資料① (薬剤師以外の医療・介護関連職種向け資料) 平成19年3月.日本薬剤師会作成 在宅療養者に関わる全ての医療・介護関連職種に向けて 在宅療養者への薬剤師の関わり ∼在宅療養者の療養環境で医薬品を安全に使用いただくために∼ 目 次 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1章 高齢者の特徴と医薬品使用上の問題点・・・・・・・・・・・・・ 2 1−1.高齢者の薬物療法の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1)疾病数と服用薬剤数の増加 2)生理・生体機能の低下と副作用 3)医薬品の長期使用 4)薬に対する理解力の低下 5)嚥下障害(嚥下能力の低下) 6)筋力低下等による服薬能力の低下 1−2.高齢者の特徴と薬物療法のポイント・・・・・・・・・・・・ 4 第2章 在宅療養者の薬物療法への薬剤師の関わり・・・・・・・・・・ 5 2−1.服薬コンプライアンス低下の原因と対処・・・・・・・・・・ 5 2−2.誤嚥防止のための剤形選択・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2−3.薬の副作用と日常生活への影響・・・・・・・・・・・・・・ 9 1)せん妄・幻覚 2)抑うつ・うつ状態 3)便秘 4)尿失禁 5)転倒の誘発 2−4.高齢者の身体状況に応じた服薬支援・・・・・・・・・・・・14 1)服薬能力・身体状況に応じた支援 2)服薬支援の例 (1)運動機能障害者への服薬支援(筋力低下・関節リウマチ・脳卒中片麻痺) (2)寝たきり者への服薬支援 (3)嚥下困難者への服薬支援 (4)視覚障害者への服薬支援 (5)聴覚障害者への服薬支援 (6)失語症(構音障害)者への服薬支援 (7)認知症患者への服薬支援 2−5.服薬支援グッズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2−6.在宅医療での服薬支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 1)在宅成分栄養経管栄養法 2)在宅中心静脈栄養法 3)在宅悪性腫瘍患者の疼痛治療 第3章 地域におけるチーム医療と薬局・薬剤師・・・・・・・・・・・ 20 巻末:薬剤師が行う訪問薬剤管理指導について・・・・・・・・・・・・ 21 はじめに 本冊子は、在宅療養者への薬剤師の関わりについて、在宅療養者に関わる様々な医 療・介護職種の皆様にご理解いただくことを目的として作成いたしました。 高齢者の薬物療法は、高齢者特有のさまざまな要因と環境要因によって影響を受けま す。安全で有効な薬物療法を提供するには、高齢者の特徴や薬の使用上の問題点を把握 することと同時に、在宅療養者に関連する医療・介護職種が連携して対応にあたること が重要です。 在宅医療の推進が重点項目として位置づけられている今後の医療制度において、薬局 は医療機関や訪問看護ステーション等と密接に連携し、在宅療養者の薬の調剤や保管・ 管理、適正使用のためのアドバイスなどを通じて、地域における医療提供体制の中で、 医薬品や医療・衛生材料等の提供拠点として、地域医療への一層の貢献を進めてまいり ます。 - 1 - 第1章 高齢者の特徴と医薬品使用上の問題点 1−1.高齢者の薬物療法の特色 1)疾病数と服用薬剤数の増加 高齢者は複数の疾病を有していることが多く、そのため、何種類もの薬を飲んでいる 場合が多く見られます。 図1−1は、外来患者に使用された医薬品の数を一般医療(71 歳以下)と老人医療 (71 歳以上)で比較したものです。 一般医療、老人医療ともに「1∼2種類」が最も多く、それぞれ 48.3%、36.7%と なっています。しかし、老人医療では「5∼6種類」 、 「7種類以上」の割合が多いこと が分かります。 図1 一般医療・老人医療別にみた薬剤種類数別件数の構成割合(入院外・投薬) 平成17年社会医療診療行為別調査(平成17年6月審査分)より (注)平成 17 年 5 月現在における老人医療受給対象年齢は 72 歳以上 このように高齢者には、多剤併用によって引き起こされる相互作用への注意が必要で す。また、医師の処方による薬だけでなく、一般用医薬品、漢方薬、栄養剤、あるいは 健康食品など多岐にわたり、これらが相互に影響し合う可能性があります。 特に、特定保健用食品(トクホ)の中には作用機序が医薬品と同じものがあるため、 医薬品との併用や特定保健用食品同士の併用については注意が必要です。 2)生理・生体機能の低下と副作用 高齢者では、通常の用量であっても、生理機能・生体機能の低下から、薬が強く効き すぎたり、副作用が強く現れたりします。 