ダイエット ダイエットという言葉は、医学的に使われるとき、肥満治療のための「特別食」 「制限食」 のことを意味しているが現在では一般的に使われるようになってきた。一般的には「肥満 防止」 「美容のための食事制限」 「体重の減量法」を意味している。飽食の現代、エネルギ ーの過剰摂取が起こり、その結果肥満に悩む人が増えてきている。肥満は単に見かけ上の 美しさを損なうだけでなく、生活習慣病(成人病)の一つでもある。その上、肥満は高血 圧、高脂血症、動脈硬化症、脂肪肝、糖尿病、痛風、狭心症、心筋梗塞、脳溢血、癌、等 色々な生活習慣病の発症の引き金になるのである。そのために、医学的にも肥満症の治療 が行われている。また、一般的には、細く美しいプロポーションを求めて様々なダイエッ トが行われるようになってきた。そのなかには科学的、医学的に根拠のないものがあるの で、ダイエット法を選ぶ時には注意が必要である。 誤ったダイエットを行うと、体内の水分の急激な減少や筋肉の萎縮、組織蛋白の減少を起 こすことになり、そのために体力の低下、免疫の低下、貧血、めまい、無月経、不妊など を発症してしまうことになる。 体重の減量のみに固執する余り、拒食症に陥ったり、逆に過食症になったりするような精 神障害まで起こす人もあるのである。誤ったダイエットは一時的には体重が減少しても必 ず、リバウンド現象が起こり元の体重以上に増加してしまうことも知っていなければなら ない。ダイエットをするときはあくまで、医学的、栄養学的な知識の上に組み立てられた、 科学的なダイエットを行わなければならない。 正しいダイエット法は3つの条件をみたしていることが望ましい。 ①食事指導 (必要エネルギーを摂取し、栄養バランスのとれた食事の仕方) ②運動指導 (1日1時間の速歩に匹敵する運動量を確保する。) ③睡眠とストレス発散 (質のよい睡眠のとりかたとストレス発散の方法) 特に①、②はダイエットの基本である。 エステティックサロンでダイエットを行うときも例外ではない。 サロンではこの3つの基本指導をした上で、他のメニューであるボディーマッサージや電 気機器を使用した施術をおこなうのである。 即ち、ダイエットをするには知識が必要である。「肥満」について学び、肥満を解決するた めの「正しいダイエット」の方法を知らなければ健康的なダイエットは成功しないのであ る。次にそれらの項目について述べていく。 Ⅰ 肥満について 1.肥満とは 肥満とは、骨格筋その他の組織と脂肪組織との正しい比率を超えて脂肪が過剰に蓄積 した状態のことをいう。 2.肥満はどうしてなるのか 動物は本来食物の乏しい環境の中で生命を維持し、子孫を残すことが出来るように巧 みに適応して来た。その一つが体内へのエネルギーの備蓄である。 飢餓に備えて、少しでも栄養素が余った時には、その栄養素で(主として糖質、脂質) 脂肪を合成し、脂肪細胞の中へ蓄える方法である。ところが、現代の我々は食物が有 り余っている社会に生きているため、体に必要以上の食物を摂りすぎ、栄養過多とな っている。余った栄養素は、脂肪として蓄えられていくため肥満になる傾向にある。 その上に、自動車、家電製品等が発達して生活が安易になり、運動量は激減してしま った。このことも肥満の引き金となっている。 私達は高度の文明の発達と複雑な人間関係の中で、精神的ストレスの持続する環境に 住むことになり、このストレスが肥満を嵩じる要因となってきているのである。 「いら いら食い」のように、空腹でなくても食べてしまう代理摂食もその一つである。これ らの環境条件が重なって、現代人の肥満は増えてきている。 3.何故肥満になってはいけないのか 「肥満が容姿を損なう」という点は個人の感覚によるが、 「肥満が生活習慣病の一つで あり、更に他の生活習慣病を引き起こす」ことの方が恐ろしいのである。肥満から糖 尿病へ、高血圧、動脈硬化、高脂血圧、そして脂肪肝へと発展し、ひいては、それら の病気の合併症への経過を辿っていくのである。 例えば、糖尿病性腎炎、失明、壊疽、狭心症、心筋梗塞、脳溢血、脳梗塞等である。 美しいプロポーションは健康への道であることを知っていたいものである。 