静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室

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月報 第4巻 3号 発行 2013 年 9 月 25 日 p1
i
イタリア旅行記 科学技術高校教頭 俵 芳郎
今夏の夏休み、私は8月12日(月)から19日(月)まで
イタリアに家族で行ってきました。純粋な観光旅行でしたが、
イタリアの良さを体感すると同時に、日本の良さも再認識でき
る貴重な8日間となりました。
第3号目次
頁
「イタリア旅行記」
p1
~
p3
教頭 俵 芳郎
「9.11 から
1 いざミラノへ
12年が経過して」 p4
8月12日(月)朝4時に静岡の自宅を車で出発、9時50
分に空港受付カウンターへ集合。搭乗手続き、税関チェック等
建築デザイン科 教諭 を終え、アリタリア航空787便へ搭乗。12時30分、離陸。 藤井 邦光
最初のうちはわくわくしながら窓の外を眺めていましたが、さ
湖底に眠る地球のものさ
すがにフライト時間が長い!なんとか12時間に耐え、いよい
し~今の時間はグリニッジに、 p5
よミラノに到着。時刻は午後4時頃。しかし、まだ真昼のよう
過去の時間は水月湖に聞け
~
に太陽の光がさんさんと降りそそいでいました。なんとイタリ
p6
理科 教諭 神谷 恭子
アは夜9時頃まで明るいのだそうです。
入国手続き等を終え、専用バスで宿泊先へ行く途中、ショッ
ピングセンターへ。イタリアでは水道水は飲めないということ
で、ミネラルウォーターなどの買い物をしましたが、レジでちょっとしたハプニング。レジの店
員さんが何か話しかけてくるのですが、イタリア語は全く分からず、何を話しかけられてもひた
すら「NO!」と答えていたら、結局レジ袋をもらい損ねてしまいました。きっと、店員さんは
「レジ袋は要りますか?」と聞いてくれていたんでしょうね。イタリアも日本と同じように、
スーパーではお客さんが請求しないとレジ袋はもらえないということを知りました。多少のトラ
ブルはあったものの、無事ミラノへ到着。
2 2日目(ミラノ、ベローナ)
イタリアには、ドゥオーモと呼ばれる大聖堂が各地にあります。特に
ミラノにあるドゥオーモは、500 年近い歳月をかけて建造されたイタリア
を代表するゴシック建造物で約 3500 体もの彫刻が施されています。ミラ
ノでは「いつ終わるかわからない」ことを「ドゥオーモのようだ」と言う
そうです。またこのドゥオーモのすぐ横に、美しいアーケードがあり有名
ブランド店が立ち並んでいます。時間がなく(あっても高くて手が出ない)
買い物はできませんでしたが、ドゥオーモとマッチして素晴らしい街並み
でした。
ベローナは、「ロミオとジュリエット」の舞台となった場所です。右の
ベランダの写真は、ジュリエットが「ロミオ、どうしてあなたはロミ
オなの?」と叫んだ(とされている)ベランダだそうです。ベローナの
街は大変コンパクトに整備されており、シェークスピアの時代にタイム
スリップしたような、かわいらしい街でした。
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3 3日目(ヴェネチア)
「水の都ヴェネチア」では朝から雨模様。肌寒い1日となりましたが、
サン・マルコ広場を中心に散策。ヴェネチアは、14世紀に海運国家とし
て栄え、15世紀から16世紀にかけて芸術文化が花開き、サン・マルコ
広場をはじめとする街の輪郭が完成したそうです。街全体が運河や水路の
上に立ち並んでおり、きれいに整備された街でした。雨も昼頃には上がり、
約40分間のゴンドラ遊覧を楽しむことができました。いたるところに短
い橋が架かっており、その橋をくぐりながらたっぷりとヴェネチアの街を遊覧しました。
4 4日目(フィレンツェとピサの斜塔)
フィレンツェは大変風光明媚な街で、ミケランジェロ広場という高台
から見下ろす景色(右写真)は最高!しかし、この風景よりももっと圧巻
だったのは、ウッフィッツィ美術館。イタリア美術史に燦然と輝く名画が
