情報化社会における電気通信のあり方-消費者重視の経済において通信

97年度進級論文
E 07−0804 C 安西正幸
情報化社会における電気通信のあり方
――消費者重視の経済において通信の未来とは――
目次
序章 はじめに……P 2
第一章
電気通信産業における最近の動向について……P 3
第一節
急速な変化が起きている日本の情報通信産業
第二節
日本の電気通信業界の流れ
第三節
世界におけるメガコンペティションの動き
第二章
日本の通信料金が高い仕組みと問題点……P 5
第一節
日本の通信料金の現状
第二節
総括原価方式による料金自由化の障害
第三節
ネットワークの相互接続における問題点
第四節 競争市場である移動体通信における現状から分かる事
第三章
電気通信産業の向かっている方向とは……P 11
第一節
電気通信産業は収穫逓増の働く産業である
第二節
収穫逓増産業の特徴と収穫逓減産業との違い
第四章
「標準」をめぐる今後の問題点……P 14
第一節
スピードを重視したデファクト・スタンダードの流れ
第二節
国際規格とデファクト・スタンダードのの関係
第五章
日本の電気通信の未来とは……P 17
終章
おわりに……P 17
参考文献……P 18
資料・・・P19
序章
はじめに…
昨年の「日米を比較し今後何が必要なのか」では、世界に遅れないために更なる規制緩和と競
争促進が必要であるという結論に達しました。競争が促進されると、各事業者はサービスの多様
化や料金の低下などをすると思います。これは消費者を重視する経済だと考えられ日本はまだこ
の段階だと言っていいでしょう。
しかし、世界を見ると競争が激化し戦略的な合併・提携という流れがあり、現在世界は 3 つの
グループに分かれています。これは何を意味しているのでしょうか。これは消費者重視における
ユニバーサルサービスのためでしょうか。それよりもデファクトスタンダード(事実上の標準)
を目指しているのではないでしょうか。
そこで今回は世界からデファクトスタンダード(事実上の標準)の潮流にある中で日本の通信
の未来について競争が始まった現在だから考えてみたいと思う。
第一章で現在の電気通信産業の動向をさぐり、第二章では日本の通信料金が高い仕組みと問題
点についてふれ、消費者重視の経済が進展している移動体通信の現状をみながら競争が激化して
くると今後どうなるかについて考察していきたいと思う。
第三章では、先ほど述べたように世界はデファクトスタンダードの流れにあると思います。そ
こでなぜ今デファクトスタンダードの流れなのかを考えると、電気通信産業には収穫逓増が働く
ことに注目してそこからこの流れを考察していきたい。
第四章では標準化の問題点、特に国際規格とデファクトスタンダードの関係、標準化の弊害、
について考えて見たいと思う。
最後に、第五章で結論であるデファクトスタンダードの流れに対して日本の電気通信の未来に
ついて私なりの意見を言いたいと思う。
第一章
電気通信産業における最近の動向について
第一節 国内電気通信の動向について
2
(長距離通信市場)
長距離通信市場は、1996 年後半から格安な通話サービスが次々と登場したため、長距離系 NCC
三社および NTT の市外電話収入は低迷した。
1996 年秋に解禁になった国内公専公接続により、資本力のある大企業をバックとした三洋電気
ソフトウェア、三菱電気情報ネットワークなど新規事業者が参入してきている。
国内公専公解禁を事前に対抗するため NTT は6月から大口割引サービス
「スーパーテレワイズ」
(割引率最大25%)を開始し、NCC 3社も同様の大口割引サービスが追随してきた。
これらの割引サービスでは契約主体に関する節約が比較的緩やかになった事から、クレジットカ
ード会社が比較的緩やかになった事から、クレジットカード会社が大口割引サービスを受ける特
別第二種電気通信事業者と加盟店契約を結び、
クレジットカード利用者の市外通話を15∼20%
割引くというサービスを JCB などカード会社が始めた。
TTN etの市外通話サービスは、従来関東圏内の NTT 加入電話への着信のみであったが、1996
年10月から全国の NTT 加入電話へ着信を可能とし競争力を強化した。
1997年2月には、NTT 及び長距離系 NCC の値上げに対抗し、最遠距離110円(100
Km 超平日昼間3分間)を80円に値上げした。このように長距離系市場は、競争が激化している。
( 市内通信市場 )
この市内通信市場は最も競争の進展していない市場だが、最近では少し動きが出てきている。ま
すここ数年低下を続けていた NTT の加入電話契約数の伸び率は、1996 年度末で対前年度比0.
