本文 - 自転車産業振興協会

平成22年11月30日
電動自転車に期待を寄せる韓国自転車業界
2010 年の韓国市場は、政府による乗用環境の整備や自転車産業復活に向けた
様々な取り組みにより国内消費は回復し、異業種メーカーの新規参入が増加傾向に
あり韓国自転車業界の規模は徐々に拡大している模様である。
2010 年韓国国内市場概況
韓国自転車協会の発表によると、販売台数は 2007 年をピークにして減少傾向にあ
ったが、2010 年は前年比 1.8%増の約 183 万台に持ち直す見込みである(*)。その内
訳は、中国等からの 10 万ウォン(1ウォン=0.07 円)より安い完成車が 169 万台前後(協
会会員企業分 140 万台、非会員企業分 29 万台)、台湾等からの 50 万ウォン以上の
完成車が約 14 万台となっている。2011 年はさらに増加して、販売台数は 190 万台と
予想されている。
国内販売台数(2011年は予想)
250
240
230
220
210
200
190
180
170
160
150
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
単位:万台
(出所:韓国自転車協会)
(*)2010 年 10 月末までの実績数値に、11 月~12 月の 2 ヶ月分の予想数値を加えて算出し
たもの。
1
三千里、国産初の電動自転車を開発
10 月にソウル郊外京義道で開催された展示会(World Bike Show)(注 1)では、国内
最大の完成車メーカーである三千里自転車が今年の7月に発売した韓国初となる国
産電動自転車「グリーニティ(Greenity)」を展示していた。
フレームこそ中国製だが、多くの国産部品を使用しており、例えばバッテリーはサム
スンSDI、モーター・制御装置はSPGとの共同開発で、国産部品の使用比率は総原
価ベースで 71%である。小売価格は1台、129 万ウォン。2010 年に 1,000 台以上を、
2011 年には 3,000~5,000 台を生産、販売する計画である。2011 年はアシスト方式の
電動自転車の開発、生産も始める方針だという。
政府:「自転車産業の輸出潜在力は大きい」
既報の通り知識経済部と関税庁は、自転車産業は大きな輸出潜在力を有する産業
として、2009 年からメーカーの U ターンのサポートや部品産業の育成などによる国内
での産業復活に向けて様々な施策を講じている。前述の三千里の電動自転車が生産
された京畿道儀旺(ウィワン)工場も政府の支援を受けて出来た工場である。
三千里の工場建設に対しては一時は国内メディアから、輸出のない企業に対する
保税工場の指定などの特恵措置は過剰であるとか、新たな工場用地の取得は政府に
よる一民間企業への土地投機の支援などという批判もあったようだが、とにかく政府と
しては、自転車産業を国内市場で電動自転車など高付加価値製品の製造が可能に
なるまで成長させ、その後輸出できるようにして韓国を世界の自転車技術の中心に飛
躍させるという考えで一貫して支援を続けてきている。
2
異業種から続々と新規参入
また、World Bike Show で表れていたことだが、昨年までのソウルバイクショーに比べ
格段に多くの異業種の企業が自転車完成車・部品、電動自転車、ウェア、アクセサリ
ー、立体式駐輪場などの分野で新規参入しており、韓国の自転車産業は着実にすそ
野を拡大しつつある。
その一例が韓国最大の自動車部品メーカーの MANDO である。同社は現代、KIA、
GM、BMW 向けに自動車部品を製造している大手企業だが、今回、自動車に使用さ
れている EPS(電動パワーステアリング)、ABS(アンチロックブレーキシステム)、ESC(横
滑り防止装置) そして ECU(コンピューター)や IT 技術を取り入れた折畳式の電動自転
車を発表した。ペダルからの踏力伝達はチェーンなどの機械的な方法ではなく、ペダ
ルから伝わった運動エネルギーをセンサーが感知し電気エネルギーに変換するシス
テムで、また回生機能も備えている(同社は Electric Chain と名付けている)。
また、スマートフォンと連動させることにより自転車の電源を始めとするいくつかの管
理が可能で、さらに走行距離と時間、スピード、移動ルート、消費カロリーなど様々な
データが即座に分かるようなっている。
フレームは超軽量カーボン製で、折り畳みに要する時間は僅か5秒。最高速度は
