Species Interactions:Herbivory and Mutualism 種間相互作用:草食と

Ecology
Chapter 14
Species Interactions:Herbivory and Mutualism
種間相互作用:草食と相利共生
担当:高山
琢馬
地球上において肉眼で確認できる種の半分以上が植物であり、結果的に種間相互作用の多くは、植物
―草食動物の相互作用を意味する。この章では草食動物−植物間に特有な関係を紹介する。これらの関
係に特有なことは、植物は移動することが出来ないということ、つまり、捕食者からの 逃避 は巧妙
な適応のみによって成し遂げられるということである。植物にとって草食動物は重要な選択的行為者と
なり、植物と動物の進化的相互作用がこの章の主題である。
Defence Mechanisms in Plants【植物の防御機構】
「世界は緑色に覆われている」の説明としては、
・草食動物個体群は自らの餌料供給を破壊しないための自己調節機構を進化させた(Chapter16)
・草食動物が植物を食い尽くさないように抑える捕食のような他の調節機構
・緑色全てのものが食べられるわけではない
植物は草食動物に対抗するため防御を進化させてきた。
構造的適応で草食を阻止するが、「化学兵器」も用いる。これらは幾つかの植物でのみ見られる、二次
代謝産物と呼ばれるもので一次代謝の副産物である(Fig14.1)。
二次代謝産物の起源として二つの説
① 一次代謝の排出物に対する自己中毒を避けるための適応
動物と同じように排出できないので、揮発や浸出させて排出したり体内で無毒化
↓
・隣接環境に化学物質を放つことで競争者を抑制できる(allelopathic effects)(Chapter6)
・葉や茎に化学物質を蓄積させることで、草食動物に対し有毒になったり不味くなる
② 草食動物に打ち勝つため植物が特異的に進化させた
・排出物が有用なのは一部で、多くは代謝コストを用いて能動的に生産する
つまり、草食動物は植物の適応度に強い影響をもち、防御の発達した植物は適応的。
防御特性が遺伝的ならば自然選択の存在が必要
◎植物の防御が適応度においてコストがかかるならば、以下の四つの事が予想できる
→なぜなら、防御コストは、他の要求に対するエネルギーと栄養の転用
・より危険にさらされるならばさらに防御を進化させ、防御コストが高いならば防御は弱くなる
・植物は危険にさらされている重要な細胞に防御を多く配分する
・防御機構は敵がいない時は減らされ、攻撃されたときは増える
・防御機構はコストがかかるので、環境要因によってある程度のストレスを受けると維持できなくなる
現在、4 つの予想をサポートする証拠が蓄積されてきている
現在では自己中毒仮説は正しくないとされ、二次代謝物が草食の抑止力としての役割を果たすという
仮説が有力視されてきている。二次代謝産物は安定した代謝最終産物ではなく、代謝プール(metaboric
pool)の中で早い回転率をもつ。
Feeny’plant apparency theory (1976)
植物―草食動物相互作用を説明しようとした最初の一般測
(前提)防御のタイプは、草食動物がどのくらい容易に植物を「見つけられる」かに依存
↓
捕食者に「見つかりやすい植物」は、「見つかりにくい植物」と異なるタイプの化学防御を進化させる
「見つかりやすい」
(長命の)植物・・・量的な防御(例
タンニン、樹脂:防御物質が乾燥重量の 60%)
「見つかりにくい」(短命の)植物・・・質的な防御 or +/−防御(例
が乾燥重量の 2%以下)
←
アルカロイド、毒:防御物質
解毒代謝をもつ草食動物には対抗できない。
また、防御型や量は植物組織の無防備さに依存
・若苗や若葉は重要なので防御を重点的に注ぎ込む
・タンニンなどの化学物質は植物表面付近に集中させることで防御効率を上げている
しかし・・・
多くの研究からこの説は不十分だとわかった
・「見つかりやすい」植物が質的な防御をし、「見つかりにくい」植物が量的な防御をすることもある
・人間の観点では、草食動物にとって「見つけやすい」か「見つけにくい」が不明
resource availability hypothesis (Coley et al. 1985 :table14.1、fig 14.2)
