないような方法論で世界に打って出る気
概が必要です。そのための鍵となるのがま
さに指導者養成ではないでしょうか。その
指導者の現状を分析すると、これまで以上
に日常の指導の質を上げる必要があります。
そして、質の高い指導者を今まで以上に増
やしていく必要があるのです。資質のさら
なる向上を求めたリフレッシュ研修の充実、
多くの指導者の情熱、学習意欲の高さに見
合う講習数の提供を考えていけば、単に講
習数を増やすだけではなく、講習の質をコ
ントロールすることが大事であり、JFAコ
ンセプトの理解者を増やすために各講習の
養成目標を見直す必要があります。そして、
質をより向上させるための専門性へのアプ
ローチが必要なのです。世界のトップ10を
目指す上でも、世界から注目されるような
56
2007年度公認B級コーチ養成講習会より훿AGC/JFAnews
そのため、早めの受講決定ができるよう、
応できるようにプランニングを入れました。
るトレーニングプランが組み立てられるこ
この取り組みになりました。これからも妥
当なコース数が適当なバランスで開催され
これは、事前の準備をして指導に携われば
子どもたちが生き生きと活動でき、その姿
とに力点を置きました。受講者同士のディ
スカッションから、インストラクターを交
ることを目指していきます。
次にトライアルリフレッシュについての
を見て、指導者もより楽しく指導できれば
という趣旨で、気軽に取り組めるようにし
えてプランニングのフィードバックを行い、
より質の高いトレーニングプランの作成が
説明を加えたいと思います。A級、B級の受
たものです。その中で、
「判断を伴うスキル
できるようにしました。クリエイティブな
講者の選考に当たっては、適正な方を推薦
していただくために、多くのFAで指導実践
の獲得」を強調し、主導権を握るために、
動きながらのテクニック、プレッシャーの
選手を育成するには、指導者自身が、より
クリエイティブになる必要があるからです。
や面接、各FA技術委員会での書類審査を実
施していただいていました。その取り組み
中でのテクニック、ゲームにつながるスキ
ルをプレーの確保、十分な反復を促す中で
4.リフレッシュ研修の充実
はすばらしいことであり、まだ実施してい
獲得することと、プレーの質を追求しつつ、
ないFAにおいても早急に取り組んでほしい
身につくまで辛抱強くトレーニングをやり
得て、指導現場に役立てることを目的に行
と願っています。また、積極的に指導実践
きっていく中で、指導者と選手両方の強い
われています。しかし、うれしいことに有
等に取り組んでいる方々にとっても良い研
修になると考え、わずかですが特別にボー
メンタリティーを醸成することを目指しま
した。2007年に9地域で47FAインストラク
資格者が増えてくる中で、コース数と質の
増強が必要となってきました。そこで、し
ナスポイントとして10ポイント加算し、ト
ライアルリフレッシュとさせていただきま
ターに落とし込みました。これからは47FA
チーフインストラクター研修を毎年行い、
っかりとした企画・運営が大切になってき
たのです。C級は47FAチーフインストラク
す。A級においても2009年度よりJFAイン
JFAのコンセプトの理解を深めていただき
ターが、A級、B級では地域担当のJFAイン
ストラクターを中心に実施します。各地域
のご協力をお願いします。
ます。そして、47FAチーフインストラクタ
ーが各FAでインストラクターの義務(リフ
ストラクターが責任を持って計画していき
ます。リフレッシュ研修の内容について、
C級・D級カリキュラム改訂は2007年度
に行いました。改訂の目的は、まずは4年に
レッシュ)研修を実施していくことにしま
す。
「伝言ゲーム」にならないか心配もあり
研修材料はJFAで基本情報を提供し、研修
を深めて、地域で行います。インストラク
一度、
「今」に合っているかを全面的に見直
ますが、JFAインストラクターも協力して
ターは地域の独自性も加味しながら、でき
し、今回は2006年のFIFAワールドカップテ
クニカルレポートから世界をスタンダード
運営していただければ、これまでよりも充
実したものになっていくと考えます。
るだけ指導現場に生かせる工夫を行ってい
ます。ぜひ地域の技術委員長や各FAユース
にとらえ、日本の課題や強みを分析し、確
認したものになっています。そして、1年間
C級・D級カリキュラムの改訂に伴って、
B級も改訂しました。大きな改革のポイン
ダイレクターとも連携を密にして、取り組
んでほしいと考えています。
実施し、あらためて伝わり方の不十分なと
トとしては、先にも述べていますが、どの
