卒業 / 修了研究・制作

卒業研究・作品
快適性を求めた
家具のデザイン・制作
快適性を得るためには、単に「座る」だけではなく座りながら「何かをする」ことも
ブナ、クリ、ペーパーコード
チェア:h1050×w950×d610mm
テーブル:h500×w350×d450mm
体になるロッキングチェアとサイドテーブルの研究制作である。
高橋 咲
Takahashi, Saki
デザイン工芸コース
含めて考える必要がある。本研究は、この考えをもとに、
「座る」と「何かをする」が一
このロッキングチェアとサイドテーブルを一体のものとするために、テーブル側
のアームをなくした。これは広く空間を使うことができ、行動の範囲を広げることが
できるのが狙いだ。本を読みながら、またコーヒーを飲みながらなど、座ることとし
たいことが同時に満たされる快適な環境でくつろぐことができる。
049
卒業研究・作品
食育にアプローチする
家具の提案・制作
現在、野菜が嫌いな子供が多くいる。幼いころの私は食わず嫌いな子供だった。し
ヒノキ・タブ・マツ・アクリル板・LED
h320×w360×d80mm
に実体験が好き嫌いの壁を超える例は多いようだ。このことから、実体験を通して食
冨田 侑以
野菜に対する興味と関心を継続させるために、野菜を常に目に触れる場所に置く
Tomita, Yui
デザイン工芸コース
かし、自分で野菜を育てて食べる経験を通して今では野菜が好きになった。このよう
育に関する製品を研究したいと思った。
ことを考えた。そのために室内で簡単に育てられる水耕栽培で、壁面を利用する壁掛
け式を選択した。構造はユニット式で自由なレイアウトが可能なため、子供の目線の
高さに調節したり、リビング、廊下、玄関などに自由に取り付けることができる。接合
部にはサネ(ふたつの材料を接合する際に用いる別の材)を入れて強度を高め、栽培
部分の内側に指の掛りを付けて出し入れしやすくした。LED ライトの光は植物の成
長を促進させる一方、審美性を高めるインテリアとしての効果がある。自分で育てた
野菜に、食べ物としての愛着を持つきっかけになってほしい。
053
卒業研究・作品
まるい まわる 世界
とある場所にある、全てが回転体で作られた世界
ー回転体が作る物語ー
輪投げタワーは町のシンボル
木工轆轤・木工旋盤
φ450×h750mm
その横に立つのは、れんこん時計
深川 永愛
雨宿りシンバルの下にはマーケット
Fukagawa, Amy
デザイン工芸コース 高台にはラッパ放送局
お店の名前は、お月様屋さんにしずく屋さん
街路灯には、まんまるランプ
憩いの場所には、ちくちく林
ここは全てが回転体で作られた
まるい まわる 世界 042
卒業研究・作品
居心地の良さを求めた
ソファの設計と制作
ブナ・ウレタン・布
h740×sh390×w1600×d620mm
千葉 香保里
Chiba, Kaori
デザイン工芸コース
045
卒業研究・作品
和風ドールハウスの制作
現代の高齢者はコミュニケーションをとる環境が変化したことで孤独化が進み、
ー高齢者向けの
コミュニケーションツールを目指してー
コミュニケーション不足であると考えられます。そこで高齢者の遊び心を引き出し、
木・粘土・布
h40×w380×d290mm
提案します。
コミュニケーションツールとして使用出来る新しいおもちゃ「和風ドールハウス」を
ドールハウスが持つ要素「空間づくり」は高齢者にとっても興味を持ちやすい作業
田中 美友紀
です。この研究制作ではその要素を上手く利用して、配置を楽しむおもちゃになるこ
デザイン工芸コース
とを目指しています。自分の好きな土台に明治・大正・昭和の香りがする小物を配
Tanaka, Miyuki
置することで、昔を懐かしみながら遊ぶことが出来ます。高齢者施設での実験ではコ
ミュニケーションを促すツールとして高い効果が見られました。高齢者の心の安定
をはかり豊かな生活へ繋げる道具として役立つと考えます。
049
卒業研究・作品
コンパクトワークベンチ
色々な趣味の中でも、ものを作る趣味はたくさんの人によって行われています。そし
ーものづくりをサポートー
て、ものづくりをする時に丈夫で、作業しやすい機能がついた机が欲しいと思う人は
ナラ・タモ
h780×w1200×d470mm
多いと思います。
谷 健太郎
業が行えます。しかし本格的なワークベンチは一般住宅ではサイズ・価格的にも手を
Tani Kentaro
デザイン工芸コース
ワークベンチは、それ自体が重く、ものを固定する機能をもつことにより快適な作
出しにくいのではないでしょうか。そこで作業の幅をプラモデル制作から子供用木製
