達成感と、自信・興味・意欲の向上を重視した中国語授業の試み

達成感と、自信・興味・意欲の向上を重視した中国語授業の試み
─私の拼音スリーステップ教授法と中日双方向通訳・会話式指導法─
周 建 中*
An Experiment in Teaching Chinese Classes with an Emphasis on Creating a Sense of
Accomplishment and on an Increase in Self-Confidence, Interest, and Motivation
−My three-step teaching method for Pinyin and Chinese-Japanese bi-directional
interpretation and conversational teaching methods−
ZHOU Jianzhong
提要
人们无论从事什么工作或学习,兴趣和积极性都是影响进展和能否出成果、或者快出成果的重要因素
之一。目的达到了或者目标得到实现时就会产生一种成就感;才能得到施展、成绩得到肯定或表扬时也
会有一种满足感。有了成就感或满足感就会对所从事的工作或学习更有自信、更加感兴趣、更有积极
性,从而加大时间和身心的投入,就更有利于出成果。
在中文教学方面(我想其他方面也类似),能否让学生对中文感兴趣和提高学习积极性也至关重要。
我在拼音三步教学法以及中日双向口译和会话式三步教学法的探索和实践当中,努力让学生从开始阶段
就尽快地、并且不断地体验到成就感、满足感。实践证明这样做的确更能让学生对中文感兴趣、更能提
高学生学习中文的积极性,从而取得更大的教学成果。
キーワード 達成感、興味、意欲、拼音のスリーステップ教授法、中日双方向通訳と会話式指導法
1.達成感と、自信・興味・意欲の向上との関係および本文の狙いについて
1. 1 達成感と、自信・興味・意欲の向上との関係について
人間は従事している仕事などに、目的・動機がなければ勿論、理屈的に目的や重要性が分かってい
ても、楽しく感じず、興味が湧かないなら、意欲的に取り組むことができず、なかなか成果が上がら
ない場合が多い。逆に楽しく、意欲的に携わることができれば、仕事がはかどり、インスピレーショ
*
ZHOU Jianzhong 国際言語文化学科(Department of International Studies in Language and Culture)
159
東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 22 号(2015)
ンが湧き、成果も多く出せる。興味、意欲が大変重要な原動力だと言える。学生の場合でも、個人差
はあるものの、多くは高校までの勉強の習慣作りや基礎学力などが不十分だったとの指摘もあるが、
面白く感じてもらい、興味を持たせ、意欲を高めてもらうことができれば、自信が付き、積極的に取
り組み、不足を補い、学力・成績の向上に寄与できるのではないかと考える。
仕事や勉強などに興味を持ち、意欲が湧くかどうかは、その人自身の性格・教養・取り巻く環境な
どの要素が関連すると考えられるが、これらの他に達成感と認めてもらいたい欲求の満足度も重要だ
と思う。その理由としては、人間は、目的・目標を達成した喜びを味わいたい、周りや社会に人物、
能力や成績などを認めてもらいたいという欲求があるからだと思われる。目的・目標を達成し、褒め
られるなど、人物、能力や成績などが認められたら大いに喜び、快感を覚える。そして、自信が付
き、もっとやる気が出て、興味が湧き、意欲が向上する。更に元気よく続け、時間をかけ、アイディ
ア・インスピレーションもどんどん出て、成果が上げやすくなると考えられる。
1. 2 本文の狙い
中国語教育の分野においても、立派な教授法が多く開発され、種類豊富なテキスト・辞書・学習ソ
フトおよび、マルチメディアなど教育と学習のためのコンディションが備わってきている。しかし、
いかにして学生の学ぶ意欲を高め、中国語教育の実績成果を顕著に上げることができるかについての
研究は寡聞ではあるが、知る限りではあまりないように感じる。
前述と同様に、学生も学んでいることに喜び、楽しみを感じたら、やる気が出て、興味が湧き、意
欲が高まると思われる。何ごとでも好きでやり、興味に燃えて取り組むことができるなら、困難が
