平成 19 年度
卒業研究・デザイン
概要集
西日本工業大学
工学部
情報デザイン学科
平成 19 年度 卒業研究・デザイン 概要集 目次
口頭発表編-1
[河野研究室]
氏 名
表
題
種類
ページ
論文
1~2
論文
3~4
題
種類
ページ
平林 尚祥
風呂の歴史とこれから求められる理想の風呂
作品
5~6
朴 日龍
男性公衆トイレの清潔について
論文
7~8
守中 正章
地球の未来をまもる環境にやさしい低公害車
論文
9~10
崔 雪梅
トイレにユニバーサルデザインがどんなくらい配慮されているのでし
論文
11~12
荒木 優行
PC 教室の利用情報提示システムの開発(その1)
久保杉 弘央
PC 教室の利用情報提示システムの開発(その2)
-インターフェースデザイン-システムプログラミング-
[木村研究室]
氏 名
表
ょうか?
李 成鶴
日本、中国のケータイ事情とデザイン&世界のケータイのデザイン
論文
13~14
陳 玲
日中生活文化の比較
論文
15~16
種類
ページ
[張研究室]
氏 名
表
題
角杉 望
着物普及計画
論文
17~18
羅 文豪
グラフィックデザインの日中比較
論文
19~20
種類
ページ
[趙研究室]
氏 名
表
題
木下 華香
オープンソースを用いた新しい広告制作手法の提案
論文
21~22
佐賀 杏美
国際的なプロモーション活動のあり方についての考察
論文
23~24
表
種類
ページ
[永山研究室]
氏 名
題
呉 永
大型トラックの空力特性向上を目指して
作品
25~26
藤原 秀明
自動車の歴史における空力とデザインについて
論文
27~28
i
平成 19 年度 卒業研究・デザイン 概要集 目次
口頭発表編-2
[宝珠山研究室]
氏 名
秋山 紘佑
表
題
人々は今どのような車を求めているか-生活メディアとしての自動車
種類
ページ
作品
29~30
デザインの研究
太田 有香
Fairy Tale Project ― 架空バンドのプロモーション計画の提案―
作品
31~32
金 仙玉
アジア漢字の歴史的研究に基づく平面作品の制作について
作品
33~34
曽我 衣世
大学祭『美夜古祭』プロデュースのためのコミュニケーション・デザ
作品
35~36
インの研究・制作
中村 透
「デジタルパンフレット」のデザインに関する総合的な調査と研究
作品
37~38
溝尻 祐子
20代女性をターゲットとしたファッショングッズ・ブランド
作品
39~40
<Bell>の提案
吉崎 茂人
PR 効果を高めることを目的とした WEB サイト製作
作品
41~42
安原 未来
現代日本におけるキャラクターデザインの研究
作品
43~44
種類
ページ
[山縣研究室]
氏 名
表
題
小久保 浩嗣
小学生の理科の実験の授業の記憶に及ぼす要因の検討
論文
45~46
徳永 康平
子どもの遊びの変化と社会的スキルの関係
論文
47~48
ii
平成 19 年度 卒業研究・デザイン 概要集 目次
ポスターセッション編-1
[木村研究室]
氏 名
表
題
種類
ページ
生悦住 諒
ジャージのデザイン性の研究
作品
49~50
石橋 知倫
ユニバーサルデザインとシステムキッチン
作品
51~52
大石 健二
遊びと人
作品
53~54
岡本 健太郎
ゆらぎ照明
作品
55~56
吉川 裕崇
ユニバーサルデザインとトイレの概要
作品
57~58
種類
ページ
[趙研究室]
氏 名
表
題
阿蘓 宏一
画面アスペクト比が見た人に与える影響に関する考察
作品
59~60
北野 充
新しいインストルメント・パネルの提案
作品
61~62
善積 哲史
デザインとスタイリングについての考察
作品
63~64
種類
ページ
河森正治氏によるメカデザインの実証実験
[浜地研究室]
氏 名
表
題
大川 哲平
擬音語・擬態語から日本人の感性を考える
作品
65~66
真砂 翼
手描きによるアニメーション作品の研究
作品
67~68
劉 宏悦
エディトリアルデザインの表現法の研究と情報誌の制作
作品
69~70
郭 惠敏
WEB SITE 制作「蘇月小築之東瀛篇」
作品
71~72
種類
ページ
作品
73~74
種類
ページ
[宝珠山研究室]
氏 名
姫野 謙
表
題
ブロードバンド化における動画コンテンツの研究
[松内研究室]
氏 名
表
題
池永 大輔
見せながら収納できる壁面家具の制作
作品
75~76
今富 小百合
廃品家具からの発想
作品
77~78
植木 雅文
絵巻物にみる山笠、山鉾、御輿
論文
79~80
小野 哲平
安眠グッズの調査と提案
作品
81~82
高橋 亨平
イルミネーションブロックの研究・制作
作品
83~84
南 隆広
透明素材を用いた内装用建材の提案
作品
85~86
矢野 良
自然にやさしいルアーの提案
作品
87~88
湯之上 恵梨
アパレルメーカー店舗ショウウィンドウ照明計画と照明器具制作
作品
89~90
吉川 弘晃
安心して暮らすための住宅改修の提案
作品
91~92
iii
平成 19 年度 卒業研究・デザイン 概要集 目次
ポスターセッション編-2
[矢野研究室]
氏 名
表
題
種類
ページ
荻迫 光洋
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口
作品
93~94
菊田 安洋
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口
作品
95~96
板野 充敏
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口
作品
97~98
富澤 則幸
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口
作品
99~100
渡辺 諭一
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
101~102
與那覇 悟
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
103~104
西島 伸太朗
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
105~106
藤田 廣之
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
107~108
弓場 健司
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
109~110
李 晶
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
111~112
西谷 誠司
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要
作品
113~114
iv
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
口 頭 発 表 編
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
PC 教室の利用情報提示システムの開発(その1) -インターフェースデザイン- [論文,口頭]
河野研究室
045003 荒木 優行
1.研究の目的
小倉キャンパスの PC 教室の利用においては,リソースが不足している,あるいは利用状況に関する
情報提示がない等々の理由により,効率的な運営がされていないのが実情である.このため,学生のレ
ポート作成あるいは自主的な活動に支障をきたしている.そこで,本研究では,PC 教室の利用状況を
事前に知ることができるシステム(提示システムと言う)を作成し,PC 教室利用の効率的な運用を図る
ことを目的とする.
本研究では,特に PC 教室の利用実態の把握と提示システムのインターフェース部分の開発について
述べるものである.
2.研究の方法
2-1 PC 教室の利用実態の把握
PC 教室が現在どのような利用状況となっているのかを把握した上で,研究の方針を決定した.
2-2 解決案の具体化
2-1 で把握した情報を元に問題点を整理,把握し,解決案を具体化した.すなわち,開発すべきシス
テムの外形について検討した.
2-3 インターフェースデザインの決定
問題点およびシステムの外形に基づき,開発するシステムのインターフェースデザインを決定した.
3.PC 教室の利用実態
まず初めに PC 教室の利用実態の把握を行った.最初に挙げられる問題点として,教室がいつ空いて
いるかよくわからないという点がある.その理由としては,まず学期の初めにほぼ確実に教室,時間割
変更が行われることと,そのことにより学生が持っている時間割では実際の PC 教室の利用予定との違
いが出ることが挙げられる.それに加え,教室移動,休講・補講などの変更がさらに情報のずれとなり,
利用状況の把握を困難なものとしている.そのため,学生は PC 教室を利用する際,自分自身の目で教
室を見て確認することを余儀なくされている.
次に,教室にインストールされているソフトウェアが教室によって異なっており,教室ごとのソフト
ウェアのインストール状況が把握しにくい点がある.
3つ目に4階の ML(メディアライブラリー)の PC 利用に関する問題がある.ML は自由な時間に PC
を利用できる場として開放されているが,その ML にはノート型 PC24 台,デスクトップ型 PC16 台し
かない上に,ノート型には OS インストール時のソフトウェアしかインストールされていない.そのた
め,実質的に使えるのはデスクトップ型の 16 台のみとなっている.この台数は学生の数と比較してみ
ると,絶対的に不足していると言わねばならない.
以上の3つの問題点が PC 教室の利用予定,インストールされたソフトウェアの把握を困難なものと
し,学生の PC 利用の弊害となっている.
4.提案するシステムの概要
4-1 提示内容
以上を踏まえ,本研究で提案するシステムは,PC 教室の正確な情報をもとに,休講・補講・その他
の予定などにも対応したスケジュールをリアルタイムに表示するものとした.つまり,PC 教室で使用
できるソフトウェアのインストール状況や付属ツールをわかりやすく表示をすることを目的としている.
4-2 コンテンツの2つの表示形式
提示システムを構成するコンテンツの各部分に関して検討を行い,その具体的な内容を整理した上で,
インターフェースデザインについて詳細に検討した.コンテンツの内容は,大きく固定表示を行う静的
部分および時間で表示が変動する動的部分に分けられるが,本研究ではそれらを個別に開発することと
した.
1
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
5.インターフェースデザイン
5-1 提示システムのフレーム
まず,提示システムにどのような機能を盛り込めばよいか,その際どういった情報を必要とするかに
ついて整理を行った.その結果を踏まえながら,インターフェースモデルを作り,具体的には Illustrator
を用いて作成した.その上で,どのように表示すれば相手によりうまく伝えることができるか,つまり
PC を利用する側の視点に立って,インターフェースの検討を行った.
5-2 基本カラーの決定
最終的な提示システムの基本カラーは青系と決定した.その理由は以下のとおりである.
・ディスプレイする際,青系色は映えるため,視認性が高い.
・寒色系のため,情報提示の際に冷静な判断材料となる.
5-3 デザインツールの決定
インターフェースモデルを具体化するために使用するデザインツールを選定した.候補としたツール
は,次のとおりである.
・Illustrator:インターフェースを考える上で一番使用したソフトである.インターフェースの具体的
な案を書き起こし,最終的なデザイン案を作り上げた.最終的な提示システムに使用されている画像に
ついても Illustrator で作成した.
・Dreamweaver :システムの HTML を組む際に使用できないか否かを検討したツールである.しか
し,HTML のタグを直接入力する方法と比べた結果,エディターでタグを入力する方法がより効率的で
あると判断し,今回は使用しなかった.
・Photoshop:画像,インターフェースを作る際に使用したツールであるが,最終的に全体的なデザイ
ンやアイコン等の作成には Illustrator を使用したため,その使用頻度は低かった.
5-4 具体的なインターフェース
図-1 が Illustrator で作成したインターフェースモデルであり,図-2 が実際に Web で起動したシステ
ムの画像である.最終的にプロトタイプモデルとほぼ同等のものができたと言える.
図-1 インターフェースモデル
図-2 Web 化されたインターフェース
6.結論および今後の課題
6-1 結論
本研究は,PC 教室の利用実態を把握した上で,PC 利用情報提示システムの開発を企図したが,特に
インターフェースデザインについて検討を行った.利用実態で判明した問題点すべてを解決できたとは
言えないが,学生が PC を利用する際に必要な情報を網羅した提示システムを実現できたと考えている.
6-2 今後の課題
実際に数人に本システムを操作してもらった結果,フレーム内で処理されている横スクロール部分が
ホイールで動かず,縦スクロールに変更した方がよい等の変更点が指摘されている.これらを修正すれ
ば,さらに使いやすいシステムが実現される.
2
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
PC 教室の利用情報提示システムの開発(その2) -システムプログラミング- [論文,口頭]
河野研究室
045021 久保杉 弘央
1.研究の目的
小倉キャンパスの PC 教室の利用においては,リソースが不足している,あるいは利用状況に関する
情報提示がない等々の理由により,効率的な運営がされていないのが実情である.このため学生のレポ
ート作成,あるいは自主的な活動に支障をきたしている.そこで本研究では,PC 教室の利用状況を事
前に知ることができるシステム(提示システムという)を作成し,PC 教室利用の効率的な運用を図るこ
とを目的とする.
本研究では,特にシステム実装のためのプログラミングについて述べるものである.
2.研究の流れ
2-1 既存システムの調査
提示システムの機能を持つグループウェア,スケジューリングソフトウェアおよびソフトウェアのプ
ログラミングの際に有効なグラフィックライブラリについて文献調査を行った.
2-2 インターフェースデザインを踏まえた提示システムの骨格の検討
システムの骨格としては,PC などにインストールする実行形式のソフトウェア,Web アプリケーシ
ョンなど様々なものがある.種々検討した結果,大学の HP における利用が学生にとって最も利用しや
すい利用形態であると判断し,開発するシステムの骨格を Web ベースとすることとした.
2-3 システムプログラミング
インターフェースデザインを実装するためのシステムプログラミングを行った.
3.提示システムの構成要素
3-1 静的な表示部分と動的な表示部分
提示システムの静的な表示部分についてはインターフェースモデルで作成した画像を HTML に直接
貼りこむ形をとった.
一方,
動的な表示部分については Web に動的なデータを使用できる CGI(Common
Gateway Interface)という手法を用いてプログラミングを行った.
3-2 動的な部分の処理
CGI のためのプログラミング言語としては,現在多くの言語が適用可能であるが,一般的には,Perl,
PHP,Java などが用いられる.それぞれの長短所を詳細に検討した結果,システムのメンテナンスが
容易である点と可読性に優れている点を考慮し,本研究では Perl を採用した.
また,提示システムの実際の運用においては,Web サーバが必要になるが,Perl のプログラミングに
一般的に使用されている,使い勝手がよいなどの理由から,HTTPD を使用することとした.
3-3 提示システムが必要とする外部データ
提示システムの運用で必要となる外部データは以下のとおりである.
・講義日程 ・PC 教室,ML(メディアライブリー)に関する情報 ・休,補講情報 ・PC に関する情報
4.システムプログラミング
4-1 PC 教室の利用有無に関するプログラミング
PC 教室の利用有無を表す「タイムバー」のプログラミングを行った.
4-2 休講・補講案内に関するプログラミング
学部事務室・宇佐氏から提供してもらった学内休・補講案内システムのプログラムおよび表示の際に
使われている休・補講日程のテキストデータをもとにプログラミングを行った.
4-3 稼働台数の表示
教室内全 PC に対して ping コマンドを発行して稼働台数を調べ,その結果を変数に代入するプログラ
ムを作成し,代入された変数を HTML に出力する処理を行った.
4-4 研究に使用したツール
・ActivePerl ・HTTPD
3
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
5.プログラミングの一例
5-1 PC 教室の利用有無に関するプログラミング
#_F_=first で前期;S=second で後期
if(3<$mon && $mon<8){
open(LIST,"C:/PC_Use/data/schedule_501_F.txt");
}
elsif($mon==8 || $mon==9 || $mon==2 || $mon==3){
open(LIST,"C:/PC_Use/data/schedule_blank.txt");
}
else{
open(LIST,"C:/PC_Use/data/schedule_501_S.txt");
}
@program=<LIST>;
close(LIST);
図-1 講義日程読み込み
# 1 限目のデータの読み込み--if($a1 == 1){
$a501iro1 = "#294995";
}
elsif($a1==2){
$a501iro1 = "#fc293d";
}
else{
$a501iro1="#fffff3";
}
else{
#各時限に判定値を代入
#a1~a5=1 限~5 限
$a1=$program[2];
$a2=$program[7];
$a3=$program[12];
$a4=$program[17];
$a5=$program[22];
}
図-2 日程を変数に代入
<table width="300" height="10" bgcolor="#000000"
border="0.5" align="left">
<tr border="0.2" width="1000"
height="10" frame="border"bordercolor="#000000"
bgcolor="#000000"valign="center">
<th width="60" height="10" bgcolor="$a501iro1"></th>
<th width="60" height="10" bgcolor="$a501iro2"></th>
<th width="60" height="10" bgcolor="$a501iro3"></th>
<th width="60" height="10" bgcolor="$a501iro4"></th>
<th width="60" height="10" bgcolor="$a501iro5"></th>
</tr>
</table>
図-4 HTML 形式で出力
図-3 タイムバーの色の判定
5-2 動的表示部分のプログラミング
プログラミングにより,下図のようなシステムの動的な表示部分を以下の図のように実現した.
図-5 PC 教室状況リアルタイム
図-6 日の PC 室利用状況
#---[ 501 ]------------------------------------------------@host_array = map("172.16.251.$_",101..154) ;
$all=0 ; $on=0 ; $off=0 ;
$p = Net::Ping->new("icmp") ;
foreach $host (@host_array) { $all++ ;
unless ($p->ping($host, $timeout)) {
$off++ ;
}
else {
$on++ ;
}
# sleep(0.1) ;
}
$p->close() ;
$all_501=$all ; $on_501=$on ; $off_501=$off ;
図-8 PC の稼働台数調査
図-7 休・補講情報表示
6.結論と今後の課題
6-1 結論
既存のシステムに関する調査を行った上で,PC 利用情報提示システムを Web ベースで実現する方法
について検討した.システムの静的表示部分に関しては,インターフェース案の画像をそのまま貼りこ
み,動的表示部分に関しては4.で論じた Perl を用いてプログラムを開発し,システムの実装を行った.
その結果,機能面に若干の課題も残したが,図-5~8 に示すように,所期の PC 利用情報提示システム
の開発が行えた.
6-2 今後の課題
・PC の稼働台数の調査に要する時間を短縮すること.
・講義日程等の変更や不規則な利用に弾力的に対応すること.
4
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
風呂の歴史とこれから求められる理想の風呂 [作品].[口頭]
木村研究室
045035 平林 尚祥
1.研究の目的
私は「風呂の歴史とこれから求められる理想の風呂」というテーマで研究を行いました。私は TOTO
メンテナンスという会社に就職予定で、水周りの設備をこれから扱っていくため、もっと深く水周り
の設備について知りたいと考えたのでこのテーマにしました。ターゲットをお年寄に設定してバリア
フリーな作りのバスルームを根本とし、若い世代にも受け入れられやすいようにユニバーサルデザイ
ンの観点で幅広い世代が心地よく入浴できるバスルームをデザインすることが最終的な目標です。お
年寄りと若い世代両方に受け入れられるバスルームであれば 2 世代同居の家族などにとても便利だと
私は考えています。また現代の風呂を調べるだけでなく、風呂の成り立ちとその進化の過程を調べる
ことで日本人が風呂に何を求めてきたかを知り、今後の進化を予想しました。
2.研究の方法
まず風呂の成り立ちと進化の過程を調べるために資料収集から始めました。資料は風呂に関する書物
やインターネットを活用しています。それから最新のバスルームの設備を調べるために各メーカーの
ショールームやモデルルームを見学して写真や情報を収集しました。
風呂の成り立ちから進化の過程、
そして現代のバスルームの設備を調べました。そこで今のバスルームに何が足りないのか、どうした
らより良いバスルームになるのかを自分なりに考察し、理想のバスルームとはどのようなものかを論
文にまとめ、図面とモデルの作成をすることにしました。
3.研究成果
3-1 風呂の歴史
風呂の成り立ちと進化の過程を調べて分かったことは、日本人が風呂に入るという習慣を身につけだ
したのは江戸時代頃からで、都会では銭湯が流行っていたが、農村などの地域ではまだ風呂に入るとい
う習慣があまり浸透していなかった。しかし明治に銭湯の建設ラッシュが起り庶民も銭湯に入るように
なった。
しかし風呂はなかなか西洋化せずに五右衛門風呂のような風呂を使っていた時代が長かったが、
昭和になってからは西洋の文化の影響などで、浴室にタイル張りが設けられるようになった。19 世紀中
頃からアメリカからアパートメントハウスの住宅様式が入ってきて風呂つきの家が定着してきたことな
どです。
五右衛門風呂(長州風呂とも呼ばれていた。
)
3-2 最新の風呂の設備
現代の最新のバスルームには体を洗うため以外の設備も充実しています。換気乾燥機が付いていたり
酸素欲ができるものもあり、
タカラではバスルーム自体を耐震設計にするといった提案をしています。
現代のバスルームでは体を洗う以外に、安全性やリラックスできる機能などが求められている傾向が
あるようです。
5
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
*画像は TOTO ホームページより
3-3 モデルルーム、ショールーム見学によって得られた成果
大きな窓があり開放的な雰囲気のバスルームが多く見られた。やはりこれはバスルームに安らぎやリ
ラックス効果などの機能が求められている傾向だと感じた。テレビが設置されているバスルームもあ
りバスルームは体を洗うためだけの空間ではなくなってきていると感じた。また半身浴が流行ってい
るため半身浴ができるように段差のついた浴槽がほとんどでした。
↑現代のバスルーム(半身浴ができるように段がついている。
)
またユニバーサルデザインの観点各メーカーを比較すると、各メーカーごとに手すりの形状や床の特
性などが違い、各メーカーの特徴を比較してどのような点が優れているかを比べてみました。
↑手すりの形状がメーカーによって違い、使い心地も違った。
4 終わりに
たしかに現在どこのメーカーも手すりを設置したり、床や浴槽の高さを低くしたりと、ユニバーサル
デザインに力をいれているように感じました。しかし段差などもあり、小さな子供や高齢者は使いに
くいのではないかと感じるバスルームも多く見られました。快適な設備と子供や高齢者が安心して入
れるお風呂というのが、今後の課題ではないかと私は考えました。その両立を目指して、各メーカー
の良いところは取り入れた自分なりの理想のバスルームをデザインしました。図面は Solidworks で
作成しました。その図面を元に 5 分の 1 スケールのモデルを作成しました。ユニバーサルデザインの
観点でデザインしたのでなるべく段差をなくしたバスルームにしました。こだわったのは手すりの形
状と設置した場所です。邪魔にならず、必要なところにはつけるようにデザインしました。しかし自
分でデザインをして気づいたことは、やはり誰にでも万能なバスルームを作るというのは困難だとい
うことでした。手すり一つにしても使う人によって必要な高さや位置が異なるため、本当に使う人に
フィットするものにするにはオーダーメイドが理想なおのだと感じました。しかしコストが掛かるた
め、現実的ではないためユニバーサルデザインは必要なのだと私は考えています。いかに既製品でよ
り多くの人に合わせたものを作るかがユニバーサルデザインの永遠のテーマだと考えています。
6
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
男性公衆トイレの清潔について [論文].[口頭]
木村研究室
045037 朴 日龍
1.研究の目的
大学 3 年の授業でトイレの研究・調査を行った。いろいろな場所を調査した。建物によって、場所に
よって設備と形がいろいろであった。中には障害者向けのトイレもあるし、まだ設置されてないのもあ
った。そのなかで私がもっとも関心を持っているのは公衆男性トイレだ。なぜなら人が多く集まる男性
公衆トイレの問題点は飛び散りだと思う。今回これの解決法を卒業テーマとして論じたいと思う。主に
地方公共団体が、街頭や公園などに設置・管理する場合が多いが、国の外郭団体が設置する国立公園内
の公衆便所や、商店会など民間が設置管理するものもある。特に通常の公園に設置されたものは、担当
の清掃員が頻繁に立ち回ることが困難であるためか、あまり衛生的ではなく、建物もきれいとは言い難
いことも多いが、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや道の駅の休憩施設、鉄道駅、観光地
の便所など、よく管理された便所は衛生的であるし、建物の外観などに工夫を凝らしたものもある。特
に男性公衆トイレは飛び散りが激しくて汚いところもあるが、よく管理された駅やパチンコ店などは衛
生的である。飛び散りの発生原因は小便器の使い方にあると思う。トイレに入って小便器に立ち向かう
瞬間、飛び散りがあったら人はそれを避けて小便しようとする。次から次へそういう現状が続くとトイ
レは汚くなる一方に違いない。公衆トイレであっても衛生的に使うべきだが、上手く行かない。一人ひ
とりの使い方(行動)によってトイレは一瞬で変わってしまう。そういう飛び散りを防ぐためには担当
の清掃員が頻繁に立ち回われば良いが、少し街から離れ人が少ない公園などの場所を清掃に立ち回るに
は困難であると思う。もう一つの原因は担当の者がいない公衆トイレでは便器の破損が遭いついて起き
ている。もりろん、そういう場所にはカメラの設置などの設備が整ってないと思われる。また、手洗い
の水が出しっぱなしにしている現状も起きている。それらを防ぐためには新たな設備と管理が必要では
ないかと思っている。
2.研究の流れ
男子便所の場合、利用効率向上のために並列に小便器が設置してある。場所によって異なるが飛び散
りを防ぐために小便器の前に様々な工夫がしてある。すこしでも飛び散りを防ぐためなのかも知れない
が小便器の前に立ち場所の足元の画が描いてあったり、より一歩前へと書いてあったり、色を付けたり
してある。あまり役に立たなかったかも知れないが、それを書いた人の気持ちはよく分かる。特に気に
なるのは尿の臭いだ。いくら清掃しても中に臭いは抜けず残ったままだ。そこから抜け出すためかも知
れないが中に香水や消臭剤を噴いたり、花瓶を置いてあるところもある。エアコンくらい付いてあれば
何とかなりそうな気もするがそんなに街から離れた場所に、人も少ない場所に付けて置く訳にはいかな
い。
消臭剤を使うのも良い対策かも知れないが、
時間が経つと臭いと匂いが混ぜられて変な臭いがする。
一番いい方法は換気することだが残念ながら窓が付いていない。あるところは窓が付いているが付け方
が悪いせいか、小便する時見られてしまう可能性もありそうだ。それは本当にわるいか?それとも別の
役割の為にそうしたのか?付けた本人に聞かないと分からない。ある場所の便所は清掃したか、してな
いかが分からない。もしかしてそこには担当の者がいないかも知らないし、忙しくて清掃することを忘
れたかも知らない。先ほどの窓が付いてない便所は特に担当の清掃員の手が必要だと思う。清掃員も忙
しいかも知らないから出来るだけ掃除を簡単に、楽に、きれいに済ませる方法を考えなければならない
と思っている。そのためには新たな対策を提案するともに子供から始め、老人に至るまでさまざまな機
能を持つ、誰でも利用できる公衆トイレを作りたいと思っている。
3.研究の方法
調査で撮った写真や資料に基づいて新しいトイレを提案する。今回のテーマの一番大事なところは清
潔さを主に考え、デザインしょうと思っている。今まで調べたところの良い例と悪い例を参考にしなが
ら、空間に置けるような男子トイレを創造したいと思っている。文章だけで上手く説明し難い為、三次
元 CAD (Solidworks)を利用して立体図を描き、それに対するモデルを作ろうと考えている。
7
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
4.研究の結論
研究・調査の中で次のような成果を得た。様々な困難が起きているため、先ず一つ一つずつ分析しな
がら対策を行う方が良いと思っている。
(1)手洗いの水が出しっぱなしになっている場合
自動水栓を備え、無駄な水使いを防ぐ。どんなに離れていても担当者は必要であり担当者は 1 日に
少なくとも 2 回以上様子を看ること。
(2)便器の破損の場合
ガメラの設置が必要であると思われる。
(3)小便する時見られてしまう場合
ガラスの大きさに合わせシャッターを付けるか、目隠しを使って貼ることを提案したい。
(4)窓が付いていない場合
窓を付けられそうであれば付けるのを提案したい。
それに従い後は清掃員の為に便所内をきれいに簡単に楽に掃除する方法を提案する。これを次に(小
便器)飛び散りの問題点と一緒に詳しく説明しようと思う。
(5)飛び散りの発生の場合
本には小便する時、小便器との距離は 30cm 以内が一番良いと書かれてある。しかし人々はトイレ
のマナーを守ってくれない。清潔さを保つためには我々(デザイナー)がその人達を守らせるしかな
いと思っている。そしたら無理やり 30cm 以内で小便させるしかない。個人的な考え方かも知らない
が 50cm 以外で小便する人は先ずいないと思う。小便する基本の距離を 30cm とする。つまり小便器か
ら足元の間、
(空間、スペース)を 30cm に決めで置く。
30cm 以外で小便させないために、小便器から 30cm のスペースを置き、すぐのところで幅 20cm ほど
ある障害物を作っておく。つまり小便器からの距離(30cm)+障害物の幅(20cm)=50cm となる。50cm か
ら小便するにはやや難しいと思う。
障害物があるにもかかわらず障害物の前から小便しようとする人が居るかも知れない。そのために
は障害物にも工夫しなければならない。障害物が設置されるとは言いけっして人に事故を起こせる危
険性を持ってはいけない。子供や年寄りの人が嫌われる高い段差と転倒する可能性がある滑りやすい
物を使用してはいけない。そういう人を対象として障害物をつくる。それではここで障害物の特状に
ついて説明する。
① 幅が 20cm で床面にすこし凹んでいる形をしている。
② 床面が凹んでいるとその上に立ちにくい。小便するには前までに進まなければならない。
③ 床面の凹みがあまり深いと転倒しやすいため、深さは 30mm~50mm にする。
④ 人が同時に並んで小便するとき、隣の人の尿が自分の足元に落ちる可能性もある。それを防ぐため
に小便器と小便器の間に、高さ 50cm くらいの I 型のような板を設置する。
⑤ 板の高さを 50cm にしたのは隣同士でお互いに監視して欲しいという意味が含まれている。
⑥ 最後に材料の選び方だが、軟らかくて弾力性があるのを選ぶ。
続いて簡単に掃除できる方法を提案する。
1)並列に並んでいる小便器のカーバを付けて垂直線になるようにする。
2)どこから見ても雰囲気が変わったトイレに見えるだろう。初めて見るトイレかも知れないが決して
簡単なトイレではない。
5.おわりに
普段のトイレの小便器は壁に直接付けられ掃除するときは一個一個拭き取らないといけない。そう
すると時間もかかるし角の清掃も大変だと思う。特に角には飛び散りが発生した場合は汚れやすくな
ると思う。続いて楽に簡単に清掃を済ませる方法を提案する。先ず壁に小便器を取り付ける形を作る。
小便器が壁とほぼ垂直線に並ぶようになる。そうするとともに清掃の時、一拭きで楽に掃除すること
が出来し、よりもっときれいになるかも知れない。ただし一つの問題点がある。もし飛び散りが床面
に落ちた場合、尿が入り込む可能性もある。万が一入り込んだ場合は中で臭くなり掃除もなかなか難
しいと思う。それでは入り込むのを防ぐには次の方法を提案する。床面に厚さが 5mm ほどあるゴムを
敷いて小便器の重量を利用して透き間を埋める。デッサンが出来るまでもう少したが素晴らしい作品
を作り出すためには少しずつ進むしかない。
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
「地球の未来をまもる環境にやさしい低公害車」 [論文].[口頭]
木村研究室
045041 守中 正章
1. はじめに
福岡県は2008年度、家庭用燃料の4割強を水素エネルギーで賄う100~200世帯規模の「水
素タウン」づくりを県内の住宅地で進めるほか、福岡、北九州市に水素供給施設を設け両市間の公道で
燃料電池自動車の走行試験を行う「水素ハイウェー」計画に民間企業と協力して乗り出すという記事が
2008年1月3日の西日本新聞の朝刊に掲載されていた。
「21世紀は環境の世紀」として世界各地で
様々な分野で環境をテーマにいろいろな取り組みが行われている。地球温暖化による予想もできなかっ
た事態が地球規模で次々と発生し、その大きな要因が二酸化炭素を中心とする温室効果ガスにあると、
世界中がその削減に乗り出した。その代表的な例として、温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書
がある。私が住んでいる苅田町には日産自動車株式会社九州工場、トヨタ自動車九州株式会社苅田工場
という二つの大きな自動車工場がある日本では珍しい自動車の町であること、また、麻生福岡県知事は
じめ北部九州の多くの政財界人が2008年は北部九州自動車150万台生産拠点都市を目指している
ことなど、自動車は私にとって身近な存在である。しかも、幸いなことに、2007年末には東京のみ
ならず福岡でもモーターショーが開催され、未来の車と称される数々の車を実際に目にし、話を聞く機
会も頂いた。そのうえ、現代では、自動車は私たちの暮らしや社会、経済活動に欠かせないものであり、
自動車のない社会など考えられないという時代になっている。しかし、その一方で、自動車社会の発展
は私たちの環境に深刻な問題をもたらしてきた。そこで、自動車社会を生きる私たちがもっと環境に配
慮し、人と自動車とがどのように共存していかなければならないかを考え、環境への負荷が小さい自動
車、つまり低公害車を普及させることが必要だと思う。そういう訳で、私は自動車を題材として環境へ
の取り組みについて調べてみようと思う。
2. 研究の方法
自動車が誕生して自動車社会が始まってから今日まで、自動車が環境にどのように深刻な影響をあた
えてきたか、またその原因は何なのか、そしてこのままいけばどうなるのかを「地球の未来をまもる環
境にやさしい低公害車」というテーマに沿って、インターネットでの検索、各新聞の記事収集、図書館
での資料調べ、トヨタや日産を始めとする自動車販売会社での調査、福岡モーターショー見学等を通し
て低公害車の歴史や種類と特徴、効果と欠点など低公害車の現状を調べる。
3.低公害車に関する調査・研究
3‐1 自動車による環境問題
自動車による環境問題としては、環境汚染問題と地球温暖化問題という2つの大きな問題がある。自
動車から排出される窒素酸化物や粒子状物質による大気汚染はいまだに深刻であり、特にディーゼル車
から排出される粒子状物質については呼吸器疾患や発がん性のおそれがあり、健康への悪影響が懸念さ
れている。したがって、窒素酸化物と粒子状物質の二つの物質に関して環境基準が定められ、環境基準
以下の濃度にすることが求められている。また、温室効果ガスも地球規模で増加しており、生態系や人
に悪影響を及ぼし、各国で削減目標に向けて取り組んでおり、日本も平成14年6月に「京都議定書」
を推進し、温室効果ガス削減を約束した。
3‐2 低公害車について
低公害車とは大気汚染物質の排出が少なく、環境への負荷が少ない自動車のことで、現在まだ多く使
われているガソリン自動車やディーゼル自動車に比べ窒素酸化物や二酸化炭素のなどの排出量が少ない
自動車である。そして、環境汚染(地球温暖化、地域大気汚染など)の防止の観点から世界各国で技術開
発、普及が進められている。新エネルギー、新エンジンの技術開発により、窒素酸化物、粒子状物質、
二酸化炭素が併せて低減できるものが一般的である。走行時の環境負担の低い自動車としては、電気自
動車、水素自動車、燃料電池車が排気がクリーンでエネルギー効率がよい。しかし、製造コストが高い、
充電時間が長い、常温で気体である水素の充填量がふやせない、水素充填のためのインフラ整備が財政
負担となるなど、多くの問題があり、いまだ開発途上にある。一方、エンジンにバッテリーとモーター
を組み合わせたハイブリッドカーの場合、1997年にトヨタ・プリウスが市販され多くのハイブリッ
9
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ドカーが公道を走るようになった。エネルギー源に化石燃料を用いる場合と、従来のガソリンスタンド
での給油のみで、距離の制限なしに走行が続けられるため、新たなインフラ整備を行う必要がない点も
普及の後押しとなった。さらに、夜間電力などの利用で、さらなる有害物質や CO2 の排出と、運転コス
トの低減が期待できる、家庭用電源による充電機能を追加した「プラグインハイブリッド」の追加も複
数の自動車メーカーから発表されている。2001年に定められた「低公害車開発普及アクションプラ
ン」では実用にある低公害車を2010年までのできるだけ早い時期に1000万台以上を普及させる
ことにしている。
3-3 低公害車の種類
3-3-1 ハイブリッドカー
ハイブリッドカーとは、作動原理が異なる2つ以上の動力源をもち、状況に応じて単独、あるいは複
数と、動力源を変えて走行する自動車のことで、自動車のエネルギー効率は総合効率でみると、電気自
動車や燃料電池自動車と同程度であり、環境負荷の低い実用車として注目されている。1997年のト
ヨタ自動車のプリウスの発売が契機となって一般への普及が始まっている。ハイブリッドシステムは発
電と駆動の方法により、
「シリーズ方式」
、
「パラレル方式」
、
「スプリット方式」に大別できる。
3-3-2 電気自動車
電気自動車とは、電力により推進する自動車で、狭義には、2次電池(まれに1次電池)を電力源とし、
外部からの充電または電池交換により走行用の電力を得る自動車である。広義には、このほか、ソーラ
ーカー、燃料電池車、ハイブリッドカー、架線から電力を供給されるトロリーバスなども含まれる。
3-3-3 天然ガス自動車
天然ガス自動車とは、天然ガスを燃料とするエンジンを搭載した自動車で、CNG 自動車・NGV とも呼ば
れる。
ディーゼルエンジンを搭載した自動車より排気ガス中の有害物質が大幅に少ないということから、
環境対策として自動車燃料に使われ広まりつつある。
3-3-4 LPG 車
LPG 車とは CO2 削減効果が高く、環境性能に優れ、低コストで実用的な車であり、政府の地球温暖化
防止のための京都議定書目標達成計画の中に、クリーンエネルギー自動車として LPG 車の普及推進が打
ち出された。
3-3-5 メタノール車
メタノール車とは、メタノールを燃料にして走る自動車で、従来のディーゼル車と比べると窒素酸化
物、粒子状物質などの排出が少ない。低公害車の1つとして、普及政策が展開されている。
3-3-6 ソーラーカー(太陽電池自動車)
ソーラーカーとは太陽のエネルギーで走るクルマで、太陽の光をクルマに貼った太陽電池により電気
に変え、その電気でモーターを回し走らせる。
3-3-7 水素自動車
水素自動車とは、水素をエネルギーとする自動車のことである。既存のガソリンエンジンやディーゼ
ルエンジンを改良して直接燃焼を行うものと、燃料電池により発電するものに大別することができる。
地球温暖化問題から、脱化石燃料が求められている現在、有力な技術として脚光を浴びている。
3-3-8 燃料電池自動車
燃料電池自動車はクリーンで省エネルギーな環境にやさしいクリーンエネルギー自動車で、今はまだ
価格が高いが、20年から30年後には現在普及しているガソリン車などに代わる主流の車になってい
るかもしれない。
3-3-9 フレックス燃料車(エタノール車)
フレックス燃料車とは、
ガソリンとエタノールと、
どちらでも燃料として利用できる自動車のことで、
ガソリンだけでも、エタノールだけでも、そして両者を混ぜて給油したとしても走行可能なエンジンを
持っている。
4、おわりに
私たちは皆環境を守る大切さを知っているが、いまだに車を選ぶ際にはスタイルやパワーに目を奪わ
れがちだ。どれだけの人が環境のことを考えて車を選んでいるだろうか。私たちは地球温暖化問題をも
っと一人一人の問題と認識し、取り組んでいく必要がある。
10
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
トイレにユニバーサルデザインがどんなくらい配慮されているのでしょうか?