スツール制作程度の室内向け作業に限定したサイズにすることで、ワークベンチの特
徴はそのままに本格的な作業に対応できるようにと考えました。
この作業台を置くことで、生活におけるものづくりをより身近なものにし、豊かな
生活を送るうえでの制作の中心となってもらいたいと思っています。
043
卒業研究・作品
墓樹
楠(くす)・木彫
h2260×w700×d200mm
作田 芳
Sakuda Kaori
デザイン工芸コース
023
修了研究・作品
Home
食事のときに、使う器ひとつで食卓の雰囲気は大きく変わり、料理がおいしく感じ
ー器を美しくみせるキャビネットー
られることがあります。また料理に合う器を選んだり季節によって取り替えたりする
ホワイトオーク・ウォールナット・タモ
指し物
h1130×w880×d340 mm
ことで、日常に変化を加えることができます。器は、生活する上で大切な道具のひと
松井 麻里子
つだと考えます。
今回制作したキャビネットは、器を食卓で使用しないときであっても、美しく飾るこ
Matsui Mariko
とができ、目でみて楽しめるものを目指しました。
教育学研究科
額縁をイメージしたガラス扉の中に、自分の思いで器を自由に並べ置き、愛着を深
めながら収納することができます。また、側面に小窓を設けたことで、淡い光が差し
込み、キャビネットに収まった器がより立体的に美しくみえるように考えました。
このキャビネットを通じて、日常生活の中で使用する器などの道具を、より美しく
みせるものとして扱ってほしいと思います。
171
卒業研究・作品
シューケアボックス
この作品を研究・制作するにあたって、いくつかアンケートをとりました。靴の手入
ー「手入れ」のはこー
れをしている人は全体の約半数。そのほとんどが、スプレーなどを半年に一回程度の
神代タモ・神代ケヤキ・神代ニレ
h255×w361×d146mm
手入れで、日常的に手入をしている人はとても少ないということが分かりました。その
岩田 愛美
き箱に無造作に入れており、手入れに対する意識の低さが伺えます。
Iwata Megumi
デザイン工芸コース
主な理由は、
「ケアの仕方がわからない」
「面倒」などでした。ケア用品もお菓子の空
多くのものが使い捨ての、便利な世の中で暮らしているわたしたちには、靴の汚れ
を落として、みがくなどの手入れは面倒なことかもしれません。しかし、一度手入を始
めてしまうと、明日はどこかに出かけようとニヤニヤしたり、靴にあう洋服などのコー
ディネートを考えたりと、案外楽しい気分になるものなのです。
道具を収納する箱も、クッキーの空き缶などで代用せずに、ブラシやクリームにあ
わせて誂えた箱に入れてみれば、次に手入をするのが楽しみになると思いませんか?
031
卒業研究・作品
テーブルと椅子
ダイニングに置かれるテーブルや椅子は、食事をするだけではなく勉強や趣味を楽
ーやさしい空間作りのためにー
しんだりテーブルを囲んで一緒に料理の仕度をするなど、使う人が多様なシーンを作
ホワイトアッシュ・ペーパーコード
テーブル:h730×w1500×d750mm
椅子:h720×sh425×w460×d455mm
りだし、コミュニケーションの場となる役割を果たしています。私は、そのような空間
をやさしいフォルムで構成するテーブルと椅子を制作しました。
テーブルは、軽快な印象を持たせたいと考え、脚部と甲板との間に空間をつくる構
澤田 千聖
造にしています。比較的小さな空間で使用することを想定し、甲板の高さと椅子の高
デザイン工芸コース
さを揃えて圧迫感のないようにしました。椅子の座面にはペーパーコードを用いて
sawada chisato
座ったときの張りのある感触や自然な色合いを出すようにしています。使い続ける内
にその風合いが増していくことも家具を楽しむ醍醐味だと思います。単純な構造なが
らも長く使うことを考え、将来的な木材の変形にあわせて部材を選ぶことや、家具の
印象に関わる木目の見せ方にも重点を置いて制作しました。今後も、やさしい存在感
で使う人を和ませる家具やインテリアを提案していきたいと思っています。
032
卒業研究・作品
ドレッサー
私は、「化粧品やアクセサリーを収納する場所」というのがドレッサーの主たる役割
ー部屋を飾り、生活に寄り添うー
であると思いますが、「化粧品のディスプレイスペース」という役割もあると感じまし
マホガニー
h720×w302×d420mm
斎藤 奈緒美
Saito Naomi
デザイン工芸コース
た。化粧品の瓶やボトルには、形がユニークであったり、色もカラフルで綺麗なものが