あっても、コンディションを作って乗り越え、根気よく続けることができる。そして更に達成感を味
わって、興味が湧き、意欲が持続、向上し、もっと実績成果を上げられると思われる。中国語教育の
場合でも、学生に学習目標・目的を成し遂げた達成感、認められた喜びを味わってもらい、そして小
さい方から大きい方へ、継続的にこうした喜びを感じさせて行くことができれば、興味意欲を持ち続
け、向上し、立派な成績成果をあげてもらうために役立つのではないかと思われる。
これまでに教育の実績成果をいかに出せるかを考えながら専門科目としての中国語および、地理・
文化などの教養科目において試みてきたが、今回は中国語コミュニケーション・通訳・会話の授業を
中心に、その試みと心得をまとめ、報告したいと思う。
2.発音勉強の段階から学生の達成感の味わいを重視して進める必要性と試み
2. 1 きれいな発音の重要性について
言語を専門とする外大などでは、教育目的の一つとして、学生に国際文化交流、ビジネスに必要な
外国語コミュニケーション能力を習得してもらうことが挙げられる。そのために、どの言語において
も、まず、きれいな発音ができることは大変重要だと思われる。
語学能力検定試験、口語試験、テレビ視聴、実際の会話、電話でのやり取り、通訳、ディスカッ
ション、ディベートなど、相手の言葉を聞きとるリスニングのために、きれいな発音ができることは
基本だと思われる。同時に、きれいな発音ができれば、相手が聞き取れて適切な反応を示し、褒めた
160
達成感と、
自信・興味・意欲の向上を重視した中国語授業の試み ─私の拼音スリーステップ教授法と中日双方向通訳・会話式指導法─
りするので、うまくできた、能力が認められたと感じて、自信が付く。そして、度胸が大きくなって
もっと元気な声を出そう、もっと勉強しようと意欲が増すのである。
授業などできれいな発音ができて、先生や皆に褒められたら、学生は喜びを感じてやる気が出る。
そして、意欲的にやるので、会話、コミュニケーション能力の習得も順調に進む。最初が大事、いい
スタートを切れば授業と学生のその後の勉強に大きな影響を与える。発音がきれいな学生は殆ど関連
の他の科目も検定試験も全般的にうまくできると言える。
しかし、発音のマスターは短時間、簡単にできるものではなく、発音の学習段階では授業、教員、
学生も十分に時間をかけて度重なる指導とトレーニングを通じて、きれいに発音ができ、定着させて
いく必要がある。急がば回れ、逆に発音がきれいにできないまま進めれば、その後の勉強、特に会話
と通訳能力の習得にかなりマイナス的影響が及ぶと思われる。
2. 2 発音勉強の初期段階で早く学生に達成感を味わってもらう試み
きれいに発音できるのが目的なので、限られた時間の中で、なるべくシンプルで効果的な方法でト
レーニングを進めてきた。つまり、詳細な発音の原理・構成・名称についての専門用語を使っての説
明をできるだけ省いて簡単、明瞭にする。また、個人差はあるが、意欲を損なうことがあるため、余
り間違いの指摘をせず、なるべく多く真似をしてもらう。そして、できたら認め、褒めてあげたら、
学生は達成感を味わい、意欲が向上する。
中国語は日本語より発音や記号が多いので、飽きずに早くできるようになってもらうため、声母
(子音)・韻母(母音)などについて、まず日本語と同じ、或いはほぼ同じ発音は片仮名で板書併記
して(最初の段階に限って)発音をリードする。すると大半は早く発音できるようになる。そして残
りの日本語にない単母音のe、巻舌発音のzh、chi、shi、rなど(英語に近い)は、これに近い国際音
声記号で記すか、発音をリードし、CDを聞いてもらう。しかし、やはりLLや近くで教員のスローテ
ンポの発音を聞いてもらった方が結構効果的である。私の経験では、時間をかけて、いろいろな説明
をするよりも学生は細かい発音がはっきり聞こえたら、ほとんど真似できる。できたら褒め、自習や
音読発表を含めて、繰り返して発音に慣れてもらい、定着させて行く。
なお、中国語発音の特徴である声調(北京語音の四声)については、これも日本語の知識を生かし
て、模範発音をすると同時に音楽指揮のように手振りで示して、特に第二声はびっくりして、第三声
はがっかりして、第四声は「こら!」などと叱るような感覚で発音するように要領を説明して発音の
リードをすれば、早く理解でき、真似できる。
更に中国語は歌のようで、リズム感に富む言語なので、子音・母音・音節の発音練習に四声を付け
