100709PUR製本セミナー修正版TXT1.doc

Muller Martini Japan Ltd.
出版社にとってのPUR製本
2010 年 7 月 9 日
ミューラー・マルティニ主催「PUR製本セミナー2010」
於東京都板橋区立ハイライフプラザ 2F ホール
ゲスト講演
小学館制作局 ゼネラルマネージャー 宮下雅之様
只今ご紹介に預かりました宮下でございます。
宜しくお願いいたします。
昨年、場所は違いますが、講談社さんがこのよ
うなセミナーをなさったと聞いています。順番な
のでしょうか 2 年前に話をした私に再び講演の依
頼が来ました。2 年連続して赤字を出している出版
社が続けてこういうセミナーをするのはどうかと
思いましたが、逆に出版社は現在なかなか厳しい
状況にあるということを理解していただくいい機
会かと思う気持ちもありお受けしました。来年は、
比較的元気な集英社さんがこういう場でお話をし
ていただけたらいいのではないかなと思います。
その時のタイトルは「ONE PIECE、300 万部を
PURでやりました!」でしょうか、そのときは
もっともっと大勢の方が集まるのではないかなと
思います。
さて、本日は 2 年前と比較してPURに対しての意識が、どの程度変わっているか。そう
いうお話をします。その前に、究極の広開本というものを皆様にお見せしたいと思います。
これは祥伝社から出ている林望さんの「謹訳源氏物語」という全 10 巻のものです。今年
の 3 月に 1 巻目が出版されました、私が三省堂書店に行ったときにたまたま平積みになって
いました。たくさんある中でシンプルなデザインが却って目に付きました。この装丁自身は
林さんがご自身でやられたそうですが、手にとってみて「あれっ!」と思いました。ぱらぱ
らめくるとこんな風に、開いちゃう。あ、すごいなと思って見たら、いわゆる業界用語で言
うところの、かがり本の“一部抜き”の状態なのです。背が剥き出しです。コデックス装と
いうそうですが、奥付に書いてある装丁者のお話を一部読みます。「本書はコデックス装と
いう新しい造本方法を採用しました。背表紙のある通常の製本形態とはことなり、どのペー
ジもきれいに開いて読みやすく、平安朝から中世にかけて日本の貴族の写本に用いられた綴
葉装(てつようそう)という古式床しい装訂法を彷彿とさせる糸綴じの製本です。」
造本に感激しましたけれども、内容に興味がなかったので買わず帰りました。一週間程し
て、家に帰ったら食卓の上にこの本が置いてあったのです。家内が内容に興味あって買った
ということでした。ただ、家内に造本のことを聞くと「なんだかちょっと柔らかいなあ」と
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感じたけれども、こういう装丁には全然気づいていませんでした。こういう本だよと話をし
たのですけど、寝床で読むことが多い家内にしてみれば「開きやすくていい本だねー」くら
いの反応でした。後日、祥伝社さんに反響はどうなのかと聞いてみましたところ「流通的に
は別に支障はないのですが、二件ほど読者から、表紙がないという問い合わせがあった」と
言うことでしたが、状況を説明しましたら、納得していただいたということでした。
私自身は、これほどきれいに開く本が流通しているのは初めて見ました。私が仕事で本と
関わった三十数年というキャリアの中で初めてです。但しあまり開きすぎて、かがり糸が横
に入ったりするのはちょっとみっともないなあとも思いますが、製本には相当に神経を使っ
てらっしゃることと思います。
本題に入る前にちょっとお話させていただきました。
それではPURについてです。
感覚的には、2 年前に比べると信頼度が高まったということでしょうか。本をつくる過程
でのコミュニケーションをしっかりしておけば変な本はできない。そういう確証を得られた
のがこの 2 年間であったと思います。逆にいうと、しっかりされていないと大変なことにな
ってしまう危険性が十分にある訳です。その点について、我々は社内で編集者に対してきち
んとした話をすること。そして印刷会社さんとはノドの空きをどの程度とるか。紙質も含め
てPUR製本に関するコミュニケーションを高めながら本を作る。様々な経験を積み重ねる
ことにより大きなストレスを感じないでも本づくりができるようになったと感じています。
現在小学館はどの程度の部数をPUR製本でやっているかと言うことに関していうと、残