従来の仮説で欠けていた、草食によって失われた組織の回復能力を取り入れた。
同じ草食を受けた場合、成長の遅い植物の方がダメージが大きい
↓
成長の遅い生物は防御投資を増やし、成長の早い生物は防御投資を少なくして成長に回す
◎植物は一時的な防御と永続的な防御を行う(構造的防御は化学的防御よりも永続的)
誘導防御を行うことによって植物は不必要な防御コストを払わなくて済む。植物は草食動物の攻撃を
受けてから防御を活発化させることができる。攻撃されてから防御反応までの誘導時間は多様(12 時間
から 1 年以上)。植物において敏速な防御反応は予想されていなかったが、現在は植物−草食動物研究
で興味の的になっている。もし防御にコストがかかるなら、草食の後防御が軽減されることが予想され
るが、これについてはほとんど測定が行われていない。もし誘導反応が植物で起こっているなら、それ
らの反応が草食動物に対するものかどうかを断定するためには次の二点に答える必要がある。
・誘導された変化は草食動物の草食や分布に影響するか?
・葉の化学物質の誘導変化の結果として植物は被害を減らし、利益を大きくするか?
◎草食動物も植物が防御を進化させている間じっとしているわけではなく、解毒酵素の獲得や有毒物質
を避けるために自身のライフサイクルを変えたりして防御を回避している
⇒
共進化
【オークのタンニン】
西ヨーロッパの落葉性森林で優占種であるオーク(Ouercus robur)は 200 以上の蝶の幼虫に攻撃さ
れている。なぜ春に幼虫の草食が集中するのだろうか?(fig14.3)
一般的な winter moth(ナミスジフユナミシャク)で実験
・オークの葉は成長するにつれて winter moth にとって餌として適さなくなり、春に起こるその変化は
非常に早い。最も明らかな変化は葉の色が濃くなり丈夫になる(fig14.4)。
・葉の厚さの変化だけならすりつぶして食べることで対応可能。
⇒実は、化学的な成分の変化(タンパク質の低下、タンニンの上昇)による防御も行う。
↓
草食動物もライフサイクルを変える、草食の方法を変えるなどで対抗(table14.2)
【アリとアカシア】(fig14.5)
防御における相利共生のシステムは熱帯の swollen-thorn acacias とアリの間で共進化してきた。
・アリはアカシアに餌と棲みかを依存し、アカシアはアリに競争種と草食動物の排除を依存。
・熱帯の他の植物がもつような化学的防御機構はない。(アリがいないと競争種に負けてしまったり、
草食が増加する)
→アリはアカシアの生物的防御機構として働き、相利群衆における 2 種の共進化の例。
【海産性コケムシの棘】
(fig14.6)
淡水性、海産性両方の動物も捕食者の放出する化学物質に反応して棘や厚いからを作る。
これらは誘導防御で餌種−捕食者関係で多く見られる。
コケムシはウミウシ(nudibranch)に襲われると 36 時間以内にキチン質の棘を作る。
棘を作ると被食率が 40%に低下
⇔
コストがかかる(コロニー生産が 85%に低下)。
⇒この誘導防御は棘の生産と再生産・成長のトレードオフ
【陸上植物の棘】
大型の草食動物に対する防御だと考えられている
① サボテン(fig14.7)やアカシアの研究(捕食圧の高いところで棘を誘導)
② フィンボス(低潅木地帯)の研究では resource availability hypothesis とは逆の結果。
→
土壌が貧困すぎて大型の草食動物が生存できないから防御に対して選択圧が低い
Herbivores on the Serengeti Plains【セレンゲティ平原の草食動物】
セレンゲティ平原の有蹄類・・・草食動物の相互作用の例
シマウマ:長い草を食べる
ワイルドビースト(ヌー):地面近くまで草を食べ、踏みつけてゆく
トムソンガゼル:乾季の間中短い草を食べる
(fig14.9)
これらの grazer は季節を通じて餌種は同じだが、食べる部位は変える(fig14.10)
シマウマ:grass の茎(stem)と葉鞘(sheath)
ヌー:grass の葉鞘と葉
栄養(低)
↓
ガゼル:grass の葉鞘と herb
栄養(高)
どのようにシマウマは乾季の主要な餌として茎を利用しているのか?