「論文」,「口頭」
木村研究室
045401 崔雪梅
(1) 「研究の目的」
地球上には、いろいろな人たちが暮らしています。
男の人、女の人、子ども、お年寄り……。
こまかく言えば、からだの大きな人、小さな人、力の強い人、弱い人、手の小さな人、大きな人、
右利きの人、左利きの人などなど……ひとりひとりが、まったくちがう独自の個性を持っています。
使う人の年齢、性別、能力、経験などの違いに関係なく、同じように使いこなすことができる製品を
作っていこうということです。しかも見た目にも美しい、親しみあるデザインに仕上げる。これが「ユ
ニバーサルデザイン」です。「少しでも不安、不満、不都合があれば、できるかぎり改良する」今や、
これが「ユニバーサルデザイン」に準じた理念になりました。
最近、新聞などでユニバーサルデザインということばを見かけることが多くなりました。ユニバー
サルデザインとは、「特別な改造や特殊な設計をせずに、すべての人が可能なかぎり最大限利用でき
るように配慮された、製品や環境のデザイン」であるといわれています。今後、人口に大きなウェイ
トを占める高齢者層の出現は、社会としての対応策を求め、消費者として市場を大きく変えようとし
ています。その対策として、「さまざまな人たちの生活環境を配慮していく考え方」が現在大きな流
れとなって、「ユニバーサルデザイン」の考え方が注目されています。トイレはみんな毎日使います
から日常生活で重要な一部分です。だからみんな望んでいるユニバーサルデザイが配慮されたトイレ
を考察し提案します。
「ユニバーサルデザイントイレ」とは、全ての人々に利用しやすくデザインされたトイレを意味して
います。呼び方が違いますが、似たようなトイレとして、誰でもトイレ、多目的トイレ、身体障害者
用トイレ、車椅子マークがついたトイレなどがあります。ユニバーサルデザイン(U.D)とは 改善また
は特殊化された設計なしで、最大限可能な限り、全ての人々に利用しやすい環境と製品のデザインで
す。トイレルームは建物全体の中で、占めるスペースの割合が小さいにもかかわらず、他のどんなスペー
スと比較しても、設備・機器は多岐にわたっています。そして、それらの材質まで含めると、その数はは
かりしれません。
(2) 「研究の方法」
インタネット、新聞、本、テレビ、利用して主に高齢者を対象調査します。現在、日本国を含め、先
進諸国では急速に高齢化が進んでいます。特に日本国は、世界に例を見ない速さで進んでおり、すでに
「高齢社会」といわれています。駅などの公共施設や街づくりなどでは、
「バリアフリー」の視点からト
イレの設置など高齢者に配慮した取り組みが盛んになっているかを実に調査するのです。私が小倉駅か
ら苅田駅まで駅トイレを調査しました。ペーパーの取り付けとカットができるができないが、手すりが
あるがないが、段差があるがないが、おしりを洗える設備があるがないかなどです。調査表を作成して
記入するし、写真を撮って詳しい説明します。また、トイレ場所、トイレ表しが見にくいがやすいが、
長さとか全部計ってました。 外出時にトイレを利用するシチュエーションは様々であります。大きな
荷物を抱えている場合もあれば、杖や傘を持ち込む場合もあろう。赤ちゃんといっしょに利用するケー
スも想定される。このような様々な利用形態に対応するためには、トイレの設備・設計全体にきめ細か
な工夫が求められます。具体的には、収納式のベビシートを普通のブース内に設置し、杖や傘を立てる
ためのフックの取り付け、男子小便器前に荷物棚を設ける、子どもの利用に配慮して床置き式の小便器
にする、車いすや子どもの背丈で利用できる低い洗面台の設置などであります。その他、小便器と床の
段差をなくす(適切な幅の段差がある方が床は汚れにくいという研究もあるが)
、視覚障害者のために入
り口を知らせるチャイム、レバーを押しにくい人のための自動洗浄装置や手洗いの自動水栓など、最近
のトイレにはきめ細かい配慮がなされるようになってきました。
従来、
「身障者トイレ」
「車いすトイレ」
「車いす対応トイレ」などと言われていた独立型の広めのトイ
レを、身体障害者や車いす使用者専用のイメージをなくし、誰もが気兼ねなく様々な目的で利用できる
11
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ようにするために、最近は多目的トイレといわれるようになってきました。車いすの方への配慮はもち
ろん、オストメイト(人工肛門・人工膀胱造設者)の方へのための汚物流し、子供連れの方へのベビーチ
ェアや、子供や重度障害者の方のおむつ替えベッドなどを設置している多目的トイレです。
(3)「 研究の成果」
一般に、ユニバーサルデザインということばから、誰にでも使いやすい商品をデザインする「モノづ
くり」を想像しがちです。しかし、このことばには、年令や性別、身体機能などに関わらず、すべての
人が可能なかぎり最大限利用できるような、「暮らしやすい街づくり」、「モノづくり」、「環境づく
り」や「サービス」などの設計・開発とそれを実際に段階的、発展的に目指していく考え方や活動も含
まれています。最近、ユニバーサルデザインの視点から開発された商品も、多くなっています。日本が
議長国として、ユニバーサルデザインなどを普及させる国際規格化を推進しています。
小倉駅はトイレ中に手すりがありますが小波瀬駅とか小さい駅は手すりもないでした。手すりがない
ですから高齢者は本当に不便でした。片手でペーパーの取り付けとカットができないです。段差がある
ますから事故が起きない配慮がされていないです。特に小倉駅改札の近くトイレは段差がありますから
車いす人は絶対にトイレ中に入るはできないでした。苅田駅とか小波瀬駅トイレは段差画ないですが入
り口が狭いですから車椅子使用者は使うのは不可能でした。身体に有害なものが無いことはもちろんの
こと、生理的な不快感がなく、温度や明るさなど身体への負担が少ないことです。快適におしりを洗え
る設備がないです。使用者の変化に対応、簡単な操作、安全、快適などが配慮されてないです。
駅に一番必要なものは美しく快適なトイレ設備だと思いますが、小倉駅から苅田駅トイレは綺麗ない
です。これは使用側と管理側との努力で解決出来ることだと思います。「ご意見ひろば」を拝見しており
ますと使用側のマナーに対する書き込みが主流で同感ですが、
管理側にも多少の責任があると思います。
西小倉駅はペーパーがないときが多いです。
女子トイレには落書きなどはありませんが、問題はトイレを利用した後の汚らしいです。こぼしたん
なら、拭いて欲しいと思います・・・。また、団体客など来ると大変混むので女性用のトイレを増やして欲
しいです。特に小倉駅トイレです。小倉駅はお客様数が九州で多い駅一つですからです。そして
小倉駅トイレはすごく消毒くさいです。あのプールの塩素のような臭いです。消毒くさいんで、うんこ
とか尿のにおいはないんだけど、辛気臭いトイレでした。
(4) 「結論と今後の課題」
私が駅トイレを調査した結果皆満足するユニバーサルトイレがないでした。だからみんな望んでいる
ユニバーサルデザイが配慮されたトイレを提案します。
1、 トイレの位置がわかりやすい
2、 トイレに段差がなく、入りやすい
3、 多目的トイレが整備されている
4、 トイレは十分な広さを有している
5、 オムツ替え用ベッドが整備されている
6、 荷物置き棚、傘掛けが整備されている
7、 維持管理が行き届いている
8、 子供用床置きトイレが整備されている
9、 安全、安心して使用できる
10、 便器の数 小倉駅は男性用4個(小)・3個(大)、女性用和式4個と洋式4個・多目的トイ
レ1個、小さい駅は男性用1個(小)・1個(大)、女性用和式1個と洋式1個・多目的トイレ1
個
12
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
日本、中国のケータイ事情とデザイン&世界のケータイのデザイン [論文].[口頭]
木村研究室
045405 李 成鶴
1.序章
日本は、国内で消費する石油や天然ガスの99%以上を他国に頼っています。その一方で、地震や台
風などの自然災害が多く、
地理的にも恵まれていません。
しかし、
その日本が世界第2位の経済規模(GDP)
を誇っているのは、日本が人的資源を大切にし、また科学技術(特に機械、電気工学)に強いからです。
日本は技術立国なのです。これは、自動車でもカメラでもゲーム機器でも言えることです。ケータイも
そのひとつです。日本のケータイは世界で最も優れています。私は、日本のケータイ機能とデザインは
ノキアやモトローラやサムスンや LG に比べて、機能は使いやすいし、デザインはシンプルで、見た目や
触り心地のデザインだと思います。ところが、世界では日本のケータイがあまり売れておりません。 今
回は日本のケータイ事情と中国のケータイ(市場)事情、それとなぜ日本の優れたケータイと中国の国
産ケータイが世界で、売れない理由とデザインの関係を探りたいと思います。
2.研究の方法
公のデータ => 資料 => アンケート
まず、公のデータと資料を参考し、いま現在のケータイの事情と市場を調べて、デザインとの
関係を探りたいとおもいます。
3.具体的な成果
3-1世界に秀でた日本のケータイ機能 & 中国の組み立てケータイ
日本のケータイ、最新のものであれば、電子マネー、テレビ電話、テレビの視聴、リモコン機能、指
紋認証などができる機種ではないでしょうか。そもそも、ケータイを I-mode などのようにインターネッ
トに接続させたのも、画面をカラーにしたのも、本体を折りたためるようにしたのも、カメラを搭載さ
せたのも、GPS で位置情報を確認できるようにしたのも、最初は日本です。
中国国産ケータイとは、チップは米国で、ソフトウエアやIC(集積回路)の設計は欧州で、全体設計
は韓国で行い、中国では組み立てだけを行います。
どころが、
中国 Huawei のUSBのコネクタが内蔵され
たコンセプトフォン は特別な機能を持っています。
中
国の Huawei のコンセプトフォン。筺体の上部に、丸く
L字型の切り込みがはいっており、はずすとされてい
る。これをパソコンにつないで、パソコンからネット
につないだり、ケータイとパソコンのデータを同期化
したり、USBで充電をしたり、と様々な使い方をで
きる、という電話機です。
3-2中国の携帯市場は?毎月 500 万弱の純増を続ける中国市場
図1
2002 年 11 月末に 2 億を突破した中国の携帯電話市場の勢いが止まらない、毎月 500 万台にも及ぶ新規
加入があります。市場が急成長し、今まさに普及の段階を迎えたとの実感があります。2008 年の所持率
約 50%をもって、ケータイ市場は、ほぼ飽和状態を迎えると予測しています。 日本などに比べて所持率
は低いのですが、中国の人口の多さ、偏狭地域などの経済格差の関係から、 ほぼ予測通りの水準で市場
が成熟すると考えています。
中国のケータイ市場動向について
もはや、ケータイが必需品になっているのは日本や韓国だけではない。中国では、ビジネスマンはもち
ろん、学生の多くもファッション化したケータイに夢中だ。中国では今、街の中のいたるところに「手
机(ケータイ)
」の文字が氾濫している。今まさにブームを向かえ、ケータイ販売店では多くの人々で賑
わいを見せている。 北京や上海といった大都市では、比較的早くから富裕層のケータイブームが話題
となっていた。しかし、大都市以外の東部地域を中心とする経済水準の比較的高い地域でも、すでにケ
13
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ータイの利用レベルは予想をはるかに超える勢いで浸透している。中国の経済は未曾有の成長を続け、
とりわけベンチャーやグローバル企業など民間企業の躍進がめざましい。こうした企業のエグゼクティ
ブが成功の証として、真っ先に飛びついたのがケータイと外車の BMW だと言う。
中国で、急激にケータイの活用が進んでいる背景は?ご存知の通り、固定電話の通信インフラの整備が
遅れたことで、 PHS やケータイの利用に拍車がかかっていると思います。また情報通信の点では、パソ
コンがまだまだ高額です。国土の広い中国を飛び回るビジネスマンにとっては、ノート PC よりケータイ
の利用のほうが、安くて身近ですから普及が加速したのだと思います。もちろん、最近ではビジネスユ
ースだけでなく、
学生もケータイでインターネットサービスを利用し、
どんどん広がりを見せています。
3-3 世界で売れない日本のケータイ & 国内で売れない中国国産メーカー その訳とは?
日本メーカーのケータイが国内でしか売られていない証拠です。
なぜなら、世界の販売台数は中南米やアフリカ、中国、インドが牽引しているからです。2006 年世界の
ケータイ普及率は 40%、アフリカでも、すでに 20%超え、アフリカ大陸 9 億人 5 人の1人がケータイ
を持つことになります。
3-4世界とのケータイのデザインの意識の違い
日本と思われるレストランでの写真が1枚提示されていたが、
そこには全ての皿上に一品ずつ料理が残されていた。この写
真について Chipchase 氏は「これはデザインには直接の関係
は無いかもしれない。しかしなぜ人々はこのような行動をす
るのだろうか? その動機やライフスタイルを追求すること
が、結果としてプロダクトデザインに必要な要素を生み出す
のではないだろうか」と話し、消費者の行動が製品デザイン
の基礎につながるものであることを再説していた。
①素材と質感で個性を発揮
②色彩で個性を発揮
図2
③薄型でスモールで使いやすいデザイン
3-5日本と世界では通信構造がまったく異なっているからです。PDC 方式と C2、GSM 方式
3-6世界で売れる韓国の携帯電話 そのわけとは?
韓国が世界シェアを取れ、日本にできなかった理由は、グローバル戦略が成ってないからです。 まず
一般論として、日本は国内で満足してしまう傾向があります。国内で十分な利益を上げられるために、
日本メーカーは、戦略的に海外進出策を取らなかったのです。これは日本企業のグローバル性の問題で
す。
3-7ケータイのデザインとは?
デザインする上で非常に難しいテーマです。新商品を作る上で、既存製品にはない新しさをアピールす
るには外観を変更するのが 1 つのやり方です。しかし、同じデザインであれば、新しさを象徴するもの
としてデザインには頼れません。世の中の商品で、同じデザインを踏襲するというスタイルがあまり見
受けられないのは、そのためだと思います。
*【使いこなすこと──関係性をデザインする】
*【デザインをデザインする知恵】
*【良いデザインを決めるのは誰だ】
4.終章
私は、今後のケータイは自分にあったオリジナルデザインと様々な機能を持つ、個性的なケータイを
オーダーメートする時代が来ると思います。どこまで形を追い求めるか、という議論になりますが、具
体的な形状を出し合っての議論ではなく、方向性という面で議論はあります。変化を求める余り、最初
のデザインの良さがそぎ落とされることもありえますが、そこをいかにベストな解に持っていくかが大
事です。
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
日中生活文化の比較 [論文,口頭]
木村研究室
045406 陳玲
1.はじめに
私は日本と中国のベッドを研究しています。ベッドは人生の3分の一を過ごすほどに長い時間使うも
のです。ベッドは、各国ごとに歴史があります。特に中国です。中国は世界で最も古い国で、文化の伝
統が最も悠久な国家として、その長い歴史の過程の中で、家具文化はこの芸術の宝庫の中の重要な構成
部分として、芸術の方面の美学の規則とイメージ法則を体現している。その中はたくさん良い作品の物
集世代の語り継いだ優良な技術が厚い基礎技能を発揮することできた。
またベッドは大体その時代背景に合わせて、形をどんどん変えていくものなのです。それが、私の研
究対象になった。日本の昔の生活習慣が中国とほぼ同じ、地面に座って、その場で寝ます。しかし、日
本文化の契機ものの多くは中国大陸から入ってきたものが多い中で、畳は日本で生まれ育ち、延々と伝
えられてきました。畳に関する歴史は古く、古事記の中に「薦畳」「皮畳」「絹畳」などの言葉が記さ
れています。それは、身分によって畳の大きさ、緑の生地や、色などが決められていたようです。庶民
が使用できるようになったのは江戸時代中期以降です。
今日本での生活も益々欧米化が進む中、他の家具も西洋的なものへと変化させてきたが畳が現在でも
姿を消すことなく健在でいる。そのことをきっかけにして中国のベッドと日本の畳の歴史沿革と変遷を
述べたいと思っています。
2.研究の方法
ベッドの誕生:ベッドが生まれたのはいつごろか、ベッドの用途はどのようなものかを研究すること
です。
ベッドの変化:ベッドが一般の人々に浸透した背景と、ベッドのその当時の需要について研究するこ
とです。
ベッドの現在:ベッドが現在どのように変化したかを研究することです。
3.具体的な成果
中国のベッドの歴史は「中国家具史图説」「<中国歴代家具不断創新発展 古典家具の造型演変> 」
から参考してきました。またベッドの図はインターネットからダウンロードしてきました。また、年代
によってベッドの形の変化を紹介します。
そういう資料からは、中国のベッドは少なくとも 3000 年余りの歴史があります。
人々の生活様式は洞穴にねぐらを作って住んでいる大昔の時期に,その時の社会環境と人々の日常生
活の保証が得られないため、そのため物を飾り付けるという近代的な家具がありません。湿っぽくて寒
いことを免れるため、最も古い家具は席(=敷物)とう言うものです。それが寝台の始まりと言われて
います。
商、周の時代は 5 種類の席の下敷きの名称を定めました。それら:莞席、藻の席、劣った席、蒲席と
熊席。5 席を分けていました。その時代の家具は身分分けがなかった。
春秋戦国時代に漆の技術が盛んになり大部分の生活用具は漆器に代わった。
秦漢の時期なると敷物が座って使うだけであったが後に座ったり横になることができるようになった。
魏晋の時期にベッドは人の会文、また遊ぶ娯楽などを使用しています。
15
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
唐、五代は中国の家具の形式が変革する中で1つの大きな特色が見られる。それは座から高いの家具と
低い型の家具が共存するであった。しかる後「椅子に座る生活」は人々の日常生活の主要な習慣になっ
たことが分かってきました。
日本の畳の歴史は「畳の本」「たたみの雑学」を参考しました。これを、縄文時代から平成時代ま
での年代の流れによる畳年表を作ります。
畳 (たたみ)は日本民族の生活の知恵が生み出した固有のものであり、湿度が高く、天候の変化が激
しい日本の風土で、
「敷物」として育てられ、伝承されてきました。古事記などによると,畳は現在のよ
うな形ではなく,菅や獣の皮,布などを重ねた敷物のようなものだったと考えられています。平安時代
には畳はまだ高価で,すわる部分のみに敷いていたようですが,身分の高いひとほど高く広い畳に座っ
たと言われます。畳が身分を表すようになったわけです。畳の大きさが現在のように2:1になったの
は 11 世紀頃と見られていますが,畳そのものが庶民に普及し始めたのは 15 世紀前後で,徐々に床全体
に敷き詰められるようになり,やがて日本家屋に不可欠な部材となりました。
畳の歴史を振り返ってみると,奈良時代は聖武天皇のベットにワラ畳が敷かれるようになった。
平安時代は寝殿造りの邸宅内に置き畳が配置される--敷物としての畳の登場です。
鎌倉時代は武家屋敷の寝所に畳が敷き込まれるようになった。
室町時代は小さい部屋割りが行なわれ、畳の敷き詰めがほぼ定着する、
綿布団の普及により町家農村に
も畳の敷き詰めが広まった。
安土桃山時代は城郭の造営などにより畳屋町が形成されるようになった。
江戸時代は数奇屋造りの派生から、畳割りが建築の基準になり、畳の規格化が始まるようになった。
明治時代は平安時代より続いた身分による畳の差別は明治維新後、新政府によって畳の使用、縁の種類
等も自由になった。
大正時代は都市への人口集中による住宅需要の増大が畳をより大衆化になった。
現代は中高層マンション時代到来、畳の軽量化されるようになった。平成時代は畳縁もデザイン化さ
れ文様も多様化し新しい畳時代を迎えつつある。
畳が登場した奈良時代から現代まで、日本人の生活の歴史を足元から見つめてきた畳。風土や文化が
育んできた日本の美意識。和風流行の昨今、そんな日本の美意識に身を置いて、暮らしの演出を考えて
みるのも楽しいかもしれません。しかし最近,畳部屋のない住宅が増えていることは少し寂しいです。
4.終わりに
中国歴代のベッドと日本の畳を対照、比較によって、私達はその時代の生産する発展、生活習わし、思
想と感情と審美の情趣などを理解することができます。また、1つの家具の形態の発生、その時の社会
背景、経済、政治、文化と生活様式などと分けられないものです。各時代の科学技術と材料の技術の進
歩を研究して、家具の製作、材料を掌握して、技術の特徴など知識を得ることができます。更に深い段
階の中国のベッドと日本の畳の発展の脈絡を理解することができます。
16
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
着物普及計画 [論文 口頭]
張 研究室
045017 角杉 望
1 研究の目的
着物は、長い歴史の中で受けつがれ、育まれてきた世界に誇れる「日本の伝統文化」です。近年日本
では、洋服が一般化していますが、着物が愛され続けているのは「美しい」という簡単な理由だけでは
ありません。
着物は、日本の生活や文化に長年溶けこみ、日本人の体型や顔立ちによく映り、また、四季のある日
本の気候風土の象徴ともいえます。着物の本質を知ることで今までと違った着物が見えてくるのではな
いでしょうか。
また、着物は、私たちが普段着ている洋服に対することばとして、和服=着物として用いられること
が多く、
「着物」ということばは、国際語「kimono」として世界に通用します。その日本の伝統文化であ
る着物が、あまり普及せず、着物離れが進んでいるのが現状です。日本の誇れるすばらしい文化のひと
つであることは、疑う余地もありません。しかし、着物に対する現代人の感覚は、
「面倒くさい」といっ
た単純なこれらの言葉で簡潔に言い表されます。時代にそぐわない、古臭く面倒で機能的でない生活着
が、時と共に日々人々の暮らしから遠ざかってゆくことは、当然過ぎる事実です。
しかしながら、最近、着物のブームが到来したと言われています。着物ブームに伴い、若い女性向け
のアンティーク着物ショップが増え、着物のファッション雑誌も多く創刊されています。これも人々が
現在の洋服では飽き足りないものを感じているせいであるのでしょう。
そして、洋服世代の私たちが、好むように、着物の見せかたも変わっているようです。積極的に洋装
文化を取り入れ、和と洋の融合をはかっています。若い世代の入り口を広くし、興味や関心を持ち始め
た今、より多くの人が着物に触れる機会や場所が必要です。
私は、母がお茶を習っていたこともあり、母の娘時代の着物が今も残っています。私自身も津軽三味
線などの日本芸能を習っている関係で着物を着る機会がたくさんあります。着物に触れる機会が多いか
ら、私は着物に対し関心を持ち、普段着として楽しみたいと強く思うようになりました。
洋服文化の中で育った私たちにとって、単なるコスチュームプレイの一環になりつつある「着物」
、か
つての不合理な着物が、普段着として日常生活に根付くことはこのままでは難しいと思われます。
私の卒業論文では、着物の歴史を紐解き研究し、近年の着物事情を詳しく研究します。そして、少し
でも多くの人に着物の魅力を感じてもらい、以前のように生活着として、洋服と和服の選択肢をもてる
ように、また、着物が文化財としてだけではなく、私たちの身の回りで息づく衣であり続けるようにと、
願いをこめ提案させていただきます。
2 研究の方法
着物の歴史を様々な資料から研究し、まとめました。着物普及を目指すには歴史を知り、そこから新
たな発見のヒントを得るために歴史研究をします。また着物の種類や活用場面など呉服屋さんに教わり
ました。
現代の着物の現状を知るために、インターネットによる調査データやレポートを掲載する「レポセン」
を利用して着物に関する意識調査のデータを収集し、現状分析を行います。それを利用し、着物を普及
させるための提案をおこないます。また、最近の振袖雑誌やアンティーク着物雑誌などから、近年の着
物の流行を探ります。
3 研究成果
3-1 着物
着物の歴史をさかのぼると、縄文時代の貫頭衣にまで辿り着きます。飛鳥時代の唐文化の影響、平安
時代の鮮やかな十二単。日本の歴史のなかで、着物文化は私達と切り離すことができません。
現在の着物の原形「小袖」とは、
「小さい袖口をもった衣服」という意味です。貫頭衣に起源をもつ小
袖は、袖をもつようになった当初は筒袖であり、やがて小さな袂〔たもと〕を持つようになり、次第に
袂が大きくなって、室町時代頃ようやく現在の着物のような形になりました。
洋服社会に TPO があるように、着物にも TPO があります。そして、着物
17
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
この章では着物の歴史、各時代の着物や現在の着物の種類、などをまとめ、着物の基本知識について
書きました。
3-2 着物の現状
きものは日本の民族衣装・和の文化ですが、現代のライフスタイルに合わ
なくなってしまったため、残念ながら着物姿を目にすることが少ないのが現
状です。そのような時代の中、着物は新たな時代を迎えています。現在、私
たちの身の回りは少ないかもしれませんが、若い女性の間で、アンティーク
着物がブームとなっています。私が、着物の本を購入するため、本屋に立ち
寄ると若い女性がアンティーク着物の雑誌を手にしていました。そういった
光景を何度か目にし、着物ブームの到来を認識できました。
アンティーク着物とは昭和初期以前に作られた着物のことで、特に状態の
よいものを指します。大正ロマンや昭和モダンと呼ばれる花柄や幾何学模様、
アール・デコを意識したデザインなどが近年のレトロブームで再評価されて
います。アンティーク着物は日本人が日常的に着物を着ていた頃に製作され
ていたものです。手頃な価格と現代にはない珍しい柄で若い世代に人気があ
ります。
また、近年の着物文化は序所に洋装文化に近くなり、積極的に洋装のファ
ッションを取り入れています。左図のようティアラやストール、帽子、ネッ
図-1 洋装化着物
クレスなど洋服を着る際、用いるアイテムを着物に取り入れ洋装感覚に近づけ
ています。
他にも洋服ブランドとのコラボレーションによる振袖を提案する雑誌が多く発行されています。和服
と洋服の融合が近年の着物雑誌を見ると目立ちます。この章では、着物の現状や、近年の洋装化する着
物について研究しています。
3-3 提案
着物に関心を持っているけれど、なかなか着物を着る機会が少ない、または高いというイメージが定
着しています。この研究にあたって、色々な女性に着物の認識を伺いましたが、ほとんどの方が着物に
対し好感を抱いており、着たいという気持ちが強いことが分かりました。しかしながら、街中で着物姿
の女性は見かけません。その背景には、値段が高い、生活着ではない、など否定的な意見が多数見られ
ました。特に着付けができないという問題が現代の着物離れに、大きく関係しているようです。着物自
体には興味を示すけれど、着物を着るまでの過程に馴染みがないため、面倒くさいなど感じるのではな
いかと思います。
確かに洋服と比べると着るのは大変ですが、
以前はそれが日常着だったわけですから、
幼少期から着物に触れていれば、または慣れれば問題ないでしょう。
私は、着物離れに一番関係している着付けに着目しました。そして、手軽に着付け教室に通える環境
を整えるため、地域を利用することを考えました。着付けの出来る地域のお年寄りの方に子ども会など
を利用して、着物着付け教室を開催していただき、幼少期から着物と地域の方とのコミュニケーション
の場として有効活用することを提案しました。
他にも、この章では日常生活の活動において、用途に応じた着物の活用を提案します。
4 おわりに
現代はめまぐるしく流行が変化しています。流行に乗り遅れないようにと感じる、と同時に、流行と
いう現象が軽薄なもののように思えることがあります。着物ブームの背景に、無意識にそういったこと
への密かな反抗を、今の時代に珍しいものを取り入れることで流行に流されない自分を確立しているよ
うに思えます。しかし、こういった個性の表現として着物を着ることも、アンティーク着物ブームと呼
ばれるように、一つの流行となってしまうのではないだろうか。これに飽きてしまうと、また着物は着
られなくなってしまうのではないだろうか。と着物ブームに安堵する暇もありません。
現在、着物が注目を集め、関心が高まった中で本来の着物の魅力を感じ取り、着物の本質に共感し、
それを愛する人だけが、着物ブームが終わった後にも、着物を着続けることになるのでしょう。
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
グラフィックデザインの日中比較 〔論文 口頭〕
張 研究室
045404 羅 文豪
1.はじめに
グラフィックデザインは私たちの身の回りに最も身近に存在するアートである。
至るところにあって、
いろいろな物事を説明し、外見を飾り、さらに私たちが読むあらゆる種類の文字、道路標識、広告など
に目に付くということで、私たちはグラフィックデザインと関わっている。だからこそ、グラフィック
デザインは現代社会においてとても重要であり、不可欠なものである。
日本のグラフィックデザインは本世紀 50 年代から始まり、日々進展する新しい生活とその根底に流
れる日本の伝統的な感性に融合され、現在、世界のトップレベルへ走りこんでいる。その一方、中国は
80 年代から改革開放を実施し、グラフィックデザインが 20 年間を通じて、迅速に発展してきたが、日
本に比べると、文化背景による大きいな差異が存在するだけではなく、時代の流れにかなり遅れている
というような不足点がある。
より先進的な日本のグラフィックデザインの手法やデザインの技術を中国のグラフィックデザインに
活かせ、さらに日本のグラフィックデザインを中国に普及させるために、今回グラフィックデザインの
日中比較というテーマで論じたい。
2.研究の方法
今回の卒業研究の方法について述べると、二つの研究方法を使った。一つ目の研究方法は文献研究で
ある。つまり、文献を通じて、グラフィックデザインに関するいろいろな知識(グラフィックデザイン
の概念、グラフィックデザインの物理構成、感性構成、グラフィックデザインの特殊技法など)を研究
しながら、比較研究のためのデータ収集も行う。今まで参考になった文献は Computer Graphics (著:
日本グラフィックデザイナー協会 教育委員会 編)、世界デザイン史(著:安部公正)
、What is Graphic
design? (著:QUENTIN NEWARA)、PHOTOGRAPHY(著:日本グラフィックデザイナー協会 教育
委員会 編)
、商業推広設計(著:日本 G 社編集部)などがある。また、インターネットを利用して、
オンライン資料も集めた。参考になったサイトは http://www.wzsky.net/html/58/92781.html、
http://www.dnp.co.jp/gallery/artist/h_hara/h_hara.html などがある。
二つ目の研究方法は実践研究である。つまり、集まった資料やデータの比較を通じて、両国のグラフ
ィックデザインの特徴とか、類似点とか、相違点などについて、実践研究を行っていく。さらに、実践
研究の結果に基づいて、両国のグラフィックデザインの未来を展望・予測していく。
3. 日中グラフィックデザインに関する比較研究
今までの文献研究を通じてグラフィックデザインに関するいろいろな知識(グラフィックデザインの
概念、グラフィックデザインの物理構成、感性構成、グラフィックデザインの特殊技法など)や、日本
と中国のグラフィックデザインの歴史などがまとまり、日本と中国のグラフィックデザインの類似点と
相違点も明らかになってきた。
3.1 日中グラフィックデザインの類似点
(1)両国のグラフィックデザインにおける文字と図版の融合性、つまり文字と図版の一体化と平衡を求
める構図原則を求める。つまり、人間は心理的にさらに自動性的にいろんな対象物に対して、対象
物との位置、分量の変化、水平垂直軸的位置などを調整するのである。したがって、全体的な構図
イメージが視覚的に、さらに、心理的に観賞者に与えることであるのを示している.
(2)色彩構成から見ると単色で使われることは少なく、複数の色の組み合わせ、豊かな色彩表現でメッ
セージを伝える。
(3)両国のグラフィックデザインは自国の伝統文化と歴史を現す共通点がある.つまり、日本のグラフ
ィックは日本国特有の和風イメージを伝えるのが多いが、中国のグラフィックデザインは中国特色のイ
メージを伝えるなどの類似点がある。
(4)写真にさまざまなテクニックを導入して、視覚的にリアリティを表現し、さらに超現実を表現し、
したがってグラフィックデザインとしての力を高める類似点もある。
19
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
(5)両国のグラフィックデザインとも CG というテクニックをグラフィックデザインに導入して、単
にリアリティを表現するのではなく、創造した見たことない世界や人物(キャラクター)を表現するデ
ザイン手法もある。
3.2 日中グラフィックデザインの相違点
(1) 色彩構成から見ると両国の歴史や文化の違いによって、グラフィックデザインにおいて、色彩意
識の違いがある.中国大陸では「赤」は革命あるいは政治自覚性が高いことを象徴している.たとえば、
紅旗、紅軍、紅色政権、紅色根拠地などがある.それから文化大革命時代紅衛兵、紅小兵などが流行し、
今でも多くの中国人は朱色を多く使ってるし、朱色で喜や吉をあらわす。
日本のグラフィックデザインにおいて、色彩表現的に中国の明るい、原色色彩意識より、和風的な色
彩、単一、シンプルな色彩で表現するのが多いである。
(2)日本のひらがなとカタカナは変形しやすい特徴がある.日本のグラフィックデザインにおいて、日
本特有のひらがなとカタカナの使いは、もっともグラフィックデザインの表現力を高めるし、日本グラ
フィックデザインの魅力を表す。
(3) グラフィックデザインの手法において、日本のグラフィックデザインはグラデーションなどの手
法をよく使っているが中国のグラフィックデザインはほとんど使用しないし、したがって、単純な面が
ある。
(4)両国のグラフィックデザインにおいて、日本のグラフィックデザインには英文字の使用率が普遍的
に高いが、中国のグラフィックデザインは英文字の使用率が低いである。ということはやはり日本はグ
ラフィックデザインにおいて中国より最も早く、
そして、
深く西方発達国の影響を受けてきたのである。
(5)イラストレーション手法による両国のグラフィックデザインを見ると、日本のグラフィックデザイ
ンは完成度が高いし、さらに、面白さもあるのが特徴である.そして、かなりリアリティを見せている.
日本に比べて中国のグラフィックデザインは完成度が低いし、さらに表現力の不足がある。
4. 終わりに
国際市場と世界的な経済の普段の発展、経済的な国際化行程にしたがって、市場メカニズムは精神生
産領域に進入、文化商品を生産する企業は大量立ち上がり、さらに、文化産業も迅速に立ち上がってい
る世界的な現状況である。そして、社会生活は国民生活ともに改善していく現在である。
世界の各国でグラフィックデザインの誕生と発展は共通的な規律がある。それは商品ともに誕生、経
済、科学の発展ともに発展したものである。中国も例外ではない。改革開放20年を通じて、中国のグ
ラフィックデザイン産業は迅速発展したが、日本に比べるとまだ大きい差異がある。中国グラフィック
デザインの発展は 1980 年代から本格化したといわれている。1970 年代までは西欧のデザインをそのま
ま輸入したり、近隣の日本からデザインを模倣するという段階から脱することができなかったのが事実
である。今までその地位に安住してきた大学が変化している。デザイン学科も大学別に評価を受けてそ
の結果が公開されるようになり、存続をかけた投資と発展のための努力を強いられている。学科はます
ます増える一方、新入生は急激に減少しており大学にも生存競争の法則が適用される時代が到来したと
いえる。
一体、
将来のグラフィックデザインがどうだろう?時代に従って、
中国と日本は同じアジア国として、
更なる文化の融合があって、
その影響はグラフィックデザインにも現れるだろう!つまり、
両国の文化、
伝統の融合で両国のグラフィックデザインの一体化が実現すると思う.そして、中国は日本の先進的な
表現技法や理念などを受け入れて、それにしたがってグラフィックデザイン産業がもっと活発に発展し
ていくだろう?
日本はグラフィックデザイン界の権威として、世界各国中で更なるリードの役割をすると思う.
