平成 22(2010).3.1 兵庫県図書館協会「会報」№92 はじめまして、吉川図書館です。 三木市立吉川図書館長 近藤 昌樹 三木市立吉川図書館は、平成 21 年 11 月 29 日、三木市吉川町に市内 2 番目の図書館としてオープン しました。三木市では、市民の方が身近な拠点で図書館サービス受けていただけるよう「三木市立図書 館活性化構想」を策定し、図書館の複数配置による図書館サービス網の整備を進めています。 三木市は平成 17 年に旧三木市と旧吉川町が合併していますが、旧吉川町内には図書館がなく公民館 の図書コーナーでの運営をしていました。また、中央館まで 20km も離れており、図書館建設について 住民から大きな期待が寄せられていたことから、懸案になっていた支所の整備と併せて合併特例事業と して整備したものです。 市域北部に位置する吉川図書館のオープンにより、と西部に位置し中央館としての機能を持つ三木市 立図書館、さらに、東部に位置し平成 22 年 6 月オープンに向け整備中の青山図書館(仮称)と公民館 図書コーナー1ヶ所を加えた計 4 拠点での図書館サービス体制が整うことになります。 吉川図書館の施設は、三木市吉川支所との併設で、図書館専用面積は 570 ㎡、支所との共用部分は 400 ㎡です。蔵書冊数は 5 万冊で、児童書の割合を他の館よりやや高くしています。主なサービス区域は吉 川町(人口約 9 千人)とその隣接地域を想定して、貸出冊数 15 万冊を目標とし、図書館の機能として は、貸出を中心としています。 図書館づくりにあたっては、だれもが気軽に立寄ることができる親しみのある図書館となるよう館内 のレイアウトや書架・家具の選択に留意しました。 開館後は、利用者から「開館を心待ちにしていた、明るい図書館ができた」との声をかけていただい ています。 [近年の取組み] 三木市では、図書館利用が非常に低調な時期が続いていたことから、平成 18 年 6 月に①「資料の充 実」②「図書館環境の整備」③「図書館司書の増員と専門的資質の向上」を柱とした「三木市立図書館 活性化構想」を策定し、それに基づき図書館サービスの充実に取り組んできました。 特に平成 19 年度には図書館指導専門員を招聘し、その指導のもと、職員の専門的資質向上と意識改 革に努めました。「図書館は皆さまの読みたい本を集めてくる窓口です」をキャッチフレーズに、利用 者が求める資料については可能な限り提供していくという姿勢で図書館サービスに取組み、Web 予約を 含めた予約制度の促進、図書の共通利用・相互貸借の促進等を積極的にすすめてきました。同時に図書 館内の小規模な模様替えを実施するなど明るい雰囲気の図書館づくりに努めた結果、貸出冊数が大きく 伸びてきました。 図書館の利用は、貸出冊数が 4 年間で 3.2 倍になるとともに、予約による貸出冊数も 4 年間で約 7.5 倍と大幅な伸びとなりました。貸出密度などは県下公共図書館の平均値にようやく到達するようになり、 今後、吉川図書館、青山図書館の開館の効果による大幅な利用増を期待しているところです。 これからも、図書館は誰のためにあるのか、何のためにあるのかをスタッフが常に意識しながら、利 用者と向かい合ってサービスの向上に努めていきたいと考えています。 目・耳・心・手 「資料係担当になって」 姫路市立城内図書館 工藤 香織(くどう かおり) 中央館である城内図書館奉仕係からスタートして、4 つの分館担当を経て、平成 17 年度から城内図 書館資料係担当になりました。2 度の育児休業をはさみ、実質勤務は 2 年ほどです。図書館に配属さ れてから、いつかは資料係も経験したいと思っていましたが、資料係は奉仕係担当・分館担当とは業 務が異なり、今も毎日あたふたとしています。最も大きな違いは、カウンターに立つ時間がほとんど ないことです。開館時間中でも利用者と接しない日々は、最初は不思議な感覚でした。また、ときに 15 館全体での追加発注の調整をすることもあり、頭を悩ませています。発注・装備と除架後の処理を する資料係は、図書館資料の最初と最後を見届けて、資料がスムーズに流れるための水道管のような 役割だなと思います。