30km/h、1回の充電で 40km 走行することが可能で、アシスト走行と自走の 2 つのモー
ドが選択できる。重量は 17kg、充電時間は 3 時間、そして充電は走行中も可能なので
電気の消費を約 20%抑えられるという。発売は 2011 年前半、価格は未定である。
3
参入障壁の低い電動自転車製造と今後の課題
ただ、ある韓国の業界関係者によると、このように三千里自転車や MANDO を始め
とする多くの企業が一般的な自転車ではなく、電動自転車を始めた背景には、「政府
は自転車部品の国内製造を強く奨励しているが、現実的には変速機等の核心的な部
品の製造は困難であり、可能であっても競争力は期待できない。電動自転車であれば
自転車部品を製造することなく、国内メーカーは既存の電池やモーターなどの技術や
IT 技術を応用することで、より高付加価値で競争力のある製品を作り出せる」と判断し
たという事情がある。
現在、サムスンSDI、SPG以外にも電池、IT などのメーカーをはじめ、東洋鋼鉄が
アルミフレームを、韓日精密がサスペンションフォークの国内生産を検討中と言われて
いる。また、将来の輸出に向けて既に韓国輸出包装工業が包装材についての検討も
始めている模様である。
ただ、その関係者によると、「まだ国内市場における電動自転車の需要は小さく、今
後如何にして電動自転車産業を育ててゆくか、それが自転車業界と、先ずは国内市
場での基盤作りと考えている政府の当面の課題」となっている模様である。
4
(注1)World Bike Show 概要
1.催事の概要
・催事名:世界自転車博覧会 – 2010 京畿道 World Bike Show 2010
・期間:2010 年 10 月 22 日(金)~10 月 24 日(日) 3日間
・時間:10:00~18:00
・場所:KINTEX 1 ホール及び屋外イベント会場
・主催:行政安全部、京畿道、高陽市
・主管:KINTEX(Korea International Exhibition Center)
・後援:知識経済部、国土海洋部、関税庁、グリーン成長委員会、韓国交通研究院、
(社)自転車を愛する会、サイクリング運動連合、韓国自転車輸入協会、韓国自転車
工業協会、韓国電気自転車協会、韓国自転車研究組合
・ホームページ:www.worldbikeshow.com
・主要行事:展示会、自転車のファッションショー、デモバイク、受注商談会、子供自転
車絵描き大会、写真コンテスト、セミナーなど
・同時開催イベント:第2回大韓民国バイクの祭典(10 月 22 日~30 日、開会式:22 日
湖公園(10 月 22 日) )
・Tour de DMZ – Seoul2010:国際的なサイクリング大会(エリート部門):10 月 22 日~24
日(3 日間)
5
・展示品
分野
構 成 内 容
完成自転車
BMX、MTB、ミニサイクル、折畳自転車、生活用自転車、特殊車等
電動自転車
電動自転車、ハイブリッド自転車及び関連部品など
部品
フレーム、サスペンション、ブレーキ、ホイール、タイヤなど
アクセサリー
速度計、ライト、安全関連装備など
衣類、工具
衣類、ゴーグル、ヘルメット、グローブ、シューズ、工具など
お知らせサービス
教育機関、研究機関、自治体、マスコミ、出版社など
その他
自転車駐輪場、自転車道の基盤施設、保険、チューニングなど
2.付帯行事
区分
行事の概要
日時
場所
自転車ファッションショー
自転車関連アパレル商品のファッションショー
10/22~24
展示ホール
デモバイク
2011 年モデルの試乗など
10/22~24
屋外
BMXショー
BMXによるアクロバットショー
10/22~24
屋外
自転車ギネス
自転車関連のギネス大会
10/24
屋外
子供の絵画大会
『私が夢見る自転車』絵画大会
10/9
会議室
写真コンテスト
生活の中の自転車の写真コンテスト
10/9
オンライン
製品の受注商談会
2011 年新製品の受注商談会
10/24
会議室
技術セミナー
世界有数の製品本部技術研究院招請技術セミナー
10/22~23
会議室
Travel Talk
自転車の旅セミナー
10/24
会議室
以
上
(上海事務所)
この報告書は、競輪の補助金を受けて作成したものです。
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