4.肥満の判定 肥満とは脂肪組織の過剰な蓄積であるから、体内の脂肪の量を測定すればよいのであ るが、大がかりな設備やそれに伴う経費が掛かり過ぎるので肥満の判定には身長、体 重比によるのが一般的である。 ○ BMI(ボディマスインデックス)― 国際的に通用する体格指数であり、体脂肪量とよ く相関する。 BMI=体重 kg/(身長 m)2=体重 kg÷身長 m÷身長 m 例 3. 22=53,5kg/(1,56)=53,5kg÷1,56÷1,56 日本では BMI26,4 以上を肥満とする。 ○ 標準体重 有病率の最も少ない理想体重を標準体重という。 標準体重=BMI=22(日本肥満学会により提言された数値) 標準体重=身長 mx 身長 mx22 ○ 肥満度 例 53,5kg=1,56×1.56×22 日本肥満学会で定めた算出式 肥満度%=(実測体重一標準体重)÷標準体重×100 肥満度が±10%の範囲 普通 十 10%∼+20%一過体重 +20%以上 十 30%以上 ○ 日本肥満学会による肥満判定基準 肥満 高血圧、糖尿病増加 判 定 痩 せ 普 通 過 体 重 肥 満 肥満度 −10%未満 一 10%以上∼10%未満 十 10 以上∼20%未満 +20%以上 BMI19,8 未満 19,8 以上∼24,2 未満 24,2 以上−26,4 未満 26,4 以上 ①皮脂厚計による測定 肩甲骨下部の2ヶ所の皮下脂肪の厚さを皮脂厚計で測定し、その数値の合計が男性40 mm、女性45mm を超えると、それぞれ体脂肪率が25%、30%のレベルを超えた 肥満と判定する。 ②生体インピータンス法 体全体を一つの電気抵抗体と考え、脂肪組織の電気抵抗性の違いを測定する。人体に微 弱な交流電気を流し、抵抗性を読み取り、予めコンピューターに組み込まれた計算式よ り体脂肪を計算する。 5.下半身肥満(西洋梨型)と上半身肥満(りんご型) 同じ肥満度の場合でも、脂肪が沈着している部位によって肥満リスクが異なる。下半身 に脂肪が沈着している場合よりも上半身、特に腹部内臓器の周囲に脂肪がつく場合は、 糖尿病などの代謝異常が合併しやすいことが明らかになっている。この判定は、臍の高 さで CT スキャンを行い、脂肪分布を見ると正しく判定出来る。その他に、WH 比による 判定もある。ウエスト(W)とヒップ(H)を測定し、W を H で割ったものである。日 本人の場合、W/H 比が男性1.0女性0.9以上のものを上半身肥満と判定する。 6.小児の肥満 日本では経済が高度成長をするにつれて、小児の肥満が増加してきている。 小児の肥満も摂取エネルギーと消費エネルギーの差だけ体脂肪となり、体に蓄積された 結果である。 ○小児の肥満判定 乳幼児の肥満判定 ○小児肥満のダイエットの原則 小児ダイエットも食事療法と運動療法が基本であるが、発育期の肥満であることを考慮 し、あまり厳しい食事の制限はしない。一般に学童であれば、年齢、性別に関係なく、 一日、1600kcal∼1700kcal の食事を摂る。 栄養素の配分は、糖質50%、蛋白質20%、脂肪30%を目標とする。 実際の食事療法としては、糖尿病患者に用いる食品交換表を利用するとよい。 運動療法としては、あまり強くない運動を継続するとよい。水泳や歩行等肥満児でも無 理なく出来るものがよい。 なお、自宅でも活動的な日常生活を送ることが大切で、掃除の手伝い、お使いに行かせ る等こまめに体を動かすことが肥満解消につながっていく。 Ⅱ 正しいダイエット法 正しいダイエット法とは、健康な体を維持していくことが出来る理想の体重、即ち標準 体重になることであり、かつ、それを継続し続けていく方法である。 「痩せればよい」「食べなければよい」という短絡的な考えでは正しいダイエットは成功し ないのである。 正しいダイエットを行うに当たっては「食事療法」 「運動療法」「睡眠とストレスへの対 応」について知らなければならない。 A.食事療法 動物は生きていくために栄養素を必要とする。その栄養素を取り入れる方法が食物を食 べるという行為である。 