IT の進化に伴い、個人の嗜好をインターネットでメーカーへ伝え、直接ものを生産するような仕組みも
始まりつつある。これからの時代のグラフィックデザインは今までより以上に、幅広い見識、情報力、
理解力を持って取り組まなければならない。豊富な好奇心と生き物に対する愛情、人間に対する愛情、
実践的ライフスタイル体験、異文化に対する理解、コミュニケーションの大切さ、文化の背景、すべて
をデザインするときに考えなければならない必要な概念である。
20
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オープンソースを用いた新しい広告制作手法の提案 [論文,口頭]
趙研究室
045018 木下 華香
1、はじめに
現存する世界最古の広告が作られたのは B.C.12~13 世紀とされ、求人広告だったとされている。日
本では明治5年頃から「広告」という言葉と共に人々に認知されるようになってきた。この頃広告媒体
として使っていたのは新聞であり、広告会社は新聞のスペースを埋めることで成り立ってきた。大正時
代に新しい印刷技術が導入され広告は華やかに彩られてきた。昭和の戦後に民法ラジオの放送、テレビ
局の開局によって電波媒体が誕生した。広告会社は新しい電波媒体に対しては時間の枠を埋めることに
より広告展開を行なってきた。どの媒体も有限であるので広告会社が新聞で培った“スペースを埋める”
本質により広告会社は新聞からのテレビへの新しい媒体の誕生にも速やかに対応できていた。しかし、
近年新しく誕生した媒体・インターネットによって広告会社の対応が困難になり、制作システムを変化
せざるおえない状況になってきている。なぜならインターネットはこれまでの有限な媒体とは違い、時
間的制限、空間的制限の無い無限の媒体なので、今までの広告会社の本質であった“スペースを埋める”
では対応しきれないのだ。しかも、今までは媒体を通して一方的に情報を配信していたものが Web2.0
の誕生により情報が双方向性となった。この媒体の誕生により広告の世界では大きな変革期を迎えてい
るのである。
そこで、本研究テーマはオープンソースを用いた広告制作プロセスの提案である。新しい媒体(イン
ターネット)にも対応可能にするため、既に実証されているバザール方式を Web2.0 の上で実践するこ
とで現在の広告制作の流れを変えるだろうと確信している。オープンソースの概念を取り入れることに
よって質の高い作品の制作も期待できるし、制作時間の短縮によりコストも押さえられるだろう。
オープン・クリエイティブ(オープンソースを用いた広告制作プロセス 略)のプロセスは主に広告制
作会社が対象だが、それ以外のクリエイティブ活動を主にしている人、そのような活動をしている学生
も対象としている。この研究は今後の広告制作だけでなく、色々なクリエイティブな活動にも有益にな
るものだと考えている。
2、研究の流れ
インターネット誕生し Web2.0 により可能になった複数の参加者により創造活動が行われる場合の手
法であるバザール方式をクリエイティブ制作プロセスの中に取り入れ、より質の高いクリエイティブ制
作=オープン・クリエイティブの実証として作品を提出する。
論文制作に必要な広告制作についての書籍、ネットワーク関連の書籍、Web についての書籍やそれに関
連したサイトの閲覧し本論文に以下のような目次に構成した。
・第 1 章 インターネットの出現
・第 2 章 広告会社の現状/変貌について
・第 3 章 メディアとネットメディアの融合
・第 4 章 オープンソース・オープンアーキテクチャの概念、クリエイティブの世界について
・第 5 章 オープン・クリエイティブの提案
・第 6 章 新たな広告の在り方について
・まとめ
以上である。
3、オープン・クリエイティブによる広告制作システムの提案についての概要
3-1、オープン・クリエイティブの概要
新しい媒体・インターネットが誕生することによって広告の変化が迫られている。そこで現在の広告
制作のシステムの中にオープンソースの概念を導入した「オープン・クリエイティブ」を提案する。オ
ープン・クリエイティブの“オープン”とはコンピュータでのオープンソース又はオープンアーキテク
チャの概念のことで、
“クリエイティブ”とは文字通り創作活動のことである。オープンな概念とは欠陥
箇所(セキュリティホール)を改善しつつ、使いやすいように改良して安全性、利便性を高めるという
21
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ものだ。オープンソースでは OS ソフトの GNU/Linux が有名で、お互いがお互いのソフトウェアに手
を加えて開発が進み、インターネットを介したことにより大勢の人が参加可能になり、より良いアイデ
ィアが生まれ、質を高めることが出来たのだと説明した。このような作業方式は実はこの GNU/Linux
の開発で初めて使われたのである。これをバザール方式という。それまでソフトウェア開発で主流であ
った限られた人たちで開発が行なわれ、適度に形になるまで外部に公開せず、また開発の過程も外部に
見せないという伽藍方式をとり、それがソフトウェア開発での唯一の方法だと思われていた。しかし、
ここで出てきたのがバザール方式である。バザール方式は伽藍方式とは正反対であり、参加者を限定せ
ず複数で行なわれる手法で参加者自身が中心となり命令系統が殆ど無い方式である。GNU/Linux はこ
の方式で大成功を収め、それまでの常識を見直させる結果になった。ちなみにバザール方式での責任者
の仕事はクリエイターたちへの助言や全体の流れを円滑にする連絡役などを担うのである。
クリエイティブの世界にこのバザール方式を応用することでオープンソースなどと同じように作品の質
は向上すると予想される。但し、クリエイティブでは欠陥箇所は存在しない。良いものも悪いものも決
めるのは制作者が独自に決めるからだ。なので、オープン・クリエイティブとは欠陥箇所の改善ではな
く、作品の質の改善、改良または質の向上を目的とするのである。
3-2、制作システムの変化
現在の広告制作のシステム(図―1)はオープン・クリエイティブ導入後(図―2)の制作は以下の
ようになる。
図-1 現在の広告制作システム
図―2
オープン・クリエイティブ導入後の
制作システム
4、結論
本研究により広告会社(広告制作)が時代の変化に対応すべきシステムは従来のものではなく、クラ
イアントとクリエイターたちを直接結び双方向コミュニケーション(Web2.0)のできる環境、更にクリ
エイターたちがより自由な活動が出来る空間、より競い合うことで生まれる高いクオリティ(バザール
方式)
、この3つの要素を取り入れたオープン・クリエイティブの概念はまさにこれからの広告社会と広
告制作のシステムを大きく変わるはずである。
インターネット(Web2.0)の問題としては著作権と使用権をどのように保護(セキュリティ)するか、
そしてオープン・クリエイティブの空間で活動をしているクリエイターたちの著作権、使用権をどのよ
うに整理するかが今後の研究課題である。
22
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
国際的なプロモーション活動のあり方についての考察 [論文,口頭]
趙研究室
045023 佐賀 杏美
1.研究の目的
日本のアーティストが国内で行うプロモーション活動を海外で同じように行ったとしても、日本のよ
うに成功することは稀である。なぜなら、それぞれの国にはその国独自の文化があり、そこで成功する
にはその文化に合ったプロモーションをしないと効果は得られないからである。そこで、日本のトップ
アーティストで老若男女に人気のある〝安室奈美恵〝を例にとり海外でのプロモーション活動のあり方
を考えていく。
2.研究の方法
現在日本でトップアーティストの一人として認められている“安室奈美恵”の国内外活動を分析し、
“安室奈美恵”のアーティストとして長所や短所の部分をまとめると共に、デビュー当時から現在のプ
ロモーション活動がどのように変化し、どの活動が効果的かを挙げる。二つを調べた上で、海外ではど
んな欠点があり、どんなプロモーション活動が有効的かを、今までの雑誌や新聞、ファンが上げている
資料や公式ホームページなどの文献から引用し、それらをまとめ最終的に、国際的なプロモーション活
動のあり方、アジア進出に効果的な新たなプロモーション活動を提案する。
3.研究の成果
3-1 安室奈美恵の概要
「スーパーモンキーズ」として 1992 年にデビュー。当初、積極的にプロモーションを行うがヒット作
には恵まれない。その後、小室哲哉と出会い avex へ移籍し、以降ミリオンセラーを含むメガヒットを
連発し大ブレイク。当時 10 代の歌手としての記録を次々と塗り替える。1996 年に発売したアルバムは
トリプルミリオン、翌年に発売したシングルはダブルミリオンを突破し、邦楽女性ソロアーティスト歴
代 1 位のシングル売上を記録。若者のファッションリーダーにもなり、
「アムラー」という流行語にもな
りその人気は社会現象となった。2001 年以降は、R&B・HIP HOP 志向の曲をリリースし、スペシャル
プロジェクト「SUITE CHIC(スイート・シーク)
」に参加や、海外プロデューサーの「ダラス・オー
スティン」によるプロデュース、自らの作詞など新たな一面を示す。
現在、デビューから 10 年以上経った“安室奈美恵”だが、多くの国民から現在もなお「安室ちゃん」
と親しまれており、
「美空ひばり」
「山口百恵」ともに、戦後の歌謡界において最も時代と国民に愛され
た歌手として名前を挙げられることが多い。老若男女の幅広い層から、生い立ちを含めて存在全てを愛
され応援される歌手は少なく、日本での安室の人気を物語る。
3-2 国際的なプロモーション活動と異文化コミュニケーションの役割について
(1)異文化コミュニケーションについて
異文化間のコミュニケーションには、文化の異なる人々のコミュニケーションと、文化の異なる人が
他の文化の人とのコミュニケーションを理解することの二つの意味が挙げられる。
一般的には、文化的・社会的背景を異にする者どうしのコミュニケーションを意味し、世界に存在す
る多くの文化を理解することは、お互いの相違点と類似点を見つけ出し、今持っている外国に対しての
異文化理解をより一層深めお互いがお互いを尊重することが、世界の人々を理解する上で非常に重要な
ものである。だが異文化コミュニケーションの概念は多岐にわたって成立し、また解釈されていること
も事実である。
(2)国際的なプロモーション活動と異文化コミュニケーションの関係について
特にアーティストの活動はアートの活動だけではなくその国の文化を伝える意味も持っている。アー
ティストの活動は国内に限らず国外の活動の時には地域、
世代、
習慣などを必ず取り入れるべきである。
その国の人々や文化を尊重し、理解した上で活動しなければならない、異文化コミュニケーション(図
1参照)を無視或いは理解してないアーティストは成功した例がないと報道されている。
(例、インドで
のリチャードギアのプロモーション問題)この点だけ見てもいかに異文化コミュニケーションが重要か
言うまでもなく、これからは違う国の文化や習慣などをどのように国際的なプロモーション活動へ(図
23
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
2参照)へ結びつけるかが成功の鍵になっている。
図-2 異文化コミュニケーションの役割
図-1 文化の役割
3-3 日本国内外(例”安室奈美恵”のプロモーション活動)の活動について
(1)日本国内の活動の分析
NHK やドラマ、CM や子供向け番組など積極的に売り出しをはかる。ソロデビューし本格的に歌手
として、ツアーや avex ライブなど大勢の人の前に出るようになる。ドラマ主題歌や年末の番組にも出
るようになり、1990 年代で最も輝いた 10 代のアーティストとして多くの評価を得た。アーティストと
して音楽だけでなくファッションにも拘り、ファッション雑誌の表紙を飾るなど音楽面だけでなく違う
層のファンを獲得する。現在は曲調を R&B やロック調を主とし、スペシャルプロジェクトなどにも積
極的に参加し、日本でトップアーティストの一人となっている。
しかしこの活動の分析をした結果、日本での地位・名声があるにも関わらず、音楽面での成長や関心
が低く爆発的なヒットをしないのは、やはり日本で“安室奈美恵”イコール“音楽”ではなく“ファッ
ション”というイメージが作られているためではないか。このイメージの認識が強い日本で、どう音楽
面での関心をファッション以上に持ち上げるかが、今後日本で行うプロモーション活動の課題である。
(2)国外の活動の分析
2000 年にハワイで初のライブを成功させて以降、2002 年には上海、2004 年には台湾・韓国でのライ
ブなど、アジア活動を徐々に開始する。2004 年の 27th シングルからは日本と同時に韓国でもリリース
を開始。しかし CD の売り上げ、テレビ出演は日本に比べて少なく知名度も浸透していないのが事実。
また、日本のように“ファッション”としてのイメージすらアジアではない。その中で、今後アジア
でのプロモーションを行うためには、やはりその国ならではの文化を取り入れながら日本の音楽を作り
上げなければならない。そのため、日本以外のプロダクションに所属をすることで、アジアの音楽・メ
ディアへの進出を図るべきである。日本で先行する“ファッション”のイメージをアジアで作り上げる
前に“安室奈美恵”イコール“音楽”という認識を強く持たせるためのプロモーション活動を展開する
必要がある。
4.結論
本研究により、アーティストが日本国外で活動し成功するには、その国の文化に合ったプロモーショ
ンの試案を作り上げなければ、海外で受け入れられずプロモーション活動自体の意味がないことがわか
る。異文化コミュニケーションの意味を捉えた上で、音楽・メディア・世代などへのプロモーションを
それぞれ考え出し、その中で日本の文化もうまく取り入れ相互間での国際的なプロモーション活動をす
ることが今後、日本国外でプロモーションを成功させる重要なキーワードで大きな課題である。
また、異文化コミュニケーションは日本と海外のみならず日本国内でも重要なものであり、地域によ
っての文化や価値観の違いを考え相互意識を高めたプロモーションが今後の新たなプロモーション活動
の幕を開くはずである。
24
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
大型トラックの空力特性向上を目指して [作品、口頭]
永山研究室
045403 呉 永
1.はじめに
19 世紀に発明された自動車は 20 世紀に黎明期を迎え、移動タイミングの自由度や利便性から人と貨
物の移動手段として人々に広く受け入れられ、供給燃料の安定確保、道路整備と相まって目覚ましい普
及をみた。反面、大気汚染、交通事故、最近では石油資源枯渇危機、CO2 増加による地球温暖化等、負
の遺産を生み出したことも否めない。持続発展可能な社会を実現するには自動車の環境対応は欠くこと
ができない。
また、原油生産量についても 2020 年以降減少する悲観的な予測もあり、エネルギー需給から自動車も
燃料の削減への対応は必須である。
2.研究の目的
(1) 四年間のデザインとコンピュータ関連操作勉強を通して身に付けてきた専門知識を活かし、青い地
球を守ろうとする一員として環境改善及び、自動車のデザインに取り組んでみたい。
(2) 地球の温暖化防止、持続的な発展可能な社会を実現するためには自動車の燃費向上は必須である。
近年、自動車の高速化や高性能化が進み、環境問題対応や快適性向上の必要性が高まる中、車体周
り流れの制御や空力特性向上が重要視されてきている。また、自動車においては、車体周り流れに
留まらずエンジンの燃焼や駆動系のオイル流れ、ブレーキ冷却風流れ、室内の空調流れなど、様々
な流れが関係しており、自動車設計には流体力学はなくてはならないものとなっている。
ここでは、トラックボディ周辺の流動状況の観察から高速走行時の大型トラックの空力改善を試み
る。
3.研究の方法
3-1 手段
SolidWorks(機械設計ソフト)
、ANSYS(二次元利流動解析ソフト)、COSMOSFloWorks(三次元流動解析
ソフト)を用いる。
3-2 研究の流れ
(1) 生産販売されている大型トラック(せみトラクター型)をモデルとし、三次元 CAD ソフト(Solid
works)でモデリングした。
(2) 解析ソフト(ANSYS)を用いて生産モデルの流動状況を分析した。
(3) ANSYS に比べ、より高度な三次元解析ソフト(COSMOSFloWorks)を用いて、流動状況を検討した。
(4) 得られた問題点を解消する目的として、大型トラックの形状の改良を試みた。
(5) 改良トラックモデルを COSMOSFloWorks ソフトを用いて、空力特性を検討した。
4.研究成果
(1)プラモデルを元に SolidWorks ソフトを用いて大型トラック(三菱ふそうスーパーグレートトラク
ター)の三次元モデリング化を行った。
(図-1)
(2)ANSYS(2 次元解析ソフト)を用いた流体解析の結果、特にトラクター前後部に大量の渦が発生して
いることがわかった。
(図-2)
(3)COSMOSFloWorks を利用して、三次元状態でのトラックの流動状態を検討した。
(図-4)
その結果、高速走行中(80km/h)のトラックの前後部と床下からの空気の流れがトラックの正常
走行にかなりの悪影響を及ぼしていることがわかった。
(図-3)
(4) これまでの検討結果に基づき、空気抵抗力を減らせるトラックのデザインを試みた。
(図-5)
コンセプト:
①トラックの前部に着目し、徐々に断面の大きさを増やすことによって流動パターンの改良を図る。
② 床下最後部にガイドフィンを設置することにより、床下の乱れた流れを制御する。
25
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
(5)COSMOSFloWorks を用いて、改良型トラックの解析を行い、トラックの運転席と荷台の間、及び後
部背面において荷台下からの渦巻き上げの減少が認められた。
(図-6)
図-1 三菱ふそうスーパーグレートトラクター
図-2 2D・ANSYS 流動解析図
図-3 トラックの床下の形状
図-4 3D・COSMOSFloWorks 流動解析図
図-5
改良トラック
図-6 改良トラックの流動解析図
5. 結論と今後の課題
(1)トラックのモデリング、及び流体解析を行い、モデルの形状変化に沿って空気の流れ方向が変わる
ことがわかった。
(2)運転席後部に渦が発生しやすいことがわかった。
(3)荷台底面の複雑な形状が空気の乱れを生じる原因であることがわかった。路上で走っているトラッ
ク後部で生じる泥はね、トラック後部でよく見られる汚れは、荷台下の複雑な形状から原因が考え
られる(空気の乱れを生じ、渦巻きが発生)。
(4)トラック前部の面積を徐徐に増やすことによって空気の流れがスムーズになることがわかった。
乱れた流れをよりスムーズな流れとする床下形状に変更した。
(5)流動状況(空力)の更なる改良デザインを今後共、検討してゆく必要がある。
(6)今回は流動状況の観察で終了したが、今後、定量的に評価する方法を検討しなくてはならない。
6. おわりに
地球の温暖化防止、持続的な発展可能な社会を実現するためには自動車の燃費向上は必須である。自
動車だけでは到底解決できる問題ではないが、他に先駆けて積極的に対応していくべきことと考えてい
る。地球は一つしかない。我々を育み、豊かな生活を送らせてくれた地球は病で苦しんでいる。資源は
枯渇しつつあり、自然災害が頻発している。
個人個人の力は有限であるが、みんなが一心となれば怖がることは世界中になにものもないと思う。
自分が先立ち行動することが大事だと思う。
26
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
自動車の歴史における空力とデザインについて [論文,口頭]
永山研究室
045702 藤原 秀明
1.研究の目的
遊びや移動の為の道具として開発されてきた自動車は、人や貨物を載せて走る機械であり、
「積載」
「移
動」が重要な機能である。自動車発明以来今日まで凡そ 100 年、自動車は長足の進歩を遂げ、現代社会
では無くてはならない機械と言える。一方、近年、資源の使いすぎによる地球温暖化、環境汚染などの
エネルギー・環境問題が叫ばれている。このため石油や石炭など化石燃料を利用する自動車にとって、
燃費改善または省燃費車の開発が最重要課題となっている。
自動車設計、
特にエクステリアデザイン上、
燃費改善のポイントは空力抵抗軽減にあり、特に高速走行時ほど重要性が高まる。本研究は、誕生から
今日における自動車発達の過程を辿りながら、
その空力とデザインについて調査することが目的である。
2.研究の方法
資料,文献調査を基に論文としてまとめる。
3. 研究結果
以下、論文の概要を記述する。
3-1 速度向上を目指して(流線型とスタイルの関係)
自動車が誕生してから今日まで空気力学とデザインはあるときは対立する関
係であり、お互いに大きな影響を与え合ってきた。デザイナーと空力専門家が
互いに理解しあい協力することによって、新しくて優れた空力特性を持つ造形
を創造することができる。しかし、初期の車のデザインはデザイナーの空気力
学に関する知識が不足していた為、取り敢えず空力が良さそうに見えた流線型
が多くの車に採用された。水滴形流線型が本格的に量産車に取り入れられたの
図-1 タトラ T87
は 1930 年代に入ってきてからであって、ハンス・レヴェントンがタトラの量
産車(図-1)に初めて適用した。1939 年フェルナンド・ポルシェはVWビートルに可能な限り水滴形流
線型を取り入れたが、道路が未整備で高速走行が非日常で空気力学の必要性が低かった為、一般的には
未だ空力的流線型に無関心であった。
一方、パウル・ヤーライは 1922 年車に流線型の概念を応用して二次元的でのみ流線型を取り入れた
ルンプラーとは違い、量産車として初めて空力的にベストの形を求めた。エンジンやラジエター、ヘッ
ドランプ、ホイールなどすべてをボディでカバーし、それぞれ翼形にし、キャビン部をアーチ型に作り
最適化した。この車を風洞でテストした結果、CD値 0.245 を記録した。当時の量産車の平均 CD 値は
0.6~0.7 であった。しかし、この実験車は余りにも一般車とはかけ離れていた為、すぐには量産に移さ
れる事は無かった。後に流線型の車体後部を垂直に切り落としても、空気抵抗の増加はごくわずかであ
る事がわかった。1933 年カム博士によって「空気抵抗の少ない車は高速安定性が少ない傾向がある」と指
摘され、高速安定性に関する研究が本格化した。
3-2 T型フォードの衰退とGMのデザイン戦略
1896 年に、自力で最初のガソリン自動車を開発したヘンリー・フォード
は、フォード・モーター社を設立、デトロイトに最初の工場であるピケット
工場を開設した。ヘンリー・フォードは、モデル T(図-2)で世界初の流れ
作業方式を導入し、画期的なコストの削減を実現した。モデル T の年間生産
台数は 1910 年の 1 万 8,600 台強から、年 50%~100%の割合で爆発的に増加
した。膨大な規模の大量生産によって、モデル T の価格は下がり続けた。し
図-2 T 型フォード
かし、モデル T は小改良を加えられるだけで長く抜本的なモデルチェンジを
施されなかった。ヘンリー・フォードの意向に沿って、ひたすら廉価に大量供給することだけに邁進し
ていたのである。ヘンリーは、
「モデル T は既に『完璧な製品』であり、代替モデルを開発する必要は
ない」と頑なに信じ込んでいた。一方、競合他社は性能面もさることながら、自動車の「ファッション」
27
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
としての面をも重視した。GM は、自社の大衆車「シボレー(図-3)
」に多彩な塗装を用意するなどの戦
略で、ユーザーにアピールした。また、スタイリングにも配慮がなされ、モデル T よりも低重心で、高
級車を思わせるデザインが取り入れて、商品性を高めた。たとえ廉価な大衆車であっても、高級車を思
わせる形態やメカニズムを備えることで商品力は高まり、消費者の関心を惹
き付けることに成功した。GM の戦略は更に尖鋭化し、シャーシは前年型と
共通でも、ボディデザインに年度毎の新味を与える「モデルチェンジ政策」
を用いて、在来型を意図的に陳腐化させることが行われるようになった。シ
ボレーが年々スタイリングを変化させ、時代の先端を行くデザインで大衆に
アピールする一方で、根本的に古すぎ、普及しすぎたフォード・モデル T は、
図-3 シボレー
著しく陳腐化した「安物」的存在に堕して行った。この GM のデザイン戦略
が後に続く多様なユーザー対応した自動車作りの先駆けとなった。
3-3 デザインと空力の融合
戦後、イタリアのカロッツェリアの一つであるピニンファリーナ社では国家プロジェクトの一環とし
て「自動車の空力学に対する改善」というテーマで 1976 年以来良空力型の研究に取り組んだ。この研
究の真意は、燃料消費を大幅に低減する空気力学的な車の基本フォルム追及することである。1960 年に
ピニンファリーナ・モッデロ X という実験車を発表した。側面形状は翼型にし、運転席を前に出してフ
ロントを丸くし、居住空間と空力特性の両立を図った。一方モータースポーツの発展に伴い、レーシン
グカーを開発するフェラーリ社が設立され、後にロード・ゴーイング・レーシングカーが作られるよう
になった。デザイナーとしてのピニンファリーナは以前より空力と美の両立に取り組んでいたから、フ
ェラーリ社と連携して大量生産を前提とする車につき物のリスクの少ない少量生産のフェラーリ車で、
思う存分造形の腕を振るうことが出来た。
戦後の日本では、1987 年三菱自動社が一連の先行実験車である HSR シリーズを発表した。
「誰もが
安全に安心して楽しむことが出来るという」思想の元に設計された。この思想は現在も受け継がれ、例
えば 2007 年東京モーターショーで発表された日産 GT-R では、デザインは空力性能を重視するととも
に、細部に至るまで機能美に裏打ちされたクーペボディとしてデザインされている。空気抵抗の増加を
抑えるためにダクトなどの冷却系類は必要最小限に小さくしている。ダウンフォースを得るためにアン
ダーフロアはフラットにし、大きく立体的なリア・ディフェンザーにした。しかし、意図的にリアウイ
ングはダウンフォース量を抑える為小さく設計された為、CD 値は 0.27 を記録した。この様に現代の自
動車では空力とデザインが融合したエクステリアを持つ。
4.結論と今後の課題
今までに多くの人々が、様々な未来の車を夢見てきた。最初は少しでも早く走ることが夢であった。
又誰でも乗れる車が求められた。
「T 型フォード」や、ヒトラーの「kdf 国民車構想」も夢の実現であっ
た。しかし、車が街に溢れると、それまでと違った夢が描かれた。地上の混雑を避け飛行機のように空
を飛ぶ車、原子力エネルギーでほとんど燃費がゼロに近い車、自動装置で自律走行する車、デザイナー
が描いたドリームカーも文字通り夢を形にしたものである。そのほとんどが技術の進歩を課題に想定し
たり、未来の車が満たすべき条件を十分予測できなかったため、形にならず終わったことが多い。1970
年代から資源や環境・安全の問題がクローズアップされた事と引き換えに、非現実的な夢の車が姿を消
した。
しかし、技術は高い目標を掲げることで進歩する。そして進歩する車は画期的な「カタチ」を必要と
するに違いない。まず、近未来の車を考えるとき満たすべき条件を考えなければならない。それは、
「地
球とすべての人々に優しいこと」である。①300~400km/h で安全・快適に巡航出来る低廉な、
「エネル
ギー消費の少ない(空気抵抗の低い)車」と道路・管制システムを開発する。②車と道路、交通管制によ
り絶対に衝突しない、つまり安全であること。悲惨な事故を地球上から根絶する。人の誤認をカバーす
るシステムが必要になる。③今より便利で使いやすいこと。④製造過程や使用、廃棄の各段階で環境対
する負担が極めて少ないこと。⑤自動車産業がいつまでも存続・発展すること。⑥老若男女、弱者・貧
しい人にも等しく使えること。単純な構造・安価で極めて使いやすいこと。⑦開発途上国の人々も便益
が受けられること。⑧車の魅力が阻害されず、今まで以上に愛着の持てる対象であること。⑨用途に応
じて作り分け・使い分けること。
28
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
人々は今どのような車を求めているか-生活メディアとしての自動車デザインの研究
[作品,口頭]
宝珠山研究室
045001 秋山 紘佑
1.研究の背景と目的
今や自動車は人々の生活の中でもはや欠かすことの出来ないツール(道具)、メディアとなっている.
1950 年代以降日本における家族形態の変化を見ると同居親族数が減少しており、共同体の力の減退に
伴って近隣との関係のあり方にも変容が生じている.
本研究では、「家族」というキーワードに注目し、今どのような自動車が人々に求められているか調
査・研究し、デザイン面から新たな提案をおこなうものである.「家族」のあり方が自動車産業にどの
ような影響を与えるのか考察したい.
[家族の形態]
単一家族・・・ひとつの世帯家族だけのもの
複合家族・・・複数の世帯からなる家族
[家族の分類]
核家族・・・夫婦+その子供
直系家族・・長男など家系を継ぐ子供の家族に親が同居
複合家族・・親戚や子供の配偶者とその子供と同居
上記の核家族に着目しそのような家族に求められている自動車イメージの調査・提案を行う.
[核家族に着目した理由]
(1)1950 年代以降単独世帯が著しく増加し、平均世帯人員も大きく減少した.
(2)1955 年以降核家族が日本の家族の形態の中心を占めている.
(3)現在日本では核家族世帯が 60%近くを占めている.
図-1 普通世帯の家族類型別割合:1955~90 年(厚生白書より)
29
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
2.研究の方法
・各種統計、書籍、インターネットを通じて資料を収集し、戦後日本における家族形態の変容を調査・
分析する.
・日本の標準的家族モデル(夫婦と子供 2 人)を想定した自動車のデザインを企画・提案する.
・自動車デザインの制作においては以下のソフトウェアを使用する.
・Adobe Illustrator ・Adobe Photoshop ・AUTODESK 3ds MAX 2008
3.研究内容
ヒアリング調査・統計データ・インターネットアンケートを分析した結果、人々が自動車選びにおい
て重視している要素として次のような結果が得られた.
(goo Research http://research.goo.ne.jp/database/より)
女性が軽自動車を選びにおいて重視する点には「価格」
(63.7%)
「デザイン」
(43.6%)
「燃費」
(43.4%)
が挙げられる.また軽自動車のイメージにおいては、「税金が安い」(62.1%)「小さい・コンパクト」
(57.3%)「価格が安い」(47.0%)「燃費がいい」(45.8%)という結果が得られた.
図-2
図-3
上記の調査分析結果を踏まえ、
「人々が求めている自動車」の為の要素を抽出し、3D・CAD ソフトを用
いてデザイン制作を行った.また実際の街並みと合成することにより生活感(リアリティ)のあるイメー
ジを構成することにした.
(デザイン案の一例)
[側面]
[正面]
[後方]
4. まとめ
人々が自動車を選ぶ理由には様々な理由があるが、今や日本の家族においては一家に1台が普通にな
りつつある.統計データやアンケート結果から「自動車が必要である」と答えた家庭が 93.8%であった.
また「必要でない」という理由の方では、
「自動車は維持費がかかる」が 84.0%であった.
軽自動車は車体も小さく、燃費性能に優れている点や、税制上の優遇措置で維持費が安い点から根強
い人気がある.中には普通車を購入したいが、購入予算と相談して軽自動車を購入するという意見も多
く見られた.また、複数台数を所有する家族も増加している.
30
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
Fairy Tale Project ― 架空バンドのプロモーション計画の提案― [作品,口頭]
宝珠山研究室
045013 太田 有香
1:研究目的
本研究は、架空のバンド「Fairy Tale」のプロモーション計画を想定し、コンセプトづくりやビジュア
ルイメージの制作を通して、バンド・プロモーションのためのコミュニケーション・デザインの研究を
目的とする。バンド独自の世界観をビジュアルに構築・展開し更に深く掘り下げていくことで、制作物
のクオリティを上げ、よりボリュームのある制作を目指す。また受け手にその世界観が伝わる様に様々
な方法でアプローチしていく。バンドのコンセプト・世界観を明確に決め、軸のずれない世界観を作り
出して、より魅力ある表現を試みる。
2:研究方法
・主となるバンド・メンバーのキャラクターの性格など種々の設定を決める。
・バンド・コンセプトは「おとぎ話」とし、
「不思議の国のアリス」をコンセプトとした新曲発表を想定
して、不思議の国のアリスの世界をバンドのイメージの中に溶け込ませる。
・それに合わせてキャラクターの衣装をデザインする。
・ポスター、WEBサイト、CDジャケット、DM等の制作をする。
・実在しているかの様に、リアリティを出す為ブログを用い新曲制作や日常の会話・風景などの情報を
発信。以前から存在していたバンドかの様に思わせる為、リニューアル前のWEBサイトも制作。
・仕様ソフト: Adobe 社 Photoshop CS、Illustrator CS、Dreamweaver 8
3:研究成果
3-1:調査研究
「Fairy Tale」はビジュアル系バンドという設定なので、ビジュアル系バンドが多く載っている音楽雑
誌(図1~3)や、実在のバンドのWEBサイトなどを参考に、衣装、メイク、ポーズなどを調査した。
図1
図2
図3
『SHOXX』
『Neo』
『Cure』
表紙:ナイトメア
表紙:シド
表紙:彩冷える
(出版社:音楽専科社) (出版社:ソフトバンククリエイティブ) (出版社:エイジアハウス)
調査の結果、ビジュアル系バンドのキャラクター設定の中にもいくつかの傾向がある事が判明した。
1.「コテビ」
:主に黒いエナメルの衣装で黒いメイクのバンド群 (例:D・Phantasmagoria)
2.「オサレ」
:普通の洋服を着て可愛い系のメイクをしているバンド群 (例:アンティック珈琲店)
3. 両者の中間に位置するビジュアル系バンド (例:ナイトメア、彩冷える、アリス九號.)
本研究の「Fairy Tale」は、両者の中間よりオサレ系に近く「ポップ感とビジュアル系が持つキラキラ
感」を特徴としたバンドという設定にする。
31
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-2:キャラクター設定、衣装デザイン
バンド・メンバーのキャラクター設定、衣装デザインを決定。 (図 4~8)
図 4~8
名前:琉威(22)
名前:綾(20)
パート:ボーカル パート:ギター
名前:臣(21)
パート:ギター
名前:隼人(23)
パート:ベース
名前:濠稀(24)
パート:ドラム
3-3:ポスター制作
完成したキャラクターを用いてプロモーション用ポスターを制作。
(B1サイズ2枚、B2サイズ5枚)
図 9~11
B1 ポスターデザイン案
B2 ポスターデザイン案
3-4:WEBサイト制作
WEBサイトの構成は以下のサイトマップの通りである。(図 12) このサイトは引き続きリニューアル
を予定しており、今後も定期的に更新していく。またファンクラブ・メンバーなど受け手側とのコミュ
ニケーション手段としてブログ形式を採用した。(図 13)
図 12
図 13
4:まとめ
今回の提案を通して、
様々なビジュアル系バンドの調査を行い、
そのバンド独自の世界観やカラーなど、
特徴をどの様にポスターやWEBサイト・CDジャケットに表現しているかを知る事が出来た。
それらを踏まえた上で、他に無いバンド・コンセプトや世界観を明確に定める事により、軸のぶれない
世界観を作り出す事ができ、より魅力ある表現が出来たと思う。またブログを採用する事で、より一層
現実に存在しているかのような表現にすることが出来た。今後の課題としては、FLASH 等を用いて、よ
り動的なWEBサイトを構成する事が出来れば、受け手にとって更に魅力あるサイトとなるだろう。
またイラスト表現に関して言えば、ビジュアル系らしく見える構図や塗り方の研究を深めていきたい。
32
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
アジア漢字の歴史的研究に基づく平面作品の制作について [作品,口頭]
宝珠山研究室
045020 金 仙玉
1.研究の目的
歴史に興味がある人は少なくないと思うが、中国の「四大発明」の一つとして紙はどうして発明され
たのかを知らない人間はいないだろう。文字は人類の歴史上、最も偉大な作品の一つである。文字がな
ければ歴史もなかったことを考えると最大の発明といえるだろう。古代から人間は意思伝達の道具とし
て文字を作り出し、より的確に可読性を高め、美意識のもとに精錬された文字は目を楽しませ、心を和
ませてくれている。文字を使うのに当たり前のことになっている我々にとって将来の文字はまた変化す
るのだろうか、どんな変化をするのだろうかを考える人もたくさんいるかもしれない。
漢字(かんじ)は、古代中国に発祥を持つ文字であり、中国語を表記するための伝統的な文字である。
また、古代において中国から日本へ伝えられ、その形態・機能を利用して日本語の表記にも使われてい
る。甲骨文字をはじめとし、何種類かの字体が存在するが、本研究では簡体字と繁体字の歴史的・文化
的な背景を調べ、分析し、新たな特徴と様式を生かして平面作品を作成することを目的とする。
2.研究の方法
2-1これまでの学説や歴史資料、文献等に基づき、漢字の
成り立ちや特徴について調査、分析する。
主に簡体字と繁体字の比較研究を中心とする。
(図 1)
対象とするのは以下の百組の文字である。
(図 1)
萬
麗
從
現
順
風
願
報
雲
東
網
軍
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
万、與
丽、麼
从、崙
现、県
顺、頭
风、愛
原、車
报 、習
云、浅
东 、値
网、難
军 、兇
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
与、専
么、鄕
仑、夥
县、種
头、為
爱、飲
车 、単
习 、戦
浅、魚
值 、価
难 、楽
凶、區
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
专、叢
乡、瞭
伙、會
种、線
为、開
饮、歓
单 、無
战 、飯
鱼 、長
价、熱
乐 、蘭
区、衛
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
丛、絲
了、爭
会、書
线、業
开、龍
欢、鳥
无、華
饭 、闘
长 、歩
热 、優
兰 、興
卫 、髪
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
丝、丟
争、亞
书、氣
业、換
龙、範
鸟、島
华 、過
斗、馬
步 、見
优 、焼
兴 、養
发、
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
丢、喪
亚、親
气、計
换、環
范、質
岛、紙
过 、買
马 、筆
见 、飛
烤、園
养 、岡
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
簡体字、
丧、個
亲、億
计、聞
环、電
质、場
纸 、選
买 、悪
笔、夢
飞 、時
园、強
冈 、冊
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
繁体字
个、汍
亿、僕
闻、歴
电、製
场、裏
选 、機
恶 、運
梦、閉
时 、解
强 、塩
册、農
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
丸、
仆、
历、
制、
里、
机、
运、
闭、
解、
盐、
农、
2-2 上記の漢字100組=200文字を用いて平面作品を制作する。
(以下はイラスト化の一例)
龍
龙
(繁体字)
馬
(簡体字)
马
(繁体字)
(図 2)
(簡体字)
(図 3)
33
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.研究結果
繁体字:中国語において簡略化を経ていない筆画の多い伝統的な漢字の字体を指す。
簡体字:現在中国で使われているもっとも簡略化され筆画が少ない漢字の字体を指す。
漢字の字体を左右する字形(点、横画、縦画、払い、はねあげ、右払い、はね、たすき、まげはね、
転折)などを数多く組み合わせて一文字と認識し、その他の字ではないとしうる範囲に対する概念、す
なわち文字の骨格となる「抽象的な」概念のことを証明する。正体字(旧体字)、簡体字で表現する字体
の一貫として特徴と独自の様式を備え、形態の差異によって分類されるので、その面白さを感じてほし
い。ある文字は繁体字と簡体字がそこまで違いはないが、ある文字にはその変化の面白さで目が離せな
いくらいだ。まだ、日本語も正体字とほぼ同じくらいの文字を使っているので、繁体字とまったく違う
ケースも多かったし、中国人の私にとっても区別するのが難しかった。正体字を日本語と間違えたこと
がいくつかあった。横書、縦書がきちんとされなかった場合、まったく違う意味、文書にならざるを得
ない。だからどんなに難しい文字であってもきちんと、正確に書くべきである。もちろん、どんなに美
しく、デジタル化されても、読めない文字は芸術とはいえないだろう。
その他にも次のような字体が存在する。
絵文字:絵から発達した象形文字で、極めて原始的で絵とも言える文字とも見える。
生活道具の陶器等に竹や木、骨、石等で刻み付けている。
甲骨文字:材質は亀甲獣骨類を用い、刀で彫る為に筆画は直線化している。
象形文字よりかなり進化している。
金文:甲骨文字に対して、金文の場合は、青銅器を作る時に粘土などで作っておいた銘文用の型の土が
まだ柔らかい間にへら状のもので書いたので柔らかな曲線が多く線も肉太である。