7%と民営化後最低の水準になった。(図1−1−1)
これは ISDN 回線への移行や携帯電話・PHS への移行に伴う利用休止などによる影響が出てい
るものと思われる。
NTT の市内通話については、通信量は減少したものの、回数・収入ともに上向いた。I N接続な
どマルチメディア関連の市内アクセスの増加が原因と思われる。又、NTT のほぼ独占であった市
内通信市場に競争が生まれ始めている。
TTNet は1988年1月から、NTT の市内交換機と相互接続し全国で NTT 加入電話との発着
信ができる割安な電話サービスにより本格的な市内通話への参入を予定している。1997年1
月には接続番号として「0081」の指定を受けた。
このように市内通信市場は、今まさに NTT の独占市場から競争市場になり始めたばかりである。
( 移動体通信市場 )
1996 年度の移動体通信の市場規模は対前年度比約71%増と昨年度と同程度の伸びを示し、約
4兆600億円と4兆円の大台に乗った。携帯電話の加入数は、1996 年末で対前年度末から約1
3
067万加入増の約2087万加入となり、1993年度末以降3年間連続で倍以上の伸びを続
けている。(図1−1−2)
1996 年度末の PHS の加入数は、約603万加入となり、人口普及率では21.5%と国民5人
に1人の割合で携帯電話または PHS を保有するまでに普及している。
このように移動体通信市場は比較的新しい市場で、飛躍的に成長している。だが一方では、サー
ビスの多様化(図1−1−3)、料金の低化で競争が一段と激化し各事業者の力の差が表れてきて
いる。
例えば、携帯電話の各社ごとのシェアでは NTTDoCoMo グループが1995年度末の48.4%
から1995年度末の48.4%から 1996 度末には52.5%と拡大させている。
「ドコモのひとり勝ち」の要因として、ディジタル方式の人口カバー率が高い事、端末機器の技
術開発力、ブランド力に加え全国ネットを提供する強みがあるものと考えられ、セルラーグルー
プと IDO とは1998年度から業務提携により同一の規格(COMA 方式)による全国統一的なサ
ービスを行なう予定である。移動体通信市場の競争の激化から起きている事は後の章で詳細に述
べる事にしたい。
日本の国内通信市場は、差はあるものの規制緩和が実施され、確実に競争市場になりつつある。
次に日本の通信業界の再編を見ていきたいと思う。
第二節
日本の電気通信業界再編の流れ
(NTT の再編成)
長年の課題であった NTT の分割問題は、NTT を特殊会社である NTT 東日本、NTT 西日本、と
純粋民間会社となる NTT 長距離通信会社に分離し、これらの株式を100%所有する純粋持ち株
会社である新 NTT が3社を統括する形で話が進展している。
改正 NTT 法は1997年6月通常国会で成立し、今後は新会社の設立手続きに進む事になって
いる。1999年には新 NTT が誕生する予定である。(図1−2−1)
NTT は改正 NTT 法によって国内通信事業に進出する事が認められた。KDD は改正 KDD 法に
より国内通信事業に進出する事が認められ完全な民営会社になった。
(通信業界再編のはじまり)
同じ通常国会で改正された新電気通信事業法では外資規制が撤廃され、外国資本の参入がより容
易になった。これらを背景として、いよいよ生き残りをかけた垣根なき競争が始まる事になり、
競争力強化のための合併・提携の動きが活発化した。
その第一号が日本テレコムと ITJ の合併であり、続いて KDD と DDI などの業務提携へと発展
した。これらの事業者により国内・国際の分別なくワンストップサービスが可能になった事、お
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よび通信料金の価格破壊の進展などから競争激化と業界再編の活性化が予想されている。
次に、世界的規模で進む電気通信自由化と戦略的提携について見ていきたいと思う。
第三節
世界におけるメガコンペティションの動き
(世界的規模で電気通信自由化が加速)
米国における 1996 年電気通信法の成立(2月)、我が国の NTT 分割問題における14年ぶりの
決着(1996 年2月)、世界貿易機構(WTO)における基本電気通信自由化交渉の合意(1997
年2月)、欧州の EU 加盟国における1998年はじめの全面自由化の4つは、世界の電気通信市
場を構成するほとんどの諸国における自由化を一挙に加速するものである。
これにより、各国の電気通信市場は市内通信を含めて全ての分野で競争に開放される事になり、
しかも内外の事業者が相互に進出して激しい競争が展開される状況となってきている。
(戦略的提携の活発化)
自由化の進展とグローバル化を指向した M&A や戦略的提携が、特に競争の進展した米国、英国
を中心として活発となってきた。
グローバル化は、WTO 合意による世界的な通信自由化の枠組みと、先進国メガキャリアの戦力
的国際提携からなる。WTO 体制は、途上国に対し自由化と引きかえにインフラの構築を保証し、
先進国産業には市場を創出する。
グローバル化による戦略的提携は、多国籍企業のシームレス・サービス需要に応じ、国際通信市
場を競争から守るもので、すでに BT/MCI/テレフォニカ提携、DT/FT/スプリントのグローバルワ
ン、AT&T/ワールドパートナーズの3大メガキャリア・グループが成立している。
(図1−3−1)
この様にグローバルな規模での自由化と相互進出の時代を迎えて、国際的に調整された規制、標
準(デファクトスタンダードを含む)、技術、サービス、料金の低化が求められるようになってき
た。これについては以下の章で考察していきたいと思う。