多くあります。それらを収納しながらもディスプレイできるよう、開口部を広く設けま
した。上部には引き出しが二段付いており、上段はジュエリー等の貴重品用、下段は
化粧品用と分けて設計しました。
一般的なドレッサーには、大きな鏡が付いていて椅子が在ります。そんなドレッ
サーにも憧れますが、大きな鏡がある大きな家具は部屋の印象を大きく左右します。
私は、より様々なタイプの部屋に抵抗なく馴染む家具にしたいと思い、このサイズを
選びました。ベッドの隣、机の傍、味気ない壁際を飾ることもできます。小さいので設
置する場所の選択肢が広がり、使用者の生活に寄り添います。鏡は部屋に合わせて別
に選ぶことで、他の家具との調和を図ることができるように考えました。
034
研究生作品
SGKチェア
この2脚の椅子は、昔の小学校で使われていた木製の椅子を参考にして制作したも
ー道具感のある椅子ー
のです。小学校という過酷な環境で使用するために作られた椅子は、生産性のよい堅
楢・メープル・布・ウレタン等
h720・sh410×w395×d430mm
実な構造によって、道具に徹した素朴な魅力を持っています。私はこの魅力を「道具
中田 裕明
庭用のサイドチェア(肘掛けのない小さい椅子)としてデザインを進めていきました。
Nakata Hiroaki
研究生
感」と呼ぶことにし、この道具感を毎日の生活の中の椅子にも取り入れたいと考え、家
使用される場所が小学校から家庭の中へと変わることで、生産性や耐久性よりも
軽さや座り心地を優先しましたが、ホゾを楔で締める堅実な接合は踏襲し、また後脚
が折れ曲がり目切れる部分では部材に無理をかけない形を採用することで、毎日の生
活の中で安心して使っていける、頼りになる道具感を出そうと試みました。
この2脚は同じデザインで制作したものです。樹種と座面の素材を変えることで、
昔の小学校の椅子が持っていた道具感を強く残したものと、生活の中での快適性を
考慮したものの、2通りの道具感を提案しています。
146
卒業研究・作品
Dr
esse
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私は作品制作を通して、使用者にとっての使いやすさや、長く使えるように制作する
ーAhappyg
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f
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ための技術と知識を具体的に学びたいと思った。そこで、化粧品やアクセサリーなど、
タモ・赤樫・欅
w784×d360×h780mm
伊藤 のぞみ
Ito Nozomi
デザイン工芸コース
形も大きさも様々な、たくさんの小物をすっきりと収納することを求められるドレッサー
を、制作テーマとして選んだ。
引き出しは、細かいものを見やすく収納するために底が広く浅いものと、少し高さの
あるものを収納するために底が深めのもの、2つのタイプを設計した。また、部屋に置
きたくなるような、かわいらしく温かみのあるイメージを表現したいと思い、タモ・赤樫・
欅の3色の木材を選び、組み合わせて制作した。
技術的には、長期にわたり使用していけるように、木材の特質である反りや縮みなど
の変形を止めることに配慮して加工を行った。また、ひとつの部材が複数の機能を兼ね
る合理的な構造を考え、制作工程を効率化し、よりシンプルなデザインを目指した。
これからも、使用者の目線に立った制作姿勢を忘れずに取り組んでいきたい。
066
卒業研究・作品
そり椅子
私にとって大学の四年間は、様々な授業を通して、日本の文化を再認識する為にとて
ー和をテーマにー
も良い機会になった。その気持ちを込めたいと思い、和室でも使えるような椅子のデザ
桜・ウォールナット・和紙
w680×d800×h580×sh270mm
小栗 佳那子
Oguri Kanako
デザイン工芸コース
インを考えた。
椅子を使っていて不便だと思ったことは、絨毯の上が滑りにくいことだったので、椅
子の脚部を工夫しようと思った。脚部にそりを付けることによって、滑りやすく、移動
しやすい椅子を作ることにした。
椅子の全体的なデザインは、和室で使うことを考え、あぐらをはじめ様々なポーズで
座れるように少し大きめの座面にした。座った時の視線も低めにしたかったので、座面
を低めのデザインにした。また、木だけでなく紙などの自然素材は、和の空間に調和す
るのではないかと思い、八尾の和紙を使った座布団を特製で作っていただいた。
この卒業制作では、いろいろと失敗もしたが、次への良いステップになったと思う。