篆書:秦が中国統一を願い、天子の詔勅や石刻など公式文書として使用した装飾書体。
隷書:硬い筆記道具から丸い穂の筆を使い、曲線も自由に表現できて、強い打ち込みと一画の端のはね
口に特徴がある。西紀前3世紀から現在も墓石や歴史物に使用されている息の長い書体である。
(図 4)
このように文字は昔の絵文字から現在の一番簡単な簡体字まで長い歴史を持っている。生活に不可欠な
漢字の字画を減らして簡単にすれば、もっと覚えやすくなるといのは道理だ。もちろん全て漢字を使う
中国に対してこのような幸せはいないだろう。文字の美しさを装飾するにはどの国にもあるはずだ。
アナログからデジタルへ発展する世の中はもっと華麗に、新たな作品を創作しつつある。
4.まとめ
今回の卒業研究を通して文字の歴史について深く関心を持つようになった。原始文字からはじめ、エ
ジプトのヒエログリフ、線文字、マヤ文字、漢字まで歴史の中で文字は生まれて変化してきた。その中
でも漢字は「世界でもっとも複雑な表記法」と呼ばれている。そのような漢字の歴史に敬意を表したい。
今のデジタル化社会に生きる私達にとって、漢字は歴史が教えてくれるものは大きい。遠い未来に文字
は、どういう変化を遂げているだろうか。その研究は今後の課題にしたい。
[ 引用・参照 ]
・ 『図説文字の起源と歴史―ヒエログリフ、アルファベット、漢字』
[ ロビンソン・アンドルー著、片山陽子・訳、2006 年、創元社 ]
・ WEB サイト「文字の歴史」 http://homepage2.nifty.com/keijihamada/mojinorekisi.html
・ WEB サイト「フリー百科辞典ウィキペディア」より 「文字の歴史」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E5%AD%97%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
34
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
大学祭『美夜古祭』プロデュースのためのコミュニケーション・デザインの研究・制作
[作品,口頭]
宝珠山研究室
045025 曽我 衣世
1.研究の目的
本研究では、イベント・プロデュースのためのコミュニケーション・デザインの研究を目的とし、ポ
スター、パンフレットなど大学祭『美夜古祭』における広報物デザインの研究・制作をおこなう。大学
開学 40 周年という節目を迎え、例年以上に大学祭を盛り上げ、従来より来客数を増やし、大学祭に来
た方に楽しんでもらい、来年も来たいと感じてもらうためにはどのようなデザインが求められるのか研
究する。デザイン学部が出来たことにより、大学祭もデザインを意識したものにする。
2.研究の方法
(1)大学祭の広報計画の企画およびデザイン制作
パンフレット作成、ポスター作成、チラシ作成、スタッフプレート作成
その他(北九州大学祭実行委員会連盟のポスター・チラシ作成)
(2)ポスター等の設置場所をリサーチし、設置してもらえるように交渉を行う
(3)大学祭当日にアンケートを実施しどのように大学祭を知ったのかなど広報物の評価をおこなう。
3.研究内容
3-1 研究の方針
この研究を行うにあたって、美夜古祭のテーマ「40 奏~quartet~」について検討した。このテーマ
は美夜古祭が 40 周年を迎えたということと、
四重奏は1つの音だけでは成り立たず4つの音が1つにな
ってこそ四重奏、つまり1人1人が持っている力を発揮し皆で協力し合い交流を深め、大学祭という大
きなイベントを一丸となって盛り上げよう、という意味を込め大学祭実行委員会が考えたものだ。パン
フレットやポスターを制作する際、このテーマは重要な役割を果たすものとなった。
制作物はピンク、黄、赤、オレンジ等の色を主に用いて、華やかで楽しげになるように心がけた。ま
た、
「美夜古祭」を英語に訳すと「MIYAKO Festival」だが、パンフレット・ポスターに「MIYAKOSAI Festival」
と記したのは、
「ミヤコサイ」と皆に読ませ、
「ミヤコサイ(美夜古祭)
」という言葉を認知してもらうと
いう目的からである。
「美夜古祭」と書いても知らない人には「ミヤコサイ」と読んでもらえないかもし
れない。
「MIYAKO Festival」だと“ミヤコサイ”とは発音されないと思われたため、
「MIYAKOSAI Festival」
と記すことにした。
3-2 デザイン制作物
・北九州大学祭実行委員会連盟で行った合同情報宣伝会のポスター(図1)とチラシ(図2)を作成した。
合同情報宣伝会のテーマが「大学祭情報の玉手箱やぁ~!!」ということで、玉手箱をイメージし、楽
しく弾けるようなデザインにした。
・美夜古祭ポスターの作成 (図3)
今年は「プロコンサート」を開催するということもあり、メインゲストの土屋アンナのビジュアルを
生かしたものとなるように心がけた。
図1
図2
図3
35
図4
図5
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
・美夜古祭パンフレット作成 (図4)
パンフレットは載せる情報が多いため、情報を整理する必要があった。内容ごとに色を変えて他の内
容と差別化を行ったり、目次を見なくても何を読んでいるのか分かるように見出しを付けたり、パン
フレットを手にして実際に使う場面を想定しながら制作した。
・大学祭スタッフプレート作成 (図5)
スタッフつなぎを着用している人全員が大学祭実行委員会のメンバーとは限らないので、メンバー以
外と区別するためにスタッフプレートを作成した。各役職ごとに色分けを行なった。
3-3 大学祭に関するアンケート実施
11 月9日(金)~11 日(日)の「美夜古祭」当日、来場者にアンケート用紙を配布し美夜古祭の広報物につ
いて、美夜古祭についての意見・要望などを記入してもらった。その結果次のような意見がよせられた。
■美夜古祭が開催されるということをどこで知りましたか。(単位:%)
50
40
30
情報源
20
10
0
学内 ポスターテレビ WEB 情宣 知人 その他
※その他(土屋アンナのライブ情報より)
■美夜古祭に来た目的は何ですか。(複数回答)
→ビンゴ大会に参加するため・土屋アンナのライブ・模擬店出店・大学祭メンバーを励ます・学生の
熱意を見たかった
■美夜古祭のポスター・パンフレットを見てどう思いますか。(単位:%)
50
40
30
ポスター
パンフレット
20
10
0
とても良い
良い
普通
悪い
とても悪い
■美夜古祭についての感想や意見・要望
・パンフレットを見れば分かるが場内に模擬店の場所をもっと分かりやすく表示してほしい
・模擬店があまりパッとしない、少なくて暇がつぶせない
・留学生会の水餃子がおいしかった
・ビンゴの賞品に差がありすぎ
・楽しかった
・とても良かった。来年も来ます。
4.まとめと今後の課題
例年と大きく変えたところは、ポスター、パンフレット共にカラー印刷にしたことである。カラーに
したことで、人目を引き例年以上に美夜古祭をアピールすることが出来た。アンケート結果からも分か
るようにカラーの方が好評であった。
また美夜古祭開催の情報源としては、
「学内掲示から情報を知った」
という人が多かったが、それらもポスターを貼った結果であり、ポスターは効果的だったと言える。
パンフレットは、レイアウトを例年と大幅に変更した。学内マップ、タイムテーブル、模擬店配置図
は例年よりも情報が整理され、欲しい情報がすぐに見つかるようになり見やすくなったという意見が寄
せられた。来客数は前回が約 1500 人だったのに対し、第 40 回は約 1700 人という結果であった。
今後の課題として挙げられる点は、ポスターやパンフレットだけでなく、美夜古祭全体のデザインを
考えなければならないことだ。模擬店等の位置はパンフレットを見れば分かるものの、場内にももっと
分かりやすいサイン計画をしなければならない。またパンフレット、ポスター、場内サインなど、全体
的に統一感を出し、
「美夜古祭」のブランド感を意識してデザインをすることが大事だと感じた。
36
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
「デジタルパンフレット」のデザインに関する総合的な調査と研究 [作品,口頭]
宝珠山研究室
045031 中村 透
1. 研究の目的・背景
現在では様々な情報配信メディアが存在するが、私はその中でも学校紹介、会社紹介などに良く用い
られるパンフレットに注目した。パンフレットの素材には主に紙を用いられているが、私は以前から紙
以外のもので作れないかと考えていた。そこで DVD を用いて「デジタルパンフレット」を制作し、制
作したものを第三者に評価してもらい、なぜ紙媒体のパンフレットが多く用いられているかを調べ、ア
ンケートを元に分析し、分析結果を元にパンフレットに新しい形を提案する。
なぜ、わざわざ DVD を用いるのかというと、現在ではパソコンと共にインターネットの利用者の普
及が著しい。
(図 1、2 参照) インターネットが一般に普及した当時よりも通信回線が遥かに速度の速
くなり、今では動画配信も容易にできるようになった。しかし、いくら通信速度が速くなっても大きな
短所が四つある。
(1) Web サーバー(HTTP サーバー)での動画配信は、動画がユーザーにダウンロードされながら配信
されることになり、そのためユーザーのパソコンに動画が残るということが起こる。
(2) Web サーバー(HTTP サーバー)での容量の大きい動画の配信はサーバーに負荷を与え、配信が不
安定になることがあり、エンコーダでエンコードする際にファイルサイズ(ビットレートなど)を極
力小さくする必要がある。
(3)データが重いため Web サーバーでは、多くの人がアクセスした場合に、サーバーに負荷がかかり、
配信しきれなくなってしまうことが起こる。
(4)容量の大きい動画は再生されるまでに長い時間待たされるということが起こる。
このように Web を通して配信するにしても上記のような欠点を改善しなければならない。やはり、動
画を見るからには綺麗な画質、音質で見たり、聞いたりしたいのは誰もが思うことだ。それでも Web
を用いた動画配信が主となっている。Youtube などの動画共有サイトが出現したことにより、誰でも簡
単に動画を配信、閲覧することが可能になったが上記のことを考えると、私は DVD のほうが良いと思
う。DVD を用いれば高画質、大容量の動画を使うことができ、プロモーションとして作る場合は DVD
を用いたほうがより質のいいプロモーションができるからである。
最近では、Blu-ray Disc という DVD よりも遥かに記憶容量が多い次世代光ディスクが 1999 年から
開発された。2007 年 12 月に TSUTAYA など合計 22 社が「ブルーレイレンタル研究会」を設立し、2007
年 12 月 4 日~2008 年 2 月 29 日まで試験的に Blu-ray Disc ビデオのレンタルを始めた。このことによ
りまだ Blu-ray Disc の普及がないことがわかる。なので、本研究は Blu-ray Disc ではなく、DVD を用
いることにした。
図 1:パソコン世帯普及率
図 2:インターネット世帯利用率の推移
37
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
2. 研究の方法
(1) 「デジタルパンフレット」を制作
現在ある西日本工業大学のパンフレットを用いて、デジタルパンフレットを制作する。
(2) 調査、分析
制作した物を進学希望している高校生に制作した「デジタルパンフレット」を実際に見てもら
い、紙とデジタルどちらが見やすいか、どちらが見る気になるかなどアンケートを行い、収集し
たアンケートを元にメリット・デメリットを調べる。
(※)高校生に関しては、私の母校である隼人工業高校の生徒に協力してもらう。
(3) 新しいパンフレットの形を提案
上記で行った分析結果を元に新しいパンフレットの形を提案する。
3. 研究成果
(1) 「デジタルパンフレット」の作成
DVD を用いて「デジタルパンフレット」を作成した。上記のように高画質、高音質の動画を閲
覧できるようにしたかったが、スケジュールが大幅に狂い思うように仕上げることができなかった。
(2) アンケート調査
母校の高校教師にホームルームの空き時間を調査のためにいただき、簡単なアンケート調査を行
った。本来は完成品を見せる予定だったが、作業の都合で作成途中の物と実際にある紙のパンフレ
ットを見比べてもらい、男子 75 人(教師 1 人)
、女子 35 人、計 110 人の生徒と教師に協力しても
らった。アンケート調査を行う前から紙のほうに強みがあるという指摘があり、実際にアンケート
調査を行った結果、まさに指摘通りの答えが返ってきた。このアンケートを通して、指摘された内
容を改めて理解した。
(3) 分析
アンケート調査により紙のほうが見やすいという結果が出た。この結果からなぜ紙が好かれてい
るのかを調べた。紙だけでなくデジタルメディアを見るためのディスプレイについても調べ、歴史
や位置づけを分析した。分析の結果、解像度の問題だけでなく、やはり昔から紙と付き合ってきて
いるだけに精神的な安定感を紙という物は齎すことがこの分析でわかった。
4. 結論
今回の研究では、当初の計画通りにいかず、
「デジタルパンフレット」の作成に関しては結果的に充分
な成果を得られなかった。しかし「デジタルパンフレット」を作成する過程で調査・分析をした結果、
現状の問題点と今後の課題を発見することができた。紙のもつ長所やこれまでの「見る」という習慣を、
いかにデジタルメディアに持たせることができるかが最大の課題だといえる。そして、デジタルメディ
ア(機器類、パソコンなど)の形態も進化する必要がある。近年、紙のように扱える電子ペーパーがそ
の打開策のひとつとして期待されている。この 2 つの課題に取り組むことが今後のパンフレットの形だ
けではなく、デジタルメディアのこれからの形を形成していくのではないかという結論に至った。
38
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
20代女性をターゲットとしたファッショングッズ・ブランド<Bell>の提案 [作品,口頭]
宝珠山研究室
045039 溝尻 祐子
1.はじめに
本研究は、女子学生や社会人の日常使うグッズのデザインに着目し、より可愛いものを持ちたい、人よ
りもお洒落をしたいと思っている人達が使うグッズデザインについて調査・分析し、新たなファッショ
ングッズ・ブランドのデザインについて提案を行うことを目的とする。20代(学生・社会人)の女性
をターゲットとしたブランドを提案する。
2.研究方法
・ 同世代から見た好感度の高いファッションブランドを調査分析する
・ デザインの企画・制作(ロゴマーク・T シャツ・ハンカチ)
・ イメージポスター制作・サンプル制作
・ ヒアリング調査また評価する
3.研究成果
3-1 世代別ブランドTOP5(オリコン調査2007)(http://narinari.com/Nd/2007108101.html)
[中・高校生]
1 位 アナスイ、2 位 セシルマクビー、3 位 ヴィヴィアンウエストウッド、
4 位 サマンサタバサ、5 位 バーバリー
[20代社会人] 1 位 アナスイ、2 位 ヴィヴィアンウエストウッド、3 位 ジルスチュアート、
4 位 バーバリー、5 位 サマンサタバサ
[専門・大学生] 1 位 アナスイ、2 位 ヴィヴィアンウエストウッド、3 位 バーバリー、
4 位 サマンサタバサ、5 位 アズノウアズ
調査の結果20代女性(社会人・学生)の好きなブランドでアナスイとヴィヴィアンウエストウッドが
1、2 位になっている。またアナスイは幅広い年代の人達から好まれているブランドだと分かる。
3-2 ファッション雑誌による調査
表-1 ファッション雑誌分析
雑誌
モデル 色
の年齢
CanCam
21~28 白・青おちつい
た色が多い
JJ
21~26 黒・白・灰色な
ど
ViVi
20~24 明るい色
ブランド
タ ー ゲ 雑誌の特徴
ット層
サマンサタバサ、ジルスチュ 10~40 手相占い、ジャンル
アート、ルイ・ヴィトン
別人気ランキング
ピエロ、クイディ
女 子 大 着まわし特集や結
生
婚式特集
コーチ
15~36 た く さ ん の 商 品 が
掲載されている
S-Cawaii 25
ヴィヴィ ット シャネル
18~23 読者の投稿企画
カラー
Popteen
18~22 金・銀など強い シャネル、アナスイ、グッチ、 女 子 高 ジ ャ ン ル 別 人 気 ラ
色
ブルガリ
生
ンキング連載漫画
Non-no
18~27 落ち着き のあ 特にブランドは載ってない
大 学 生 占い特集や読者か
る色
より上 ら の 投 稿 企 画 が 多
い
調査結果として落ち着きのある服やブランドが多く掲載されている。女性に人気な雑誌にもランキング
に入っているブランドが掲載されている
39
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-3 提案するブランドネーミング<Bell>の由来
女性に関係することで人に覚えやすい言葉を選んだ。フランス語で Une bell femme(ユーヌ・ベル・
ファム)という「美しい女性」という意味の言葉がある。その言葉の「美しい」という部分をとり、Bell
と名付けた。
3-4 ロゴマーク<Bell>の設定
ブランド・カラーを C:20M:100Y:15K:0 に設定した。
(図-1)ロゴマークの文字の書体は、Giddyup std
Regular と Letter Gothic std Medium を合成して作成した。文字がはっきり読める可読性の高いシン
プルなデザインとし、曲線を生かして女性らしいイメージを表現した。
(図-2)
図-2 ロゴマーク
図-1 ブランド・カラー
3-5 デザイン制作
「Bell」のデザイン・コンセプトとなるモチーフを「花」と「ストライプ」と設定し、それを元にブ
ランドイメージ・ポスター(図-3)
、ハンカチーフ(図-4)
、及びTシャツ(図-5)の各デザイン制作を
実施した。
図-3 ポスター案
図-4 ハンカチ案
図-5 Tシャツ案
4.おわりに
調査の結果20代女性(社会人・学生)の好きなブランドでは、
「アナスイ」と「ヴィヴィアンウエス
トウッド」が 1、2 位の上位を占めている。また「アナスイ」は幅広い年代の人達から好まれている。
これらの分析結果から、20代女性に好まれるデザイン・ブランドの商品は、比較的シンプルなデザイ
ンのものが多いことが分かる。
デザイン制作ではブランド・カラーや色味の決定、デザイン・モチーフの決定までに苦戦したが、こ
の研究を通して、自分なりのブランド性が出せるデザインが出来上がった。
40
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
PR 効果を高めることを目的とした WEB サイト製作 [作品,口頭]
宝珠山研究室
045048 吉崎 茂人
1.研究の目的
私は大学一回生から四年間『大学祭実行委員会』
(大学祭を企画、運営していくための委員会)に所属
していた。本研究では自分がもっとも深く関わってきた大学祭を題材とし、その PR 効果を高めること
を目的とした WEB サイト製作を行う。その結果として自分が卒業した後も、自分の製作した WEB サ
イトで西日本工業大学大学祭の知名度が上がり、大学祭に興味を持ち大学祭に来客する人数が上昇した
り、協賛に協力してくれる企業が増加したりという波及効果を目指すものである。
また大学祭実行委員会では毎年ビデオカメラによる映像資料、インスタントカメラとデジタルカメラ
による写真資料、当日に配布するパンフレット、ポスター等を次年度の参考資料として保存している。
劣化や紛失してしまう恐れのあるそれらの資料群をデジタルデータ化して保存しておき、その資料群を
一般公開して大学祭の宣伝ツールとして有効活用できるようにする。
2.研究計画
・調査の実施→プランニング→デザイン製作→WEB サイト公開→評価
・使用ソフトウェアは Macromedia Flash8、Adobe PhotoshopCS
3.WEB サイトの製作について
3-1.サイトの構成:サイトを製作するにあたって以下の六つの事柄に分けてみた。
① ステージ企画
大学祭当日には校内にステージが立つ。そのステージで行われる催しもの
② 模擬店
本学の学生がテントを借り、臨時で出店する飲食店等
③ プロフィール
大学祭実行委員の情報
④ 情報宣伝会
北九州にある各大学の大学祭実行委員が合同で大学祭をアピールするイベント
⑤ プロコンサート メイン・イベントとしてお笑い芸人や歌手などプロのアーティストを招聘する
⑥ パンフレット
大学祭当日に配るパンフレットの内容を紹介する
(図‐1 サイトマップ)
41
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-2.使用する資料:大学祭当日に配布したパンフレットの表紙、インスタントカメラ、デジタルカメ
ラで撮影した大学祭当日の風景を撮影した画像、ビデオカメラで撮影した「情宣」
(北九州にある大学の
大学祭実行委員会が集まり行う合同の大学祭宣伝イベント)の映像資料、大学祭のポスターなど。
3-3.デザイン方針と製作ツール:ホームページの製作方法は以下の三種類がある。
① Macromedia Flash のみで作る
② Macromedia Dreamweaver のみで作る
③ 両方を用いて作る
以上の三種類の方法が考えられるが、今回は①の製作方法を選択する。その理由は、私が WEB サイ
トを見る際に心を惹かれ興味を持つものは主に、画面にデザイン性を感じるもの、Action Script によっ
て動きのあるもの、という二つの要素を持っているためだ。自分の好みのものにより近いものを製作し
ようと考えたときに、Dreamweaver よりも動的なコンテンツ制作用の Flash の方が適しているため
Flash で製作することにした。
Flash で製作されるホームページは、一般的に自由度が高く動きのあるものが多いが、その反面、求
めている情報が瞬時に出ない、モーションがわずらわしい、という面も持ち合わせているので、製作す
る際に特に注意を払った。
3‐4.レイアウトの基本方針:Topページは左端にあるメニューボタンをクリックすると中心の絵
が左右にスライドして画面が変わるように Action Script を記述してある。また各ページにも限られた
スペースに多くの情報を見やすく表示できるような Action Script を記述してある。各ページに描かれ
ている絵のすべて自分自身の手書きである。より自分らしいホームページを作るために手書きにこだわ
った。
(下図は「Topページ」の画像と「情報宣伝会紹介」のページの一例)
(図-2 Topページ)
(図-3 情報宣伝会紹介のページ)
4.まとめと今後の課題
ActionScrip の応用においてはかなり成果が残せたと思うが画面レイアウトの面においては膨大にあ
った様々な資料をうまく配置できたかどうかは疑問だ。ずっと一人で製作してきたので第三者に見ても
らい評価してもらう必要がある。アンケートの活用等による第三者による評価が必要であろう。
今後の課題として、この WEB サイトが本当に大学祭を PR するにあたって十分な効果を発揮するか
どうかを、他の人の意見を聞き、その上で情報の配列を変更したりデザインを変更していったりして、
さらに PR 効果の高い WEB サイトとなるようめざしたい。
42
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
現代日本におけるキャラクターデザインの研究 [作品,口頭]
宝珠山研究室
045707 安原 未来
1. 研究の目的
世の中には、どんな「キャラクター」が存在するのか。ここでいうキャラクターとは映画、演劇、小
説、漫画などに登場する人物、動物、生物などの「役」を指す。(参考:ウィキぺディア フリー百科
事典)キャラクターのなかでも、昔から変わらず人気があるキャラクターもあれば、一時人気が出たも
のの、すぐに消えてしまったキャラクター達もあるだろう。
本研究では、幼児を対象に昔から変わらず人気をキープし続けているキャラクターにはどんなものが
あり、そこにどんな魅力があるのかを調べ、さまざまなメディアにおけるキャラクターのあり方を比
較・分析し、その結果をもとに老若男女問わず親しみやすいキャラクターのデザイン開発を試みるもの
である。具体例として「北九州メディアドーム」
(小倉競輪)をとり上げ、新しいキャラクターとポス
ターのデザインを実施する。
2. 研究の方法
(1) インターネット、絵本、書籍、アニメなどを参考に人気のキャラクターを調査。
(2) 調査結果をもとにどのような特徴や魅力があるのか分析。
(3) 分析結果をもとに「現代における」理想的なキャラクターモデルを企画・デザインする。
3. 研究成果
3-1 現在の幼児を対象に好きなキャラクターのアンケート調査を行った結果、以下の通りであった。
(対象:岡山県岡山市立錦保育園4~5歳児26名)
1位『アンパンマン』(30%) 2位『ゲキレンジャー』(25%) 3位『ラブ and ベリー』(20%) 4位『プリキュア 5』(15%)
(日本テレビ)
(テレビ朝日)
(アーケードゲーム)
(テレビ朝日)
3-2 西日本工業大学情報デザイン学科の学生20名へのヒアリング調査より
~子供の頃(4~5歳)に人気のあったキャラクター (複数回答)
『ドラゴンボール』 『起動戦士 Z ガンダム』 『 美少女戦士セーラームーン』 『秘密のアッコちゃん』
フジテレビ
ANN 系列
テレビ朝日
テレビ朝日
(1986~1989 年)
(1985 年~1986 年)
(1992 年~1997 年)
(1969 年~1970 年)
43
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-3 これらのキャラクターを比較・分析し、共通点を探して挙げてみた結果、以下の傾向があるこ
とが判明した。
・ 主人公、登場人物が「カッコイイ・強い」(男の子向き)、
「可愛い」(女の子向き)。
・ 変身、魔法といった空想的なもの。
・ 赤・青・黄色…といった分かりやすい色(原色)を使っている。
・ 「カラード・マスクマン」(例:ゲキレンジャー)は赤、青、黄、緑、ピンクという構成が多い。
3-4 デザイン提案 ~ 以上の結果をもとに、「北九州メディアドーム」のオリジナル・キャラクタ
ーとポスターのデザインを制作した。競輪場にもっと親しみを感じて欲しいと思いにぎやかで楽しいイ
メージに仕上げた。(ポスター作例:図1~2)
図1
図3 ケイリン・レッド
勇敢でリーダー
図2
ケイリン・イエロー
おとぼけ担当
図4 悪の総支配者『ブラゴ』
別名:黒い神
ケイリン・グリーン
冷静さ担当
ブラゴの愛人『ケバイ』
若作り、ワガママ
ケイリン・ブラック
キレキャラ
ケイリン・ピンク
紅一点
ブラゴの手下『ブップク』
雑魚キャラの一人
次に調査結果に基づき、上のようなキャラクターをデザインした。幼児たちはヒーローものが好きな
傾向があるため、競輪のヒーロー『暴走戦隊・ケイリンジャー』(図3)をデザインした。実際に競輪で
強い選手のイメージ・カラーは黒などが多いが、今回調査した結果、ヒーロー(主人公)は赤というカラ
ーを使ったものが多かったため、
「ケイリンジャー」の主人公の「ケイリン・レッド」は赤にした。
また、ヒーローものには外せない悪役キャラも考えデザインした。
(図4)
4. おわりに
競輪、競馬と聞くと本研究を始める前では「ヤジ」「オヂサン」といったマイナスイメージしか浮か
ばなかったが、本研究を通して、子供から大人、老若男女を問わず親しめメディアドームをより身近に
感じてもらえるキャラクターデザインを完成させることができた。
44
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
小学生の理科の実験の授業の記憶に及ぼす要因の検討 [論文,口頭]
山縣研究室
045022 小久保 浩嗣
1.研究の目的
子どものころ誰もが素朴理論というものを持っている。素朴理論とは経験、体験を通して獲得される
ものであり無意識のうちに人の思考過程に影響を及ぼしているものである。それは、時に強い誤概念を
生み出してしまうことがあり、大人でも小学、中学時にやった理科の実験結果などの問題を急に問われ
ると誤った答えを出してしまうことがある。
それは、小学から高校までに習った科学的概念を忘れてしまい、子どものころに生成した誤概念、ま
たは、日常的、経験的なもので答えてしまう可能性が高いと考えられるからである。
今回の研究は、小学生を対象に理科の実験(空気温度を変えて、かさの変化を調べよう)場面におい
て、理科に対する態度や関心や、温度を変えたときのかさの変化の予想、実験中のおどろきなどを測定
し、これらが授業の記憶にどのようにかかわってくるかを調査することを目的とした。そこで、授業の
2 週間後に授業の内容をどれくらい覚えているかを回答してもらい、理科に対する、態度や関心、実験
の予想や実験へのおどろきが 2 週間後の授業の記憶に影響しているかどうかを調査した。
2.研究の方法
2-1 対象
北九州市内の公立小学校 4 年生 1 クラス(32 名)
。
2-2 調査を行う授業
理科の実験(空気温度を変えて、かさの変化を調べよう)の授業。この授業の目的は、空気は、温め
たり、冷やしたりすると、そのかさが変わるということを発見させるとともに、水や空気のかさの変化
は温度の変化と関係があるということを理解させるようにすることである。この実験は目には見えない
空気が対象となるので、空気の変化がわかりやすいよう、試験管の口にシャボン玉の膜をはり、それら
をお湯につけたり、
氷水の中にいれたりし、
シャボン玉の膜がどのように変化するかをみる実験である。
2-3 手続き
授
業
前:理科の授業の実験に対する関心や態度を調べるために、理科がすきかどうか、理科は
得意かどうか、実験はすきかどうか、といったアンケートを 5 択(すごく好き、好き、どちらでもない、
嫌い、すごく嫌い)予習、復習をするかどうかのアンケートを 3 択(毎回やる、ときどきやる、やらな
い)で回答してもらった。また、子どもたちのもつ温度によるかさの変化に関する素朴理論について調
査するために(空気は温めると、冷やすとどうなるか、水は温めると、冷やすとどうなるか、金属は温
めると、冷やすとどうなるか)の計 6 項目を 4 択(かさが増える、変わらない、かさが減る、わからな
い)で回答してもらった。
授
業
中:授業中はビデオと記録員を用い記録する。ビデオは班に 1 台用意する。記録員は各班
に 1 人ずつ付いてもらい、簡単に子どもたちの発言内容を記録した。
授 業 の 内 容:8 班(4 人 1 班)に分かれ、前回の授業で予想してもらっていた、試験管のシャボン玉
がどう変化するか、風船の大きさがどう変化するか、シャボン玉の容器の向きを変えるとどうなるかの
予想と実験がどう違っているかを担任の先生の指示に従い実際にやり、そして、実験の最後に温度の
変化がかさの変化に関係しているということを発見させた。
実
験
後:子どもたちがそこからどのようなルールを発見したかを調べるため、実験からわかっ
たことを記入してもらった。
そ
の
後:実験を行った 2 週間後に試験管にまくをはった試験管をお湯につけると、冷たい水に
つけるとどうなったか、風船の実験を覚えているか(風船の実験を覚えていた場合のみ風船をお湯につ
けると、冷たい水につけるとどうなったかを回答)
、実験について他に覚えていることはあるか、実験の
結果に驚いたか(驚いたと回答した場合のみどんなことに驚いたかを回答)
、先生や友達が話しているこ
とを覚えているか、というような質問に回答してもらい、授業で行った実験の内容を覚えているかを確
認した。そして、理科の授業の態度や関心、子どものもつ素朴理論がどのように記憶に関係しているの
かを分析した。
45
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.結果
まず、授業前に温度とかさの関係について生徒がどのような素朴概念を持っているかについて、授業
前のアンケーでは、空気は温められるとかさはどうなるかでは、増えると答えた人が一番多かったが、
減ると答えた人が少なかった。空気を冷やすとかさはどうなるかは、減ると答えた人が多く、増えると
いう回答が少なかった。水は温めるとかさはどうなるかでは、増えるという回答と減るという回答がほ
とんど同じくらいの回答数になった。水は冷やすとかさはどうなるかは、ほとんどの回答が同じくらい
になった。同じように鉄は温めると、冷やすとかさはどうなるかでも回答が同じくらいになっている。
このことから、空気を温めるとどうなるか、冷やすとどうなるかでは、正しい素朴概念を持っていた人
が多かったが、誤った素朴概念を持っている人も半分いた。また、水、鉄では、半分以上が誤った素朴
概念を持っているということがわかった。
実験の結果に驚いたかどうかでは、ほとんどの人が驚かなかったと回答した。ただし、理科の興味、
関心、態度で、理科が好き、実験が好きと答えるかどうかと実験に驚くかどうかには、相関がみられた。
このことから、理科が好きかという質問と、実験が好きかという質問ですごく好きと回答した人は他の
人よりも実験を積極的に取り組み、実験の結果にすごく興味をもっていたから驚いたのではないかと考
えられる。
授業の記憶については、試験管の実験(温めた時と冷やした時)の記憶は、ほとんどすべての人が正
解していたが、風船の実験では、覚えていますかといった質問に覚えていないと答えた人と正解が五分
五分くらいとなった。試験管の質問の回答はほとんどの人が正解していたが、風船の質問になると、半
数以上の人が覚えていないという結果になった。この実験は1班しか実験していなかったが、その班は
4 人中 3 人が正しく回答している。
記憶に関する要因については、理科に対する態度や興味に関する変数と記憶の成績の間にはほとんど
関連が見られなかった。また、空気のかさと温度の関係について生徒がもっている素朴概念の種類ごと
にグループわけをし、
記憶の成績の平均に差があるかどうかを見たがすべて有意な差は見られなかった。
したがって、今回測定した要因からは、どのような場合、授業の記憶が残りやすくなるかについての示
唆は得られなかった。
4.結論
今回の研究は、理科の実験(空気温度を変えて、かさの変化を調べよう)場面において、理科に対す
る態度や関心、実験の予想や実験へのおどろきなどが、記憶に関係があるかどうかを調べるということ
を目的としていた。
今回測定した要因からは、どのような場合(態度や関心、実験の予想、実験時の驚き)も、授業の記
憶が残りやすいかについての示唆は得られなかった。
しかし、試験管の実験の記憶と風船の実験の記憶とでは、試験管の実験のほうがより多く覚えられて
いた。これは、実際に自分たちで実験をやるか、やらないかの違いで記憶に違いがでたのではないかと
考えられる。それは、試験管の実験はすべての班が実験をしていた。しかし、風船の実験は1班しか行
われず、他の班の人はその実験の結果を発表でしか聞いてないからである。この実験をした班の風船の
実験の記憶はよかった。このことから「体験する」ということが素朴概念の修正のポイントになってく
るといえる。
今回の調査の問題点として、今回は、データをとった人数が 1 クラスで 32 名と少なかったため
に、データの信用性が低くなり、記憶と関連性のある要素が統計的に見つからないという結果にな
った可能性はあると考えられる。したがって今後調査を継続して行うならば、実験をするクラスを
増やしたほうがいいといえる。
また、当初の予定では、2回(1週間後、1ヵ月後)記憶の問題をやってもらうことを目的としてい
たが、調査を実施した小学校の都合で、1回(2週間後)しかできなかった。2週間後だと、授業を行
ってからまだあまり時間がたってないために、ほとんどの人の記憶が強く残っており、試験管の実験の
記憶などにあまり差がみられなかった。したがって、1 ヵ月後やそれ以降での記憶のデータをとれば、
また今回と違った結果がでる可能性も考えられる。
今回の研究から実際に「体験する」ということが記憶と関係があるのではないかということが示唆さ
れたことから、理科の実験以外の授業にも「体験する」ということによって、授業の記憶が残りやすく
なるかどうかについても明らかにしていくとよいと考えられる。
46
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
子どもの遊びの変化と社会的スキルの関係 [論文,口頭]
山縣研究室
045027 徳永 康平
1.研究の目的
子ども遊びに関して、昔の子どもは外などでよく遊んでいたがパソコンやテレビゲーム、カードゲ
ームなどの普及によって現代の子どもの遊びは、大勢で遊ぶ遊びから少人数で遊ぶ遊びに変化してきて
いるということが言われている。本来子どもは多くの人との遊びを通じて多様な人間関係の中で社会性
や対人関係能力を身につけていくものなのだが、現代の子どもには、そういった機会が減ってきている
といえる。
このような問題についてこの調査では現代の小学生の子どもたちの遊びと大学生が小学校の時に行っ
ていた遊びに注目し、遊ぶ日数や遊ぶ人数・遊び方が変化しているか、またそれによって社会的スキル
の身につき方に違いがあるのかを調べた。
また、今回の調査を通じてパソコンやゲームの普及といった社会の変化が子どもの遊びにどのような
影響を及ぼしているかについても調べた。
2.研究の方法
2-1 対象:北九州市内の公立小学校の4・6年生。
(4年生69名、6年生63名)
西日本工業大学の1~3年生の116名に協力してもらった。また、大学生には小学校6年生の
ころを思い出してもらい回答してもらった。
2-2 調査内容:遊びに関するアンケートという題名で昼休みと放課後という場面と休日という場面に
わけて質問する。例えば、1週間のうち昼休みに友達と遊ぶ日数は何日か、何人くらいの友達と遊ぶか、
昼休みにどんなことをして遊ぶことが多いか(3つあげさせる)1週間のうち昼休みに遊ばない日数は
何日か、について聞いた。放課後も同様の質問を行った。休日についてはどんなことをして遊ぶことが
多いかを聞いた。
また、テレビは1日どれくらいみるか、一番見る番組は何か、ゲームはするか、何かスポーツクラブ
や習い事はしているか、といった項目に対しても答えてもらった。 また、遊びの他にも兄弟の有無や
人数についても調べた。
他にも、社会的スキルを測定する質問紙をあわせて行った。社会的スキルとは、人が人とコミュニケ
ーションをとるのに必要な対人関係能力などのことである。この質問紙は、
「わたしは友達が困っている
時、手助けをする」
、
「わたしは友達が失敗すると、笑ってしまう」
、
「わたしは友達が一人でさみしそう
なとき声を掛ける」
「わたしは友達がいっしょに帰ろうとさそってきたとき、ことわる」
「わたしは友達
が困っていても、ついそのまま見過ごしてしまう」
「わたしは友達からなにかを頼まれたとき、断る」な
どといった21項目の質問で構成されており、
それらにあてはまるかどうかを4件法で回答してもらった。
2-3 調査方法:以上の質問を1冊の質問冊子にまとめて、配布し回答してもらった。
3.結果
これまでに、10月末に大学生の調査については実施し、116名から回答をもらい、また11月には北九州
市内の公立小学校2校にアンケートを行い、4年生69名、6年生63名に回答してもらった。
その結果、昼休みの遊びの形態変化については、昼休みに遊ぶ日数については各学年とも差はほとん
どなかったけれど、昼休みに遊ぶ人数は 4 年生が多いという結果がわかった。
また、昼休みに一人遊びをする人は各学年とも少人数であることがわかり、昼休みに遊ばない日数は各
学年とも少ないが、そのなかで 6 年生の遊ばない日数が少し多いことがわかった。この結果から、昼休
みには、ほとんどの人が友達と遊んでいることがわかった。
次に、放課後の遊びの形態変化について、放課後に遊ぶ日数には各学年に差があり、大学生が 6 年生
の時に遊ぶ日数が多いことがわかった。
また、放課後に遊ばない日数にも差があり、小学 4 年生、6年生が多いことがわかった。放課後に遊
ぶ人数と放課後の一人遊びは、各学年とも差はなかった。その理由として、最近の児童は習い事をする
人が多いためではないかと考えられる。また、昼休みと比べて放課後は遊ぶ人数が少なくなっている。
47
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
これは、学校が終わると友達の家や自分の家などで、テレビゲームなどで遊ぶ人が目立ち、学校で遊ぶ
人が少ないためこのような結果になったと思われる。
遊びの内容について、昼休みに友達と遊ぶ内容は、各学年ともボール遊びが多い事がわかった。しか
し、同じボール遊びでも、大学生が 6 年生の時は、サッカーや野球といったものが多かったのに対し、
4 年生や 6 年生は野球やサッカーをしている人は少なく、ドッジボールやバスケットボールといった遊
びをしている人が多く、同じボール遊びでも変化していることがわかった。
昼休みに一人での遊びは、ほとんどが読書やお絵かきということがわかった。
また、放課後に友達と遊ぶ内容は、昼休み同様にボール遊びは多いが、一番多いのはゲームだという
のがわかった。
次に、放課後に一人で遊ぶことは、ほとんどの人がゲームだということがわかった。また、6 年生に
パソコンを使った遊びをしていることがわかった。最後に土、日曜日の遊びについて、土、日は小学生
(4 年、6 年生)に比べて、大学生が 6 年生の時の方がボール遊びをしている人が多いことがわかった。
また、全体的に外で遊ぶ遊びよりも室内でゲームなどをする人が多いことがわかった。
テレビの視聴変化について、テレビを見る時間については 6 年生や大学生が 6 年生の時に比べて、4
年生が見る時間が少ないことがわかった。また、テレビを見る種類はアニメ、バラエティー、ドラマが
ほとんどだということがわかった。また、意外にも 4 年生、6 年生にニュースを見ている人が多いこと
がわかった。
ゲーム遊びの変化について、ゲーム遊びをする割合については、小学生(4 年、6 年生)に比べて、
大学生が 6 年生の時にゲームをしている人が多いことがわかった。また、ゲームをする時間も小学生(4
年、6 年生)に比べて、大学生が 6 年生の時の方がゲームをする時間が長いことがわかった。しかし、
今回の調査では、大学生の被験者に男性が多いことからこのような結果になったと考えられる。男性だ
けで比べてみると、各学年の児童、学生に差はないことがわかった。