第二章 日本の通信料金が高い仕組みと問題点
第一節
日本の通信料金の現状
さて、ここでは日本の通信料金の現状について欧米の通信料金と比較しながら見ていきたいと
思う。
(加入料金の現状)
国内通信加入契約時に NTT に施設設置負担金(約72000円)を払わなければならないのだ
が高いと思ったのは私だけではないでしょう。最近では敷設電話の加入者は右下がりに減少し、
回線が余っているという話を聞きます。
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これは、PHS・携帯電話サービスにおける契約時必要費用(図1−1−4)が格段に安いため
に起こった原因でしょう。また NTT の加入料金を英・米と比較してみると米国は55ドルで約6
00円、英国が99ポンドで約1万6000円。いかに NTT の料金が高いかが理解できるだろう。
(図2−1−1)
NTT は、まず加入料金の改善をしなければならないが事はそんなに簡単ではない。それはこの
使用権ともいえる資産価値は総額4兆円規模にも達しており、すでに7万2000円を支払って
使用権を獲得しているユーザーに効率かつ納得させるのが難しいからである。また加入料金の高
さの理由が NTT から明確に打ちあけられていないため透明性を欠いている点もこの問題を複雑に
している。
(国内通信料金の現状)
ここ最近まで日本の国内通信における料金の特徴は、長距離通信は公―専―公接続の規制の緩
和などにより NTT と新電電(NCC)との間で競争が活発化し料金の引き下げが頻繁に行なわれて
いる。(図2−1−2)
競争が生じ、料金が下がる事については消費者の立場から思えばよい事なのだが、問題が1つ
ある。それは、ほとんどの消費者が頻繁に使う市内通信を NTT が自然独占の状況にあり、長距離
の競争により生じた負担を市内で補う流れになっており(第三節で詳しく触れる事にする)、市内
料金は数年の間、上がる事はあっても下がる事ことはなかった。
加えて欧米と日本の料金を比較してみると市内通話料金はもちろんの事、競争により料金が低下
をしている長距離通話料金まで以前として高い状況である。(図2−1−1)
最近では TTNet(東京通信ネットワーク)が NTT の市内独占を崩すべく、1998年1月7日
から NTT の市内交換機と相互接続し全国で NTT 加入電話との発着信ができる割安な電話サービ
スにより本格的に市内通信への参入を予定している。この競争では NTT も競争の低下を検討して
おり今後の動きに注目していきたいと思う。
(自然独占だと通信料金が下がらない理由)
ここで補足として理論的に、通信において自然独占の状況だと料金の低下が起こらないか説明
しておきたいと思う。
まず一般的に企業は利潤最大化を目指す。利潤は総収入と総費用の差額の事であり、限界収入
(marginal revenue)は生産量を一単位増大させることにより得られる追加的収入のことであり、
生産量を一単位増加させるときにかかる追加的費用を限界費用(marginal cost)と言う事を確認
しておく。
多数の企業が存在する完全競争の場合、一企業にとって価格 P は所与とされ一定であるから、
限界収入は価格 P と等しい。競争市場における企業の利潤最大化条件は限界収入(価格 P)と限
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界費用とが一致することである。
つまり、利潤を最大化しようとするならば(図2−1−3)のように、P と MC が一致する点 A
で生産量 X を決定すればよい。X から生産量を一単位減少させるMCはPより大きくなるので、
利潤は減少する。一方、X から生産量を一単位減少させると P はMCYより大きくなる。つまり
収入の減少分が費用の節約分を上回るので、利潤は減少する。従って、価格が P のとき、点 A で
の生産量 X で生産する場合が利潤最大化となる。
では、規模の経済が大きく働き、公共性の面がつよい電気通信産業などで起こる自然独占の場
合はどうなるのだろうか。よく知られているように、完全競争に比べて生産数量は少なく、価格
は高めに設定されがちである。
競争市場と同じように価格を限界費用と等しくする事により理論的にはもっとも効率的ではあ
るが、その水準では設備投資などの費用や研究開発の費用がかさむ電気通信関連企業にとっては、
高い平均費用を賄えないことが多いので、現実的ではないと思う。そのため平均費用と等しいよ
うな、価格設定を自然独占状況にある企業はするのである。これが通信産業における自然独占だ
と通信料金が下がらない原因である。
(国際電話料金の現状)
国際電話については長距離通話料金と同じような状況である。KDD と NCC との競争が生じて
おり(図2−1−4)からも料金は、徐々に低下してきている。
しかし日本の国際電話料金と内外価格差(図2−1−5)を見ると先進諸国の中で日本が一番高
い現状である。さらに今、注目を集めているのが「コールバック」という新サービスである。
(コールバックについて)
コールバック・サービスの仕組みは次のような形態になっている。米国に電話をかける場合、
KDD の回線を通じて米国のベル会社の回線にトランスファーし、かけたい相手につながって通話
が可能になるのが通常のパターンである。
ところが、このコールバック・サービスは、米国から日本へ電話をかける方が大幅に安くなると
いう利点を活かし、日本の再販電話会社が米国のベル会社と契約しサービスを提供している。ま
ず日本から米国にコールするわけだがその後の伝送形態が異なる。いったんコールした番号を米
国の交換機が受け取ると、呼び出し音が鳴る。そこで発信音を確認したあと、相手先番号をエン
トリーすると通話が可能になる。
