平成18年度(高専だより第84号所収)

図 書 館 か ら
茨 城 高 専 だ よ り
平成 18 年度読書感想文コンクール
『星の王子様』
特別大賞を受賞して
『海と毒薬』
物質工学科3年
木
村
仁
亮
1年5組
私が星の王子さまに初めて出
宮
部
真
一
今回の受賞に驚いています。
会ったのは、16 のときでした。
私は、日頃読書する方ではあ
いつも通っている本屋さんの棚
りません。むしろ本があまり好
に、青いカバーに可愛らしい男
きではなく、読書感想文などと
の子の描かれた表紙の文庫本が
いうものは苦手でした。この本
置いてありました。星の王子さ
を選んだ理由も「海と毒薬」と
ま。題名は知っていたけれど、
いう題目に惹かれたこともあり
内容は知りませんでした。前か
ますが、早く読み終わりそうだっ
ら読んでみたかったわけではなかったので、私はその
たからです。しかし、そのような浅はかな理由で読み
本を衝動買いしてしまいました。
始めた本でしたが、戦争末期の捕虜の生体解剖という
読み終えて、私はジーっと小さな文庫本を凝視して
仕事を引き受ける重い内容で、神なき日本人の深層意
いました。すごい。本当にこの本はすごい。比喩の巧
識という難しいテーマにもかかわらず、私を本の世界
みさ、生き生きと描かれている登場人物、そして何よ
へ引き込んでいってくれました。私が今まで読んだ本
り文章全体が作り出している読み終えた後の幸福感と
とは違いました。夢中で読み、深く考えさせられたこ
充実感。
とを覚えています。この本に出会えたことで、私の中
星の王子さまの想いは、児童書でありながらも、大
の本に対する考え方を変えることができたのです。
人に対する鋭い示唆に溢れています。第二次世界大戦
最後に、この賞を貰ったことを励みに、これからも
真っ只中のときの作品であるだけに、人の関わり方(戦
本を読みつづけていき、自分の世界観を広げていきた
争)や生きることにとって、何が大切なものなのかと
いです。
いうメッセージが含まれていると思います。
今私たちは子供と大人のどちらに含まれるのでしょ
うか。何が自分にとって大切なものなのでしょうか。
講
評
人文科学科(国語) 桐
そんな考えに至ったとき、星の王子さまが、少しばか
生
貴
明
平成 18 年度読書感想文コンクールの審査が終了し
りの参考になると思います。
た。応募総数は昨年度の倍近い
心の宝物を見つけられる一冊です。
501 点、何れ劣らぬ力作が寄せ
られ、その一つ一つを慎重に審
『種まく子供たち』
2年5組
査した。
掛
札
さくら
ここで、特別大賞を受賞した
この本は以前から知っていて、「機会があれば読ん
3点について簡単に述べておく
でみよう。」と思っていましたが、なかなか実行に移
ことにする。1年宮部真一君は、
せずにいました。なぜならファンタジーや、ハッピー
『海と毒薬』を通じ、現代日本人が忘れかけている「罪」
エンドとは違う、難病にかかった子供たちの本だと思
の意識、「良心」を改めて問い直した。2年掛札さく
うとなんとなく読みにくかったからです。しかし、友
らさんは、
『種まく子供達』を通じ、
「命」の重み、
「生
達がこの本を持っていて、夏休みに貸してくれたのを
きる勇気」を獲得し、さらに「真の生き方」とはいか
きっかけに読んでみることにしました。
なるものかを模索した。3年木村仁亮君は、『星の王
今まで、幸いなことに大きな病気になったことがな
子さま』を通じ、
「愛情」
「親しみ」の度合い、さらに「費
い私は、難病になった自分より年下の子供たちの闘病
やした時間」が、人間の「価値観」に大きく影響する
記に、ドラマのように上手くいかない現実もあると感
ということを述べた。特別大賞受賞3点は、それぞれ
じました。しかしそれ以上に、家族や友達の心強さ、