パソコン使用の変化について、まずパソコンを持っている割合については、小学生ではパソコンを持
っている人が多く、大学生が 6 年生の時ではパソコンを持っている人が少ないことがわかった。また、
使用時間については差がないことがわかった。パソコンの使う方法は、インターネットやゲームがほと
んどであることがわかった。
次は、スポーツクラブ活動の変化について、各学年の児童、学生も半数以上が入っていることがわか
り、そのほとんどが、野球、サッカー、水泳であることがわかった。
次は、習い事の変化について、習い事は 4 年生、6 年生、大学生が 6 年生の時は共通して塾や習字が
半数を占めていることがわかった。特に、大学生が 6 年生の時には、習字や硬筆が多かったのに対し、
小学生(4 年、6 年生)は、英語や英会話といった塾に通っている人が多いことがわかった。
社会的スキルとの関連については、性別や昼休みの一人遊び、放課後の一人遊びに関連していること
がわかった。このことから、女性の方が社会的スキルが高いことと昼休みや放課後に一人で遊ばずに複
数の友達と遊んでいる人のほうが社会的スキルが高いことがわかった。
4.結論、課題
今回の調査結果から、現在と今の大学生が小学生であったころの遊びを比較すると、昼休みの遊びに
は変化はみられなかったが、放課後の遊びには変化が見られることがわかった。まず、放課後の遊びの
内容はボール遊びなど外で遊ぶことよりも室内でゲームをするといった遊びに変化している。また、放
課後に遊ぶ頻度も減ってきており、
習い事をしている人が昔よりも増えていることが示唆された。
また、
土、日の遊びは、室内でゲームをする人が多いことがわかったといったことからやはり、今の遊びは外
で遊ぶよりも室内でゲームをする遊びに変化している傾向があるといえる。
社会的スキルとの関連については、
性別と昼休みや放課後に一人遊びに関連していることがわかった。
このことから、1 人で遊ぶのではなく、複数の友達と遊ぶことによって社会的スキルを身につけていく
ことがわかった。
今回の問題点として、今回の調査では、小学生(4 年生、6 年生)に比べて大学生の調査で女性が少な
かった。社会的スキルの得点は女性の方が高いという結果がでていたこともあり、もし女性のデータを
増やし、男女半々のデータにしていたらまた違った結果になったんじゃないかと考えられるため、今度
は女性のデータもとったものを作りたいと思う。
48
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ポ ス タ ー セ ッ シ ョ ン 編
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ジャージのデザイン性の研究 [作品].[ポスター]
木村研究室
045004 生悦住 諒
1.研究の目的
この研究の目的は、10 代後半から 20 代前半までの男性をターゲットにジャージに対する意識を調査す
ることによって、今どのようなジャージが流行しているかを調べ、今後どのようなジャージが流行して
いくかを考えていく。なぜジャージかというと、自分がよく着るということもありますが、スポーツを
行うときだけに限らず、最近では私服として活用するなど、幅広い利用方法があるので興味がわきまし
た。また、なぜジャージと呼ばれるようになったのかなど、人々にとってこれほど身近な衣類はないと
思い調べてみたくなりました。
2.研究の方法
まず、苅田、小倉、福岡のスポーツショップを回り、さまざまなジャージを撮影し、どのブランドの、
どのような形が良く売れているかを調べる。
次に、街に出て対象者の声を聞くためアンケート用紙を作成し、そのアンケート結果をまとめて各地域
ごとの、使用場所、価格などを中心に集計し、最終的にどのようなジャージが今必要とされているかを
調べて、さまざまな声を参考によりよいジャージをデザインしていく。
氏名
年齢
地域
スポーツ歴
スポーツ種類
ジャージ有無
枚数
メーカー
価格
使用頻度
使用場所
選定理由
その他
上のような図を作成し、苅田、小倉、福岡の対象者 100 人にアンケートを行った。
その他
テニス
バレー
バスケット
横棒 1
陸上
サッカー
野球
0
20
40
上の図は、100 人のアンケートのスポーツ別の割合を表したもの。
49
60
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
上の写真は各有名ブランドの代表的なジャージ。
3.対象者 100 人のアンケート調査
100 人のアンケートをとり終わった段階で、スポーツ別では片寄りが出てしまうため、各地域別にグ
ラフをまとめる事にした。
各スポーツ店による写真撮影と定員への調査の結果、対象者の年齢には派手目の色合い、価格にはそ
こまでこだわりは無いことがわかった。
4.結論と今後の課題
対象者の年齢では機能性や価格よりも、デザイン性が最優先されている。一概に派手な色ばかりを好
むわけではないが、原色を基本としたシンプルかつ目立つジャージが好まれている。今後の課題とし
ては、それらの意見を参考にした、新しいジャージをデザインしていくことです。
デザインとしては黒メインとしたシンプルなものに仕上げていくつもりです。今までのジャージには
なかった上の服から下の服にかけてのインパクトのあるバックプリント使って仕上げていきたいです。
前の部分に関しては、シンプルにワンポイントで仕上げていきます。
50
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ユニバーサルデザインとシステムキッチン [作品,ポスター]
木村研究室
045006 石橋 知倫
1.はじめに
1-1 研究の背景と目的
現在、いろいろなところでユニバーサルデザインという言葉をよく見かける。インターネットの検索
欄に[ユニバーサルデザイン]と記入すれば TOYOTA,富士通、コクヨ、TOTO など大企業が出てくる。この
ことから、企業活動の柱としてユニバーサルデザインを取り入れている事が伺える。なぜ今、ユニバー
サルデザインが求められるのか。その背景には日本の高齢社会にある。人間みな歳をとれば身体能力が
低下し、今までできていたことができなくなる。そこにユニバーサルデザインを考慮した製品・サービ
スがあれば高齢者や障害者の役に立つのです。また、企業が多くのユーザーの意見を反映し、よりよい
製品・サービスの提供をしようとすれば「多くの人によりよいものを」と考えるはずである。そうなれ
ばユニバーサルデザインを企業の活動方針の柱にすることは自然な流れである。ユニバーサルデザイン
はこれからの社会に必要不可欠なものだと言える。
ではなぜシステムキッチンに焦点をあてなのか。それは人間の生活に密着したものだからである。人
間が生きていくために必要な「衣・食・住」
。その中でも「食」と「住」を兼ねた場所=台所と考えたか
らである。
生活に密着したものにユニバーサルデザインが考慮されていなければいけないのではないか。
と考えたのである。生活に密着したものから変えていかなければそれ以外のものを変えることはできな
いと思う。この研究を行うことでより多くの人が快適で文化的な生活を営めることができ、もののユニ
バーサルデザインだけでなく人の心を変えるようなデザインを目標とする。
1-2 本研究の有用性
最近、男女同権という考え方が広まり、男女共同参加社会基本法(1999)や男女雇用機会均等法(1985)
など多くの法律が制定されている。しかし、実際のところ男女同権の言葉だけで考え方やものは変わっ
ていないのではないかと考えた。2006 年、世界フォーラムが発表した、世界各国の男女差別の度合いを
指標化する「男女格差報告」(Global Gender Gap Report 2006)によると、格差が最も少ないのはスウェ
ーデン王国で、北欧諸国が上位をほぼ独占している。欧米諸国は男性にのみ徴兵制を課しており、反対
に法制度上男女差のない日本は世界 115 カ国中 79 位と、途上国並みの最低の評価となっている。これは
日本女性が責任を伴った影響力のある仕事に就いている割合や国政への参加率が低いといった実態があ
るためとされていた。ではなぜ女性の社会進出が進まないのか。それは日本の社会常識による壁がある
からである。家事洗濯は女性の仕事であるという言葉が女性の社会進出を妨げている。男女関わりなく
仕事や家事を行っていくことが一番だと考える。まず家庭内の壁をなくさないことには女性の社会進出
はないと思う。本研究によりシステムキッチンのユニバーサル化が行われれば主夫が増え男女同権の社
会の実現に近づける。
2.研究対象・方法
2-1 研究対象と方法
本研究は、日本の台所(システムキッチン)における歴史的流れを調査するためとユニバーサルデザイン
の知識を得るため、文献史料調査を中心に行う。日本の台所の変遷を知る為に「台所空間学」、
「台所空
間学事典」などを通読し、ユニバーサルデザインについては「誰のためのデザイン」
、
「新・ユニバーサ
ルデザイン」を参考にし、日本のユニバーサルデザインの現状を調査した。その他、情報収集のためイ
ンターネットを使用し幅広い情報をあつめた。また、文献だけなく実際に自分の目で確かめることがよ
り考察を深めることができると考え、戦前の台所事情を知るため福沢諭吉旧居(大分県中津市)、森鴎外
旧居(福岡県北九州市)、そしてシステムキッチンメーカーのショールーム見学、福祉器具を扱っている
アシスト 21 などの見学を行った。これにより日本のシステムキッチンの問題点を挙げ、その解決方法に
ついて述べ、理想となるシステムキッチン像を作成し提案する。
2-2 デザインの計画
ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザイン・センター所長であったロナルド・メイス
51
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
(1941-1998)が中心となってユニバーサルデザインを7つの原則とそれからなるガイドラインによって
定めている。このユニバーサルデザインの7原則とそれに伴うガイドラインに該当するデザインをして
いく方向である。
3.具体的な成果
3-1 森鴎外、福沢諭吉旧居の調査
戦前の建築物である森鴎外、福沢諭吉旧居を訪れて台所(土間)を見てびっくりした。それは竃と流
しだけがあるだけだったからだ。しかし、偶然観光客の老人が裕福な家だという言葉を口にした。当時
ではかなり裕福造りなのだった。考察を深めていく中で釜と流しがあれば当時にしては完璧な台所なの
かもしれないと考えた。当時では食料は畑から運ばれ、流しで洗い、竃で調理する。このように時代に
合ったデザインなのかもしれないと感じた。人に合わせたデザイン、時代に合ったデザインをすること
が大切なことだと感じた。
3-2 日本のシステムキッチンメーカーのショールームの調査
日本のシステムキッチンメーカーの松下電工、クリナップ、タカラ、TOTO、YAMAHAなどの
ショールーム見学を行った。現代のシステムキッチンはユニバーサル化、電気化が進んでいることを実
感した。たとえば、上面操作可能な食器洗い乾燥機やIHクッキングヒーター、電動昇降ウォールユニ
ットなどが見られた。収納にしても軽い力で引き出せるようななめらかな作りになっていることも全社
のシステムキッチンに見られた。また、座ったまま作業ができるような工夫も見られた。
昇降キッチン(図-1)はアシスト21という福祉機器を扱っている病院で見たものである。ここにユ
ニバーサルデザインの①、⑥を満たす条件がある。天板の高さが中央部分にあるボタンで簡単に操作す
ることができるため、幼児、成人、老人、車イスの方、関わりなく自分に合う高さで作業することを可
能とする。また、無駄な収納が一切なく車イスに座ったまま作業することができるように工夫されてい
る。車イスの方だけでなく長時間使用する際座って作業できることで体にかかる負担を軽減できるのも
特徴である。しかし収納部分が少なく座ったままでは上部のものを取り出すことができないことが問題
点である。
図-1 福沢諭吉旧居
図-2 座れるシステムキッチン
図-3 昇降キッチン
3-2 デザインのコンセプト
デザインのコンセプトは「楽」である。
「楽」には2つの意味がある。作業が楽で使いやすいキッチンを
創造すること。そして、幅広い方が使用することができ料理の楽しみを感じられるようなデザインであ
ることが本研究におけるデザインのコンセプトとする。
4.終わりに
4-1 システムキッチンの理想像
研究を進めていく中でシステムキッチンの理想像を考える機会が何度もあった。その度にやはり使用
する人にフィットしたものでなければいけないと強く思うようになった。キッチンの理想像はやはり自
分にあったオーダーメイドのキッチンが1番の理想である。
4-2 結論と問題点
だれでも使いやすいシステムキッチンの理想は 4-1 で触れたようにオーダーメイドのキッチンである
が、それは理想であって携帯電話のように1人に一台という訳にはいかない。使う人が誰であっても使
えるユニバーサルデザインシステムキッチンが必要となる。そこで1番の問題点は天板の高さにある。
高さが合わなければ長時間の作業は難しくなり、高さがまったく合ってなければキッチンに立つことも
許されない。システムキッチンにおいて食器洗い乾燥機などの機能が整っていても高さが合わないと致
命的である。誰もがキッチンに立てるシステムキッチン、その問題の解決策は昇降キッチンであるが、
現実にはコストが掛かるため社会には広がっていないことが問題点である。
52
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
遊びと人 [作品,ポスター]
木村研究室
045011 大石健二
1.はじめに
人ははるか昔の古代の時代から現代に至るまで遊びをもって人生を楽しみ、充実した時間を過ごそうと
しました。そして遊びは芸術作品や新たな技術を生み出すきっかけであるとも考えられています。
人が今のような快適な暮らしをできるようになったのも人の興味や遊びが大きな発信源になっています。
しかし、普段人は遊びを意識して行うもしくは考えることをしていません。
(意識しないからこそ遊びだ
という考え方もできる)そこで私は遊びについて考察し人がより楽しめ、人生の中にゆとりや安らぎを
感じることができる遊びの有用性を研究し、遊びのツールを制作します。
1-1 研究の背景
毎日がつまらない、日々の暮らしに余裕を感じない。どうすればいいのだろう。今も昔もそんな悩みを
持つ人が多いのではないでしょうか。しかし悩みはあっても、私は楽しみを求めて生きようとすること
が人間の本性であると考えます。そして個人差があれどもその本性は幼少期から培われた感覚であると
考えます。
悩みや不満があれば人それぞれには解決策があり、たとえば身近な例として趣味、スポーツ、カラオケ、
友人との会話、飲酒などで日々の生活の中でたまった不満を吐き出し、発散させている事が大多数だと
考えられます。私もその中の一人でもあります。悩みや不満を溜め込み、その溜め込んだものを発散さ
せる。その繰り返し。私はその一定の流れに疑問を持ちました。
悩みや不満は人間生きていれば誰にでもつきまとうもの。しかしそのストレスを溜めず日々の生活の中
で少しずつ解消することはできないのだろうかと思いました。
そこで解消する方法として生活のリズムの中に意図的に遊びを取り入れることで悪循環なく社会生活を
過ごすことができるのではないかと考えました。
1-2 研究の目的
現代社会では遊びは楽しむ、娯楽、休養、リラックス、ストレス解消などの目的を持ち、人の生活にと
って欠かせない要素です。また人は意識的にまたは無意識的に生活の中に遊びを取り入れようとする傾
向があります。
その傾向をうまく活用し遊びの要素を併せ持った日常生活にあるおもちゃ、文房具雑貨などを使用する
ことによってストレスの発散や楽しいと感じる時間を過ごすことを可能にすることが目的の一つである。
遊びを考えるもしくは体を使い遊ぶことはいわゆる「ふざけ」であるとし、ふざけた個人が人に与える
影響は遊びとなるのかを調査する。
(ここでいう目的の遊びとは人がふざけを感じたときに楽しい、面白
いと感じるかどうかのことを意味する)
「ふざけている」を表現する方法としてポスター等で表現する。
2.研究計画
2-1 参考資料から遊びの基本要素を取り出す
参考資料 「遊びと人間」ロジェ・カイヨワ 著
(模倣):演劇、物真似、ままごと
(めまい):メリーゴーランド、ブランコ
(競争):運動や格闘技、子供のかけっこ
(偶然):くじ、じゃんけん、ギャンブル
著者は4つのカテゴリーに遊びを分けておりそこから遊びの基本的な要素を学び、要素一つ一つの特性
を生かしたツールの制作をおこなう。
参考資料 「幼児が心に出会うとき」子安増生・服部敬子・郷式徹 著
著者である三名の発達心理学者が3~6歳児が一緒に同じクラスで学ぶ「縦割り保育」の幼稚園に出か
け子供たちが「心の理解を」発達させていく様子を観察した様子をつづったもの。
子どもたちが生まれて初めて幼稚園という社会の中で砂場遊びやお片づけをしていき社交性を養ってい
き仲間とともに人間関係を育み、遊びを通じて心の表現をしていく。
53
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
人は幼少時からの経験で、遊びが精神的に安らぎを与え、身体に程よい刺激となるということを脳と体
が記憶している。
2-2 研究の方法
ロジェ・カイヨワの「遊びと人間」から取り出した 4 つの遊びの要素から実際に遊びのツールもしくは
方法を考える。
模倣では既存の作品のもしくは製品に遊びを持たせ新たなる機能を持った遊びのツール(おもちゃ等)
へ変化させる。
もしくはふざけを感じることができるような作品へ変化させる。例としてはマルセル・デュシャンの
(1919 年)のような作品
「L.H.O.O.Q.」
「幼児が心に出会うとき」子安増生・服部敬子・郷式徹 著
そこで人が幼少期に初めて出会う遊びとは何なのかを発達心理学の参考書を用いて調査し、子どもは遊
びの中から何を学び成長にどういった役割を果たすのかを考察する。
そして子供と大人が遊びから得るものがどう違うのかを比較する。
それは人の成長段階において年代別に遊びに対する興味、目的の変化を知る為である。
3.デザインコンセプト
遊びのある(遊びを感じる)ものをそして人の行動(仕事)を調査したときの調査結果としての写真で
す。
トルコのヒエログリフ(民芸品)
トルコのつぼ職人
4.おわりに
遊びについて研究するに当たって何を遊びとして感じるのか、なぜ遊びとして捕らえるのかについて主
観的な考えが先行してしまうことが大きな問題点としてありました。それは人が何を美しいと感じるの
かとか、複数人同じものを食べてもおいしいと感じるのに差があることと一緒のことです。
客観視した遊びの捕らえ方としてまず遊びの対象である人を観察することが重要であると学びました。
そして年齢問わず様々な人と一緒の時間を過ごしながら、ともに遊びを介してコミュニケーションを図
ることが研究にとってもっとも近道であり、やらなければならないことでした。
それは今まですることができず大きな反省点です。
「遊びと人」のテーマのひとつである遊びの感覚の世界を表現しなければならないということが遊びを
主観で捕らえてしまった大きな原因だと感じています。
誰もがこの世に生まれてきてからいままで経験したことのある遊び。誰もが遊び日々成長、変化してい
るのも遊びがあったからこそだと現在考えるようになってきました。
私自身そして私と関わったすべての人が遊びの時間を有効に使い、人の生活をより快適に滑らかなもの
にするため、今後も日々の生活のなかで遊びを提案してゆきたいです。
54
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ゆらぎ照明[作品].[ポスター]
木村研究室
045014 岡本健太郎
1 はじめに
1-1 研究の背景
私がゆらぎ照明を作ろうと思った目的は、癒しというのは誰もが必要なモノだと思います。また、癒
しとは人々が生活していくうえで必要不可欠なものだと思います。私は暇なときや時間が空いたとき、
街角などにおいてある旅行パンフレットを見ます。そして気が付くのは、最近のパンフレットに「癒し」
をテーマにしたものが多いのではないかということだ。はっきりと「癒し」という文字が使われている
ものもあります。また、「癒し」という文字は使われていないまでも、「癒し」を意図したものを感じ
るものもある。確かに、最近「癒しブーム」という言葉がよく聞かれる。「癒しグッズ」といったもの
が店にはあふれ、「癒しコーナー」といったものができていたりする。香りで癒され、光で癒され、音
楽で癒され、映像や、柔らかさや、可愛さで癒されるといった具合である。なんでもかんでも「癒し」
である。現代社会はそんなにも「癒し」を必要としているのかと疑問に思うほど、「癒し」だらけだ。
すべての人が頑張っていて、疲れ果てて、癒しを求めているのか。すべての人が頑張っていないとは言
わないが、逆にすべての人が頑張っているとはいえないだろう。なので、すべての人の役に立てるもの
を作りたいと思い、癒し照明を作ろうと思いました。
1-2 研究の有用性
癒しとは浄化(カタルシス)を得ることだと思う。こり固まった筋肉や感覚や感情や思考を循環させる
ようにもみほぐされた瞬間に得られるものだと思う。癒しの持つ力は心身ともに持続的・恒久的・継続
的な安らぎの効果をもたらす。過激さの持つ力は、瞬間的・一時的なもので、しかも往々にして強い心
的刺激を伴うので心身に悪影響を及ぼす可能性がある。人間には心身ともに癒し要素を持つものが本質
的には受け入れられる。特に心身にストレスがたまっている場合などは過激さは不適切である。バブル
時代は白熱した刺激が好まれる傾向もあったが、バブル崩壊後、社会が不安になってくると過激な刺激
はよどみ嫌われた。元々、過激さには人体危険が伴うのが常であり、それを求める傾向は一種の自虐行
動である。心理学的に人間が本質的に求めているのは安らぎと平穏であり、もともと人間は攻撃的な要
素を好まない。もしくは極力避けることで自己防衛を図る生き物なので、癒しを求めることを攻撃的要
素を避ける意味でも非常に大きな意味を持つと本能的に知っている故の現象である。
2 デザイン計画
暖炉の灯やローソクの灯りにはなぜ
か癒される。だからわたしは、自然
な光で、照明を作りたいとおもって
います。左の写真のゆらぎ照明を参
考にしたデザインで作成しています。
また、素材はライミックスという素
材を使っています。そして炎は小さ
なろうそくを使って照明をつくって
います。普通の電球でろうそくのよ
うな情緒ある演出をすることができ
る照明があります。
しかしわたしは、
火の光にこだわりたいので、そのよ
うな電球よりもろうそくの炎をつか
いました。また普通の電球よりも火
の光のほうが癒し効果があるのは科
学的に確かめられています。
図-1 音に反応して灯りが揺らぐ照明
55
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3 具体的な成果
3-1 進行状況
田川にある Limix の会社のライミックスという素材を提供していただきました。それを知り合いの石
を加工できる方に頼んで加工してもらっています。
3-2 デザインのコンセプト
デザインのコンセプトは「癒し」である。私の考える癒しとは、心身の緊張を緩める事だとおもいま
す。たとえば体が病んでたり疲れたりしているとストレス状態で緊張していますね、そんなとき、マッ
サージやエステや休息をとることで体の緊張を緩めてやっと元気を回復する準備ができるかな、また精
神の緊張を緩めることは、心をゆるめる、ゆるすこと、つまり心を緩めている人は敵意や対立強制お仕
着せなどありません、素直な気持ちで感謝やゆるしができます、心の緊張を緩めて癒されます、そのこ
とが分かれば自分も癒せ、人を癒せます、けしてモノに頼るものでは無いのです、でも常に癒しを求め
るのは勘違いの始まりです、癒しを探し求める人はそのことにきずきません、人が一生懸命にガンバッ
テ疲れたときに癒しが必要になるのではと思います。優しく、清潔に、丁寧に、美味しく、優しい言葉
で、すべて癒されることになります。すべての人がわたしの作った照明で癒すことができるくらいのデ
ザインをコンセプトとする。さまざまなゆらぎ照明の例が下の図のとおりです。
4 終わりに
4-1 癒しと生活
研究を進めていく中でわたしたち人間が生活していくうえで癒しとはなくてはならないものだという
ことがあらためてわかった。癒しがあるからがんばれる、がんばるから癒しが必要になるとわたしは思
います。
4-2 結論
もともと人間は攻撃的な要素よりも自己防衛し、安らぎを得る事を好む。その結果現れたのは心の癒
しの概念である。過激な事を避け、継続的な安らぎを求める事が心の癒しである。この心の癒しを得る
為、穏やかな気持ちにさせてくれる物を求める傾向が最近強くなりつつある。心の癒しを求め、時には
物に頼り、時には人に頼り、攻撃的な精神を沈めるのである。心の癒しを得る事で人間はバランスをと
って生活していると言える。刺激を求め続け、過激な事が続きすぎると、人間は心の癒しを求めるので
ある。
56
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ユニバーサルデザインとトイレの概要 [作品,ポスター]
木村研究室
045047 吉川裕崇
1.研究目的
現在、トイレは人間の生活には欠かせないもの(場所)となっている。トイレの中には多機能トイレか
ら普通のトイレと様々な種類が世間に出まわっていて、もちろんその中にはユニバーサルデザインのト
イレも存在する。ユニバーサルデザインとは、できるだけ多くの人が使いやすいという定義があるが、
私はユニバーサルデザインのトイレは誰にでも使いやすいとは決して思いません。この研究では、ユニ
バーサルデザインとトイレの知識を深め、ユニバーサルデザインのトイレについて考えていく。なお、
トイレの対象は、日本家屋にある大便器を主とする。
2.研究の方法
2-1.研究の流れ
ユニバーサルデザインの定義、昔から最新のトイレについて学び、ユニバーサルデザインのトイレ
について考える。問題がある点に関しては改善案を出し、私が思うユニバーサルデザインのトイレに
ついて考えをまとめる。
2-2.使用する資料・データ・ツール
インターネットでのユニバーサルデザイン・トイレに関する資料、ユニバーサルデザイン・トイレ
に関する本、昔の家屋にあるトイレやショールーム・モデルハウスにあるトイレ等。
3.研究結果
3-1.ユニバーサルデザインについて
ユニバーサルデザインとは、
「できるだけ多くの人が使いやすいようにデザインする」
が基本である。
対象者を障害者に限定しないところがバリアフリーデザインとは異なる。ユニバーサルデザインの提
唱者であるロナルド・メイスの「ユニバーサルデザイン 7 つの法則」の 7。原則には、ユニバーサル
デザインについて詳しく定義している。また著者 D.A.ノーマンの「誰のためのデザイン?」より、こ
れからの家屋は、デザイナーのデザインによっては、安らぎの場所にもなり、イライラの種にもなる
と書かれていて、ひとつのデザインで生活や環境が変わってしまうということが解った。
3-2.トイレについて
はじめに、日本のトイレは約 5,500 年前に川や湖に桟橋を作り、桟橋から用を足す桟橋形水洗式ト
イレ、一般でいう「かわや」が始まりであるといわれている。7 世紀末あたりから汲取式トイレは存
在していて戦後の木製トイレから陶器トイレへ移り変わるまで、汲取式トイレは一般的であった。実
際に、田舎にある昔の家屋や、福沢諭吉旧居へ行って調べました。特徴として、木製トイレや陶器ト
イレを置いてあるだけという造りのトイレがありました。昔は現代のトイレみたいに消臭機能がなか
ったので、生活の中心の場所となる居間などからはなれた場所にトイレがありました。風通しを良く
したりして臭いを防ぐ工夫が見られました。またどの家屋も便を溜めて肥料として使い、よい循環が
出来ていることが良い点である。
福沢諭吉旧居
島根県出雲市
57
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
次に、現代のトイレは昔のトイレと比べて大きく変化している。誰でも使えるという点で様々な機能
(ウォシュレット、手すり、点字等)があり、一般家庭では水洗のトイレが多くの割合を占めている。家
屋にはあまり見られないが、商業施設などにはパウダールームやフィッティングルームが設けられてい
る。また、バイオトイレという地球環境を考えた未来のトイレも開発されている。ショールームへ見学
に行き最近のトイレの調査をしたところ、
自動洗浄のトイレや省エネを考えたトイレが展示されていて、
トイレを使用する側のことを考えてデザインしてあることが伝わってくるものが多くあった。
TOTOショールーム
ナショナルショールーム
3-3.理想のトイレ
私が今回作成したトイレは上下に高さ調節が可能で、便座が左右にスイングするトイレです。日本
では年々高齢化が進んでいて高齢者を介護することが当たり前の時代になっている。介護をする側も
される側も現在のトイレではトイレに座ることや、用を足し終えてからの移動がスムーズに行えない
ので、トイレへ行くだけでかなりの時間と体力が必要になります。また、現代の男の子は座ってトイ
レをする習慣を教わっている子が増えているそうです。そこで、幅広い年齢層に対応できるように、
トイレの高さ調節が可能で便座が左右にスイングするトイレを考えました。トイレの高さを自由に変
えることで、小さい子どもでも早くから自分で用を足す訓練ができます。子どもから大人まで、自分
の使いやすい高さに調節することが可能です。また、便座が左右に動くことにより介護をする時の動
作をスムーズにおこなえるようになります。介護をする側もされる側も体力と時間の消耗を抑えるこ
とができ、生活も今より楽になると考えられます。
4.研究の結論
研究結果のひとつとして、ユニバーサルデザインがまだまだ普及していないことが解った。テレビや
広告などで宣伝されてはいるが、実際のところはあまり知っている人は少ない。友人に知っているか聞
いてみると、バリアフリーデザインと区別がつかないといっていたので、そういう人も多いと思う。ト
イレについても同様にユニバーサルデザインは普及し始めたばかりだとショールームへ行き感じた。率
先してユニバーサルデザインの商品を作っている企業もあったが、見た目のデザインを重視している企
業もあった。このことからトイレのユニバーサルデザインへの取り組みは、まだ始まったばかりだと思
った。対象者を限定してデザインをするのではないので、ユニバーサルデザインはデザインの中で一番
難しいデザインなのではないだろうか。だからこそまだまだ普及していないのだと私は思う。私が考え
たトイレも実際に製作しようと思えばコストがかなり大きくなると思う。そうなると利用者に販売する
値段も高額になってくるので実現するのは難しいと思う。今回の問題点のひとつはそこだと思う。利用
者も良いものが使いたいと思っていても、値段が高くなればやはり安価な商品を選ぶのが普通で、中に
は使えるものであればなんでも良いという考えの人もいるだろう。
いかに使う側のことを考えられるか、
また低コスト・低価格のものをデザインするかがデザイナーに要求されるということが解った。もうひ
とつの問題点としては、トイレを上下させることにより配管の位置が今までのトイレとは別の位置にな
るということもある。これらの問題点を今後の課題としていけば、今回の作品よりも良いものが完成す
ると考えています。
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
画面アスペクト比が見た人に与える影響に関する考察[作品,ポスター]
趙研究室
045002 阿蘇 宏一
1.研究の目的
マルチメディア時代に突入し数年が経ち、質の高い映画、画像、広告など様々なメディアを世界中で
多くの人が日常的に目にするようになった。ポスター、テレビ、デジタル放送、映画、映像ソフト等が
存在し、それらのものには様々なアスペクト比が存在する。さらに、最近になってインターネット上で
も様々な web サイト等で動画を視聴できるようになった。今回の研究はそれらのメディアにおけるアス
ペクト比についての研究である。様々な画像や動画にあったアスペクト比があるはずである。アスペク
ト比を変えることにより見る人にどのような影響を与えるのか。また、それらのアスペクト比がそのメ
ディアを効果的に見せるのに適したものであるかを検証していくことを目的とする。
2.研究の方法
2-1 既存のメディアのアスペクト比の分析
テレビ、映画、インターネット上など様々なメディアでのアスペクト比を分析し、各アスペクト比の
特徴を捉えた。
2-2 アスペクト比の検討
2-1 で捉えたアスペクト比毎の特徴を活かし、対象物を見た人に効果的な印象を与えるにはどの様な
アスペクト比が適しているのか、既存のメディアの比率と比較しつつ、対象物毎の具体的なアスペクト
比の検討をした。その上で独自のアスペクト比の考案を行った。
2-3 考案したアスペクト比の検証
考案したアスペクト比と一般的なアスペクト比をそれぞれ複数の第三者に見てもらい、アンケートを
とり感想、意見を集めた。
2-4 考案したアスペクト比の修正
アンケートを基に考案したアスペクト比の修正を行った。
3.アスペクト比の調査
3-1 コンピュータの一般的なアスペクト比
通常のコンピュータのモニタはテレビの地上波放送、ハイビジョン以外の BS 放送などと同じくアス
ペクト比は 4:3。画面解像度の比率で、640×480・1024×768 がこの条件を満たす代表例である。BS
デジタルを含むハイビジョン放送はアスペクト比が 16:9 である。
コンピュータのモニタは VGA、SVGA、
XGA、UXGA、SXGA+などのアスペクト比は 4:3 だが、SXGA のみ 5:4 である。
3-2 映画の一般的なアスペクト比
・スタンダード・サイズ 横縦比が 1.37:1 または 1.33:1 の画面サイズ。かつての映画の標準サイズで
あった。アイマックス映画では 1.33:1 を採用している。テレビ放送の標準画面も同じく 1.33:1(4:3)であ
る。
・ビスタ・ビジョン 横縦比が 1.66:1 程度の横長の画面サイズ。ヨーロッパ・ビスタ(1.66:1)とアメリ
カン・ビスタ(1.85:1)との 2 種類がある。
3-3 テレビの一般的なアスペクト比
・ノーマルサイズ 横縦比は 4:3。スタンダード・サイズと同じ比率で NTSC の標準画面サイズである。
4:3 テレビの場合はそのまま表示される。ワイドテレビでノーマルサイズ番組を視聴する場合は、4:3
サイズの映像の左右にサイドバーを付した形で表示される。
・ワイドサイズ 横縦比は 16:9。ビスタ・サイズとほぼ同じ比率で HDTV の標準画面サイズである。 ノ
ーマルテレビでワイドサイズの番組を見る場合は、上下に黒枠が付いた形で表示される。
3-4 被写体別のアスペクト比の検討
実際に様々な被写体に対して、その特徴を見た人に伝えるにはどのアスペクト比が適しているのか検
討を行った。以下はその一部である。
59
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-4-1 検討項目
・縦に長い対象物 ・横に広い空間 ・奥行きのある空間 ・縦横比がほぼ均等な対象物
・対象物を拡大したもの ・対象物を縮小したもの ・高さの狭い空間
3-4-2 検討の具体例
①縦長の建物のみを伝える際のアスペクト比
図 1 アスペクト比 4:3
図 2 アスペクト比 1:2
縦長の建物のみを伝えるにはどの様なアスペクト比が適しているかについての検討を行った。図 1 はテ
レビ等で一般的なアスペクト比である 4:3 で撮影したものである。4:3 は縦よりも横が長いため、建物
以外のものも多く写ってしまっている。そのため、見た人に建物以外の情報も伝えてしまっている。図
2 は建物のみを捉えたものである。余計なものを取り去り、建物のみを写すのを追求した比率となって
いる。縦に長い物のみを見せようとする際には、やはり縦長の比率のほうが適しているのではないかと
いう答えに至った。
②横に開けた空間を伝える際のアスペクト比
図 3 アスペクト比 4:3
図 4 アスペクト比 16:9
図 3 は図 1 と同じくテレビ等で一般的なアスペクト比である 4:3 である。横の比率が縦の比率
より長いものの、横に広い風景を十分に表現しきれていない。図 4 は最近、テレビ等で一般的になりつ
つあるアスペクト比 16:9 である。4:3 と比べ横に広く、図 4 の場所が開けた雰囲気であるということを
見た人に伝えている。このように横に開けた空間を伝えるには、16:9 が適しているのではないかという
答えに至った。
4.結論と今後の課題
4-1 結論
一般的なアスペクト比の調査を行った。それをふまえて 3-4 のように様々な建物や風景等の雰囲気を
より見た人に伝えることができるかの検討をし、対象物毎に推奨するアスペクト比を考案した。それを
複数の第三者に意見を求め、考案したアスペクト比の修正を行った。
4-2 今後の課題
対象物毎にアスペクト比をそれぞれ突き詰めると連続的に違う対象物を見せた際の、対象物が変わっ
ていく流れがスムーズにいかない。突き詰めたアスペクト比を連続して見せるには対象毎にアスペクト
比が異なってもスムーズに見ることができる手法が必要である。
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
新しいインストルメント・パネルの提案 [作品,ポスター]
趙研究室
045019 北野 充
1.研究の目的
当研究では,自動車のインストルメント・パネル(以下インパネとする)を調査し,それを基にイン
パネの新しいデザインを提案する.
インパネには速度計等が配置されており,自動車を運転する上で必要な情報を得ることが可能だが,
同時に交通事故を招く要因にもなり得る.
交通事故の違反別発生状況では,前方不注意(いわゆる脇見運転)
が安全不確認に次いで二番目に多く,
高い割合を占める.
脇見運転の原因としては,路上の看板や携帯電話の操作など様々なものが挙げられるが,この中でも
インパネの注視に焦点を当てる.
速度計等の計器類は多くの場合ハンドルの真後ろのインパネに配置されるが,これを見るときに視線
を下に動かすために前方不注意になり、事故を引き起こす可能性が高くなる.
この問題に対し各自動車メーカーはセンターメーター等の工夫を懲らし解決を図っているが,それぞ
れに利点と欠点があり,改善の余地がある分野であることが伺い知れる.
何より,視線の移動が必要という点ではどのインパネも同様であり,この移動自体を無くす,あるい
は極力減らすことが必要である.
これらのインパネの配置方法などを調査して特徴を洗い出し,欠点を克服した新しい方式の創造を目
指す.
2.研究の方法
既存の乗用車のインパネのデータを各自動車メーカーのウェブサイトやパンフレット等から収集し,
文章にまとめる.
また,実際に乗用車に乗って目線の動きなどを調査し,研究の参考にする.
その他,参考資料として各自動車メーカーのウェブサイトやパンフレット等に記載されているデータ
を利用する.
上記の収集したデータを基に問題の解決を可能にする新しいデザインを検証し,インパネ及び車内の
モデリングを行う.
制作には以下のツールを使用する.
・Adobe PhotoShop
・Adobe Illustrator
・Autodesk 3ds Max
3ds Maxでモデリング・レンダリングを行い,PhotoShop及びIllustratorでテクスチャの制作やレン
ダリングした画像の調整を行う.
レンダリングしたデータは紙に出力するほか,シミュレーターに組み込むことで,実際に運転をしてい
る時のような目線の動きを体験することが可能になる.
シミュレーターとして以下のPCゲームを利用する.
・Image Space Incorporated rFactor
3.研究成果
3-1 調査
当研究を始めるにあたり,運転中にインパネ(速度計等)を確認する頻度について口頭による聞き込み
を学生や知人・友人に行った結果,多くの人は数十秒間に一回程度の間隔で確認していることが分かっ
た.
確認を行う理由については「現在の速度を確認するため」が最も多かった.
これはインパネにある各計器の中でも速度計を見る頻度が特に多く,自動車を運転する上で重要度が
高いことを示している.
61
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
また,インパネの国際規格について調査したところ,配置などについては国際規格によって定められ
ていないことが分かった.
そのため,インパネのデザインは自由度が高く,各自動車メーカーも様々な方式を模索しており,各
社の発表しているコンセプトカーでそれが伺える.
3-2 既存の方式
現在の自動車の大部分はハンドルの真後ろにインパネを配置するスタンダードなものを採用している
が,一部の自動車では特殊な方式を用いている.
ダッシュボードの中央にインパネを配置するセンターメーターや,フロントウィンドウにメーターを
投影するヘッドアップディスプレイ等がそれに当たる.
3-3 デザインコンセプト
3-1の調査から,当研究で提案する新しい方式では速度計の形状,配置を重点的に検証した.
視線の移動を最小限に留める方法として,以下の方式を考案した.
・アラウンドメーター(図-1)
運転者の周囲を取り囲むようにインパネを配置し、これをアラウンドメーター(周囲形計器)と名付け
た.
速度計は運転手の前面に大きく配置され,計器を注視せずとも視界に入るためにおおよその把握が可
能になっている.
ハンドル上部に表示されるギアセレクターを除き,残りの計器類をダッシュボードの中央に配置する
ことで計器類の配置をはっきりと区切り,情報の取捨選択を容易にした.
図-1 アラウンドメーター
4.結論
当研究ではインパネの新しい方式の創造を目標としたが,数十年以上もの間現在の形を維持し続けた
方式を打ち崩すのは困難だった.
それは,インパネへの視線の移動を少なくすることは運転中の視界を狭くすることに他ならない点に
集約される.
極論すればインパネを目前に配置することで一切の視線移動は無くなるが,それでは前方が見えなく
なってしまう.そのジレンマを解決することは容易ではなく,これまでに多くのカーデザイナーを苦し
めてきた要因だろう.
しかし,インパネのデザインには制約が無く,自動車の運転において重要であるユーザビリティ向上
の鍵を握っていることは間違い無い.
ユーザビリティの向上は事故を減らし快適な運転をするためには必要不可欠であり,その点において
当研究は自動車の未来に貢献できるものであるはずだ.