図書館業務の基本はカウンター・フロアーワークにあるとの思いに変わりはあ りませんが、今は資料係の業務に少しでも熟練したいと思っています。 平成 22(2010).3.1 兵庫県図書館協会「会報」№92 「本は生きている」 加古川市立加古川図書館 小林 和夫(こばやし かずお) 私は過去、多種多様の行政事務をこなし、ようやく念願の図書館勤務になりました。無類の本好き、 加えて創作活動が趣味。趣味が仕事になるなんて夢のよう。書名や作者不明、漠然と「~のような内 容の本」という利用者のリクエストにも対応できます。なんてタカをくくる時がありますが、反面、 自分の作品がプロ作家の秀作群に比べ、いかに劣っているかを思い知らされて辛いことも多いのです。 確かに、本好きでないと配架は煉瓦積みに似て、苦痛以外の何ものでもないでしょう。図書館職員の イメージは、小川洋子の「冷めない紅茶」で描かれています。毅然として人間的、博学にして庶民的。 ですから私も、できる限り無機質な貸出返却はしないように心がけています。 図書館の本、一冊、一冊に読んだ人々の思いが伝わってきます。人生に迷った時、闘病の時、ある いは失恋した時に読んだ本。このページのシミは涙だろうか・・・。そう思うと本一冊、一冊に人生の 重みが感じられて、軽々しく扱えません。もしかして、閉館後、深夜、本たちがひっそりと語りあっ ているかもしれませんよ。 「絵本ライブを実施して」 明石市立西部図書館 加藤 房子(かとう ふさこ) 明石市立図書館の分館として、当館が開館したのは、1999 年 11 月 11 日。あれから 10 年の月日が 経ちました。10 周年の記念イベントを開催するにあたって、当館の特徴である、西部市民会館との複 合施設ということ、お子様連れの利用者が多いということから、絵本作家に講演を依頼しようと考え ていました。そんなある日、あきやまただしさんのホームページを見ていると、「絵本ライブ」につ いて書いてあり、「これは企画にぴったりかもしれない!」とお願いしてみました。 「ライブ」形式は、楽しんでいただけるだろうかと不安もありましたが、応募も多く、当日は予想 以上に盛り上がりました。アンケートに寄せられた声にも、「こんな読み聞かせは初めてで、子ども と一緒に楽しめました」とあり、ほっとしました。 絵本作家による歌・ギター演奏付きのライブを、明石の子どもたちに届けることができて本当に良 かったです。これからは、日ごろ図書館をあまり利用されない方にも、足を運んでいただけるような 行事を考えていきたいと思います。 「司書のほほえみ」 福崎町立図書館 牛尾 かおり(うしお かおり) 私は図書館に異動して 3 年になります。慣れるまでは毎日、返却に行って迷子になり、返却期限印を 押せばもたもたし、レファレンスを受ければ事務室に小走りで聞きに行く等、思い描いていた司書とは ほど遠い状態でした。その頃から「知識が追いつかないのでせめてこれだけは」と決めていたことがあ ります。たまに忘れてしまいますが、出来る限り笑顔でいることです。 学生の頃、司書課程の先生が「司書のほほえみで授業を始めましょう」とおっしゃっていたのがとて も印象的で、あんな風ににっこり迎えてもらったらそれだけで図書館が好きになると感じていました。 利用者の方と接する時に笑顔でいるのは当たり前とはいえ、混雑時等余裕がなくなると笑顔もなくな ることがあります。 本を探しに来られる方も、何となく来られる方も図書館で気持ちよく過ごしてもらい、また来ようと 思ってもらえるように、改めて意識していこうと思います。 しかし、そろそろ笑顔だけではなく、知識でも満足していただけるようにしていかなければ、と思っ ています。 平成 22(2010).3.1 兵庫県図書館協会「会報」№92 全国公共図書館研究集会(新潟)に参加して さる 1 月 14・15 日、新潟で開催された全国公共図書館研究集会(サービス部門総合・経営部門)に 参加した。研究主題は、 「出版文化の危機と新しい図書館像」。 