て練習してもらうと学生は結構楽しそうに手振りについて発音してくれるので、一挙両得である。文
も単語・熟語やフレーズごとに歌を歌うようにリズムをつけて真似をしてもらうと学生は楽しく真似
して効果的である。
このようにした結果、学生は早いうちにきれいに発音ができ、音読も簡単な会話もスムーズに進め
ることができて、まず初歩的に達成感の喜びを味わうことができる。褒められたら、更にやる気が出
て、勉強の意欲が湧いてくるのである。
中国語と日本語は、漢字や漢文及び関連背景知識が相通じていて理解に有利なため、学生にとって
161
東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 22 号(2015)
理解と日本語への翻訳はあまり難しくないようである。しかし、発音は、日本語にない発音が中国語
に多くあり、中国語は英語よりも発音が多い(声調を付けた場合)ため(宇文永権、2009)、日本人
にとって難しいと言える。けれども、発音さえ身に付けば、後の学習はスムーズに進めることがで
き、比較的早い内に使えるようになる。
発音は授業時にできたとしても、授業外で復習し、継続的に練習しないと時間が経つにつれて忘れ
て行く。きれいな発音を定着させるために、多くの授業を取るほかに、授業以外でも多くの時間をか
けて、CDを聞き、音読するなど多数反復練習が必要だと学生に説明し、奨励する(私の大学時代は
1年次の会話と精読という授業の文は全部暗唱させられていた)。次回の授業では復習のリード、矯
正と、発表をしてもらって褒めるなどして意欲を継続させる。取っている科目数と課外での努力など
個人差があるが、本学科では初級の科目別授業を週4コマ程度取る学生は、1年次のうちに大体身に
付けてもらえる感じである。継続は力なり、2年、3年時の勉強もきれいな発音を定着させるために
重要である。
2. 3 長い会話文章の発音を覚えてもらうスリーステップトレーニング法
ステップ1では、まず通常のパターンで発音をリードし、文法を簡潔に説明してから(2年生以上
は省いてもいい場合がある)、テキストの会話や本文を音読、翻訳発表させる。間違った発音は正し
い方を数回真似してもらうように直し、できなかった翻訳は文法から説明する。そして、再度テキス
トを見て音読、翻訳する発表をさせて達成度をチェックする。学生はうまくできたら褒めてあげて、
喜ぶ。まずこの段階で小さな達成感を味わってもらうことができる。現段階で一般的に使われている
テキストのワンレッスンの内容の指導は一回の授業で一通りできる。発音の指導と練習は約半分以上
の時間を使う。次の授業で復習する。
中国語は基本的に漢字のみなので、実用化するために、ステップ2では、自習の課題として、ノー
トにステップ1で習ったテキストの文などを漢字のみを写して流暢に音読できるように練習させてお
く(ノートに書いて練習してもらった方がテキストの中国語発音記号の拼音を隠すなどの方法より覚
えられる)。次にノートや板書で漢字のみを見て正しく流暢に音読できるか発表させ、間違いがあれ
ば矯正の指導をする。このように分かりやすい目標を提示して頑張ってもらって、達成できたら喜び
を覚える。なお、この段階では学生は授業以外で発音を覚えるのに割と時間がかかるので、出来具合
を小テストなどの結果として評価する。
ステップ3では、ステップ2の漢字のみ書いたノートに、テキストを見ずに漢字に中国語の発音記
号である拼音(ピンイン)を付けてもらう練習をしてもらう。そして、テキストを見てスペルだけで
なく、声調まで確認して、ミスがあれば赤いペンで自己添削してもらう。間違った部分を覚えるまで
音読したり、書いたりしてもらう。こうした方がインパクトがあり、刺激的で記憶効果が顕著であ
る。拼音が書けて、言えれば必ず自信たっぷりに生の中国語を読むことができ、会話もはっきり発音
ができ、リスニングもうまくでき、全般的実用のトレーニングになる。
メリットはこれに限らず、検定試験やメールとワープロで文章作成のための入力など実用のために
も役立つ。教員は上記練習の間違いの量を気にするよりも、勉強になるためのプロセスだと認識すべ
き、覚えた量が増えるにつれて赤が減って行くと予め説明しておく。
162
達成感と、
自信・興味・意欲の向上を重視した中国語授業の試み ─私の拼音スリーステップ教授法と中日双方向通訳・会話式指導法─