さらに、副作用等の症状については病気や老化によるものと思いこんでしまうことも あるので注意が必要です。 - 2 - 3)医薬品の長期使用 高齢者の疾患は、臓器の老化による障害を基礎としていることが多いため、多くの場 合が慢性疾患です。そのため、同じ薬を長期間使用することが多くなります。 こうした薬の中には、急性疾患の症状を隠蔽し、新たな疾病の発見を遅らせてしまう ものもありますので、注意をしておく必要があります。 4)薬に対する理解力の低下 高齢になると、薬を見間違えたり、飲み方を聞き間違えてしまうことがあります。さ らに視覚や聴覚の低下、あるいは認知症などによって正しい使い方ができない、何に効 く薬であるかなどの説明を十分理解されない、等の理由で、薬の服用を拒否されること もあります。また、薬の使用によって引き起こされる症状を適切に訴えることができな い場合もありますので、ご本人や家族との十分なコミュニケーションをとることが大切 です。 5)嚥下障害(嚥下能力の低下) 食物などが飲み込めなくなる「嚥下障害」は、高齢者に多く見られます。加齢による ものも原因の一つにあげられていますが、摂食・嚥下障害の原因疾患の約40%は脳卒 中であると言われています。多数の脳卒中患者が嚥下障害をもちながら生活しているこ とが報告されています。嚥下障害により薬がきちんと服用できないこともあります。そ のような場合には、医師・薬剤師に相談いただければ、状態に合わせた薬の剤形を選ぶ ことができます。 6)筋力低下等による服薬能力の低下 筋力低下等により包装(シート)から取り出しにくくなったり、開封できにくくなり ます。 以上のような原因により、高齢者の服薬コンプライアンスが低下するケースがよく見 られます。 - 3 - 1−2.高齢者の特徴と薬物療法のポイント 以上より、高齢者の特徴と薬物療法のポイントをまとめました。 高齢者の特徴と薬物療法のポイント ① 医師から処方された医薬品や薬局で購入された医薬品の適正使用について、 患者・家族に対する指導や援助を継続的に行い、QOLの維持・向上のため に、最小の医薬品使用で有効かつ安全な薬物療法が行われることが目標で す。 ② 高齢者は複数の疾病を有するため、多剤併用による相互作用への注意が必要 であり、また、加齢の生理的影響も薬の反応に影響を起こします。安全で有 効な薬物療法を提供するには、高齢者の特徴や薬の使用上の問題点を把握す ることと同時に、患者に関わる医療・介護職種の連携が重要です。 ③ 患者の療養環境が、医療設備の整っていない在宅であることを考慮し、患 者・家族等に適切な指導を行い、医薬品への理解を深めてもらうことが重要 です。 ④ 薬によって発現する可能性のある副作用について、発現した時の対応をあら かじめ検討しておくことも必要です。高齢者では、常用量でも、生理機能・ 生体機能の低下から、薬が強く効きすぎたり、副作用が現れたりします。副 作用等の症状を病気や老化によるものと思いこむこともあります。 ⑤ 高齢者は、薬に対する理解力の低下や嚥下障害、服薬能力の低下などにより、 服薬コンプライアンスが低下することがあり、服薬状況の把握と服薬支援 (服薬における自立支援)が必要です。 - 4 - 第2章 在宅療養者の薬物療法への薬剤師の関わり 2−1.服薬コンプライアンス低下の原因と対処 十分に検討された薬物療法計画であっても、指示どおりの薬の使用ができないとすれ ば、治療はうまく進みません。 コンプライアンスにはさまざまな因子が影響しますが、高齢者にコンプライアンス不 良が見られる原因として、多剤併用や服用方法の複雑化があげられます。考えられる主 な原因には表1−1のようなものがあります。 表1 コンプライアンス不良の原因 コンプライアンス不良の原因 患 者 に 関 連 す る も の 1.服用方法に対する誤解 ●どれが何の薬か分からなくなった ●いつ飲むのかわからなくなった ●1回の服用量が分からなくなった ●食事を摂らないので服用しない ●水分摂取の制限を受けているから飲まない 2.服用忘れ ●薬を飲み忘れる ●外出時に飲めない(薬を持たないで外出するなど) ●複数科を受診しており、各科で処方される投薬日数が異なる ●薬を飲んだかどうか分からなくなる 3.薬の使用に対する不安 ●長期服用しているにもかかわらず、症状の改善が見られない ●依存症への不安(睡眠薬など) ●一生、薬と付き合わなければならない ●薬を続けると効かなくなる不安(下剤など) ●患者自身が薬に優先順位をつけて、優先度の高い一部の薬だけを服用する ●長期服用による副作用が心配で、自己判断で休薬日を設けている(鎮痛剤など) ●耐性ができて効かなくなる(抗生剤など) ●強い薬は使いたくない(ステロイド剤など) ●新しい薬は副作用が心配 4.