著者のデジタル権限と、出版社の版権の脆弱性を浮き彫りにした Google ブック検索著作権訴訟和解 において、問題を提起したが、一方で、国立国会図書館でも全文検索ができないまでも大規模な既存図 書のデジタル化が進んでおり、新しい公共図書館サービスの転換期にさしかかっている。 基調講演は、夙川短大准教授湯浅氏による出版コンテンツのデジタル化の方向性、ポット出版社長の 沢辺氏による出版界の情勢、事例発表は、千代田区立図書館館長新谷氏による自館の取り組み、国立国 会図書館電子情報企画室長田中氏による国立図書館のデジタル化の発表であった。翌日は、発表者諸氏 によるパネルディスカッションが行われた。以下にその概要をまとめた。 Google ブック検索は、欧米のフェアユースという考え方、出版社がステークホルダーにならない、 図書館の書架で眠っていると見られる多くの著作物を利用可能にするという、多くの問題提示をしてい る。また出版化されず電子情報のまま消えていくボーンデジタルのアーカイブ化は、地方資料の収集保 存提供の観点から公立図書館の重要な課題だといえる。(湯浅氏) 出版界は、デジタル情報による雑誌の廃刊という如実な現実を受け止め、現在、膨大なテキスト情報 がネットワークを通じて利用可能であることに気づいてほしい。(沢辺氏) 千代田図書館は Web 図書館を実施しているが、これに止まらず新たなサービスの展開に挑戦し続け ている。また、従来図書館が不得手であった、広報部門の強化は見習う点が多い。(新谷氏) 日本はデジタル化の後進国である。国立国会図書館は、①インターネット情報のアーカイブ②所蔵資 料のデジタル化③検索ツールの提供④国全体のデジタル情報の検索窓口、という点からデジタルアーカ イブ事業を進めている。 (田中氏) 情勢報告は、図書館関係の国家予算が 1996 年と 09 年では 1/10 になったこと、80 年代の図書館の基 盤整備に力点が置かれていたのに対し、近年即時的なことに予算が注がれていること、指定管理者制度 に公共サービスの水準確保が盛り込まれ、経費節減が削除されていることを報告した。(松岡氏) (姫路市立城内図書館 杉岡和弘) 平成 21 年度兵庫県図書館協会第1回研究集会報告 「図書館の危機管理」 日時:平成 22 年 1 月 29 日(金)14:00~16:30 会場:西宮市立中央図書館 長い間安全な場所と思われてきた図書館も、今では様々な事故・トラブル・災害がいつ起こるか予測 のできない時代になりました。そのような危機に対しての対処法をどう導き出すのかを考えます。 講師には、日本図書館協会編集発行の「こんなときどうするの?」の編集に係わった、滋賀県愛荘町 立愛知川図書館長の西河内靖泰氏を迎え、講演形式で行われました。概要は次のとおりです。 1.守るもの 危機・トラブルへの対処の基本は、人(利用者・図書館職員)の安全確保が最優先です。警察署、消 防署への連絡もこの事をふまえて判断することが必要です。 2.危機を回避する・拡大させない 一つの危機が新たな危機を生まないよう対処し、被害を最小限に食い止める事が重要です。そのため には、危機が起きてから対処するのではなく予防が肝心です。 <笑顔のサービス><救命救急法><護身術><事例の共有・蓄積>この4点は危機管理上とても重要 で、全図書館員が共通理解し実行できるように、日ごろから研修・訓練が必要です。 3.図書館の危機とは 人による日常的に見られる危機(トラブル)は「図書館=広場」であり、不特定多数が出入りする施 兵庫県図書館協会「会報」№92 平成 22(2010).3.1 設の宿命で、トラブルは「起こるだろう」と自覚することが必要です。対応に関しては当事者が自閉症 などの発達障害者の場合は、人権の侵害にならないように対応し、発達障害に対する理解を深めるため の資料提供を行うことも図書館の役割になります。 地震・水害などの自然による危機は、開館中に起こったことを想定して、予想される被害に対処でき るよう訓練が必要です。 4.マニュアルの作成について マニュアルは作る過程が重要です。経験の蓄積と事例の収集を行い、各館の立地や周辺環境も考えて 多方面から検討・検証し、全図書館員が対応可能なマニュアルの作成が必要です。