念ながらこの 2 年間の統計は取っておりませんので不明です。ただしこういうセミナーの機
会を与えられましたので、できる範囲で数字を拾ってみました。
対象期間は、2009 年の 12 月から今年の 6 月までの 7 ヶ月間です。新刊点数が 46 点、重
版が 24 点、合計 140 万冊をPURで製本しておりました。月平均 20 万冊ということにな
ります。この数字が小学館でどういう位置にあるか。いわゆる書籍というジャンルには、上
製本、並製本、あとは子供向けの合紙絵本というコートボールを貼り合わせたもの、一般の
製本機にはかからないシール絵本、中国で作っているポップアップ絵本とか音が出る絵本な
どを含んでいます。そういう書籍全体の中に占める数字でいうと約 10%。合紙絵本や中国
生産を除きますと、15%から 20%くらいになります。増えていることは感覚的には捕らえ
ていましたが、実際ここまでウェイトが大きくなっているとは思っていませんでした。
では主にどういう分野のものに使っているのかというと。
ほとんどのものが並製の無線綴じです。
代表的なものの一つは“料理本”です。これは 100%PUR製本です。開いても戻らない。
開いた本を見ながら料理ができるというのは、PURの特性を十分に活かしています。
今後増えていきそうなのが簡易装丁辞典です。それまでは、かがり並製で長年やっていま
した。PURの辞典は実は小学館が最初ではありません。他社さんですでにやっているとい
うのを聞きました。一番ではなくて悔しい気持ちもありましたが、これならいけるという確
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証を得て商品化したものが 2 点ありますし現在企画段階のものも数点あります。辞典がなか
なか売れないご時世ですから、堅牢かつ安価に作るための方法論として浸透してきました。
オレフィン樹脂の表紙を使って箔押しというような、従来型の辞典ではなくて、簡便な辞典
というのにPURは最適ではないかなと思っています。
次は写真集です。
最初は写真集を無線綴じでやるということに対して、感覚的に抵抗がありました。従いま
して、最初の何冊かはカガリ綴じをしたうえにPUR製本をしました。コスト的には勿体無
い製本の典型でした。やはりこれも何回かの経験を経て、取引先とのノウハウの蓄積の中で、
今では無線綴じPURでやるものが増えてきました。ベタベタの写真だと、さきほどヘンケ
ルさんのご講演でもありましたが、インク溶剤が悪さをします。ホットメルトではバラケ事
故というのが結構多くて、読者に対して申し訳ないような本が何冊も、何冊も出回ったとい
う事実があります。読者の方からクレームで取り替えようと思って私どもの倉庫の中にある
本を見ても、全部ダメなのです。結局はホットメルトの部分を削って、たとえ小さくなって
も、もう一回ホットメルトで作りました。そのようなクレーム処理対応をしたことを考える
と、PURを使うことによって、そういうストレスからは全面的に解放されたと思っており
ます。
もうひとつは、子供向けのお絵描き本があります。やはりベタ刷りで、しかも目一杯に開
いても壊れず、子供が書き込み易いようにという設定の本です。こういうものにはPURは
うってつけの糊ではないかと思っております。あと、子供向けのカラーの児童図書関係の本
です。これは子供が乱暴に取り扱ってもぜんぜん問題ないように、全面的にPUR製本にシ
フトしております。
ただ今申し上げたジャンルが小学館でPUR製本の中心になっているものと理解していた
だきたいと思います。
次は上製本に関してお話しします。
昨日からブックフェアが始まりました。装丁コンクールに小学館のA3 判「世界大地図」
が展示、表彰されていますし、この会場にも展示されています。その背加工はボレロで下固
めをし、背巻きをしています。この手の地図はユーキャンさんが 2 冊セットで日本地図を数
十万セット販売されました。他には同様の企画物はなかなか市場に出回っていません。そこ
で、ユーキャンさんの製本を参考にさせていただきながら、それよりも良いものを作ろうと、
担当者が研究に研究を重ねて、あの本ができました。私は、2009 年度の小学館の出版物の
中ではとっても素晴らしい出来だと思い、担当者を褒めました。本のできは良かったのです
が、残念ながら売れ行きのほうはあまり芳しくありません。重版が来たらどうしようと、は