有資格者に対するリフレッシュは、ポイ
ころや、発信方法などの具体的な内容を吟
味しています。特に、自分の指導対象に適
年代でも、指導者が指導している目の前の
選手たちを分析し、効果的にうまく関われ
ント制に切り替わって4年目に入ります。多
くの有資格者が2008年4月30日でリフレッ
リフレッシュ研修は新しい知識や情報を
シュ期間が終了します。4月30日までにリ
フレッシュポイントを満たしていない方は
失効することになります。JFAでのこの手
続きは、確認作業を2度にわたって実施し、
5月下旬には未達成者は失効となります。そ
れまでに、指導者として機会をとらえ、自
分のための研修を受けてほしいと思います。
全国で実施しているリフレッシュ研修は、
各FAホームページ「kick off サイト」から
調べることができます。
ただ、未達成者の中で各自が指導チーム
ポイントを入力することをご存じでない方
もいると思います。このことについては全
国技術委員長会議でもアナウンスしました
し、本誌にも記載しています(62ページ参
照)
。また、JFAから個人へ郵送されるDM
にも記載しています。どうか今一度熟読の
2007ナショナルトレセンU-14東日本(後期)指導者講習会より훿AGC/JFAnews
上、手続き方法にしたがって入力していた
だきたいと思います。この方法で20ポイン
57
トが加算されます。これから先、リフレッ
としてのベースを築く重要な年代の指導に
U-12の指導者として専門性を追求できる場
シュ研修会に都合で参加できない方々には、
eラーニングで研修できるようにしました。
力点を置きたいと考えました。U-12はゴー
ルデンエイジという特異で重要な時期です
が提供できるものと確信しています。また
同時に、2007年受講者からは「ハードスケ
あまりeラーニングに安易に流れてほしくは
ないのですが、状況が状況だけに新設しま
から、指導課題も留意点も他の年代とは異
なる部分の勉強を深めたいという指導者の
ジュールであったが、そのことで集中力も
増し、コース全体が充実したものになった」
した。内容もできるだけ現場で生かせるも
ニーズに応えるため、A級U-12を開設しま
という声も聞かれました。
のに精選したいと思っています。
残念ながら失効した場合にも、復活方法
した。その成果・意義については本誌前号
にも記載しています。育成の土台を築く重
その修了生の中から2008年度はモデルコ
ーチを指名し、モデル地区トレセンをスタ
を考案しました。なぜならこの制度は決し
て「失効させるためのもの」ではないから
要な年代となるU-12。そこに重点的にさま
ざまな面から取り組むリーダーの養成とし
ートしたいと考えています。モデル地区ト
レセンは、生活圏内で日常的なトレセンを
です。うっかり失効した方々には、半年以
て、今年度より順調にすべり出しました。
実施しているところへ「地区トレセン」の
内であればリフレッシュポイントを満たす
2008年度に向けてはカリキュラムの見直
中で新規登録していただく方法も考えてい
しを行い、前後期とも1日増やして、より充
内容、質、方向性に直接JFAが働きかける
ものですから、A級U-12の修了者の中から
ます。ただし、次回はプラス10ポイントの
リフレッシュポイントを課したいと思って
実した研修内容に迫りたいと考えています。
前期はどちらかといえば基本情報を受ける
指名していきたいと思います。2008年度の
目標はトライアルとして5カ所と考えていま
います。計画的に自己研鑽されている方と
区別するための手段は必要と考えたからで
講習が中心で、受講者が主体的に活動し、
JFAコンセプトを実際に確認し、そして自
す。これまで取り組んできている地区トレ
センへうまく入っていくことができればい
す。リフレッシュをペナルティーと考えら
らの表現を表す時間が少なかったような気
いと思いますし、各FAとの連携で、新しく
れては、リフレッシュ研修の意味合いが損
なわれると思います。あくまでも自分のた
がします。そのためお互いが何を感じてど
う確認し、確信を持って地域に、また子ど
創出することもあっていいと思います。無
限の可能性を秘めている子どもたちに、さ
めの研修機会が増えたことの喜びととらえ
てほしいと考えています。とは言っても期
もたちにうまく伝えていけるかについては
不安を抱いたまま前期を終了したように思
らに良い環境やトレーニングでの刺激が与
えられると信じています。そして周囲の地
間内に研修を受けることの方が重要ですの
います。逆に後期は、インターンシップで
区トレセンへ良い影響が伝わることを期待
で、失効しないように各FAに問い合わせて