マニュアルはあくま で基本であって、状況に応じて柔軟な判断と対処が必要になる場合もあります。また、作成したマニュ アルを図書館のHPなどで公開し、利用者と図書館員との間で共有することが大切で、そのことが対人 トラブルの発生の予防にもなります。 この研究集会では、トラブルに適切に対処しないと、図書館そのものへの信頼が失われ、そのことは 対人サービス業である図書館の危機に直結することを、改めて感じさせられました。 (西宮市立北口図書館 後藤知加子) 新温泉町立加藤文太郎記念図書館 15 周年記念事業の紹介 平成 6 年 10 月、日本海を臨む兵庫県最北西端の町に、浜坂が生んだ日本屈指の孤高の登山家「加藤 文太郎」を顕彰して、町立加藤文太郎記念図書館は誕生しました。図書館は山々をイメージしたデザ インで、1階は図書館、2階は文太郎愛用の登山靴・ピッケル等が展示してある加藤文太郎資料室と約 4,400 冊の貴重な山岳図書が配架された山岳図書閲覧室があり日本各地から来館者が絶えません。 当図書館は毎年 10 月には「図書館まつり」として、図書館ボランティアにもご尽力いただきながら、 利用者・地域住民と一体となって各種イベントを開催しています。今年は開館 15 年を迎え、「開館 15 周年記念図書館まつり」を盛大に実施しました。 期間中には、 「新田次郎と藤原ていの娘に生まれて」と題した藤原咲子氏の「記念講演会」を開催し、 小説「孤高の人」に関係したお話などを講演していただきました。また、町内にある加藤文太郎のお墓 や孤高の人文学碑、加藤文太郎ふるさとの碑などを訪ね偲んだ「文太郎ゆかりの場所めぐり」や氏が生 前食したといわれる「文太郎鍋」のふるまいなど文太郎にちなんだ各種イベントを展開しました。 い めいてい さらに、先人記念館以命亭において絵本を中心とした「本の世界」の展示や子ども達を対象にした「特 別おはなし会」、 「子どもシネマの会」、 「人形劇公演」、一般を対象にした「ビーズアクセサリーづくり」 などさまざまなイベントを展開しました。 今後は利用者や地域社会と更なる連携を深め、図書館ボランティアの育成・充実を図りながら、イン ターネットでの蔵書検索などの情報化システムや移動図書館サービスの充実など多様なニーズにも対 応できる図書館をめざして職員一同頑張ってまいります。 兵庫県図書館協会「会報」№92 平成 22(2010).3.1 絵本ワールド in ひょうご2009 昨年 11 月 14・15 日に、神戸市灘区の神戸海星女子学院大学で、絵本ワールド in ひょうご2009 が開催されました。2002 年から毎年開催しているもので、8回目となります。今回は天候にも恵まれ、 両日で 3,500 名の参加者がありました。 協会からのお知らせ 平成 22 年度大会・研究集会等の予定 ○ 第 76 回国際図書館連盟(IFLA)ヨーテボリ大会 8 月 10 日(火)~15 日(日) 大会メインテーマ 「知識への開かれたアクセス-持続的な発展の促進に向けて」 ○ 第 96 回全国図書館大会奈良大会 9 月 16 日(木)~17 日(金) なら 100 年会館ほか テーマ「温故創新-平城遷都千三百年からの発信-」 ○ 全国公共図書館研究集会 (サービス部門 総合・経営部門) 11 月 9 日(火)~10 日(水) 富山県富山市 テーマ「レファレンス」(詳細未定) (児童・青少年部門) 11 月 18 日(木)~19 日(金) 香川県高松市 テーマ「伝えよう、本の楽しさ、読書のよろこび」 ○ 近畿公共図書館協議会研究集会 平成 23 年 1 月(予定) 担当:兵庫県 ○ 文科省図書館地区別研修 期日未定 担当:京都市 兵庫県図書館協会会報 №92 平成 22(2010)年 3 月 1 日 編集・発行:兵庫県図書館協会 〒673-8533 明石市明石公園 1-27 兵庫県立図書館内 ℡ 078-918-3366 FAX 078-918-2500 E-mail: [email protected]
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