勢揃いする美術館で、古代彫刻と13~18世紀絵画作品から成り、レオ
ナルド・ダ・ヴィンチなどの作品が並んでいます。美術音痴の私でも知っ
ている「ヴィーナスの誕生」なども展示。現地ガイドさんの詳しい説明も
あり、大変充実した時間を過ごすことができました。
その後バスでピサへ。「ピサの斜塔」は軟弱な地盤に立てられたため、
地盤沈下によって傾斜してしまったというのが定説だそうです。また、こ
れ以上傾かないよう、何度も修復工事が行われました。残念ながら斜塔に
登れませんでしたが、同じ場所に立つドゥオーモや洗礼堂には入館でき、
かつてのピサの繁栄を垣間見ることができました。
5 5,6日目(ローマ)
ローマには2日間滞在しました。1日目はフィレンツエからの移動時
間が長かったため、午後から半日、急ぎ足での観光。「ローマの休日」
で有名なスペイン広場や真実の口、トレヴィの泉、コロッセオ、ヴァチ
カン美術館、サンピエトロ寺院などを観てまわりましたが、スペイン広
場・・・10分、トレヴィの泉・・・15分、コロッセオ・・・10分など、写真
撮影とトレヴィの泉ではコインを後ろ向きで投げ入れるのが精一杯。真
実の口などは、口に手を入れて写真撮影する
人で長蛇の列。何とか写真を1枚撮って終わ
りでした。
しかし、ヴァチカン美術館とサンピエトロ
寺院の見学には多くの時間もとれ、大感激。
ヴァチカン美術館は、イタリア美術の膨大
なコレクションを誇る世界屈指の博物館です。16世紀初頭、ヴァチカンの教皇ユリウス3世が
ベルヴェデーレ宮殿の中庭に、古代ギリシアの彫刻群を置いたことがコレクションのきっかけと
いわれているそうです。 特に、システィーナ礼拝堂にある有名な「最後の審判」は思ったより
も大きく、何といっても実物は迫力満点! その礼拝堂の天井と壁にも「テルフィの巫女」、
「アダムの創造」など多くの天井画や壁画が描かれ、時間の経つのも忘れるほどでした。
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続いて「サンピエトロ寺院」も見学しました。サンピエトロ寺院は
目の前にヴァチカン広場がある壮大な寺院です。事前にガイドさんが
「これは必見」と力説してくれた「バルダッキーノ」、「ピエタ」と
いう2つの彫刻も堪能させてもらいました。
ローマ2日目は一番楽しみにしていた自由行動の日。言葉が通じず、
交通手段もよくわからない私たちを、添乗員のKさんが、ローマ中心部
のテルミニ駅から「真実の口」の最寄り駅まで地下鉄で連れて行ってくれま
した。「真実の口」は相変わらず長蛇の列。でも20分ほど並んだだけで、
私たちの番になりました。とにかく「ローマの休日」のワンシーンのように、
口に手を入れて抜けなくなったという仕草で記念写真を撮りました。
そしてそこからは本当に私たち家族だけの自由行動。1㎞ほどの距離にある「ヴィットリオ・
エマヌエーレ2世記念堂」まで歩いて行き、展望台に登りました。ここではローマの景色を36
0度一望できました。日本でいえば京都や奈良の街並みということになるのでしょうか。しかし、
街には新しい建物や高層ビルは一つもなく、市全体が遺跡のような雰囲気を漂わせています。皆
さんもローマに行く機会があったら、ここからの景色を堪能してください。絶対お勧めです。
次に「フォロ・ロマーノ」と「コロッセオ」を見学しました。古代ローマの遺跡がそのまま残
されているのです。もちろん原形をとどめているものはほとんどありませんが、その分時代を感
じさせ、壮大なスケールで私たちを包み込んでくれました。「コロッセオ」も前日は外観を写真
撮影しただけでしたが、この日は中にも入り、古代ローマを十分堪能することができました。
ふと時計を見るとすでに午後3時。観光はこれで打ち切り、コロッセオ駅から地下鉄でテルミニ
駅まで移動し、ローマの中心部まで戻ってきました。また、これだけ炎天下を歩いたのに、汗を
ほとんどかいていません。気温も日本と同じように30度は超えているはずです。イタリアは日
本に比べて湿度が低いのでしょうか。イタリアで過ごした日々は大変過ごしやすい毎日でした。
7 いよいよ日本へ、そして雑感