いただき、期限までに間に合うような取り
研修したテーマを材料に、受講者、インス
トラクターを交えてのディスカッションを
しています。
2015年には150カ所を、そして将来的に
組みをしていただきたいと思います。
メインにカリキュラムを構成していました
が、白熱したディスカッションになって時
は、可能性を秘めている子どもたち一人ひ
とりに良い環境を全国で淀みなく提供する
間に追われているような感じがありました。
ために、約30クラブに1地区のトレセンを
また、実技の振り返りの時間も余裕が持て
なかったと思います。そこで前後期とも1日
達成しようと思っています。そのためのモ
デル地区トレセンは300カ所を考えていま
増やしたわけですが、そのことでなお一層
JFAのコンセプトの理解を深めていただき、
す。しかしそれには、各FAの理解やJクラ
ブの協力が必要です。計画的にA級U-12の
5.A級U-12の取り組みと
今後の展開
これまでU-12の内容を学習できるのはC
級、D級でした。しかし10年後、30年後の
日本のサッカーを考えると、サッカー選手
受講者を推薦してほしいと願っています。
また、修了者の中からアカデミー研修を深
め、JFAコンセプトを理解され、実践でき
る方々には、あらためてJFAから指名して
いきたいと考えます。
2009年にはA級U-12を2コース開設します。
そして、2008年実施に向けてS級既得者の
方々のA級U-12コースも考えていきたいと思
います。多くの修了生の中から各FAとの関
係も含めて適任者を多く輩出していきたい
からです。そのためのトライアルとして2008
年、2009年の2年間は、さまざまなケースで
モデル地区トレセンをスタートしたいと考
えます。趣旨をご理解の上、モデルコーチ
が安心して活動できるよう、各FAの協力を
2007年度公認A級コーチU-12養成講習会より훿Jリーグフォト(株)
58
お願いします。さまざまなケースの中でさ
まざまな障壁があると考えます。そのハー
ドルを着実に越えていくためにも、私たち
研修していただいています。今年で3年目に
は大事です。そして「サッカーで」心豊か
が常に立ち返るべき合言葉「Players First!」
を思い出してほしいと願っています。
なりますが、年々アジアからの参加希望者
が増えています。講座を担当するナショナ
な人間性を育むことも指導者の重要な役割
ではないでしょうか。子どもたちが安心し
6.モニター制度
ルトレセンコーチが不慣れな英語を駆使し、
伝えるための努力をしています。中には英
て何事にもトライでき、リスクを冒してチ
ャレンジできる環境を指導者が提供するこ
リーグ戦がますます現実のものとなって
語を流暢に話せるコーチもいますが、ほと
とと、指導者が子どもの無限の可能性を信
きました。全国いたるところでリーグ戦が
展開されるようになったとき、ナショナル
んど英語を話せないトレセンコーチも多く
いるのです。そこで、英語を使って言いた
じて、優しく見守る姿勢が大事であると思
います。
トレセンコーチだけでは全国を網羅できず、
タレントの発掘がスムーズに行われない心
いことをなんとか伝え、理解してもらうた
めに、身振り手振りで汗を流しながら努力
最後に、全国技術委員長会議のクロージ
ングで小野剛JFA技術委員長が引用した、
配が出てきました。これは大変うれしいこ
することを大事にしています。
ルイ・アームストロングの「この素晴らし
とです。全国でのリーグ戦化に伴って、視
き世界」の歌詞の最後の部分と、指導者を
察の目を増やす工夫が必要となりました。
また、参加したアジアの方々からも多く
のことを学んでいます。何より、彼らの常
育成年代、特に若年層のタレントは、地域
の皆さんの日々の活動のお陰で、全国いた
にゴールを目指すプレーは参考になります。
後に受講者から次のような言葉を聞きまし
の写真を掲載することで、まとめにしたい
と思います。
るところに多く存在します。そのタレント
に良いゲーム環境やトレーニング環境を提
た。
「伝えようとする気持ちこそが大切なの
だ。サッカーは言葉ではない」
。理解してほ
I hear babies cry, I watch them grow
供できることこそが、日本サッカーの将来
しいと願って一生懸命に気持ちを込めて伝
They'll learn much more
を握っていると考えます。タレントの把握
を確実にしていくために考えているのがモ
えようと努力すれば、なんとか伝わるのだ
という貴重な経験をしました。
than I'll ever know
And I think to myself,
ニター制度です。