身体的理由 ●錠剤やカプセルの嚥下困難 ●錠剤の取出しが難しい ●利き手が不自由で分包紙を開けられない ●貼付剤の開封口の開閉ができない ●点眼薬のキャップがはずせない、容器が硬くて使用できない ●坐薬が挿入できない ●軟膏を終わりまでしぼれない ●服薬時の姿勢が保てない ●視覚障害 - 5 - ●聴覚障害 ●失語症 ●認知症 ●うつ病で薬を飲む意欲がわかない ●服薬の理解力がない 5.薬の有効性への疑問 ●生活習慣病治療薬、漢方薬、ビタミン剤は、薬の効果が実感できない ●鎮痛剤が効かない ●飲んでも飲まなくても体調が変わらない 6.副作用の経験 ●胃部不快、頭痛、腹痛、下痢、発疹、下血、低血糖症状等を起こしたためその後服 用をやめた 7.症状の軽減、変動または消失 ●全部使い切るまでに治ってしまった ●症状に合わせて使用する ●調子の良い日は飲むのをやめている 8.経済的理由 ●市販薬より負担が安いため、風邪薬や湿布薬等を予防的に処方してもらう ●薬を家族で使用するため多めに処方してもらう ●1日3回の薬を1回もしくは2回しか服用しない ●薬代が高い 薬 に 関 す る こ と 1.有害作用 ●実際の有害作用、想像による有害作用 2.複雑な処方内容 ●頻回の受診による投薬 ●隔日服用 ●多数の薬を使用 ●1日3回、2回、1回の服用の薬がある ●食前服用(飲み忘れやすい) 3.外観が類似した薬 ●薬袋から取り出した後、錠剤の色が同じで、何の薬か分からなくなる 4.薬が飲みづらい ●不快な味または臭い ●粉薬 ●錠剤とカプセルは服用できるが、錠剤と散薬は同時には飲みづらい 5.使用上の注意に対するストレス ●アルコール、納豆、緑黄色野菜、チーズ等の摂取制限へのストレス 以上のように、コンプライアンス不良の原因はさまざまですが、日本薬剤師会が平成 13年に行った「服薬コンプライアンスとその改善に対する薬剤師の関与についての実 - 6 - 態調査」によれば、コンプライアンス不良に対して、薬剤師による服薬指導や援助を行 うことで、ほとんどのケースで改善が図られています。特に高齢者に対しては、継続し た服薬状況の確認・服薬指導を通じて、コンプライアンスを高める必要があります。 薬剤師が行える指導や援助には、具体的に以下のようなものがあります。 表2 コンプライアンス不良に対する薬剤師の対応 1.薬の正しい飲み方や使い方を説明した 2.飲み忘れた場合の対処法を説明した ●1日3回服用の薬、1日2回服用の薬、1日1回服用の薬など、薬に応じて説明 など 3.服薬の意義や重要性を説明した ●自覚症状がない生活習慣病に対する服薬の重要性を説明した ●降圧剤中止によるリバウンドの危険性を説明した など 4.患者や家族の同意を得て、使用期限切れの医薬品を廃棄するなど残薬を 整理した 5.医師に連絡のうえ、処方日数を調整した ●残薬の調整 ●複数科受診の場合、投薬日数をそろえる など 6.医師に連絡のうえ、一包化(薬を服用時点毎に一つの包みにまとめること)した 7.医師に連絡のうえ、薬を変更あるいは削除した ●使用上の注意や制限の少ない薬への変更 ●副作用回避のための薬の変更 ●重複投薬による薬の削除 など 8.医師に連絡のうえ、剤形を変更した ●坐薬から経皮吸収型貼付剤や内服薬への変更 ●散剤から水剤への変更 ●サイズの小さい錠剤やカプセルへの変更 ●軟膏チューブを開閉の楽な軟膏壺に入れ替える など 9.医師に連絡のうえ、服用時点を変更した ●服用方法の単純化を検討 ●ライフスタイルにあった服用時点に変更した など 10.患者の服薬能力を考慮のうえ、服薬補助具を紹介した ●飲み忘れ、飲み間違い防止に投薬カレンダー ●視覚障害の方に点字シール ●味や臭いのマスキングにオブラート ●むせ防止に嚥下補助ゼリー、とろみ調整剤 など 11.高齢者の介護にあたる家族等への指導 ●薬の使用に関する注意事項の説明 など - 7 - 2−2.誤嚥防止のための剤形選択 嚥下障害のある高齢者に対する服薬指導において大切なことは、正しい薬の服用方法 の習得と、薬を飲みやすくする工夫です。 誤嚥を起こしやすい剤形としては、粘性の低い液剤、水分の少ない硬くて口中でバラ バラになる顆粒剤や散剤、口腔内に付着しやすい錠剤やカプセル、酸味の強い液剤等が あります。 一方、嚥下しやすい剤形とは、「噛まなくとも舌で押しつぶして飲み込める軟らかさ で、ツルッとゆっくり滑るようなもの、あるいは、口のなかでバラバラにならず、べと つかないもの」があげられます。 誤嚥を防ぐためには、剤形の選択が重要です。 表3 薬が飲みづらい原因とその対策 薬が飲みづらい原因 対 1.飲みにくい剤形 1.