7日目、いよいよイタリアともお別れです。帰りの飛行機も 12 時間乗りましたが、疲れていた
のか睡眠も十分とれ、思ったよりも早く成田に帰着しました。今回のイタリア旅行では、それま
で写真等でしか知らなかったものをじかに見聞し、期待以上の見学をすることができました。ま
た食事、特にイカ墨スパゲッティとピザは絶品でした。ただ、やはり私には日本の文化や習慣が
一番だ、とも思いました。私が思うに、日本の良さの一つに「治安の良さ」が挙げられると思い
ます。イタリアでは見学地に到着する度「スリに気を付けてください」と注意を受け、街や見学
地を歩くときはショルダーバッグを抱えるようにして持ったりするなど、かなり気を使いました。
イタリアの文化や習慣、生活様式等に少しでも触れることができたことは、今回も大変うれし
かったのですが、日本の良さも改めて実感しました。また機会があれば、どこかの国へ行って、
その国の良さとを両方実感できる体験をしたいと思います。
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月報 第4巻 3 号
9.11 から 12 年が経過して
建築デザイン科教諭
藤井 邦光
1. 9 月になると蘇る記憶
2001 年 9 月 11 日に発生したアメリカ同時多発テ
ロ事件から 12 年。ワールドトレードセンター(以
下 WTC)跡地(グラウンド・ゼロ)は 6 つの超高層
ビルと記念碑によって再建される。金融危機に
よって遅れていたが、超高層ビルの1つである
1WTC が5月に最頂部 541m まで完成し、日本人建築
家の槇文彦氏が設計する4 WTC は今年完成予定で
ある。(槇氏は清水文化センターも設計されてい
る)今から 12 年前というと高校生の君たちは小学
校入学の前後だろう。記憶が残っている人もいる
だろうが、私もニュースから流れる映像にショックを覚え、いまだ鮮明に記憶している。当時、
その跡地の再開発を巡って世界中の建築家が様々な提案をおこなった。再開発はコンペ(設計競
技)が行われアメリカ人建築家であるダニエル・リベスキンドが勝ち、マスタープランを担当す
ることになった。私は学部の卒業設計でグラウンド・ゼロの再開発計画をテーマにし、実際にグ
ラウンド・ゼロを見るために 2002 年に現地のNYを訪れた。
2. 2002 年に訪れたNYの街について
訪れたグラウンド・ゼロはまだ瓦礫の残った状態であった。
悲しみの空気が辺り一体に漂っていた。その一方でNYの街
並みの美しさや街の面白さを感じることが出来た。整然とし
た道に歴史あるゴシック調のビルが並ぶ街並み。それだけで
も美しいのだが、フランク・ロイド・ライトのグッゲンハイ
ム美術館やマルセルブロイヤーのホイットニー美術館など新
旧多くの美術館や建造物、宇田川信学が生まれ変わらせた地
下鉄など美しく刺激的なものが街の中に溢れていた。さらに
は多くの人種が集まるNYでの様々な人とのコミュニケー
ションが非常に刺激的であった。このNYではグローバリ
ゼーションの光と影を体感した記憶がある。これは、テレビ
や雑誌からは解らなかったことだ。実際に体験するからこそ見
えてくるものがあることを学べた。
3. 時
12 年経過し、未だ完成には至っていないWTCはグローバリゼーションの難しさを象徴してい
るようだ。それでも少しずつ前に進む姿からは「時が解決してくれる」という言葉が思い浮かぶ。
しかし、時とは記憶と経験の蓄積であることも忘れてはならない。歴史を紐解き、様々な経験を
することで初めて難題を解くことができる。WTCはそれを教えてくれているのではないだろう
か。
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湖底に眠る地球のものさし ~今の正確な時間を知りたければグリニッジ天文台に、過去の時間は水月湖にきけ~
理科教諭 神谷恭子 今年の夏は暑かった。「高知の四万十市が驚異的な 41 度を記録!!」というニュースが日本列島
を駆け巡ると、各地でそれに続くように暑さ自慢が始まり、レースに乗り遅れまいと福井も参戦
した。そう、今、福井が熱い!