モニターについては、各FAのユースダイ
こうした活動だけでなく、在留邦人や現
地指導者に対しての公認キッズリーダー養
what a wonderful world
Yes, I think to myself,
レクターから推薦していただこうと思って
成講習会および公認D級コーチ養成講習会
what a wonderful world
います。時間的な余裕があるとき、近場の
ゲームを見ていただいて、タレントがいれ
等、アジアからのニーズが増えてきていま
す。そこで、そのニーズに応えるため、
Oh yeah
ば報告していただくといった、気軽に取り
組める方法にしたいと思います。負担のな
JFAでは、ナショナルトレセンコーチや
47FAインストラクターを中心に、講師を戦
赤ちゃんの声が聞こえてくるよ、
その成長を見守ってあげよう、
いように、ゲーム観戦を楽しみながらタレ
略的に育て、計画的に派遣できるように、
きっとこの子たちは
ントを見つけ出してほしいと思っています。
具体的なアナウンスはこれからとなります
人材バンクの設立や経済的な支援を考えて
います。そこで経験したことをフィードバ
僕なんかよりも
ずっと多くのことを学ぶんだよ
が、今は各FAで1名から2名を考えており、
S級、A級保持者の活用も考えています。も
ックする仕組みを構築し、お互いが切磋琢
磨できる環境をつくり、やがて日本が世界
そして僕は思うんだ。
なんてすばらしい世界なんだ
ちろん、経験や実績のある方はこの限りで
に打って出ることの基盤づくりを期待して
なく、推薦していただければと思います。
軌道に乗れば、リーグ戦の普及に伴って、
います。だからこそJFAを代表して、アジ
アだけでなく世界からも求められる指導者
加速度的に視察の目を増やしていく考えで
す。
を養成したいと願っているのです。
7.海外で活躍する指導者の輩出
スタートさせたばかりのころの私(眞藤)
8.指導者養成の「こころ」
『夢を持つことが、子どもたちの強い心
JFAでは、田嶋幸三JFA専務理事を中心に
をはぐくむ。夢があるから、子どもたちは
JFAスタッフのスキルアップとアジア貢献
を目的として、海外を対象とした活動に取
あきらめずに努力できる』
。
これはJFAこころのプロジェクトの「ユ
り組んでいます。目的はJFAのスキルアッ
プとアジアへの貢献です。とはいってもア
メセンテキスト」に掲載されている言葉で
す。子どもたちが自らたくましく育ってい
ジアのレベルも上がっており、JFAの取り
くように、私たちは子どもたちに何ができ
組みや指導者の質を上げないと、世界が求
めるものにはなりません。2006年より、J
るかを考え、具体的に関わっていく必要が
あります。指導者は子どもたちの興味関心、
ヴィレッジにおいて、インターナショナル
コーチングコースを開催し、C級の内容を
能力に合わせた環境を提供することが大切
です。もちろん「サッカーを」教えること
59
技術委員会
重要
JFA技術委員会監修関連発行物のご案内
価格変更のお知らせ
商品価格+送料¥525(税込み/全国一律)をご入金ください
JFA公認指導者資格保有者・
JFA加盟登録チーム限定
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※1.FIFAの映像使用規定(ビデオ化権)により、JFA加盟登録チーム
およびJFA公認指導者資格保有者のみ販売が許可されており、一般
の方への販売は許可されていません。
UEFA EURO 2004 JFA テクニカルレポート/DVDは販売を終了し
ましたが、一部のCDショップまたは書店で購入可能です。
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JFAフィジカル測定
ガイドライン2006年版
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¥1,050
サッカー指導教本・DVD
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購入希望者は、申込書の①をご記入ください
制作物の内容、購入方法などの問い合わせ先は右記まで 60
JFAキッズ(U-10)
指導ガイドライン
A F C ア ジ ア カップ - 中 国
2004 JFAテクニカル
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サッカー指導教本・DVD
2007年度版
ゴールキーパー編
¥7,350
この教本は、JFA公認ゴールキーパーC級・B
級・A級養成講習会のテキストとして制作され