発進はすべて米国発になり、米国の通話料金で日本から米国にコールできるようになる。「コー
ルバック」という名はここに由来している。そのネットワーク形態には、米国センター直通型と、
国内センター経由型の 2 種類がある。
しかも、使用環境が急速に進歩していることから、ユーザーが急増している。これまでのものは、
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日本側の電話は、あらかじめ決まったものだけしか使えないなどの制約があったが、そうした不
弁さはもう解消されている。専用アダプターを使い、通常のの国際電話と全く同じ手順で通話で
きるタイプがいまや主流であり信頼かつ飛躍的に高まっている。
(まとめてして)
今まで見てきた通り、日本の通信料金は市内・長距離・国際とも欧米よりも高いが現在の現状で
す。なぜ日本の通信料金は高いのだろうと考えてみると、主な原因は政府管理会社に特有の「総
括原価法式」という料金を決める方程式と料金の認可という規制そしてネットワークの相互接続
における問題があるからと思われます。次節以降でこの仕組みと問題点について考察していきた
いと思う。
第二節
総括原価法式による料金自由化の障害
(認可という規制)
NTT が日本電信電話公社と呼ばれていた時代、料金は原則として国会の議決を経て定める料金
法定制度が適用された。85 年における競争原理の導入以降の第一種事業においても、現状では総
括原価法式と呼ばれる料金規制が行なわれている。
日本の場合、第一種事業における現行の料金規制の基本原則は電気通信事業法の第31条に規定
されている。役職に関する料金などの提供条件を定めるその第一項は、契約約款を定めて郵政大
臣の認可を受ける事を事業者に要求しているが、認可の基準を定める第2項は、認可料金は①能率
的な経営のもとにおける適正な原価に照らして公正妥当なものであり、②料金の額の算出方法が
適正な原価に照らして公正妥当なものであり、③特定のものに対して不当な差別的取り扱いする
ものではないという非常に抽象的な規制を与えるにとどまっている。
この中で「認可」という文字があるが、つまり料金は郵政省が許可をだすような料金設定でない
といくら事業者が料金を下げたくても不可能なシステムになっているのである。
後で詳しく触れるが、郵政省は携帯・自動車電話・PHS など移動体通信電話の料金を 96 年度内
に届出制にチェンジした。これは各社のし烈な料金競争に郵政省が規制緩和をしなければならな
い状況に追い込まれたからである。
つまり、独占または自然独占が生じている市場では監督する立場にある郵政省は認可制でも成り
立っていたが、ひとたびその市場が競争市場なると「認可」というものは普遍性・透明性・機会
の公正性・対応のスピードに対して悪影響を与えるもになってしまう。
そのためにも、最低限に必要なルール(規制)を残し、料金などは許可制にし、料金の自由化を
能率的に行なえる最も効率的な方法だと思います。
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(総括原価方式とは)
日本の料金規制は公正報酬率規制であるが、その仕組みは以下の通りである。まず、あるサー
ビスの料金は「適正な原価」に「適正な報酬」を加えた「総括原価」を基礎において算定される。
ここで原価は(原価)=(営業費)+(減価償却費)+(諸税)として計算される。また、報
酬は(報酬)=(事業資産<レート・ベース>)×(報酬率)という算式に基づいて計算される
が、ここでいう報酬率は(報酬率)=(他人資本コスト)×(他人資本比率)+(自己資本コス
ト)×(自己資本比率)によって与えられる。
この定義に登場する自己資本コストには上限と下限が設けられ、その幅の中では事業者による
自律的な料金設定が許容されている。ただし、過大な利益を防止するために自己資本コストの上
限は他産業における主要企業の平均自己資本利益率に設定されている。また、その下限は最低限
の安定的経営は確保できるが略奪的な料金設定に陥らない水準を意図して、具体的にはゼロに設
定されている。
このように、料金収入が総括原価を償うという意味で、現行の料金決定方式は平均費用原理に
したがう料金形成の一変種となっているのである。
(総括原価法式の問題点とは)
もともと総括原価方式は独占企業の料金利潤を公共性の観点からチェックするための規制方式
であった。そのためこの方式と競争原理には問題が多く生じる。そこで主な問題点として4つ指
摘したいと思う。
第一に、総括原価法式は事業資産に対する報酬に上限を課しているため、報酬の最大化を図る事
業者は事業資産を膨張させて報酬額の増大を図る誘因をもつことになる。その結果、事業を効率
的に運営するためには不必要に過大な投資や、不必要に高価な設備の購入が行われがちとなる。
又、このような社会的浪費を排除しょうとすれば、どの範囲まで承認するかを巡って規制機関(郵
政省)と事業者は詳細な情報交換と頻繁な交渉を行なう必要があり行政コストが非常に高くなる
という問題もある。
第二に、事業法第31条第二項の規定によって料金は特定の者に対して不当な差別的取り扱いを
するものでない事が要求されているため、実際の料金認可は個々のサービスごとに原価を報告さ
せて認可料金を個別原価に基づいて定めてるものになっている。
そのため例えば NTT の所有している土地だけでも、税金を含め年間約500億円もの経費がか
かる。その償却費がコストに加えられるのである。土地など全コストに利潤を上乗せして申請し
政府の認可を得ようとする問題が生じるのである。
さらに、規制機関と企業との間には情報の非対称性が存在し、規制機関は提出された資料の正し