最適な剤形を選ぶ ●散剤:味がわるい、粉が散る ●顆粒剤:入れ歯の間に挟まり不快 ザラザラする ●錠剤・カプセル :径の大きいものは飲めない 口腔粘膜に貼りつく つかえる ●シロップ剤 :計量が煩わしい 後味が悪い ●包装:PTP シートからの取り出しが不 便 散剤が開封時に飛散しやすい 坐薬の取出しが不便 液剤が計量しにくい ●ゼリー剤、小さな錠剤、崩壊錠、 ドロップ、トローチ、貼付剤、 坐薬などを選ぶ 2.飲みやすいものと一緒に飲む ●ゼリー、ヨーグルト、とろみ水、 オブラートなどを使う ●とろみ調整剤を使う 3.誤嚥防止のための服用方法を 習得する 4.服薬支援グッズを使う ●軟膏を搾り出し器、錠剤分割器、 点眼用自助具、嚥下補助ゼリー、オブ ラート、服薬用カップ、服薬カレンダ ー、管理ケース箱、点字シール、補聴 器 など 2.口腔内の障害 ●口腔内の乾燥:むせる、口中に残る ●入れ歯の不適合:歯にはさまる ●口からこぼれる ●食道入口部の開放時間の短縮 :喉に送り込めない 策 5.製剤を飲みやすく加工する ●散剤、顆粒剤をペースト状に加工する ●錠剤を粉砕、●脱カプセル [参考]誤嚥防止のための服用方法 ① 服用前に口腔内を湿潤させる ② 服用前後は座位を保つ(体をまっすぐに起こす) ③ 座位が困難な場合は、上半身を30度以上起こす ④ 飲み込むときは、うなずくようにあごをひく(薬が気管に入らないように) ⑤ 舌、頬および唇に麻痺のある方は、薬が麻痺のない側を通過するよう、スプー ンを用いて頭と体を麻痺のない側に傾けて服用する ⑥ 飲み込みにくい時は、ゼリーなど滑らかな食感の食物を利用する - 8 - 2−3.薬の副作用と日常生活への影響 薬を飲んだとき、本来の目的とは異なる作用が現れることがあります。これを「副作 用」といいます。 薬の副作用には、風邪薬を飲んで眠くなるというものから、生死にかかわるものまで あります。また、副作用には個人差もあり、飲んだ時の体調なども影響します。副作用 の現われ方も、すぐ現れる(1∼数日)副作用と、時間がたってから(1∼数ヶ月)現 れる副作用があります。大衆薬(一般用医薬品)や漢方薬にも副作用はあります。 副作用が現れたとしても、早い段階で対応できるように、副作用の前兆として現れる 症状を、あらかじめ医師や薬剤師から確認しておくことが重要です。 また、薬の副作用は、高齢者のADL(日常生活動作:Activities of daily living 排泄機能、食事の摂取、動作・運動機能、感覚機能、精神機能など)及び生活機能(○ 心身機能・構造:心と体のはたらき、体の部分 等 ○活動:歩行、家事、仕事などの 生活行為 ○参加:仕事、家庭内役割、地域社会参加 等)の低下に影響を与えること に留意する必要があります。 薬の使用によって引き起こされる副作用が日常生活に与える影響については、慎重な 管理が必要で、職種間の連携が重要です。 これまでできていたことができなくなった、とか、目がぼやけたり、トイレが頻繁に なってきた…などの現象は、もしかしたら薬の影響かもしれません。日常的に患者と接 する機会が多い家族や介護者・看護者は、患者のADL・生活機能の変化に気がつきや すい環境にあります。それまでと違った症状の変化や家族からの情報があれば、医師や 薬剤師にお伝えください。薬の影響などを確認し適切に対応することで、本人はもちろ ん、介護者・看護者の負担も軽減される可能性もあります。 以下に代表的な副作用とそれが生活に与える影響を記載します。 表4 薬が与える ADL(日常生活動作)等への影響 動作・運動機能 ・歩行・移動動作・階段昇降・入浴動作・整容動作 ・摂食動作・転倒 食事 ・食欲不振・食欲の異常亢進・嚥下障害・味覚障害 排泄機能 ・尿失禁、便失禁・頻尿・多尿・乏尿・排尿困難 ・便失禁・便秘・下痢 感覚機能 ・音声、言語障害・視覚障害・聴覚障害・味覚障害 ・皮膚感覚異常 精神機能 ・失見当識・意欲低下・記憶力低下・思考力低下 ・抑鬱・不安・せん妄・幻覚・問題行動・不眠 ・眠気・睡眠 その他 ・体重増加・体重低下・体温調節異常 - 9 - 1)せん妄・幻覚 高齢者の場合、せん妄は、薬の副作用が原因となることが多く、外界に対する意識が にごり、幻覚、妄想を認める状態をいいます。 具体的には、ぼんやりとした状態となり、注意を集中できず考えがまとまらない、判 断力が低下する、時間や場所が判らなくなるなどの状態をいい、精神錯乱、見当識障害、 不眠、興奮などと表現されます。 これらの症状は、認知症の症状と類似しているため、せん妄と認知症を間違うケース があります。せん妄は、発症が急速で、可逆的ですが、迅速な診断や治療を受けないと 死亡する危険にさらされることもあります。 