たものです。
(財)
日本サッカー協会技術部 TEL 03-3830-1810
申込方法
61
A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
重要
リフレッシュポイントの確認について
2004年4月より資格更新のために規定のリフレッシュポイント
指導者登録サイト(Kick-Off)
の獲得が義務付けられました。
http://www.jfa.jp/jfatop/kickoff.html
リフレッシュ期間(S級は2年間、A・B・C級は4年間)に必要
ポイントが獲得できていなければ資格が失効します。
にてリフレッシュポイント獲得状況を必ずご確認ください。
重要
リフレッシュポイント(指導ポイント)の加算について
JFA加盟登録チームで、監督・コーチを務めている方は、指導
Kick-Off(指導者)へアクセス→「指導者」をクリック→ID・
ポイント(20ポイント)を加算することができます。
ポイントの加算は指導者のみなさまで行っていただくこととな
パスワードを入力しログイン→「基本情報」をクリック→「リ
レッシュポイントの確認・申請」をクリック→「JFA加盟登録
っています。右記をご確認の上、必ず加算するようお願いしま
す。
チーム指導によるポイント化はこちら」をクリック→「加盟登
録チーム番号」を入力→「確認」完了
指導者養成事業関連
2008年度へ向けての変更点は以下の通りです。
■2008年度指導者講習会の
開催について
■公認B級コーチ
養成講習会
■JFAリフレッシュ研修会
(e-ラーニングコース)の新設
同封の募集要項の通り、2008年度の受
講生募集を開始します。
2008年度はコース数を2コース増やし
て、合計14コース開催します。
JFAリフレッシュ研修会(e-ラーニング
コース)を2008年3月20日より開設し
申込書は顔写真付きで郵送にて(FAX不
可)送付をお願いします。
変更点として、自己推薦枠がなくなりま
した。各都道府県協会にて、推薦者を決
ます。受講を希望される場合は、別途お
届けしたアクセスコードをご準備いただ
なお、2008年度公認S級コーチ養成講
定する選考会が実施されています。受講
き、以下のURLにアクセスして受講を開
習会の受講者募集は終了しています。(募
集期間:2007年11月∼12月)
を希望される方は、各都道府県サッカー
協会へお問合せください。
始してください。
JFAホームページ/サッカーファミリー
なお、海外ライセンスを保有されている
方等で受講を希望される方は、JFA技術
(http://www.jfa.or.jp/family/)
⇒ 右側「JFAリフレッシュ研修会(e-
部までご連絡ください。
learningコース)」にアクセス
個人情報の確認のお願い
JFA指導者登録サイト(Kick-Off/下記参照)に登録されている個
人情報(住所・連絡先など)
をご確認ください。
った場合は、必ず下記のウェブサイト上で変更手続きを行ってくださ
い。
JFAからの各種発送物(テクニカル・ニュース他)
は、登録されてい
る住所に発送されます。転居などにより住所や電話番号が変更とな
☆JFA指導者登録サイト☆
http://www.jfa.jp/jfatop/kickoff.html
JFAコミュニティ リニューアルに伴う新ID取得について
2006年10月2日に公認指導者向けWEBサイト「JFAコミュニテ
ィ」がリニュー アル さ れ ました 。リニュー アル に 伴 い 、新しく
「Community ID」を取得いただく必要があります。
新ID取得はWEBサイト上(http://community.jfa.jp)
で行ってく
ださい。
また、新しく登録審判員向けWEBサイトもオープンし、新IDでログ
62
インされた方は、指導者・審判共通ゾーンを閲覧することができます
(審判専用ゾーンの閲覧には、審判登録が必要です)
。
◆お問い合わせ先◆
(財)日本サッカー協会 指導者登録窓口
Tel:03-6713-8180
Fax:03-6713-9968
スーパー少女プロジェクト 2008セレクション参加選手募集
JFAでは、将来のなでしこジャパン(日本女子代表)のゴールキーパーを目指す女子を募集します。
サッカー経験・ゴールキーパー経験の有無は問いませんので、ぜひご応募ください。
■対象者
1.将来のなでしこジャパン(日本女子代表)のゴールキーパーを目指す意欲のある女子
2.年齢:1993年4月2日∼1998年4月1日生まれの女子(小学5年生∼中学3年生)
3.身長:中学生のみ165cm以上、小学生は身長は問いません。
■応募方法