・セレンゲティ平原の多くの有蹄類は反芻を行うが、シマウマは反芻を行わない。
(反芻する動物のような特殊な菌やバクテリアのいる胃ではなく、単純な構造の胃をもつ)
→植物を腸の中を大量(反芻動物のおよそ 2 倍)に通過させることで吸収率の低さを補う。
・ヌーやガゼルより体を大きくする
→大きな動物は体重あたりの必要なタンパク質やエネルギーが、小さな動物より少ない
→質の悪い餌にも耐えやすい
ヌーとガゼルは餌をめぐる競争をしないのか?
・ヌーの通過によって草地は荒廃(grass のバイオマスは 85%、高さは 56%に減少)
・McNaughton(1976)は grazer の除去による実験(fig14.11)
→
grazing を受けた地域はヌーの移住後に短く太い芝が生えた
・ガゼルはヌーが通過した地域を選択的に利用
⇒競争の証拠は見られず、grazing facilitation が見られた
(grazing facilitation:摂餌活動により、次の種の餌利用性を向上させる)
同様にヌーとシマウマの間にも grazing facilitation が見られ、潜在的な競争が相利共生に置き換わって
おり、このシステムは 1 つの草食動物を除去することで激しく変化するだろう。
Grazing facilitation の検証
・セレンゲティ平原のシマウマ、ヌー、ガゼルの個体群を比較する。
もし、grazing facilitation が共生的で必須のものなら個体群の増減は連動。
→実際は連動することなく、共生関係の形になっていなかった(fig14.12)
セレンゲティ平原の grass をめぐる競争は多様な種間(バッタやげっ歯
目も含む)で起こっており、その複雑さのため fig14.9 のような単純なシステムでは表しきれない。
Can Grazing Benefit Plants? 【grazing は植物の利益になりえるか?】
草食は一見植物個体に有害であるように見える。実際は利益をもたらしているのだろうか?
→公的放牧場での家畜の飼育:排除か?促進か?
Grazing が草、牛、植物群衆(低木への遷移遅くする)、生態系(分解を早める)に良い影響を与える
この考えは range manager や生態学者によって促進されてきた。
Grazer と草は相利共生関係にあることが仮定だが、過剰な草食は有害なのは明らか。
↓
適度な grazing は植物バイオマスを向上させる刺激となるか?