作品へのアプローチの仕方に違いはあるものの、作品
自分を信じることの大切さ、そして人が本来持ってい
の深奥に潜む本質を抉り、自己内部で昇華させようと
る強さを教えてくれました。本を読んで感想文を書く
する姿勢が特に強かった点で共通していた。
ことは、とてもよい機会になりました。これからも、
色々な本を読んで様々なことを知り、感じていけたら
最後に、応募者全員に謝意を表するとともに、
「思考」
のための読書を継続されることを切に願い、擱筆する。
いいと思います。
− 11 −
図 書 館 か ら
茨 城 高 専 だ よ り
第6回茨城高専読書感想文コンクール
審査結果
応募数
特別
大賞
特 別
優秀賞
優秀賞
校 長
奨励賞
後援会文庫による図書の整備状況
平成 16 年度から後援会のご理解によりまして、本
校教員にも協力いただきまして、学生参考書、学生希
望図書の充実を図ってきました。特に本校の学生に必
1
年
155
1
3
6
10
2
年
183
1
4
6
10
要な科学・工学分野の専門書と TOEIC 受験のための
3
年
163
1
3
7
9
語学関係の参考書が中心
501
3
10
19
29
と な っ て い ま す。 今 後 と
計
(昨年度 227 件)
も本校学生が読みたい、知
読書感想文コンクール受賞者名
特別大賞
(3名)
特 別
優秀賞
(10 名)
りたい、参考にしたい本の
充実を目指しています。ま
1年生
2年生
3年生
た、学生希望図書はなるべ
宮部 真一
(1−5)
掛札さくら
(2−5)
木村 仁亮
(3C)
く優先して整備していま
本田 美岬
(1−2)
酒寄 貴文
(2−1)
長島
咲
(3M)
野中 千尋
(1−4)
小島 浩樹
(2−2)
高野 公平
(3S)
黒崎 宏貴
(1−5)
滑川 卓嗣
(2−3)
井坂 大智
(3E)
す。みなさんの図書館利用
を期待します。
INIS 講習会開催
図書館司書
飯塚 雅明
(2−4)
優秀賞
(19 名)
松
土
真由美
今年度9月の INIS データベース利用開始にあわせ、
坂場 千鶴
(1−2)
木村 康裕
(2−2)
佐藤
充
(3S)
平
幸恵
(1−2)
小林
愛
(2−2)
白田恵利香
(3S)
山田 美咲
(1−2)
三浦 一喜
(2−3)
佐藤 広樹
(3E)
原子力の平和利用に関する文献の書誌情報をデータ
池田 元気
(1−4)
中川 直紀
(2−4)
大津
融
(3D)
ベース化し、検索利用に供しているものである。国内
都筑 美幸
(1−4)
長谷川直幹
(2−5)
小池 和希
(3C)
青柳
茜
(1−5)
松田 理絵
(2−5)
島田まいみ
(3C)
飛田 良憲
(3C)
校 長
奨励賞
(29 名)
分
類
集
計
総
記
122
哲 学・ 宗 教
49
地 理・ 歴 史
15
社 会 科 学
29
自 然 科 学
253
技 術 工 学
420
産
業
5
芸
術
5
言
語
472
文
学
13
合
計
1383
川﨑 太貴
(1−1)
河野 厚徳
(2−1)
櫻井 隼人
(3M)
柴田 泰基
(1−2)
吉澤 恵理
(2−1)
佐藤陽一郎
(3M)
羽沢 彰吾
(1−2)
和田 紗紀
(2−1)
飛田 隼佑
(3M)
飯村 美起
(1−3)
田山 大輔
(2−2)
大森 雅弘
(3S)
酒井菜々海
(1−3)
佐藤 風毅
(2−3)
岡野 直樹
(3S)
白田有梨沙
(1−3)
田山 智史
(2−3)
軍司
光
(3S)
沼田 祐哉
(1−4)
三原 翔太
(2−4)
竹内
彩
(3S)
大村 洸平
(1−5)
青木
翔
(2−5)
小松佳一郎
(3E)
川松 達矢
(1−5)
磯崎 裕希
(2−5)
二川 康平
(3C)
仲村 大樹