専用応募用紙に必要事項を記入し、写真(全身が写っているもの)を同封の上、下記「送付先」まで郵送してください。
専用応募用紙はJFAホームページ(※)よりダウンロード、もしくは下記のお問い合わせ先へ電話して入手してください。
※JFAホームページ:http://www.jfa.or.jp
募集締切:2008年4月11日(金)必着
■セレクション:2008年5月16日(金)∼18日(日)
応募者から書類審査にて選出した約30名のメンバーでセレクションキャンプを行います。セレクションキャンプ参加の可否について
は、4月28日(月)ごろに応募者全員に連絡します。また、セレクション・トレーニングキャンプに要する費用はJFAが負担します。
■送付およびお問い合わせ先
〒113-8311 東京都文京区サッカー通り(本郷3-10-15)JFAハウス
財団法人日本サッカー協会 技術部 スーパー少女プロジェクト2008係 担当:今関・菊地
TEL:03-3830-1810
FAX:03-3830-1814
新刊紹介
2007ナショナルトレーニングキャンプ
U-16プログラム/DVD
2007年ナショナルトレーニングキャンプ
FIFA U-20ワールドカップ カナダ2007/
FIFA U-17ワールドカップ 韓国 2007
JFAテクニカルレポート/DVD
U-16で行われた
2007年に開催されたFIFA U-20および
トレーニングを、テーマ・
U-17ワールドカップを
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JFAテクニカルスタディ
編集したDVDと
グループが分析し、
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まとめた
「JFAテクニカル
価格:2,205円(税込)
レポート/DVD」
2007ナショナルトレセン
U-12プログラム/DVD
2007年ナショナルトレセン
U-12で行われた
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編集したDVDと
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を発刊します。
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2007ナショナルトレセンU-14
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2008 U-16指導指針
2007年ナショナル
2008年版として
トレセンU-14で行われた
発売を開始します。
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テーマ・キーファクターに
基づき編集したDVDと
プログラムのセットです。
U-16指導指針を改訂し、
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「言語技術」が日本の
サッカーを変える
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著者:田嶋幸三
(JFA専務理事)
価格:756円(税込)
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「めざせクラッキ!」の上位版、ステージ7∼20までの「めざせ
ファンタジスタ!」が発売されました。
全国の書店またはベースボールマガジン社商品販売サイト
「BBM@BOOKCART」および本誌P.60-61申込用紙にてお求
DVDブック
1,575円(税込)
めいただけます。
個人の技術向上やチームの練習ツールとしてぜひご利用くださ
い。また、JFAでは検定を開催してくれる団体を募集していま
す。ステージ7∼19までは、公認D級コーチ以上の資格保有者
が検定員(チャレンジマスター)となり、どこでも実施可能で
す(別途、検定団体申請が必要となります)。
詳細は、チャレンジゲームホームページ
「http://www.jfa-challengegame.com」をご覧ください。
お問い合わせ:
JFAチャレンジゲーム事務局
Tel:03-3830-7104
(平日10:00-17:30)
eメール:[email protected]
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テクニカルニュースVol.14の「キッズ育成の取り組み」内
(P.52)でご紹介したJFAチャレンジゲーム"めざせクラッキ!