栄養素には「動物が生命活動をするためのエネルギー源となるもの」と「体の組織を作 り替えるための材料となるもの」、 「体内における代謝反応の触媒作用をするもの」等が ある。 エネルギーの材料となるものは主として糖質と脂肪であり、体の組織の材料となるもの は主として蛋白質である。代謝をスムーズにするための触媒作用を持っているものがビ タミンやミネラルである。動物はこれらの栄養素を過不足なく摂取しなければ健康的に 生きていけないのである。 ①栄養学概論 表 1.に栄養素の体内における働きと摂取の過不足による障害と一日の必要量とそれぞれ の栄養素を多く含む食物を纏めて表にした。 ②理想的なダイエット食とは(糖尿病食) 三大栄養素の摂取バランスとして成人の場合は 糖質――50%∼60% 蛋白質―25%∼30% 脂肪――20%∼25% である。 摂取エネルギーは各個人の体格及び活動量によって異なるが、それらを考慮して、食事 をするときには糖尿病患者の治療のための「糖尿病食」が最適である。この食事の方法 は糖尿病や肥満症の予防と治療のために考案されたものである。糖尿病食は健康な体を 作りながら理想体重、標準体重を維持していく食事の方法である。「糖尿病食」は「健康 食」であり「ダイエット食」である。 次に「糖尿病食」をベースにした誰にでも出来る食事の仕方を述べる。 ○先ず、一日にどれだけのエネルギーを摂ればよいかを決める。 これには体格、仕事量によって個人差があるので計算式によって算出する。 ○食品が含有しているエネルギーは一塊が80kcal 程度のものが多いので80kcal を1単 位とする。各自の摂取エネルギーを単位に置き換えて1日の摂取単位を決める。 ○食品を栄養別に表 1 から表 6 までに分類した一覧表を参考にして、どのグループからど れだけの単位を食べるかを選び、単位が決まれば食品交換表を用いて最終的に献立を作 る。 ③簡単なダイエット食の仕方 ・表 2 を順次計算していく。 ・標準体重・一日に必要なエネルギー ・一日摂取単位が算出できる。 表 3. を見て、栄養別食品のグループを学ぶ。 表 4. を用いて各食品グループから食べる単位を決める。 表 5. は1単位の食品を表している。この表を用いて、表 1 から表 6 までの食品 群から決めた単位だけ食べる。 表 6. アルコール、菓子、ジュース、外食についての注意も要する。 このような食事を摂れば、摂取エネルギーが多すぎたり、栄養が偏ったりするこ とのない理想的な食事となる。 ④疾患のあるときの食事療法 疾患がある時は、必ず医師の指導のもとに食事療法を行うことが重要である。何故なら、 腎炎の時は蛋白質や塩分の制限が必要であり一般的な食事は摂れない。また、痛風の時 はプリン体の多いものやアルコールを控えなければならない。 貧血では、鉄や蛋白質、ビタミン B6、B12 等を含む食物を積極的に摂る。更に、高脂血 症では飽和脂肪酸を含む脂質は控える等の注意を必要とするので、自分勝手な食事療法 を行ってはならないのである。 B.運動療法 ダイエットでは、食事療法と運動療法は車の両輪である。どちらが欠けてもダイエット は成功しない。 運動によるエネルギーの消費量は必ずしも多くはない。むしろ運動が食欲を増進させる ため、人によっては体重増加を招く場合もある。しかし運動療法をやめて食事療法のみ でダイエットをすると、体重は減少するが体内の代謝活動が低下したままなので、不健 康でやつれた状態になる。 運動療法なしで減食のみを行った場合には次のようなことが起こる。 ○除脂肪体重のみ減少していく(筋肉や骨等の大切な体組織が減少する) 減食のみを行った場合、先ず減少するのは水分である。それとともに筋肉や骨等の体組 織が減っていく。つまり、脂肪組織自体は減少せずに除脂肪体重のみが減少する。その 結果、体内での脂肪の割合―体脂肪率―は逆に増大する。 ○インスリン感受性の低下 血糖の代謝に欠かせないインスリン作用の力が減っていく。 糖尿病の治療に運動療法が必要なのはこのためである。 ①ダイエットに運動がもたらす効果 運動をすると脂肪細胞内の中性脂肪が分解し、遊離脂肪酸となり血液の中へ入る。この 脂肪酸は筋肉によって効率よく燃焼し、エネルギーとなって筋肉を動かすことになる。 