1―4 登山中の熱中症予防8ヵ条 1 知って予防をいたしましょう熱中症 熱 中 症 と は 、熱 い 環 境 で 生 じ る 障 害 の 総 称 で 、次 の よ う な 病 型 が あります。 1) 熱失神:皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少しておこる もので、めまい、失神などが見られる。顔面そう白となり、脈 は速くて弱くなる。 2) 熱疲労:脱水による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気な どがみられる。 3) 熱痙攣:大量に汗をかき水だけを補給して血液の塩分濃度が低下した時 に、足、腕、 腹部の筋肉に痛みをともなった痙攣がおこる。 4) 熱射病:体温の上昇のため中枢機能に以上をきたした状態で、意識障害 (応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)が、おこり死亡 率が高い。 2―4 2 暑いとき、無理な行動は事故のもと 熱 中 症 の 発 生 に は 気 温 、湿 度 、風 速 、輻 射 熱( 直 射 日 光 な ど )が 関 係 し ま す 。 こ れ ら を 総 合 的 に 評 価 す る 指 標 が W B G T( 湿 球 黒 球 温 度 )で す 。同 じ 気 温 で も 湿 度 が 高 い と 危 険 性 が 高 く な る の で 、注 意 が 必 要 で す 。ま た 運 動 強 度 を 上 げ るような速度で登ると熱の発生も多くなり、熱中症の危険性も高くなります。 暑 い 時 は 無 理 を せ ず 、環 境 条 件 に 応 じ た 行 動 、休 憩 、水 分 補 給 の 計 画 が 必 要 で す。 3 急な暑さは要注意 暑 熱 環 境 で の 体 温 調 節 能 力 に は 暑 さ へ の 馴 れ( 署 熱 馴 化 )が 関 係 し ま す 。熱 中 症 の 事 故 は 急 に 熱 く な っ た と き に 多 く 発 生 し て い ま す 。初 夏 の 頃 や 夏 山 の 第 1 日 目 に は 事 故 が 起 こ り や す い の で 要 注 意 で す 。ま た 、夏 以 外 で も 急 に 暑 く な る と 熱 中 症 が 発 生 す る こ と が あ り ま す 。急 に 暑 く な っ た 時 に は 適 度 に 水 分 補 給 の 休 息 を と り な が ら 、ゆ っ く り 登 る よ う に 心 が け ま し ょ う 。山 に 出 か け る 前 に 短時間の運動から徐々に増やすトレーニングをして暑さに慣らしておきまし ょう。 4 失った水と水分を取り戻そう 汗 は 熱 を 奪 い 、体 温 が 上 昇 す る の を 防 い で く れ ま す 。し か し 失 わ れ た 水 分 を 補 わ な い と 脱 水 に な り 、体 温 調 節 能 力 や 運 動 能 力 が 低 下 し ま す 。暑 い と き に は 、 こ ま め に 水 分 を 補 給 し ま し ょ う 。汗 か ら は 水 と 同 時 に 塩 分 も 失 わ れ ま す 。水 分 の補給には0,2%程度の食塩水かスポーツドリンクが有効です。 5 体重で解る健康と汗の量 毎朝起床時に体重を量ると疲労の回復 状態や体調のチェックに役立ちます。 また、運動前後に体重を計ると運動中に 汗などで失われた水分量が求められます。 体重の3%の水分が失われると運動能力 や体温調節能力が低下しますので、運動 による体重減少が2%を超えないように 水分を補給しなければなりません。 この点をよく理解して山では特に登り行程、気温、 直 射 日 光 な ど そ の 時 の 状 況 に 合 わ せ 、マ メ に 小 休 止 を とり手遅れにならないように水分の補給をいたしま しょう。 3―4 6 衣服は暑さ対策をしてさわやかに 皮 膚 か ら の 熱 の 出 入 り に は 衣 服 が 関 係 し ま す 。暑 い と き に は 軽 装 に し 、素 材 も 吸 湿 性 や 通 気 性 の よ い も の に し ま し ょ う 。直 射 日 光 を 長 時 間 受 け る 場 合 に は 帽 子 を 必 ず 着 用 、首 筋 に 直 射 日 光 を 当 て る と 疲 労 を 速 め る の で タ オ ル 等 で 覆 う と よ い 。ま た 半 袖 シ ャ ツ よ り 長 袖 が 有 効( 半 袖 に 腕 カ バ ー し て 、木 陰 で 外 す よ う に す る 方 法 も あ る )休 憩 は 木 陰 な ど 風 通 し の よ い と こ ろ で 、リ ュ ッ ク を 降 ろ し衣服を緩めて、できるだけ熱を逃がしましょう。 7 体調不良は事故のもと 体調が悪いと体温調整能力も低下し、熱中症につながります。疲労、発熱、 か ぜ 、下 痢 、二 日 酔 い 、貧 血 な ど 、体 調 の 悪 い と き に は 無 理 を し な い こ と で す 。 体 力 の 低 い 人 、肥 満 の 人 、暑 さ に 馴 れ て い な い 人 、熱 中 症 を お こ し た 人 な ど は 暑さに弱いので注意が必要です。 8 あわてるな、されどいそごう救急処置 万一の緊急事態に備え、救急処置を知っておきましょう。 1) 熱失神、2)熱疲労は涼しい場所に運び、衣服を緩めて寝かせ、水分を 補給すれば通常は回復します。足を高くし、手足を抹消から中心に向け てマッサージするのも有効です。吐き気や嘔吐などで水分補給ができな い場合には病院に運び、点滴を受ける必要があります。 3) 熱痙攣は生理食塩水(0,9%)を補給すれば通常は回復します。 4) 熱射病は死の危険のある緊急事態です。体を冷やしながら集中治療ので きる病院へ一刻も速く運ぶ必要があります。いかに速く体温を下げて意 識を回復させるかが予後を左右するので、現場での処置が重要です。 体温を下げるには、水をかけたり濡れたタオルを当てて防ぐ方法、頚、 腋の下、足の付け根など太い血管のある部分に氷やアイスパックをあて る 方 法 が 効 果 的 で す 。( 山 で 代 替 方 法 と し て 冷 た い 水 と タ オ ル し か な い ) 循環が悪い場合には、足を高くし、マッサージをします。 症状としては、意識の状態と体温が重要です。意識障害は軽いこともあ りますが、応答は鈍い、言動がおかしいなど少しでも異常がみられる時 には重症と考えて処置しましょう。 4―4 WBGTとは Wet Bulb Globe Temperture(湿球黒球温度) とは人体の熱吸収にかかわる環境因子(気温、湿度、輻射熱、気流)のうち、 特 に 影 響 の 大 き い 湿 度 、輻 射 熱 、気 温 の 3 つ を 取 り 入 れ た 指 標 で す 。乾 球 温 度 、 湿球温度と黒球温度の値から下記の式で計算されます。 参考資料:熱中症予防ガイドブック (財)日本体育協会 大阪府山岳連盟 中高年安全登山啓発グループ
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