今回だけではなく、日本の文化を表現できるような家具を制作していきたい。
067
卒業研究・作品
ダイニングテーブルの制作
ー花ー
本研究・制作は、
住まいの中心的存在である「ダイニングテーブル」についての研究・
制作である。家具においては、インテリア設計からみた与条件がデザイン・機能に大
きく影響を与えており、その為に家具と使用者と空間の関係を、切り離して考えるこ
木材(楢)
w1030×d765×h727mm
とはできない。これを一つの概念として念頭に置き、基本生活行為・高次生活行為、
國安 沙友里
または家事労働生活行為の視点からダイニングテーブルの用途を推測し、人間工学の
Kuniyasu Sayuri
デザイン工芸コース
分野から動作寸法を考えデザインを考案した。本作品は一人ないし二人用の家具とし
て設定しており、一人で広く使用する際には、天板を二つのサークルエリアに区切る
事ができ、作業と憩いの空間を同時に創り出すことができる。
また、二人で使用する際には、天板の形状を利用して、シーンに合わせて相手との
距離を変えることができ、くつろぎの場を多様に活用できる。また材料選定でも作品
に懸ける思いを込め、選んだ楢材の保有する魅力と迫力は、本作品に存在感を与えて
いる。使用する者の余暇的・社会的・文化的生活を、より良く充実させたい。
068
卒業研究・作品
白いロッキングチェア
椅子は、家具の中でも人の体に直接触れるという意味でとても身近な存在です。
ー揺れるを楽しむー
中でもロッキングチェアは、座るという要素に加え、揺れるという要素を持ち合わ
メープル・イエローハート
w475×d650×h740×sh350mm
松井 麻里子
Matsui Mariko
デザイン工芸コース
せていて、心地よさや楽しさをもたらしてくれます。私は、そうした部分に魅力を感じ、
入学以前からずっと制作したいと考えていました。
ロッキングチェアは、日本の生活で使うことが一般的ではないので、生活空間に
自然となじむような穏やかな存在感、そして主張しすぎないものを目指しました。デ
ザインは直線をベースに大きめの丸みをつけて親しみやすいものにしました。素材に
はメープル材 ( 楓 ) を用い、白く柔らかい印象になるようにと考えました。揺れてい
るときも両足が地面に着き、またサイドに手の握る場所を設けることで、揺れるとい
う要素に重点を置きながらも不安を感じることのないようにも配慮しました。
069
研究生作品
Cabinet
近年、新築の戸建て住宅やマンションにおいて、仏壇や神棚が失われてきている
ー祈りを納める箱ー
ように思われます。しかし、無信仰の人が増えてきているとはいえ、故人を偲ぶ気持
桂・楓・神代楡・黒檀・真鍮・ステンレス
w360×d252×h670mm
小泉 惇
Koizumi Atsushi
研究生
ちや祈ることを忘れてしてしまっている訳ではなく、住空間の洋式化・仏壇や神棚
を据える広さがとれなくなっていることなども要因として挙げられると思います。
このようなことから、大きなものではなく設置が簡単で、故人を偲ぶものや祈る
ものを納めることが出来る何かが必要であると考え、今回の制作に至りました。 制作するにあたり大切にした点は、出来るだけ長く手元に置いて、身近に寄り
添っていけるよう修繕が出来る構造にし、修繕が困難な箇所は事前に補強すること
で、出来るだけ長く使い続けられるようにした点です。
このキャビネットが、故人を偲ぶ気持ちや祈る心を受け止める存在であることを
望んでいます。
162
研究生作品
ざ ぐ
Easy low chair
椅子の座刳り、角度のついた仕口の加工、有機的な形同士の接合などを学ぶため
ー厚板を生かした椅子ー
にこの椅子を制作した。くつろぎの時間を過ごすための、あぐらのかける低座椅子
ホワイトアッシュ・欅
w700×d630×h665mm
である。
厚板であることを生かしたシンプルで強い構造を考え、削り出した座面から伸び
は
中田 裕明
Nakata Hiroaki
研究生
た触手のようなものが後脚を支える構造になった。矧ぎ合わせる時にその部分だけ
長くすることで、材の無駄は抑えている。
設計の際に注意したことは、構造の中心になる座面と背もたれの材の伸縮を妨げな
いことと、組んだ後で削って行く部分に影響が出ないような仕口にすることである。
樹種は、有機的な形の座面、背もたれ、肘掛けを強調するため、それらをホワイ
トアッシュで作り、脚と肘掛けの支えは色の濃い欅で存在感を抑えた。
この椅子の制作を通して、今回の目標としていた技術の修得、今まで学んできた技
術が応用できるようになってきたと思う。
(単位/mm)
163