ボールはともだち"の販売を開始しました。こどもたち自身が動
きづくりやテクニックを身につけるためのボールフィーリング
などさまざまな動きにバランスよく徐々にステップアップしな
がら取り組んでいく、個人向けプログラムです。
※「クラッキ」とはポルトガル語で「名手」、「サッカーのとてもうまい人」
という意味。
サイズ:A5版(44ページ)
価 格:
【冊子】300円(税込)
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、DVD】700円(税込) 目 的:個人でテクニックを伸ばす
対象年齢:5歳から8歳程度まで
※対象年齢はあくまでも目安です。大人も一緒にトライしてみましょう。
購入方法:
①ベースボールマガジン社ホームページ内の商品販売サイト「BBM@BOOKCART (http://bookcart.sportsclick.jp/)」にて
②本誌P.60∼61より申し込み
Best Regards, from JFA
「2005年宣言の実現」「2006年FIFAワールドカップか
らの今後の改革」。日本は1,500ccのカローラを回転数全開
で走らせて追っかけている。しかし世界の強豪国はフェラー
リで余裕を持って引き離しに掛かっている? 所詮カローラで
は勝てないのであろうか、いや違う。カローラにはカローラ
にしかないストロングポイントがある。直線では離されてし
まうが、小回りが必要なカーブでは距離を詰められる、その
ストロングポイントが今は表に現れないが、やがてボディー
ブローのように利いてくるはずだ。日本人には日本人の勝ち
方がある。地道にみんなであきらめず一生懸命にがんばる。
そんな2007年であったように思えます。
キッズやU-12年代をどうしよう、リーグ戦をつくるため
に既存の大会をどのように整理するか。
「総論賛成しかし各論
反対」の中を、47FA技術委員長・ユースダイレクターを中
心に育成のリーダーの方々の苦労が伝わってきます。その甲
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斐あって流れができあがりつつある気がしています。リーグ
戦を例にとってもすばらしい変化が起きてきていて、トレー
ニングの成果を試す勝つための大会から、日常の環境の中で
選手も指導者も育っていけるゲーム環境ができていきそうで
す。一人ひとりの力を合わせ我慢強く事に当たる。その成果
が2月の各育成会議(全国技術委員長会議、各種別大会部会、
ユース強化育成部会、ほか)から聞こえてきました。
2008年、勝負の年でしょうか。小さな何本もの流れをま
とめて大きな本流をつくれるか。この1、2年に日本サッカー
の将来は託されているのではないでしょうか。
「100年のうちで誰かが行うのであれば、われわれの手で
やって行こう!」
。みんなで根気強くコツコツと、日本人のス
トロングポイントで日本の道をつくっていきたいですね。
布 啓一郎(JFA技術委員会副委員長/JFAユースダイレクター)
テクニカル・ニュース Vol.24
○発行人:小野 剛
○編集人:財団法人日本サッカー協会技術委員会・テクニカルハウス
○監 修:財団法人日本サッカー協会技術委員会
○発行所:財団法人日本サッカー協会 〒113-8311
東京都文京区サッカー通り(本郷3-10-15)JFAハウス
電話 03-3830-2004(代表)
○発行日:2008年3月17日