せん妄が及ぼす日常生活への影響 ・嚥下・寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持・歩行 ・移乗・排便・入浴・歯磨き・洗顔・爪切り・食事摂取・衣服着脱・居室掃除 ・薬の内服・金銭管理 せん妄を引き起こすおそれのある薬の例 せん妄を引き起こす薬 例 ・制吐薬・抗ヒスタミン剤 ・抗パーキンソン病薬・向精神病薬 ・鎮痙薬・筋弛緩剤・三環系抗うつ薬 ・アルコール・降圧剤 ・ベンゾジアゼピン系薬剤 ・シメチジン・ジゴキシン ・麻薬・その他の中枢神経系抑制薬 抗コリン作用のある薬 その他の薬 2)抑うつ・うつ状態 うつ状態は感情の低下のみならず、行動性の低下をもたらす悲哀気分をいい、抑うつ 気分、思考抑制、不安と焦燥、意欲の低下、自責感、微少妄想、自殺念慮、不眠、食欲 不振などの症状をさします。 うつ状態が及ぼす日常生活への影響 ・歩行・移乗・浴槽への出入り・洗身・歯磨き・洗顔・爪切り・食事摂取 ・衣服着脱・ボタンのかけはずし・上着の着脱・ズボン、パンツの着脱 ・靴下の着脱・居室掃除・薬の内服 うつ状態を引き起こすおそれのある薬の例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ラウオルフィアアルカロイド 副腎皮質ホルモン メチルドパ 非ステロイド性抗炎症剤 β―遮断薬 インターフェロン - 10 - 3)便秘 便秘とは「3日以上の排便がない場合、あるいは1日の便量が35g以下のとき」と いわれています。特に高齢者は、副作用として便秘の可能性がある薬を使用する機会が 多く、便秘によって食欲不振、悪心嘔吐、胃部不快感等の症状や高血圧あるいは狭心症 など基礎疾患を悪化させることもあり、便秘の予防・早期対応が大切です。 日常生活の問題として、浣腸や下剤、摘便へのストレス、非生理的リズムでの排便へ のストレスなどの精神的ストレスがあり、これらは、高齢者の生活の質にさまざまな影 響を及ぼします。 しかし、便秘を誘発させる薬を使用している高齢者には、下剤を処方される場合が多 いため、生理的リズムを考慮した下剤の使用量、使用方法の検討が必要です。 便秘を引き起こすおそれのある薬の例 ・ 抗コリン剤・ブチロフェノン系薬剤・三環系抗うつ剤・利尿剤 ・ 制酸剤(アルミニウム、カルシウム化合物) ・抗パーキンソン病薬 ・ カルシウム拮抗剤・造影剤・アヘンアルカロイド・筋弛緩剤 4)尿失禁 関節炎や脳血管障害などの疾患により、身体的機能の低下がある高齢者では、排尿に 関する問題が生活の質に大きな影響を与えます。高齢者で頻繁に使用される薬の多くは、 尿失禁を惹起させます。 失禁に対する懸念から、水分摂取を控えたり、服薬コンプライアンスの低下が問題と なります。 これらの対策として、尿失禁を誘発する薬の使用中止や、類似する効果をもつ薬への 処方変更が望まれます。 尿失禁を引き起こすおそれのある薬の例 ・利尿剤・睡眠剤・精神安定剤・抗精神病薬・β―遮断薬・リチウム 5)転倒の誘発 寝たきりになる原因としては「脳血管障害」、 「高齢による衰弱」 、「認知症」などのほ か「転倒・骨折」があります。脱力・筋力低下・ふらつき・めまい・眠気・覚醒水準の 低下など「転倒」を誘発させる薬を使用すると、転倒の危険度がさらに増大します。転 倒を予防することは寝たきりを防ぐためにも大変重要です。 転倒を誘発する薬は多数ありますが、同じ効能を持つ薬の中で転倒リスクのない薬を 選択することで、転倒の頻度が低下します。 - 11 - 転倒を誘発させるおそれのある薬とその副作用の例 薬 筋弛緩剤 抗不安薬 睡眠薬 NSAIDs 抗てんかん薬 麻薬 非麻薬性鎮痛剤 抗がん剤 降圧剤 利尿剤 抗うつ剤 向精神薬 (睡眠薬を除く) 抗パーキンソン病薬 ジギタリス製剤 H2拮抗剤 β―遮断薬 抗コリン剤 抗不安薬 抗ヒスタミン剤 血糖降下剤 制吐薬 胃腸機能調整薬 副作用 ・脱力・筋力低下 ・脱力・筋力低下・ふらつき・めまい・眠気 ・覚醒水準の低下 ・ふらつき・めまい・眠気・覚醒水準の低下 ・ふらつき・めまい ・ふらつき・めまい・視力障害・眠気 ・覚醒水準の低下 ・ふらつき・めまい・せん妄・眠気・覚醒水準の低下 ・ふらつき・めまい・眠気・覚醒水準の低下 ・ふらつき・めまい・せん妄 ・失神・起立性低血圧 ・失神・起立性低血圧 ・失神・起立性低血圧・パーキンソン症候群 ・失神・起立性低血圧・パーキンソン症候群 ・せん妄 ・せん妄 ・せん妄 ・せん妄 ・視力障害 ・眠気・覚醒水準の低下 ・眠気・覚醒水準の低下 ・眠気・覚醒水準の低下 ・パーキンソン症候群 ・パーキンソン症候群 - 12 - 表5 重大な副作用と症状(例示) (日本薬剤師会「平成 11 年度老人保健事業推進費等補助金事業報告書」より) - 13 - 2−4.