筋肉は脂肪の燃焼炉と言える。 筋肉と骨の形成には運動と重力が不可欠である。脂肪の燃焼炉、筋肉を強化するために 運動が大きな力をもっていることがよく分かる。 また、運動は全身の基礎代謝を亢進させ、インスリン感受性を増加し、脂肪合成酵素の 力を抑制する。このことは太りにくい体にする事を意味している。 内臓の脂肪は(りんご型肥満)運動によって燃焼し易い性質を持っているので、生活習 慣病の予防には減食と運動が必要である。 ストレスの解消にも運動は効果がある。ストレスが原因で過食することを避けるために も、運動は効果的である。 ②運動の強度と継続時間 運動を行うときにエネルギー源として糖質と脂肪の両方が燃焼するのであるが、運動強 度が強いと糖質の利用の割合が増加し、脂肪の利用は少なくなる。 このような現象があるので、強い運動は脂肪燃焼には向かない。 運動継続時間については、筋肉で遊離脂肪酸を使う比率が高くなるのは運動時間が長い 場合である。運動を開始してから5分∼10分位は主としてグリコーゲン(肝臓、筋肉 に蓄えてある多糖類)が使われ、10分を過ぎる頃から遊離脂肪酸が使われていく。即 ち、脂肪を減らしたい時は、あまり強くない運動を10分以上、数十分続けることが望 ましい。 適当な運動としては、ウオ―キング、軽いジョギング、ゆっくり行う水泳、ラジオ体操、 自転車エルゴメーター等である。これらの運動をする場合、呼吸を充分しながら、時間 を持続して行う方法である有酸素運動が望ましい。 1日の運動量の目安として、速歩で1時間歩く位の運動量がよい。運動強度としては、 会話を楽しみながらできる程度、脈拍が120(若者)∼100(老人)上がる程度の 運動強度が適当であるとされている。 なお、スポーツトレーニングを行うだけにこだわらず、日常生活の中で運動量を増やす ことも大切である。 こまめに働く、エレベーターを使わず階段を使う、バスを1停留所手前で降りて歩く等、 運動性の高い生活を送ることもよい運動となり、代謝率の高い、エネルギー消費の多い 体を作る。 ③運動療法を行う時の注意点 疾患の中には、運動をすることで病気が悪化するものがあるので、体に異常のある人は メディカルチェックが必要である。 例えば、膝関節、腰部に異常がある時は医師の指導により運動を行う。 循環器系の疾患、肝障害、腎障害、急性感染症等は運動が禁止される場合があるので、 必ず、医師の指示に従う。 肥満度70%以上(BMI35以上)の場合はまず、食欲抑制剤の投与や超低エネルギー 食療法を行い、肥満度40%(BMI30 以下)になってから運動療法を開始する。この場 合も当然、医師の指導が必要である。 C.睡眠とストレス ①睡眠 健康な心身を保持していくために不可欠なものがある。 それは、食べること、運動すること、眠ること、ストレスを発散することである。動 物は眠らなければ生きていけない。特に発達した脳を持つ人間は質のよい睡眠を必要 としている。脳の中には、体内時計があり、それによって、自律神経やホルモンが働 き、体内の恒常性を維持している。質のよい睡眠とは、体内時計に合わせた眠りの事 である。午後11時頃には就寝し、午前7時ごろには起床する。これが理想である。 単に睡眠時間を満たしているだけでは充分な睡眠とは言えない。 海外旅行で経験する「時差ぼけ」がその一例である。 日常生活で夜型の生活をしている人も、体内時計と合わない睡眠を摂っているのであ るから、朝型の生活に変えることが望ましい。 質のよい睡眠は健康のベースである。ダイエットは健康の上に成り立っていなければ 成功しない。ぜひとも質のよい睡眠をとるよう心掛けてほしい。 ②ストレス 文明の発達と複雑な人間関係の中で、私達はストレスを避けることができない社会で 生活している。それが肥満の原因になっていることが少なくない。 食べることでストレスを誤魔化そうとする代理摂食である。 空腹でなくても、身近にあるスナック菓子やジュース等を手当たり次第に食べてしま い衝動的に大食いをして、後悔をして、嘔吐する。このようなパターンを続けていく と、過食症、拒食症のような精神障害まで起こしてしまう。 