さを確認する方法は一般に存在しないため総括原価方式による規制は企業が規制を戦略的に操作
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する手段となる可能性を秘めている。
第三に、企業が費用削減をもたらす革新の導入に成功しても、総括原価方式による規制のもとで
は、その努力は報酬の増大をもたらさず、料金の引き下げに帰結することになる。
逆に、企業努力の不足から費用が上昇しても、規制機関はその費用の上昇が第三者的な環境の変
化による不可避なものか、企業の怠惰によるものかを正確には識別できないため、この規制の下
で失敗は料金の引き上げを通じて利用者に転換される事になる問題がある。
第四に膨大な費用情報に対する規制機関の査定には時間がかかるため、本来ならば戦略的なタイ
ミングを見極めて機敏に決定すべき料金水準と料金体系を、企業は自律的・機動的に選択する事
ができない。
そのため、市場における競争は規制機関の裁量的な認可のペースに応じてしか行われず、市場競
争のダイナミズムには窮屈な束縛が課される事になりがちである。
このような問題が総括原価方式にはあるのだが、今後日本の電気通信は独占から競争という流れ
の中で、このような企業の合理か意欲を損なう規制は改善し、裁量型からルール型へ、認可型か
ら許可制へと規制のあり方がとらわれているのである。
第三節
ネットワークの相互接続における問題点
日本の通信料金が高い理由が総括原価方式による規制のほかに相互接続におけるアクセスチャ
ージの問題が挙げられる。
(アクセスチャージとは)
市外通信事業者がサービスを提供する場合には、そのネットワークを市内通信事業者の所有する
市内交換機、市内回線や加入者線路に接続する必要がある。この際に長距離通信事業者が市内通
信事業者に支払う接続料をアクセスチャージ(日本名で事業者間接接続料金)という。
(なぜこのような問題が起こるのか)
この問題がよく出てくるのは市内電話をほぼ独占している NTT と長距離系新電電各社とのアク
セスチャージ問題だろう。日本では長距離系NCCは、いわゆる足まわりとよばれる地域通信網
を持っていないため、NTTの地域通信網と接続してサービスを提供している。その長距離系新
電電各社の決算収支を見ると愕然とする。
アクセスチャージ料金として NTT に対して売上高の50%弱が支払われている。(図2−3−
1)これは1回のセットアップ料として2.81円を、接続時間一秒あたり0.0753円を支
払う契約をしているからです。新電電にはハンディーが大きすぎる。NTT が接続のための全にお
けるノウハウを独占している上、接続しないことには新電電各社においてビジネス範囲を拡大で
きないという大きなハンディーを交渉前から背負っているのである。
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また、PHSや今後サービスが予定されている地域電話会社(東京通信ネットワークやケーブル
テレビ会社)についても、NTT網との接続にともなう接続料金設定が重要である。接続交渉に
おけるトラブルを避けるための基本的なルールの設定が望まれる。
第四節
競争市場である移動体通信における現状から分かる事
前節までの問題は敷設電話で生じていた問題であったが、移動体通信では飛躍的な技術革新、競
争の激化が進展してきており、最近では新しい動向が表れてきている。ここでは特に携帯電話市
場についての流れをみていきたいと思う。
日本の携帯電話市場は NTTDoCoMo グループ、デジタルホングループ、IDO、ツーカーグルー
プ、セルラーグループの5社がし烈な競争をしてきたが、ここにきて NTTDoCoMo グループがシ
ェアの大半をしめる勢いである。(図1−1−3)
NTTDoCoMo グループが0995年度末の48.4%から1996年度には52.5%と拡大
させている。「ドコモの一人勝ち」の要因として、ディジタル携帯電話の規格にある。日本の携帯
電話市場の大半を占めている NTTDoCoMo の PDC 方式は日本の標準規格としてなりつつある。
いわゆるデファクトスタンダードになりつつあると思われる。そこでセルラーグループと IDO と
は1998年度から業務提携により米国の推し進めている同一の規格(CDMA 方式)による全国
統一的なサービスを行なう予定にある。
つまり、いったん競争市場になると市場シェアを勝ち取るために、各社はし烈な競争をする。そ
の中で勝ち残った企業の規格がその地域の標準になる流れがあるとおもわれる。そこで、この流
れが電気通信業界でなぜ起こるかについて1つの理論を示して説明したいと思う。
第三章
第一節
通信業界の向かっている方向とは
通信業界は収穫逓増の働く産業である
(収穫逓増の時代)
ます収穫逓増論について説明する必要がある。収穫逓増論はブライアン・アーサー( Brian
Arthur)スタンフォード大学教授が複雑系の経済学の立場から、コンピュータソフトなどのソフ
ト産業を研究し、収穫逓減ではなく収穫逓増が支配的になっていることを発見している。
ブライアン・アーサー教授の考えを簡単に説明すると、百年前において英国のアルフレット・マ
ーシャルを筆頭にして彼と同時代の人々は「収穫逓減」という仮定にもとづき成功した製品や企
業は、最終的には限界へとたどり着き、予測可能な価格やマーケットシェアに落ち着くといった。
この理論は大量加工経済、例えば重化学工業などの経済にあてはまっていた。
しかし、現在の経済は「大量の原料の加工」から「テクノロジーの設計と利用」へ、資源の加工
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から情報の加工へ、自然エネルギーの応用からアイディアの応用へとシフトしてきているために、