こうして、段階的トレーニングの目的・目標を示して、学生は達成度を自分で確認することができ
るので、その都度達成した喜び、快感を覚えて更に続ける意欲が湧く。
なお、中国語は大半の漢字に声調を含めて一つの発音しかないことも日本人が覚えやすい理由の一
つになるかもしれない。そして、使う頻度の最も高い1000字を覚えれば普通の文章の92%、2000字な
ら98%以上が理解できると言われる(劉菲、2014)。学生に実現できそうな近い将来の目標を示し
て、努力してもらうようにしている。
3.中日双方向通訳と会話式三段階トレーニング指導の試み
「通訳」とは最も簡単に言えば、言語が異なる両者の間の意思伝達のために聞いた片方の言葉の内
容を別の言語で伝えてあげることだと説明できるかもしれない。学生に中国語コミュニケーション能
力をこの方式でトレーニングして身につけてもらえればと考えた。そして、双方向通訳だけでなく、
会話もできるようになる。
第一の段落として、前述2.3節に続いて、まず、漢字のみでよく音読練習してきた中国語の会話や
本文などの内容を、教員が読み上げて学生に日本語に通訳してもらって間違いがあれば説明する。う
まくできたら評価してあげて達成感を味わってもらう。同じトレーニングを学生たちに自習などで練
習させておいた方がよい。
第二の段落として、中国語から日本語への通訳ができたら、次に教員は同じ内容を日本語で言っ
て、学生に中国語に通訳してもらって間違いがあれば説明する。ここでも学生は達成度を自分で確認
することができる。同様にうまくできたら評価してあげて達成感を味わってもらう。こちらも同じト
レーニングを学生たちに自習などで練習させておいた方がよい。
留学生と一緒にロールプレイング方式で進めると、お互いに興味津津で、効果的だった。
第三の段階として、同じ内容の中国語の表現を使って教員と学生、あるいは学生同士で質問回答、
会話の練習をする。こちらもうまくできたら評価してあげて達成感を覚えてもらう。同じトレーニン
グを学生たちに自習などで練習させておいた方がよい。
これまでの経験では、このように指導、トレーニングして、ここまでの目標を達成できたら、学生
自身で確実に学習した内容についてマスターし、リスニングも、読解も、翻訳・通訳・会話も全部で
きたことを実感し、身についたことを確認でき、達成感を味わうことができて、更に意欲的に続け
る。
結語
学生の中国語学習への自信、興味と意欲は大変重要である。これらを重視した発音を覚えてもらう
スリーステップトレーニング法、中日双方向通訳と会話式三段階トレーニング指導法の試みなどを通
じて、自信や興味を持ち、意欲を引き出して、維持向上させていくためには、できた、うまく行っ
た、いい成績を上げた、褒められた、奨励されたなど勉強の達成感を味わってもらうことも役に立
ち、貢献できるのではないかと思う。更に、授業以外の会話、メール添削などの課外指導および、模
163
東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 22 号(2015)
範事例などの実績成果の提示とインセンティブ的な奨励策も学生の意欲向上に効果的である。
2014年、大手航空会社のグランドサービス及び、中国語を頻繁に使う大手家電量販店に就職した優
秀な卒業生がいた。彼らは皆HSKの5級(中国政府公認の中国語能力試験、最高は6級)或は同HSK
の高級口頭試験などに合格している。学生にやる気を起こし、興味を持たせ、意欲を向上させること
は教師のもっともやるべきことの一つではないかと思われる。
勿論、経済文化交流などの国際社会で語学力を生かしていくためには多方面にわたる知識、理解や
判断力も必要なので、地理・歴史・社会文化など幅広く学生に知識を広めてもらう必要があると思わ
れる。
参考文献
1.周建中、「私の中→日、日→中口頭対訳トレーニング中国語教育法 ─中国語会話・読解能力養
成教育法の試み─」、『中国語教育学会第5回全国大会発表要旨集』、2007.5.13
2.宇文永権、「怎样轻松学汉语」、『人民日報・海外版』、2009.12.26
3.周建中、「達成感を味わってもらうことによって学生の学ぶ意欲を引き出す試み」、『東京成徳
大学研究紀要 ─ 人文学部・応用心理学部 ─』 NO.21、2014.3.15
4.劉菲、「且玩且学」、『人民日報・海外版』、2014.8.14
164