ストレスはもっと健全な方法で発散しなければならない。 例えば ○運動をする(脳内麻薬が分泌されて気分が良くなる) ○愛着のあるものに接触する(ペットを可愛がる) ○お喋りをしてうっぷんを晴らす(孤独でいるのはよくない) ○楽しい時間を持つ(観劇、音楽鑑賞、散歩、買い物、映画鑑賞、カラオケ、読書、 その他) ○肉体的快感を得る(セックス、愛撫、マッサージ) ○少量のお酒を飲む(脳の興奮状態を麻痺させる) ○入浴(温熱効果はストレスを和らげる) ○エステティックサロンを利用する。 等がある。手近な食物に手を伸ばさず、積極的に喜びを求めて活動するアクティブな生き 方をしていきたいものである。 D.エステティックサロンとダイエット エステティックサロンにはダイエットを行うのに適したメニューがある。 ①食事指導 ②運動指導 ③生活習慣改善指導 ④ボディマッサージ 人間は潜在的に肌に触られたいという欲求を持っている。この欲求が満たされると、非 常に心地よくなり、安らぎを得ることが出来る。ボディマッサージはストレス解消に大 きな力を持っている。また、マッサージは血行を促進させ代謝もよくなり、健康増進に も効果がある。 ⑤温熱的施術―ほどよい暖かさは心に安らぎを与えストレスの解消となる。 ⑥受け身の運動を与える施術 低周波器、超音波器を用いて受け身の運動が与えられると、代謝が亢進し、エネルギー 消費も高まる。 ⑦アロマテラピー、ミュージックテラピー 脳にα波を出現させ、ストレスを和らげる効果がある。 ⑧カウンセリング―いろいろな悩みを聞いて貰えるのでストレスが解消する。 ダイエットを途中でやめたくなった時もカウンセラーが継続を支えてくれる。 ダイエットは自分との戦いである。いかにメニューが揃ったサロンへ行っても、自らの努 力なくして、ダイエットの成功はあり得ない。 「寝ていて痩せる」 「一日に3kg 痩せる」「脂肪を溶かす」等という非科学的な広告を信じ てはいけない。 脂肪は代謝することによって燃焼し、炭酸ガスと水とエネルギーになったとき消失するの である。 「○○を飲んで痩せる」というのもおかしい。利尿効果があるものを飲めば、一時的 に体内の水分が減少して、体重が減ったかに見えるが、脂肪は減少していないのであ る。あの手この手のまやかしの広告にのせられないよう注意して頂きたい。ダイエッ トをするときは医学的、栄養学的な裏付けのある方法を選ばなくてはならない。エス テティックサロンを選ぶときにも、必ず、食事指導、運動指導等をベースにしている サロンを選ぶこと。そしてサロンで受けた食事と運動の指導を実行しサロンでストレ スを解消し、サロンで受け ③皮脂厚計による測定 肩甲骨下部の2ヶ所の皮下脂肪の厚さを皮脂厚計で測定し、その数値の合計が男性40 mm、女性45mm を超えると、それぞれ体脂肪率が25%、30%のレベルを超えた 肥満と判定する。 ④生体インピータンス法 体全体を一つの電気抵抗体と考え、脂肪組織の電気抵抗性の違いを測定する。人体に微 弱な交流電気を流し、抵抗性を読み取り、予めコンピューターに組み込まれた計算式よ り体脂肪を計算する。 5.下半身肥満(西洋梨型)と上半身肥満(りんご型) 同じ肥満度の場合でも、脂肪が沈着している部位によって肥満リスクが異なる。下半身 に脂肪が沈着している場合よりも上半身、特に腹部内臓器の周囲に脂肪がつく場合は、 糖尿病などの代謝異常が合併しやすいことが明らかになっている。この判定は、臍の高 さで CT スキャンを行い、脂肪分布を見ると正しく判定出来る。その他に、WH 比による 判定もある。ウエスト(W)とヒップ(H)を測定し、W を H で割ったものである。日 本人の場合、W/H 比が男性1.0女性0.9以上のものを上半身肥満と判定する。 6.小児の肥満 日本では経済が高度成長をするにつれて、小児の肥満が増加してきている。 小児の肥満も摂取エネルギーと消費エネルギーの差だけ体脂肪となり、体に蓄積された 結果である。 ○小児の肥満判定 乳幼児の肥満判定 ○小児肥満のダイエットの原則 小児ダイエットも食事療法と運動療法が基本であるが、発育期の肥満であることを考慮 し、あまり厳しい食事の制限はしない。