競馬連合ニュース309号(2009.1.7発行)

競馬連合NEWS
2009年(平成 21 年) 1月7日(水) №309発行
発行責任者/伊藤保政 編集/田村隆光
全国競馬産業労働組合連合会
謹賀新年
関東本部 〒300-0493
TEL/0298-85-0402
茨城県稲敷郡美浦村美駒 2500-2 関東労内
関西本部 〒520-3005
TEL/077-558-0457
滋賀県栗東市御園 1028 全馬労内
新年あけましておめでとうございます。昨年は、競馬連合の活動にご理
解とご協力を賜りましたことに、心より厚く御礼申し上げます。
長引く経済不況とレジャーの多様化などで、競馬を取り巻く環境はますます厳しくなってきてい
ますが、「競馬」を糧として働くすべての労働者が、「競馬文化」を守り発展させるという信念の
もと、この難局を乗り越えていくことが重要となっています。
今年1年、愛馬の活躍と皆様のご健康、ご活躍を祈念します。ともにがんばりましょう。
競馬連合 会長 伊藤保政
福山競馬
逆風の中で
客足復活へ正念場
2009 年 1 月 6 日
毎日新聞
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裸電球に照らされた厩舎の狭い通路を、馬と人の影が行き来する。辺りはまだ暗い。馬の荒々し
い鼻息と、軽快なひづめの音が響き渡る。
福山競馬の一日は、午前2時ごろ始まる。「攻め馬」と呼ばれる馬のトレーニングのためだ。周
回1000メートルの馬場を、白い吐息を残して数百頭の馬が駆け抜ける。調教師や厩務員らは正
午近くまで、走った後の馬の体を洗ったり、わらを交換するなど休む間もなく仕事をこなす。
「現場のもんは雨の日も風の日も、朝早くから一生懸命働いている。そりゃ逃げ出したいと思っ
たことは何度もあるよ」
わらのにおいが充満する厩舎の隅で、調教師の黒川幹生さん(53)が、鹿毛色のサラブレッド「ム
サシボー」(雄6歳馬)をなでながら言う。450キロ前後の巨体を支える脚は、しなやかで美し
い。昨年10月に初出走して以来勝ち星を重ね、看板レースの重賞競走で優勝を狙える待望の駿馬
(しゅんめ)だ。
黒川さんの厩舎で唯一の騎手は、長男の知弘さん(30)。騎手としてのキャリアも持つ黒川さん
は15年前、息子が同じ道を志すのに大反対した。「競馬人気に陰りが見えていた。悪くなるのは
明らかだった」
福山競馬の入場客数はバブル期の93年まで年間60万人を誇ったが、この15年間で3分の1
に激減した。売り上げ減とともに累積赤字はかさみ、今や20億円。市は05年度から単年度黒字
を競馬存続の条件に掲げ、賞金や出走手当などを削減して経営を続けてきた。だが、不景気で客足
はさらに遠のき、08年度は赤字転落も危ぶまれる。
競馬が廃止となれば、そこで働く約700人が職を失う。生活の困窮から馬場を去った人も少な
くない。「所得は僕らが現役のころの4分の1もない。赤子を抱えた厩務員もいる。皆の“涙”で
競馬は成り立っている」と黒川さんは話す。
馬が減り、レースの魅力が落ち、経費削減で人が去る。現場の思いとは裏腹に、地方競馬は今、
先の見えない悪循環に陥りつつある。馬場の東の空が白み始めた。
2分前後のレースに関係者は多くの労力と時間を費やす。だからレースは全員の晴れの舞台だ。
福山競馬で年間900以上あるレースの中で、最も格式の高い「福山大賞典」が3日、開催された。
知弘さんが騎乗するムサシボーは2番人気。序盤は後方に位置取り、最終コーナーの直線で先頭
に躍り出た。1着。「皆の苦労が報われた。今夜は馬と杯を交わしたい気分だ」。泥だらけのムサ
シボーをなでる調教師に、穏やかな笑みがこぼれた。
◇データ
福山競馬は、福山市が1949年に開設。02年に益田競馬(島根県益田市)が廃止されて以降、
中国地方唯一の地方競馬となった。99年度に約8億円の実質赤字に転落。05年度の合理化策で
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競馬連合 №309(2009/1/7)
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賞典奨励費の4割カットや投票所の一部閉鎖、従業員賃金の見直しなどに取り組み、単年度収支で