らはらドキドキしていたのですが、そういうオーダーもなく今日に至っていることは非常に
残念です。
少々PURとは違う話になりますが、「世界大地図」の販売に関して小学館は計画販売制
と委託販売制の併用方式をとりました。それの意図するところは業界活性化、書店さんを活
性化するというのが目的でした。当初は責任販売制という言葉を使っておりましたが、今は
内容は同じですが計画販売制という呼称にかえました。書店さんのマージンを十数パーセン
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ト上げる。書店さんが予約を取ったり確実に売れそうだから欲しいと言った数を満数出荷し
ます。従来の委託販売制でしたら、世界地図を 100 部配本して欲しいと言った場合でも、売
れ残りや返品を予想して減数調整しながら、書店さんに委託していましたが、計画販売制で
は、100 部欲しいといわれたら 100 部全部入れますから、その代わり返品はだめですよ。で
も、マージンは今までよりもっと増やしますよ、そういう仕組みなのです。書店数が減って
いる状況で、なにか書店さんのモチベーションを上げる販売方法はないのか。試行錯誤の中
で編み出したやり方なのです。今年も、これから下半期に向けて、10 タイトルくらいを計
画販売制でいこうと社内で検討しています。
昨日のブックフェアには午後から行きました。ブックフェアとデジタルパブリッシングフ
ェアと両方ありましたが私の見た目ではお客さんの入りは、ブックフェアのほうが3割デジ
タルのほうが7割くらいで、ちょっとさびしい思いをしました。計画販売制は小学館として
はリアル本の販売を伸ばして書店さんを活性化したいし業界全体へもいい風を送りたいと考
えて知恵を絞った結果、生み出した制度なのです。
話を元に戻します。
上製本については、取引先の設備の問題もあります。「世界大地図」では、PURを使う
ことでの造本上のメリットがはっきり見えました。メリットの見えるものに関しては、下固
めだけにPURを使ってゆくかとかいろいろな状況に合わせて採用しております。ただし、
通常の四六判丸背上製本をPUR製本でと言うような展開は現在考えていません。
PUR無線に関しての小学館の製本設計上の留意点です。
並製であっても、見返しをつける本が数多くあります。ただし、通常通りに無線にしてし
まうと見返しとしての意味がありません。そうなってしまうのなら見返しは本来不要だと思
います。一方、見返しに印刷するケースも多々あります。その場合は小学館としては、すべ
て「上げ貼り」という形で設計しています。製本所さんには負担をかけますが、それがスタ
ンダードです。
次に仕上がり寸法に関してのお話しです。無線はアジロより 3 ミリ小さいという常識があり
ます。しかし、その常識通りでは私たちが社内にPUR無線を普及させていくに際して気持
ちの上で抵抗感がありました。編集者の中にはそれほど気にしていない人もいるのですが基
本的には、3 ミリ小さくなって当たり前という意識ではなくて、できれば同じ寸法に仕上げた
い。紙質にもよりますが、ガリ代を 3 ミリだけではなく、2 ミリ、1 ミリとバリエーションをつけ
ることによって、無線綴じでもアジロと同じ仕上がりにするということです。
あとは背糊の塗布量と用紙の選定です。
6 月の新刊で「NEO POCKET」という新書判の子供向けの図鑑を 4 冊出しました。この
ジャンルではすでに 4 月に学研さんが先行発売していまして、それの後追い企画でした。も
ちろん、編集内容には自信があるのですけど、制作としては造本面で学研さんをなんとか追
い越したいということで、いろいろ知恵を使いました。基本的なコンセプトは野外で“小さ
な子供が片手で本を裏返して丸めて持てる”ということです。これはもう造本上は絶対PU
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Rだ!というところは早々に決まりました。いままで子供の本は比較的、背を硬めに作るこ
とがあります。でも、今回は違いますので束見本の段階で製本会社さんに実機でのテストを
お願いしました。本番の用紙を入れて、0.2 ミリ、0.3 ミリ、あと 0.4 ミリの塗布量です。結果は
0.2 ミリを採用することで即決しました。次は野外で持ち歩く時にカバーを外して持ち歩くだ