高齢者の身体状況に応じた服薬支援 1)服薬能力・身体状況に応じた支援 高齢者に応じた適切な服薬支援を行うには、まず服薬能力の把握が必要です。薬剤師 にご相談いただければ、身体状況に応じた服薬支援方法が検討できます。 表6 患者の身体状況と検討できる服薬支援方法の例 患者の状況 □運動機能障害 筋力低下 リウマチ 脳卒中片麻痺 □寝たきり 服薬行動に関する状況 □薬をつかめない □シートから出せない □袋を開封できない □半錠にできない □点眼薬のキャップがはずせない □点眼薬がうまくさせない □貼付剤の開封口の開閉ができない □湿布がうまく貼れない □軟膏を終わりまで取り出せない □軟膏容器の先端に穴があけられない □坐薬が挿入できない □残薬がある □飲み間違いがある □嚥下障害 □飲み込めない(嚥下反射遅れ、薬の咽 頭への送り込み困難、麻痺) □誤嚥しやすい □服薬時の姿勢が保てない □視覚障害 □ほとんど見えない □あまり見えない □薬袋の字は少し読める □点字が読める □聴覚障害 □ほとんど聞こえない □大きな声であれば聞き取れる □失語症 □構音障害あり □失語症あり □嚥下障害を伴う □服薬の理解力がない □服薬の理解力は少しある □理解力の低下 (認知症等) - 14 - 服薬支援の例 □一包化 □調剤方法の工夫 □自助具の利用 袋オブラート、軟膏を搾り出 す自助具、点眼用自助具 □一包化 □服薬カレンダー等利用 □介護者・看護者への服薬指導 □自助具の利用 嚥下補助ゼリー、オブラー ト、薬杯 □小さいサイズの錠剤や散剤 への変更 □とろみをつける □つぶし □経管投薬 □自助具の利用 嚥下補助ゼリー、服薬用カッ プ、オブラート □一包化 □触知型シール □見やすい字 □点字・知覚シール、 □自助具の利用 □書面 □手話 □自助具の利用 補聴器、音声伝達器 □書面 □剤形の検討 □一包化 □服薬カレンダー・管理箱等の 利用 □介護者・看護者への服薬指導 2)服薬支援の例 (1)運動機能障害者への服薬支援(筋力低下・関節リウマチ・脳卒中片麻痺) 服薬動作のうち、具体的に何に困っているのかを聞き取り、有効と思われる自助具の 使用を薦めます。 脳卒中片麻痺の患者の場合、内服薬、外用薬にかかわらず片手ではスムーズな服用動 作が行えないため、片手でも服薬ができるような調剤方法の工夫を行います。また介護 の状況に留意し、必要ならば投薬回数の少ない持続性の薬への処方変更を医師に依頼し ます。患者自身が服薬する能力がある場合はできるだけ自力でできるよう、薬袋に切れ 目を入れて1回分ずつ薬杯に移しておく等の工夫をします。 関節リウマチの患者の場合は、変形や疼痛によって自分で薬を飲んだり、外用薬を使 用することが徐々に困難になります。また、病気が長引くほど、握力や指の力が低下し、 薬の開封ができなくなったり、関節の変形によって手が口に届かなくなり、薬の服用・ 使用が困難になっていくので、調剤方法の工夫と有効と思われる自助具の使用を薦めま す。 (2)寝たきり者への服薬支援 寝たきりの方は、コンプライアンスに問題がある場合が多くあります。薬の管理は介 護者・看護者に任されているケースがほとんどなので、服薬に問題のある点については、 介護者・看護者等と十分な連携のもとに改善策を検討します。 まず、服薬の意義について、病態・疾患について視覚的資料を活用するなど、患者、 介護者・看護者の理解が深まるように説明します。また、服薬を自身で調節してしまう 原因として、嚥下能力の低下、義歯の使用、飲みにくい(味、見た目、匂い、剤形)な どが考えられますので、他の薬への変更を検討します。 飲み忘れや飲み間違いが多い場合は、服薬回数を減らすことや一包化(薬を服用時点 毎に一つの包みにまとめること)についても医師と検討し、服薬カレンダーや薬管理ケ ース箱などを用意して工夫します。 (3)嚥下困難者への服薬支援 患者、介護者・看護者両方にとって服用しやすい、させやすい方法を検討します。患 者にとって服用しやすい姿勢を見つけることにより、嚥下諸筋のリラックスした状態、 誤嚥しにくい状態を確認します。 家族や介護者・看護者より現在の服用状況を確認し、嚥下反射の遅れや、薬の咽頭へ の送り込みの困難さ、舌、頬、唇麻痺、咽頭、喉頭麻痺等の問題点について検討します。 服用方法として、液体と薬を交互に飲み込む交互嚥下、一口に服用する薬を制限する 一口量の制限、大きく息を吸って息を止めてから飲み込む息止め嚥下、一口について何 回も飲み込む複数嚥下などの方法を使い分け、患者に最も適切な方法を検討します。 - 15 - (4)視覚障害者への服薬支援 視覚障害者は、健常人と比較して得られる情報は非常に少なく、特に中途障害者の場 合には点字の習得が困難なケースが多くあります。