経済原理もこの百年間正しいとされてきた逓減的なものから逓増的なものへと変わるべきだとア
ーサー教授は言う。
(収穫逓増論とは)
収穫逓増論では、コンピュータソフトのようなものは開発費に資金がかかるが、生産にはほとん
ど資金がかからない。それは二度目からはコピーするだけでいいからである。したがって、売れ
ば売るほど利益があがる。最初の価格では、開発費を回収するような高い価格がつけられるが、
それを回収した後では生産コストがかからず、価格も変わらないので、膨大な利益が出ることに
なる。
これまでの製造業では、量産のはじめにおいて費用は逓減(生産物一単位あたりの費用が減少)
していくが、その後生産量が増えると原材料や部品が調達できなくなったり、生産量を上げるた
め無理に人を集めるような事をやるから人件費が上がったりと費用は逓増して収穫逓増ゾーンに
入ってしまう。つまり利益がたいしてなくなってしまうので、そこで生産は止まる。
(図3−1−
1)
しかし、コンピュータソフトのような製品ではこれがなく、生産すればするほど利益になるので、
あっという間に世界中の市場を独占してしまうようなマーケティング戦略がとられる。
つまり、収穫逓増とは成功しているものがいっそう成功し、優位性を失ったものがますます優位
性を失う傾向がある。簡単に言えば儲かる会社がどんどん儲かり、ごく少数のそういう会社以外
は低迷するあるいはつぶれていくのである。
ここで私が前節で述べた事について思い出してほしい。この収穫逓増の流れと現在の日本の携帯
電話市場で起きている流れはあまりにも似ていないだろうか。ここで言いたいのは「通信産業は
収穫逓増の働く産業である」という事である。
次節では通信の枠にとらわれず収穫逓増産業の特徴と収穫逓減産業との違いについて具体例を
だして検証してみたいと思う。
第二節
収穫逓増産業の特徴と収穫逓減産業との違い
(収穫逓増産業の特徴)
ハイテク産業、例えばコンピュータソフト産業や情報通信産業で、これから収穫逓増がいっそう
支配的になると思われる。そのためここでは収穫逓増産業の特徴について見てみようと思う。
ます第一は、研究開発コストが非常に高くつくことである。例えばハイテク製品は、設計が非常
に困難でたくさんのノウハウに依存しなければならず、物質的資源でなく頭脳を必要とするので
いつ完成するのかもわからず、資金がやたらとかかる。
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そのかわりいったん先に進んでしまえば、他の会社はあまりに資金がかかるのでそれに追いつこ
うという気を失い、勝った企業はどんどん優位になっていく。
第二は、ネットワーク効果である。これは隣と同じ物を使うと便利になるという傾向の事であり、
パソコンソフトの「WINDOWS 95」が好例である。一度市場の中で固定化されてしまえば、消
費者がその商品に集中してくる。さらにハイテク製品は、ネットワークを通じてユーザーと密接
に結びついている場合が多い。例えばコンピュータネット上でユーザーにいろんなソフトをダウ
ンロードさせることにより、ソフトのシェアを一気に高める。ネットワーク効果が多大な効果を
もたらすのである。
第三は、お客適合性である。ハイテク製品は多機能で複雑なので使うのにはトレーニングが必要
である。そのため一度特定の使い方に慣れると、もう他の製品に換える事をしない。例えば旅客
機を例にすると、最初にエアバスの操縦と整備に慣れると、次の投資もエアバスの新しいバージ
ョンに対して行なうようになる。そのため一度勝った企業は、その後の戦いも圧倒的に有利にな
る。収益が逓増しつづけるのである。
このようにおもに三つの収穫逓増産業の特徴を述べたが、次に収穫逓減産業との違いについて述
べたい。
(収穫逓減産業との違い)
収穫逓増産業は成功している者がいっそう成功し、優位性を失った者がますます優位性を失う傾
向があるのだが、成功しているものはかなり驚異的なスピードで収益を伸ばす傾向がある事がい
えるだろう。
これは現在、米国の好景気を支えているハイテク産業に特に表れているのだが、収穫逓減産業で
ある加工型組み立て産業・大量生産産業と収穫逓増産業であるハイテク産業などと株の上昇率を
比較してみると(図3−2−1)あきらかなように収穫逓増産業は驚異的な伸びを示しているの
が判断できると思う。
いま私達の周りには二つの経済がある。第一は大量生産の経済で、アルフレッド・マーシャルが
「経済学原理」に集大成した収穫逓減原理が働く産業である。ここではどこでも通用する標準価
格ばかりで、生産活動は反復的でそのために継続的な改善が可能であり、競争力はコストダウン
と品質によって決まる。企業はヒエラルキー構造で経営においては計画と制御が好まれる。
第二は、知識主導型経済で収穫逓増原理が働く。ここのマネジメントで大切な事は、次世代の木
のなる木を育てる事であり、次世代のテクノロジーの勝者を目指して競争が繰り広げられる。経
営は使命指向でチームが組まれ、組織のヒエラルキーは圧縮されてフラットになりチーフ・エグ
ゼクティブオフィサー(最高経営責任者)とマネジャーは上下の雇用者と非雇用者の関係ではな
く、対等な友人のような関係に変わるのである。
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このように、二十一世紀の日本経済で主力となる知識産業のような成長産業は収穫逓増が強く働
く産業になるので、二十世紀の古い固定観念や常識ではもうやっていけず、そのため頭の中をが
らっと変えないと、商機を捕まえる事ができなくなるだろう。
また、収穫逓減の世界と収穫逓増の世界では、成功のための手法も全く異なる点に注意してほし