ろうからその場合の表紙をどうするか?紙の耐久性だけでは雨や汗では持たないだろうから
PPを貼ろう。その場合今までの感覚では、210gか 230gの表紙を使ったのですが、折角
0.2 ミリの塗布量にしたのに、表紙がそんなゴワゴワじゃダメだろう。ということで、今回は
160gのコート紙にPPを貼るということにしました。「世界大地図」は上製本で最高の出
来ですが、「NEO POCKET」は並製のPURとしてはすばらしい出来栄えだと思います。
わが社の叡智を結集して、他社に負けないものを作る。そういうモチベーションを常に持っ
ていたい。他社さんより、値段は安くて、厚くて、軽くて、開きがよくて、という4拍子揃
った本を出せた。それについて、現場はなかなかよくやってくれたと感謝しております。
このように、いろいろな本文用紙や版型にPURを採用しております。しかし、新刊重版
含めて納期の問題とか品質に関しては今まで一度もトラブルなく過ぎています。この事実は、
この場を借りて、きちんとお伝えすることできます。バラケの問題がなくなり、クレームか
らのストレスも解消されました。ただ、写真集などでノドのナキコミが見られると、もう少
しナキコミを減らして欲しいと思う出来映えのものも時々見られます。現状に満足すること
なく少しでも改善していきたいと思います。
小学館として今後、PUR製本をどのように取り入れていくかについてです。
まず、雑誌については考えておりません。
コミックスに関しても、今までは積極的に対応したことはありません。ただし、コミック
ス市場も最近厳しいので、通常の新書判コミックスとかB6判コミックス以外の判型も出し
ています。A5判や、四六判などです。またそれらを特装版、完全版などのタイトルで出す
ものも増えています。完全版、特装版である以上、買われた方々にとっては永久保存版とい
う扱いになるでしょうから、この手の新しいコミックスに関しては、PURを検討するよう
にと話をしております。
書籍に関しては先ほど申し上げたようなジャンル、このジャンルから大きくはみ出すこと
は今後しばらくないと考えております。
先ほどヘンケルさんのご講演で、ヨーロッパの出版社は積極的にPURを採用してゆくと
いうことでした。日本の出版各社がどこまでPUR製本を理解し、どの様に取り組まれてい
くのかは私の知りうる所ではありません。が、今後、PUR設備を持っている会社と持って
いない会社では受注量に差が出てくると思います。お取引先とのコミュニケーションを深め
ていただいて、出版社の意向を確認しながら、先を考えていただければと思います。
PURに関してはちょうど 30 分くらい時間がたちましたので、これで終わらせていただ
いて、ここからは電子書籍関連の話です。
といいましても、私はそんなに詳しいわけではありません。
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7 月 7 日にインプレスが毎年発表する「電子書籍事市場の売上金額」が明らかになりました。
電子書籍市場、つまりデジタルなのでそんな数字はもっと早くわかっていいんじゃないかと
思うんですが、なぜか昨年分が半年過ぎてようやく、毎年この時期しか出てきません。なに
かと、スピード感を求めるデジタルの世界とこの発表タイミングの遅さはなんだろうと奇異
に思います。
発表によりますと 574 億円の売上だそうです。昨年(2008 年)が 464 億円ですから、112
億円の伸び、124%になります。その中身はほとんどが携帯電話です。2009 年は売上の
90%、513 億円が携帯電話。前年が 406 億円ですから伸びが 126%。パソコンでの購入はピ
ークを過ぎてどんどん減ってきています。市場を牽引しているのはガラ携といわれている国
内携帯電話。その内容は、皆さんが想像されている通り、エッチ系やボーイスラブ系の漫画
など、書店さんでは堂々とは買えないようなコンテンツです。
さて、電子書籍市場の将来性ですが、2014 年には 1300 億円くらいに成長するだろうとイ
ンプレスは予想しています。この予想数字の中で、非常に大きなウェイトを占めているのが
昨今話題になっているアイフォンに始まるスマートフォンと、電子書籍専用端末。これらの
売り上げが 600 億円くらい。つまり、半分くらいはこれらによって電子書籍市場は拡大して
ゆくだろうということだそうです。昨日のデジタルパブリッシングフェアではまさにそうい