=overcompensation hypothesis (過大補償仮説
fig14.13)
・この仮説を証明するには地上、地下両方のバイオマスを測る必要があるがそのような研究はほとんど
ない。
・植物は再生という形で反応するが、失われた全てが回復するわけではない。
・植物―草食動物相互作用は草食動物が得をし、植物が損をすることから餌種−捕食者型の相互作用だ
が、全てが+/−分けられるわけではなく、いくつかの相利関係もある。
◎草食動物を芝刈り機のように捉えがちだが、草食は高度な選択摂餌(fig14.14)
→
草食動物にとって世界全てが餌でないことの理由
・野ウサギの場合はフェノールのような二次代謝産物が選択の原因
Dynamics of Herbivore Populations【草食動物の個体群動態】
ここまでは・・・
Interactive herbivore system
草食動物は植物成長と植生の二次発達に影響し、このフィードバックが動態に重要な役割
ここからは・・・
No interactive herbivore system
草食動物個体群密度と草食後の植生の状態に関係は見られない
【Interactive grazing :有蹄類の大発生(irruption)】
irruption:多くの有蹄類が持ち込まれた後、劇的に増加、高密度になり、その後崩壊し、減少すること。
普通、十分な餌があり捕食者がいない場所に導入するとおこる。(fig 14.15)
・stage1:個体群は上昇し、餌資源は減少する
・stag2:個体群はハビタットの環境収容力に達し、餌資源は使われすぎ、ダメージを受ける
・stage3:餌不足により個体群は衰弱し、しばしば厳しい気候により悪化する
→
個体群は全滅に近い状態で推移するか、少数で安定する
Grime Caughly の研究
ニュージーランドのヒマラヤタールの irruption を研究
・1904 年に持ち込まれ、南方の山脈に広く分布
・個体群密度が上昇したとき出生率はわずかにのみ低下、死亡率(特に子供)は上昇。
・個体群密度が高い時期が過ぎると、繁殖率低下と若年個体の死亡率増加で個体群減少
何が原因となっているのか?
→grazing により餌供給減少と植生の特性が変化
・最も目立つ影響は snow tussocks の減少(タールがいないと優先種となっている)
・snow tussock は冬の終わりの重要な餌だが、一定以上の grazing 圧に耐えられない
・タールが高密度になると、冬の間潅木でさえむさぼり食べつくしてしまうこともある
South Georgia のトナカイ(fig14.16)
・ノルウェーの捕鯨船団員によって 1911 年と 1925 年に亜南極の South georgia 島に狩りの対象として
もちこまれた。
・1950 年代にクジラは減少し、トナカイの狩りもほとんど行われなくなった。
・どちらの島の個体群も一度ピークを迎えてその後減少していった。
・このとき、冬の主要な餌となる tussock 草原をトナカイは overgrazing の状態だった。
↓
捕食者と他の grazer がいない単純な生態系のため、interactive grazing system における植物―草食動
物相互作用を鮮明に示している
◎一般に少数の有蹄類が豊富に餌がある地域に導入された場合・・・
動物にとって最適の餌が減少もしくは絶滅するまで、動物の密度は上昇し植物密度は減少。
↓
草食動物と植物が安定することができる新たな低い密度まで動物個体群は減少する
単純な grazing システムは Rosenzweig-MacArthur の被食−捕食モデル(chapter13)に当てはまる
・植物の成長は、バイオマスを用いた簡単な関数で、草食動物がいないときはロジスティック式で表せ
る
・ロジスティック成長と type2 の消費曲線(fig14.17)を組み合わせると fig14.18 のような単純な草食
動物−植生モデルを描くことができる。
→
fig.14.16 の動態に似ている。
・このモデルの挙動は植物の増加率と捕食者の摂餌率に強く依存
草食圧により植物の量が半分以下に抑えられている場合、周期的な振動を示す。
草食動物が非常に効率的な grazer ならこの単純なシステムは完全に崩壊するだろう
昆虫の irruption
・東部カナダの針葉樹で 30~40 年ごとに spruce budworm が異常発生し、バルサムモミの芽、花、針
を食べ、モミを枯れさせて殺してしまう。(fig.14.19)
・ポプラハマキガは 10~15 年おきにアラスカ内陸部に大発生し、2~4 年間アメリカヤマナラシを枯らさ
せる。
多くの草食昆虫は餌に含まれるタンパク質の不足によって密度が抑えられている。