07年度まで3年連続5000万円前後の黒字となった。農林水産省競馬監督課によると、地方競
馬の数は88年は全国に30あったが、09年1月は20に。ピーク時の91年度に9862億円
あった総売上は、07年度は3804億円と約4割減になった。
川崎競馬
勇壮に的射ぬく
川崎競馬場で流鏑馬騎射式
2009 年 1 月 5 日
東京新聞
川崎競馬場(川崎市川崎区富士見)で 4 日、新春を祝う流鏑馬(やぶさめ)騎射式が行われた。レ
ース前のトラックで、戦国絵巻さながらに武者姿の射手が勇壮な技を披露した。
元日から 4 日まで同競馬場で開催された正月競馬を記念
したイベントで、鎌倉市を拠点に活動する武田流の大日本
弓馬会の会員三十人と馬五頭が“出陣”した。時速 40 キロ
近くで疾走する馬にまたがった射手は板的めがけて矢を放
った。矢は次々に的中し、場内の観客は喝采を上げて喜ん
だ。
競馬ファン 4 人も、お世話役として参加。矢を板的から
引き抜く「矢取り」を担当した綾瀬市の派遣社員小島壮さ
ん(34)は「馬を間近で見られたし、和装もできたので楽
しかった」と興奮気味に話した。
▲川崎競馬場のトラックで行われた流鏑馬騎
射式=川崎区で
JRA
笑顔咲かせて
輝ける日を夢みて
2009 年 1 月 4 日
東京新聞
◆さいたま市出身 小沢桃子さん
昨年 11 月、千葉県匝瑳(そうさ)市にある馬の専門学校「ジャパン
ホースマンアカデミー」(JHA)で寮生活を送る小沢桃子さん(16)
=さいたま市大宮区出身=の元に通知が届いた。
「合格」
。床にしゃがみ
込んで泣いた。
小沢さんは、日本中央競馬会(JRA)が運営する競馬学校(同県白
井市)の騎手課程を受験していた。この年の合格者は、わずか 7 人。女
性では 8 年ぶりの快挙だった。
中央競馬の女性騎手は 1996 年から 2000 年までに 6 人が誕生し、現役
は 2 人だけ。日本人女性騎手の重賞(G1、G2、G3)制覇はない。
7 人目に向けて大きな一歩を踏み出した小沢さんは「勝つのが楽しみ。
夢は女性初のGI制覇です」と言い切った。
「おまえは騎手になれねえよ、下手くそ。さっさとあきらめろ」
▲小沢桃子さんと世話を担当
2 年前の夏。小沢さんは当時通っていた栃木県の乗馬クラブで、指導 する馬「アクションJr」。
「デ
員から痛烈な言葉を浴びた。帰宅すると自室にこもり、悔し涙をこぼし ビューしたら、私の夢を支えて
くれた両親に恩返ししたい」=
た。
乗馬との出会いは小学 5 年生の時。クラスで仲間外れにされ、学校を 千葉県匝瑳市で
休みがちになった。たまたま乗馬クラブのチラシを見て、両親に「行きたい」とせがんだ。
上尾市のクラブに通い始めて間もなく、競馬中継を見た。
「きれいだなあ。カッコいいなあ」。人
馬一体で疾走する光景にときめいた。中学 1 年生から栃木県のクラブに通い、
中学を卒業した昨春、
JHAの門をたたいた。
朝 6 時に起床。馬の世話、馬学の授業、騎乗訓練、厩舎の掃除。疲れ果てて寮に戻ると、寝るだ
けだった。
148 センチ、42 キロ。男性との体力差は歴然だ。昨夏は苦手な懸垂や腕立て伏せに明け暮れ、競
馬学校の受験に臨んだ。
試験は騎乗技術ではなく、騎手になれる適性と能力を判定する。JHA講師の山本斉宏(なりひ
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ろ)さん(30)は「小沢はまじめでひたむきで、目標に貪欲。誰よりも努力する姿勢が伝わったの
だ思う」と話す。
4 月に競馬学校に入学する。3 年間学んで騎手免許試験に合格すれば、念願のデビューだ。何度
も涙を流すかもしれない。しかし、その向こうに待っているのは。
「オザワ」の大合唱の中をウイニングランし、笑顔でファンにムチをプレゼントする。
そんな瞬間を思い描く小沢さんの目は、希望で輝いていた。
ばんえい競馬
帯広記念、やったねフクイズミ!ゴール後に座り込むほどの劇走。
7頭ごぼう抜きの大逆転で差し切る
2009 年 1 月 2 日
ばんえい十勝劇場WEB
伝統の帯広記念(1 月 2 日)を制して肩掛けをも
らい、厩務員のやすさん(佐々木康弘さん)に甘
えるフクイズミ。女性ファンがまた増える!