う視点での各企業からの出品が目白押しでした。
実はこのアイフォンやアイパッドですが、使っている IC チップなどは台湾企業が席巻し
ていますが、実際の組み立ては中国広東省の深圳市内の工場で行われています。ところが原
因ははっきりしませんが飛び降りで 13 人の自殺者と未遂者がでました。アップルは企業イ
メージダウンに繋がりかねないと言うこともあり、あわてて待遇改善、要は賃金を約 3 割上
げたそうです。
実は小学館は学年誌などで付録を、それも同じ深圳市内で作っていることも多々あります。
付録は超アナログ的なものですが、かたや超ハイテクなアイパッド、同じような場所で同じ
ような人件費で作られています。
昨日、私は佐野眞一さんの基調講演「グーテンベルグの時代は終わったか」を聞きに行き
たくて、そのチケットも手に入れていました。残念なことに同じ時間に社内で出版企画会議
が開かれまして、そちらに出席しました。いかにしてリアル本を売るかという企画会議です。
販売、宣伝、編集、あとは制作の関係者が集まって、2 時間ほどの間に 10 タイトルくらい
について、前向きな話し合いがなされました。幸い、その企画の中には、初版が 7 万部とか
10 万部のものが 2 冊ほどあり、1 万部を超えるようなものも 3,4 点ありました。そういう面
では佐野さんの講演がどういう内容だったかわからないのですが、昨日の小学館の雰囲気は
「グーテンベルグの時代は終わらない」でした。どのようにして今のリアル本を少しでも伸
ばしてゆくのかという前向きな話に終始しておりましたので。
毎日のように、日本経済新聞始め色々なメディアが電子書籍がらみの報道をしている昨今
です。では小学館としてはどういうかたちでやってゆくか。業界では関連する様々な会があ
ちこちで立ち上がっています。小学館はそれらの会には積極的に参加しています。ある意味
では、リーダーシップをとらなきゃならない部分もあろうかと思われます。業界全体がスピ
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ード感をもって、まだ整備されてない出版業界のいろんな問題点を解決していかなければな
らない状況にさらされていると思います。
いま、ほとんどの本はデジタルデータで作っております。しかしながら、その元データを
保管しているだけではなく、様々なデジタルディバイスに展開してゆく必要があります。リ
アル本を出すと同時に電子書籍も同時に出していくサイマル出版。それを考えると、中間デ
ータをどういう形で持つのかというのが、これからの出版社として考えていかなくてはいか
ない大きな問題点です。
講談社さんの京極夏彦さんが出した「死ねばいいのに」がずいぶん話題になりました。定
価 1785 円が、PCだと 700 円。アイフォン、アイパッドだと 900 円で買えるということで
した。実際に 400 ページの本を、ダウンロードして電子書籍として読んだ方がどれだけいら
っしゃるかわかりませんが、リアル本が初版 4 万部、今 4 刷で 8 万部。京極さん自体が力の
ある方なので、今までの本に比べてこれが部数的にどうなのかというのはわかりません。た
だ新しい試行をされたこと自体がプロモーションとなって、あ!これがあの本なのかという
ことで、ずいぶん実際の本が売れたのではないかと思われます。
アマゾンやアップルだけじゃなくて、国内メーカも電子書籍端末を今秋からいろいろ出し
ていくことは聞いています。実際に昨日も参考出品でしたがずいぶん目に付きました。「電
子書籍元年」というよりも「電子書籍端末元年」なのかなという気がします。これからの端
末の普及度合いが鍵になると思います。
私は個人的には、活字文化や日本語の文化を最大限に表現しかつ脳に快適なものは、リア
ル本以外はないとは思って、信じております。しかし、こういう新しい電子書籍市場が確実
に増えてゆくという潮流は無視出来ない現実でもあると思います。
電子書籍のいいところは乱丁落丁があってもすぐに直せるところ。そういう点では、少な
くとも、リアル本を作っていただいているみなさまがたには乱丁とか落丁がないように、電
子書籍に負けないようにがんばっていただきたいと思います。
以上で終わらせていただきます、ありがとうございました。
(C)小学館
(C)MMJP
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