White(1993):ほとんどの植物は窒素不足によって昆虫の餌として適さないが、生理的ストレス(水
不足など)によってしばしば葉や茎の表面にアミノ酸を集中させる。
→
幼虫の生存率が高くなり、昆虫の大発生が起こる。
Plant stress hypothesis (Larsson 1989)
:非生物的ストレスによって草食昆虫にとって餌がより適したものとなる。
上記の仮説は spruce budworm の大量発生が時折起こることから説明できるが、全ての昆虫が植物のス
トレスに正の反応を示すわけではない。
↓
plant vigor hypothesis(Price 1991):
ストレス仮説の例外として、若く元気な木を優先的に草食する生物がいることを説明
例)ムースは成長の早い若い枝を好んで食べ、防御物質は受け付けない
⇒
草食動物によって、好む植物が異なる。そのため、この二種の仮説で全ての草食動物を予測するべ
きではない
【Noninteractive Grazing:フィンチ個体群】
フィンチは種子を食べるが、餌植物のその後の生産量に何も影響をあたえない。
⇒『餌植物の生産量→草食動物密度』の一方向の制御
この草食動物から植物へのフィードバックの欠如が相互作用に重要な役割をする。
British finch の二つの個体群
:草の種子を食べる個体群は安定しているが、木の種子を食べる個体群は変動する
種子の収穫高の変動によって個体群動態が決定される
(温帯の草の種子は毎年安定して作られるが、木は変動する。
)
・多くの木は果肉を作るため、エネルギーの蓄積が必要で、そのため何年かごとに種子生産を控えてい
る(地域によって異なる)
・果肉を作るためには天候にも恵まれる必要がある
←
一定の地域内で種子の生産が同調している
木の種子を食べるフィンチは個体群密度に大きな変移が生じる
日和見的であり、種子の多い地域を探して長距離を移動
・ irruptive”フィンチは全て北方で繁殖し、1~2 種の種子に餌を頼っている(fig6.10)
・これらのフィンチは周期的に繁殖地を離れて南に移動する(fig14.20)
↓
フィンチの移住は餌不足に対する適応だと考えられるが、それだけでは説明できない。
1900〜1963 年の間に 14 回の種子の不作が起きたが、そのうち 6 回のみ移動が見られた。
⇒
移住の前提条件として個体群動態が高密度になっていることが必要だとわかった。
高密度+種子の不作
→
irruption
なぜ移住するのか
◎十分な餌が得られるなら移出はその場に留まるより有利だが、致命的な危険もある
・移出個体群は南の新しいハビタットに住み着け、子孫を残すことができる
・餌不足が発生したら元の場所に戻ることができる。
◎フィンチの繁殖ペアの密度と餌供給量には強い相関がある
・種子の多い地域にフィンチ個体群は集中。
・通常の繁殖ではランダムな移動性が irruption の年にはどのように一方向性の移出になるのかはわか
っていない。
全ての植物―動物
相互関係が植物にとって有害ではない・・・
Seed Dispersal :An Example of Mutualism【種子分散:共生の例】
多くの植物が種子の分散を鳥や哺乳類に頼っていて、果実の進化に共進化が良く見られる。
・果実は種子を覆っていて、哺乳類は栄養分のある果肉部分だけ消化し、種子は無傷のまま消化管を通
過する。
・植物は成熟させる過程(色、味、匂いの変化)で果実を目立たせる。
・成熟すると菌やバクテリアなどの攻撃も受ける。(分散に役立たない)
↓
植物は菌などの攻撃を少なくしつつ、分散力を高める形質を進化させる必要がある
植物が果実を食害から守る戦略は一般的に 4 種ある。(Table14.3)
Ⅰ
害虫が少ない時期(温帯では秋から冬)に実をつける(最もコストが少ない)
Ⅱ
成熟を遅らせることで食害の機会を減らす。しかしこの戦略は分散の機会も減らす
Ⅲ
果実の栄養バランスを悪くし(炭水化物が非常に多く、脂肪やタンパク質が少ない)
虫や菌の攻撃を防ぐ。果肉は自然界で最もタンパク質に乏しく、害虫防御の一般的な機構。
Ⅳ
化学防御や機構的防御
コストは高いが、草食動物は減らし分散はできることから採用されてきた。成熟すると化学防御はなく
なると考えられているが、成熟後も毒をもつものはある。これらの有毒な果実は解毒機構を持った特定
の脊椎動物のみによって分散する。
種子食者(ホシガラス)と種子(Whitebark pine)の相互作用
・北アメリカの何種かの松の種子は羽を持たず、カケスやホシガラスによって分散する。
・餌は地中に埋められ、食べ切れなかった種子は発芽する。
→
相利共生の例
◎ホシガラスによる分散は松にとって有益なのか?