視力、視野欠損状況などの視機能に 応じて、薬袋に凧ヒモ等で突起部分を付けたり、視覚資料での説明が可能な場合や口頭 での説明を行う場合などがあります。 また、視覚障害に起因して理解力の低下が起こっている場合もあり、それに伴った服 薬能力の低下も考えられます。ある程度視機能がある場合で文章での説明が可能な場合 は、文字を太く大きくする、色をつけるなどの工夫をします。 (5)聴覚障害者への服薬支援 聴覚障害の状況(伝音障害、感音難聴、混合難聴)について正しく把握し、補助機器 等を用いて服薬指導を行います。補聴器が有効でない場合は、文書を用いた服薬指導を 行います。 (6)失語症(構音障害)者への服薬支援 構音障害の患者は舌が動かない、唇が閉じない、または、嚥下障害を伴うことがあり、 剤形を工夫します。 (7)認知症患者への服薬支援 薬の管理は本人以外の家族や介護者・看護者等にて行われます。 周辺症状の改善を目的とした抗精神病薬によって、高齢による生理機能低下による副 作用発現の恐れも大きくなっているので、家族及び介護者・看護者に対して適切な説明 を行うとともに、詳細な患者情報を入手し、継続的な薬剤管理と指導を行います。 軽度な認知症の場合、服薬カレンダーに患者本人と一緒に薬剤をセットするなどの支 援方法もあります。 2−5.服薬支援グッズ 代表的な服薬支援グッズをご紹介します。詳細は薬局の薬剤師におたずねください。 ・薬のとりだし加工(錠剤取り出し器、軟膏を搾り出し器など) ・薬の加工(錠剤を半分に割る器具など) ・点眼用自助具 ・嚥下補助ゼリー、オブラート、服薬用カップ など ・服薬カレンダー、管理ケース箱 ・触知型シール、点字シール、補聴器 など - 16 - 服薬支援グッズの例 - 17 - 2−6.在宅医療での服薬支援 現在の在宅医療を、健康保険法の主な指導管理料として見ると以下のようなものがあ ります。 ・ 在宅自己注射指導管理料 ・ 在宅自己腹膜灌流指導管理料 ・ 在宅血液透析指導管理料 ・ 在宅酸素療法指導管理料 ・ 在宅中心静脈栄養法指導管理料 ・ 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 ・ 在宅自己導尿指導管理料 ・ 在宅人工呼吸指導管理料 ・ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 ・ 在宅悪性腫瘍患者指導管理料 ・ 在宅寝たきり患者処置指導管理料 ・ 在宅自己疼痛管理指導管理料 ・ 在宅肺高血圧症患者指導管理料 ・ 在宅気管切開患者指導管理料 など これらの中から、用いられる機会も多く、薬剤使用との関連が深い在宅成分栄養経管 栄養法、在宅中心静脈栄養法、在宅悪性腫瘍患者の疼痛治療への薬剤師の関わりを紹介 します。なお、ここで記載したものは、これら治療法に直接関わる範囲であり、前章等 で示した在宅療養者に関する一般的な注意は記載していません。 1)在宅成分栄養経管栄養法 錠剤やカプセル剤の薬は、チューブを通して投与するため、錠剤粉砕かまたはカプセ ルをはずした状態で水または温湯に溶かして(懸濁)させて、チューブを通過させます。 その際、薬がしっかりと溶けて(懸濁)いるか、薬によってチューブが詰まらないか、 などが問題となります。多くの錠剤は粉砕して用いるようにできていないため、粉砕す ることにより体内動態の変化をはじめとした予測しがたいケースが生まれる可能性が あります。また、薬の成分と栄養素の相互作用が起こるケースもありますし、薬そのも のや、薬と栄養剤の混合等により粘度が増すことなどもあります。 薬剤師は、このような場合、薬の変更や投与方法の変更を検討します。 2)在宅中心静脈栄養法 薬局から、在宅中心静脈栄養法に利用する薬剤、例えば高カロリー輸液用基本液(糖 質・電解質)、アミノ酸製剤、脂肪乳剤、ビタミン製剤、その他(微量元素製剤、電解 質補正液、糖質輸液など)を供給いたします。 混合する薬剤そのものや、薬剤を混合するタイミング、薬剤を保存しておく期間によ っては、予期しない化学変化や効力の低下等が生じる可能性もあります。 - 18 - また、他の投与法に比べ、高血糖、低血糖、電解質異常、必須脂肪酸欠乏症、微量元 素(亜鉛やセレンなど)欠乏症、ビタミン欠乏症等への注意が必要です。 薬剤師は、患者の使用実態に合わせた最適な薬剤の供給を検討します。 3)在宅悪性腫瘍患者の疼痛治療 WHOの「WHO方式癌疼痛治療法」は 1996 年に改定され、段階的投与法と使用薬 剤は以下のようになっています。 第一段階(軽度の痛み)は非オピオイド鎮痛薬(非ステロイド系消炎鎮痛薬など) 第二段階(中程度までの痛み)は弱オピオイド鎮痛薬(コデインなど) 第三段階(中程度から高度の痛み)はオピオイド鎮痛薬(モルヒネなど) なお、痛みの程度によりオピオイド鎮痛薬と非オピオイド鎮痛薬を併用します。