一般に学童であれば、年齢、性別に関係なく、 一日、1600kcal∼1700kcal の食事を摂る。 栄養素の配分は、糖質50%、蛋白質20%、脂肪30%を目標とする。 実際の食事療法としては、糖尿病患者に用いる食品交換表を利用するとよい。 運動療法としては、あまり強くない運動を継続するとよい。水泳や歩行等肥満児でも無 理なく出来るものがよい。 なお、自宅でも活動的な日常生活を送ることが大切で、掃除の手伝い、お使いに行かせ る等こまめに体を動かすことが肥満解消につながっていく。 Ⅱ 正しいダイエット法 正しいダイエット法とは、健康な体を維持していくことが出来る理想の体重、即ち標準 体重になることであり、かつ、それを継続し続けていく方法である。 「痩せればよい」「食べなければよい」という短絡的な考えでは正しいダイエットは成功し ないのである。 正しいダイエットを行うに当たっては「食事療法」 「運動療法」「睡眠とストレスへの対 応」について知らなければならない。 A.食事療法 動物は生きていくために栄養素を必要とする。その栄養素を取り入れる方法が食物を食 べるという行為である。 栄養素には「動物が生命活動をするためのエネルギー源となるもの」と「体の組織を作 り替えるための材料となるもの」、 「体内における代謝反応の触媒作用をするもの」等が ある。 エネルギーの材料となるものは主として糖質と脂肪であり、体の組織の材料となるもの は主として蛋白質である。代謝をスムーズにするための触媒作用を持っているものがビ タミンやミネラルである。動物はこれらの栄養素を過不足なく摂取しなければ健康的に 生きていけないのである。 ⑤栄養学概論 表 1.に栄養素の体内における働きと摂取の過不足による障害と一日の必要量とそれぞれ の栄養素を多く含む食物を纏めて表にした。 ⑥理想的なダイエット食とは(糖尿病食) 三大栄養素の摂取バランスとして成人の場合は 糖質――50%∼60% 蛋白質―25%∼30% 脂肪――20%∼25% である。 摂取エネルギーは各個人の体格及び活動量によって異なるが、それらを考慮して、食事 をするときには糖尿病患者の治療のための「糖尿病食」が最適である。この食事の方法 は糖尿病や肥満症の予防と治療のために考案されたものである。糖尿病食は健康な体を 作りながら理想体重、標準体重を維持していく食事の方法である。「糖尿病食」は「健康 食」であり「ダイエット食」である。 次に「糖尿病食」をベースにした誰にでも出来る食事の仕方を述べる。 ○先ず、一日にどれだけのエネルギーを摂ればよいかを決める。 これには体格、仕事量によって個人差があるので計算式によって算出する。 ○食品が含有しているエネルギーは一塊が80kcal 程度のものが多いので80kcal を1単 位とする。各自の摂取エネルギーを単位に置き換えて1日の摂取単位を決める。 ○食品を栄養別に表 1 から表 6 までに分類した一覧表を参考にして、どのグループからど れだけの単位を食べるかを選び、単位が決まれば食品交換表を用いて最終的に献立を作 る。 ⑦簡単なダイエット食の仕方 ・表 2 を順次計算していく。 ・標準体重・一日に必要なエネルギー ・一日摂取単位が算出できる。 表 3. を見て、栄養別食品のグループを学ぶ。 表 4. を用いて各食品グループから食べる単位を決める。 表 5. は1単位の食品を表している。この表を用いて、表 1 から表 6 までの食品 群から決めた単位だけ食べる。 表 6. アルコール、菓子、ジュース、外食についての注意も要する。 このような食事を摂れば、摂取エネルギーが多すぎたり、栄養が偏ったりするこ とのない理想的な食事となる。 ⑧疾患のあるときの食事療法 疾患がある時は、必ず医師の指導のもとに食事療法を行うことが重要である。何故なら、 腎炎の時は蛋白質や塩分の制限が必要であり一般的な食事は摂れない。また、痛風の時 はプリン体の多いものやアルコールを控えなければならない。 貧血では、鉄や蛋白質、ビタミン B6、B12 等を含む食物を積極的に摂る。更に、高脂血 症では飽和脂肪酸を含む脂質は控える等の注意を必要とするので、自分勝手な食事療法 を行ってはならないのである。 