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平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
デザインとスタイリングについての考察
河森正治氏によるメカデザインの実証実験[作品.ポスター]
趙研究室
045049 善積 哲史
序章
日本アニメーションの一種でロボットアニメというジャンルがある。これは主に人型のロボットが架空
の世界に登場するというアニメーションで現実的に見てあり得ない機械が登場する。よく劇中に登場す
る搭乗可能2足歩行ロボットを現実に作ると重さで潰れてしまい歩くことさえままならないそんな現実
には存在し得ない機械を想像力で劇中に作り上げる職がメカデザイナーである。今回の実験はそのメカ
デザイナーの中でも一線で活躍している河森正治氏のデザイン方法についての研究である。河森氏のデ
ザインした作品はまったく異なる形なのに同じデザインとして制作していて、デザインしたもののスタ
イリングを変えている。よく見れば河森氏の作品の中で最も有名な「時空要塞マクロス」に登場するVF
(ヴァリアブル・ファイター)シリーズは戦闘機から人型へ変形するという要素、人が乗り込むための
コックピット、人型に変形した際、推進器が脚の部分になるという要素など、どの機体も大まかな要素
は統一されている。河森氏の言う「デザイン」とは何なのか、
「スタイリング」とは何なのか。そのこと
を踏まえデザインするという工程とスタイリングするという工程を意識することでどういった効果が出
るのかを実際に人型ロボットのメカデザインを行い実証実験し、作業面、デザイン面などさまざまな角
度から分析することを目的としている。
研究の方法
河森氏の作品を分析し特徴をとらえることで他のデザイナーの作品との違いを見つけ、デザインする
過程がどう違うのかを調べる。また、デザインとスタイリングを分けることにどのような意味があるの
かを2通りの方法でデザインしたものを作業工程も含め分析する。
(1) 河森氏のデザイン手法を使わず、デザインとスタイリングを意識しない方法で2パターンのメカデ
ザインを行う。
(2) 河森氏のデザイン手法でデザインとスタイリングを意識して2パターンメカデザインを行う。
2パターンずつ制作することでスタイリングにより、完成品にどのような変化があるか計4パターン
を比べ、違いを分析する。そしてデザインとスタイリングの2段階に工程を分けることにどのような効
果が出るのかを2通りの作業工程と作品を比べ分析する。
(3) デザインしたものを 2 体 3D 化し、見る視点を変えることでデザインの違いを見比べる。
具体的な成果
3-1 河森氏と他のデザイナーとの差
河森氏の作品でもっとも特徴的なのが「時空要塞マクロス」
、
「創聖のアクエリオン」等に登場するメカ
の複雑な変形、合体要素を取り入れている所と、
「アーマードコア」シリーズではユーザーにあらかじめ
用意したパーツで自由にデザインしてもらう要素である。また、河森氏はデザイナーの仕事だけでなく
監督としても作品に関わっている。
河森氏のメカデザイン作品の特徴は次の通り
(1)パーツの干渉や変形のない人型から戦闘機への複雑な変形機構
レゴブロックに粘土等で肉付けし、変形のプロセス、機構を明確なものにし、それをもとにデザイ
ンしていくため、他のメカデザインに比べ、パーツ形状のゆがみ変形やパーツ同士の干渉がない。
(2)他のデザイナーにアレンジされる事のない完成されたデザイン
機動戦士ガンダムシリーズなどは他のデザイナーがリメイクしているものがあるが、マクロスシリ
ーズは他のデザイナーのデザインとして世の中に出ているものはない。
(3)同じデザイン(要素)でもスタイリングを変えることによりまったく違うシルエットになる
これはマクロスシリーズやエウレカセブン等の作品に見られる傾向で変形機構等の基本要素は同じ
でも形状、シルエットがはっきり違う機体をデザインしている。機体を黒く塗りつぶしてみるとシルエ
63
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ットがはっきり違うことがわかる。
(4)ディティールやスケール感にリアリティがある
デザインをする前に何度も取材を行い、現実の情報を集めることによりデザインにリアリティを出
している。
3-2 デザインとスタイリング
河森氏は語る。
「バルキリーのデザインは VF-1 で終わっている。後はスタイリングだ。しかしそれだけ
ではつまらない、だからせめて……と思い、メカニカルな部分、つまり変形機構などは一機ずつ異なる
ようにしている。そこだけはデザインと言える」
(著:
『KAWAMORI SHOJI DESIGN WORKS』
)デザインとス
タイリングは同じものに捕らえがちだが、まったく違う性質のものとして河森氏は語っている。河森氏
の作品「マクロス」のシリーズに登場する戦闘機形態、人間型ロボット形態、その 2 つの中間形態と 3
種類の変形を行うバルキリーは何十種類も作品内に登場しているのにデザインの工程はすでに VF-1 バ
ルキリーという最初に完成したもので終わっていると言っている。つまり、そのほかの機体はスタイリ
ングで違う機体にしているということだ。デザインとはゼロからものを作り出すことでまったく新しい
ものを創造すること(図-1)、スタイリングはその創造したものに変化を与え、要素は同じでも異なるシ
ルエット、異なる機構に変えることである。(図-2)
終章
デザインとは何もないゼロの状態から創造したまったく新しい形状、スタイリングとはすでにあるデザ
インをまったく新しい形状で再デザイン(リモデリング)する事と分析した。デザインしたものとスタイ
リングしたものの作業量を比べるとスタイリングした作品のほうが多少作りやすいが、デザインもスタ
イリングも新しいものを作るという基本概念は変わらないため作業量はほぼ同じである。本研究は河森
氏の手法とメカデザインについての関連性をより明確にすることによって河森氏の手法(デザインとス
タイリングによるメカデザイン)の違いを実証するものである。
64
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
擬音語・擬態語から日本人の感性を考える [作品,ポスター]
浜地研究室
045012 大川哲平
1.研究の目的
擬音語・擬態語は日本語に豊富に存在し、日本語を特色づける言葉である。その分量は欧米語や中国
語の3倍から5倍も存在すると言われている。擬音語というのは、
「わんわん」
「ばさばさ」など、現実
世界の物音や声を、日本語の発音でいかにもそれらしく写しとった言葉である。擬態語というのは、
「す
やすや」
「むしむし」
など、
現実世界の状態を日本語の発音でいかにもそれらしく写しとった言葉である。
このことより、多くの擬音語・擬態語を用いる日本人は、極めて身の回りの変化に敏感であり、それを
楽しむ民族であると私は推測する。私たち日本人にとって、擬音語・擬態語という情報とは何なのであ
ろうか。そこで、文字の形態と様々な視覚効果とを組み合わせることにより、擬音語・擬態語という情
報について1つの提案をしたい。
2.研究の方法
グラフィックデザインを軸に研究に取り組んだ。擬音語・擬態語の表現で、優れたヴィジュアルコミ
ュニケーションをとっているものの1つが漫画である。ゆえに、漫画で用いられる擬音語・擬態語の表
現方法を参考に、文字の形態に加えて、線質や色の濃淡などの表現素材や技法研究と、その構築方法を
研究した。また、漫画でよく使われる視覚効果や使用されている道具についても研究した。
より深く擬音語・擬態語を考える意味で、言語学から見た擬音語・擬態語についても少し研究した。
3.研究成果
(1)漫画で用いられる擬音語・擬態語の表現方法の研究成果
・文字の種類を使い分ける
日本語には、ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字という4種類の文字がある。これを使い分けて効
果をあげる。例えば、ひらがなは、柔らかい感じの音や様子に用いると効果的である。カタカナは、鋭
く強い感じの音や様子に、漢字は、重たくかたい漢字の音に、ローマ字は、軽くおしゃれな漢字の音や
様子に用いるなど、文字の種類による印象を巧みに利用している。
・文字の形態に工夫を凝らす
肉太で丸っこい形態で「ぼふっ」とやれば、非常に柔らかい爆発音を表し、鋭い形態で「どがん」と
やれば非常に激しい爆発音となる。
・文字の構成によって効果を加える
「ぎゃああああー」の語を、左右にくねらせることによって不安定感や恐怖感を出したりするなど、
画面に迫力や臨場感を加える。
・文字の線質や色の濃淡によって効果を与える
漫画では「Gペン」というものが主流に使われている。Gペンは、ペン軸に装着したペン先にインク
を適量含ませて使用する。力の加減によりアクセントが付けやすいのが特徴であり、漫画家が好んで使
う理由もそこにあるようだ。漫画独特の線質はGペンによる所が大きい。他にもペン先の種類は「丸ペ
ン」
「カブラペン」などいくつかあり、それぞれ微妙に線質が異なり、漫画家は好みや目的に応じて使い
分けている。また、サインペンや筆を用いる場合もある。サインペンはGペンでは描きにくい太い文字
を描いたりする際に使い、筆を使うと独特のチリチリした風合いが出る。
色の濃淡やテクスチャを表すのには、スクリーントーンというものがよく用いられる。スクリーント
ーンは日本独自に発達した画材であり、今の漫画家のほとんどはこれを使っている。簡単に言うとシー
ルのようなものであり、必要な形にカットして画面に定着させる。網点や縞模様に加えて様々なテクス
チャのものも用意されており、必要に応じて使い分けられている。
・漫画でよく用いられる視覚効果
漫画で効果的に用いられる視覚効果にスピード線がある。直線のものから曲線まで様々あり、ほとん
どの漫画がこのスピード線を使っている。また、コマ割の効果も見逃せない。漫画は映画やテレビと違
い画面の大きさをシーンごとに変えることができる。
見せたいコマは大きく描き、
ドラマの強弱となる。
65
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
(2)言語学から見た擬音語・擬態語の研究成果
擬音語・擬態語の特徴は、臨場感や繊細かつ微妙な描写を瞬時に伝えることと、非常に感覚的な言葉
であることだと私は考える。
実は、日本語を学ぶ外国人の中に、擬音語・擬態語の使い方に悩まされている人々が多い。擬音語・
擬態語は発音の響きが意味に直結しており、日本語が母国語の私たちは感覚的に理解できる。しかし、
他のある言語を母国語として育った人には、理屈で割り切れない微妙なニュアンスが理解しにくいよう
である。つまり、擬音語・擬態語は、日本特有の風俗、習慣、歴史などを通して、日本人が何万年もか
けて築き上げてきた、日本語という総合的な体系との関わりが非常に深い、とても感覚的な言葉である
といえる。
(3)コンセプト
擬音語・擬態語の特徴がよく表れているものの1つが漫画であると私は考える。漫画を思い出しても
らうと分かりやすいと思うが、ある画面にレタリング(文字のデザイン)された擬音語・擬態語を加え
たとき、画面の見え方に影響を及ぼす。それは、文字の形態や構成などから受ける影響に加え、擬音語・
擬態語による影響が大きい。私たちは、その情報を受けると、文字の形も含めたその言葉の微妙なニュ
アンスを、日常生活の記憶や経験のストックと照らし合わせて、その画面の状況を瞬時に判断する。
そこで私は、漫画を参考にしながら、擬音語・擬態語が画像に与える影響を考えるというコンセプト
で制作した。制作する際の決まりは、以下の2つである。
・ある情報を持った背景画像を用意する。
・用意した背景画像にレタリング(文字のデザイン)した擬音語・擬態語の情報を加える。
上のルールをもとに、制作したサンプルが図-1である。図-1の上の画像と下の画像では、明らかに印
象が異なる。このような画像を複数用意し、擬音語・擬態語というものを感覚的につかんでもらうのが
今回の目的である。
図-1
4.あとがき
今回はタイポグラフィの視点から擬音語・擬態語について考えが、今回の研究の副産物として、他の
アイデアや視点も発見できた。
それらのアイデアも大事にして次のデザインに活かしたい。
これからは、
さらに、言語とは何か、情報とは何かということも含めた、もっと大きな枠で擬音語・擬態語を研究す
ることが必要だろう。その研究成果によって、社会に対して更なる提案をしていきたい。
66
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
手描きによるアニメーション作品の研究 [作品,ポスター]
浜地研究室
045038 真砂翼
1.研究の目的
近年、様々なアニメーション用アプリケーションソフトが開発され、多くの人が手軽に、アニメーショ
ンを製作できる環境になった。
しかし、
アプリケーションの機能に依存した表現が多くの作品で見られ、
没個性的な作品が氾濫しているように感じられる。便利なアプリケーションの使用によって誰でも手軽
にある程度のクオリティを持った作品を制作できるようになった反面、多くの人がアプリケーションの
機能に囚われ、自ら表現の幅を狭めてしまっている気がするのだ。アプリケーションソフトを使ったア
ニメーション作品の没個性化の原因の一つに「線」の均一化、という問題があると私は考える。アプリ
ケーションの機能を使えば誰でもきれいに整った線が描け、ペン先の選択である程度バリエーションの
ある線も描ける。しかしあくまでコンピュータが計算し描いたその線には温もりや味が感じられず誰が
描いても同じ、という無個性な仕上がりになってしまう。対して手描きによる線は、コンピュータ程正
確で均一な描写は難しいが、描き手によって表情を変え、作品全体をいきいきとしたものにする力があ
ると私は思う。そこでアニメーション作品における表現の幅を広げる為にも、アニメーションの最も基
本的な手法である、いわゆる「パラパラマンガ」を研究、製作することで手描きの持つ良さを再認識し、
アプリケーションに依存しない、より魅力的で個性ある動画作品の表現を考えるきっかけにしたい。
2.研究の方法
まず、既存のアニメーション作品を研究することで手描きの魅力を再確認する。次にストーリーの構想
を脚本として文章にまとめ、登場するキャラクターのデザインを行う。次に絵コンテを作り動画作品と
しての全体の流れを決定する。コンテが完成したら、それを元に実際に作品に使用する下絵を手描きに
よって製作する。下絵はシャープペンシル、鉛筆、筆ペンなど線やタッチに表情を出しやすいものを使
い紙に描く。完成した下絵をスキャナでパソコンに取り込み、動画作品に編集する。編集には Adobe
Photoshop、Adobe ImageReady、Macromedia Flash を使用する。
3.具体的な成果
3-1.既存のアニメーション作品の研究
①「牧笛」
(1963 年、上海美術電影映画製作所)
中国水墨画アニメ。水墨画独特の線のタッチによって普段テレビなどで目にするアニメとは一線を画し
た、幻想的な雰囲気、素朴で暖かみのある雰囲気を持っている。水墨画ならではの線の「滲み」がポイ
ントになっていると思われる。
②「スピード」
(2005 年、スタジオぴえろ、テレビアニメ「NARUTO」エンディング映像)
輪郭線だけで描かれたシンプルなキャラクターが大げさに動き回る、
「パラパラマンガ」という言葉がぴ
ったりと合う作品。絵が簡略化されている分、動きのダイナミックさやスピード感が強調されている。
③「ニャッキ!」
(1995~、伊藤有壱)
粘土で作られた人形を1コマずつ撮影したクレイアニメ。
この作品ではキャラクターのみを粘土で作り、
物語の舞台には模型、写真などを用いているのが特徴的。粘土でできたキャラクターは平面のアニメー
ションでは持ち得ない存在感と暖かみがある。
3-2.ストーリーの構想
線のタッチの強弱や、アニメーションの醍醐味である「動き」を生かせるストーリーであることを念頭
に置き考えた結果、
「変身ヒーローが活躍するアクションもの」を製作することに決めた。
3-3.作品のあらすじ
主人公は冴えない中年のサラリーマン。平凡な毎日を送る彼だがかつてはヒーロー戦隊のリーダーとし
て悪の組織と戦い、華々しく活躍していた。ある日仕事を終えテレビを見ていた彼は20年ぶりに復活
した悪の組織が町を襲っているというニュースを目にする。しかし長年一般人として生き、現実に疲れ
きっている彼には昔のように悪の組織と戦う勇気はなかった。何もできずニュースを見ていた彼の目に
飛び込んできたのはかつて共に戦った仲間たちだった。それぞれ年を取り、外見は変わっているが、昔
67
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
と変わらず勇敢に敵と戦う彼ら。次々と敵を倒していく彼らだったが、巨大な敵が現れてピンチに陥っ
てしまう。仲間がやられる姿をただ見ているだけだった主人公だが勇気を振り絞り仲間のために立ち上
がった。仲間の元に駆けつけた主人公は彼らと協力し巨大な敵に立ち向かい、打ち破る。
3-4.キャラクターデザイン
図1.主人公
図2.仲間たち
図3.悪の組織の首領
図4.悪の組織の戦闘員
4.おわりに
実際にアニメーションを制作する中で、手描きの線の持つ「温かみ」や「味」を再確認することができ
たと同時に、手描きで行うアニメーション制作にかかる時間、労力を知った。製作過程の中で、実際に
出来上がった動画の動きと、絵コンテの段階で思い描いていた動きにズレが生じてしまったことや、動
きに緩急をつけるための間の取り方など、完成した作品を見ているだけでは分からない多くのことを、
実際にアニメーションを製作するなかで知ることができた。今後の課題としては、アングルやパースな
どの見せ方にこだわった視聴者を飽きさせない構成を考えることや、手描きの温かみを残しつつ、デジ
タル技術のよい部分を取り入れた作品づくりを考えることなどが考えられる。
68
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
エディトリアルデザインの表現法の研究と情報誌の制作 [作品,ポスター]
浜地研究室
045052 劉宏悦
1.はじめに
私は中国の大連からきた留学生です。この六年間の留学生活中は、頻繁に帰国することができません
でした。去年二年ぶりに帰国したのですが、それは私にとって驚きに満ちていました。中国の高速経済
成長に伴い、私の故郷である大連の変化も日進月歩です。私のような数年ぶりの帰郷者には、最新情報
が入手しづらく、右も左もわからなくなる状態になっています。とても不便に感じました。その時に私
が気付いたのは、大連には日本では殆どどこにでも置いてある無料情報誌がないということでした。こ
のことがきっかけで「大連で無料情報誌を作ったらどうだろうか?」と考えるようになりました。
このような経験から、卒業研究はオリジナル情報誌を一冊作ることにしました。自分自身は外国人な
ので、日本での数年間の生活を思い出して、どうような情報があれば私たち外国人はもっと素早く日本
の生活に溶け込めるのかを考え、日本へ留学中の留学生へ向けた情報誌を作成しました。
2、研究の方法
2-1 研究の流れ
(1)情報誌の収集(既存の無料情報誌の調査)
例:無料情報誌―「ナッセ」
、有料情報誌―「北九州おい街」等
(2)DTP の基本技術に関する研究 (レイアウト、フォント、文字組、配色)
参考図書:
「プロとして恥ずかしくない―DTP 大原則」
、
「DTP 最新用語事典」出版社 MdN (2006/4/12)
と IDG ジャパン (DTP の研究)
(3)アンケートの実施
日本で生活する外国人に、外国人に役に立つ情報統計と外国人が情報収集する手段についてのアン
ケートを施しました。協力してくれた外国人の方は、約半分留学生で、半分社会人です。
2-2 使用するツール
ADOBE PHOTOSHOP/ADOBE ILLUSTRATOR/MORISAWA STUDENT PACK
3、具体的な成果
3-1 アンケートの調査結果
表1 外国人に役に立つ情報統計
表2 外国人情報を集まる手段統計
1、北九州の歴史
外国人に役に立つ情報統計
外国人情報を集める手段統計
1、インターネット
2、北九州の文化 イベント 祭など
1%
3、北九州の観光地
4%
15%
15%
5% 5%
4、北九州のおいしい店
5、北九州の名物
5%
15%
15%
40%
6、北九州求人情報
5%
5%
3、有料情報(例:有料情報誌な
ど)
7、地域の日本人と交流できる情報
10%
30%
8、外国人同士コミュニケーシ ョ ンできる情報
5%
5%
20%
2、無料誌
9、日本語の勉強に役に立つ情報
10、生活面 例:外国人に対して医療シ ステ ムの紹
介、
69
4、メディア (例:テレビ、ラジオ
など)
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-1DTP の技術面について
(1)レイアウト
安定と不安定
左右/上下が線対称、もしくは点対称であれば安定感が出ます。左右/上下が非対称だと、不安定さ
を感じます
整然/乱雑
整然としたものには「美しさ」や「上品さ」
「丁寧さ」などを感じます。整然とは「列がそろってい
る」「等間隔」
「左右対称」などです。つまり人は「規則性のある」ものには「整然としている」とい
う印象を受け、
「整然とした」様子に「美」
「整った印象」
「信頼感」
「安定」を感じます。
(2)配色
配色には紙面のイメージを方向づける為に一般的なルールがあります。例えば、夏の愉快な雰囲気
を伝えたいときには清色の黄色や青を使い、女性誌ではやわらかいピンクを多用します。
(3)フォント
雑誌に使用されているフォントについては、モリサワのフォント製品が多いです。例えば、本文は
明朝体―リュウミン、太ミン ゴシック体―新ゴ、中ゴ等を使うことが多いです。それに対して、タ
イトルと見出しは見出しミンやゴシック MB101 や太ゴ等使うことが多いことも知りました。
3-2 情報誌の制作について
研究した DTP の基本技術とアンケート結果をもとに、情報誌を制作しました。
(掲載した図は、制作
した情報誌の一部)
図1 小倉のイルミネーション紹介ページ
図2 門司港レトロ紹介ページ
3、おわりに
今回の調査や、情報誌の制作を通して DTP デザイナーの方々が一冊の情報誌を制作するにあたり、
非常に多くのことを考え、実践しているということがわかりました。そして、実際に計画、リサーチ、
制作と最後のプレゼンテーションまで一連の作業を通して、レイアウトやフォント、文字組、配色など
を利用することで、的確なビジュアルコミュニケーションが行われることを実感しました。
70
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
WEB SITE 制作「蘇月小築之東瀛篇」 [作品,ポスター]
浜地研究室
045402 郭 恵敏
1.はじめに
日本へ留学して、3 年半月日が過ぎました。この期間、様々な経験をしましたが、特に、日本と中国
の文化や生活習慣の違いから苦労することや悩むことが数多くありました。しかし、その解決の為の情
報がとぼしく、心細く思うことが多くありました。その経験を活かし、これから日本への留学を考えて
いる中国の学生や中国で日本語の勉強をしたいと考えている方々へ、日本への理解を深め、生活する上
で必要な情報を伝える為の Web サイトがあると便利だと思い、制作をすることを考えました。このサイ
トを通じて、中国と日本それぞれの文化理解へつながって欲しいと思っています。
2.研究の方法
(1)WEB SITE を作る為に必要な技術(HTML の理解 Web 制作の為に必要なソフトの修得)
制作に使用するソフト
Macromedia Dreamweaver MX 2004/Macromedia Fireworks MX 2004
Macromedia Flash MX 2004/Adobe Photoshop CS/Adobe Illustrator CS
(2)サイト内で紹介する資料の収集
以下の、項目について調査した
・日本の歴史
・日本の文学作品
・日本語の学習資料
・代表的な日本文化
・中国と日本の地域、景観
・中国と日本の美食
(3)サイトの制作
3.研究成果
(1) Macromedia Dreamweaver MX 2004 で WEB SITE「蘇月小築之東瀛篇」制作した。
(図-1、2、3)
(2) Macromedia Fireworks MX 2004 でホットスポットの制作とリンク(図-4)
。
(3) Macromedia Flash MX 2004 でメニューとボタンを制作した。
(4) Adobe Photoshop CS で写真の加工と特殊効果を施した。
(5) Adobe Illustrator CS でロゴ(図-5)
、メニューとボタンを制作した。
図-1
図-2
71
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
図-3
図-4
図-5
4. おわりに
この WEB SITE は、これまでよりもさらに中国と日本について相互理解を深めて頂くことを目的と
し、両国の文化を文学や歴史、芸術、地理など多方面から紹介しました。お互いに、その地理的特徴や、
そこで育まれた文化と共に歩み、それぞれ独自の文化を持っています。そのことが、各国の精神的背景
をかたちづくっていることを理解し、その独自性を大切にして欲しいと考えます。
今回の調査や制作を通して、個人個人の力は小さいけど、多くの国々の人々が個々を尊重し、協力し
ながら心を一つにする事が出来れば、世界中が素敵な世界になるのではないかと強く感じました。その
為にも私自分が先立ち行動することが大事です。この WEB SITE は、その第一歩目です。これからも、
継続的に更新を続けながら、より充実した WEB SITE となるよう励みたいと思います。
72
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ブロードバンド化における動画コンテンツの研究 [作品,ポスター]
宝珠山研究室
045034 姫野 謙
1.研究の目的
昨今一般家庭における回線のブロードバンド化が急速に進むにつれ web 上での動画視聴環境が急速に
整っており、そういった背景を受けて YouTube などの web サイト上の動画視聴コンテンツの需要が高
まっている。本研究は、動画視聴コンテンツのあり方の研究を目的とし、またどういった動画が視聴者
の心を捉えるのかというものを調査、製作を試みるものである。
2.研究の背景
国内のブロードバンド利用者数は 4,627 万人であり、2007 年 3 月時点でのブロードバンド
世帯普及率は 50.9%となり、日本の全世帯の半数を超えて今後も増加する傾向にある。電話回線や
ISDN が主流だった頃と比較すると、遥かに大容量の情報通信が可能となり、また web コンテンツを利
用するための媒体であるパソコンや携帯電話などのハードウェアに関しても処理能力の水準が上がって
いったことから、web コンテンツを誰もが気軽に利用できるようになった。そういう流れの中で、2005
年に YouTube が登場すると瞬く間に人気となり、著作権に関する問題などの数々の議題を残しつつも
『web 上で動画を共有するコンテンツ』として確固たる地位を築き上げた。
YouTube などの、動画共有サイトについて利用したことがあるユーザは 30.7%にのぼる。男女年齢別で
は、男性および若年層ほど利用経験率が高い傾向が見られる(図-1)
。とくに、男性の 10 代、20 代につ
いては、半数以上のユーザにおいて利用経験がある。その利用のきっかけとして、最も多いのは「検索
サイトを利用している中で偶然見つけたから」が多く、4 割以上を占めている。一方で、
「ブログで見つ
けたから」
、および、
「友人に紹介されたから」など、インターネット上を中心とした口コミ・紹介のプ
ロセスを通じて、YouTube などの利用を始めたユーザも一定の割合見られる(図-2)
。
動画共有サイト利用者のうち、ほぼ毎日利用しているユーザは 6.1%であった。また、週 1 回以上、動
画共有サイトを見るユーザは 4 割を占めるなど、利用者の利用頻度は高い傾向にある。
(http://research.goo.ne.jp/database/data/000339/index.html『第4回ブロードバンドコンテンツ利用
実態調査』より引用)
図-1
図-2
図-1 図-2『第4回ブロードバンドコンテンツ利用実
態調査』より引用
73
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
また日本独自の動画共有サイトとして、ニコニコ動画というサイトが登場した。ニコニコ動画では、そ
の動画作品を見た視聴者によるコメントがダイレクトに動画を流している画面に反映されたりと独自の
ユニークなシステムを組み入れており、投稿者に対する視聴者の反応としてや、視聴者から視聴者へと
呼びかける掲示板のようなコミュニケーションツールとしても機能おり、視聴者にとっても介入する余
地が広く自由度も高いので国内においては YouTube と並んで人気を博している。サイトには自作の映像
作品は勿論として、テレビなどで放映された著作物のユーザーによる改変が行われた動画(俗に MAD
ムービーと呼ばれている)が数多く投稿されており、特にその MAD ムービーがサイト内で支持を受け
る傾向にある。
動画共有サイトが繁栄する原因となったのは、インターネット回線の高速化やパソコン性能の高水準化
などの環境による手軽さもさることながら、ある程度の匿名性を得る事が出来る点にもある。
発信者が特定できる新聞やテレビなどと違い、発信者が負う責任が小さい。受信者は送信者に対して容
易にコメントを返すことができ、多くの場合、コメントは情報の一部として改めて発信される。情報の
編集に、受信者がリアルタイムで参画できるのである。(引用『メディアとしてのニコニコ動画』
http://digitalmuseum.jp/text/replus/article/nicovideo)
3.動画製作
動画共有サイト利用者のメイン層である 10 代~20 代にターゲットを絞り、受け入れられるような動画
製作を検討した。ここではニコニコ動画で投稿すると想定した動画製作を行う。
以下がその設定画の一例である。
(図-3、図-4)
図-3
図-4
4.おわりに
携帯電話を始めとして最近ではニンテンドーDS やプレイステーション・ポータブルといった携帯ゲー
ム機など、手軽に持ち運べる物においてもネットワークが活用されるようになった。やがては今のデス
クトップのパソコンと同等以上の機能を有した物が登場するのは目に見えているが、その中でネットワ
ークにおいて共有できる映像メディアというものの重要性はもっと増してくるのではないだろうか。
ここでは動画共有サイトに投稿を想定した動画製作として構想を進めたが、実際に投稿して視聴者の反
応を伺うというステップを踏んでみたいとも思った。機会があれば、新たに動画を製作してニコニコ動
画を始めとした動画共有サイトに投稿し、その反応を見てみたいものである。
74
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
見せながら収納できる壁面家具の制作 [作品,ポスター]
松内研究室
045005 池永 大輔
1. 研究の目的
多くの人が直面する収納の問題にとりくむ。私の部屋を見てもモノが多くあり、気に入ったものであ
っても、見える範囲に収納することはもちろん、取り出すことすら難しい。次第にそのモノが意識から
離れて行く。実際に私は、お気に入りのCD でも段ボール箱に入れて収納している。あるいは、周辺に重
ねて置いている。これらの状況をふまえて、卒研テーマを設定した。見せる収納でありながら、最大限
の収納量を目指した収納家具、雑誌やCD や小物など多品目のものを収納することができるが、決して、
見せる収納・壁収納ならではの“省スペース性”を失わない収納家具、この相矛盾する要求のできるか
ぎりの実現・作品制作を目指してゆきたい。省スペースで見せる収納を実現する壁掛けを制作する。現
代のプライベート空間における最大限の有効利用に対するあらたな提案を行ってゆくことを目的とする。
2. 研究の方法
インタビュー調査を通じて、使用者の意見を集積してゆき、いただいたご意見を分析してゆく。しか
しながら、最終的には個人的な思い入れも重視したアート系作品制作として仕上げる。具体的には以下
のプロセスに従って進める。
2-1 市販されている既存事例を調査
インターネットや本、メーカーカタログを見てどのようなものがあるのか調査し、分布図を作成し、
整理する。
2-2 インタビュー調査
学生や社会人のプライベート空間を見せてもらい、インタビューを行う。
2-3 結果の集積・分析を経て解決策の模索とアイデアスケッチの展開
2-4 インタビュー調査
スケッチを見せながら再び意見を蓄積する。これを改善策のアイデアスケッチに取り込んでいく。
自己の感性に照らし合わせて最終案にまとめる。
2-5 制作
・これらのプロセスをふまえて作品制作を進めていく。
3.調査結果
3-1 市場調査の分布図による分析
図1
図2
図1は縦軸に「不特定多数人が出入りする空間にあるもの」
「個人的に使うもの」
、横軸に「棚、箱で形
成されたもの」
「壁が露出しているもの」という軸を設定した。
図2は縦軸に「機能性重視」
「装飾性重視」
、横軸に「多品種を収納」
「特定の一種を収納」という軸を設
定した。
狙っていた製品イメージに該当する製品は市場には多く見つけることはできなかった。
75
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
当初の計画通り、見せながら収納できる壁面家具の制作を進める。
3-2 インタビューシートを作成し、インタビューを実施
インタビューシート(図3)は、
「散らかりの現状について」
「持ち物(小物)について」
「収納の現状に
ついて」の見出しを設定し、全部で14項目の質問を作成した。
インタビューには20人から回答を得ることができた。例えば、
「散らかっているものはどんなものか」
という問いかけに対して、本、CD、プリントなどの紙という人が多かった(20人中11人)
。中にはご
みという人もいた(20代、男性)
。
図3
3-3 これまでの調査に基づき、アイデアスケッチを展開
図4
図5
図6
図7
図8
図9
3-4 スケッチを見せながらのインタビュー
スケッチを見せながらインタビューをしたところ、箱や棚の位置を自由に変えられたら・長方形のもの
があっても・もっと個性があったほうがという意見があった。これらのインタビュー結果と市場調査に
感性を盛り込んで最終作品を制作する。
3-5 最終作品
この壁面家具は、リビング、寝室などのプライベート空間で、どこでも使
っていただけるものである。見せる収納なので色を白と黒でメリハリをつ
けた(図10、図11)
。図12の箱を自由に動かせるのが最大の特徴であ
る。
図10
図11
図12
図13
4.結論
インタビューをして雑誌や CD や小物など多品目のものを収納することができるものや省スペースで利
用しやすいものという意見を多数いただいた。これにより当初の研究目的が達成されたと言えるであろ
う。多品目を収納できるのに加え省スペースで、デザインやアートといった景観の優れたものが求めら
れてくるのは確実だ。
76
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
廃品家具からの発想 [作品,ポスター]
松内研究室
045008 今富 小百合
1.研究の目的
大量生産大量廃棄のライフスタイルが見直さなければならないと言われて久しい。しかしながら、周
囲を見渡せば、たやすくモノを捨てられている現状を目にする。苅田町のごみが集められている苅田エ
コプラント株式会社(福岡県京都郡苅田町鳥越町)には、家具、家電製品、生活用品などの多種多様な
ものが捨てられていることを確認した。その中には、破損して使用できなくなったものもあるが、まだ、
使用できるものや、他に転用できるものもあった。
モノを捨て、新たなモノを買うのではなく、焼却される寸前のモノをリメイクする。廃材だからこそ
大胆にリメイクを行うことができる。アートでありながら現実に使えるものを作る。作り変え使い変え
ていくことの楽しさを、アート作品に込められたメッセージとして伝えるという高い目標を設定してい
る。
2.研究の方法
まず、町役場や図書館へ行き、苅田町のゴミの状況を調べ把握する。次に、苅田エコプラントに行き
目視調査とインタビューを行う。そして、アイデアスケッチ、作品制作の順に研究を進めていく。具体
的には以下の順序に従う。
2-1 ゴミの状況を調べる
①苅田エコプラント職員の方にインタビュー調査を行う。
②データ収集(苅田エコプラント株式
会社や町役場や町立図書館)
③目視調査(集められたゴミの状況を把握する)
④材料入手
2-2 インタビューを行う
一般の方に粗大ゴミをなぜ処分したのかなど、ライフスタイルとゴミ問題ついての質問をする。
2-3 材料入手
苅田エコプラント株式会社に伺って、廃物家具の山の中から椅子5脚を選び入手する。
2-4 アイデアスケッチを作成
アイデアを再検討するため、アイデアスケッチは、適宜繰り返して行う。
2-5 作成
椅子の状態を把握し、解体、切断、研磨、塗装はぎ、塗装、クッションのやり直し、リメイクを行う。
3.現状調査
3-1 目視調査
苅田エコプラント株式会社に収集されてきた粗大ごみは、大型燃えるご
みと大型燃えないごみに分けられる。ベッドやソファー(図1・2)は、
解体されスプリング(図3)が大型燃えないごみとなる。
図 1 座椅子の山
図2解体された椅子
タンスや椅子などの木製の家具は、幅 10m奥行き5m、高さ少なくとも
2mの山積みになっていた。破損して使えないものが大半であるが、実際
に棚を一つ持ち上げて確認してみると、傷が入りほこりで汚れていたが、
図4木材の山
破損していなかった(図4・5)
。
図3解体されたベッド
3-2 入手したデータの読み取り
大型燃えるごみと大型燃えないごみの平成 14 年度から 18 年度の月報データを解析した結果、大型燃
えるごみは大型燃えないごみより多いという傾向が見られた。また、平成 14 年度と平成 18 年度の1月
の量を見比べてみると約3倍の量になっている。そして、全体的にごみの量は春が多い。
3-3 インタビュー実施
苅田エコプラント株式会社の職員の方にゴミの状況や現状についてインタビューを行った。引越しシ
ーズンや衣替えシーズンにごみの量が増えるという回答を得ることができた。
一般の方にライフスタイルとゴミ問題についてインタビューを行った。
「椅子・机などの家具を捨てた
ことはありますか?」という問いに「ある」という回答をした人は、26 人いた。その中で、
「なぜを捨
77
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
てましたか?」という問いに、
「破損したから」という回答が7人、
「汚くなったから」が3人、
「引越し
のときに運送賃が高くなるから」が5人、
「新しいものを買ったから」が3人、
「使わなくなったから」
が2人、
「成長して合わなくなったから」が4人という結果になった。
そして、
「なぜ粗大ゴミが大量に増加してしまったのか?」という問いに、
「新しい商品が増えたから」
「何も考えずに購入するから」
「愛が足りないから」という回答があった。
¥
図1
図2
図3
図4
図5
図6sample1 図7sample2 図8sample3 図9sample4
3-4 苅田エコプラント株式会社から入手してきた椅子
図1の椅子は、素材は木で塗装が剥げ、色がまだらになっていてクッションが汚れている。サイズは、
幅 60cm 高さ 85cm 奥行 45cm である。図2の椅子は、素材は木と金具で木の色が薄くなっている。サイズ
は、45cm40cm45cm である。図3の椅子の素材は木で、多少傷はあるが破損してはいない。子供用であり、
大人には座りにくい。サイズは、40cm70cm37cm である。図4の椅子は、木と座面が藁で編まれている。
木には傷があり、藁が汚くなっていている。サイズは、43cm87cm42cm である。図5の椅子は木でできて
いて、背もたれの木が破損している。虫に食べられている部分もあった。サイズは、43cm85cm40cm であ
る
3-5 アイデアスケッチ
インタビュー結果と入手した廃物家具から配置と空間イメージを持ちつつ、アイデアスケッチを展開
した(図 6~9)
。
3-6 スケッチを用いたインタビュー結果
ばらばらな廃物家具写真5枚(図 1~5)と、統一したイメージに作り変える計画(図 6~9)を提示し
インタビューした。廃物家具、入手直後の状態と提示したイメージのギャップに多くの方が興味を持っ
て下さった。また、sample3の統一された木の素材感と、ガラス、レザーとのコンビネーションも好評
であった。
4.作品制作とその結果
データ分析や、インタビュー結果を踏まえて、最終作品のデザインに着手した。インタビュー回答の
うち、とりわけ重要であると考えられるもの「引越しの際に、持っていくのが大変であり運送賃がかか
る」
「子供の成長に合わなくなり、座りづらくなった」
「汚い」等の諸問題に対する明確な解決をデザイ
ンに盛り込んだ。
図 10
図 11
図 12
図 13
図 14
図 15(図 14 の一部拡大)
(図 10・11)折りたたみ式の持ち運び便利な椅子にした。すなわち、引越しの際にも持っていけるよう
にリメイクした。
(図 12)背もたれを外し座面を広くした。座りやすくするためにクッションをつけた。
これは子供用椅子をリメイクしたものであり、大人でも使えるようにした。
(図 13)藁を外し、クッシ
ョンに変え、塗装を剥ぎ、塗りなおした。
(図 14・15)一輪挿しができるアーティスティックな椅子にし
た。他の椅子とマッチさせるためレザークッションを装着した。
5.おわりに
多くの粗大ゴミが廃棄される理由は、
「壊れた」
「汚くなった」
「新たなものが欲しくなった」
「使わな
くなった」
「引越しの際に運送賃を考えて」などであった。解決方法の一つを示すために、リメイクに取
り組んだ。使用できなくなったら処分するのではなく、作り変え使い続けることの可能性をある程度示
せたのではないだろうか。また、購入する際の情報収集、すなわち、
「長く使用できるものか」
「壊れに
くいか」などを調べて購入することも大切だと研究途中に気づいた。これからの課題としたい。
78
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
絵巻物にみる山笠、山鉾、御輿 [論文,ポスター]
松内研究室
045009 植木 雅文
2、はじめに
前回の中間報告書の段階では、小倉祇園山笠の実測調査を行い、図面・記録を専門家の手だけではな
く、一般公開できるよう調査を進めていたが、山笠・山台の調査、実測可能な場所への交渉失敗により
確約できず、
「小倉祇園太鼓山笠・山台の研究・制作」が行き詰まったため、今まで研究してきたことを
利用し、以下の研究へ変更した。
「山笠、御輿、山鉾を含む、陸上用木造移動構築物」の新しい提案。
山笠、御輿、山鉾を含む、陸上用木造移動構築物は古い時代では、飛鳥時代(6世紀末)からあり、
それから、奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、江戸雄時代へと、少しずつであ
るが、進化していった。
そこで、本研究では様々な山笠・御輿など陸上用木造移動構築物が、どの様に使われてきたのか、な
ぜ作られたのかなどの起源を調べ、歴史を追求し、現在の平成時代との使用目的の違い、問題点を発見
し、対策案を出した上で、新しい陸上用木造移動構築物の提案をする。
2、研究の流れ
2-1 図書館などから、あらゆる絵巻物を探索。
2-2 2-1 の段階を経た上で、各絵巻物を読み、御輿・山鉾を含む木造移動構築物が記載されているペー
ジをスキャナでスキャンしていき、データに残す。
2-3 2-2 の段階を経た上で、PC ソフト「Adobe Photoshop」を使用し、木造移動構築物の部分だけを、
トリミング(切り抜き)を行い、種類ごとに部分だけを、トリミング(切り抜き)し、種類ごとに分類
していく。
2-4 分類した資料から PC ソフト「Adobe Illustrator」で表を作成。
2-5 各種類のことを調べ(起源、現代の物との違い)論文にする。
2-6 まとめ
・使用する絵巻物「洛中洛外図」
「日本の絵巻物」
「続・日本の絵巻物」である。
*「日本の絵巻物」
「続・日本の絵巻物」は、計22冊を資料としている。
・使用する PC ソフトは、Adobe Illustrator、Adobe Photoshop である。
3、研究成果
様々な絵巻物を読み山笠、御輿、山鉾、牛車、馬車、駕篭、飛脚といった複数の移動手段の木造移動
構築物があることがわかった。そのことからまず、参考資料の絵巻物が描かれている年代・時代を調べ、
「洛中洛外図」
「日本の絵巻物」
「続・日本の絵巻物」をシリーズ別に年表を作成した。
(表-1 参照)
このことから、表-1 では平安時代から鎌倉時代までの間のことを描かれた絵巻物が多く、その間に木
造移動構築物が多く利用されることがわかる。その多くには、馬車、牛車、駕篭、飛脚などが目立って
見えた。
次に、年代・時代と木造移動構築物のタイプ別に分けた表を作成し、その中にトリミングした図を、組
み込んだ。
(表-2 参照)
この表-2 の表から、御輿・山鉾の形が室町時代から江戸時代まで変わらず利用されていた。この表で
利用した資料は、
「洛中洛外図」に記載されている、数種類の本の中から特に有名で尚且つ、主に使用さ
れている「歴博甲本」
「歴博乙本」
「上杉本」の 3 種類を抜粋し、組み込んだ。
4、結果と今後の課題
本研究により、飛鳥時代から江戸時代まで、様々な木造移動構築物が時代を経て進化してきたことが
わかる。
現在では、祇園祭りでよく目にする、山笠、御輿以外はほぼ目にしないものばかりである。中には、
牛や馬などの動物に引かせ移動する、牛車、馬車などもあったが、それ以外のものはほとんど人間の力
79
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
を使い、人やモノを運ぶものであった。そのことから、木造移動構築物自体のあり方・必要性・利便性
を追求した、山笠・御輿以外の陸上用木造移動構築物が現代社会でどのように順応していくかが重要に
なるだろう。そのためにはどうして現代に陸上用木造移動構築物が必要なくなったのか、デメリットを
どのようにカバーしていくかが今後の課題である。
表-1「日本の絵巻物」シリーズの時代別に分け、各絵巻物の描かれている年代に分けた年表。
表-2 「洛中洛外図」に記載されている「歴博甲本」
「歴博乙本」
「上杉本」を年代・種類に分けた表
80
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
安眠グッズの調査と提案[作品,ポスター]
松内研究室
045016 小野 哲平
1. 序章
私は不眠症の経験者で不眠症には非常に興味があり、この問題に挑んだ。人間は睡眠をとることで体
にエネルギーを蓄える役割がある。しかし、不眠症になると体力の低下や自律神経やホルモンバランス
の管理ができずに免疫力を低下させてしまう。現在、日本人は約 5 人に 1 人の割合で睡眠に問題を抱え
ている。不眠症は、誰でも発症する可能性のある病気の1つになっている。不眠症を緩和することを目
的とした安眠グッズを研究し、アーティスティックな道具の提案・製作をする。皆が気持ちよく睡眠が