・ホシガラスは平均 3~5 個の種子を湿った地面を避けて 2cm の深さに埋める。
→木の生長に非常に有利な微環境
・一羽のカラスは毎年約 32000 個の種子を埋め、それは必要なエネルギーの 5 倍。
→全ての種子は消費されきれず、残ったものの種苗生存率は高い。
・カラスは、高山林内の新しい地域に種子を分散させ、松の分布域を広げる。
他の種(鳥、ネズミ、リス)も種子を運ぶが、発芽に最適な状態で埋めるものはいない。
ホシガラス―Whitebark pine システムは共進化した相利共生
Complex Species Interactions【複雑な種間相互作用】
一対一の相互作用は自然群集ではほとんど無く、複雑な種間相互作用を解きほぐすことが生態学の重
要な目的のひとつとなっている。複雑な相互作用は、ある種が他種にとって有益か有害かを説明するこ
とがいかに困難かを物語っている。
同翅目(アブラムシ等)とアリ
同翅目は世界中で害虫かつ病気の媒介者なので、植物―同翅目―アリ相互作用は重要。
→中国では A.D.300 年から同翅目群衆の制御が行われてきた。
・アリは同翅目に多くの利益(捕食者や捕食寄生者から守る、排泄物を処理、新たな餌場へ運ぶ、死ん
だ同翅目を除去、巣を提供)をもたらす。
・同翅目は植物の篩部から樹液を吸い、病原体も媒介する。害になるのみ。
・同翅目はアリに糖液を供給する
→
コロニーの個体数増加
◎ハワイでこの相互作用の実験(fig14.22)
・アリを除去すると捕食寄生されたカイガラムシが増加し、他の捕食や病気によるカイガラムシの死亡
も増加。
・アリのいない植物の葉には糖液が蓄積し、黒いカビも生えた。
→
光合成量が低下し、葉も落ちやすくなった。(アリによる間接的な利益)
・アリは他の損害からも植物を守っていたかもしれない。
構成種が多くなると複雑な相互作用を解き明かすのは難しい。相互作用網は草食・共生・捕食・競争を
含み、様々な方法で生態系内の直接的相互作用と間接的相互作用の両方を観察する必要がある。
Summary
草食は捕食の一つの形である。植物は群体生物なので、通常草食動物は植物の一部しか食べず、この
点で典型的な草食は典型的な捕食とは異なる。植物は草食動物を防ぐ様々な構造的、化学的防御を持つ。
植物に蓄積される多くの二次代謝産物は草食動物を阻止し、草食動物は化学防御の脅威を避けるライフ
サイクルや解毒酵素を進化させることによる進化的変化で対応してきた。いくつかの仮説が植物の防御
戦略を記述することを試みた。Resource availability hypothesis は植物の遅い成長と早い成長で防御コ
ストと利益の区別を強調し、どんなときに植物が化学と物理どちらかの防御をするべきかを予測する。
草食動物は餌植物の未来の密度と生産力に影響を与えることができる。非常に効果的な草食動物は、
もし餌生物の乱獲を防ぐという制約を進化させなければ自らを絶滅へと導いてしまう。ほとんどの草食
動物―植物システムは振動平衡が見られる。捕食者個体群は餌供給を追跡し、餌供給の大きな変動は草
食動物密度の大きな変動にしばしば変換される。
全ての草食が有害なわけではない。種子・果実食脊椎動物は植物から餌を手に入れ、種子を分散させ
る。それによって共生的相互作用において植物は利益を得る。果実や種子は様々な構造的、化学定防御
をもち、植物は種子分散が支援され、種子の破壊を減らすため実りの時期を設定する。
植物―動物の相互作用において共生は起こる。受粉と種子分散は植物と動物の両種が利益を得る過程
の二つの例である。特に熱帯域や同翅目のような草食動物がいる状況で、アリは植物と共生関係を作る。
Key Concepts
1 世界が緑ということは草食動物は、自身の行動・敵・植物の防御戦略のどれかによって餌資源の破壊