B.運動療法 ダイエットでは、食事療法と運動療法は車の両輪である。どちらが欠けてもダイエット は成功しない。 運動によるエネルギーの消費量は必ずしも多くはない。むしろ運動が食欲を増進させる ため、人によっては体重増加を招く場合もある。しかし運動療法をやめて食事療法のみ でダイエットをすると、体重は減少するが体内の代謝活動が低下したままなので、不健 康でやつれた状態になる。 運動療法なしで減食のみを行った場合には次のようなことが起こる。 ○除脂肪体重のみ減少していく(筋肉や骨等の大切な体組織が減少する) 減食のみを行った場合、先ず減少するのは水分である。それとともに筋肉や骨等の体組 織が減っていく。つまり、脂肪組織自体は減少せずに除脂肪体重のみが減少する。その 結果、体内での脂肪の割合―体脂肪率―は逆に増大する。 ○インスリン感受性の低下 血糖の代謝に欠かせないインスリン作用の力が減っていく。 糖尿病の治療に運動療法が必要なのはこのためである。 ④ダイエットに運動がもたらす効果 運動をすると脂肪細胞内の中性脂肪が分解し、遊離脂肪酸となり血液の中へ入る。この 脂肪酸は筋肉によって効率よく燃焼し、エネルギーとなって筋肉を動かすことになる。 筋肉は脂肪の燃焼炉と言える。 筋肉と骨の形成には運動と重力が不可欠である。脂肪の燃焼炉、筋肉を強化するために 運動が大きな力をもっていることがよく分かる。 また、運動は全身の基礎代謝を亢進させ、インスリン感受性を増加し、脂肪合成酵素の 力を抑制する。このことは太りにくい体にする事を意味している。 内臓の脂肪は(りんご型肥満)運動によって燃焼し易い性質を持っているので、生活習 慣病の予防には減食と運動が必要である。 ストレスの解消にも運動は効果がある。ストレスが原因で過食することを避けるために も、運動は効果的である。 ⑤運動の強度と継続時間 運動を行うときにエネルギー源として糖質と脂肪の両方が燃焼するのであるが、運動強 度が強いと糖質の利用の割合が増加し、脂肪の利用は少なくなる。 このような現象があるので、強い運動は脂肪燃焼には向かない。 運動継続時間については、筋肉で遊離脂肪酸を使う比率が高くなるのは運動時間が長い 場合である。運動を開始してから5分∼10分位は主としてグリコーゲン(肝臓、筋肉 に蓄えてある多糖類)が使われ、10分を過ぎる頃から遊離脂肪酸が使われていく。即 ち、脂肪を減らしたい時は、あまり強くない運動を10分以上、数十分続けることが望 ましい。 適当な運動としては、ウオ―キング、軽いジョギング、ゆっくり行う水泳、ラジオ体操、 自転車エルゴメーター等である。これらの運動をする場合、呼吸を充分しながら、時間 を持続して行う方法である有酸素運動が望ましい。 1日の運動量の目安として、速歩で1時間歩く位の運動量がよい。運動強度としては、 会話を楽しみながらできる程度、脈拍が120(若者)∼100(老人)上がる程度の 運動強度が適当であるとされている。 なお、スポーツトレーニングを行うだけにこだわらず、日常生活の中で運動量を増やす ことも大切である。 こまめに働く、エレベーターを使わず階段を使う、バスを1停留所手前で降りて歩く等、 運動性の高い生活を送ることもよい運動となり、代謝率の高い、エネルギー消費の多い 体を作る。 ⑥運動療法を行う時の注意点 疾患の中には、運動をすることで病気が悪化するものがあるので、体に異常のある人は メディカルチェックが必要である。 例えば、膝関節、腰部に異常がある時は医師の指導により運動を行う。 循環器系の疾患、肝障害、腎障害、急性感染症等は運動が禁止される場合があるので、 必ず、医師の指示に従う。 肥満度70%以上(BMI35以上)の場合はまず、食欲抑制剤の投与や超低エネルギー 食療法を行い、肥満度40%(BMI30 以下)になってから運動療法を開始する。この場 合も当然、医師の指導が必要である。 C.睡眠とストレス ③睡眠 健康な心身を保持していくために不可欠なものがある。 それは、食べること、運動すること、眠ること、ストレスを発散することである。動 物は眠らなければ生きていけない。特に発達した脳を持つ人間は質のよい睡眠を必要 としている。