できればと思っている。
2. 研究の方法
2-1 書籍やネット上で不眠症について医学的な知識を得た上で、
不眠症患者に対するインタビュー調査
を実施する。
2-2 安眠グッズについて、市場調査をして分布図にまとめる。
2-3 2-1 の文献調査の結果をまとめたものと試作品(図 1・図 2)を用いて、家族や知人などにお話を
伺う。
2-4 調査と自己の体験をふまえてアイディアスケッチを展開
2-5 最終作品のアイディアスケッチについてインタビューを行う。
2-6 自ら提案した最終作品を製作する。
2-7 最終作品の検証を行い、プレゼンテーションボードを製作する。
3. 具体的な成果
安眠グッズについて市場調査をして分布図にまとめた。
図 1 は縦が価格の高低に分け、横は右から聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚にそれぞれ五感振り分けて
いる。わかったことは聴覚、嗅覚、視覚、味覚は比較的、低価格で購入できるものばかりである。それ
に比べて触覚に当てはまる安眠グッズは低価格の物もあれば、高価格な物までさまざまである。
図 1 より触覚に関するグッズが多種にわたっていることがわかった。試作品である照明スピーカーよ
り、眠りに対する個々の嗜好や考え方をくみ取ることができた(図 3、図 4)
。睡眠をとる際、ほとんど
の人が枕を使用し、設計に盛り込む要素も幅広いため、これまでの調査で得た結果を設計に繁栄してい
くことができると考えたため、今回は枕にしぼり提案していくことにした。
図 4 は枕だけの分布図である。縦がデザインの奇抜な枕からオーソドックスな枕で振り分けられてい
る。横は価格の高低で振り分けている。わかったことはオーソドックスなものから奇抜なものまで価格
はそれぞれである。低反発ウレタン、綿、ビーズなど価格の違いは中身に使用している素材である。
図1
図2
図3
81
図4
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
図 4 を読み取ったところ奇抜に属する枕を分析すると 3 つのタイプに分けられることがわかった(5
~8)
。図 4 のオーソドックス枕を 1 つ加えて 4 つのサンプルスケッチを元にインタビューを実施した。
結果をふまえて最終作品は「抱き枕」にしぼって、形状を設計していくことにした。図 5 の枕について
「安心して眠れそう」
「フィット感がありそう」
「上向きに寝る人が使いにくいのではないか」という意
見を頂いた。図 6 の枕について「高さを変えられるのはすごく良い」
「見たことがない」
「固定しないと
いけない」という意見を頂いた。図 7 の枕について「枕が動かないので安定する」
「腕はしびれないのか」
というご意見を頂いた。図 8 の枕について「シンプル」というご意見が多数を占めた。結果、体積の大
きい、すなわち、全身を横たえる大型枕が好評であった(図 9)
。
図5
図6
図7
図8
図9
まず、サンプルを 4 つ製作し、脳波測定を実施した。
図 10
図 11
図 12
図 13
この5種類のなかで一番良い成績を納めたのは図12の抱き枕である。
この枕は「守られているような安心感を与える」
「横を向くことで抱き枕としても活用することで抱き枕
として活用することができるという特徴を持っている」
安眠できる枕の形状は人それぞれで異なっており、千差万別である。しかしアイディアスケッチを見
せアンケートを行った結果、図 10 のスケッチが最も好評であった。このことから抱き枕は比較的多くの
人に受け入れられやすいということが分かった。また図 10 に寄せられた意見から「安心感」
、
「フィット
感」といった実際に作品を制作する上で重要になるキーワードも得ることができた。
4 終章
対等の枕形状開発において、一つのヒント占めることができたのではないだろうか。その結果、枕を
設計しての成果とまた新しい形状を提案することができた(図12)
。
世の中には不眠症以外の原因で十分な睡眠が取れない人も多い。
精神面からくるうつ病の人もいれば、
他の病気から睡眠に悩んでいるひともいる。多くの人が安心して眠ることのできるように、枕の形状や
素材などを模索していくことが今後の課題である。
82
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
イルミネーションブロックの研究・制作 [作品,ポスター]
松内研究室
045026 高橋 亨平
1.研究の目的
はじめに、私は、合理的でなおかつ達成したときに大きな魅力、達成感を感じることが出来るブロッ
クに目をつけた。ブロックは年齢にとらわれることはなく楽しむ事が出来る。新しいブロックを造るこ
とを目指した。しかしながらブロックには、完成度の高い商品がすでにいくつも存在する。光るブロッ
クを制作することにした。時代の要請に応じた意味合いを持たせた。現在、全国でキャンドルイベント
が隆盛である。ブロックを用いたシステマティックなモノづくり、誰もがイベントに参加することがで
きる楽しさの提案とブロックの合理性を他のシーンにも転用することを意図した。
2.研究の方法
2-1 既製品ブロック玩具の調査。
2-2 実験的作品を出展し、各種イベントに参加。
2-3 作品実績をふまえたインタビュー調査の実施。
2-4 結果をふまえた最終提案作品計画
2-5 最終作品制作。
3.イルミネーションの調査
3-1 既存作品調査、作品出展・イベント参加実績
図-1 既成ブロック調査とイベント別出品作品自己調査(スケッチブックと研究メモより抜粋)
3-2 インタビュー調査
産学連携フェアー(07/10/31~11/2・北九州学研都市)に参加し、リバーウォークキャンドルイベン
トに使用した作品と中津とうろう祭りに出品した作品の展示と紹介を行った。同時にインタビューも実
施した。多くのご意見を伺うことができた。
83
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
図-2
図-3
図-4
図-5
(図-2)は産学連携フェアにて作品紹介・インタビューを行う筆者(図-3)はブロック評価に関する
比較解析表(図-4)は最終作品のためのアイデアスケッチ(図-5)は最終作品図面である。
3-3 (図3-1既成ブロック調査とイベント別出品作品自己調査)の読み取り
リバーウォークキャンドルイベントでは
〔組み上げたときの形状の自由度〕
、
中津とうろうまつりでは、
〔素材と炎光の乱反射〕
〔わかりやすい組み立て方法〕
、勝山公園イルミネーションでは〔太陽光のもと
での素材の輝き効果〕をそれぞれ作品制作・出展、観客のご意見から確認することができた。
3-4 インタビュー調査の結果と読み取り
産学連携フェアーで実施したインタビューの結果、
(中津作品に対して)
「ユニットひとつの大きさと
全体バランスについて」
「ろうそく台について」
「金網による光の効果について」
「断面形状が5角形であ
ること」などに好意的興味を持って質問をいただいた(北九大・女子学生)
。また、
「材料は何を使って
いますか」
「組み合わせ構造の工夫について教えてください」などの質問をいただき(建設業・30 代男
性)
、デザイン関係者からの強い関心も確認することができた。
3-4 最終作品コンセプト
以上、体験的に学んだことやいただいたご意見をふまえて最終作品コンセプトを練りあげた。過程で
は、
(図-3)のブロック性能に関する比較解析表も作成しながら検討した。透明色に加え、他の色(透
過性のある緑色)も設定した。また、ブロックとしての機能を見直し、さらなる柔軟性を持たせること
にした。すなわち、ひとつのユニットは、面材にジョイント具を3つ取り付けただけのよりシンプルな
ものとした(図-6)
。組み立てのわかりやすさ向上を図り、子供からお年寄りまで、イルミネーション
イベントに参加する人たちすべてを対象とした。
4.最終提案作品とあとがき
最終作品の組み合わせ方法は、ユニットのジョイント具が接合材としての柱に、いわば、噛み付く形
態である。柱とブロックは簡単に着脱することができる。また、ユニットは 10cm四角形の面材である
(図-6)
。これまでの作品の中で最もシンプルであり、組み立て形状の柔軟性は高い。
(図-6~ 図-10)
は、組み立て手順を示している。当初の目的であった「誰もがイベントに参加」し、好きな形を作る「楽
しさ」を演出するための道具に対する、ひとつの提案となったのではなかろうか。
図-6
図-7
図-11 ロウソクをいれる前の状態
図-8
図-12
図-9
ロウソクに炎を灯した状態
84
図-13
図-10
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
透明素材を用いた内装用建材の提案 [作品,ポスター]
松内研究室
045040 南 隆広
1. 研究目的
前期のキャンドルイベントの制作を体験して透明感と光が作り出す幻想的な美しさを発見し、また就
職活動で建材メーカーの防音・断熱などの性能の高さ・環境への低汚染に対する工夫にふれた。これら
を組み合わせて新しい提案・作品を制作することを意図した。従来日本人は障子や茶室など空間に透明
感、明るさ、軽やかさを求めていた。透明素材の良さを現代に生かす工夫を提案することを目的とする。
また、ペットボトルなどの廃材を利用して環境問題に対しても意識も盛り込んだ。
キーワード:[空間・半透明・光]
2. 研究の方法
2-1 既住作品調査
建築家(隈研吾、安藤忠雄)
・建材メーカーの提唱する空間を調査・分析する。
ビジュアルソースキーワードを読み取り、空間の成り立ちを示すマップを作成した(図 1)
。
2-2 作品出展・イベント参加
数多くの素材の中から光の効果やその他さまざまな効果の検証をへて選択、不特定多数の視線・言葉
による評価を受けてきた、アート体験を蓄積。体験・技術的蓄積、いただいた評価の言葉などを整理し
表を作成した(図 2 研究より得た(体験・技術・ご意見)のとりまとめ)
。
2-3 作品プレゼンテーションを交えたインタビュー調査
2-4 研究日誌をまとめた表(図 2 研究より得た体験・技術・ご意見のとりまとめ)と(図 1 光と風
の理想空間マップ)を照らし合わせ進捗状況・成果の概観を行い、最終作品デザインに着手した。
2-5 最終作品制作と検証
3. 研究成果
これまでの成果を以下に記す。
3-1 既住作品調査結果
隈 研 吾 氏 作 品 「 栃 木 の 山 あ い の 美 術 館 」「 ロ ー タ ス ハ ウ ス ( 別 荘 )」、 安 藤 忠 雄 氏 作 品
「21_21DESIGNSIGHT(デザインミュージアム)」等について、作品調査を実施した。隈研吾氏「栃
木の山あいの美術館」は、地元間伐材の格子を多用し、周囲の風景に溶けあった作品であった。ここか
ら、
「透明感」
「浮遊感」
「連続性」
「温もり」というビジュアルソースを読み取ることができた。
3-2 作品出展・イベント参加に関わる体験・インタビュー調査の読み取り
産学連携フェアー(07/10/30~11/2・北九州学研都市)に出展・作品プレゼンを行った。これまでの
イベントなどの経験をふまえ、実用化をめざしペットボトルを使用した透明な間仕切り壁の提案を行っ
た。サンプル・CG 画像を元にインタビューを行った。
「北海道では断熱材がすべての壁に敷き詰められ
ているが断熱効果は?」という意見や「机の天板に利用できたら面白い」というアドバイスを頂いた。
中には、
「廃材をデザインによってその価値を高めることは良いこと」というお言葉を頂いた(産業医科
大学産業生態科学研究所医学博士 徳井教孝氏)
。あらためて、デザインの重要性に気付いた。廃材を工
夫して用いることによってマイナスである価値を大きくプラスに転じる、この方針で最終作品設計を進
めてゆくこととした。
3-3 (図 2 研究より得た体験・技術・ご意見のとりまとめ)の読み取り
リバーウォークのイベントでは、
〔観客の方々の半透明乳白プラダンに対する興味〕中津とうろう祭り
では、
〔輝きの正体がペットボトルと知った観客の良い意味での驚き〕を確認することができた。また、
勝山公園イベントでは、
〔フラッシュ構造とコア(ペットボトル)との相性の良さ〕
、さらに〔フラッシ
ュ構造+養生プラダンという軟弱な素材の意外な堅牢性(1 ヶ月間屋外へ放置し、屋外でも使用可能な
ことを実証)
〕を確認することができた。
3-4 最終作品のコンセプト
〔限られた空間でも壁で光を遮断することなく空間全体へ光を通す〕
〔ペットボトルの凸凹による光の
変化〕
〔半透明と透明による見え方の違い〕
〔人が上に乗っての十分な耐久性〕
〔飽きのこない模様の変化〕
85
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
以上のコンセプトを実現する内装用建材製品モデル(図7~9)作成を行った。
3-5 図版の説明
(図 2)今回目指す空間からキーワードを抽出し、
「光と風の理想空間」マップ作成を行った。各イベ
R 、
ント・作品出品を通して、体験できたキーワードに印を付けていった。リバーウォークイベントは○
N 、勝山公園イルミネーションイベントは○
K とした。
中津とうろう祭りは○
(図 3)最終作品のフラッシュ
構造コアは、ペットボトルの加工・組み合わせを行い形成することとした。組み合わせ案を 6 案出し、
比較解析表を作成して堅牢性を検討した。
(図 6)勝山公園イルミネーションで出品した作品の写真、
(図
7)最終作品(机の天板)全体の写真、
(図 8)最終作品(机の天板)コアすなわち(図 4)に示すペット
ボトルが敷き詰められている写真、
(図 9)最終作品(机の天板)コアすなわち(図 5)に示すペットボ
トルが敷き詰められている写真、
(図 10)最終作品(机の天板)の住空間における使用状況の CG 画像
図1
図 2 研究より得た体験・技術・ご意見のとりまとめ
図 4 500ml 飲み口
図 5 500ml 養生プラダン積層
図3
図7
図6
図8
図9
図 10
4.結びにかえて
(図 1 光と風の理想空間マップ)を作成し、イベント・作品出品通して、体験したところに印を付け
てきた。もちろん、すべてのキーワードを制覇した訳ではない。マップとて研究の進行に従い変化し続
けてきた。これからもデザイン活動にともない変化し続ける。しかしながら、本研究・作品によって目
指していた透明感のある空間実現のひとつのヒントを示すことができたのではないだろうか。
86
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
自然にやさしいルアーの提案[作品,ポスター]
松内研究室
045042 矢野 良
1.研究の目的
バス釣りの疑似餌(ルアー)の提案にとりくむ。現在のフィッシングには問題がある。環境問題であ
る。ワームというゴム製のルアーが水中に残留(引かかったりして使用中にちぎれるため)して、環境
を壊す原因になっている。ワームの素材は、主にポリ塩化ビニルに可塑剤を用いてゼリーのように柔ら
かく成型したものを使用している。この可塑剤が環境ホルモンとなり、生息する魚類その他の生物に悪
影響を与えている。実際に、河口湖、芦ノ湖ではワーム使用禁止になっている。これからの時代はハー
ドルアー(木材や生分解性プラスチックなどを使用したもの)が主流になるであろう。それでも水中に
残留する問題は解決しない。本研究では、実証的な実験をふまえてルアー制作を行った。形状の工夫に
よって、
“引っかからないルアー”を提案することを目的とした。
2.研究の方法
自らの十数年の経験に基づき、最良のルアーの製作を行う。しかし、デザインに際しては実験やイン
タビュー、調査結果をふまえて進めていく。具体的には以下の手順に従う。
2-1 現在、市場に出ているルアーの分布図を作成する(調査 1)。
2-2 実験・インタビューのための試作品制作。
2-3 産学連携フェアに出品し、インタビューを実施した(調査 2)。
2-4 モデルを作成し、水槽・湖などで回避性能(水中で引っかからない性能)を試す(調査 3)。
2-5 最終作品のデザイン・制作。
2-6 まとめ(論文・プレゼンテーションボード作成)。
3.研究成果
3-1 ルアー分布図作成(調査 1)
3-2 調査 1 のよみとり
図 1 では、市場に出回っているルアーで分布図を作成した。縦軸
は水深で、縦軸の値が大きいほど水面近くで使用するルアーであり、
縦軸の値が小さいほど、より深く潜るルアーである。水中に潜るタ
イプのルアーが、数多く流通していることがわかった。
3-3 問題解決の方針
潜るルアーが最も、水中に残留する危険性が高いので、今回制作するルアーをクランクベイト(注 1)
に定め、解決を目指す事にした。 図-1
3-4 試作品の制作
図-2
図-3
図-4
図-5
図-6
図-7
3-4 産学連携フェアでのインタビュー(調査 2)
。
37 人の人から、お話を伺った。
「なぜデザインとルアーが結びつくのか。
」という意見を数多く(37 人
中 3 人)頂戴した。また、
「水に溶ければいいのでは。
」という意見も頂いた。
「重りに使用する鉛は有害
物質では」との意見もありました。
3-4 インタビュー結果のよみとり
回避性能をいくらあげても、やはり、水中に残存する可能性は否定できない。少しでも自然に与える
影響が少ない素材を探す必要があると判断した。鉛を石に変えるなどして、さらに試作品を追加した。
87
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-5 回避性能実験
作った試作品を使用し、実験した。方法は、同じ場所で 20 回投げ、底を引いて回避率を調べた。
調査フィールド;福岡県行橋市 矢留池(さまざまなシチュエーションのある水場である。よって本研
究にふさわしい調査フィールドであると判断した。
)
図-8
図-9
図-10
図-11
図-12
動きのタイプ;●がウォブリング(注 2)で、○がウィグリング(注 2)
動きのタイプ;●がウォブリング(注 2)で、○がウィグリング(注 2)
(図-8)は池の全体画像である。
(図 9~11)が実験ポイントである。
(図-9)が岩場で、
(図-10)が泥
と水草、
(図-11)が丸太のある状況である。
3-6 結果のよみとり
細い形状の方が障害物をすり抜けてくると予測していたが、形状よりも動きの特徴が回避性能成績に
現れる形になった。細い形状は水草などのすり抜け性能は良い。ところが、重心が分散する傾向にあり、
前傾姿勢が保てず針を引きずり、岩場では引っかかりがちである。逆に、丸みを帯びた形状や重心が前
にあるものは、針を引きずることはないが、横の動きが強く、水草や丸太のすり抜けには弱い。
3-7 提案と制作
丸型の形状を採用してウォブリングの動きを出し横の弱さを克服すればいいのでは、と考えた。横に
ガードを付けることを考案した。当初はワイヤーを用いる予定だった。ところが、ワイヤー自体が引っ
かかってしまうことに気づき、ペットボトルを横に付けガードにした。ガードは固すぎたら、地面に当
たった際にルアーの動きを損ねてしまう。また、魚が喰った時には、掛からなくなってしまう。適度の
硬さが必要である。ペットボトル素材の硬さはガードに最適であった。当然ながら、入手も簡単であり、
最近では、微生物分解するペットボトルも出回っている。環境問題もクリアすることになる。ボディに
はバルサを使用し、コーティングに故意に隙間を作ることによって、水中に残留した際に腐るようにし
た。
図-12
概形図面
図-13
図-14
図-15
図-16
図-17
3-8 検証
実際に同じ場所で検証し、すべての場所で 100%の回避率を実現した。
4. 結びにかえて
今回の制作と調査にあたって釣り場に何度も足を運び、あらためて釣り場に残るルアー、釣り糸など
の多さに驚いた。水中に残り、腐ったゴムやプラスチックをいくつも見た。やはり、木製のルアーは見
かけなかった。もともとルアーは木製が始まりであり、時とともにて安く大量生産が可能なプラスチッ
クに変わってきた。しかしながら、まだまだ人気はある。今回、大量生産やコストといった視点からは
考慮することはなかった。今後の課題にしたい。
注 1;クランクベイトは水中に潜り、主に底を攻めるルアー。注 2;図-17 では、クランクベイトの動き
を 2 種類に分けた。
左の動きがウォブリングといい、
ボディのお尻を左右に大きく動かすタイプである。
右の動きがウィグリングといい、ボディの中心線を軸に、ボディがねじれるように動くタイプである。
ウォブリングと違うのは、上から見てボディの腹を見せるようにローリングすることである。左右への
動きは小さい。
88
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
アパレルメーカー店舗ショウウィンドウ照明計画と照明器具制作 [作品,ポスター]
松内研究室
045044 湯之上 恵梨
1.研究の目的
アパレルメーカーの店舗における照明器具の設計・制作を行う。照明効果が売り上げに関与すること
は、かねてから指摘されている。デザイン学研鑽・照明に対する興味と店舗現場経験をふまえて卒研テ
ーマを設定した。特に、
’07 年 6 月に学友と共働制作・参加した「CO2 削減/ライトダウンキャンペー
ン」の一環である「1000000 人のキャンドルライト@REVERWLK KITAKYUSHU」は、大きなきっ
かけとなった(図1~4参照)
。電気を使用する照明に対して、キャンドルの火を使用する照明の製作で
あった。変化に乏しい光である電気とは違い、浮遊感のあるキャンドルの光は人の心を和ませていた。
照明も場面に合わせて使い分けることで、人の心理に関係することがわかった。
商品に対する有効な照明効果とはどのようなものなのか、商品を効果的に演出する照明方法・器具に
ついて、現場で商品を扱っているスタッフの意見を集約・分析を行い、現場で生かせるあらたな提案を
おこなうことを目的としている。現場の実情をふまえながらもデザイン学生としての提案、所属研究室
における照明分野知識、体験を生かした提案と成果の売り場への還元など、アパレルメーカー売り場と
の協働たるデザインワークを目指している。今回は、ショップの顔とも言えるショウウィンドウの照明
に着目し、研究を進める。
図1-全体(上空) 図2-単体
図3-全体
図4-側面
2.研究の方法
2-1 アパレルメーカーブランドイメージ調査
2-2 各店舗のショウウィンドウの照明状況調査
2-3 2-1、2-2調査結果の比較・検討・考察
2-4 アイディアスケッチ、対象店舗スタッフへのインタビュー
2-5 提案作品制作
3. ブランドイメージと照明パターン
3-1 2-1の結果
各ブランドのコンセプトを基に、ナチュラル、クラシカル、カジュ
アル、アーティスティックの4つのイメージに分類した結果、商品の
デザインにあまり相違がないのに対して、イメージ分類では思ったよ
りもばらつきが見られた。
照明パターンにも、ブランドイメージのようなばらつきが見られる
のか、照明パターンとブランドイメージに共通する箇所があるのかを
次に検証する。
図-5
3-2 「研究の方法2-2 各店舗ショウウィンドウの実地調査」の実施
図-6
図-7
図-8
図-9
89
図-10
図-11
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
ショウウィンドウライティングの重要な構成要素として、ダウンライトの位置・個数、スポットライ
トの位置・個数、バックグラウンド壁面の素材・色等が挙げられることに気づき、模式図(図-9~11)
に整理した。
3-3照明パターンの分類
壁面ポスターのために蛍光灯を使用している店舗もあったが、
基本的にライティングにはダウンライトとスポットライトが多く
用いられている。また、
比較的大きい空間や高さのある店舗では、
ショウウィンドウライト数もその他の店舗よりも多かった。ボデ
ィ数は、カジュアルブランドに2体が多いのに対してクラシカル
イメージのブランドでは1体と、少なくなる傾向がある。最近で
は、路面店よりも複合施設にショップを構えるブランドが増えた
ため、ウィンドウガラスの無い店舗も目立った。実地調査した結
果、ショウウィンドウのライティングにはペンダント型やスタン
ド型のものは無かった。
図-12
3-4 照明装置のアイデアスケッチ
対象店舗であるSM2のショウウィンドウは、他店と比べ天井が
高くバックグラウンド壁面がない。開放的な店を目指しているた
めである。今回提案するショウウィンドウも開放的なイメージを
踏襲することにする。しかしながら、背後壁面がないことは、ボ
ディに対する反射光がなくなるということであり、ボディ立体感
の欠如が否めない。天井の高さがあるためにダウンライトやスポ
ットライトだけに、光源では全体光量も不足している。ボディの
図-13
図-14 図-15
存在感は埋没してしまう。これらを解消するため、ボディ至近距
離からの照明装置と立体感のある演出ができるショウウィンド
ウを提案することにした。
3-5 アイディアスケッチに対するインタビュー
アイディアスケッチに対するインタビューを対象店舗であるSM2のスタッフに行った結果、
「SM2
のブランドコンセプトである”遊び心”を取り入れて欲しい」
「大分初出店で、まだまだ認知度が低いた
め、SM2を印象付けるような照明を」というような声が多かった。実地調査や照明パターンの分類、
スタッフへのインタビューなどをふまえた結果、ロゴマークをモチーフとした(図-13)を制作するこ
とにした。
3-6 制作
図-7
図-16
図-17
コンセプト…SM2のブランドコンセプトである”遊びゴコロ”を忘れ
ずに、高さのある空間のライティングデザイン。
前にも述べたように、SM2の天井が高いために効果的なライティング
がされていない。ボディの存在感、大分での認知度の低さからSM2の
ロゴマークをモチーフとしたペンダント型の照明器具を提案する。
SM2の商品をより知ってもらうために、SM2の商品の布地を取り入
れて作品を制作する。
4.おわりに
ショウウィンドウのライティングは、
ブランドコンセプトや空間の広さ、
ボディの数によって変わる。
「ショウウィンドウ」というとディスプレイデザインにばかり注目してしまうが、ライティングデザイ
ンも商品を消費者にアピールするためにはとても重要なものとなっていることを再確認できた。路面店
の減少から、店舗の中に十分なスペースが取れず、ショウケースがなかったり、ボディ背後の壁面のな
い店舗も増えている。反射光を演出する壁面のないショウウィンドウでのライティングデザインが今後
も増えるだろう。今回はそうした状況をふまえた提案であった。しかしながら、ボディの存在感を補う
ほどの照明効果を実現できなかったことは今後の課題として考えてゆく。
90
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
安心して暮らすための住宅改修の提案 [作品.ポスター]
松内研究室
045703 吉川弘晃
1.研究の目的
はじめに私は大分にある、ごく一般的な事務所兼住宅(実家)を元に改修案を考えた。改修案は現在で
はなく、今後の老後を快適に家族が過ごすための住宅を提案する。UD コースで学んで、身の回りで気
づくことが多くなったためこのテーマを選んだ。2 年間様々な分野の経験に基づいた UD を教えていた
だき学んできた。本制作では1つの具体的な事例を基にまとめてゆく。このことが、西工大で教鞭をと
られているデザイナー・先生方の提唱する UD の特色を示すという高い目標をおいて作品制作している。
一般的な住宅を元にリフォーム案を考えている。多くの方々の話し合いのきっかけにしていただければ
幸いである。
2.研究計画
研究の方法はまず、研究対象の住宅で生活している方から現在の問題点や意見を聞き、住宅を実測し
た後に改修案を考える。実測の際に各部屋の展開図も作成する。次に AutoCAD で平面図・立面図・展
開図を描き、3D ソフト Shade で住宅の現状のモデリングを行なう。次に改修案を複数考え、それを
Shade でシミュレーションする。
改修案を考えた後は、
住宅設計の専門家やデザイナーに意見を伺う。
その後はいただいた意見を反映し、
最終改善案をインテリア系 CG パース作品として仕上げる。
3.研究成果
3-1住宅の調査・意見を聞いての主な問題点は以下のとおりである。仕事を辞めた後、使うことが減
少する事務所。各部屋に移動する際にある段差(特に事務所と廊下の段差)。玄関の前を通らないとトイ
レに行けない。この問題点を考え改修案を考えた。
3-2AutoCAD での図面作成。1階平面図(図-1)、東立面図(図-2)
図1-1階平面図
図2-東立面図
3-33D ソフト Shade でのモデリング。参考図として現状での玄関(図-3)
図3―玄関
91
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3-4改修案の4パターンの中から改修案1(図―4)、改修案2(図―5)、改修案3(図―6)、改修案
4(図―7)改修案1は「一人でゆっくりできる部屋があってもいい」という要望がありましたので、書
斎を設け、事務所の半分を居住空間にして残り半分は自由に使える空間。予定では応接間にする考えで
いる。改修案2では主に居住空間を現在よりも大きくした。改修案3はソフトボールなどのスポーツを
よくするということで、事務所をトレーニングルームに改修する案を考えた。改修案4では台所を広く
し新たに設置するウッドデッキとの連携を重視、
トイレも現状を残し別の位置に新たに作ることにした。
図4-改修案1
図5-改修案2
図6-改修案3
図7-改修案4
3-5改修案での Shade を用いたモデリング参考図として玄関(図-8)、事務所(図―9)
図―8玄関
図9-事務所
4.今後の課題
今後の生活の変化によってまた別の問題点がでてくるかもしれません。その際は今回学んだ知識をい
かし、改修案を考えます。私としても、今回の研究をすることにより改めて UD の難しさや大切さを学
ぶことができた研究になりました。
92
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口 [作品,ポスター]
矢野研究室
045015 荻迫 光洋(原画担当)
1.研究の目的
1-1 今日日本の『萌え文化』市場が活気付いている.この『萌え』とは何であろうかということを考え
るとき,そこには子供ではなく,大人向けの戦略が隠されていることに気づく.そこで『萌え』市場を
分析することによって,今の時代が欲しがっているもの,ひいては今の時代に無いものが分かり,そこ
を切り口にゲームを作り,売ることが実践的な経営戦略であると思う.
前述の通り,現在の萌え市場の対象は子供ではない.子供1人当たりのゲーム支出額はさして変わっ
ていないが,少子化の影響で全体としての市場は下がっている.つまり,子供向けの戦略のみではゲー
ムは生き残れないと言う事になる.よって,中高年をも含めた大人向けのゲームを制作することが,今
後のゲーム業界を支えていく事になると考えられる.
ゲームの有用性は自分が実際にプレイする事によって得られる充実感によるストレス解消であるから
である.
1-2 私たちは現在のゲーム市場に出ている商品の不満点を挙げ,それを自分たちなりに解決した作品を
作成することでゲーム市場においても売り上げが見込める事を証明する.
2.研究の方法
一口に『萌え文化』と言うが,実際に萌えとはどういうことなのか検証し,自らの定義付けをする.
作成するゲームのジャンルはアドベンチャーゲーム(以下 ADV)とする.
2000 年から 2006 年までの ADV の売り上げを表にまとめ,マーケティング分析を行う.分析の結果を
踏まえて今の ADV の主流と足りない物について考察し,どのようなゲームを作れば売り上げを見込める
か企画をたてる.
実際に制作し,実際に市場に出して売れるレベルか検証する.
制作ツールとして,NScripter,Adobe PhotoShop,Adobe Illustrator,Adobe Flash,ペイントツー
ル SAI,Metasequoia を使用する.
・NScripter は高橋直樹が開発・公開しているスクリプトエンジンであり,多くの商業・同人ゲーム
も実際に使われている.今回はゲーム制作にこのソフトを使用する.
・Adobe PhotoShop はアドビシステムズが販売しているビットマップ画像編集ソフトウェアであり,
フォトレタッチツールを代表するソフトウェアである.今回はキャラクターの画像,背景の画像加工等
に使用する.
・Adobe Illustrator はアドビシステムズが販売するベクトル画像編集ソフトウェアであり,特徴と
してベジェ曲線を使用することにより簡単かつ強力な演出が可能となる.今回は,マーケティング調査
に使用した.Adobe Flash はアドビシステムズが開発しているソフトウェアであり,WEB サイトを作る事
に特化している.今回はゲームウィンドウ作成に使用する.
・ペイントツール SAI は SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェアであり.現在,機能を評
価・検証するテスト版が無償配布中である.
この為フリーのソフトとして使えるのが最大の利点である.
今回は背景の作成に使用する.
・Metasequoia は O.Mizno 個人が開発・公開している 3DCG ソフトウェアであり,モデリングに特化し
ている.選択時に表示する矢印作成に使用する.シェアウェア版とフリーウェア版があるが,フリーウ
ェア版を使用する.
・SoH Wave は制作サイトが閉鎖のため作者不明のウエーブファイル簡易連続再生ツールである.特定
のメディアプレイヤーを使用せずに WAV ファイルを再生できるのが特徴.今回は効果音の確認の為に使
用する.
・午後のこ〜だは日本で開発された IA-32 アーキテクチャ向けの MP3 エンコーダである.速度に重点
を置いた最適化が施されているのが特徴.今回は音楽ファイルの形式を変更するのに使用する.
93
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.研究の成果
3-1 調査
2000 年~2004 年,2005 年,2006 の ADV の総売り上げを比較・検証する.なお,さらに詳細なデータ
を確保するために 2006 年度はコンシューマーゲーム(家庭・個人向けに作られた専用ゲーム機)も対象
にしてある.
それぞれ年代別に並べ統合した結果,右のような図ができる(図 1 マーケティング調査結果)
.
また,図2のグラフと照らし合わせる事で現在『萌え・和み』といった作品が多い事が分かる.
図 1 マーケティング調査結果
図 2 ゾーニング
3-2 キャラクター
シナリオライターから貰ったキャラクターの設定資料を元にキャラクターを手がけた.キャラクター
それぞれに個性を出すため,まずキャラクターの身長を決め.さらにキャラクターの対比表を作る事に
した.これにより画面内に表示させる大きさなどを決定した.
今の ADV の問題として,一人でキャラクターを書いている場合,全体的に似たキャラが氾濫する事に
なってしまう.その対処法として複数の人数にそれぞれキャラクターを割り当て,彩色方法を同じにす
るが,今回は人数の関係上使えないため割り切ることにする.
顔の表情は従来のゲームと同じで,体のパーツは固定し表情だけ変える手法を取る.この方法を使う
のはキャラクターが多いため表情一つ一つに体を描いていくと膨大な量になるためである.
それならば,
体を何パターンか描き,表情もパターンを用意し使いまわすほうが少ない枚数で多くの表情パターンを
作れる.
3-3 制服
物語の主人公たちがよく集う場所として学院が出てくるので,学院の制服を作る事にした.シナリオ
ライターの要望で男子にはスカーフ,女子にはパレオをアクセントとして描いている.それでいてゲー
ムの制服ではなく,現実に実在しえる制服を目指した.現存する制服を調べた結果,セーラー服ではな
くブレザーの方がゲームの世界に合うと判断した.
女子の制服は男の視点では独りよがりなデザインになるので,実際に女性に聞き,その意見を参考に
ブラウスにスカートというデザインにした.さらに,パレオを巻いているため下半身が太く見える問題
を解決するために上半身をスタイリッシュにしている.
4.結論
キャラクターはゲームの顔とも言える部分なので,慎重に描かなければならず,当初の予定よりも大
幅に時期がずれ込んでしまい背景制作に支障を来してしまった.また,全てのキャラクターのポーズを
変えようと思っているが,一体一体にかける時間が思ったよりもかかってしまったため,追加ポーズの
キャラクターを加えられるかが今後の課題であると思う.
94
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口 [作品,ポスター]
矢野研究室
045705 菊田 安洋(CG 担当)
1.研究の目的
1-1 今日日本の『萌え文化』市場が活気付いている.この『萌え』とは何であろうかということを考え
るとき,そこには子供ではなく,大人向けの戦略が隠されていることに気づく.そこで『萌え』市場を
分析することによって,今の時代が欲しがっているもの,ひいては今の時代に無いものが分かり,そこ
を切り口にゲームを作り,売ることが実践的な経営戦略であると思う.
前述の通り,現在の萌え市場の対象は子供ではない.子供1人当たりのゲーム支出額はさして変わっ
ていないが,少子化の影響で全体としての市場は下がっている.つまり,子供向けの戦略のみではゲー
ムは生き残れないと言う事になる.よって,中高年をも含めた大人向けのゲームを制作することが,今
後のゲーム業界を支えていく事になると考えられる.
ゲームの有用性は自分が実際にプレイする事によって得られる充実感によるストレス解消であるから
である.
1-2 私たちは現在のゲーム市場に出ている商品の不満点を挙げ,それを自分たちなりに解決した作品を
作成することでゲーム市場においても売り上げが見込める事を証明する.
2.研究の方法
一口に『萌え文化』と言うが,実際に萌えとはどういうことなのか検証し,自らの定義付けをする.
作成するゲームのジャンルはアドベンチャーゲーム(以下 ADV)とする.
2000 年から 2006 年までの ADV の売り上げを表にまとめ,マーケティング分析を行う.分析の結果を
踏まえて今の ADV の主流と足りない物について考察し,どのようなゲームを作れば売り上げを見込める
か企画をたてる.
実際に制作し,実際に市場に出して売れるレベルか検証する.
制作ツールとして,NScripter,Adobe PhotoShop,Adobe Illustrator,Adobe Flash,ペイントツー
ル SAI,Metasequoia を使用する.
・NScripter は高橋直樹が開発・公開しているスクリプトエンジンであり,多くの商業・同人ゲーム
も実際に使われている.今回はゲーム制作にこのソフトを使用する.
・Adobe PhotoShop はアドビシステムズが販売しているビットマップ画像編集ソフトウェアであり,
フォトレタッチツールを代表するソフトウェアである.今回はキャラクターの画像,背景の画像加工等
に使用する.
・Adobe Illustrator はアドビシステムズが販売するベクトル画像編集ソフトウェアであり,特徴と
してベジェ曲線を使用することにより簡単かつ強力な演出が可能となる.今回は,マーケティング調査
に使用した.Adobe Flash はアドビシステムズが開発しているソフトウェアであり,WEB サイトを作る事
に特化している.今回はゲームウィンドウ作成に使用する.
・ペイントツール SAI は SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェアであり.現在,機能を評
価・検証するテスト版が無償配布中である.
この為フリーのソフトとして使えるのが最大の利点である.
今回は背景の作成に使用する.
・Metasequoia は O.Mizno 個人が開発・公開している 3DCG ソフトウェアであり,モデリングに特化し
ている.選択時に表示する矢印作成に使用する.シェアウェア版とフリーウェア版があるが,フリーウ
ェア版を使用する.
・SoH Wave は制作サイトが閉鎖のため作者不明のウエーブファイル簡易連続再生ツールである.特定
のメディアプレイヤーを使用せずに WAV ファイルを再生できるのが特徴.今回は効果音の確認の為に使
用する.
・午後のこ〜だは日本で開発された IA-32 アーキテクチャ向けの MP3 エンコーダである.速度に重点
を置いた最適化が施されているのが特徴.今回は音楽ファイルの形式を変更するのに使用する.
95
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.研究の成果
3-1 調査
2000 年~2004 年,2005 年,2006 の ADV の総売り上げを比較・検証する.なお,さらに詳細なデータ
を確保するために 2006 年度はコンシューマーゲーム(家庭・個人向けに作られた専用ゲーム機)も対象
にしてある.
それぞれ年代別に並べ統合した結果,右のような図ができる(図 1 マーケティング調査結果)
.
また,図2のグラフと照らし合わせる事で現在『萌え・和み』といった作品が多い事が分かる.
図 1 マーケティング調査結果
図 2 ゾーニング
3-2 分析
近年のゲーム業界には,全体的に「続編」または「シリーズ」物を重視する傾向が強く見られ,完全
新作と呼べる作品は日々縮小傾向にある.
ここ10年でゲーム業界は右上がりに売り上げを伸ばし,それに伴って日々新しい技術を取り入れ,
進化してきた.昔では考えられなかった技術を使ったハードが発売され,ソフトもその技術を最大限利
用する為に日々新しい技術を開発する日々である.
しかしその結果,昔では考えられなかったほどの開発費用を必要とする業界へと変化していった.現
状では最新ハードのソフトを1本開発するのに,少なくとも数億円の費用を必要とするまでになってし
まった.
それだけの巨額な資金を必要とするため,メーカーは売り上げが不透明な完全新作タイトルよりも売
り上げの予想が付き,安定した収入を見込める「続編」や「シリーズ」物を好んで製作するように変化
したのである.
私が株式会社サイバーコネクトツーで仕事をしていた際,
携わっていたタイトルも「.hack」
や
「NARUTO」
などのシリーズものであった.
また,似たような現象がユーザー側でも起きている.開発費用の増加により,ゲーム1本辺りのユー
ザーの負担も大きくなり,ユーザーはゲームを購入する際,
“面白さ”よりもブランドを重視した“安心”
を望む市場に変化してしいる.
4.結論
本来ゲームと言うものは娯楽でありメーカー側は“面白さ”を追及し,ユーザーもまた“面白さ”を
求めるものではないかと考える.このような状況が長く続けば右上がりの拡大傾向を保っていたゲーム
業だが,近い将来衰退していくことは明らかであろう.
ユーザーが“安心”を求め“面白さ”を二の次にしてしまったのはメーカー側の責任である.この事態
を打破できるのもまたメーカー側でしかない.ゲーム業界の本来のあり方である“面白さ”を求める
市場に戻すことができるかが今後の大きな課題だろう.
96
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口 [作品,ポスター]
矢野研究室
045007 板野 充敏(プログラム・背景担当)
1.研究の目的
1-1 今日日本の『萌え文化』市場が活気付いている.この『萌え』とは何であろうかということを考え
るとき,そこには子供ではなく,大人向けの戦略が隠されていることに気づく.そこで『萌え』市場を
分析することによって,今の時代が欲しがっているもの,ひいては今の時代に無いものが分かり,そこ
を切り口にゲームを作り,売ることが実践的な経営戦略であると思う.
前述の通り,現在の萌え市場の対象は子供ではない.子供1人当たりのゲーム支出額はさして変わっ
ていないが,少子化の影響で全体としての市場は下がっている.つまり,子供向けの戦略のみではゲー
ムは生き残れないと言う事になる.よって,中高年をも含めた大人向けのゲームを制作することが,今
後のゲーム業界を支えていく事になると考えられる.
ゲームの有用性は自分が実際にプレイする事によって得られる充実感によるストレス解消であるから
である.
1-2 私たちは現在のゲーム市場に出ている商品の不満点を挙げ,それを自分たちなりに解決した作品を
作成することでゲーム市場においても売り上げが見込める事を証明する.
2.研究の方法
一口に『萌え文化』と言うが,実際に萌えとはどういうことなのか検証し,自らの定義付けをする.
作成するゲームのジャンルはアドベンチャーゲーム(以下 ADV)とする.
2000 年から 2006 年までの ADV の売り上げを表にまとめ,マーケティング分析を行う.分析の結果を
踏まえて今の ADV の主流と足りない物について考察し,どのようなゲームを作れば売り上げを見込める
か企画をたてる.
実際に制作し,実際に市場に出して売れるレベルか検証する.
制作ツールとして,NScripter,Adobe PhotoShop,Adobe Illustrator,Adobe Flash,ペイントツー
ル SAI,Metasequoia を使用する.
・NScripter は高橋直樹が開発・公開しているスクリプトエンジンであり,多くの商業・同人ゲーム
も実際に使われている.今回はゲーム制作にこのソフトを使用する.
・Adobe PhotoShop はアドビシステムズが販売しているビットマップ画像編集ソフトウェアであり,
フォトレタッチツールを代表するソフトウェアである.今回はキャラクターの画像,背景の画像加工等
に使用する.
・Adobe Illustrator はアドビシステムズが販売するベクトル画像編集ソフトウェアであり,特徴と
してベジェ曲線を使用することにより簡単かつ強力な演出が可能となる.今回は,マーケティング調査
に使用した.Adobe Flash はアドビシステムズが開発しているソフトウェアであり,WEB サイトを作る事
に特化している.今回はゲームウィンドウ作成に使用する.
・ペイントツール SAI は SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェアであり.現在,機能を評
価・検証するテスト版が無償配布中である.
この為フリーのソフトとして使えるのが最大の利点である.
今回は背景の作成に使用する.
・Metasequoia は O.Mizno 個人が開発・公開している 3DCG ソフトウェアであり,モデリングに特化し
ている.選択時に表示する矢印作成に使用する.シェアウェア版とフリーウェア版があるが,フリーウ
ェア版を使用する.
・SoH Wave は制作サイトが閉鎖のため作者不明のウエーブファイル簡易連続再生ツールである.特定
のメディアプレイヤーを使用せずに WAV ファイルを再生できるのが特徴.今回は効果音の確認の為に使
用する.
・午後のこ〜だは日本で開発された IA-32 アーキテクチャ向けの MP3 エンコーダである.速度に重点
を置いた最適化が施されているのが特徴.今回は音楽ファイルの形式を変更するのに使用する.
97
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.研究の成果
3-1 調査
2000 年~2004 年,2005 年,2006 の ADV の総売り上げを比較・検証する.なお,さらに詳細なデータ
を確保するために 2006 年度はコンシューマーゲーム(家庭・個人向けに作られた専用ゲーム機)も対象
にしてある.
それぞれ年代別に並べ統合した結果,右のような図ができる(図 1 マーケティング調査結果)
.