い。コンピュータ・ハイテク・情報通信関連の知識集約型産業で優位を占めるためには、ずば抜
けたテクノロジーを持った上で、規格において市場を一挙にそしてすばやくつかむ事が重要であ
る。
つまり、収穫逓増産業はスピードを重視したデファクト・スタンダードが重要になってくるだろ
うと思われる。
第四章
第一節
「標準」をめぐる今後の問題点
スピードを重視したデファクトスタンダードの流れ
収穫逓増によりデファクト・スタンダード(事実上の標準)の流れにある事は納得できると思
う。ではここではデファクト・スタンダード(事実上の標準)の流れをスピードに注目して考え
てみたいと思う。
(デファクト・スタンダードとは)
デファクト・スタンダード(事実上の標準)の例として一番いい例はやはりマイクロソフト社が
開発した OS(オペレーティング・システム=コンピュータを効率よく円滑に動作させるための主
体となるソフトウェアで多くのアプリケーション・ソフトはその上で走る)である WINDOWS で
あろう。
WINDOWS に対して「もっとよいもの作った」と主張しているソフト会社はある。事実、製品
として一部は売り出されているらしい。しかし、その上を走るアプリケーション・ソフトの数な
どからして WINDOWS の業界標準の地位は揺らがないだろう。
実際には、WINDOWS と最も張り合ったアップル社 OS も、ワープロソフトなどのアプリケー
ションソフトでは WINDOWS への互換性を付けざるを得なくなっている。
今後、WINDOWS が支配的な OS の地位を落ちる可能性がないわけではない。しかし、それに
とって替わる OS は、今までの WINDOWS ユーザーが雪崩れを打って新しい OS に乗り換えるだ
けのメリットを持たなければならない。それは WINDOWS 上に無数のアプリケーション・ソフト
が乗っている以上至難の業である。
これがデファクト・スタンダード(事実上の標準)である。デファクト・スタンダード(事実上
の標準)は国でも国際機関でもなく、多くの場合は市場や企業グループによって決まる。そのた
めデファクト・スタンダード(事実上の標準)を確立した企業は「一人勝ち」の状況になるので
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ある。
(デファクト・スタンダードにおいてスピードが重視される理由)
先の例で取り上げた WINDOWS もそうだが、デファクト・スタンダード(事実上の標準)確立
するスピードが速い。ただ速く動くのではなくデファクトを目指し企業は的確な方向性認識を持
っている意味でデファクト・スタンダード(事実上の標準)にはスピードを重視しなければなら
ないと思う。
では、スピードを重視するようになった要因とはなんであろうか。ここでいくつか指摘しておき
たいと思う。
第一の要因として、戦後世界で最も大きい壁であったベルリンの壁が崩壊し社会主義が崩れ、市
場経済への参加者・競争者が著しく増加したことだろう。新たな競争者の登場は市場に活気を与
え予想しない所から競争相手が出てくる。そのため企業は新しい技術の取り入れには貧欲になる
のである。
第二の要因として規制の世界的な撤廃・緩和の動きである。通信・金融・流通などありとあらゆ
る業種で規制緩和の流れにあり、法律や日本独自の行政指導など社会の公式・非公式なルールが
変わる事の影響は大きい。それがまた経済の変化のスピードを加速する要因でもあるである。
例えば、日本の携帯電話や PHS 市場をみても規制の緩和があった時点から徐々に、そして最近
では加速度的に市場が変化・成長している事からも理解できるでしょう。
第三の要因としてネットワーク化である。瞬時に動けるデジタル信号が一つ一つの端末の中で点
として存在するのではなく線としてつながった事である。経済を動かすのは情報である。インタ
ーネットに代表されるデジタル技術はこの情報の流布をすばらしく速く、かつ著しく安いものに
した。その結果、いつでもどこからでも時間と空間を超えて情報を収集できるからである。
第四の要因としてインターラクティブ(双方向)という点が上げられるだろう。これはネットワ
ーク化の帰結だが、テレビにしろラジオにしろ今までの情報は一方通行だった。瞬時に地球を回
るデジタル情報がネットワークで双方向になったという事は、人類が情報の授受のかなり重要な
部分で距離を乗り越えた事を意味する。
よく言われるのが電子メールの普及である。郵便のやり取りには最低数日ぐらいかかるが、電子
メールの授受は普通では数秒、長くて数時間の単位である。この数日から数秒へというメール授
受に必要な時間の短縮、刻み単位の変更によりスピードが重視されてきたことが背景にある。
最後に情報が公開される事で、双方向でやりとりされることにおいて組織の意思決定に及ぼす影
響があげられるだろう。簡単に言えば関連情報が公開されればされるほど意思決定は早くせざる
おえない。行動しなければ周りは何をしていると見るし、情報が揃っているのに決断しないのは
優柔不断でしかないと思われる可能性があるからです。
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これらの要因によりスピードを重視したデファクト・スタンダード(事実上の標準)を目指すの
である。
ここまでデファクト・スタンダード(事実上の標準)が注目をあびると国や国際機関でつくられ
た国際機関との関係が問題になってくる。次に国際規格とデファクト・スタンダード(事実上の
標準)との関係について考えてみたい。
第二節
国際規格と デファクト・スタンダードとの関係
(デファクトとデジュアの関係)
グローバルスタンダード(世界標準)という言葉をよく耳にするが、この場合デファクト・ス