9 月に NHK の BS で放映される「恐竜先生」のドラ
マの舞台でもある福井県勝山市は、7 月 20 日より開
催が始まった恐竜博物館の特別展「発掘・発見・1
億年の時を超えて~」が、8 月 19 日(わずか開催 39
日目で)にはなんと来場者が 10 万人に達成した。
しかし、最も熱いのが、日本中、いや世界中の関
係者の注目をあびる水月湖の年縞だ。 〈フクイラプトル・キタダニエンシス〉白亜紀 肉食恐竜
水月湖は、国定公園に指定されている福井県若狭湾三方五湖の内の一番広い湖である。「今の
正確な時間を知りたければグリニッジ天文台に、過去の時間は水月湖にきけ」ってどういうこ
と?というわけで、8 月の暑い中、水月湖に行ってきました。新幹線で、米原まで行き、その後特
急シラサギに乗りかえ敦賀へ、さらに小浜線に乗り換え三方駅で降りました。そこからバスで水
月湖まで行こうとしたら、本数がほとんどない。観光協会で相談すると「レンタサイクルありま
すよ」と明るい返答。「何kmくらいありますか?」と訊くと、「一周 20 km位ですね。」と、
さらっと返ってきました。「この炎天下に 20 km?」・・・そうです。駅に貼られた福井の観光
ポスターには、”Just slow down, take your time.”
ーここでは、時間がゆったりと流れていたのでした。
仕方なく、自転車をこいで行きました。対向車もなく、
日陰もない、テフロン加工のフライパンでノンオイルで
じりじりと焼かれているような錯覚を覚えながら、ひた
すらペダルをこいでいると、右側に登呂遺跡の竪穴式住
居を思わせるような若狭三方縄文博物館が現れました。
その向うには、五つの湖のうちの一つ、三方湖が見え
ます。そこで年縞の資料の見学をして涼み、また暑い中、
水月湖を目指してペダルをこぎました。しばらくすると
傾斜がきついスギ林の山の斜面に囲まれる
ようにして、おだやかな水面の水月湖が見
えてきました。三方湖と繋がっています。
(↑上図、参照) 静岡県立科学技術高等学校 国際化推進室
月報 第4巻 2号 p6
静岡の人はよくのんびりしていると言われますが、ここでは時間の流れがストップしてしまっ
たような感覚に襲われました。自転車をこいでいる間、タイヤと道路の砂利のこすれあう音しか
しないのです。
水月湖は日本海に面した方に、日向湖、久々湖があるため、海水が直接、湖に流れこむことは
ありません。また周囲は高い山々に守られ波風により湖水がかきまぜられることもなく、湖の深
部まで空気に触れることがありません。そして陸側から湖に流れ込む大きな河川も、三方湖を介
しています。そうやってゆっくりゆっくり、湖の底で土砂は静かに長い年月をかけて堆積したの
でした。堆積により、水深は浅くなりますが、三方断層により、湖、周囲の地盤は数万年にわ
たって沈み続けているので水深は深いままでいられるのです。 ねんこう
〈水月湖年縞〉とは
年縞(ねんこう)とは、湖底や海底に堆積する粘土
やプランクトンの死骸などによってできた縞模様
が、年単位で積み重なった年輪の一種である。
水月湖の年縞は、それ以外の地域の年縞に比べ、
① 7 万年間の長さを持つ連続的なものである。
②そのすべてについて計測が済んでいる。
③放射性炭素年代測定が済んでおり、その誤差 を補正できる。
以上の事柄から、地質学的年代の世界標準となっ
ている。
つまり、世界の標準時間(グリニッジ天文台)
に匹敵する立場にある。
恐竜博物館のある勝山市は中生代の地層が露出しています。水月湖は、過去7万年分の正確な
ものさしである年縞が湖底に眠っています。あまりのスケールの大きさに、これからは細かいこ
とに囚われるのはやめようと、悟りを開いて帰路につきました。
しかし、、、暑さには勝てません。私を支えて
くれたのは水月湖を見ながら食べた「梅干そば」
と途中の梅の里会館の「梅入り最中アイス」でし
た。福井の梅は肉厚で種子が小さく、天保年間に
栽培が始まったとされる、由緒正しいものでした。
編集後記:国際化推進室では、科技高教職員・生徒の「国際化」をめぐる様々な体験や知見を発信
していきたいと考えています。感想をお寄せいただければ幸いです。(国際化推進室 竹内美芳)
国際化推進室月報 第4巻3号 発行:2013年 9月25日 問い合わせ先: 〒420-0886 静岡市葵区長沼 500 番地の 1 静岡県立科学技術高校(国際化推進室)
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