また,図2のグラフと照らし合わせる事で現在『萌え・和み』といった作品が多い事が分かる.
図 1 マーケティング調査結果
図 2 ゾーニング
3-2 プログラム
NScripter は exe.ファイルで起動はするが,中身がない状態だった.サンプルシナリオや専門書を参
考にして一度プログラムを組んだ.プログラムが走る事を確認したのち,自分なりの改良を加えた.
3-2 ウィンドウ
既存のゲームのウィンドウを参考にしながら,ユーザーに分かりづらい点を上げそれを改良するウィ
ンドウ作りを目指した.サンプルを作り仲間の意見を聞いた.仲間の言葉を参考にしてボタンの配置や
ウィンドウの形などを決定し,現在のウィンドウに落ち着いた.
3-2 オプション
ゲームの細かい設定を自分好みにすることができる画面だが,自分では何が必要か良く分からなかっ
たので既存のゲームを参考に仲間に欲しい機能をリストアップしてもらった.最終的に有ると便利だと
判断したのは,文字の表示速度,オートモード速度,BGM音量,効果音音量,画面モード,スキップ
既読判定の 6 つとなった.
3-2 緊急回避ボタン
ゲームの最中に他の人に見られたくない場合に使うボタンである.必要無いと自分では思ったのだが
仲間の強い意見により自分でプログラムを組む事にした.
作品では F3 ボタンを押すことでキャプチャし
たデスクトップ画面を表示させている.
4.結論
仲間の仕事が滞り,資料が少ない状態での作業となった.なので,直接本人に聞きどういう要素が欲
しいかなどメモを取りながら自分なりに編集し,画面内に表示させていくのは大変だったがやり応えは
あった.
また,プログラムその他はゲームの枠となる部分なので見栄えが大切だという事を知った.しかし,
あまり派手では世界観そのものを食ってしまうので,そのバランスが難しかった.NScripter ではでき
ない事も沢山あったので,機会があれば同じ ADV 製作ソフトである吉里吉里 2 で実現し得なかった事を
成し遂げてみたいものだ.
98
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
市場調査によるこれからのゲーム産業への切り口 [作品,ポスター]
矢野研究室
045029 富澤 則幸(シナリオ・CG 担当)
1.研究の目的
1-1 今日日本の『萌え文化』市場が活気付いている.この『萌え』とは何であろうかということを考え
るとき,そこには子供ではなく,大人向けの戦略が隠されていることに気づく.そこで『萌え』市場を
分析することによって,今の時代が欲しがっているもの,ひいては今の時代に無いものが分かり,そこ
を切り口にゲームを作り,売ることが実践的な経営戦略であると思う.
前述の通り,現在の萌え市場の対象は子供ではない.子供1人当たりのゲーム支出額はさして変わっ
ていないが,少子化の影響で全体としての市場は下がっている.つまり,子供向けの戦略のみではゲー
ムは生き残れないと言う事になる.よって,中高年をも含めた大人向けのゲームを制作することが,今
後のゲーム業界を支えていく事になると考えられる.
ゲームの有用性は自分が実際にプレイする事によって得られる充実感によるストレス解消であるから
である.
1-2 私たちは現在のゲーム市場に出ている商品の不満点を挙げ,それを自分たちなりに解決した作品を
作成することでゲーム市場においても売り上げが見込める事を証明する.
2.研究の方法
一口に『萌え文化』と言うが,実際に萌えとはどういうことなのか検証し,自らの定義付けをする.
作成するゲームのジャンルはアドベンチャーゲーム(以下 ADV)とする.
2000 年から 2006 年までの ADV の売り上げを表にまとめ,マーケティング分析を行う.分析の結果を
踏まえて今の ADV の主流と足りない物について考察し,どのようなゲームを作れば売り上げを見込める
か企画をたてる.
実際に制作し,実際に市場に出して売れるレベルか検証する.
制作ツールとして,NScripter,Adobe PhotoShop,Adobe Illustrator,Adobe Flash,ペイントツー
ル SAI,Metasequoia を使用する.
・NScripter は高橋直樹が開発・公開しているスクリプトエンジンであり,多くの商業・同人ゲーム
も実際に使われている.今回はゲーム制作にこのソフトを使用する.
・Adobe PhotoShop はアドビシステムズが販売しているビットマップ画像編集ソフトウェアであり,
フォトレタッチツールを代表するソフトウェアである.今回はキャラクターの画像,背景の画像加工等
に使用する.
・Adobe Illustrator はアドビシステムズが販売するベクトル画像編集ソフトウェアであり,特徴と
してベジェ曲線を使用することにより簡単かつ強力な演出が可能となる.今回は,マーケティング調査
に使用した.Adobe Flash はアドビシステムズが開発しているソフトウェアであり,WEB サイトを作る事
に特化している.今回はゲームウィンドウ作成に使用する.
・ペイントツール SAI は SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェアであり.現在,機能を評
価・検証するテスト版が無償配布中である.
この為フリーのソフトとして使えるのが最大の利点である.
今回は背景の作成に使用する.
・Metasequoia は O.Mizno 個人が開発・公開している 3DCG ソフトウェアであり,モデリングに特化し
ている.選択時に表示する矢印作成に使用する.シェアウェア版とフリーウェア版があるが,フリーウ
ェア版を使用する.
・SoH Wave は制作サイトが閉鎖のため作者不明のウエーブファイル簡易連続再生ツールである.特定
のメディアプレイヤーを使用せずに WAV ファイルを再生できるのが特徴.今回は効果音の確認の為に使
用する.
・午後のこ〜だは日本で開発された IA-32 アーキテクチャ向けの MP3 エンコーダである.速度に重点
を置いた最適化が施されているのが特徴.今回は音楽ファイルの形式を変更するのに使用する.
99
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
3.研究の成果
3-1 調査
2000 年~2004 年,2005 年,2006 の ADV の総売り上げを比較・検証する.なお,さらに詳細なデータ
を確保するために 2006 年度はコンシューマーゲーム(家庭・個人向けに作られた専用ゲーム機)も対象
にしてある.
それぞれ年代別に並べ統合した結果,右のような図ができる(図 1 マーケティング調査結果)
.
また,図2のグラフと照らし合わせる事で現在『萌え・和み』といった作品が多い事が分かる.
図 1 マーケティング調査結果
図 2 ゾーニング
3-2 世界設定
元々コンピュータロールプレイングゲーム(ゲームシステムにキャラクターの成長要素を備えた,
主人
公視点の疑似体験型冒険物語を表現するゲーム)で作成していた世界観を ADV 用に再設定している.
また,
現在の ADV が現代社会を舞台にしている作品が比較的多いため,差別化を図る意味を持って近未来的な
社会ではなく,科学の発展していないいわゆる『ファンタジー』の世界にしている.
3-2 テーマ
3-1 でも触れたが,現在『萌え・和み』といった分野が多い.逆に『抜き・癒し』と言ったジャンル
のゲームが売れていない.
『癒し』の部分は若干あるが,ポルノ的な『抜き』の部分はほとんど無いとい
っても良いだろう.よって,シナリオを作るうえで『抜き』の部分は入れない事にした.逆に『癒し』
の部分を試験的に入れてみようと思う.
シナリオを書くに当たってテーマの設定が一番重要である.プレイヤーに対して何を訴えるか,物語
の主軸はこのテーマという大きな柱の周りで展開されていくのである.今回は ADV ではあまりないテー
マとして『コンプレックス』を設定した.人には何かしらのコンプレックスがあるが,ゲームではあま
り正確に描かれない.そこで,主要キャラクター一人ずつ一つ大きな心のしこりを設定し,それを乗り
越えることを最終的な課題としている.
3-3 シナリオ
実際に設定したテーマを元にシナリオを書いていく.最近はシナリオ重視の傾向があるので,土台の
しっかりしたシナリオを作成しなければならない.そのため一度書いた文章を読み直し,矛盾や違和感
がないように書かなければならない.勿論,誤字脱字も非難の対象である.
4.結論
本来はシナリオが最初に完成していなければならないのだが,完成まで予定以上の時間がかかり仲間
の作業に影響を与えてしまった事は否めない.シナリオの遅れが全体進行の妨げになると身をもって理
解した.それゆえスピードが求められる仕事で,それでいてある程度の成果を出さなければならない.
100
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045053 渡辺 諭一(グラフィックデザイン・システムデザイン担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.制作の方法
2-1 タイトルロゴデザイン
ゲームのタイトルロゴをデザインし、作成した。グラフィックツールは「Photoshop」を使用し
て行った。
(使用ツールはすべて共通)全体的なイメージをラフにデザインし、班全員にデザイン案
を見せ、全員から了承がもらえた段階でデザインを形にしていく。
2-2 スタート画面のデザイン
ゲームのスタート画面をデザインし、パーツを作成した。全体的な流れはタイトルロゴの時と同
様に行ったが、タイトルロゴとの兼ね合いも念頭において、デザインを考えた。
2-3 各システム画面のデザイン
各システム画面(セーブ,ロードなど)をデザインし、パーツを作成した。全体的な流れは同様
に行い、特にプログラム担当とディスカッションをしながら、共同で作成を進めた。
2-4 章カットインのデザイン
ストーリーの各章の冒頭に表示されるカットインをデザインし、パーツを作成した。全体的な流
れは今までと同様で、カットインのエフェクトには「Flash」を使用した。
3.研究の方法
3-1 グラフィック,システムデザインの研究
市場に販売されているゲームのグラフィックやシステムのデザインを、実際にゲームをプレイす
る、資料を閲覧するなどして研究し、制作の参考にする。
3-2 ゲームの売り上げ調査
ここ数年のゲームの売り上げを上位だけ抜粋して分析し、売れている傾向やジャンル等を研究す
る。
4.制作・研究の成果
4-1 タイトルロゴデザイン
当初のデザインは字体と周りの装飾を鋭利な刃物のようなイメージで構成した。しかし、変に凝
り過ぎたデザインだったため、背景と重ねてみた時に浮いて見える事が指摘された。そのため、次
のデザインはあまり凝り過ぎないで、背景のイメージと上手く合致するようなデザインに仕上げた。
その後、背景自体も新規に差し替えることになったが、全体の色調や枠線の微調整で上手く馴染ま
せられた。
4-2 スタート画面のデザイン
背景は当初の「月夜の背景」から「ヒロインの立ち姿の背景」に差し替えられた。理由としては、
個人的に納得がいかなかった事もあるが、ヒロインの初登場シーンと若干雰囲気が類似してしまう
事が懸念されたので、タイトルロゴとメニューアイコンの見直しの際に差し替える事にした。「ヒ
ロインの立ち姿の背景」もヒロインがシルエットとなっているモノと、完全にヒロインを表示させ
るモノの2パターンを考えたが、班メンバーとの協議により、完全にヒロインが表示されているモ
ノを「ヒロインの立ち姿の背景」として起用した。この背景に合わせて、タイトルロゴとメニュー
アイコンも色調を変更,文字線の追加をしてデザインを一新させた。(図-1は完成したスタート
画面)
101
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
4-3 各システム画面のデザイン
基本的にスタート画面の背景に、各モード別に画面が切り替わる形で統一された。当初はシンプ
ルな構成であまり濃い色調を使わない方向で進めていたが、全体的に「薄っぺらさ」が気になると
の指摘を受けて、各システムの枠に立体感(レイヤースタイルを使用)を加えた。更に色調もグレ
ー系からブルー系に切り替えて、大幅にモデルチェンジを行った。結果、当初よりも色味的に鮮や
かな印象になった。
(図-2は完成したセーブ画面,図-3は CG 閲覧画面)
4-4 章カットインのデザイン
黒地の背景に章数と章タイトルを「Flash」によるエフェクトで表示させる形で構成した。エフ
ェクトは横からフェードインしてくるタイプから、背景から薄っすらと表示されるタイプに変更さ
れた。その理由としては、後者の方が演出的に自分のイメージと一致したからである。(図-4は
カットイン画面の完成図)
4-5 グラフィック,システムデザインの研究結果
自分たちの作成するゲームとコンセプトが近いモノを重点に見ていった結果、文字フォントに英
字が使用されているものが多いことが確認できた。また派手な装飾や演出が無くても、プレーヤー
に印象を与えるデザインも多く見られたので、制作にあたって影響を受けた。
4-6 ゲームの売り上げ調査の結果
現在は携帯ゲーム機(PSP,ニンテンドーDS など)の人気が非常に高まっていて、それに比例
するようにそれらのソフトの売り上げも大きくなっている。また、シリーズ化されているものは比
較的売り上げも安定していることが分かった。そして、全体的に操作が簡単・解りやすいゲームが
売れている傾向が見て取れた。
図-1 タイトル画面
図-2 セーブ画面
図-3 CG 閲覧画面
図-4 章カットイン
5.あとがき
作品の完成は無事終えることが出来たが、もっと効率的な方法で作業が出来ていれば、時間的に取り
入れられた要素も多かったように思う。様々な面で作業に時間を掛け過ぎたことが反省点だと思う。限
られた期間内でゲームという一つの“作品”を作ることの難しさを痛感させられたが、デザイン感覚や
技術面の向上はもちろん、班全員の意思疎通が取れるようになったことで、団体作業におけるチームワ
ークの重要性を知ることができた。これらの経験を今後に生かして、これからも努力し続けていきたい
と思う。
102
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045050 與那覇 悟(原画・キャラクターデザイン担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.キャラクターデザイン
2-1 キャラクターデザイン趣向リヴァ、バアル、ジグ、ドゴレール、ギルバート
シナリオライターからキャラクターの造形についてある程度の指定があったのでそれをベースに
してデザインを行っているが基本的には好きにしても良いとのことだった。なので自分が特撮ヒー
ロー番組の大ファンなので全体的にそれを意識したデザインとなっている。
(図-1参照)
2-2 キャラクターデザイン趣向リヴァ、バアルの服装デザイン
まず、この2人のキャラクターのドレスに施されている黄色のラインだがこれは仮面ライダー5
55(ファイズ)に登場する仮面ライダーのボディ(特に仮面ライダーカイザ)に施された「フォ
トンストリーム」を意識したものである。劇中ではエネルギー循環路という設定でこれに電装が施
され暗闇の中ではとても目立ちとて印象に残った。キャラによってそのラインの色を変えても良か
ったのだがキャラ設定やこの2人が同じ存在ということを強調したかったので同一の色を採用した。
その代わりにそれ以外のカラーリングは対比を強く意識してデザインしている。
(リヴァ→ドレス黒、
リボン赤でファイズを意識。バアル→ドレス白、リボン、青でサイガを意識)(図-2参照)
2-3 キャラクターデザイン趣向ドゴレールの容姿
これは「牙狼~GARO~」という深夜に放送されていた特撮番組の中で友情出演と言う形で悪
役として登場した京本正樹氏をモデルにしている。2枚目で悪役というキーワードを連想した時、
京本氏を思い浮かんだと言うのがその理由だ。特に髪型を意識している。また牙狼の劇中黒いコー
トを羽織っていたのでそれを意識しこのゲームの中では白衣を着せている。
(図-3参照)
2-4 キャラクターデザイン趣向ギルバートの服装
当初彼の服装は自衛隊が着ているような軍服だった。しかし「面白みに欠ける」、
「服装が若者ら
しさを阻害している」などの指摘を受けたので最終的にベストという形に収まった。
図-1 左からドゴレール、ギルバート、バアル、リヴァ、ジグ
103
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
図-2 カイザ、サイガ、ファイズ
図-3 牙狼出演時の京本氏の服装、容姿
3.CG 製作
3-1 構成と下書き
構成は漫画やゲームなどを参考に検討した。いかにキャラクターを中心にそして大きく配置する
かに重点を置き推敲を重ねた。下書きする時は0.3ミリのシャープペンシル、用紙はA4コピー
用紙を使用。トレース台を使い清書しスキャナーで画像を取り込む(画像解像度300dpi)
3-2 線画
線画はスキャナーで取り込んだ鉛筆画を「Photoshop」を使いパス引きする。2px と4px(また
は3px と5px)のペンサイズを併用して線を引く。これにより線に強弱が付き見栄えの良い線画に
なる。その後ペンタブレットを使い細部の修正を行う。具体的には加筆と修正。
3-3 着色、影付け、その他
線画の修正が終わったらベースになる色を着色していく。その後影付けを行う。レイヤーのグル
ープ化やオーバーレイ、焼きこみカラー等を使用しその場面の雰囲気に合うように仕上げる。その
後背景レイヤーの上にキャラクターを乗せ最後の修正を行い完成となる。
4.研究の方法
4-1 ゲームレビューの制作
興味のあるジャンルやテーマ(システムの良し悪し等)を設けそれに沿った内容のゲームをプレイ
し、それを所定の用紙に記入しファイリング。その後班内でそれを閲覧可能な状態し閲覧後その感
想や考察をノートにまとめるという作業を義務付製作、研究の参考とした。
4-2 ゲームの研究
同ジャンルのアドベンチャーゲーム(以下、ADV),
「NScripter」で制作されたゲーム,今売れて
いるゲーム等をプレイする。私はキャラクターデザインと CG 全般を担当していたのでしてそこに
登場しているキャラクターの容姿や性格、そのゲームでどういった役割を果たしているのか、どの
ようなところに魅力があるのか等キャラクターに研究の重点を置きそれを製作の参考にした。
5.制作・研究の成果
西洋を舞台にファンタジックな世界観と現実的な要素を含んだビジュアルノベルというコンセプトで
3年の後期から本格的に制作に取り掛かり、4年の12月にゲームの制作が完了した。限られた時間の
中で「質」と「量」のある作品を作ることの大切さ、製作者としてではなくユーザーの視点で製作をし
なければいけない等を学んだ。
6.感想と今後の課題
作品の完成という一応の区切りは付いたが課題は山積みである。サウンド関係、グラフィック関係、
演出やその他、全工程に至り多かれ少なかれ課題がある。私自身が直接担当したグラフィック関係か
ら挙げるなら他の研究室より半年ほど早く製作に取り掛かったのだが、それがかえって「期間が開
きすぎて製作開始時に製作した CG と完成間近に製作した CG とではその絵の描き方にしても色の
塗りにしても出来ばえにかなりの差ができてしまった。」という問題点を作ってしまった。その他
に「デッサン力、CG 技術などゲーム製作に関わる全般のスキルの不足」
、
「ユーザーを無視した作
品作りをしてしまった。
」
「一定のクオリティを保ちながらの作品制作」などの課題が浮かび上がっ
てきた。しかし、この1年間の卒業研究を通して技術的にも精神的にも少し成長したのではないか
と実感している。今後この 1 年間で培ってきた経験を生かし一層努力したいと思う。
104
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045701 西島 伸太朗(彩色・プログラム担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.使用ツール
2-1 Photoshop
Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)は、アドビシステムズが販売しているビットマップ画
像編集ソフトウェア。フォトレタッチツールを代表するソフト。
2-2 SAI
SAI(サイ)は、SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェア。正式にはペイントツー
ル SAI、または EasyPaintTool SAI と呼ばれる。
2-3 NScripter
NScripter(エヌスクリプター)は、高橋直樹が開発・公開しているスクリプトエンジン。動作環
境は Windows。N は作者の「直樹」から取られた。同氏の手による Scripter3 がその前身。プログ
ラミングの知識がなくともアドベンチャーゲームが製作でき、フリーソフトながら自由度の高い演出
が可能で、同人ゲームや商用ゲームで使われることが多い。
3.研究の方法
3-1 彩色の研究
彩色の研究は、プロの人の作品の模写をしました。模写は作品をよく見ることからはじめるので、
目も肥え自分の足りない部分にも気づくからです。そして自分の作品を描いて、それらをグループの
人に見て批評してもらい、また次に生かすという方法で画力をつけていきました。
3-2 プログラムの研究
プログラムの研究は、最初の時点で知識がほぼ0だったので、本に載っている基本的なことから始
め、慣れたらネット等に載っているサンプルスクリプトを参考にして、自分の作りたい形のシステム
を 構築していきました。
4.制作の方法
4-1 下塗りの再確認(図-1)
線の清書に色の下地を塗ったデータの確認を「Photoshop」を使用して行います。ぱっと見はきれ
いに塗れていても拡大すると細かい部分が塗られていない場合があるためです。これをきれいに塗ら
ないと、この後の作業に大きく支障が出てしまうため確認は入念に行う。
4-2 影・ハイライト部分を塗る
下塗りに抜けている部分がないのを確認したら、影とハイライトの部分を「SAI」を使用して塗っ
ていきます。まず影をつける範囲を線で囲んでいきます。これがとても苦労しました。これまで鉛筆
で線ばかり描いて、色をきちんと最後まで塗ることが少なかったのでこの光の方向だったらどういう
影ができるというのがよくつかめず、ファッション雑誌などを参考にしながら作業しました。そして
影の部分の範囲を描いたらそこを塗っていきます。ここで影が全部同じ色だとおかしくなるので、影
を塗る部分ごとに色を調整します。一通り塗り終わったら、次は影の境界線をぼかしていきます。ぼ
かしも全て同じ様にぼかしたらぱっとしないので部分で変えていきます。これで影の部分は完成です。
(図-2)次は明るい光が当たっているハイライト部分を塗っていきます。ハイライトの部分は影ほ
ど難しくはありませんでした。まず、塗りたい所から色がはみ出さないように部分ごとに選択してい
き、白に近い色で塗っていきます。肌などは大まかに塗り、金属など硬いものはよりはっきりした線
105
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
で光を塗っていきます。こうしてこの工程は終了です。
(図-3)
図-1 下地の確認
図-2 影付け
4-3 システムの構成・打ち込み
システム部分では私はゲームのデータを記録・読込をする所
やCGを観覧することができる所などをやりました。まず作業
を始めるにあたって、グラフィックデザイン担当に案(図-4)
を作ってもらい、グループで何度か話し今のプログラムの力で
このデザインはできるできないを話し合い、最終的なシステム
画面のデザイン案(図-5)を完成させました。そして、シス
テムプログラムを打ち込んでいきます。システムもまだ理解し
ている部分が少なかったので、エラーがかなりありました。イ
ンターネットでサンプルスクリプトを探し、それを参考にしな
がら自分たちが作りたいシステムを試行錯誤し、市場調査の結
果からあまりごたごたせず最低限必要な所をきちんと組み込む
ということでやっていきました。プログラムを打ち込む中で一
番大変だったのが記録・読込画面でした。データを記録すると
きに、記録する場面の画像をセーブ画面にうまく表示させるの
にとても時間を費やしました。あとは、最終的なバグ取りも大
変でした、タイトル画面からカスタマイズ画面ではエラーは出
ないが、ゲーム中からカスタマイズ画面に行くとエラーが出た
りするなどまだ少し解決してない部分もあります。
図-3ハイライト付け
図-4 変更前
図-5 変更後
5.制作・研究の成果
5-1 彩色の成果
実際の作品を作り始めたのは後期に入ってからで、前期は全体的に技術が足りず、このままではあ
まりいい作品ができないかもしれないとグループで話し合った結果、
各人の技術向上に専念しました。
半年を技術向上にあてたので、4年の初めに比べて各人の技術も上がり作業のスピードが結構速くな
りました。しかし、作業するにつれてまだまだ改良の余地があるところが出てきましたが時間的に無
理なことと、全て同じクオリティで仕上げないとまたおかしくなってしまうのでその部分がとても悔
やまれます。
5-2 プログラムの成果
プログラムは最終的にはそこそこ満足いったと思います。欲をだしたらまだやりたいことは沢山あ
りますが、技術的に無理な部分も多々あり、そこは断念しました。しかし思ったよりも形になったの
でよかったです。
6.あとがき
作品のほとんどが出来上がったのですが、まだ人に見せるには恥ずかしい所もあるので卒業制作の発
表会までには、今よりも少しでも良い作品になるように制作を続けていきたいと考えています。あと、
作り終えて一番思うのは、2年3年の時期をもう少し大切に過ごしていたら前期から制作に取り掛かれ
たと思います。これから先卒業したら毎日を後悔しないよう大切に使っていきたいと考えます。
106
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045036 藤田 廣之(市場調査担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.研究の方法
2-1 ゲームレビューの制作
各々が興味のあるジャンルや、一つのテーマ(システムが悪いゲーム等)に沿ったゲームをプレイ
し、それについての分析や批評をまとめたレビューを書いて、班員が閲覧出来る様に専用のファイ
ルにまとめた。そのファイルを班員に回して、レビューについての感想をノートに書くように義務
付けた。
2-2 ゲームの研究
同ジャンルのアドベンチャーゲーム(以下、ADV),
「NScripter」という今回使用したゲーム制作
ツールで実際に制作されたゲーム,今売れているゲーム等をプレイしてみて、人気のある理由や実
際に使えそうなデザインを調べゲーム制作の参考にした。
3.研究の成果
各人の書き溜めたレビュー(図-1)を基に、
「人気の有無」
「ゲームとして面白いか否か」で分析図
にまとめた。
(表-1)その結果、
「人気があり、内容も面白い」タイプと「人気はないが、内容が面白
い」タイプに偏りが出来て、それらに属さないものは一貫して“システムに不具合が多々ある”という
ことが見て取れた。ストーリーやキャラクターに魅力があっても、システムが悪いだけで著しくゲーム
としての評価を落としている作品も多く、改めてシステム面の重要性が確認できた。逆に言えば、スト
ーリーやキャラクターに重点が置かれていなくても、システムがしっかりと構築されているゲームは、
「良質の作品」とされることが多いようである。とは言え、ゲームバランスをしっかりと考えて、全て
の面においてユーザーが納得してくれるモノを作れなければ評価してもらえない。この業界のシビアな
現実と言える。
図-1 レビュー見本
107
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
表-1 分析図
また「NScripter」で制作されたゲームは、相当な数が存在することが分かり、プロの分野でも活用
されている実用性の高いツールだということが解った。更に実際にそれらのゲームをプレイして、どの
ような事まで実現が可能なのかを調べた。その結果、技術や知識があれば非常に高いレベルのゲームも
作成できることが解った。
「NScripter」を使用しているゲームの代表作である「月姫(TYPE-MOON)
」
(図-2)や「ひぐらしのなく頃に(07th Expansion)
」
(図-3)は共に同人作品から人気が高まった
もので、互いにノベル作品(ビジュアルノベル,サウンドノベルなど)という点が共通していることか
ら、ノベル作品に注目が集まっていることが確認できた。
図-2 月姫
図-3 ひぐらしのなく頃に
4.あとがき
調査を進めることで、今まで知ることの無かったゲーム業界事情を知ることが出来て、ゲーム制作に
も大いに参考となった。しかし、時間の都合で調べ切れなかったことも多いので、これからの課題とし、
より理解を深められるように努力していきたい。
108
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045045 弓場 健司(線画・下塗り担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.使用ツール
2-1 Photoshop
Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)は、アドビシステムズが販売しているビットマップ画
像編集ソフトウェア。フォトレタッチツールを代表するソフト。
2-2 SAI
SAI(サイ)は、SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェア。正式にはペイントツー
ル SAI、または EasyPaintTool SAI と呼ばれる。
3.制作の方法
3-1 パス引き
パス引きはまず、原画担当から原画を貰いそれに「Photoshop」を使ってきれいに清書していきま
す。まず、ペンツールを使って線を全てきれいになぞっていきます。線を同じ幅で引くとあまり見栄
えがよくないので、線に強弱をつけていきます。ここで、1回線の太さを一枚全て間違ってしまい、
やり直しになった事がとても大変でした。その後、とがっている部分やはみ出した部分を消しゴムツ
ールで削っていきます。そして、原画担当に見せて問題なければ完成です。
(図-1,2)
3-2 下塗り
線画が問題なければ下塗りをします。まずレイヤーを髪・肌・服とパーツごとに分けて作成します。
これは後で、間違ったときや色を変えたいときのためです。レイヤーを作成したら、バケツツールや
ブラシツールを使って色を塗っていきます。塗る色は、原画担当が設定したものにしたがって塗り隅
の細かいところまで塗り忘れがないようにします。下塗りを失敗せずに塗れるように一番下のレイヤ
ーを使う色以外の色で塗りつぶし、塗り忘れがあったら目立つようにする工夫もしました。これで下
塗りは完成で、彩色担当に渡します。
図-2 イベントCGの線画
図-1 立ち絵の線画
109
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
図-4 イベントCGの下塗り
図-3 立ち絵の下塗り
3-3 立ち絵の加工
立ち絵の彩色まで終了したデータを貰い、まずグループ
で各キャラクターごとに設定された身長にあわせて並べ、ゲ
ーム画面に表示される範囲を決め、画面から切れるところに
線を引きます。このときキャラクターですごく大きいキャラ
クターとすごく小さいキャラクターがいるので、他と同じ様
に並べたら2人ともゲーム画面から切れてしまうので、画面
にきちんと映りつつ大きさと小ささをうまい具合に表示する
のが苦労しました。
それが終わったら、立ち絵の大きさをゲーム画面サイズの
横800縦600に合わせる作業をしました。このとき先に
決めた表示するサイズに合わせて加工していきます。立ち絵
図-5 立ち絵のマスク画像
は画面にキャラクターを表示させるのですが、そのままでは
画像が四角形なので、キャラクターの周りの部分も表示され
てしまい、とても変になります。そこで右図(図-5)の様なマスク画像を作成します。この様な形に
すると、キャラクターの周りの黒い部分は表示されずに、キャラクターだけが表示されます。後はこれ
をプログラムに打ち込んで完成です。
4.研究の方法
同ジャンルのアドベンチャーゲーム(以下、ADV),
「NScripter」で制作されたゲーム,今売れている
ゲーム等をプレイしてみて、人気のある理由や実際に使えそうなデザインを調べゲーム制作の参考にし
た。立ち絵のマスク画像は、
「NScripter」の参考書やインターネットで作成方法を調べた。
5.制作・研究の成果
3年の後期から本格的に制作に取り掛かり、4年の12月にゲームの制作がほぼ完了した。制作を通
して限られた時間の中で「質」と「量」のある作品を作ることの大切さ、製作者として、そしてユーザ
ーの視点でも製作をしなければいけないことを学んだ。自分が担当した立ち絵のマスク画像はミスも少
なく、表示されたのでそこは満足した。下塗りは、彩色担当に渡したあと塗り残しがちょこちょこあっ
たことがあった。
5.あとがき
今回の初めての制作では自分の技術力のなさに、もっと早くから練習しておけばと実感しました。卒
業制作をやって、限られた時間で制作すること、ユーザーに不満感を与えないこと、バグの処理など様々
なことを反省すべきだと思いました。
今回ゲームを作る難しさ、そして自分の技術力不足を体験したことは、これからの社会に出るために
とても必要なことを勉強したと思います。
110
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
矢野研究室
045051 李 晶(背景 CG,BGM・効果音選曲担当)
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界にはどのようなゲームが出回っていて、それを受けてユーザーはどんなゲームを求
めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲームを試作する。それによって、
ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる知識を高め、個々のデザインのスキル向上
も目指す。
2.使用ツール
2-1 Photoshop
アドビシステムズが販売しているビットマップ画像編集ソフトウェアで、フォトレタッチツール
を代表するソフト。
2-2 Illustrator
「Photoshop」と同じく、アドビシステムズが販売しているベクトル画像編集ソフトウェアで、
ドローツールとも呼ばれる。
2-3 六角大王 Super5.5 Win
株式会社終作が開発・販売するパーソナルコンピュータ用3次元コンピュータグラフィックスソ
フトウェア。
2-4 SAI
SYSTEMAX が考案・作成した画像描画用ソフトウェア。正式にはペイントツール「SAI」
、また
は「EasyPaintTool SAI」と呼ばれる。
3.制作の方法
3-1 背景CGの資料探し・準備
まず、どういう背景が必要かグループでシナリオを読みながら話し合って背景案を出し合った。
その後、背景のイメージに合う写真や、参考に出来るゲームのCGを集めて、デザインのラフスケ
ッチを行った。また実際に自分で写真を撮りに行くなどもして、背景に関する知識を深めるように
準備した。
3-2 背景CGの制作・流れ
イメージ案を基に、2D で作成するか 3D で作成するかを決定して、2D の場合は下書きと線画を
清書して、一度、簡単に全体を彩色する。仕上がったらグループの全員にチェックしてもらい、要
望があれば手直しをした。問題が無ければ、
「Photoshop」と「Illustrator」を使って本格的な下塗
りと影付けして、完成後に最終チェックをもらう。
3D の場合も最初は同様に、下書きと線画を清書し、簡単な彩色をしてチェックをもらう。問題
が無ければ、
「六角大王 Super」を使って、その背景に必要な 3D データを作成した。作ったデータ
を一つのファイルにまとめてからイメージ通りになるように配置し、カメラアングルを調整して、
BMP で書き出す。その書き出した BMP ファイルを「SAI」を使用し、線画を更に補正したり、線
に強弱をつけたり、テクスチャーを貼り付けて、その背景に合うように色合いなどを上手く調整す
る。その後、影付けをして仕上がったら、最終チェックをもらう。
3-3 BGM・効果音の選曲
ゲーム内に使用する BGM と効果音を選曲した。事前に班全員で「どの場面でどういう BGM を
流すか」
「どのタイミングでどういう効果音を出すか」などを話し合い、インターネットでシナリオ
のイメージに合う無料の BGM と効果音を探し、ダウンロードしてプログラムに組込み、違和感が
無いか試聴した。出来る限り選曲にムラが出ないようにした。
4.研究の方法
自分たちの制作するものと同じジャンルのゲームを実際にプレイしたり、背景の資料に使えそうな
111
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
画像を集めたり、CG の加工をどのようにするかを研究した。
5.制作・研究の成果
5-1 背景CGの制作成果・研究成果
ゲームの世界観が複雑だったので、背景のイメージをまとめるのに苦労した。なので、自分の力
で全てを書き起こす事が出来なかった。その救済策として、無料の写真や CG などを「Photoshop」
で加工するなどして、一部の背景として使用した。それでも、自分で作成できるものは出来る限り
クオリティが高いものになるように、試行錯誤を重ねた。結果として、背景全体の半分(図-1,
2,3)と戦闘 CG 用の背景(図-4)を完成させた。
背景に関しての研究については、背景は物語の各所に出てくるもので、立ち絵が無くてもそれだ
けで物語の繋ぎになるなど、非常に重要な役割を持つことが改めて理解できた。
図-1 背景CG1
図-2 背景CG2
図-3 背景CG3
図-4 戦闘CG背景
5-2 BGM・効果音の成果
中々、自分たちで作成するのは難しいので、どうしても著作権フリーのモノに頼らざる負えなか
ったが、少しでもゲームに馴染むような BGM・効果音を探そうと、インターネットでくまなく調
べ回り、ゲームに使えそうなフリーサイトを見つける事が出来た。班の全員に試聴してもらい、了
承が出たので、そのサイトの BGM や効果音をゲームに組み込んだ。また、ゲームのサウンドトラ
ックなどを聴いて、BGM の選曲の参考にした。
6.あとがき
背景 CG の制作は予想以上に難しく、技術や経験だけでなく、多くの資料が必要だと感じた。イメー
ジをまとめる事に時間を掛け過ぎて、本格的な制作に取り掛かるのが遅れてしまった事が反省点だと思
う。ただ今回の制作を通じて、自分の中で創造できるイメージが広がったように思うので、収穫も多い
卒業制作となった。
112
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
オリジナルゲーム「ピースメーカー」卒業制作概要 [作品,ポスター]
045032 西谷 誠司(プログラム・シナリオ構成) 矢野研究室
1.研究の背景・目的
現在のゲーム業界ではどのような人を対象にし尚且つどのようなゲームが出回っているか、そしてユ
ーザー達がどんなゲームを求めているのかを自分達で研究し、ユーザーのニーズにより対応したゲーム
を試作する。それによって、ゲーム業界事情を理解していき、尚且つゲーム制作に関わる情報知識を高
め、個々のデザインのスキル向上も目指す。
2.制作の方法
2-1 シナリオの構成
あるシナリオライターからシナリオデーターを貰い、そのシナリオデーターを基にそのシナリオを読
み返し、誤字脱字などを修正したりさまざまなシステムについてのことを班で話し合いながらまとめて
いきました。
(実際に下にある図が修正したものと修正前のものである。
)
(図-1修正前)
(図-2修正後)
2-2 シナリオデーターに立ち絵及び CG・BGM の打ち込み
シナリオの誤字脱字などを修正し終えた後、
「NScripter」のゲーム制作ツールを用いて、文章を打
ち込む作業を行いました。インターネットや本の付属の CD に入っている仮の CG・立ち絵・BGM を使っ
て表示のタイミング等が正常に行われるようにプログラムを組みこんでいきました。
(図-3)そして
正規の CG・立ち絵が完成した段階で仮の物を破棄し、正規の物と入れ替えました。
(図-4)システ
ムはサンプルを基にカスタマイズしていきデザイン案通りになるように調整しました。
(図-3 仮 CG 置き)
(図-4 正規の CG 置き)
113
平成19年度 卒業研究・デザイン 概要
2-3 エンディング作成
他のゲームや自分が持っているゲームのエンディン
グや本などを参考した。製作については、ペイントツ
ールを使い、
ゲーム CG の絵を半分切り捨てた感じでそ
れぞれが担当した人達の名前が出てくるやっていった。
その場面が左のものです。画面サイズを一切変えず、
ゲームに使う CG のサイズ 800×600 のサイズを 600×
600 に縮小し、あまりの所をスタッフロールみたいに
文字がはみ出さないよう文字サイズや角度などを調整
しきれいに見せるよう心がけてながら、班などの意見
などを聞きながらやった。
そして実際に動作確認した。
ただあまりにも人数が少ないことが難点だった
(図-5エンディング画面)
3.研究の方法
3-1 ゲームレビューの制作
自分たちはゲームの作りについて乏しいため自分たちが持っているゲームや興味のあるジャンルな
どを参考にプレイして、自分が感じたことや意見などを書き、最近の流行などを計ると同時に自分達
が製作しているゲームに生かせるではないかと思いレビューを作りました。そして月ごとに一つのテ
ーマ(システムが悪いゲーム等)などを持ちいて、自分と他人ではいろいろとに批判することやどのよ
うに感じているのかが違うため口論の材料としても使えるからである。そして班員が閲覧出来る様に
専用のファイルにまとめた。そのファイルを班員に回して、レビューについての感想をノートに書く
ように義務付けるようにした。
3-2 他のゲームの研究
同 ジ ャ ン ル の ア ド ベ ン チ ャ ー ゲ ー ム ( 以 下 、 ADV),
「NScripter」を使って製作しているものなどをプレイしてそ
のゲームの人気ある理由などを調べたり使えそうなシステム
やシナリオの文章構成・立ち絵や CG のタイミングや時間差な
どを研究し参考にしたりした。実際に自分が文章構成のために
参考にしたソフトは左の図ものです。このゲーム画像を自分が
見たとき文章の作りや立ち絵の並び方がきれいに違和感がち
っともなく、他のゲームだと絵と文章が同時に出たときにどう
しても見栄えなどが悪くなる。だから左のような問題のないゲ
ームを探したりして、自分達のゲームとどう違うのか。それに
は他のゲームなどを研究し技術を上げたり知識を深める必要
がある。後ゲーム業界がどの年齢を対象にしているのかを調べ
(図-6 参考画像)
ることでユーザーが何を望んでいるのかが研究しやすくなる。
4.制作・研究の成果
自分はシナリオの構成やシステムなどのプログラムなどをやりました。製作としては、初めシステム
のことがさっぱりで作業の方が自分の班の中で一番遅くなりがちでした。そして遅れを取り戻すために
いろいろと思考錯誤しながらやっていきました。それからシナリオの構成に終わり、次に立ち絵などの
打ち込みの方に入りました。実際これにも初めは苦労しました。立ち絵自体入れるのにも本を見なけれ
ばいけない始末だったので自分の知識不足に痛感しました。この後もいろいろありましたが今回の製作
で分かったことはゲーム製作をしている人はこんなにも苦労がことが分かりました。
5.あとがき
作品の制作は無事終えることは出来てよかったが、
様々な部分で知識不足や技術不足が露呈したこと、
作業の進行が思い通りいかなかったこと、個人的に納得がいかないことがあるなど多くの面で課題が残
った。限られた時間の中で、1つのモノを作ることの難しさを初めて痛感した。今回の卒業制作が教え
てくれたように思える。
今後はこの経験を社会に生かしていけるように一層努力し続けたいと思います。
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