(1−5)
藤田 一磨
(2−5)
11 月 30 日㈭にマルチメディア教室において日本原子
力研究開発機構の米澤稔氏による説明会を実施した。
INIS データベースとは国際原子力機関参加国間で
では 54 大学が利用しているが、高専での利用は本校
が初、とのことである。
当日は教職員9名、学生 12 名が参加し、説明およ
び検索の実習を行った。当日配布した資料は図書館の
ホームページに掲載されている。
文献検索説明会開催
図書館司書
松
土
真由美
平成 18 年 10 月 19 日㈭にマルチメディア教室にお
いて専攻科1年生を対象に文献検索説明会を行った。
研究活動をすすめていくうえで先行研究やデータの
裏づけ作業のために関連する文献検索は欠かせない。
それを効率的に行うにはデータベースをうまく使いこ
なすことが重要である。説明会では主な学術文献検索
ツールを紹介し、その中でも特に JDream Ⅱについて
は実際に検索を行った。説明会後、本科5年生で開催
して欲しかった、という感想が多く寄せられた。
今後は開催時期、内容等について検討を行いより充
実した説明会にしていきたい。
− 12 −
図 書 館 か ら
茨 城 高 専 だ よ り
学生図書委員会活動報告
◇ブックハンティング報告
ドロップ
電気工学科4年
後援会の援助により各クラスでブックハンティング
を実施しました。255 冊購入しました。現在図書館に
道
野
慎
佑
不良になると決めたから、不良でいよう。お笑いコ
コーナーが設けられています。これらの本の中から、
ンビ・品川庄司の品川ヒロシが書き下ろした、本人自
委員の代表に「この一冊」を紹介していただきました。
身の抱腹絶倒の青春小説。
「だいぶフィクション」とあるが、作者はいろんな
経験をしてきたと思う。人を殴るだの人に殴られるだ
キーリ〜死者たちは荒野に永眠る〜
2年5組
松
田
理
の経験しなきゃケンカ表現をうまく描写できない。上
絵
手だと思った。
全9巻で完結するこの物語は、作者曰く「まわりく
会話のテンポもよくて面白く読みやすいので一気に
どい性格の少女と面倒くさい性格の男がくっついた
読める。泣きやすい人は人目につかないところで読む
り、離れたりする話であり、人生くたびれた男が生き
のがお勧め。大人が読んで青春を振り返るのもいいと
る意味を取り戻す話」です。この上下巻は最終巻です
思う。総評としては、最高‼
ので、最初から読むと面白いと思います。
どの巻も、どことなく昔の退廃的なイメージを受け
るのですが、キャラの一人一人が個性的で全く飽きず
ディープインパクト
無敗の三冠馬の真実
機械工学科5年
に通して読めてしまうかもしれません。
この8・9巻は、今まで先延ばしにしていたことの
清算とエピローグのような話です。
大
黒
琢
也
「ディープインパクト」という名前は誰もが聞いた
ことがあるだろう。
それぞれの関係性に決着が着いたことも、読者とし
てよかったと思うのですが、やはり主人公であったキー
この本は、近年まれに見る強さで無敗の三冠を制し
た馬の物語である。
リとハーヴェイのラストに、感動させられました。はっ
この本には、怪物「ディープインパクト」とはいえ
きりとしたハッピーエンドが見えたわけではないのに、
多くの人の支えがなければ三冠を制することができな
未来に必ず希望があるような感じを受け、下手にハッ
かったということなど、レースだけではわからない
ピーエンドにされるよりも、ずっといいと思います。
ディープインパクトの一面が描かれている。私はこの
どんなラストだったかは、是非読まれてみて下さい。
この本を通して、ディープインパクトにまつわるさま
ざまな人間ドラマに触れることによって「競馬」の持
つ本来の魅力というもの再認識できたと思う。