を妨げられる。
2
resource availability hypothesis は、最も貧しいハビタットの成長の遅い植物は草食動物による損
失が最も多いため最大限植物防御をするべきだろうと予測する。
3
草食動物は餌植物と安定した相互作用は行うとは限らず、後に個体数の変動を伴う irruption を多
くの有蹄類は経験する。
4
捕食者―餌種動態の MacArthr-Rosenzweig model は、安定に導くであろう植物―草食動物相互作
用の一種を決めている grazing システムに応用される。
5
全ての植物―草食動物相互作用が植物に有害なわけではない。動物は種子を分散させ、花粉を運ぶ。
そして群衆から植物と草食動物の両方が得をする多くの共生的相互作用が進化してきた。
Essay14.1
:HERBIVORY,ECONOMICS,AND LAND USE
草食と経済学と土地利用
アメリカ西部の牧草地の土地利用について、草食に関する生態学的知見は、経済学的知見と対立する。
荒野、野生生物保護区、国有林、国立公園を含む西部の約 70%の土地は家畜によって grazing を受けて
いる。生態学者は grazing の効果について 2 つの疑問を抱く。
(1)
これらの地域の grazing 生態学的コストは何か?
(2)
Grazing は現在の形態で維持できるか?
経済学者は grazing の効果とコストのバランスを求めるが、そこにはお金の価値では付与できない生態
学的コストはほとんど考えられていない。その結果は西部の土地利用を超えた、多次元的な進行中の痛
烈な議論となってきた。
実験生態学者は植物と動物の個体群における grazing の生態学的効果を計るため、grazing を受ける
土地と受けない土地で比較したいと思った。しかし、そのような比較のための grazing を受けていない
土地はほとんどない。Grazing を受けないままでいる土地は急斜面や岩が多いなど周囲のハビタットと
劇的に異なっている。この問題に対する一つの解決として効果を研究するために家畜の囲い込みを用い
ることがあげられる。しかしこの方法は、ほとんどの囲い込みは地域内で小さいことと、過去に grazing
を受けていることから問題もある。小さな囲い込みは群衆内の全ての種(特に希少種)を含んでいるわ
けではない。そして、もし初期の grazing が最も重要ならば、過去に grazing を受けた土地において、
歴史的な繰越が十分長い囲い込み調査でさえ影響するだろう。このような場合、植物と動物において
grazing の本当の効果を囲い込みは過小評価するだろう。
生態学者と土地経営者は、草は grazing が必要で、西部牧草地の生態学的健全さにおいて家畜は必要
不可欠だと同意している。これに対する裏づけのいくつかは補償あるいは草食動物最適仮説(植物が
grazing を受けると植物の生産性が高くなるだろう)から来ている。西部牧草地においてこれらの仮説
の証拠はほとんどない。しかし、この考えは現在の grazing システムの一つの裏づけとして上がり続け
ている。
放牧地としての公有地の利用は保全の必要性とレクリエーションのバランスがとられるべきである。
特に、関わりのある人全ては、経済学的と生態学的という異なった目的を成し遂げる継続的な土地利用
の実施を成し遂げる必要がある。西部放牧地全て国立公園にすべきではなく、また植物群集すべて食い
荒らされるべきでもない。継続的な土地利用の目的を成し遂げるために、関心のある全てのグループ間
で協力するべきである。どんな政策的目標が優良な土地利用によって成し遂げられるかを優れた科学は
私たちに見せるべきだ。