年間通じて最大の売り上げ、史上最多の全国 78
カ所での発売が実現した伝統の帯広記念。どよめ
きました。感動しました。
この日は真冬とは思えない 3 月並の気温。馬場
水分4・7パーセントで異様に重い馬場状態で、
1 日中、波乱でした。そして帯広記念は…。
最高重量900キロの荷物を引く高重量戦。勝
負どころの第2障害を真っ先の降りたのは若手
騎手・浅田達矢が騎乗の1番・ニシキダイジン。 ▲あまりの劇走の末、ゴール後、座り込んでしまったフ
クイズミ号
ここで観客から大歓声。
しかし、ばんえい競馬のドラマはここからだ。
エンジュオウカン、ナリタボブサップ、1番人気のカネサブラックが降りて、フクイズミは 8 番手。
ニシキダイジンの脚は衰えず、1着か。そこに驚異の末脚発揮のフクイズミは10番・大外から
最後に差し切り、何と 7 頭抜きの大逆転勝利。
ゴール後に座り込むほどの力走でした。競馬場は大歓声。感激しました。
松井浩文調教師は「フクイズミは障害で止まっても、その後に腰が入るようになった。次は本当
は休ませたいけど、ファンが多いからねえ。ばんえい競馬を盛り上げるために、ヒロインズカップ
(1月 12 日)に出すかねえ」
2着のニシキダイジンも惜しかった。ばんえいの正月開催は、本当に面白いです。1月5日まで
です。ぜひ帯広競馬場へ!
岩手競馬
正月開催好ダッシュ 岩手競馬、売上額が前年上回る
2009 年 1 月 3 日
岩手日報
岩手競馬恒例の「お正月競馬」は2日、奥州市の水沢競馬場で始まった。盛岡競馬場や各テレト
ラックなどを含めた総入場者数は前年を下回ったが、売上総額は約1億7300万円(前年比2・
3%増)で、前年を若干上回った。
メーンの3歳馬による重賞「金杯」を含む10レースを開催。総入場者数は1万1233人(同
2・3%減)だったが、好天にも恵まれ、水沢競馬場には2730人(同14・7%増)が入場し
た。同競馬場の売り上げは、約4800万円(同13・7%増)だった。金杯は1番人気のワタリ
シンセイキ(牡3歳、関本淳騎手)が制した。
レースの合間に南広場で、騎手5人によるもちまきが行われた。県調騎会騎手部会の小林俊彦会
長が「2009年も岩手競馬を応援してください」とあいさつすると、熱心なファンから「頑張れ」
と声援が送られた。
お正月競馬は4日まで。期間中、先着で甘酒などのホットドリンクがサービスされる。
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競馬連合 №309(2009/1/7)
競馬連合NEWS
海外
映画 「ジョッキーを夢見る子供たち」
フランス競馬学校 少年たちの成長
2009 年 1 月 7 日
映画の森
仏競馬学校の日常を追ったドキュメンタリー
「ジョッキーを夢見る子供たち」。スター騎
手を夢見て、日々厳しい訓練に耐える少年た
ち。競馬の世界の裏が垣間見える。
シークレットな部分が多く感じられる競馬
の世界。ドキュメンタリー映画「ジョッキー
を夢見る子供たち」は、フランス国立騎手養
成学校の日常を追った貴重な映像となってい
る。競馬ファンでない方にも興味深く、子供
の夢に向かう姿に感じるものは多いだろう。
スター騎手を目指す 14 歳の子供たちの寄宿生活1日目から、カメラは追いかける。早朝の目覚
ましで起こされ、馬の世話をする。森の中で、指導教官に罵倒されながら、馬にしがみつく。馬に
対する恐怖や自分の能力に対するいら立ちを、子供は素直に表現し、弱音を吐く者もいる。自分の
14 歳を思い返してみれば、そんなに強い人間であるはずがない。しかも相手は最もデリケートとい
われる動物なのだ。そんな彼らの泣きべそ、小さな恋心、初舞台の緊張を順に並べ、1年の成長記
録風に仕上げている。競馬ファンにとっては、日ごろ見ることのできない部分を、のぞき見してい
るような感覚だ。
ただし、編集の問題だと思うが、なんとも凡庸なドキュメンタリーと感じてしまったことは否め
ない。前半ではストーリー性が分からず、漫然と眺めてしまう観客も多いことと思う。導入部分に
工夫をする、あるいはナレーションを入れるなどがあれば、少年たちの表情はもっとリアルに浮き
上がっただろう。
凱旋門賞は競馬ファンには夢であるが、騎手志望の少年にとってはさらに大きな意味があるよう
だ。2006 年凱旋門賞での武豊、オリビエ・ペリエに対する少年たちの憧れの眼差しが物語っている。
「自分もああいう風になれるだろうか」という将来への不安もあるだろう。少年たちがどういうき
っかけで騎手学校に入ったのか分からないが、大きな決断だと思う。彼らの中から、将来のスター
騎手が現れるかと思うとワクワクし、彼らの馬とのかかわり方がうらやましく感じた。
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競馬連合 №309(2009/1/7)