脳の中には、体内時計があり、それによって、自律神経やホルモンが働 き、体内の恒常性を維持している。質のよい睡眠とは、体内時計に合わせた眠りの事 である。午後11時頃には就寝し、午前7時ごろには起床する。これが理想である。 単に睡眠時間を満たしているだけでは充分な睡眠とは言えない。 海外旅行で経験する「時差ぼけ」がその一例である。 日常生活で夜型の生活をしている人も、体内時計と合わない睡眠を摂っているのであ るから、朝型の生活に変えることが望ましい。 質のよい睡眠は健康のベースである。ダイエットは健康の上に成り立っていなければ 成功しない。ぜひとも質のよい睡眠をとるよう心掛けてほしい。 ④ストレス 文明の発達と複雑な人間関係の中で、私達はストレスを避けることができない社会で 生活している。それが肥満の原因になっていることが少なくない。 食べることでストレスを誤魔化そうとする代理摂食である。 空腹でなくても、身近にあるスナック菓子やジュース等を手当たり次第に食べてしま い衝動的に大食いをして、後悔をして、嘔吐する。このようなパターンを続けていく と、過食症、拒食症のような精神障害まで起こしてしまう。 ストレスはもっと健全な方法で発散しなければならない。 例えば ○運動をする(脳内麻薬が分泌されて気分が良くなる) ○愛着のあるものに接触する(ペットを可愛がる) ○お喋りをしてうっぷんを晴らす(孤独でいるのはよくない) ○楽しい時間を持つ(観劇、音楽鑑賞、散歩、買い物、映画鑑賞、カラオケ、読書、 その他) ○肉体的快感を得る(セックス、愛撫、マッサージ) ○少量のお酒を飲む(脳の興奮状態を麻痺させる) ○入浴(温熱効果はストレスを和らげる) ○エステティックサロンを利用する。 等がある。手近な食物に手を伸ばさず、積極的に喜びを求めて活動するアクティブな生き 方をしていきたいものである。 D.エステティックサロンとダイエット エステティックサロンにはダイエットを行うのに適したメニューがある。 ⑨食事指導 ⑩運動指導 ⑪生活習慣改善指導 ⑫ボディマッサージ 人間は潜在的に肌に触られたいという欲求を持っている。この欲求が満たされると、非 常に心地よくなり、安らぎを得ることが出来る。ボディマッサージはストレス解消に大 きな力を持っている。また、マッサージは血行を促進させ代謝もよくなり、健康増進に も効果がある。 ⑬温熱的施術―ほどよい暖かさは心に安らぎを与えストレスの解消となる。 ⑭受け身の運動を与える施術 低周波器、超音波器を用いて受け身の運動が与えられると、代謝が亢進し、エネルギー 消費も高まる。 ⑮アロマテラピー、ミュージックテラピー 脳にα波を出現させ、ストレスを和らげる効果がある。 ⑯カウンセリング―いろいろな悩みを聞いて貰えるのでストレスが解消する。 ダイエットを途中でやめたくなった時もカウンセラーが継続を支えてくれる。 ダイエットは自分との戦いである。いかにメニューが揃ったサロンへ行っても、自らの努 力なくして、ダイエットの成功はあり得ない。 「寝ていて痩せる」 「一日に3kg 痩せる」「脂肪を溶かす」等という非科学的な広告を信じ てはいけない。 脂肪は代謝することによって燃焼し、炭酸ガスと水とエネルギーになったとき消失するの である。 「○○を飲んで痩せる」というのもおかしい。利尿効果があるものを飲めば、一時的に体 内の水分が減少して、体重が減ったかに見えるが、脂肪は減少していないのである。あの 手この手のまやかしの広告にのせられないよう注意して頂きたい。ダイエットをするとき は医学的、栄養学的な裏付けのある方法を選ばなくてはならない。エステティックサロン を選ぶときにも、必ず、食事指導、運動指導等をベースにしているサロンを選ぶこと。そ してサロンで受けた食事と運動の指導を実行しサロンでストレスを解消し、サロンで受け 身の運動を受けて、健康的なダイエットを成功させることがサロンのよい利用法である。 身の運動を受けて、健康的なダイエットを成功させることがサロンのよい利用法である。
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