草之丞の話
やはり、競馬とはスポーツであり、そこにはドラマ
物質工学科3年
木
村
仁
亮
とロマンが隠されている。皆さんもぜひこの本を通し
人の想いはどういう形をして存在しているのだろう
て競馬に触れてみてはどうだろうか。
か。目には見えないものだけれども、確かに存在して
いる大切なもの、しかも目の前から消えてしまってか
ら大抵その大切さに気がつく存在である。
この話に出てくる草之丞は侍の幽霊である。にも関
◇古本バザー収益金の寄付報告
学生図書委員長
物質工学科4年
鈴
木
翔
わらず生きている女性と恋に落ち、子どもまで成して
今年度の茨香祭では教職員の協力をいただき学生図
いて、全く幽霊らしくない。普通に人前に現れ、道を
書委員会として前回同様古本バザーを実施した。委員
歩き、風呂に入る。普通の家庭の夫のように妻に接し、
との話し合いの上、今回2万円の収益金をすべて点字
普通の父親のように子どもに語りかける。幽霊という
図書館に寄付した。点字図書館からは点字とともに丁
要素をまるで感じさせない。
寧なお礼の手紙をいただいた。機会があれば、このよ
しかしそんな普通の団欒に突然別れが訪れる。幽霊
はいずれ目の前からいなくなるかもしれない。では生
うな活動を通して社会に少しでも貢献していきたいと
考えている。
身の人はどうだろうか?生きていようと一期一会の縁
に違いはないのだ。別れが突然訪れることに、生死の
この場をお借りして、古本を拠出していただいた先
生方にお礼申しあげます。
問題は関係ないのだ。そして残った人に残す想いにも
違いはないのだ。そんな現実を幻想を交えて描かれて
いる作品。
− 13 −
図 書 館 か ら
茨 城 高 専 だ よ り
図書館利用状況(平成 18 年度4月〜1月)
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
7月中旬から 9 月
改修工事のため閉館
9月
10
月
11
月
12
月
1月
8月
6月
7月
土日
平日・夜間
平日・昼
4月
5月
延べ人数
図書館来館者数
図書貸し出し冊数
図書貸し出し冊数と延べ人数
2500
1年生
2年生
3年生
4年生
5年生
2000
1月
12月
11月
10月
7月
6月
5月
4月
人数
冊数
人数
冊数
人数
冊数
人数
冊数
人数
冊数
人数
冊数
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
1500
1000
500
0
M科
S科
E科
D科
C科
MS専攻 DE専攻
C専攻
専攻科
貸出ランキング
順位
回数
タ
1
30
図解とフローチャートによる新物理化学実験
イ
ト
ル
著
者
2
23
有機化合物のスペクトルによる同定法
3
21
ガスクロマトグラフィー
荒木峻
東京化学同人
4
18
赤外線吸収スペクトル
中西香爾
南江堂
4
18
機器分析のてびき
6
14
スペクトル有機化学
高橋浩
三共出版
7
13
機器分析
田中誠之
裳華堂
7
13
図解とフローチャートによる新有機化学実験
浅田誠一ほか
技報堂出版
浅田誠一ほか
出版社
技報堂出版
MS, IR, NMR, UV の併用 Silverstein ほか 東京化学同人
定性編
Ⅰ
化学同人
9
12
はじめて受ける TOEIC TEST パーフェクト攻略
松野守峰ほか
桐原書店
10
11
手紙
東野圭吾
毎日新聞社
10
11
キノの旅
時雨沢恵一
メディアワークス
Ⅰ
茨城高専図書館は一般の方にも公開しています。
平日 8:30 − 20:00
土曜日 10:00 − 17:00
図書館ホームページ http://www.ibaraki-ct.av.jp/library.html
− 14 −