社団法人日本オプトメカトロニクス協会デジタル・イメージング技術部会講演要旨開催日：平成１７年１２月１２日（月）＜０５−３①＞テ − マ：「月刊誌｢アサヒカメラ｣ニューフェース診断室におけるデジタルカメラテスト法」講演者：川向秀和氏（日本大学芸術学部芸術研究所光画像計測センター嘱託／和光計測技術研究所所長）講演要旨月刊誌「アサヒカメラ」の「ニューフェース診断室」（以下「診断室」と呼ぶ）は 1 9 5 7 年 8 月号掲載の「 K o n i c a Ⅲ 」から毎月連載され、まもなく 6 0 0 回を数える。「診断室」のカメラテストは、「買い上げテスト」であることとその「確かさ」に於いて、読者はもとより、カメラメーカーの開発者からも一目置かれている。「診断室」にデジタルカメラが登場したのは 2002 年 1 月号の「 Nikon D1X」が初めで、以降、月を追うごとにデジタルカメラが増え、この 1・ 2 年は銀塩フィルム用カメラをテストできる機会は年 1 回程度と激減し、デジタルカメラでなければカメラではないような様相を呈している。「診断室」では、当初、読者の大きな観点が「銀塩と比べてどうか」、「記録」ではなく「作品」を作る道具として銀塩に置き換わりうるものなのか、それとも銀塩とはカテゴリーの異なる道具なのか、という点にあると考え、できるだけ従来の診断項目と対応させつつ、デジタルならではの項目あるいは測定法を加えながら、定量的な評価を試みることにした。デジタルカメラには、撮像素子とその出力のデジタル処理がカメラに内蔵されており、「デジタルカメラの評価」とは、銀塩でいうと「カメラとフィルムの総合性能の評価」ということになり、テスト項目が爆発的に増えることを意味する。なかでも、色に関するテストは最もやっかいで、物理的評価と見た目の色再現の良さとが必ずしも一致しない。「診断室」では、 2 0 0 4 年 1 2 月号まで色特性に関する具体的な評価記事は記載しなかったが、「写真の写りの良し悪し」の中に占める色の影響は非常に大きく、2 0 0 5 年 1 月号の「 C a n o n E O S 2 0 D 」以降、「記録された色が元の色からどう変化しているか」、「ホワイトバランスを変えたときの RGB の特性曲線がどう変化しているか」の 2 点についての評価を加えた。今回の講演では、「診断室」における 1 3 項目におよぶテスト方法と、テスト結 1 果から見た種々の問題点について述べた。具体的な内容は当日配布されたテキストを参照されたい。これまで、多くの写真家は、デジタルカメラの画質に銀塩写真と同じ性能あるいはそれを超える性能を期待し、メーカーもそれに答えるべく、開発・努力を続け、性能や画質の面でも追いつき、追い越した感がある。しかし、銀塩フィルムによる写真には銀塩フィルムの、デジタルカメラによる写真にはデジタルカメラによる写真としての、それぞれの良さや欠点がある。これからの時代、写真家は、デジタルカメラにより撮影された「写真」とフィルム撮影によって得られた「写真」とは異質のものとの考え、デジタルカメラの画像特性を理解し、その特徴を生かした作品作りを心がけるべきであろう。一方、画像処理技術の進歩により、記録された画像に手を加え改ざんすることも容易になり、「写真」としての真偽が問われるような社会問題も発生している。著作権問題も多様化しそうだ。「写真」にたずさわる人のモラルの問題だ、といえばそれまでだが、可能な限り、デジタルカメラの機能を悪用しにくいシステムの検討や、デジタルカメラによる「写真」とはどうあるべきかといった倫理的な検討をする必要があるだろう。 2