また、 鎮痛補助薬として、抗けいれん薬、局所麻酔薬、向精神薬、抗不安薬、筋弛緩薬、抗う つ薬、副腎皮質ホルモン薬を併用することもあります。 在宅悪性腫瘍患者の疼痛治療には、主としてオピオイド鎮痛薬(モルヒネなど)が用 いられますが、経口投与を基本とし、不可能ならば坐剤等による直腸投与、それでもだ めな場合は注射剤とします。貼付型製剤(フェンタニルパッチ)は臨時追加投与法を明 確にして使用する必要があります。 モルヒネは少しずつ増量してゆくと、鎮痛作用、催吐作用、止寫作用が現れます。ま た、投与量が多くなると、強い眠気が現われます。それより多い量になると呼吸抑制作 用が現われます。嘔気・嘔吐、めまい、便秘、眠気、せん妄、排尿障害、呼吸抑制、め まい、発汗などの副作用に対して、発症予防と早期対応が求められます。 一番注意する副作用は服用開始すぐの嘔気と長く続く便秘で、予防が重要となります。 薬剤師は、患者の痛みの状況、副作用の発現状態などに合わせた最適な薬剤を検討し ます。また、副作用とその防止方法、追加投与法を含めた薬の管理についても正しい情 報を提供し指導します。さらに患者宅での適切な保管管理、廃棄等の方法について患者 及びその家族への指導を行うとともに、定期的にその状況を確認していきます。 - 19 - 第3章 地域におけるチーム医療と薬局・薬剤師 近年は、医師が処方せんを発行し、処方せんを街の薬局に持って行って調剤サービス を受ける「医薬分業」が進んできました。日本薬剤師会の調べでは、平成 17 年度の処 方せん受取率(いわゆる医薬分業率)は 54.1%となっています。 このような状況の変化を受け、平成 18 年6月の医療法改正により、薬局は「医療提 供施設」の一つとして明確に位置づけられました。 在宅療養者の療養環境で医薬品を安全に使用いただくために、薬に関してお困りのこ とがございましたら、薬局の薬剤師にご相談ください。薬剤師は、健康保険法及び介護 保険法に基づき、訪問薬剤管理指導(介護保険においては居宅療養管理指導)を行って います(次頁参照) 。 在宅医療の推進が重点項目として位置づけられている今後の医療制度において、薬局 は医療機関や訪問看護ステーション等と、また、居宅介護支援事業所の介護支援専門員、 地域包括支援センターと密接に連携し、在宅療養者の薬の調剤や保管・管理、適正使用 のためのアドバイスなどを通じて、地域における医療提供体制の中で、医薬品や医療・ 衛生材料等の提供拠点として、地域医療への一層の貢献を進めてまいります。 お薬のことでお困りのことがございましたら、お近くの薬局、 または以下まで、どうぞご連絡下さい。 ●●県(市等)薬剤師会 〒 ***−**** ●●県●●市●●1−2−3 ●●ビル TEL:****−**−**** FAX:****−**−**** - 20 - 薬剤師が行う訪問薬剤管理指導について 薬剤師が薬を持ってご自宅に伺い、薬の服用方法や管理の仕方についてご説明い たします。 薬についての説明 処方された薬の効果と副作用についてご説明します。また、副作用の症状が出て いないかを確認し、疑いがあれば速やかに医師に報告し、対応します。 薬が飲みづらい場合の工夫・対応 錠剤やカプセルが喉につかえるなど薬が飲みづらい場合には、薬剤師が医師に剤 形の変更を依頼したり、ゼリーやオブラートを使って飲みやすくします。 薬の保管・管理上の工夫・アドバイス 朝・昼・夕ごとに飲む薬をまとめるなど飲み忘れがなくなるように工夫します。 また、薬を湿気・日光・高温から守るよう管理方法についてもご説明します。 さらに、以前に処方された薬などについても、薬剤師がアドバイスいたします。 薬の飲み合わせや食品・健康食品との相性の確認 処方されている薬を大衆薬と一緒に飲んで安全かどうかをお調べします。また、 普段召し上がっている食品や健康食品と薬の相性もお調べします。 介護用品や衛生用品などのご相談 床ずれを予防するための介護用品の紹介や介護方法、その他衛生用品などについ てご相談に応じます。 住環境等を衛生的に保つための指導・助言 シーツやお住まいの消毒方法などについてご説明します。 【費用について】 薬剤師が行う訪問薬剤管理指導は、健康保険または介護保険の対象となります。 [窓口負担*] 1割負担 3割負担 月の1回目 2回目以降 500円 300円 1,500円 900円 *上記金額は訪問薬剤管理指導のみに係る費用です。 これ以外に、処方された薬の内容に応じて、薬剤料と調剤技術料、交通費(実費)がかか ります。 - 21 -
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