第 9 号 2003.9 発 行: 総合病院 岡山赤十字病院 岡山市青江二丁目 1 番 1 号 発行責任:広報委員会 「食べる」ことについて考えてみませんか? 現在およそ食べ物で不自由することのない豊かな 男性では、アルコールやギャンブルその他屋外で 日本で、食事をすることの意味は、生きるための手 の遊びに代償を求めることが多いのですが、女性の 段というより、むしろ暮らしの中の楽しみであり、 場合には、家庭内の身近な食事にストレス発散を求 また自らの心を満たすための行為のひとつといって めることがあります。 「過食症」が女性に多い原因の もよいでしょう。 ひとつでしょう。 贅沢ではなくとも毎日おいしく食事ができること 一方、最近流行のヤセ願望から無理なダイエット は、身体的にも精神的にも満ち足りて本当に幸せな をする若い女性も増え、中には拒食症になる場合も ことです。 みられます。 しかし近年、飢えに困らない経済的先進諸国では、 過食も拒食も心のあり方に問題がありますが、極 皮肉にも超肥満やヤセ願望あるいは過食症や拒食症 端な肥満やヤセがおきると身体の方の治療も必要に など、食事や食欲に関する異常が問題になってきて なってきます。 います。 ヒトの食欲は不思議なものです。時には食欲とス それは、ストレスの多い現代社会で心が満たされ トレスの関係に注目してみませんか。そしてやけ食 ない場合、食べるという行為によって不満感を代償 い等食事でストレス解消をせず、他のよい方法を見 しようとするためと考えられています。つまり食事 つけるようにしましょう。 は、最も容易な不満解消法になり得るのです。 (精神科医師 忠田正樹) 標準体重 = 身長が150㎝以上の場合{身長(㎝)−100}×0.9(㎏) 150㎝未満の場合{身長(㎝)−50}÷2(㎏) 肥満度(%)={実測体重(㎏)− 標準体重(㎏)}÷ 標準体重(㎏)×100 BMI = 実測体重(㎏)÷{身長(m)×身長(m)} やせ 普通 過体重 肥満 肥満度 −10%未満 −10%∼+10% +10%∼+20% +20%以上 BMI 20 未満 20∼24 24∼25 25 以上 最近では、標準体重から求めた肥満度よりもBMIを使うことが多いようです。 太っているだけで体内の水分が停滞して、血液量が増えるの で血圧があがります。更に、それだけでなく、心筋梗塞など の動脈硬化をおこす危険因子すべてが上昇してしまいます。 危険因子が多いほど、動脈硬化の病気をおこしやすいのです。 危険因子とは: 肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病(死の四重奏と呼びます) リンゴ型肥満(内臓脂 肪型肥満)に高血圧者 が多いのです。上半身 肥満、つまり足は割合 細いのにおなかが突 き出ている状態に なっていませんか? 喫煙、家族歴、高尿酸血症、運動不足など 肥満から高血圧になった場合、まず やせること。次に食塩の制限が治療 の基本です。 また、カリウム(野菜、果物)をたっ ぷりとり、コレステロールの高い人 は動物性脂肪(ラード、生クリーム、 バターなど)のとりすぎに気をつけ ましょう。 Q..薬で血圧を下げれば、なにもやせる必要は ないのでは? A.いくら医師が薬の副作用に気をつけている とはいえ、本当は薬無しで血圧を下げた方が副 作用の心配が全くいらないのでよいのです。ま た、太っていること自体が心臓に負担をかける だけでなく、体内にたまった食塩が排泄されに くくなるのです。更に、太ると血液中のコレス テロール、血糖値、尿酸値が上昇します。 ◎新鮮な材料で、食品の持ち味をいかす ◎熱いものは熱く、冷たいものは冷たく ◎レモンづけや酢の物など酸味を利用する ◎香辛料を上手に使う 1.減塩 2.適度な運動 ①少し早足で ②1 回 20∼30 分 ③3 回/週 ◎腹さえいっぱいになればよい。 ◎からいものは避ければよい。 ◎バターや卵は有害だ。 ◎いなか料理をばかにする。 ◎1日2回以上外食する。 ◎1日2杯以上味噌汁を飲む。 ◎何にでもソース、しょうゆをかける。 ともかく肥満は全ての成人病の原因 といっても過言ではありません。 せめてこれ以上太らないように気をつけましょう。 (循環器科医師 佐藤 哲也) 減量に王道はなし。地道にがんばりましょう! 肥満とは、摂取エネルギーが消費エネル ギーを上回った結果、身体の中に脂肪が過 剰にたまる状態をいいます。解消するため には、摂取エネルギーを下げるか、消費エ ネルギーを上げる必要があります。運動だ けで減量するのはむずかしく、食事と運動 を併用することになります。 減量のために食事を減らすということ は、これまで必要がないのにとっていた分 を減らすことです。必要な栄養素は(たん ぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル) 過不足なくとり、食物繊維や抗酸化物質な どを上手に活用します。栄養のバランスの とれた食事で健康的に減量し、その体重を 維持することが大切です。 減量に王道はありません。コツコツと気 長に続けましょう。わからないことがあり ましたら、栄養相談室へ、お手伝いをさせ ☆ 1日3食・適量 朝食を欠かさず食べ、夜遅くに食べないようにします。 ☆ 献立の基本形は《主食+主菜+副菜+汁もの》の 和食型 * 主食はごはん、パン、めん類など1食につき1種類 * 主菜は魚、肉(脂肪の少ない部分)を交互に、大豆製 品や卵も上手に利用し、量のとりすぎに注意します。 * 副菜は野菜・海藻・きのこ・こんにゃくをたっぷり * 汁物は実だくさんにして1日1∼2回程度 ☆ よけいな油を減らす 1回の食事に油を使った料理は1品まで。揚げ物はエネル ギーの低い料理(煮る・焼く・蒸す・茹でる)と組み合わ せます。 ☆ 間食は食べ方次第 お菓子より適量の牛乳や果物をとります。 ☆ アルコール類は種類を問わず高エネルギー 飲まない日を増やし、1日に飲む量を減らします。 ☆ 外食の選び方 単品料理より定食物を、単品なら具の種類が多いもの。洋 食、中華料理よりも和食で、揚げ物の少ないものにすると よいです。 ていただきます。 (管理栄養士 下山英々子) 日頃から太り過ぎには気をつけましょう。 体重の変化は、女性にとって最も関心の高い身体 果として不妊症の原因にもなります。肥満女性にお 状況であり、肥満や痩せを主訴として病院を訪れる ける性機能障害は、多くは減量によって回復し、可 患者さまも少なくありません。肥満や痩せに伴う体 逆的であるためまず食事・運動療法により体重のコ 重の変化は性機能と密接に関連しており、女性の場 ントロールを行うことが重要です。しかし急激な減 合、初発症状として月経異常を訴えることが多い傾 量も排卵が停止してしまう原因となるため徐々に 向にあります。 (一年で数キロずつぐらいの割合で)減量するのが 医学的には、肥満女性にはいろいろなホルモン異 理想的です。 常を伴うことがありますが、内分泌異常(多嚢胞性 また妊娠した場合にも肥満妊娠では早産、妊娠中 卵巣症候群など)が 毒症、妊娠糖尿病の合併率が増加し、巨大児出生の あるために肥満に 増加に関連して、微弱陣痛になったり、遷延分娩、 なるよりも、正常な 誘発分娩、吸引分娩、帝王切開などの異常分娩にな 月経周期を有して り易いと言えます。さらに静脈血栓塞栓症の頻度も いた女性が肥満に 高率となり、周産期予後は不良です。 なったために月経 以上より医学的にも肥満にならない様に日頃より 異常(排卵障害・無 食事・運動によって体重管理をすることは女性にと 月経)を示すことが って重要な問題と考えられます。 多いのです。その結 (産婦人科医師 羽原俊宏)
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