タンダード(事実上の標準)かデジュア・スタンダードのどちらかを示す事が多い。前者は普及
度など勢力関係でなにとはなしに決まった標準を指すのに対し、後者は業界などが正式に決めた
もの、JIS(日本工業規格)などがこれに当たる。
日本においても1996年10月に郵政省は「次世代移動通信システムに関する調査研究会」
を設置した。日本・欧米および韓国の通信機器メーカーにより、世界中どこでも使える携帯電話
システムの研究を進めるのが目的である。
現在、実用化されているディジタル携帯電話の規格は日本の PDC 方式、欧州の GSM 方式、米
国の CDMA 方式とそれぞれ方式が異なっている
そのため、国際電気通信連合(ITU)は方式を統一する事で一つの端末を世界中で利用できるシ
ステムづくりを目指している。この流れをうけ研究会は1997年6月の最終報告で広帯域
CDMA 方式の技術開発を積極的に推進するよう提示している。
郵政省は、国外のメーカーや欧米当局と連携してグローバル・スタンダード(世界標準)を目
指す「日本規格」を策定し、ITU に提案する方針するつもりである。
(標準化のメリット・デメリット)
グローバル化の流れより標準化が重視されてきたが、デファクト・スタンダード(事実上の標
準)であろうと国際規格などのデジュア・スタンダードであろうと標準化がおこなわれると相互
通信を可能にし、世界中に最先端技術を普及させる事ができるメリットがある。
一方では標準化におけるデメリットもある。まず大きな問題は現段階の技術を固定化する事に
より研究開発の進展が遅くなるのではないかという問題がある。
そもそも情報通信の分野は技術開発のスピードで成長してきた産業である。不可能と思われた
いた事が一年もすれば可能になるくらい技術の進歩は目覚しいものがある。その技術をいったん
固定化してしまえば、その規格がグローバルスタンダード(世界標準)になり、競争が激しくな
くなれば次世代技術への対応が遅くなるに違いない。
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また、今まである程度自由に行なってきたサービスが細かな標準化によってサービスの範囲が
限定される可能性もひめている。
最後に知的所有権の問題も重要であろう。そもそも技術は誰かがあるいはある企業が考えだし
たものには違いない。そのため必ず知的所有権が発生する。
ある企業の規格が国際機関などで適用されグローバル・スタンダードになった時点で、他の企
業もその規格に適応する事になり、技術を提供する企業の知的所有権を保護しなければならない。
WTO(世界貿易機関)では、WTO に加盟した時点でその国は知的所有権の保護をしなければ
ならないと協定に示している。今後、標準化をめぐって知的所有権の保護問題が重要になってく
るであろう。
第五章
日本の電気通信の未来とは
最後に日本の電気通信の未来について考えてみたいと思う。
今までの内容をもう一度確認すると、
世界の電気通信の流れは規制緩和による競争促進によってグローバルな業務の提携・合併という
所にきている。その目的はグローバルスタンダード(世界標準)を確立するためである。
一方で日本の電気通信は長い間 NTT の独占状況であったが、最近の規制緩和により徐々に競争
が進展している。また、通信ビッグバンとも言われるように世界のグローバル化の動きに遅れを
取らないためにも業界再編が進展している。それは競争力強化のためには重要な事である。
このような状況の中で日本の電気通信は今後どのように進展していけばいいのだろうか。 やは
りキーワードになるのが「標準」であろう。通信において規格の標準化は今後の課題である。そ
の標準化に日本も積極的に目指していくべきであろう。そのために、現在の流れを阻害するよう
な規制はすぐに緩和していき日本は世界と同じ市場を作らなければいけない。
今、グローバルスタンダード経営というものが日本の企業にとって必要だと騒がれているが、そ
れは市場にも言えるだろう日本だけ独自の時代は終わったのである。
終章
おわりに…
情報通信産業は日本経済の牽引役として期待され、その期待に応えるべく発展を続けています。
その中で、通信業界全体において様々な市場の垣根を越えた再編成の時代を今まさに迎えて、ま
すます競争が厳しくなる一方、新しいビジネスチャンスの機会も増えています。
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このような激変する時代におおまかな未来の流れを推測する事は大変ですが、スピードが重視さ
れている現在の経済において大変に有効であるだろうと思われます。
まだ情報通信が産業が日本のリーディリング産業になるかはまだ何とも言えないが、世界の中で
日本の情報通信産業がある程度引っ張っていくような立場でないといけないのは確かだろうと思
う。
そのためにもなにより規制に関しては、現在において不必要な規制は緩和し、自由競争市場にし
て行く事が望ましい。
今後の流れだが、今回の「消費者重視における通信の未来とは」を通してやはり標準に関連する
テーマにしていきたいと思っています。
参考文献
・日本の電気通信
―競争と規制の経済学―
・なぜ通信料金は安くならないか
奥野正寛他
静野哲雄
・情報通信ハンドブック98年版
日本経済新聞社
技術評論社
情報通信総合研究所編
・複雑系から見た日本経済
町田洋次
PHP 研究者
・スピードの経済−世界経済のビックバン−
伊藤洋一
日本経済新聞社
・日本経済新聞
・規制緩和 −市場の活性化と独禁法―
鶴田俊正
・郵政省ホームページ (http://www.mpt.go.jp)
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ちくま新書